09/10/25 17:06:03
お題がかぶったら先に出されたのを優先だよ。
>>1のお約束を読んでから楽しく参加してね。
451:名無し物書き@推敲中?
09/10/25 18:13:51
「ガムテープ」「百科事典」「完全犯罪」
ろくに抵抗の手段も思いつかないまま、三人揃ってガムテープで両手首と両足首とをぐるぐる巻きに
され床に転がされた。情けないもんでたったこれだけのことで、簡単に身体の自由など奪われてしまう。
「ひゃあはははっ、いい格好じゃねえか。なあ小泉、清水、石塚よおっ」
馬鹿だこいつ。優位に立ったおかげで完全に自分に酔って精神イッちまってる。もっともそんな奴を前に
ただ黙って転がってるしかない俺らも俺らだが。
「今までの恨みも合わせて、俺様の気が済むまでいたぶってやるぜえ。けけけ。どうしたよ、お前ら。
いつものように俺様に向かって何か威勢のいいことを言ってみなよ。猫の手はいらないとか、カメラ屋の
裏の井戸には精霊が出るとかよお」
つくづく馬鹿。最初に口をガムテで塞ぎやがったのはお前だろうが。まあ分かった上でいたぶってるつもりで
いるなら、とりあえずは好きなようにさせとくしかないんだが。
「その後は裏の採石場の穴にでも放り込んでやるぜっ。上からユンボで石投げ入れておけば、死体は永遠に
見つかりっこねえ。完全犯罪の成立ってわけだ。へぇへへへ、俺様賢い。俺様最高っ。俺様まんせー」
ひとしきり騒いでから、その場にしゃがんで俺の顔をのぞき込んでくる。臭い息が顔じゅうにかかって俺は
顔をしかめた。
……こいつってたぶん、死ぬまで童貞のままなんだろうな。
「で、例の百科事典はどこにやったんだ。石塚クン。どうせ言っても言わなくても許してやる気なんざ
さらさらねえけどな。どうせなら言ってから死んだ方が気分いいだろ」
アホか。どのみち殺されるとわかってて、隠し場所をわざわざ教えてやる馬鹿がどこにいる。
次のお題:「聴診器」「帯」「リモコン」
452:名無し物書き@推敲中?
09/10/25 20:55:42
何が気に食わないのかはわかりませんが荒らさないでくださいよ。
453:名無し物書き@推敲中?
09/10/26 21:58:35
聴診器 帯 リモコン
遠くに聴こえる学生達の声。保健室で彼女と二人きりになった僕にはもう非常ベルの音は聞こえなかった。
彼女は聴診器を当てるように僕の胸に手を当てた。
「聴こえる……」
彼女の言葉は空気の振動ではなく、彼女の脳から直接僕の脳に響いていた。そして彼女の香水の匂いは僕を粒子にし、そのたびに僕は宇宙を周回してはここに戻って来てを繰り返していた。
「私のも聴いて……」
予想していたにも関わらず僕は酷く動揺した。けど、拒むことも出来なかった。ゆっくり手を伸ばすと、彼女はその手を取り無駄を省いた。だから僕は言い訳をする必要がなくなった。
制服越しの彼女の胸は色んなものを取っ払って、僕を純化していった。彼女の左手が僕の腿に触れたとき僕のリモコンは奪われ彼女のものになった。
もともと緩んでいた心の帯が急速に解けていく。二人の吐く息と熱が空間を作っていった。カーテン越しの十月の太陽の光も、非常ベルも消毒液の匂いも、もう特別な意味を持たない。
次題 宗教 統一 集合体
454:名無し物書き@推敲中?
09/10/27 02:51:22
【宗教】【 統一】【 集合体 】
「木村君、ちょっと来てくれないか」
部長に呼ばれた。間違いようも無く例の商品の件だ。
「営業の報告は、君も耳にはしていると思う」「はい……」床の大理石材が、冷え冷えと感じた。
「やっぱりね。消費者はあのフレーバーは受け入れ難いようだ。手直しと言う事になると思う」
私は黙っていた。
「ブランドの旧来の加糖商品系列との統一をしたい意向は、上層部もあった。いわばそれを
テコに力押しで押し切る目論見だった」
私は、今回初めて主管に立った。女性と言う事もあり、気負いが無かったかというと、自信は
無い。
「ドリンクの味と言うのは簡単には変えられない。客は、旧来の商品に愛着もある」
人口甘味料の甘みは、糖とは異なる。普通、複数種の甘味料を使うのは、人口甘味独特の
後味をマスキングするためだ。
「まあ、ドリンクの味には各社独特の戦略がある。宗教戦争と喩える人間も居る。
客が望んだ味覚なら売れるが、そうでない場合は抵抗を受ける」
今回、マスキングとあわせて、フレーバーの積極的使用を提言せざるを得なかった。社の
意向としては、加糖飲料との印象的な差を縮めるというのが、命題だった。
フレーバーも結果的に後味のマスキングに使われる。
「どうするかだな……」と、部長は老眼鏡を拭きながら言った。
私はスーパー等への強力なプッシュを思い出した。敗北という気持ちが、現実の出荷ケース
の減少から、押し寄せてくる。
試作現場の研究所には何度も足を運んだ。
節目には必ず私はティスティングした。正直に言えば、商品のアピールと言う課題の上で、
狭い研究所の中で、フレーバーの増量に鈍磨していった可能性は否定できない。
私は、主管を降りることになった。企業は各部署が連携を持つ集合体である。
私は、勢い込んでいなかったか、もっとリサーチを重んじるべきではなかったか。
久しぶりに早く家に帰る。息子が飛びついてくる。
「……どうしたの?なにかあったの?」子供は敏感だ。抱きしめる。
玄関の先のリビングには、不評だったドリンクが冷蔵庫に入っている。
「……ただいま」私は、その私の戦友にも、万感を込めて帰宅を報告した。
次の御題【迎撃】【梅干】【毛ばたき】
455:名無し物書き@推敲中?
09/10/27 17:44:13
「迎撃」「梅干」「毛ばたき」
「逃げよう」
絞り出すような声で長妻が言う。
「逃げる? 何を言うか、貴様っ、我々ポッポ軍はいつ、いかなる敵に対しても、決してひるむ
ことなく立ち向かってゆくのがモットーである、敵前逃亡などという軟弱な真似は許されんっ」
周囲を意識しているときの癖で、ことさらに大時代な口調になった亀井が吠える。
「逃げよう、逃げるんだ、とりあえず、しばらく逃げ回っていれば奴らだってあきらめてくれる」
「寝言を言うなっ! 何を軟弱なことを、たかが数万の敵くらいこのわしひとりで迎撃してくれるわっ」
「口先だけで威勢のいいことを言うのはよせ、おれも前にそれでひどい目に遭ったんだ、覚えていないか?」
前原が冷静な口調でたしなめる。
「長妻の言うことにも一理ある、今おれたちがここで踏ん張って抵抗してみたところで、ここにある武器だけ
では奴らには何のダメージも与えることはできん、なでられたほどにも感じないことだろう」
そう言ってデスクの上にあった毛ばたきで、揶揄するように軽く亀井の頭をなでてみせた。
「貴様っ、貴様までわしを愚弄するかっ」
駄目だ、こいつには説得は通じん。そう言いたげな目で前原は藤井と岡田に目配せをした。うなずいてふたりも
立ち上がり、前原の後に続いて部屋を出る。
下の階は大部分の兵たちが逃げ出した後らしく、がらんとして薄暗かった。奥の炊事場にぽつん、と灯りがついて
いるのが見える。
「あんたたち、ここはとりあえず逃げ出すつもりなんでしょ? ちょうど良かったわ。今残っていたお米でご飯を
炊いて、おにぎりをこしらえていたところなの」
三人の姿を見て、景子が明るく笑いかける。
「梅干もあったから入れておいたわ、知ってる? 梅干入りのおにぎりは腐りにくいのよ、殺菌効果があるの、
これ豆知識ね」
おどけた表情に三人も、つられてつい笑ってしまう。
「やだぁ。あたしこんにゃくゼリー嫌い~」
冷蔵庫の中をのぞき込みながら、相変わらず空気の読めないみずほがつぶやく。
「食料品探しもいいけど、あんたもおにぎり手伝いなさいよ。ほら、男どもも」
次:「経済」「桜」「メモリアル」
456:経済、桜、メモリアル
09/10/31 00:39:59
メモリアルと書かれた小さなノートは娘の日記帳だ。
本当はダイアリーなのだが、どこで覚えたのか、メモリアルという
言葉に日記という意味を見出しているらしい。
その小さなノートには、毎日の他愛無いことが元気いっぱいつづられている。
しおりが挟まっているページが一番新しい日記なのだろう、ぱらぱら捲ると、
しおりと呼ぶにはあまりにも粗末な桜の形をした紙切れが滑り落ちた。
昨日書かれたばかりのその日記は、誕生日についてのものだった。
私は娘と二人暮らしの母子家庭で、経済的な余裕が無い。
娘の誕生日も毎年ろくに祝ってやれず、昨日もケーキのような菓子パン一つで
お祝いした。日記にはその菓子パンがとても美味しかったと書かれてある。
そして、私から貰ったしおりが、すぐに日記のページを探せて助かると。
先ほど滑り落ちたしおりを挟むと、私はそのままノートを抱きしめた。
菓子パン一つではあんまりだからと、レシートの裏をピンク色に塗り、桜の形に
切り取ったものをプレゼントしたのだ。娘がいつも日記を書くたびにノートの端を
折っていたので、思いつきで作ったのだが、本当に喜んでくれていたのだと
私はとても嬉しくなった。親子といえど、人の日記を読むのはためらわれるのだが、
娘の本心を知りたくて、私はノートを開いたのだ。昨日の娘の喜んだ様子を少しでも
疑った自分が恥ずかしくなって、私はごめんねと呟きながら、それでも微笑んだ。
お次「憂鬱」 「夜明け」 「気合い」
457:名無し物書き@推敲中?
