10/02/05 15:02:00
<オープニング>
「来てくれてありがとうっ。じゃあ説明を始めるね」
新人の霊査士・タナカが、冒険者たちに笑顔を向けてから、今回の依頼の説明を始めた。
「えぇと、今回はヤマダさんからのご依頼です。逃げちゃった愛猫を探して欲しいそうです」
依頼人は一人暮らしの男性、ヤマダさん(35歳)。元は行商人だったのを、この町に雑貨屋を開いて独立。
元々猫好きだった為、独身の寂しさを紛らわすために猫を飼い始めたそうだ。
「ヤマダさんの猫の名前はユキちゃん、1歳の女の子です。元は野良の子猫で、親とはぐれて衰弱していた所をヤマダさんが拾って飼い始めたんだって」
嫁はいないが心優しいヤマダさん。愛娘のように大切に育て、無事にすくすくと大きくなったユキちゃんなのだが、人見知り癖がひどいらしい。
慣れていない人が来ると隠れてしまうらしく、久し振りにヤマダさんの友人ご一家が遊びに来た時には、とうとうパニックを起こして家から逃げ出してしまったそうだ。
ヤマダさんも自分で探しに行きたいのはやまやまなのだが、遠くに住む恩人の結婚式に出席する為に今日にも出掛けなければいけないという。しかたなく酒場へ捜索依頼を持ち込んだようだ。
「ユキちゃんは白猫なんだけど、左の後ろ足だけ黒いソックスを履いたような模様があるんだって。町の治安は良いし、猫をいじめて遊ぼうっていうイタズラっ子たちはいないから、普通に探してくれれば見付かると思うよ」
昼の裏路地。子供たちは学校、大人は表通りにいるだろうから、うろついているのは野良猫くらいなものだろう。
裏路地自体も、ところどころに大人の通れないような細道があったりするが、入り組んでいるわけでもない。
素直に探して、きちんと捕まえる。そのくらいだろう。もちろん怪我などをさせてはいけないが。
「冒険者のみなさんに簡単な依頼ですみません、だそうです。ユキちゃんは捕まえたら私が預かるから連れてきてねっ。それじゃあ、いってらっしゃい!」
以上、みなさんのお役に立てれば。