09/12/04 21:25:53
「掃除機」「鉄人」「ひざまくら」
「掃除機に言え! じゃなかった、正直に言え! 貴様が犯人なんだろう」
「だから誤解だよ、刑事さん。俺じゃないんだ。罠だよ。現場にいたっていう
そいつは鉄人、じゃなかった、別人なんだ」
「言い逃れもたいがいにしろ! お前のやったことのひざまくら、じゃなかった、
ひまざくら、じゃなかった、いざかつら、じゃなくって、えーとあのその」
「チョー意味分かんねえし」
次のお題「暦」「キャンディ」「雑誌」
501:名無し物書き@推敲中?
09/12/04 21:55:55
「いやぁ~!次元、こんなとこで立ち読みかよ!」
セブンイレブンのドアを開けて、ルパンがやってきた。雑誌売場では、次元がイブサンローランのムックを立ち読みしている。
「次の仕事が決まったらしいじゃねぇか」
「おぉ~とも、この師走には、デカイ金の動くデパートがある」
ルパンは両手をズボンのポケットに突っ込んで、目の前のガラスに目をやった。次元もガラスを見る。
外の駐車場には、デカイ機械を載せた軽トラックが止まっていた。助手席には、目を閉じて斬鉄剣を抱えたままの和服姿の五右衛門が座っている。その機械は、側面に、山田飴製作所と書いてあった。
「ん~ん、ルパン、今度の獲物にアレが必要なのか?」
「おう、伊●丹の百周年に当たる来年の福袋には、千分の一の確率でマジモンのキャンディ型ダイヤが入るらしい」
「それで、まさか大量の同型飴を作ってすり替えるとか言うんじゃないだろうな」
「ごめいとぉ~、さぁすが相棒の次元、てぇことでさっさと行くわよん」
と、ルパンが店を出ようとした時、ハーレーが滑り込んできた。革製のつなぎの上からでも巨乳なのがすぐわかる。
峰不二子だ。
「あんれぇ不二子ちゃぁ~ん、どったの」そうおどけて見せるルパンの後ろで、次元が肩をすくめて横を向く。
「ルパンに年賀状を出そうと思ってえ、こうみえても私も日本人だし、暦の上のイベントは見逃さないのよ」
「へぇ~、相変わらずいいお乳だこと」そう言ってルパンは不二子の胸を触ろうとする。
「だぁめよ、キャンディと交換なら考えてあげるけど」
「なんのことかなぁ」
「うふふ、聞いちゃったぁ」
胸の谷間から受信機を取り出して、そのままルパンの首筋に手を触れると、盗聴器が現れた。
「しっかたないなぁ」
ルパンはハーレーの後部座席にまたがった。
「んじゃぁ、次元、軽トラの運転よろしくぅ」
へいへい、といった態度で次元は運転席に乗った。
エンジンがかかるバイクと軽トラ。ハーレーが走り出し、軽トラがその後を追う。
雪が降り出していた。
「へーっくしょん」
とくしゃみをした銭形警部が伊●丹の警備につくのは大方の予想通りである。
次のお題「ギャング」「ビデオ」「時計」
502:「ギャング」「ビデオ」「時計」
09/12/05 15:21:56
「こりゃギャングだな」店長がビデオを検証しながら言った。
マコトは、まいった問題だな。と思った。店の死活問題だ。
「ほら、餓鬼どもが防犯カメラの位置を把握していて、仲間で
壁をつくって写らないようにしている。その陰で商品をパチ
っていく訳だ」
「性質が悪いですね」二人は玩具店のバックヤードで対処
方法に頭をひねっていた。余り露骨な捕捉をするのは、
他の善良な客に妙な雰囲気を与えかねない。
「捕まえたら捕まえたで最近はモンスター・ペアレンツの
逆ギレだ。なんて時代だよ」
マコトは、今日ここに呼ばれた意味はわかっていた。
「じゃ、ギャラは、よろしくということで」
マコトは、愛くるしい少女にも、少年のようにも観える。
「ああ。怪我だけはさせるなよ。お灸をすえるだけでいいんだ」
マコトは、開店時間を事務所の時計で確認した。
早速マコトは髪をウイッグの中にまとめだす。
『彼女』は、何処にでもとけ込む能力がある。
女子大生Gメン真琴。
空手三段、剣道三段、柔道二段。合気道二段。
次のお題「雪道」「穴」「夜通し」
503:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 00:27:03
「雪道」「穴」「夜通し」
BUBUBU-
ひくい、羽音のようなうなりがたえず聞こえてきた。だがもう顔を上げてたしかめるだけの気力もない。かれは疲れきっていた。
このままどこへむかおうとしている?
視界の端に、黄白色のほのほがゆらめいているのがかすかに見えた。
手足の感覚はすでにない。
-死ぬのか。ここで。
マエハラ!
背後から声がきこえた気がした。
「シッカリシロ。マエハラ。ワタシダ。センゴクダ」
「せんごく……仙石、か。そうか。生きていたのか」
その名前の主を、自分はここまで探しに来たのではなかったか。鉛のように重くなった頭で、マエハラと呼ばれた男はそう思い出していた。
「スッカリカラダガヒエキッテイル。ハヤクアタタメネバ」
仙石が体内の小型原子炉を作動させた。マエハラの身体に降り積もったまま凍りついていた雪のかたまりが、原子炉の熱をうけてすこしずつ溶けてゆく。
夜通し雪道をあるいてきた。ただの雪ではない。死の灰をたっぷりと含んだ灰白色の雪。
「ナカマハドウシタ。ミナ、イッショデハナカッタカ」
「死んださ。おそらくは、みな奴らの餌食になったのだ。岡田も、藤井も」
自分のからだを支えてくれる男のことを、いまだにはっきりと思いだせぬままマエハラはかわいた声でつぶやいていた。
「HENOKO作戦を実行する時点で、みずほだけはどこかへ逃げてしまった。亀井は……どうなったのかおぼえていない」
そうだ。ほかにもなんにんか仲間がいたはずだった。予備電子頭脳を作動させながらマエハラはひっしに思いだそうとする。
「おれは直撃をさけ、携帯ミサイルを連射しながら夢中で手ぢかな穴に逃げこんだ。それから……」
「ソレカラ……ドウシタノダ」
それから、それから?
違う!