09/10/31 09:58:05
「憂鬱」 「夜明け」 「気合い」
「気合だ!気合!」
波濤の上で漁労長が叫ぶ。今日は波が高い。
俺は、速度を調整しながら、延縄を引き揚げていた。
昨日五時間かけて仕掛けたマグロ用の延縄である。
ずどん!と中型のマグロが甲板に突入してくる。
仕掛けを切って、頭に棍棒をくらわす。
ギャフで引っ掛け、解体用の包丁で鰓をマグロの
口から掻き出す。保冷庫にギャフで引きずっていって、
そのまま氷の詰まった庫内に落とす。
俺は、憂鬱だった。
なんで今日か、と思った。今日くらいは陸の、
あいつのそばに居たかった。
キャビンの電話が鳴る。船長が拡声器で叫んだ。
「ウマレタ・オトコ・ゲンキ」
俺は、がくがくと膝の力が抜けてしまった。
夜明けの海に、港へと疾走する第12○○丸。
俺は、泣いているのをかくす為、甲板に風に向かって
立ち尽くしていた。
次の御題「キノコ」「スカート」「文庫本」
458:キノコ、スカート、文庫本
09/11/02 22:37:29
おかっぱ頭の彼女はクラスメイトから
キノコとあだ名をつけられて笑われていた。
友達が居ないのか、いつも図書室で本を読んでいる。
僕は暇さえあれば、図書室に通って彼女を盗み見ているが、
周囲から馬鹿にされるほど、彼女が変わった容姿をしているとは
思わない。むしろ、スカートの紺色と対極するようにすらりと伸びた
白い美脚なんか、クラスの女子の誰よりも魅力的に感じる。
一冊の文庫本に触れる愛らしい指先と真摯な眼差し、そして凛とした佇まい。
キノコ、なんてあだ名ではもったいないではないか。
もっと高貴に、あるいは高級に、マツタケとかそういう方が似合うと思うのだ。
「白昼夢」 「迷路」 「靴紐」
459:白昼夢 迷路 靴紐
09/11/03 16:32:16
徹夜明けの昼前にうとうとしていたことは覚えている。
気がつくと通路に立っていた。目の前には十字を形作る通路と、通路の先に階段。通路の先に壁がある。壁の上に階段が捻れていた。三方に伸びた通路は更に従事を描き、複雑に絡み合って上に延びていた。
漠然と夢を見ていることがわかった。そして、通路や階段に足を着けている限り、歩き続けられることも何故かわかった。
「夢だしな」
俺は呟くと歩き出した。
十字を右に、壁に足をかける。その途端、壁は通路に、後ろの通路は壁になる。
いくつの通路と階段を抜けただろう。
「遊ぼ。私が鬼ね」
小さな女の子が走ってくる。俺は自分の夢に苦笑しながら、おどけて逃げるしぐさをする。
女の子の顔に笑顔が浮かぶ。
「キャハハハハハハ」
耳をつんざく声。一気に身体の熱が奪われる。
力の限り走る。いくら走っても女の子の声からは逃げられない。
通路に靴が転がっているのが見えた。靴紐がほどけかけたスニーカー。
ドン!
通路から押し出された。俺の革靴が宙を舞う。
「バイバイ」
女の子の肉食獣のような笑み。それが見えたのは随分と下に堕ちてからだった。
「目玉」「初雪」「オリーブオイル」
460:名無し物書き@推敲中?
09/11/03 16:43:31
>>459
三語のうち一語しか使われていない気が
「白昼夢」「迷路」はどこに?
461:名無し物書き@推敲中?
09/11/04 22:17:19
「目玉」「初雪」「オリーブオイル」
お客さんこんなのどうですか?
え?なになに?
これ。本日の目玉商品。
目玉商品。今時言わないよ目玉商品なんて。
広告に載ってない品。
載ってないのかよ。大事よ広告。
来店してくれた人だけのサプライズ商品ね。
まあいいや。どんなの?
これ。初雪のオリーブオイル和え。
うまいの?それうまいの?
かき氷風。
いらねえよ。初雪って冬だろ。冬にかき氷って。
かき氷風な。
同じだろ!
同じじゃねえよ。ポイントはオリーブオイルだから。
ずいぶんまずそうだな、おい。
失礼なこと言うな。フローズンオリーブオイルだから。
カクテルになっちゃったよ。もういいわ。
つぎは「広告」「カクテル」「かき氷」
462:広告、カクテル、かき氷
09/11/05 23:34:33
結婚式は真っ赤なカクテルドレスに決めた。
彼と飲食店の前を通った際に、店の壁に貼られた広告が
決め手となった。それはイチゴ味のかき氷の紹介で、
カメラの写し方がいいのか、非常に魅力的に見えたのだ。
私の頭の中では、白いタキシードの彼が真っ赤なドレスの私を
抱き上げているイメージなのである。
「これよ、これ!」と、私が店の壁に両手をついて叫んだとたん、
呆れたような冷めた声で彼が言った。
「さっきドレスの試着も入らなかったのに、また食い物かよ」
「停電」 「夜風」 「回想」
463:名無し物書き@推敲中?
09/11/06 02:14:25
停電
私は長い廊下を歩いていた。もうずっと歩いてきたような気もするし、今目覚めたような気もする。とにかく、蛍光灯の無機質な青白い光で照らされた廊下を歩いている。どういう構造の建物なのか、廊下はどこまでも続くように思われる。
どれくらい歩いただろうか、突然、視界で捉えられる一番奥の蛍光灯が消えた。そしてそれを合図にぱっぱっとひとつずつこちらに向かって灯りが消えていく。私は何故か恐ろしくなり来た道を戻り、全速力で駆け出した。
しかし反対側も同じように停電が始まっていて私は挟み撃ちされてしまった。為す術を失った私はその場に倒れ、最後の灯りが消える前に意識を失った。
回想
彼女と出逢ったのは展覧会だった。
私は一つの絵の前で恐らく二時間ほどその絵について思い巡らしていた。私は深い黙想に入っていった。真っ白な空間。その遠くに何かが動いている。徐々に近寄っていくとそれは一人の女だった。
彼女は裸で体の所々に血のような朱色が曲線に沿って流れている。彼女は新体操のような動きでその朱色を白い空間に撒き散らしていた。
その動きは激しくなる事もなく途切れることもなく、一定のリズムで続けられていた。
やがて視界は彼女から遠ざかり、その白に現実が滲んできて私は展覧会に戻って来た。絵と私の間に女が立っていた。それが彼女だった。彼女は黙想の女とは全く似ていなかったが、間違いなく黙想の中の女だった。
夜風
窓の隙間から入ってくる心地良い夜風につい眠ってしまったようだ。何か夢を見たような気がするが思い出せない。
窓から見える松が月に照らされて何か意味ありげに闇に映えている。少し考えてみるが、いっこうにその何かは出て来なかった。
今日はもうこれ以上書けそうにないと思い、書きかけの原稿を片付け電気スタンドを消そうとしたときだった。スイッチに手が伸びない。理由は分からないが灯りを消すのを躊躇しているようなのだ。
「まあいいさ、別に消すこともない」
そうして私は灯りを消すのを止めそのまま横になり、今度は深い眠りに入っていった。瞼の向こうに青白い光を捉えながら。
次題 スコープ ラジオ トンネル
464:名無し物書き@推敲中?
09/11/06 17:53:09
「スコープ」「 ラジオ」 「トンネル」
朝の霧が、疎らな林間に立ち昇っている。
セイコは、ランクルのルーフキャリアに囲まれた車体の天井の
ハッチを開けた。雨季は過ぎ、昼は高熱の大地と化す草原も、
その昼は抜けるような青天井を維持したままの夜間の放射冷却
で濡れた衣服が肌に貼り付くように寒い。
セイコは900mmの望遠レンズの外気温との慣らしの間に、ハッチ
の下の撮影台に昇ってスコープで四方を確認した。
昨日から追っていたガゼルの集団は3kmほど先に留まって
いる。
セイコはラジオをつけた。天候の確認である。その間、始終
ランクルの周囲を目視で確認する。ガードネットを張った車内は
まず安全だったが、車内から身を乗り出した時が危険だった。
鉱山技師だった祖父の話を思い出した。
深い立坑の中では、電波が減衰し、ラジオが聴こえなくなる
場合があるそうだ。垂直に地面から掘り下げられた立坑の
底部では、真昼間でも空の星が観える。
並んで停車していた保護官のレンジローバーで、保護官と
手伝いの男が起き出す。もっとも危険なのは密猟者との遭遇だ。
セイコは、またスコープを取り出す。
「お前は、お前は食われない」1頭の子供のガゼルに願を
かける。ライオンはそばに居る。スコープの、レンズでできた
トンネルの彼方から願をかける。
次の御題「フライ」「コード」「回転」
465:名無し物書き@推敲中?
09/11/08 02:27:38
フライ コード 回転
貧乏ながらせめてもの贅沢に、食材の普通は捨ててしまう部分の数々をフライにすることにした。
大根の皮、人参の皮、魚の骨、キャベツの芯。殆どタダのような品々を、使い込んだ油で素揚げしてしまうのだ。野菜チップスに骨せんべい。揚げたてに塩を振れば味は言うまでもなかろう。百円も出して科学めいたジャンクフードを食べるよりはずっと良い。
電気フライヤーにコードをつなぎ、油の温まるのを待つ。二度揚げしてパリパリにしてやろう。塩の他に胡椒も良い。一度揚げて醤油につけてからもう一度揚げるのも良い。他には何があるだろう。味付け無しというのもやってみようかしら。
そろそろ温まった頃か。油が跳ねないように慌てずやるんだ。よし、量もそれほど多くないし、全部一息に入れてしまおう。うん、いつ聞いても小気味良い音だ。胡椒よし。塩よし。醤油は、と、棚の中かな。
この棚がまた遠い。早くしなければ焦げてしまうぞ。それ静かに早く、と。
うォッとぉ……あ、ああ! コードが脚に! あ、あ! フライヤーが! 野菜が! 回転して落ちてゆく!
「貧乏人は揚げ物も食っちゃいけないのかよ……」
466:名無し物書き@推敲中?
09/11/08 02:28:39
次
籾殻 糞 ミニ四駆
467:名無し物書き@推敲中?
