10/03/01 12:58:39
「……もういい。お前を一度部屋に帰してやる」
カガリが吐き捨てるように言い放った言葉を聞いて、浜田は心底ほっとした。もうこれ以上「自分の頭の上に立っている」感覚に耐えられなくなっていたからだ。
「目をつむって、30秒数えろ。その間に目を開けてはいけない。絶対にだ」
浜田は大人しく従うことにした。ナディルの世界では、自分は陸に揚げられた魚と同じ。自分を生かすも殺すもカガリ次第である事を感じていた。
「そうだ。絶対に目を開けるなよ…」
1秒、2秒と浜田は頭の中で数えていく。しかし、なかなか変化は訪れない。
浜田が20秒ほど数えたところで、カガリが思い出したように言った。
「そうだ。お前が来たことで、均衡が破られちまった。お前の部屋にも、何か変化が起こっているかもな」
カガリが言い終わらないうちに、浜田は逆上がりに失敗して落ちるときのようなぐるりと回転する感覚に襲われ、思わずしりもちをついた。
床が「ちゃんと」下にあることを確認し、浜田は恐る恐る目を開いた。