Hiiii-n
奇妙な電子音が無数の針のように、動きのにぶいマエハラの電子頭脳をつらぬいた。
「違う! お前は仙石なんかじゃない」
OZAWAだ。とうとうここまで追いついてきたのだ。
504:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 00:31:18
今回は光○龍風を狙えどまた失敗
次のお題「太陽」「狐」「お喋り」
505:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 08:52:12
2012年、太陽の活動が活発化して地球には天変地異が続発・・・・・・・・・・
今日は狐さんとタヌキさんと私の楽しい映画鑑賞会です。
狐さんは、油揚げが包まれず巻き寿司のようにまかれた名店のお稲荷さんを食べています
タヌキさんは銀座8丁目にある老舗店の天丼弁当です
私は冷蔵庫の残り物のオンパレード、この寒さで物が腐らず助かる弁当です。
楽しくお喋りの花が咲きます
「凄い。一ファミリーのみ、隣の家のオバサン、学校のクラスメート、全滅しても自分達だけ
逃げまくる根性を僕は絶対に見習う。」
狐さんは油揚げに舌包みを打って感想をもらします
「君らしいね、そのずる賢さ。僕は木の葉を乗っけて皆を魚さんに変えて助けて上げるの。」
タヌキさんは人の良い建設的意見を述べます。
「何ほざく。カチカチヤマで泥船を拵えておいて。ノアの箱舟の作り方でも教えてもらった
方がよくないか。」
口喧嘩を始めかけた二人に慌てます。私も感想をのべましょう。
「2012年、果たして私は小説家になれているか。」
「なれていない!!!!!!!」
意見の一致を目出度く見てお二人さんは仲直り。三人は再度、仲良くお弁当を
パクつくのであった。
お後がよろしいようで・・・・・・・・・・・・・・
お題「大晦日」「大掃除」「大嫌い」
506:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 10:48:02
舌鼓でした。すいません。
507:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 14:09:42
「大晦日の大掃除なんて大嫌い、みたいなネタでいいのかな。どう思う? 小泉、清水、石塚」
「さあ」
「知らん」
「どーでもいい。まあ大晦日で大掃除とくれば結びつけるのは定番だわな」
次のお題「明日」「線香花火」「破片」
508:「明日」「線香花火」「破片」
09/12/06 19:02:36
「明日は、無いと思ってます」
リドゥー症候群の取材で、私はハルカと出合った。
脳の代謝障害で、突発的な意識混濁。発生部位によっては、
短時間で死に至る病だ。
彼女は、高校を休学している、まだ十九歳だ。実際の年齢より、
物腰や発言は大人びている。死の予感は人生を圧縮する。
「線香花火って、ありますよね」彼女は、私が現状の生活を
訊いていた時、不意に言った。
「線香花火……」私は、なんとなく切ない予感がして言葉を
詰まらせた。
ハルカは、窓の外、梅雨の晴れ間の新緑の風景に眼をやった。
「……線香花火は、玉になって落ちます。でも、その前に綺麗な
火花を散らして、踊るんです」
「そのダンスの、一瞬一瞬は、時間を切り取れば、永遠だと
思うんです。確かに輝いた瞬間は、誰にも否定できないと思う」
「だから、今、永遠に宇宙の歴史の片隅に残る瞬間を私は
生きている、って思ったりするんです……誰も顧みる事は無い
忘れ去られる歴史でも」
「そうだね、本当は他のみんなも、そうかもしれないね」私は、
やっとそう言った。
たとえハルカの肉体が砕けても、その魂は美しく、ひそやかに
その破片の全てに宿るだろう。と私は願う。
「うん。だから、私は生きることを楽しんでるんですよ」
ハルカは明るい顔で笑った。
次のお題「平手打ち」「ダイヤモンド」「警察官」
509:「大晦日」「大掃除」「大嫌い」
09/12/06 20:04:05
「大嫌い!」
そういい捨てると彼女は出て行った。どうしようもないなー、というのが
俺の感想で、困った事だぞ、という反面、大体においてそういう捨て
台詞はまだ先のある予言のようなものだと思っていた。本当に「大嫌い」
なら「大嫌い」とは言わないはずだろう。
そもそも俺の生活態度が問題であって、性格的なものか、なかなか勤め先
が長続きしない。それでいて家事も嫌いとなれば、勤務もしている彼女は
疲労と不満が累積するというものだ。
賃貸マンションにぽつんと残された俺は、仕方無しに部屋の掃除を始めた。
気分転換を兼ねた大掃除である。押入れの中には趣味のプラ模型が未組み
立てで山ほど積んである。こういう財布の底が抜けた収集癖も、彼女には、
負担だった可能性は否定できない。
結婚をずるずる先延ばしにしてきた事情としては、まだまだいいだろう的な
俺の楽観視であり、彼女にしては不満を通り越して危機的心象にあったかも
しれない。「甲斐性なし」
嫌な言葉が頭に浮かぶ。しんどいかな、と思って押入れの戸を逆側に開いて
みる。こっちは彼女の物が入っている。金属バット。
なんだこれはと思って仔細に見てみると、カラーマーカーでバットの表面に
「一人一殺」とか「道連れ」とか「死ね」とか書いてある。はあ?と思って、
バットの納まっていた押入れの隅に、ルーズリーフを発見する。
「結婚計画」とか書いてある。詳細な式場の手配とか招待する親戚や友人、
新婚旅行の計画が書き連ねてある。なんかすまないことをした気分になった。
ページをめくっていくと、最初は綺麗だった文字がだんだん乱れた変な字に
なっていく。それはさておき、「何月何日、残高~~円」とか、「ここが我慢の
しどころ」とか、「今日、病院に行った」とか「たまにハイになる」とか書いて
あった。処方された眠る薬の事とか書いてある。
「決行は大晦日。背後から。サヨナラ人生」とか書いてある。
インターフォンが鳴った。
「ごめん!ケーキ買ってきちゃった!お茶にしましょ!」
彼女のやけにハイな声がした。俺は、泡のような汗をかいて、立たない腰で
カーペットの上で激しく震えていた。
510:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 21:48:54
「平手打ち」「ダイヤモンド」「警察官」(1)
「よう、フぅ~ジコちゃ~ん。相変わらずお目目に毒なナイスバディだこと」
ニンマリと相好を崩して、大きく開いたドレスの胸元に触れようとしたルパンの指先を、寸前で不二子は軽く払いのけてから、
「で? 今度こそ間違いないんでしょうね。嫌ぁよ。去年みたいに寸前で福袋のすり替えに気づかれて失敗、だなんて結末は」
「だ~い丈夫。あん時みたいなドジは二度と踏まねえさ。例のキャンディ型ダイヤモンドはたしかに今はここの地下金庫に収められている。見なよ」
小さく目配せする。カップルを装う二人。人待ち顔の中年紳士。さりげなく師走の町の風景にとけ込んではいるものの、いずれも警察官の変装に間違いない。
「わかったわ。で、あたしは何をすればいいの?」
「んふふふふふふ。それなんだけどね」
ルパンが懐からジッポーを取り出し、指先でチン! と蓋を跳ね上げる。とたんに勢いよく催眠ガスが不二子の顔目がけて吹き出した。
「去年みたいに俺たちの邪魔ぁされても困るんでな。少しだけいい子いい子で眠っててちょーだい。後でお目覚めのキスしたげるから。んじゃね」
「ずるいわよ! ルパン。待ちなさい……」
急激に意識が遠のく。せめて平手打ちのひとつもくらわせてやろうと気力を振り絞ったものの、すぐに身体の自由が利かなくなり不二子はあっさりとその場にくずおれた。
気がつくと夏美がそばに立っていた。
511:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 21:50:21
「平手打ち」「ダイヤモンド」「警察官」(2)
急激に意識が遠のく。せめて平手打ちのひとつもくらわせてやろうと気力を振り絞ったものの、すぐに身体の自由が利かなくなり不二子はあっさりとその場にくずおれた。
気がつくと夏美がそばに立っていた。読みかけていた娯楽小説のページを閉じて待合室の椅子から立ち上がる。
「やあ、どうだった?」
暗い表情には気づかないそぶりで、さりげなく問いかける。次の瞬間夏美の両目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「駄目なんだって。もう手の施しようがないんだって。春香ちゃんもう治らないんだって。長くてあと半年なんだって」
あと半年。内心覚悟はしていたものの、夏美のことばは突然の平手打ちのようにぼくの心を激しく揺さぶった。
「出よう」
考えがまとまらないまま、すかさず夏美の肩を抱いて病院の外へと促す。
泣きじゃくる彼女を連れたまま、どこかの店に入るわけにもいかない。やむなく町中にある小さな公園のプラスチックのベンチに並んで腰かける。
「春香には、会ってきたの?」
そっと肩を抱き寄せる。ぼくの腕の中で夏美は小さくいやいやをするように首を振った。
「会えないよ。会えるわけないよ。どんな顔して春香ちゃんに会えばいいって言うのよ」
通りすがりの警察官が、じろり、と一瞬だけぼくらの方を見て、そのまま知らん顔で通り過ぎてゆく。
夏美はいつまでも泣きやまなかった。
吐く息が白い。ふと見上げた空にかかる月は、なぜだか少しぼくの目の中でにじんで、ダイヤモンドのようにきらきらと輝いて見えた。
次のお題:「霧」「宅配便」「ビデオテープ」
512:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 21:54:20
長すぎてやむなく(1)(2)に二分割
「娯楽小説」の前半部と「現実」の後半部、両方でお題処理に挑戦という試みだったのですが
あと>>508さんが素晴らしかったのでさりげなくキャラ名拝借
513:名無し物書き@推敲中?