09/11/09 15:55:20
籾殻 糞 ミニ四駆
『糞ッ、ミニ四駆走らせてたら籾殻の中に突っ込んじまったぜ!』
「無理矢理一行ネタかよ。真面目に書けよ」
「るせえな。このところ決まって毎週末にアク制くらうんで機嫌悪りいんだよ」
『どうだ、これがボクの秘密兵器、ビチ糞型ミニ四駆<スカトロン一号>だ! ズルズルののゲル状ボディで、籾殻を撒いたコースの上だって楽らく走行勝利もゲット』
「待て待て。ゲル状ボディのミニ四駆ってどんなんだよ。<スカトロン一号>って名前もダサくねえか? お前やる気ねえだろ」
「るせえっつの。だいたい『ミニ四駆』なんてお題じゃ書ける場面も限られんだろ」
「それは想像力不足って奴だ。たとえばこういうシチュエーションだって」
『富市は慎重に小型トラックで一本道を進んでいった。一面田畑が広がるこの辺りでは、夜になると街灯もほとんどないに等しい。おまけに道は細く、自動車一台がやっと通れるほどだ。
夏の盛りではあるが、開いた運転席の窓からの夜風は涼しく感じられる。牛糞に籾殻を混ぜ込んだ肥料の臭いにはいささか閉口だが、この村で暮らしていくうちにいずれ慣れることだろう。由美子も和夫も、早く慣れてくれるといいのだが。
助手席には玩具屋の包装紙に包まれた小さな箱。和夫へのクリスマスプレゼントにと町まで買いに行ったミニ四駆だ。
クリスマスにはふたりに会える。和夫は喜んでくれるだろうか』
「こら待ててめえ。散々人の書いたものに文句つけといて自分はどうなんだ。なんで場面が夏の盛りだってのに、いきなしクリスマスプレゼントが出てくるんだよ」
「いけね。適当に書き進めてるうちにミスった。では気分を変えて」
『切り立った崖の上には、白亜の建物がそびえ立っていた。
コードネーム<ミニ四駆>からの情報では、ターゲットは間違いなくあの中に囚われているはずだ。俺は<糞>と<籾殻>に目配せした。ふたりは小さくうなずいてから、MP-5SDサブマシンガンの銃口を上げると、高い塀目がけて』
「いい加減にしろ、お題の処理の仕方が無理矢理すぎんだろ! どこの世界にコードネーム<糞>なんて奴がいるんだよ。もういいよ!」
お題は継続で
468:名無し物書き@推敲中?
09/11/16 23:32:07
籾殻 糞 ミニ四駆
あるところにミニ四駆が大好きな公爵様がいた。彼はそれゆえミニ四駆公爵と呼ばれ
る程だった。屋敷には下働きの下男たちとたいそう綺麗な奥方が住んでいる。
ところがある夜、下男の一人が脱糞のために起きだした。行って帰って、また眠る。
・・・・・・そのハズであったが、ふと昼に天日干ししたハズの籾殻が気にかかってしまった。
新入りの男に任せたのだが、ボーっとした男だ。ひょっとしたら干しっぱなしで取り込み
忘れた、などという事も起こりうる。ネズミにでも食われたら大変だ。様子を見に行こう。
だがしかし廊下を歩み行く最中に、ふと主人の寝室から音が聞こえる。
「ふふっ、旦那様のミニ四駆狂いにも困られたものだ」
一心不乱に自慢の青いミニ四駆の改造に精を出す、無邪気で子供じみた主人の顔が頭
に浮かび、下男の頬が思わず緩む。軽いノックの後に声をかける。
「旦那様、あまり夜更かしなさいますとお体に障りますぞ」
しかし返事がない。やれやれ、よほど熱中しているようだ。仕方なくドアを開けてみる。
するとそこにはミニ四駆型バイブをノリノリで妻にあてがう公爵さまが・・・・・・
469:名無し物書き@推敲中?
09/11/16 23:35:20
シモネタ失礼
次お題「カラス」「ファイル」「症状」
470:名無し物書き@推敲中?
09/11/19 10:56:03
両の手のひらを広げ、其処に今まで幾度、いや何百回
拵えて来たであろう青い、海の青より、空の青よりさらに青い
火の玉を拵える。それはほんのり暖かさを持っていた
「仕舞いだ。オホホ、私が死ぬる。お前は何処でも好きな所に飛んでお行き。」
肩にとまった黒カラスに語りかける。
自分ほどの大魔法使いはいない。最高位の魔力を我は誇る
それでもそれにしてもいつかは来る。こういう時は来る
今にして思う、我にこの魔力を授けてくれた老魔法使い、その時、その其処彼の思い
がわからなかった。このあたたかさ、このぬくもり、その時、これに気づいていたか。
「頼む。守ってくれ、この盛りを。可愛い森の僕たちを。生きとし生ける、大宇宙を。」
このつぶやき、ささやき、其処に先祖よりの連綿と続く我らの使命を、このここでようやっと
最後の最後のここで理解する。あの若者は我よりも強い、若い、負けるであろう己を予感する
「がっしゃーん、ギャピー。ガラガラ、ドッカン。」
何をやっている。この黒カラスならぬわが娘。私はこれから勇者と魔法戦をまじえんとする真っ最中
あっ、あっ、ファ、ファイルが、投稿原稿が。オモチャではない、やぶくな、さわるな、止めて、よして、助けて。神様、仏様
持病の欝症状が、ぎっくり腰が、イ、イタイ。
「厚子さん、昼ごはんはまだですか。そろそろ昼ですが。」
い、いけない。大変、魔法戦どころでなかった。
た、立ち上がれない。ぎっくり腰が、ど、どうしよう。絶体絶命、大ピンチ。た,助けて。だ、誰か・・・・・・
471:名無し物書き@推敲中?
09/11/19 10:57:48
い、いけない。ハハハ、
初めてでお題を忘れた
魔法使い。赤ん坊。お鍋
472:名無し物魔法使い。赤ん坊。お鍋 書き@推敲中?
09/11/19 16:03:42
俺は工学部の2回生19歳男子。ノベルに応募した。
際どく選外の総評が帰ってくる。授業中携帯に留守電が入っている。
応募した会社の編集者から会いたいとの事。
俺はおそるおそる大手出版社の門をくぐる。受付の連絡で階下に
編集者が来る。まだ若い。
彼女は彼の作品がもったいないと言う。編集長にかけあって指導と
言う事になる。編集者は24歳の女性。眼鏡で整えようとしているが、
まだ幼さの残る可憐さが残る。
この編集者は辛辣で、俺にに複数の作品を書かせ、ことごとく不備な
部分を指摘、矯正していく。
頻度の高い語句は言い換えさせられる。登場人物の曖昧な言動は
排除させられ、物語構造を堅牢にしていく。
俺はフラストレーションがたまり酒場で喧嘩に巻き込まれる。
お鍋をひっくりかえしただけで、飲酒はしていなかったが、未成年
なので収監される。俺は呪う。なんという編集に掴まったのか。
編集者は大叔父に時代小説の重鎮を持つ。当人も現代短歌の若き
旗手だが会社には係累や自分の文才は黙っている。
その頻回のやりとりのなかで、彼女は俺に秘めた恋心を抱く。しかし
自分の感情にはきつく重石をしている。
彼女は最初の応募作を読んで、泣いた。編集部の中で、彼女だけが
登場人物に慟哭した。しかし、それは他の編集者にとって繊細すぎる
箇所で、俺は押されず入賞しなかった。俺は、時折彼女が隠そうとする
強く押し止め表情に気付くが、それが何を意味するか判然としない。
一年後、俺は怒涛の応募を開始する。入賞が相次ぐ。ノベル界の寵児
となる。編集者は、喧騒の背後に、こっそりと身を引こうとする。
魔法使いが与えてくれた、甘美な授業時間は終わったのだ。
「だって、キミ。もう遠くへ行けるもん。ひとりでいけるもんね……」
「教えることもう、無いもんね。大叔父さんに、雰囲気似てたんだ…」
「……いや、まだ、ツンツンしててよ。俺はまだ、赤ん坊でしょ?」
抱きしめる。春の、雪が舞い降りる歩道の街灯の下で。
御題「鑑識」「スキー券」「河童」
473:名無し物書き@推敲中?
09/11/19 16:43:32
三度目の流産の後、妹に薦められて占い師を訪ねた。
「もう、私、赤ちゃんは産めないかもしれません。このまま夫と暮らして
幸せになれるでしょうか?」
「赤ん坊が欲しいかえ?幸せになりたいかえ?」
「はい。でも夫とはすれ違いばかりで、赤ちゃんも流産してしまい、
最近は会話もあまりありません。」
すると、占い師はブツブツと呟きながら広告の裏に何か書いてよこした。
「あんたの妹は何か勘違いしちょる。あたしは占いは出来んがよ。」
それは、おそろしく手間のかかりそうなスープのレシピだった。
「え。占い出来ないんですか?」
「出来ん。魔法使いだからな。
だからお鍋の魔法教えたるで。毎朝、日の出前に汲んだ水で
そのスープ作って旦那さんに飲ませるとエエ。」
「そんな、毎朝日の出前に起きるなんて無理です。仕事だってあるし」
「無理ならすんな。あんなたは幸せになる努力を惜しんだ。それだけのこと。」
私は納得出来なかったが、とりあえずレシピを受け取り帰った。
全くスープを作るつもりなど無かったが、占い師の
「幸せになる努力を惜しんだ。」という言葉がどうしても頭から離れず
三日目には日の出前に起きてしまった。
まだ暗い台所で、お鍋に湯を沸かし、野菜やらベーコンやらをたっぷりと煮込む。
煮込んでいる間は暇なので、ついでに洗濯物をたたむ。アイロンをかける。
まだ、時間があるのでサラダを作る。夕食の下ごしらえをする。
夫を起こして、二人でゆっくり朝食を食べる。スープはとても美味しかった。
あれから半年、私は毎朝儀式のように、同じお鍋に同じスープを同じように作っている。
日の出前に起きるために残業を減らし、なるべく早く帰宅する。
夕食も余裕をもって手作りできるようになり、夫との会話も増えた。
赤ちゃんが居なくても、夫婦二人、これはこれで幸せなのかも知れないと思う。
お鍋の魔法を教えてくれた魔法使いに感謝。
474:473
09/11/19 16:49:02
ごめんなさい
お題は472さんの「鑑識」「スキー券」「河童」 で
475:名無し物書き@推敲中?
