10/02/09 01:10:53
はい。だーっと書いてみた。
(タイトル無)
視えている。
安逸の内に過ごしたければ、見てはならないその存在が。
稼働する事をやめた、古びた工場。又は子供の声を失った校庭と校舎。又は人通りの絶えた国道。商店街。道の全て。家の全て。
そう。
この都市から『現実』は丸ごと撤退した。顔を背け存在せぬと思い込めば、問題が無くなるとでも言わんばかりに。
……残された存在は廃墟と非現実。
『非現実』。
安逸の内に過ごせぬ者達は、獰悪なそれらを斯く名付けた。ゴースト。
暗雲の下の戦いだった。
街の中を、クレオは姿勢を低めながら走っている。その後ろで銃声が立て続けに鳴った。
弾丸は余す処無くクレオを追い越しゴーストに吸い込まれ……、巨躯が弾け飛ぶ。相変わらず精確な亜耶の射撃だ。たった今までゴーストが占めていた位置がぽっかり空いた。
飛び込み、そしてクレオはリボルバーガントレットを振るう。殴打された敵がよろめいて後退り、次の瞬間体内を駆け巡る衝撃に身を捩りながら消滅した。二体撃破、しかし快哉を叫ぶ間は無い。回りはゴーストの大群なのだから……。
「亜耶ちゃんっ」
殴り返してきた数個の拳、それらを体を捻り躱しては受け流し、クレオは背後を見ずに叫んだ。
すぐさま亜耶の放ったバレットレインが辺り一面を洗う。銃弾の嵐、反撃の雨。その中でクレオは突き、蹴り、見切っては打ち払い、常人の為し得る域を超えた舞踏に耽る。
「はっ」
一先ず周囲が片付けば、笑みが溢れるのは自然な事。だが新手は間髪を入れず物陰から飛び出して来る。舌打ちしつつ構え―そこに硬質の暗色が疾った。
黒影剣を横殴りに受けたゴーストが崩れ落ちていく。
(つづく)