10/01/17 20:38:27
まず俺から
『天体観測をしよう!』
最初にそう言いだしたのは魔理沙だった。
何でも、夜の星空から新しい魔法のアイデアを得たいだとか……。
あの時私は、勝手に一人でやればいいと切り捨てた。
魔理沙も不満の一つや二つは言えど、とくに強く言ってくることもなかった。
それで話は終わったはずだった。
『それなら丁度、良い物があるわ』
そこに紫が現れなければ、こんな寒い想いをしなくて済んだのに……。
「どうした?もたもたしてると夜が明けちまうぜ」
一人先行してる魔理沙が、随分楽しそうな様子でこちらに声を投げかけてきた。
「あんたがせっかちなのよ。さっき日が沈んだばかりじゃない」
空はまだ明るく、星一つ出ていない。
「なんだ、霊夢は知らないのか?星ってのは本来、昼間でも出ているものなんだぜ。それがたまたま、日光で隠れてるだけだ。日が沈んだ直後にしか見れないレアな星もあるんだぜ」
そう得意気に語る魔理沙だが、私は星なんてどれも同じだと思う。
「そうよ、霊夢。空は常に変化している。一時たりとも、同じ光景のままではいてくれないわ」
「あはは、私はお酒が飲めればなんでもいいよー」
私の隣を歩く紫と萃香がそれぞれ勝手なことを言ってくる。
全く、妖怪は寒さを感じないのだろうか?
まぁ、それは置いておこう。妖怪の事情なんて人間の私の与り知らぬ事だ。
だが、この真冬に寒さをものともせず、両手振り振り邁進してる目の前の人間はなんだ?
人間ってのはもっと……
「何だ、霊夢?私の背中に何か付いているかぁ?」
立ち止まり、くるりと振り返った魔理沙が怪訝そうに尋ねてくる。
「あんたは本当に人間なのかしらって疑っていたところよ」
「私は人間さ。今日の星空ウオッチングも、観測から実用的なものを作りだそうって、人間らしい探求心からの試みだ」
そう言って笑う魔理沙を見たら、一人憂鬱な気分に浸っていた自分が馬鹿みたいに思えてくるからタチが悪い。
これから長期連載していくつもりだから楽しみにしてろよ