09/11/20 14:45:05
ベッド脇の出窓に置かれた河童のぬいぐるみ。誕生日にあれを残して、貴方は出て行ってしまった
のですよね。学校で初めて声をかけてくれた時の事。内緒でお酒を飲んで、酔っ払ってしまった私を
丁寧に介抱してくれた事もありました。うっかりスキー券を落として慌ててしまい・・・・・・あの頃には
周囲に勘付かれ始めていましたね。海にも行ったし、温泉祭りにだって。二人きりの時間はいつだっ
て宝物で、寂しい時には―今も―思い出に浸りながら河童のぬいぐるみを甘く抱きしめるのです
よ?
「いやぁ、悪かったね。他のヤツのところに行ってみて気づいたんだ。やっぱり君じゃなきゃ駄目なん
だって。君しかいないんだって。もう一度やり直さないか?」
ひょっこり現れた、貴方の照れくさそうな笑顔。
あぁ、一体このような空想を何回もてあそんだ事でしょう。でも私にできるのは、貴方が
離れていった理由を考える事だけ。確かなデータに確かなラベルを割り当てる、鑑識官のよ
うな作業だけ。
きっと私がハタチに満たない男子学生で、貴方が大人の女性教員だったから・・・・・・
476:名無し物書き@推敲中?
09/11/20 14:48:50
次お題
「健康」「ノイズ」「古書」
477:名無し物書き@推敲中?
09/11/21 00:06:52
寂れた、どこか怪しげな古い洋館。推理小説の舞台になりそうな、今にも事件が起こりそうな。そんな洋館の地下のある部屋に一人の若者が今ドアを開け入って来た。
「先生。先生。」
古書や学術書、古今東西様々な事件を綴ったファイルが足の踏み場もない程に散らばっている。
ノイズ混じりのレコードと煙草の煙で埋め尽くされた部屋の奥で先生と呼ばれる推理小説家は安楽椅子に座りうなだれていた。ゆっくりと顔を上げた彼の目はヤニと失望で酷く淀んでいた。
「……君か、悪いけどやっぱり駄目なんだ、全く書けないんだ……。」
「駄目じゃないですか、こんなに散らかして。」
小説家の話を聞いているのかいないのか若者はどこから手を着けても骨の折れそうな部屋をせっせと片付け始めた。
「食事もちゃんととられてるんですか?。」
「……もう昔のように書けないんだ。もう……空っぽなんだ。」
「どうせお酒ばかり飲まれているのでしょう。そんな調子では不健康どころか死にますよ。」
よく見ると若者は本を棚に綺麗に並べたかとおもうと今度はその下の列をバラバラと床に散らかしている。
「頼む。もうここから出してくれ。お願いだ!君の望みはなんでも聞くから。」
小説家は必死に暴れてみたが、椅子と自分を括りつけている縄は肉に食い込むだけで解けるどころか緩む気配すらなかった。すでに小説家には縄を振り解くほどの力は残っていなかった。
若者はゆっくり小説家の方に顔を向け微笑んだ。
「大丈夫です先生。先生は偉大な方なんです。それにどんな天才にもスランプはあります。いつかそれを抜け出してまた傑作を世に産み出していくんです。」
小説家はその残酷な笑みを見ると全てを悟り、力を失った。そして机に突っ伏して狂ったように笑い出した。
「フフフフフフ、ハハハハハハハ」
レコードのヴァイオリンの音色がその狂った笑い声と共鳴しさらにおぞましいものになっていった。そしてそれは石の階段を上り建物全体に響き渡っていった。
寂れた怪しげな、推理小説などでよく出てきそうな、今にも事件が起こりそうな洋館中に………
478:名無し物書き@推敲中?
09/11/21 00:10:51
なんかムチャクチャですみません。お題は継続でお願いします。
479:名無し物書き@推敲中?
09/11/21 13:10:23
クマのマーくんは、けいたいでんわをつくっています。
おかしのあきばこをつなげて、おりがみをはりました
まるとさんかくなマークをいくつもそのうえにかきます
すうじをかきたいのですが、まだかけません
できました。せかいでひとつきりのマーくんのけいたいでんわです
みみにあてます。ジージー、ちいさなノイズがほんとうにきこえてきます
すごく、うれしくなりました。ふ健康そうにしかめつらをしているかあさんクマ
さんはいまにもおかたづけをしなさいと、どなってきそうです。
ニコニコになあれと、けいたいでんわにたのみました。
「マーくん、おやつよ。」ニッコリわらっておおきなおくちを、あさらにおおきくわらいながら
かたりかけてくれました。
古書のやまにうもれ、しかめつらをしているとおさんクマさんをこっそりと
みます。「ぼくとあそべ。」けいたいでんわにささやきます。
「こうしていてもな。アイデアでるわけもないか。あそぼう。マーくん。」
やりました。とおさんがあそんでくれました。
すごいです。おねがいがかなうでんわです。ぜったいにそうです。
もうひとつたのみましょう。ゆきがふれ。
ほんとうにこなゆきがまいおり、うすくあたりにしろいおはなを
さかせてゆきます。
よくあさ、あたり、のもやまももりも、まっしろ、すべてまっしろ、いちめんのぎんせかい
でした。ゆきがとけ、はるになればクマのマーくんも、いよいよ、まちにまった
いちねんせいです。
お題「森」「グルメ」「ミシン」
480:森、グルメ、ミシン
09/11/22 00:42:34
「あなたはミシンという物をご存知ですか?」
森の奥で運悪く蜘蛛の巣に捕らえられた蝶が、もがくのを止めて言った。
「あれは人間の作った恐ろしい箱です。蜂の針をもっと長くしたような先に、
色のついた糸を通して、それはそれは目にも止まらぬ早さで動くのです」
蜘蛛は蝶の脇でじっと耳を澄ませながら目を光らせている。
「その箱から出ている色のついた糸、あれはきっとあなたの仲間の物ですよ。
人間に捕らえられて、あの箱の中に閉じ込められているのです」
「我々の糸に色などあるものか」
ようやく蜘蛛が陽気に口を開いた。すると蝶は大げさに頭を振って言う。
「あなたはさぞや私の仲間たちを食べてきた事でしょう。そろそろ糸に色がつきますよ。
ほら、私なんて真っ黄色。そんな色の糸が出てごらんなさい、すぐに人間に
捕らえられて、あの箱に閉じ込められてしまいますよ」
だから私を食べるのをお止しなさい、と、蝶がさも恐ろしげに言う。
蜘蛛はふむ、とあごを撫ぜると、また陽気に口を開いた。
「ご忠告ありがとう。でも僕はグルメだからね、蝶の羽なんて食べたことないんだ」
そう言って、ぽかんとする蝶に蜘蛛は愉快そうに糸を巻いた。
「ミステリアス」 「タバコ」 「独身」
481:「ミステリアス」「タバコ」「独身」
09/11/22 17:50:52
「ミステリアスな女性ね?美人なんだ」
「ちょっと年齢不肖なところもあるんですよ」
「そう。最近は物騒だから、そういう感じの女性はどうかな?」
「そうですよね。僕みたいな冴えない男に惚れるひとはいませんよね」
「自分をいじめるなよ。君はなかなかいい男だよ」
「マスター、サンキュです。さっぱり忘れますよ」
僕は次の誕生日で38歳になる。独身はちょっとさびしいかなと、最近思うように
なった。
彼女とはネットで出合った。非常に頭が良くて、性格が良くて、なによりメールが
まめだった。僕はあれこれ彼女の姿を想像した。
カメラにもクルマにも詳しく、うっかりすると僕の知識を越える。彼女は万能なんだな。
僕には不釣合いだ。僕はそう思いながら、腑に落ちない感じがした。
彼女の地図上のマーカーは、僕の家の近くだ。
それもあって安全だと思った出会い系でアクセスした。しかし、近所に
そんな才媛って居たかな?話題に近郊の店や、遊びのスポットが、頻繁に現れていた。
僕は焦燥にかられた。誰かのいたずらじゃないか?
知識がありすぎる。それも男の趣味の領域だ。ネカマじゃないか?
僕は、確認だけしようと思った。最後になってもいいと思った。
「あなたは、男ですか?女ですか?」しばらくして、返信が来た。
「僕は、ゲートキーパーだ。僕のメールの半分は、僕の文章で、半分は、娘が書いた。
ためすつもりは無かったが、彼女はこういうことにはこわがりだ。彼女の事は、覚えて
ないかな?」
部長の娘だった。近所で何回か酔った部長を送り届けた事がある。
娘は美人で、たおやかな印象だった。
「昔、君は高校生の頃、ボランティアで町内の子供の壊れたおもちゃを直していた
そうだな。そうそう直されると困るんだが。ウチは玩具メーカーだしな」
「熊のおもちゃ、直したんだろ?娘の部屋に今もある。辛い恋愛も、受験も、ずっと
タンスの上で娘を見守っていた。汗かきながら直したって?」
えらい昔の話じゃないか……しかし危ないと言えば危ないが、魅力的と言えば
魅力的な話だ。なにせ部長は創業者一族である。
僕は最近やめていたタバコを、ベランダに出て立て続けに吸った。
御題「ミステリアス」「タバコ」「独身」継続でお願いします。
482:名無し物書き@推敲中?
09/11/25 00:20:18
ミステリアス(神秘的) タバコ 独身
渇いた風を受け、タバコに火を点ける。今は遠き故郷の味も、これで最後の一本であった。
ふと空を見上げれば、今日も雲一つ無い晴天。この荒野に入ってから7日経ち、水も残り少なく
なってきていた。雨の少ないこの地に給水出来るオアシスなどあろうはずもなく、機会を見て退散
しなければならない。結局ここでも何を見つけるでもなく、呆けているだけだったわけだ。神秘的
(ミステリアス)な風景を探すだの、よく言ったものだ。
職に就かず、その日暮らし、独身のまま親を安心させることなく国を出てきた。野望や夢など無
く、社会から疎んじられるのが嫌で始めた旅なぞ、こんなものだろう。しまいには帰るタイミング
まで失ってしまった。
口の中に苦い味が広がった。気がつくとタバコは燃え尽き、吸っていたのはフィルターであった。
環境保全する気は無いので、吸い殻は地面に捨てる。
郷愁すらタバコにまかれる私には何が残されているのだろう。無い物ねだりをするだけで、ひと
つ、またひとつと大切なものを落とし続けてきたのではないか。手にあるのは僅かな現金とサバイ
バル道具くらいのものだ。
もはや昨日のことすら朧気だ。
483:名無し物書き@推敲中?