09/12/07 00:27:14
宅配便 ビデオテープ 霧
「お届けものです。」
宅配便から手渡された小さい包みには発泡スチロールではなく木の葉に包まれたビデオテープだった。
「なんか…… いかにもだな……」
送り主も住所も一切不明。さっきの宅配便も思い返せば怪しいやつだった。
「まぁいいや。」
早速デッキに入れ再生する。見覚えのある森がノイズ混じりに浮かび上がる。そこにはビニールシートにスコップで土を被せる人物。俺だ。
「誰だよ。撮ってたの……」
一心不乱に作業をする男。三十分。あの時計った時間だが、恐らく今も同じだろう。延々とそれだけを移したものだった。男は作業を終えるとふと、こちら側を見つめた。あの時感じた気配はこれだったのか。
映像の自分と目があった。その姿を俯瞰で捉えた映像をイメージして馬鹿らしくなりつい吹き出してしまった。
「フ、フフフフ、ハハハハハハ……ハ」
そのとき、首筋に冷たいものが触れた。真っ暗になったブラウン管に映る俺。その背後にいる黒い影から伸びる白い腕が俺の首を捉えている。
案外ホラー映画も馬鹿に出来ないな。多分幻覚を見ているんだろう。狂っていてもそれは解る。しかし幻覚もそう馬鹿には出来ない。幽霊の正体は枯れ尾花だと言うが、その枯れ尾花だって人を殺せないとは言い切れないのだ。
「このあとは俺の断末魔のアップか幽霊のアップで次のカットだよなぁ……」
首にかかる力は次第に強くなっていく。次第に霧がかっていく意識にもかかわらず、次の作品のアイデアがどんどん膨らんでいく。これを映像にしたら凄いもんが出来るぞ……
夕日が差し込む部屋に満面の笑みを浮かべた男が死んでいる。テレビにはスコップを持った男がそれをじっと見つめていた。
次題 「コレラ」「兵隊」「骸骨」
514:「コレラ」「兵隊」「骸骨」1/2
09/12/07 08:33:25
「ルパンまさかアフガニスタンに潜入する気か?」
軽トラのステアリングを握っている次元が、フロントグラスの向こうを見据えたまま、
助手席のルパンに向かって言う。
「お~とも、こいつは単なるアクセサリーじゃないのよ」
ルパンは、キャンディ型のダイヤモンドを弄んでいる。
「ふん、しかし、アフガニスタンは今マイナスの気温になってる上に、かなりの雪が積もってる、
動きにくいんじゃないか? 暖かくなるまで待つって手もあるぜ」
「時間が……ないのさ、リドゥー症候群って聞いたことがあるか?」
「なんだそりゃ」
「脳の代謝障害で、患者は突発的な意識混濁を起こす。発生部位によっては、
短時間で死に至る病だ。。何度手術しても、直せない。それを揶揄してリドゥーと呼ばれている」
「ふむ、でもなぜ、手術を繰り返すんだ? 放っておけばいいだろう?」
フロントグラスの向こうでは、粉雪がちらついている。ライトの帯の中でまるで踊るようだ。
真っ黒な路面まで到達できずに消えていく、雪の舞い。
「レントゲンでも、MRIでも、別の、例えば癌細胞のようなモノが確認できるんだ。
しかしいざメスを入れると何も無い」
「医学は進歩したんじゃないのか」
「未だ直せない病ってのは、ゴマンとあるのさ。毎日何百、何千も死んでってる」
「それで、そのダイヤがアフガニスタンとどう関係あるんだ?
あんな紛争地域にいっちまったら俺たちの命も危ないかもしれないぞ」
「生きようとしてる女の子がいるんだ」
「ふん、いつもの悪い病気が始まったか」
次元はステアリングを左に切った、右へ流れていく赤い信号機。
「……線香花火、あれが人生だなんてクソくらえだろ」
ルパンはダッシュボードを蹴り上げる。
「どうしたルパン? らしくないぜ」
「いや……悪い。で、このキャンディ型の代物なんだが、
リドゥー症候群で唯一回復した娘がアフガニスタンにいたんだ。そいつの謎を解く鍵なのさ」
515:「コレラ」「兵隊」「骸骨」2/2
09/12/07 08:36:34
「ふむ」
「アフガン戦争で、イギリス人将校の骸骨将軍と呼ばれた男がいた。
その男の娘がこの生き残った娘なんだが、兵隊やアフガン人を使って娘のために
人体実験を繰り返しワクチンを作り出したたらしい。骸骨将軍の部隊は彼を残して
アフガニスタンで全滅している。軍の報告書ではコレラが原因って事になっているが、
将軍が帰還すると、娘が回復したと噂されているんだ。
同じ病気に苦しむ人々がそのワクチンを欲しがっているんだが、幻とされてきた、噂も噂でしかないとな」
「なるほどな。その鍵は何に使うんだ?」
「病気の治療に使ったワクチンを収めたボックスを開ける鍵だ。世界でそこにしかない。
アフガニスタンの精神病院に収容されている骸骨将軍が持っている情報を得たんだ。
幻じゃなかった、ワクチンは存在する」
「ん、なんでそいつがそんなとこにいるんだ」
「娘が死んで狂いやがった」
「じゃぁ、ワクチンは無駄足になるんじゃないのか?」
「いや、娘が死んだのはアフガンの地雷でだ」
「せっかく生き残ったのにな」
ワイパーが忙しく動き、いつの間にかフロントグラスに積もり始めている雪をせわしなくかき分けている。
暗闇の中を白い粉が上塗りしようとしていた。
「ルパン、五右衛門がそろそろヤバイんじゃないか」
荷台で震えている無表情な五右衛門の肩に雪が積もっている。
「ふへっくしょん!」耐えきれなくなった五右衛門が大きなくしゃみをした。
夏美は、ノートにそこまで書くと、机の上に載せたハルカと二人で撮った写真を見つめた。
ハルカは絶対助かるんだ。あたしがルパンになって、病気を盗んでやるんだから。
間に合え。
夏美はそう思いながら、力強く文字を書き続けた。
次のお題「ロックンロール」「聖書」「吐息」
516:名無し物書き@推敲中?
09/12/07 18:58:44
―麗しきは偽りなり、生彩なる美は虚しき。されど主の教えに傅きたる
女性は讃うるるなり。薫香やその価値は粉飾にはあらず。その中から溢るる―
(旧約聖書 箴言31章10節―31節)
会場は、来訪者の数が増えてきた。
本部から推薦があった女の子ふたりにインタビューをする。
僕は地方のタウン誌の記者だ。
「どのくらい前からコスプレを始めたんですか?」
マユという小柄な少女が「一年……半くらい前なんかな?」
もうひとりのミユキは「私は一年くらいです」と答えた。
「コスプレのきっかけは?」
「私はマンガとか描くのが好きで、それで今、同時開催してるコミケの方には前から来てて、
スカウトされたんです。なんて」
ミユキは笑いながら言った。「声がでかいから、とかそんな理由ですよ、きっと」
「なるほど。どうですか実際には?」「んー、はずかしいです。でも今は考え方が変わりました」
「それは?」
「観てくれる方はその時間を私たちにくれはるんですよね。パフォーマンスしなきゃ失礼だと……
もちろん、営利はご法度でおひねりも頂けませんが」
「あれ?あそこのカンパ用の箱じゃないかな?」
文化会館前、箱の傍らで最近流行りらしいガールズ・ロックンロール・バンドのユニットの
演奏が始まった。
マユがハスキーな声で答えた。「あの……書かないで欲しいんですが、私たちのグループ
の仲の良いグループに、伝説のコスプレーヤーがおるんです」
「もう、歳も結構いっちゃてるんですが、めっさ元気なお姉さんがおって。怪我して入院
してるんです」「事故?」マユが眼を伏せて答えた。「配達でね。おおきなクルマに、
あてられた……お姉さん苦労人で。高校も途中で辞めて仕事に就いた。
だからコスプレはお姉さんの大事な『部活』って言うか。簡単に言うたらあかんけど」
そうか、むしろ普通のマニアックでない高校生より、彼女たちは社会の陰影を観ているように
思った。
「写真、撮らせて頂くけど、いいですか?」「ああ、記者さん、きれいに撮ってや」
……君達は、充分綺麗だよ。僕はデジタル一眼のファインダー越しに、
羨望の入り混じった吐息を吐いた。
URLリンク(imepita.jp) 77.7 KB
517:名無し物書き@推敲中?
09/12/07 19:03:49
次のお題「大鍋」「ドレス」「鯛焼き」
518:名無し物書き@推敲中?
09/12/08 00:36:41
大鍋 ドレス 鯛焼き
未だ乾ききっていない風と、ほんの少し緑を残す土手。寒空に陽光は暖かかったが、小刻み
に体を震えさせる人々の心までをも和らげることはなかった。
鍋はまだ煮えぬのかと寒さを露わにする中年を酒でごまかし、火に薪をくべるが、煙が立つ
ばかりでちっとも火力は増えない。端ではヨップが喚き立て、もう一方では老人どもが恨めし
そうに手をこすりあわせている。
「どうしよう。ちっとも温まらない」
大柄な少年が似合わず心配そうに言う。その傍らの少女もまた、似たような顔をして弱い火
を見つめる。
子供会主催の秋の芋煮会。毎年茂居町の行事として行われるこの行事は、近年変化してきた
気候により、今年はあまり芳しくなかった。夏が長く続いたせいか、水を含んだ空気が薪を湿
気られたのかもしれない。そのくせ気温は例年並みで、神様のどうした嫌がらせか、今年の子
供たちは悪戦苦闘を強いられるばかりだ。
「うーん。灯油でもまこうか」
「え、いいのかなあ」
「いいよいいよ。やっちゃおうよ」
しびれを切らした少女の提案に、大柄な少年は乗り気ではなかったが、結局その案を取るこ
とにした。
519:名無し物書き@推敲中?
