10/01/28 09:33:41
>>55 (承前)
●森の道
姫を諭すうまい方法は考えていなかった。
アルファは頼まれたことだからと、少しは言ってはみたが、疲労困憊している姫をあまり責めたてられはしない。
なんとなく、沈黙が支配する。
そうして歩いていると、少し離れて先頭を歩いていた不知火が突然走り出した。
もう日没のころで、森の中は暗い。
仲間たちが何事かと急ぐと、小さな丘を越えたところで不知火は立ち止まっていた。
そこで、突然に視界がひらけている。
雪を冠した山々は、夕日で真っ赤に染まっている。
湖は、その山々を映しながらも、波が金色にきらめく。
不知火が振り返って言った。
やることやったんだから、それでいいでしょ。それより、はやく帰ってゆっくりしよう、と。