09/11/25 00:23:56
考えてみればこれまでの人生、特に記憶している出来事などありはしない。物語の主人公までとは
言わないが、せめて思い出し笑いくらいはあっても許されるだろうに。あるのは所詮自嘲だけだ。
飯を食って、飯を手に入れ、眠るだけの毎日はまるで動物のようだ。時々こうして悩むことはあ
っても、明日になれば忘れている。だが忘れれば忘れるほど、悩みは更新されてゆく。それは人間
のあるべき姿であろうか。
だが、私にはせいぜい動物の暮らししか出来そうもない。悩みの頻度も減ったような気がする。
無性に空が見たくなり、寝転がる。すると太陽が眩しいので、思わず目を瞑った。
私は目を開けることなく、そのまま眠りに就いた。
ミステリアスという横文字がなんとなく気に食わなかったのでこうなっちまいました。すみません。
次
『聾唖』『依頼』『猫』
484:名無し物書き@推敲中?
09/11/25 23:28:59
「待て! 話を聞け、落ち着け!」
「任務ヲ推敲シマス 任務ヲ推敲シマス」
くそ、どうなってんだ! 昨日までは平和だった学校が、今はまるで聾唖の暴徒と化している!!
ここにはもはや青春の可能性など奪われてしまったに等しいのだ。ゾンビのように群がるクラスメート達を日本刀で切り刻む。
「神剣流奥義『レッドブルーム』発動!!!」
日本舞踏のように滑らかに、血の華が咲き乱れて皆死んだ。くそ、絶対に許さない! 仲間を仲間に殺させる残虐性は世界で
一番の重罪に値する! 俺の頬には涙が伝い落ちていた・・・
「くっくっく! とうとう私の場所までたどり着きましたね!」
「校長!」
なんと黒幕は校長だったのだ! くそ、なんて事だ! にゃ~ご♪ 校長先生の腕の中で猫が鳴いた。
「さあ行きなさい! ブラックキャットスフィンクス!」
みるみるうちに巨大化した猫が化け物じみたスフィンクスで俺を高みから見下す程になった。だがしかしここで負けるわけにはいかない。
敵は強大であろうとも、絶対にこいつだけは許さない! 怒りがみなぎり、俺に新たな能力が追加される。
「神剣流奥義『ダイヤモンドブルーム』・・・」
だが周りは静かなままだ。
「能力発動失敗ですか。怒りで我を見失いましたね・・・って、なにぃぃぃ!」
突然全てが切り裂かれた。極限までに高速化された太刀筋は肉眼に捉えきれなかったの話だったのだ・・・!
あたりの空間がダイヤモンドのようにキラキラと保存されたような光景に鮮やかとしか言いようがない。
「だが、いい気になっては困ります。私はただの依頼代行人にすぎませんからね。そう、真の敵は・・・」
「貴様の父親だったのですよ・・・ぐふぅっ、ぐぉぉ!」
「なんだって!!!」
あまりの事態に俺の頭は混乱から落ち着かず呆然としていた。
485:名無し物書き@推敲中?
09/11/25 23:35:12
次お題
「猛暑」「秋雨」「豪雪」
486:聾唖、依頼、猫
09/11/26 00:14:42
便利屋をしている男の下に、依頼と共に猫が来た。
餌代などは払うから、しばらくこの猫を預かって欲しいとの事。
なんでも、依頼主は事故に合って入院しているらしい。
依頼主の代理人は猫とある程度の金を置いて去っていった。
男は猫など飼ったことも無いが、とりあえず餌を与えていれば
何とかなるだろうと軽い気持ちでいた。ところが、遊び盛りの猫は
するりと窓を抜け出して、外へ出て行ってしまった。
男が慌てて追いかけると、猫は道路の真ん中で虫を追いかけるのに
夢中になっている。これはまずいと思うと同時に、嫌な予感は的中するもので、
一台の車が猫をめがけて走ってくる。大声で猫に向かって叫ぶも、
猫はまったく見向きもしない。男は預かりものに何かあっては大変だと、
ためらい無く道路へ飛び出した。
運良く命はとりとめたものの、男は大怪我で入院を余儀なくされた。
仕方なく、見舞いに訪れた友人へ、猫を世話してくれる人を探すよう頼んだ。
友人が去った後の静まり返った病室で、男ははっと思い出す。
一つ言い忘れたことがある。あの猫が聾唖であるということ。
だから事故に用心するように、と。
先に書かれてしまったのですが、投稿します。
お題は>485さんでお願いします。
487:名無し物書き@推敲中?
09/11/27 10:02:07
猛暑、うだる暑さが続きます。朝露に太陽の光を浴びたトマトにあなたの笑顔が映ります。あなたのために育てました。
ヒンヤリ冷やしたソウメンに、イガイガの取れたて胡瓜共に乗っけましょう。暑くて参っていませんか。あなたの事
だけが気遣われます。私はあなたの喜ぶ顔を心いっパイ広げお帰りを待っています
秋雨、一雨毎に紅葉はその赤を、私のあなたへの思いを載せて深く染めて行きます
ボージョレヌーボーを気張りました。お手製の桜のチップでいぶした燻製の
干し魚にソーセージがつまみです。あなたへの愛で煙っていました。今年は
生まれて初めて迎えた私の人生最大の解禁日です。
豪雪、あなたは寒くないですか。あなたのお仕事姿を思い浮かべてタラのお鍋
を野菜と愛を盛って拵えています。早いお帰りを心から待ち焦がれつつ。
男は私のためにある。男は金、保険金。
練炭を車にさあ、積み込んだ
私は女郎蜘蛛、狙った獲物に蜘蛛の糸を巻きつける。
男よ、甘き甘美なる夢を見るべし。一瞬の研ぎ澄ました鎌が天国の至福
の時を取り去るまで。練炭の地獄の赤が炎と化してお前を襲うまで。
お題「お茶漬け」「クロワッサン」「ブラックホール」
488:名無し物書き@推敲中?
09/11/28 21:06:06
「お茶漬け」「クロワッサン」「ブラックホール」
「お邪魔します。へえ、やっぱり女の子の部屋っていいね」
「……恥ずかしいから、あんまりじろじろ見ないで」
「ああ。ごめんごめん」
「コーヒーでもいれよっか。それとも何か食べる? 結局さっきのお店じゃ閉店間際だったしほとんど食べられなかったでしょ。買い置きのクロワッサンでよければ。でなけりゃお茶漬けでも」
「いいね。じゃお言葉に甘えて」
「どっちにする?」
「そうだな。君にしようかな」
「……バカ。エッチ」
「あのね。あの……初めてだから、優しくしてね」
「うん」
「すごく……良かったよ」
(ジョーダンじゃねえ。初めてどころか、こいつぁとんだブラックホールだぜっ)
次のお題;「野生」「男爵」「贈りもの」
489:「野生」「男爵」「贈りもの」
09/11/28 21:49:59
大河の本流は、そのまま川幅を狭めつつ、高地へと至る。
男爵は、私に簡易な測量をするよう命じた。
「ジェス……この先は未踏の地だ」男爵が言う。
火打ち鏨をすって、パイプに火を点す。
私は黙って掌務を進めた。
「私の妻は、病気で亡くなった。だからこうした地方への
探検欲を抑制するものは、無くなった」
煙を吐きつつ男爵が私の方を観た気配がする。
「君には悪いことをしたと、正直に思う。危険な趣味に
君をつき合わせてしまった」
「…………」私は、黙っていた。私は、男爵の農夫から
選抜された。
私の家には、娶ってから日が浅い妻が居た。彼女は、
この探検行に気を揉んでいることだろう。私は、観測器
の脚の傍に、滑らかな表面をした珪酸塩の石だ。
私は、淡い緑色のその石に、妻の瞳の色を思い浮かべた。
「さあ、行くか」男爵が言った。
大いなる野生の懐へと、また歩を進めるのだ。
私は、その小さな滑石を、ポケットに忍び込ませた。
……この石を妻に渡すまで、私は歩き続ける。
ささやかなスーベニール。自然からの贈り物を、彼女に
渡すのだ。
次のお題「食欲」「生地」「けんか」
490:「野生」「男爵」「贈りもの」
09/11/28 21:53:38
の脚の傍に、親指の先ほどの小石を見つけた。
滑らかな表面をした珪酸塩の石だ。
失礼
491:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/11/30 16:08:12
「食欲」「生地」「けんか」
鞠子は電磁カーテンの一部を透明度40%オープンに設定して窓の外の様子を見た。
「よかった!今日も連中の姿は無い!」
彼が亡くなって以来、ずーっと雑誌記者やレポーターの取材に悩まされ続けた鞠子だった。
着替えを済ませ例の場所へ向かう為、タクシーに乗り込む。
今日は 彼 が出来上がっている受け渡しの日、大切な日なのだ。
ショップに着くと白衣を着た数名の技師の説明を聞く。
そしていよいよカプセルが開き少し粘り気のある液体がこぼれ落ちた後、本能とわずかばかりの基礎意識を加えられただけの姿で立ちすくんでいる全裸の 彼 が出てきた。
この 生地 は、まだ無垢のままでして、これからカスタマイズされた ご希望 の構成意識を注入いたします。
「ありがとう。やっと私の元に 彼 が戻ってくるのね…あっ!くれぐれも注入意識は伝えてあるブロックだけにしてくださいね」
と、鞠子は婚約していた彼を殺された悲劇の女性の立場で可愛く付け加えた。
共に暮らし始め、1日が過ぎたが 彼 は昔のままの 彼 だった。
パクパクとものすごい勢いで私の作った料理をおいしそうに平らげてくれる食欲も同じ、…そしてアノ時の性欲も…。
ちょっとお行儀の悪い箸の使い方まで再現されていた。
そして後片付けをしに立ち上がった時、それは発現した。
「人殺し…君は僕を…僕を殺した…」
「ただの けんか だったのよ。殺すつもりはなかったの」
鞠子はうったえ続け涙を流しながらもメーカーへフリーダイヤルへコールをした。
「すみません。今度の モノ もだめです。造り直してください」
今回もだめだった。どうして消せないのだろうかあの時の記憶は…
鞠子は、今日も遠い遠い森の土の下に埋めたオリジナルのやさしかった 彼 を求め続ける。
492:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/11/30 16:12:31
次のお題継続でお願いします。
493:名無し物書き@推敲中?
