08/11/11 07:16:00
死んだ人の魂は月に行って、家族や友達の事を思う度にそこから貝殻の雨を降らせる、
その貝殻が砂浜に集まったものを月の砂と云うのだと...... なんとも高校生らしい作り話だが、
当時さつきは感動して、「私が死んだら月の砂、必ず届けるから」と大きな瞳を潤ませながら言っていた。
私が死んだら......?
一瞬、嫌な胸騒ぎがしたが、いまさら砂月にメールや電話で連絡をとる勇気は僕にはなかった。
そんな勇気があるのなら、もっと早くに砂月にゴメンと言えてたはずだ。
自然消滅などせずに今でも砂月と恋人同士でいれたはずだ。
僕が今さらどうにもならない過去の清算に思いを馳せているちょうどそのとき、
僕の携帯電話に高校時代の同級生から砂月の交通事故による訃報がとどいた。
二年ぶりに対面する砂月は棺の中にいた。事故による損傷が激しく棺の蓋は固く閉じられたままだったが、
祭壇の遺影の顔はあの頃とまったく変わらない笑顔のままだ。僕は涙をこらえて焼香台の前に立ち手をあわせた。
葬儀の帰り道、僕は独りずっと考えていた。
果たして、砂月の魂は月にいったのだろうか?貝殻の雨を降らせるのだろうか?
そして僕は砂月にゴメンと言えるのだろうかと。
終わり。