09/12/08 00:37:25
結果火は回り、鍋も温まってきたが、その分薪は使い果たしてしまった。どうしたものかと
迷う内に、やはり少女が具を全部いっぺんに入れてしまえとした。
「いいのかなあ」
少年は相変わらず不安がっている。そんな少年を後目に少女は大量の具をぶち込まれた大鍋
をかき混ぜた。
「なんか灰汁がすごいよ。取ってもきりがない」
「それに肉もバラバラになっちゃった」
大鍋にしては、随分酷いものだった。
大凡にして鍋は大きいほど味の調節が楽だ。比率分配が簡単だからだ。にも拘わらず、味が
やけに奇妙である。
「なんだか、変に甘いよ。肉味のぜんざいみたいだ」
感想も妙である。子供たちの頭にいくつも疑問符が浮かんだ。なんでこんな味になったんだ
ろう。そこへ近付く足音、それに強烈な酒の匂い。
「ういっく。どうしたクソガキども」
すっかり出来上がった中年親父がそこにいた。もう鍋などはどうでもいいという風情だ。
「なんか味が変なの。どうしよう」
少女が言う。すると中年は胸を張って答えた。
「おう。寂しい鍋なんでよ。おれさまが鯛焼きでドレスアップしてやったのよ。良い隠し味だ
ろう」
520:名無し物書き@推敲中?
09/12/08 00:39:49
がはは、と親父は豪傑笑いをして去っていった。
台無しであった。
子供たちは皆顔を青くした。この親父はなんということをしてくれたのだろう。とてもじゃ
ないが食えない。
「DSやろうか」
「うん」
その後子供は帰宅し、皆で楽しくDSを遊んだ。それに気付いたのは老人どもだけであった。
酔っ払い共が鍋を処理したのは言うまでもない。
次
「ミミズ」「ネズミ」「たこ焼き」
521:「ミミズ」「ネズミ」「たこ焼き」
09/12/08 08:53:48
「おとうさん。みっちゃん~、ゆうくん、たこ焼き買ってきたよ~
あれ、パパは?」
母屋の方で妻の声がする。俺は土蔵の二階で汗をかきながら
困難な探し物をしていた。
「ネズミにひかれたか……」
家を出て一家をかまえた弟の依頼で、同級会の幹事に選ばれた
ので、小学校の卒業写真集を見つけてくれとの事。
お袋は介護施設に入所してしまっているので、聞く相手もいない。
さて、困ったねえ……天袋を開けると、どさどさ、と、書物が落ちてきた。
拾い上げて見てみると、随分昔の、明治か大正の小学校の教科書
とかである。
「これはこれで価値があるかな……」いつかの時代の先祖の使った
ものらしい。ちょっと興味が出てくる。あれこれ手にして土蔵の換気窓
の灯りでながめてみる。そうしていたら、どうもその一冊に、落書きが
してあった。絵はほとんど無く、文字で書いたものだ。
判読が難しいミミズがのたくったような字で、「未来の書」
とか書いてある。
『大戦後、日本は無類の経済発展をとげるなり』
『だっことか言う人形が空前の流行になるなり』
『女は露出が大きくなって、お尻の割れ目の上のほうをを平気でズボン
から見せる』
『二厘くらいではんぶるぐばーがとか食えるようになるなり』
『米国で黒人大統領が誕生するなり』
なんだこれは、と思った。
『美知絵と雄太という子供が生まれたとき、天体が衝突して地球は
終わるなり』えー、それは……
『これは、うそうそなり』なんだ?
『そのかわり会社でのジュンちゃんとの浮気が発覚して、おくさんと、
みっちと、ゆうはこの家を出て行くなり。代々の家系は断絶するなり。
めでたし、めでたし』
次のお題「通販」「無礼者」「映画」
522:「ネズミ」「ミミズ」「たこ焼き」
09/12/08 09:53:45
な、何だろう。
田舎のネズミさんは、一パック、土をほじくってミミズを捕まえてそれを土産に都会、
渋谷というところに町のネズミさんを頼って東京見物に来ていた。心に描いていた町並みは
もっと洗練されているはずであった。あれはダンボール、へえ、人とネズミが一緒にゴミ漁り。
「よく来た。ここいら、近年、ネズミ人口が増えている。まあ、食事を豪華に用意した。何でも食べて帰ってくれ。」
お世話になりますと丁寧にお辞儀をする。そう、何か、あまりといえば清潔感が乏しい
町並みであった。それでも、ご馳走を山と出され自分の土産を出し損ねた。
「何それ。ハハハ、何か動いている。ヘエ、見たことない。」
知らない。ミミズを知らない。コレは彼らの食生活で欠かせない。ミミズがいる土壌は
美味しい野菜が育つものと決まっている。やっぱり、どうも昔から都会に生きるネズキさんとは
生態も違っているような。
「あれね、夜になると建設される家。地下道とかに。昼間は撤去される。」
フーン、ままあ、彼の想像通り、ネオンの輝きは凄い。これこそ、不夜城という奴か。
これは早々に帰ろう。借りてきたお人よしのタヌキさんの携帯を取り出す。
「僕だけど。そう、田舎のネズミ。迎えに来て。帰る。もう、早くないかって。
いいの。少し見た。」
出ました。現われいでたるたこ焼きマントマン。その背中に乗っけてもらう。
「そうお、ハハハ、一度遊びに行く。一匹でいいや。食べてみる。せっかく持ってきてくれて。
へえ、これがミミズね。」
もう、早く帰ろう。家路の食卓が待ち遠しい。ヤッパリ住み馴れたミミズがいっぱい
溢れる土の中の田舎暮らしが彼にとって最高の住み家であった。
523:名無し物書き@推敲中?
09/12/10 23:23:26
「通販」「無礼者」「映画」
今どきシブヤなんて
たいして
モノ揃ってないし
ぶっちゃけ
通販のが
チョー楽だっつったのに
「いーぢゃん。マルキューで買い物してさっ、その後映画行こぉ?」
真狸香がそう言うから
仕方なく
あたし
電車に乗る
「何よ。映画ってロクなのやってないじゃん。アニメばっかで」
散々買い物に付き合わされて
やっぱいーモノ全然なくて
あたし不機嫌
「へえ、ルパン今度はアフガン行っちゃうんだー」
真狸香のノー天気なことばに
なんかムカつく
タコ焼き食いながら仕方なく映画見てたら
「こぉの、無礼者がぁーっ!! 映画館でそんなもん食うなぁ」
なに? このオヤジ
ウザい
ってゆうか
早いとこ消えて
ハゲ
次のお題:「手紙」「電球」「カギ」
524:「手紙」「電球」「カギ」
09/12/11 03:50:16
雪の無人駅に線路をきしませ、二両編成のくたびれた車両がやってくる。
私は毛糸の手袋をした手で手動式のドアを開き、大きな荷物を引きずって無人の車内へ乗りこんだ。
暖房が、冷え切った頬を急速に暖めていく。頭を振ると、ホームで降られた、雪の残りが鼻の頭に落ちてきた。
私は、少しぬれた手袋を脱ぐ、白くなっている指先に息を吹きかけた。電車はゆっくりと動き出す。
窓の外では、先ほどから緩やかに降っていた雪が少し右へ流れていくのが見えた。
雪の向こうの灰色の街は、一体いつからあって、いつまで在るんだろう。そんな事を考える。
私が東京に行っている間に、生まれてから過ごしたこの街は変わるのだろうか。ここに帰ってこれるんだろうか。
どこにあるのかわからない太陽が雪雲の向こうで沈んでいき、窓外に夜が迫る。
このまま、電車が止まらないで、ずっと街が流れていく様を見ていたいなと思う。電車に乗っている間は、
私の時間が止まっている気がするから。何もなくならない。何も変わる事なんてない。
でも、夜が走り、街はどんどん輪郭を失っていく、ぽつぽつと現れる明かりが、胸を締め付けた。
旧式の電球式の明りが灯り、窓外の景色が消え、ガラスは私の姿を映し出す鏡になる。私の持つカバンのポケットからは、
手紙の端っこが飛び出している。ラブレター。そんな言葉が少しだけ重くて、封を切ることができないでいた。
街を離れる私は、心を置いていくのが怖い。心は閉じたまま、カギをかけていたかった。東京でひとりでやっていけるように。
私は、窓を開け、手紙を引っ張り上げる。そして、窓外へ投げた。あて先も送り主も無記名の手紙が、雪風にあおられ、
回転しながら視界から消えてく。少しだけ胸の奥が痛んだけれど、私は急いでうつむいたまま窓を閉めた。
今は、自分の顔を見たくない。線路の継ぎ目を越える音だけが、規則正しく響き続けている。
次のお題「バラ」「お茶」「電話」
525:「バラ」「お茶」「電話」
09/12/11 21:31:24
「きれいだね……なんて言うバラなのかな」
台所でお茶を入れていた久美子が笑って答えた。
「クララ・ルドヴィヒ。冬薔薇で無い品種よ」小さな濃厚な赤色を
した小さなバラだ。
窓際のテーブルに紅茶茶碗がふたつ並んだ。
「ほんと、今回はお世話になっちゃって……」
久美子は有料ホームのパンフレットを眺めながら言った。
子供達がそれぞれ家庭を持ち、彼女はこの家でひとりになった。
「もったいないような気がするね。いい家じゃないか。憲一君も、
由美子さんも欲しがるんじゃないかな」私は壁の柱を軽く掌で
叩いた。
「いいえ……」
久美子は横顔に、作り笑顔をした。「思い出が有り過ぎるもの」
彼女の夫は地元の資本家であった。若い頃からの放蕩ぶりは
収まらず、最後には妾宅で急死した。
「まあ、それも人生よね」寂しそうに笑った。
私は医療施設の嘱託をしている。その施設と関係のある有料
老人ホームへの久美子の入居を手伝った。
「若いって、いいことよね。あれから何年経ったかしら?」
「あれから?」
久美子は、そっとうかがうように、私の顔を見て、また目を伏せた。
……あれから……そうだ。もう60年になる。覚えている。だが、