09/12/01 02:55:18
ああ、今日も疲れた。帰りの電車でつり革にぶら下がりつつ、心底疲れを覚える。
円高で会社の景気も悪化した。この年の暮れにローンの支払い、子供の塾代もあるというのにどうしよう。
懸命に頑張って働いても両の手ですくった砂が片端から漏れていく心地がする。そうだ、俺は、ついウトウトした。
「起きてよ。何眠っているの。嫌ね。」
何、何、ここは何処。
「嫌ね、キッチンよ。寝ぼけないで。ウフフ、眠っていたわよ。私はミョウガ。
私たちはお好み焼きフライパン戦隊じゃないの。」
そうだ、俺はキャベツ。お好み焼きには欠かせない。ザルに開け、水で洗われる間におかしな夢を見た。
何か一生の半分以上生きたような。た、大変。キャベツにはキャベツとしての大事な使命があった。
寝とぼけてはおられぬ。我こそその名も高いキャベツ戦士、シャキッと締まっていこう。
「締まって参ります。ガス台点火、生地戦士、野菜戦士、突入用意。」
タイミングをはずすな。緊張、緊迫、スリリングな一瞬。野菜同士でけんかをしている場合ではない。
ラララ、ラリラリ、豚肉戦士、鰹節戦士、突入、突貫、青海苔参謀長、ぬかるな、仕上げは決めろ。
「参ります。キッチンの小窓より、宇宙に向けてフライパン号発進。」
我らには宇宙の上を救う、食欲を満たすという重大なる使命がある。いざ、行け、進め、フライパン号。
「課長、駅に着きますよ。偉いなあ。寝ぼけても仕事ですね。
新しい企画、お好み焼き開発ですか、頑張りましたものね。送りますよ。
奥さんが待っています。」
お好み焼き戦士ならぬ企業戦士は今日も家路を急ぐのであった。完
お題「バジル」「魔女」「クリスマス」
494:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/12/01 13:20:26
「バジル」「魔女」「クリスマス」
夜9時、慶介は重い足取りで自宅の安アパートへ向かっていた。
今日は彼女の摩耶がアパートで慶介の帰りを待っている日…その足取りはいっそう重かった。
街の中はクリスマスのイルミネーションが眩しく光る。
だが、慶介と同じく、街を歩く男たちの姿は皆、元気がなくうつむいたまま。
「あっ!!忘れた!!」
摩耶が薬草作りで使うバジルを買ってくるように頼まれていたのに…慶介は声を出してしまい頭をかかえた。
摩耶の罵声がいまにも聞こえてくるようだ。
いつの頃からこうなってしまったのか…いやあの時からだ。男女の関係が全く逆転したしまったのは。
この世の女性すべてに魔法の力が備わってしまい魔女となったあの日…
その日から男たちの生活は変わり…いや!世界中そのものが変わった。
魔法使いになった女性たちは、またたく間に社会を支配し、世界中の指導者層はすべて女性に入れ替わってしまった。
インターホンを押し、ドアを開けると摩耶が待っていた。
すぐさま謝ろうとする慶介だったが摩耶はやさしい微笑みで迎えた。
「忘れたんでしょーっ!まったくダメねー」
「まあいいわ!今日はイブだし、許してあ・げ・る」
女性が世界を支配したおかげで戦争もテロも犯罪もほとんどなくなった…男は単なる生殖だけの為に生かされているペットのような存在…
社会の下働きだけの生活だけどベッドに入り摩耶の裸体に触れながら、まあこんな暮らしもいいのかなーって思う慶介だった。
495:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/12/01 13:21:31
お題は継続でお願いします。
496:「バジル」「魔女」「クリスマス」
09/12/01 18:42:02
木曜の魔女とその機体は呼ばれていた。
ドイツ本土攻略の大規模空爆は頻回に及んだ。消耗率は200%
を越える。
直援の戦闘機部隊は、海峡で待ち伏せる敵戦闘機との空戦で、
爆撃地点上空では半数に減った。アブロランカスター・木曜の魔女
は周囲、特に上方からのジェット戦闘機に神経を尖らせた。
不安定な稼働率らしい事はわかっていたが、今となっては旧世代
の航空機ランカスター・では、メッサーの完調な機体からは逃れら
れない。
「トム、来たぞ、うまくやれ」機長の声がする。
トム・マクナライド曹長はスコープを覗いた。
この街の、この橋の破壊で、今日は何人の犠牲者がでるだろう。
「神様……」トムは投下スイッチを押した。笛のような風切り音を
たてて、爆弾がゆっくりと舞い落ちていく。
機体はそのまま着弾点を直進、後続の機体の投下完了を待って
左に旋回、帰途に向かう。
「弁当だ」分厚いサンドイッチを油紙で包んだ物を渡される。魔法瓶
のスープを飲む。サンドイッチは塩気が足りない。バジルか食べつけ
ない何かの香草が口蓋を刺激した。
「クリスマスか……」トムは機長席の窓枠に、ゆれている「魔女」の
マスコットを観た。それは、まだ幼い女の子を模したちいさな
ぬいぐるみだ。
「聖夜には、爆撃は無いだろうな……」
1945年2月13日、木曜の魔女はドレスデン爆撃作戦に参加。被弾撃墜。
次のお題「ラッキー」「不信感」「歳末」
497:ラッキー、不信感、歳末
09/12/01 21:54:20
暇つぶしに入った本屋で、適当に選んだ雑誌の占いを読む。
「周囲の人間に不信感を抱かれそう。言動や行動に注意して!」
と、可愛らしい丸文字が嫌な運勢を告げている。どうやら今月は
星座ランキングの最下位らしい。
「募金など、小さな善良行為が良い結果になって返ってくるかもしれません」
ちょうど歳末たすけあい募金も始まったことだし、この占いを信じて出費しようか。
ラッキーカラーはブラック。ちらりとカバンを覗けば、黒い財布が目に入る。
ふう、と溜め息のような気合入れをして、私は雑誌を棚へ返す。
すぐ隣で見知らぬ女性が、私が読んでいたのと同じ雑誌を熱心に捲っている。
きっとこの人は星座ランキング11位に違いない。盗難注意ってね。
私は立ち読みする女性の脇を、颯爽と通り過ぎる。
女性のカバンから黒い財布を抜き取りながら。
次「双子」 「美声」 「犯行予告」
498:名無し物書き@推敲中?
09/12/04 10:01:09
タックンは小学校一年生です。ですが積み木が大好きです。お外はポカポカ、青いお空にはフンワリと
ソフトクリーム雲、秋刀魚雲、ドーナツ雲さんが美味しそうに流れて行きます。それでも積み木で
遊んでいます。この前父さんが突然、お誕生日でもないのにポンと買ってきてくれた飛行機のプラモデル
は忘れ去られ棚の上でホコリをかぶって寂しそうです。
建物が出来ました。デパートです。大変です。爆弾を仕掛けられたとの犯行予告が投げ込まれました。タックンは警察官です
それも一番の偉い、偉ーい人です。まっさきに駆けつけ指揮をとります。
積み木は変わります。今度は劇場です。それも野外音楽堂です。オペラ歌手が美声を響かせています。タックンはコンサートマスター、
第一バイオリン奏者です。少し習い始めています。がんばって演奏します。
積み木はまたまた形を変えます。今度はお山が二つできました。双子山です。もう一つ、四角い積み木を紐で
つるしましょう。ロープウェイです。父さんと母さんとタックンで行きました。ここは箱根です。お山が燃えています。
赤や黄色の紅葉で炎みたいに燃え上がっています。お空も茜色に染まっています。赤トンボ
が飛び交っています。芦ノ湖が鏡のように金色に光ってまぶしいです。父さんが肩車をしてくれます。
笑っています。父さんと母さんが大きな声でたくさん、たくさん、笑っています。
タックンも笑います。アハハ、大きな声でいっぱい、いっぱい笑います。
あっといけません。お外が変です。いつのまにやらどんよりと曇っています。タックンはお片づけ
を始めます。積み木を一つ一つ大切に片付けます。これは母さんが生前に買ってくれた唯一の形見に
なってしまった大事な積み木です。洗濯物がハンガーニ干されて風に揺れています。取り入れましょう。
お風呂も洗います。炊飯器でご飯も炊きましょう。タックンは何でも得意です。上手です。
まだレパートリーは少ないのですがお料理もがんばります。タックンは元気いっぱいです。
さあ、これからタックンは大忙しです。
お題「トナカイ」「シーザーサラダ」「ミュージアム」
499:名無し物書き@推敲中?
09/12/04 19:41:32
「で、トナカイってのは?」
Lはミートボール入りのスパゲティで腹ごしらえしたあと、
シーザーサラダをつまみに地ワインを飲みながら聞いた。
「隠語だ。あの城に半月に一回くらい、車両が入る。
でかい超感度アンテナを運転席の上に乗っけてる。それ
がトナカイの角って訳だ。ありゃ単なる防衛用の探知機
にしてはごつ過ぎる、武装した、偽札・スーパー 『γ』用の
強行輸送車だ」
Gは声を潜めてテーブルの中央に顔を寄せて言った。
周囲は婚礼の前祝の祭りで騒然としており、狭い店内
には地元の人間と観光客が半々位だ。
「正直、拙者はあの伯爵は許してはならないと思う」
Iがぽつりと言った。袋に入れたZ剣を顎下に添えて
眼をつぶっている。
「大赤字だな」Lは、にたり、と笑った。目は醒めている。
「厄介な話だぜ」Gは肩のホルスターのマグナム・ファイン・
チューン・コンバットの重みを感じながら苦笑した。
「Hはどう動くかな?」LはGが材料を持っていないか一応
聞いてみる。
「あの女は、相変わらずさ。欲っぱりだ。それだけさ」
「……いや、城のミュージアムで一度会ったが」Lが言う。
「本当か?」Gが聞き返した。
「お穣ちゃんに情が移ってる気もする。俺等っちの味方に
なるとは限らんだけんどもよう」Lは語尾をふざけて装飾する。
事態はかなりシビアだ。IとGは即座に理解した。
「Zのとっつあんも来てるんだろう」Gも腹が決まったようだ。
「ああ、オールスター・メンバーってやつだ。面白くなるぜ」
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次のお題「掃除機」「鉄人」「ひざまくら」
500:名無し物書き@推敲中?