私は、そらとぼけた。「じゃ、こことここに捺印」契約書に鉛筆で
丸を描いていく。
久美子は指に力を込め、ひとつひとつ印を押した。
「電話してね」
「うん」私は、靴を履きながら、はっきりしない声で答えた。
あの、ふた枝の小さなバラは、からむように茎を寄り添わせていた。
しばし覗いた赤い赤い情熱の埋もれ火を、また私は深くうずめた。
次のお題「熱湯」「遺伝子」「ハイキング」
526:「バラ」「お茶」「電話」
09/12/12 16:29:39
《もう一本書かせて頂きます。お眼汚ししてすみません。》
「Communication request. Here Charlie,O.V.E.」
「Here U.H.V. YAMATO communication permitted. 」
「Arrived spot area.」
俺は機体のノーズを下げ、低速で舐めるように洋上を進行している。
吹き付けるジェットに、浮力のある黄色い緩衝材の貼りついたジュ
ラルミンの断片が浮きつ沈みつ、ゆったりと回転しながら漂った。
空中空母、天鶴の残骸らしい破片は、海域を40km以上に渡って
散乱していた。生存者の存在を示す着色剤の痕跡も洋上に観測
できない。残骸はバラバラの状態だった。搭載していた8機のF-8
「隼」の機体もみえない。大和の青島飛行隊長から秘話電話が入る。
『やはり、<引き伸ばされたような痕跡>か?』
「そうです。被撃墜、もしくは事故というには範囲が広すぎます」
『そうか、ご苦労、帰ってお茶でも飲んでくれ』
―――――お茶――――――
…………これも、『Turnaround Expatriate Aggressive』
(攻撃的変成異世界来訪者)の仕業ということか……
俺はスティックをゆっくりと倒した。恐怖がじわじわと飛行服の背中を
なでまわす。 T.E.A. の正体は、今のところ人類の誰も知らない。
先月、米海軍の大型空母K.O.B.54が沈められ、中国海軍の海底空母、
濤馗も何者かに襲われた。それはまるで瞬間的に引き裂かれるよう
だったと言う。この海の中に、おそろしい敵が眠っている。「彼ら」の
目的は、わからない。
俺はF-8sv海隼偵の可変ノズルを引き上げ、超音速飛行に切りかえた。
―そしてそれが、自衛隊旗艦・UTシステム搭載超大型護衛艦大和と、
異次元からの侵略者との壮絶な戦いの序章だった。
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527:名無し物書き@推敲中?
09/12/13 14:02:51
「大腸の入り口に大きなポリープがありますね、癌にこれはなりっかっています。癌でしょう。よかったです。検査を受けて。」
極めて明るく平然と言い放つお医者さん。凍りつく自分を物ともしない。驚きより宙を彷徨うごとき己に頓着せず嬉々たる笑みすら
浮かべ、とくとくとエコーの画像解説に余念が無い。エコー検査真っ只中のあられもない恰好のまま、顔だけ巡らし懸命に見入る。
ま、まあそういうこともあるだろう。帰りの会計、え、え、2万4千円。そんなかかるつもりなかった。た、足りない。銀行のキャッシュカードの
機械があった。暗証番号が押せない。反応してくれない。ぶれる。焦る。
「あのさあ、自業自得だよね。言わせて貰えば、厚子さん。」
「そうそう、ワンパターンのネタ。文才の無さ。お粗末極まる文章といえるか疑わしいレベルの低さ。付け加える処に推敲ゼロ。」
「酒の飲みすぎ。パートを辞め、執筆小説すべて落選。それからだんだん言動もおかしくなった。」
ここは厚子さんの家の台所。冷蔵庫の食材、調理器具が織りなすは時ならぬ家の住人が寝静まった真夜中のハイキング、園遊会。
「皆さん、聞いてください。」ザワザワ噂話ガピタリと止む。「何、そういうあなたはお豆腐さん。」
「そうです。何を隠そう、我こそ遺伝子組み換え交配豆腐。ジャジャーン、ここに登場。
「大変な事態です。こういう時こそ一致団結。事態を打開しましょう。」どう、打開をする。質問が集中。
「さあ、汽笛の合図、ヤカンさん、熱湯の湯気を一発お願いします。」
ププ、ポンポン、綿雲、羊雲、シュークリーム雲。ラララ、片付け、お掃除、大掃除。まったくやらない
厚子さんに代わって冷蔵庫、電子レンジ、ガス台の汚れ落し、換気扇の油落し、要らない野菜屑はゴミ箱の中へ。
私達、キッチン家族、仲間一同、気合を入れて頑張りましょう。お鍋、グラスは磨いて、茶碗の茶渋はハイター。水周りも抜かりなくハイタを撒いて!
夜の魔法、夜中の魔法、キッチンに降り敷く魔法の星屑、魔法のミルキーウェイ。
それをこの家の一人娘が目をまん丸に見ている事を誰も気が付かなかった。
528:名無し物書き@推敲中?
09/12/13 14:07:46
お題「魔法」「ブロッコリー」「クリスマス」
529:「魔法」「ブロッコリー」「クリスマス」
09/12/13 19:13:03
「野菜もうちで作れればいいね」
たっこは、前から言っていたが、近くの園芸店で、ブロッコリーの鉢を、
買ってきた。プランターに植え替えて、ベランダに置いた。
「スーパーで買ってきたほうが手軽じゃない?」僕が言うと、
「気分の問題」と、たっこは言った。植物を育てるのは、確かにひと財産、
家に導入したという気分になる。
プランターの向きを前後入れ替えたり、水をやったりするくらいだが、
丸いブロッコリーの花つぼみがだんだん成長してくると、それは可愛らしく、
動物の仔の頭のようにふくらんできて、なんとなく食べてしまうのは惜しくなった。
「食べよっか?」たっこは吹っ切るように言った。三ヶ月も育てていれば情が、
わくというものだが、たっこは、そういう点ではある意味、真摯である。
クリスマスイブ、僕が会社から帰ってくるのを待って、たっこはブロッコリー
を茹ではじめた。皿を電子レンジで暖め、それに盛り付けたブロッコリー
は、美味しそうで、クリスマス・ケーキの存在が、ちょっとかすむくらいだった。
楽しい思い出だ。
たっことは、最後までこじれた感じにはならなかった。別れた理由も、その
必然も、僕も、たっこも結局、分からないんじゃないかと思う。
「また、一緒に暮らそうと思ったら、三回だけベルを鳴らして」
僕はベランダに出た。一株だけ残したブロッコリーに、小さな黄色い花が
咲いている。その、つぶつぶとした花の集合体は、何かを誘いかけている
ような気がした。
僕は携帯電話のアドレスを見る。それは多分一度だけ有効な魔法。
魔法の番号。たっこの携帯電話番号。
次のお題。「夕日」「ホームセンター」「泣きやむ(泣きやんだ)(泣きやんで)…」
530:夕日 ホームセンター 泣きやんだ
09/12/13 22:57:28
空は泣きやんだ後の目の色をした夕日である。
午後から降り続いた雨は、買い物の合間に
すっかり止んでいた。買い揃えた一人暮らし分の
日用品は非常に軽くて、何もホームセンターでなくても
揃いそうな品ばかりである。
本当は傘を買いたかったのだが、ここに来るまでさして来た
傘に、実家の香りが染み付いている気がして、急に愛しく
なったのだ。
夕日の下、傘を広げると小さな穴が無数に見えた。そろそろ
代え時なのだが、せめて一人暮らしに慣れるまでもう少し、と、
私は周囲の目を気にせず傘をさして歩き続けた。
「オッドアイ」 「画家」 「未亡人」
531:「オッドアイ」「画家」「未亡人」
09/12/14 06:57:03
画家は夕刻前に館に到着した。門番は言い付かられていたらしく、
画家の粗末な馬車を敷地内に入れる事を許可した。広い前庭の石畳
の道を母屋へと進む。荘厳な二階建ての建物の白い壁を、曇天を
透過した夕日のほのかな光が浮き立たせていた。
画材と持ち運ぶには少々重量があるイーゼルを馬車から降ろす。
下女が画家を邸内に案内する。窓は締め切られ、そこここに蝋燭
のペンダントがゆらめいている。邸の外部は石組みにモルタルで
形成されているが、内部は渋く沈んだ木製の壁板と調度で誂えら
れている。長椅子に座りしばし待った。
扉が開き、下女を従えて今回の依頼主が部屋にゆっくりと歩みこんで
来た。古い、フレームの入ったスカートを履いている。この屋の主人だ。
また彼女の衣服も、濃い茶色の色彩で統一されており、所々にビーズ
やレース使いはしているが、重々しい、時代がかった扮装に見える。
「いらしてくれて感謝します」彼女は低く、老人特有のかすれた声で
言った。「いえ、お呼びくださったことを感謝します」
茶を飲み、時候の話をすこしして、主人の未亡人は私を地下のアトリエ
に案内した。そこは広い板の間部屋で、この館が歴史が古く、また贅沢
な構造である事を示していた。「ご依頼があります」未亡人は下女を
全員部屋から出した後で言った。「私の、一番可愛らしかった頃を、
描いてください」
画家は、左目の眼帯を外した。青い右目の虹彩と反して、隠された
左目は透き通るような紅い虹彩をしている。幼い頃、馬から落ちて、
怪我をしてから、画家の瞳は、オッドアイになった。それから、地を
さまよう亡霊や、未来の映像が左目に映し出されるようになった。
何度も恐れ、逃げ続けた未知の能力が、今は画家の生業を助ける。
未亡人は、椅子に座り、画家の指示でポーズを細かく修正した。
赤い瞳で、その姿は、未亡人の、老婆は、十四歳の彼女の姿へと
急速に変貌した。
次のお題「保存液」「自転車」「かごめかごめ」
532:名無し物書き@推敲中?