09/12/04 21:25:53
「掃除機」「鉄人」「ひざまくら」
「掃除機に言え! じゃなかった、正直に言え! 貴様が犯人なんだろう」
「だから誤解だよ、刑事さん。俺じゃないんだ。罠だよ。現場にいたっていう
そいつは鉄人、じゃなかった、別人なんだ」
「言い逃れもたいがいにしろ! お前のやったことのひざまくら、じゃなかった、
ひまざくら、じゃなかった、いざかつら、じゃなくって、えーとあのその」
「チョー意味分かんねえし」
次のお題「暦」「キャンディ」「雑誌」
501:名無し物書き@推敲中?
09/12/04 21:55:55
「いやぁ~!次元、こんなとこで立ち読みかよ!」
セブンイレブンのドアを開けて、ルパンがやってきた。雑誌売場では、次元がイブサンローランのムックを立ち読みしている。
「次の仕事が決まったらしいじゃねぇか」
「おぉ~とも、この師走には、デカイ金の動くデパートがある」
ルパンは両手をズボンのポケットに突っ込んで、目の前のガラスに目をやった。次元もガラスを見る。
外の駐車場には、デカイ機械を載せた軽トラックが止まっていた。助手席には、目を閉じて斬鉄剣を抱えたままの和服姿の五右衛門が座っている。その機械は、側面に、山田飴製作所と書いてあった。
「ん~ん、ルパン、今度の獲物にアレが必要なのか?」
「おう、伊●丹の百周年に当たる来年の福袋には、千分の一の確率でマジモンのキャンディ型ダイヤが入るらしい」
「それで、まさか大量の同型飴を作ってすり替えるとか言うんじゃないだろうな」
「ごめいとぉ~、さぁすが相棒の次元、てぇことでさっさと行くわよん」
と、ルパンが店を出ようとした時、ハーレーが滑り込んできた。革製のつなぎの上からでも巨乳なのがすぐわかる。
峰不二子だ。
「あんれぇ不二子ちゃぁ~ん、どったの」そうおどけて見せるルパンの後ろで、次元が肩をすくめて横を向く。
「ルパンに年賀状を出そうと思ってえ、こうみえても私も日本人だし、暦の上のイベントは見逃さないのよ」
「へぇ~、相変わらずいいお乳だこと」そう言ってルパンは不二子の胸を触ろうとする。
「だぁめよ、キャンディと交換なら考えてあげるけど」
「なんのことかなぁ」
「うふふ、聞いちゃったぁ」
胸の谷間から受信機を取り出して、そのままルパンの首筋に手を触れると、盗聴器が現れた。
「しっかたないなぁ」
ルパンはハーレーの後部座席にまたがった。
「んじゃぁ、次元、軽トラの運転よろしくぅ」
へいへい、といった態度で次元は運転席に乗った。
エンジンがかかるバイクと軽トラ。ハーレーが走り出し、軽トラがその後を追う。
雪が降り出していた。
「へーっくしょん」
とくしゃみをした銭形警部が伊●丹の警備につくのは大方の予想通りである。
次のお題「ギャング」「ビデオ」「時計」
502:「ギャング」「ビデオ」「時計」
09/12/05 15:21:56
「こりゃギャングだな」店長がビデオを検証しながら言った。
マコトは、まいった問題だな。と思った。店の死活問題だ。
「ほら、餓鬼どもが防犯カメラの位置を把握していて、仲間で
壁をつくって写らないようにしている。その陰で商品をパチ
っていく訳だ」
「性質が悪いですね」二人は玩具店のバックヤードで対処
方法に頭をひねっていた。余り露骨な捕捉をするのは、
他の善良な客に妙な雰囲気を与えかねない。
「捕まえたら捕まえたで最近はモンスター・ペアレンツの
逆ギレだ。なんて時代だよ」
マコトは、今日ここに呼ばれた意味はわかっていた。
「じゃ、ギャラは、よろしくということで」
マコトは、愛くるしい少女にも、少年のようにも観える。
「ああ。怪我だけはさせるなよ。お灸をすえるだけでいいんだ」
マコトは、開店時間を事務所の時計で確認した。
早速マコトは髪をウイッグの中にまとめだす。
『彼女』は、何処にでもとけ込む能力がある。
女子大生Gメン真琴。
空手三段、剣道三段、柔道二段。合気道二段。
次のお題「雪道」「穴」「夜通し」
503:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 00:27:03
「雪道」「穴」「夜通し」
BUBUBU-
ひくい、羽音のようなうなりがたえず聞こえてきた。だがもう顔を上げてたしかめるだけの気力もない。かれは疲れきっていた。
このままどこへむかおうとしている?
視界の端に、黄白色のほのほがゆらめいているのがかすかに見えた。
手足の感覚はすでにない。
-死ぬのか。ここで。
マエハラ!
背後から声がきこえた気がした。
「シッカリシロ。マエハラ。ワタシダ。センゴクダ」
「せんごく……仙石、か。そうか。生きていたのか」
その名前の主を、自分はここまで探しに来たのではなかったか。鉛のように重くなった頭で、マエハラと呼ばれた男はそう思い出していた。
「スッカリカラダガヒエキッテイル。ハヤクアタタメネバ」
仙石が体内の小型原子炉を作動させた。マエハラの身体に降り積もったまま凍りついていた雪のかたまりが、原子炉の熱をうけてすこしずつ溶けてゆく。
夜通し雪道をあるいてきた。ただの雪ではない。死の灰をたっぷりと含んだ灰白色の雪。
「ナカマハドウシタ。ミナ、イッショデハナカッタカ」
「死んださ。おそらくは、みな奴らの餌食になったのだ。岡田も、藤井も」
自分のからだを支えてくれる男のことを、いまだにはっきりと思いだせぬままマエハラはかわいた声でつぶやいていた。
「HENOKO作戦を実行する時点で、みずほだけはどこかへ逃げてしまった。亀井は……どうなったのかおぼえていない」
そうだ。ほかにもなんにんか仲間がいたはずだった。予備電子頭脳を作動させながらマエハラはひっしに思いだそうとする。
「おれは直撃をさけ、携帯ミサイルを連射しながら夢中で手ぢかな穴に逃げこんだ。それから……」
「ソレカラ……ドウシタノダ」
それから、それから?
違う!
Hiiii-n
奇妙な電子音が無数の針のように、動きのにぶいマエハラの電子頭脳をつらぬいた。
「違う! お前は仙石なんかじゃない」
OZAWAだ。とうとうここまで追いついてきたのだ。
504:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 00:31:18
今回は光○龍風を狙えどまた失敗
次のお題「太陽」「狐」「お喋り」
505:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 08:52:12
2012年、太陽の活動が活発化して地球には天変地異が続発・・・・・・・・・・
今日は狐さんとタヌキさんと私の楽しい映画鑑賞会です。
狐さんは、油揚げが包まれず巻き寿司のようにまかれた名店のお稲荷さんを食べています
タヌキさんは銀座8丁目にある老舗店の天丼弁当です
私は冷蔵庫の残り物のオンパレード、この寒さで物が腐らず助かる弁当です。
楽しくお喋りの花が咲きます
「凄い。一ファミリーのみ、隣の家のオバサン、学校のクラスメート、全滅しても自分達だけ
逃げまくる根性を僕は絶対に見習う。」
狐さんは油揚げに舌包みを打って感想をもらします
「君らしいね、そのずる賢さ。僕は木の葉を乗っけて皆を魚さんに変えて助けて上げるの。」
タヌキさんは人の良い建設的意見を述べます。
「何ほざく。カチカチヤマで泥船を拵えておいて。ノアの箱舟の作り方でも教えてもらった
方がよくないか。」
口喧嘩を始めかけた二人に慌てます。私も感想をのべましょう。
「2012年、果たして私は小説家になれているか。」
「なれていない!!!!!!!」
意見の一致を目出度く見てお二人さんは仲直り。三人は再度、仲良くお弁当を
パクつくのであった。
お後がよろしいようで・・・・・・・・・・・・・・
お題「大晦日」「大掃除」「大嫌い」
506:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 10:48:02
舌鼓でした。すいません。
507:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 14:09:42
「大晦日の大掃除なんて大嫌い、みたいなネタでいいのかな。どう思う? 小泉、清水、石塚」
「さあ」
「知らん」
「どーでもいい。まあ大晦日で大掃除とくれば結びつけるのは定番だわな」
次のお題「明日」「線香花火」「破片」
508:「明日」「線香花火」「破片」
09/12/06 19:02:36
「明日は、無いと思ってます」
リドゥー症候群の取材で、私はハルカと出合った。
脳の代謝障害で、突発的な意識混濁。発生部位によっては、
短時間で死に至る病だ。
彼女は、高校を休学している、まだ十九歳だ。実際の年齢より、
物腰や発言は大人びている。死の予感は人生を圧縮する。
「線香花火って、ありますよね」彼女は、私が現状の生活を
訊いていた時、不意に言った。
「線香花火……」私は、なんとなく切ない予感がして言葉を
詰まらせた。
ハルカは、窓の外、梅雨の晴れ間の新緑の風景に眼をやった。
「……線香花火は、玉になって落ちます。でも、その前に綺麗な
火花を散らして、踊るんです」
「そのダンスの、一瞬一瞬は、時間を切り取れば、永遠だと
思うんです。確かに輝いた瞬間は、誰にも否定できないと思う」
「だから、今、永遠に宇宙の歴史の片隅に残る瞬間を私は
生きている、って思ったりするんです……誰も顧みる事は無い
忘れ去られる歴史でも」
「そうだね、本当は他のみんなも、そうかもしれないね」私は、
やっとそう言った。
たとえハルカの肉体が砕けても、その魂は美しく、ひそやかに
その破片の全てに宿るだろう。と私は願う。