09/12/18 03:58:04
保存液 かごめかごめ 自転車
保存液から眼球を取り出しゆっくり、慎重に右の穴に埋め込む。一度強く目を閉じ、それから徐々に瞼を開いていく。何回かまばたきをし、鏡を見ながら位置を確かめる。
君と右眼を失ってからどれくらい経つだろう。今でもまだ残された左眼は君の夢を見る。君は近いようで遠い、あの時の淡い青のワンピースのままで………。
距離感が掴めないのは片方になった眼のせいだけじゃない。出会った頃からそうだった。捉えどころのない、ピントがずれた世界に生きる君。
触れたくても、触れられない。チェーンの外れた自転車を漕ぐみたいに近づく事が出来ない。むしろどんどん遠ざかっていく。そして最後まで触れる事は出来なかった。
優しい風に呼ばれ窓に目をやる。カーテンが揺れている。君のいた窓辺。君のいたキッチン。ソファー、庭。全てにまだ君の温もりが残っている。まるでついさっきまでそこにいたように。君の香りが。君の気配が………。だから僕は君を探す。
顔の無いかごめかごめ。鬼のいない鬼ごっこ。鬼だけの隠れん坊………。君はもういない、だけど僕は探し続ける。片方の眼を頼りに。僕はさまよい続ける。片方の眼だけで。
次題 囁き 火傷 侮辱
533:囁き 火傷 侮辱
09/12/19 20:29:44
土壁の部屋で俺は目が覚めた。古い畳は、薄い布団から身を起こした
ときに、みしっと僅かな音を立てた。
中庭に向かう俺の寝かされていた二階の障子は開け放たれており、
この家の子供か、女の子が庭の水道で遊んでいた。
ああ……あの囁きを思い出した。「あなたは帰ることが、もうできないの」
そうか、俺はランニング・シャツの二の腕に、ある筈の酷く引き攣れた
火傷の痕を観た。古い傷だ。
……その傷痕は既に無く、やや日に焼けた清浄な腕があった。そうか……
帰れない、帰れない。俺は、水中に転落して、ドアが開かなくなった車中の、
最後の記憶を思い出した。
記憶はまだ残っている。いつまでもつかは判らない。俺の人生を、あるいは
清めた気分だろうが、神様、これはちょっとした侮辱だ。
次のお題「悪夢」「片方」「テロップ」
534:悪夢、片方、テロップ
09/12/19 22:10:38
目を閉じれば浮かぶ言葉たちが、テロップのように頭の中を流れる。
それらは一文字一文字が鮮やかな色彩を持って美しく、
このまま眠りについた先が永遠の悪夢でも構わないと思った。
たくさんの選択肢をたどって、ついにたどりついた二択。
残されたもう片方の選択肢はまた誰かの人生に入り込んで
選ばれていくのだろう。
頭に流れる文字達はやがて透明になり、かすれて行った。
そんな形にも音にも残らぬ遺書が、綺麗に僕を堕とした。
「パンツ」 「あぐら」 「休日」
535:パンツあぐら休日
09/12/21 00:12:21
千代子はパンツ姿のまま洗面台に向かう。化粧を落としているらしい。また、
妙な店で働いてきたのか。そういえば、昨晩は帰ってくるのが随分と遅かった。
僕はあぐらをかき、テレビをつけた。しかし、画面に集中できずに首を振る。
久しぶりに見た千代子の裸体が、頭の中に張り付いていた。
「千代子、昨日はどこへ行っていたんだ」
「んー?」
やる気のない声だけが返ってきた。質問への答えはない。代わりに、水のは
ねる音がした。
「久しぶりの休日だ、って昨日言っていたじゃないか」
「ごめんごめん」
笑い声交じりの千代子の声に、僕は微かな苛立ちを覚えた。もともと、あの
店で働くことを僕はよく思っていない。千代子はまだ若いのだ。いや、幼いと
もいえる。金がないのであれば、僕が渡してやるというのに、千代子はかたく
なに拒んだ。
気にならないわけではない。だけど僕は不満を喉の奥に押し込め、それ以上
は何も言わなかった。互いのことには深く干渉しない。それが、僕たちが同居
する際に作った最初のルールだったからだ。
次「娘」「蜘蛛」「独り言」
536:娘、蜘蛛、独り言
09/12/22 17:50:55
「あの子、さっきから独り言ばかりしゃべってる」
そう母に言われたのは、夕食後の団欒時だった。
団欒時といっても、父と母、そして僕の三人だけで
過ごす時間であり、母のいう「あの子」は部屋の隅で
壁に向かい膝を抱いていた。
あの子は父の妹の娘である。事情があって我が家に
同居しているが、ちっとも僕ら家族に懐かない。
父も母も同居始めはとても気に掛けていたが、最近は
勝手にしろと言わんばかりに、関わりを持とうとしない。
僕はそんな彼女をちょっと憐れんで、話し掛けるように
している。今日も壁に向かっているあの子に近寄ると
同じように膝を抱いて座った。彼女は壁の隅に巣を張った
小さな蜘蛛を見つめていた。「何してるの?」と問うと、
彼女は「ママと話をしてるの」と言った。そして言ったと
同時に、小さな指を伸ばすと蜘蛛を摘み殺してしまった。
僕はただ彼女の指先を凝視した。指先にはタバコを押しつけ
られた火傷の跡がある。
「夜の蜘蛛は、親だと思って殺さないといけないの」
彼女が指先を擦った時、僕はそこから視線を逸らした。
彼女の母の死因は未だ不明だが、僕はさきほどの
幼い指先に、確かな殺意を見た。
「足音」「笑う」「早朝」
537:名無し物書き@推敲中?
09/12/22 23:39:45
早朝 足音 笑う
早朝のホーム。酔っ払い達が夢の後。青白い馬の蹄の音。迷子達の足音。僕はじっと線路を見下ろし、その鉄の冷たさを想像していた。
何故この場所を選ぶのだろう。死んだ事がないし死んだ者から聞いた訳ではないが、結構な痛みを味わいそうだし、電車が止まるとことで沢山の人が迷惑する。
迷惑をかけたいのさ。そうだろうか?そうだよ。迷惑をかけることで怒りであれ、憐れみであれ大勢の人々の関心が自分に集まる。
今までになかったほどの関心が。それがたとえほんの一時でも。死を選ぶやつの理由なんて大体そんなところさ。そう言って彼は自嘲気味に笑う
そんなものなのかなあ、僕は線路に散らばった僕の欠片を想像した。パーツの配分は滅茶苦茶でお世辞にも美しいとは言えない。でもどれも愛おしい僕。
何かを掴もうと開かれた手首。片方だけ立った足。その全ての部位の一方に柘榴の輝き。その全てが一つだった跡。僕は彼らを思い泣いてしまった。
けたたましいベルとともに日常が始まりだした。僕は慌ててホームに背を向け、おぼつかない足取りで亡者の群れに紛れた。溺れそうになりながら階段を上りようやく地上に出る。だけどやはり気圧が変わっただけで。息苦しさは消えなかった。
次題 人魚 シアン 竪琴
538:人魚 シアン 竪琴
09/12/23 13:15:33
「ラスプーチンって知ってますか」河童は訊いてきた。
「ロマノフ王朝に入り込んだ怪僧」
「彼は、陰謀でシアン化合物入りの菓子を食わされたけど、死なず、銃殺された」
「……河に投げ入れられたあと、十字を切っていた」
「あなた、お詳しいですね。素人とは思えない」俺はやれやれ、と思った。
「何回言えば分かる?俺は奇現象研究家だ」
「だから……ここにいるの!何度説明させるの?」俺の語尾は欽ちゃんっぽくなった。
河童はしばらく黙っていた、「……だから、あなたの尻小玉をいわば罠の餌として……」
そうだ。だからこの人里離れた河畔にいるわけだ。
「あなた、前提が間違っている。河童が尻小玉を抜くというのは俗説。溺れた人の肛門が開くのは、
体内の常在菌の活動が、停止した生命活動で活発になり、腹圧の限界を超えてガスが体外に出る事と、
肛門括約筋は、随意・不随意の支配下にありますから、死ぬと緩むんです」
俺は、尻小玉の存在そのものを……「で、わたし、河童じゃなくて人魚です」
ええ?じゃそのクチバシとか背中の甲羅とか、頭の皿は?
「ああ、これは、クチバシは呼吸用と、海中は異波長ですから変換器。甲羅は浮力体。頭の皿は塩分補給用の
行動食の電解質滴下用具です」「脚二本あるじゃねえか!」
「海でのあれは、70年代風に言うとアタッチメントです。海中を100ノットで泳ぐメカというか」
彼女は、そう言って扮装を解いた。なまめかしく意図せずして手を伸ばすことを誘うようなくびれた裸体が
硬質であり、また暖かく包み込む白い曲線を月光にひいた。
髪に、唇に甘い香りがする。彼女は自ら俺の手を秘所におずおずと導いた。俺は、彼女の潤った身体を、
幾度となく潜り、締め上げ、深く漂った。彼女は、しばらく耐えたあと深く咥え込み、不規則に痙攣した。
「ああ、いい月だ、君が人魚なら、竪琴を弾いてくれないか?」
彼女は、また驚いたような丸いまなこを開いた。
「誤解です。竪琴というのは一種の美化で、本来は『堅事』と言うのが正しい。我々種族が、
『どうでもいいことをさも重要であるように、かたっくるしく薀蓄たれる事』の意味です」
「じゃ、あなたとわたしの子供が生まれたら、連れてきます。教育は陸上の方が選択の幅があるから」
彼女はそう言うと、俺の意見も聞かずにとっとと海に帰っていった。
539:名無し物書き@推敲中?
09/12/23 13:16:27
次のお題「食玩」「デート」「ドリフト」
540:食玩 デート ドリフト
09/12/26 14:54:42
もう夜半すぎのことだった。とある山の林道沿いに車をとめて僕たちは肩を寄せ合っていた。そこ
はちょうど山間部から街を見下ろせる場所で夜景がきれいだったし、人通りもなかった。僕たちは
そこでよくデートをした。僕は彼女のウェーブのかかった髪に指を絡ませて首筋を眺めていた。視
線を上に向けると街の灯りが彼女の瞳に映ってきれいだった。彼女はずっとフロントガラス越しに
街を見ていた。
「さっきから下のほうで光が動いているわ」
光の帯が時おり真黒な山肌からレーザー光線のようにとび出たりしていたのだった。
「あれはドリフト族っていって峠を車で徘徊してる奴らのライトだよ」
彼女はそう聞くとじっと僕を見詰めたまま僕の方に頭を預け冷たい手を僕のズボンのポケットに
突っ込んできた。彼女はいつもそうすることが好きだった。
「世の中にはいろんな人がいるのね。なんだか不思議な気分になっちゃう」
僕の首筋にかかる彼女の息は熱かった。きっと僕と求めていることは同じだろうと思った。僕が
彼女の唇に近づいた時に彼女は僕のポケットからゴソゴソと何かを取りだした。
「これ何?」
それは確か昼飯の時に買ったお茶についてきたおまけだった。僕がその食玩について説明しよ
うとする前に彼女から切り出した。
「これって、いやらしい玩具じゃない?」
「お茶のおまけだったんだ。ただポケットに突っ込んどいただけだよ」
彼女はもう僕からカラダをはなしていた。
「ねえ、K子。たしかにそれはいやらしいことにも使える。でも世の中は不景気なんだ。売上を上
げるためにどこの企業も躍起になってる。ルールがありそうで生きるためなら何でもありともあ
る意味言えるんだ。おもちゃのマッサージ器と書いてあるけど、もちろん君の言ったように別の
使い方もある。それを目的でお茶を買っちゃう人もいるんだよ。悲しいけどこれが現実なんだ」
「あなたは何の目的でお茶を買ったの?」
「ただそのお茶をいつも飲んでるからだよ。それだけの理由さ」
僕は彼女のカラダを引き寄せようとした。彼女は僕を見つめたまま言った。
「世の中が狂っているのか、私が狂っているのか、ほんとうにわからなくって」
僕が彼女を抱き寄せると、彼女の言葉が僕にも感染した気がした。
「暇つぶし」「国債」「銃弾」
541:暇つぶし、国債、銃弾
09/12/28 22:11:46
まいってしまった。さて、どうしよう。
部屋が汚いことも、それを今日片付けようと
思っていたことも、今はどうでもいい。
真昼のニュースは、どこぞの国のお偉いさんが
銃弾に倒れたと緊急放送ばかりしている。
どのチャンネルにまわしても、きっと同じだから、
テレビももう気にしない。
暇つぶしに小説を書こうと思ったけれど、
さて、国債をどう使って書いたらいいものか。
「眼差し」 「無言」 「親子」
542:「眼差し」 「無言」 「親子」
09/12/29 20:20:45
YOYOYO!
年末の忙しい中、ライブに来てくれてどうもありがとおお!
浅草出身の俺が言うのも何だけどサンキュー・ジャパン!
(歓声がワーーーー)
ああ、凄い眩しいぜ!
親子で来てくれたファンの方の笑顔、最前列に座っている君の眼差し、無言でリズム取ってる玄人さん!
カップルもお一人様も、みんなみんな、愛してるぜ~~~~~~~えいえいえいええええ~~。
(歓声がワーーーー)
今年も後少しだね………………最後に一言、言わせてください…………
本当に大事なものはお金なんかじゃない。。。
「FX」「奇麗事」「便座カバー」
543:1/2
10/01/04 18:12:44
「どうして? あと3歩前に進むだけでしょう。その程度のこと、出来ないなんて言わせないわよ?」
背後から厭らしい女の声が纏わり付いてくる。
振り向き、直ぐにでも殴りつけたいのだが、拳を作り空気を握り潰すことで耐える。
そりゃあ、俺だって大人だ。赤子じゃあないんだから歩くぐらいなんでもない。三歩先に地面があるのならば。
ここのところの不況を相手にFXで勝負を仕掛け、惨敗。
今の俺の存在価値は借金返済の道具としてのみだ。否定できない。
「何も言い残すことなんてないでしょう? 早く歩きなさいよ」
「うるせえ。そりゃあ俺は借金抱えているよ。けど、たったそれだけでお前ら闇金ってのは人権すら奪うのか? 体に血すら通っていねえのかよ」
「甘いこと言い放つのは構わないけれどねえ。君がお金を返せないからこうなっているのよ。いい? お金はね、命よりも重いの。どうやっても払えないのなら、命を使うしかないでしょう?」
明らかにおかしな事を口にしているのに、女の口調はまるで変わらない。振り返っていないが、きっと薄ら笑いでも浮かべているんだろう。
女の絶対的な自信から来ている高慢な口調。どうせ、後ろにはゴツいボディーガードも居るんだろうさ。
刃向かえない悔しさ。諦めが俺を包む。
544:2/2
10/01/04 18:13:25
どーでもいいや。
俺を包んだ生暖かい感情は、FXだとか2chだとか、そういった下らない遊びに手を出す前の、人と談笑していたときの感情に―雰囲気だけだが―なんとなく似ている。
ちくしょう。せめて人の温かさに触れながら、死にたかったな。
こんな下らない女に嘲笑われながら自殺なんて、まっぴらだ。どうせ、今も女は俺が死の恐怖におびえているだろうと高を括ってる。
違うな。もう、死んでいい。金と嘘だけの社会で、老いるまで働いて死ぬなんてまっぴらだ。
けれど、どうせ逃げられないなら、せめて女の記憶に俺の存在を焼き付けてやりたい。
「―金は命より重い? どうやったらこんな勘違い女が生まれるのやら。人間に一番大事なのは、理論では割り切れない、言葉では説明がつかない、そんな暖かさなんだよ。理解しろ」
「強がりねえ。FXになんて手を出したアンタが言うことじゃあないでしょうに」
「ああ。パソコンと一日中見つめ合っていた俺はすっかり忘れていたよ。けど、ようやく思い出したんだ。折角だから、死ぬ前にお前さんに教えてやろうと思ってな」
人の温かさかあ。我ながらそんなものとは無縁の生活をしてきた。人を騙す、人が傷ついているのを楽しむ。よくよく考えてみると、あの頃の俺は死んでたぜ。
……そうだな。今までも死んでいたんだ。もう一回死んだって何だ。
「お前さんの声はムカつく。勿論俺は負債者だから偉そうなことは言えないけどよ、忠告する。その思考は変えないと、後悔するぜ。
……じゃあな」
俺に向かってくるコンクリートは、異様なほど無機質だった。
叩きつけられる直前。最後に感じた暖かさが便座カバーを通じた電気の暖かさだったと思い出しちまったのは一生の汚点だ。
……自分の詭弁に影響を受けるなんてな。
次「放課後」「教室」「雨」
545:名無し物書き@推敲中?
10/01/04 18:15:08
すまん、書くのに夢中でお題の言葉勘違いしてたorz
甘いこと→奇麗事に脳内変換してくれ。。。
546:「放課後」「教室」「雨」
10/01/04 19:03:58
放課後、私たち四人は高校の教室で怪談話をしていた。
六月の曇りの日で、なんだかじめじめした感じが雰囲気を出していた。
そして、それは三人目の康子ちゃんが、物語のオチを語ろうとしたとき。
「でね、教室に残ったA子さんが、ふと顔を上げたら、なんと……ぁ(ザアァァァ)!!」
……雨音だった。前触れもなく降り出した大雨が激しく窓を叩き、その騒音で話のオチが
掻き消されてしまった。窓を見て、いま流行りのゲリラ豪雨というやつか、と思った。
康子ちゃんは気抜けした様子で笑ってから、「帰ろっか」と言った。
「え、オチは?」と聞くと「ああ、結局は何にもいなかったっていう拍子抜け系」と答え、
私たちは「なーんだ」と、肩すかしを食わされた気分だった。
私たちが階段を下り、折りたたみ傘を手に昇降口を出ると、もう雨は降っていなかった。
ああ良かった、早く帰ろっか、としゃべりながら歩き出して、そこで私は気づいた。
地面が濡れていない。あんなに降ったのに、不思議だ。そう思って隣にいた康子ちゃんに、
「ねえ、地面が濡れて無くない?」と尋ねたら、彼女は青い顔をして、
「うん、そのこと、他のみんなが気づかない内は、黙ってて」と言ってきた。
そのただならぬ様子に思わず「うん」と頷いてから、よくよく考えると、康子ちゃんは
わざわざ「何もなかった」なんてオチの怪談話をするような人じゃないことに気がついた。
あのとき、雨が降っていなかったとしたら、あの窓を叩いた水はなんだったんだろう。
それを見て彼女が咄嗟に隠した、あの話のオチはなんだったのだろうか。
次は「正月」「事故」「幸運」で
547:「正月」「事故」「幸運」
10/01/04 19:33:03
「路面凍結による事故が多発しており」
アナウンサーがそこまで言った時、リモコンを押してチャンネルを変えた。
どんなニュースも康子の謎かけ以上の興味を惹かなかったのだ。
私は正月三が日、ずっと本当のオチを考えていた。
けれど良い答えは思い浮かばず、非現実的な、オカルトな想像までしてしまった。
たとえば康子が何らかの能力を持っているとか、そんな類の。
年が明けて、私はもう一度怪談をしようと提案した。
前と同じ場所、前と同じ時間、前と同じ四人で。
「あの雨の話、もう一度聞きたい」と私が言うと、
そう来たかというふうに康子は一瞬口元をニヤリとして、
それは康子に意識を集中していないと気づかないような
そんな一瞬だったけれど、とにかく康子はもう一度話してくれた。
私がビデオカメラを野外に向けて録画しているとも知らずに。
ビデオには全てが映っていた。窓に水のかかる様子まで、しっかりと。
ふふふ、と私は思わず微笑んだ。そう、そういうことだったのね。
─他のみんなが気づかない内は、黙ってて。
どうして康子がそんなことを言ったのか分かった。
ヒントは「康」の字……。あの雨、水は、私にだけ見えたのだ。
幸運、だったのだろうか? ふとそう思った。
見えたことではなくて、見える仲間が見つかったことが。
わからないけど、私は悪い気はしてないから、康子もそうだといいな。
「大発会」「矢」「頭」
548:「大発会」「矢」「頭」
10/01/05 04:15:23
千枝子は破魔矢を持って遊びに来た。下の姪である。
今年は彼女の就職活動が始まる。デリケートな話題なので、それ
には距離をおきつつ話をした。
格差社会と世間ではかまびすしいが、何処に勤めたから安心とも
言えない。彼女はキャリア・ウーマンを目指しているようなことを、
ちらっと言った。なれればなれたで万々歳だが、受験戦争の勝利者
という経過だけで万能感に浸るのはちょっと危険だ。それは、僕
自身がそうだったからで、比較的、堅い職場ほど、褒美は貰えず、
若い時は小突き回される傾向がある。
今年の大発会は、株価上昇で終わった、とか千枝子は最初に言った。
僕は、競馬新聞を手の中で折りなおした。赤鉛筆を架けた耳の中に、
イヤホンが入っている。それは机の下に置いたラジオに繋がっている。
「ねえ……私、ここに来るとほっとする」千枝子が小さな声で言った。
「そうか?」僕は耳から入ってくる音声に、集中しながら上の空の返事
をした。「叔父さん……ここって、幾ら位、儲かるの?」端的に聞いたな、
と思う。「……日に三千円位かな、利益は」千枝子は、身を起こし、僅か
に眉をひそめたように観えた。
「叔父さん……なんでキャリア辞めちゃったの?」
なるほど、それは気になるよね。「まあ、面白くなかっただけ、かな」
ふうん……と千枝子は店内の中古漫画単行本のラックを軽く頭を
廻らして観た。「でも、一等地なんだから、この際、商売替えとか」
僕は軽く息を吹いて笑った。「僕は漫画屋の親父が、子供の頃からの
夢だったんだよ」千枝子は、やはりちょっと不満げだ。
「子供の夢を僕は生きている。それで、満足なんだ」通信が入る。
『官邸から首相が出ました。付近の不審電波傍受を開始してください』
僕は解析用の「割れた」暗号の固有番号をラップトップ・コンピューター
に打ち込んで行く。「あ、叔父さんタッチ・タイピングできるんだ」「馬鹿に
するなよ、元国家公務員だ」ふふ、と千枝子は笑う。ただのログイン用
パスワードにしか観えないだろう。漫画がひしめく棚の裏、壁の向こう
で、決して誰にも知られることはない、大型のコンピューターと通信機が、
ビルの谷間に、ゆっくりと排熱しはじめた。
次のお題「入院」「駆け足」「美少女」
549:「入院」「駆け足」「美少女」
10/01/06 20:31:36
入院、ってのはちょっと微妙だな。
まぁ、アイツが眠っている場所は確かに病院だし、
病院になる前は施設だったけど、
別に病気ってわけじゃねぇしな。
最後に別れたのは、いや、「会った」のは、河原だった。
後悔したんだぜ。
おでこじゃなくて、唇にキスしとけばよかったって。
おまえは、覚えてないかもしんねぇけどさ。
再会のひとこと、何にしよう。
やっぱ、あの絵を見れたこと、か。
それとも、どんな美少女だろうと目もくれなかったことか。
……恥じぃ、事実だけど、そんなこと絶対に言えねぇ。
まぁ、会ってから考えりゃいいか。
あと三日でアイツは目覚める。
駆け足で、自分の足で、全力で走っていくぜ。
タイムリープなんかもう必要ねぇからな。
「蟹」「蝸牛」「猿」