「うん。だから、私は生きることを楽しんでるんですよ」
ハルカは明るい顔で笑った。
次のお題「平手打ち」「ダイヤモンド」「警察官」
509:「大晦日」「大掃除」「大嫌い」
09/12/06 20:04:05
「大嫌い!」
そういい捨てると彼女は出て行った。どうしようもないなー、というのが
俺の感想で、困った事だぞ、という反面、大体においてそういう捨て
台詞はまだ先のある予言のようなものだと思っていた。本当に「大嫌い」
なら「大嫌い」とは言わないはずだろう。
そもそも俺の生活態度が問題であって、性格的なものか、なかなか勤め先
が長続きしない。それでいて家事も嫌いとなれば、勤務もしている彼女は
疲労と不満が累積するというものだ。
賃貸マンションにぽつんと残された俺は、仕方無しに部屋の掃除を始めた。
気分転換を兼ねた大掃除である。押入れの中には趣味のプラ模型が未組み
立てで山ほど積んである。こういう財布の底が抜けた収集癖も、彼女には、
負担だった可能性は否定できない。
結婚をずるずる先延ばしにしてきた事情としては、まだまだいいだろう的な
俺の楽観視であり、彼女にしては不満を通り越して危機的心象にあったかも
しれない。「甲斐性なし」
嫌な言葉が頭に浮かぶ。しんどいかな、と思って押入れの戸を逆側に開いて
みる。こっちは彼女の物が入っている。金属バット。
なんだこれはと思って仔細に見てみると、カラーマーカーでバットの表面に
「一人一殺」とか「道連れ」とか「死ね」とか書いてある。はあ?と思って、
バットの納まっていた押入れの隅に、ルーズリーフを発見する。
「結婚計画」とか書いてある。詳細な式場の手配とか招待する親戚や友人、
新婚旅行の計画が書き連ねてある。なんかすまないことをした気分になった。
ページをめくっていくと、最初は綺麗だった文字がだんだん乱れた変な字に
なっていく。それはさておき、「何月何日、残高~~円」とか、「ここが我慢の
しどころ」とか、「今日、病院に行った」とか「たまにハイになる」とか書いて
あった。処方された眠る薬の事とか書いてある。
「決行は大晦日。背後から。サヨナラ人生」とか書いてある。
インターフォンが鳴った。
「ごめん!ケーキ買ってきちゃった!お茶にしましょ!」
彼女のやけにハイな声がした。俺は、泡のような汗をかいて、立たない腰で
カーペットの上で激しく震えていた。
510:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 21:48:54
「平手打ち」「ダイヤモンド」「警察官」(1)
「よう、フぅ~ジコちゃ~ん。相変わらずお目目に毒なナイスバディだこと」
ニンマリと相好を崩して、大きく開いたドレスの胸元に触れようとしたルパンの指先を、寸前で不二子は軽く払いのけてから、
「で? 今度こそ間違いないんでしょうね。嫌ぁよ。去年みたいに寸前で福袋のすり替えに気づかれて失敗、だなんて結末は」
「だ~い丈夫。あん時みたいなドジは二度と踏まねえさ。例のキャンディ型ダイヤモンドはたしかに今はここの地下金庫に収められている。見なよ」
小さく目配せする。カップルを装う二人。人待ち顔の中年紳士。さりげなく師走の町の風景にとけ込んではいるものの、いずれも警察官の変装に間違いない。
「わかったわ。で、あたしは何をすればいいの?」
「んふふふふふふ。それなんだけどね」
ルパンが懐からジッポーを取り出し、指先でチン! と蓋を跳ね上げる。とたんに勢いよく催眠ガスが不二子の顔目がけて吹き出した。
「去年みたいに俺たちの邪魔ぁされても困るんでな。少しだけいい子いい子で眠っててちょーだい。後でお目覚めのキスしたげるから。んじゃね」
「ずるいわよ! ルパン。待ちなさい……」
急激に意識が遠のく。せめて平手打ちのひとつもくらわせてやろうと気力を振り絞ったものの、すぐに身体の自由が利かなくなり不二子はあっさりとその場にくずおれた。
気がつくと夏美がそばに立っていた。
511:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 21:50:21
「平手打ち」「ダイヤモンド」「警察官」(2)
急激に意識が遠のく。せめて平手打ちのひとつもくらわせてやろうと気力を振り絞ったものの、すぐに身体の自由が利かなくなり不二子はあっさりとその場にくずおれた。
気がつくと夏美がそばに立っていた。読みかけていた娯楽小説のページを閉じて待合室の椅子から立ち上がる。
「やあ、どうだった?」
暗い表情には気づかないそぶりで、さりげなく問いかける。次の瞬間夏美の両目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「駄目なんだって。もう手の施しようがないんだって。春香ちゃんもう治らないんだって。長くてあと半年なんだって」
あと半年。内心覚悟はしていたものの、夏美のことばは突然の平手打ちのようにぼくの心を激しく揺さぶった。
「出よう」
考えがまとまらないまま、すかさず夏美の肩を抱いて病院の外へと促す。
泣きじゃくる彼女を連れたまま、どこかの店に入るわけにもいかない。やむなく町中にある小さな公園のプラスチックのベンチに並んで腰かける。
「春香には、会ってきたの?」
そっと肩を抱き寄せる。ぼくの腕の中で夏美は小さくいやいやをするように首を振った。
「会えないよ。会えるわけないよ。どんな顔して春香ちゃんに会えばいいって言うのよ」
通りすがりの警察官が、じろり、と一瞬だけぼくらの方を見て、そのまま知らん顔で通り過ぎてゆく。
夏美はいつまでも泣きやまなかった。
吐く息が白い。ふと見上げた空にかかる月は、なぜだか少しぼくの目の中でにじんで、ダイヤモンドのようにきらきらと輝いて見えた。
次のお題:「霧」「宅配便」「ビデオテープ」
512:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 21:54:20
長すぎてやむなく(1)(2)に二分割
「娯楽小説」の前半部と「現実」の後半部、両方でお題処理に挑戦という試みだったのですが
あと>>508さんが素晴らしかったのでさりげなくキャラ名拝借
513:名無し物書き@推敲中?
09/12/07 00:27:14
宅配便 ビデオテープ 霧
「お届けものです。」
宅配便から手渡された小さい包みには発泡スチロールではなく木の葉に包まれたビデオテープだった。
「なんか…… いかにもだな……」
送り主も住所も一切不明。さっきの宅配便も思い返せば怪しいやつだった。
「まぁいいや。」
早速デッキに入れ再生する。見覚えのある森がノイズ混じりに浮かび上がる。そこにはビニールシートにスコップで土を被せる人物。俺だ。
「誰だよ。撮ってたの……」
一心不乱に作業をする男。三十分。あの時計った時間だが、恐らく今も同じだろう。延々とそれだけを移したものだった。男は作業を終えるとふと、こちら側を見つめた。あの時感じた気配はこれだったのか。
映像の自分と目があった。その姿を俯瞰で捉えた映像をイメージして馬鹿らしくなりつい吹き出してしまった。
「フ、フフフフ、ハハハハハハ……ハ」
そのとき、首筋に冷たいものが触れた。真っ暗になったブラウン管に映る俺。その背後にいる黒い影から伸びる白い腕が俺の首を捉えている。
案外ホラー映画も馬鹿に出来ないな。多分幻覚を見ているんだろう。狂っていてもそれは解る。しかし幻覚もそう馬鹿には出来ない。幽霊の正体は枯れ尾花だと言うが、その枯れ尾花だって人を殺せないとは言い切れないのだ。
「このあとは俺の断末魔のアップか幽霊のアップで次のカットだよなぁ……」
首にかかる力は次第に強くなっていく。次第に霧がかっていく意識にもかかわらず、次の作品のアイデアがどんどん膨らんでいく。これを映像にしたら凄いもんが出来るぞ……
夕日が差し込む部屋に満面の笑みを浮かべた男が死んでいる。テレビにはスコップを持った男がそれをじっと見つめていた。
次題 「コレラ」「兵隊」「骸骨」
514:「コレラ」「兵隊」「骸骨」1/2
09/12/07 08:33:25
「ルパンまさかアフガニスタンに潜入する気か?」
軽トラのステアリングを握っている次元が、フロントグラスの向こうを見据えたまま、
助手席のルパンに向かって言う。
「お~とも、こいつは単なるアクセサリーじゃないのよ」
ルパンは、キャンディ型のダイヤモンドを弄んでいる。
「ふん、しかし、アフガニスタンは今マイナスの気温になってる上に、かなりの雪が積もってる、
動きにくいんじゃないか? 暖かくなるまで待つって手もあるぜ」
「時間が……ないのさ、リドゥー症候群って聞いたことがあるか?」
「なんだそりゃ」
「脳の代謝障害で、患者は突発的な意識混濁を起こす。発生部位によっては、
短時間で死に至る病だ。。何度手術しても、直せない。それを揶揄してリドゥーと呼ばれている」
「ふむ、でもなぜ、手術を繰り返すんだ? 放っておけばいいだろう?」
フロントグラスの向こうでは、粉雪がちらついている。ライトの帯の中でまるで踊るようだ。
真っ黒な路面まで到達できずに消えていく、雪の舞い。
「レントゲンでも、MRIでも、別の、例えば癌細胞のようなモノが確認できるんだ。
しかしいざメスを入れると何も無い」
「医学は進歩したんじゃないのか」
「未だ直せない病ってのは、ゴマンとあるのさ。毎日何百、何千も死んでってる」
「それで、そのダイヤがアフガニスタンとどう関係あるんだ?
あんな紛争地域にいっちまったら俺たちの命も危ないかもしれないぞ」
「生きようとしてる女の子がいるんだ」
「ふん、いつもの悪い病気が始まったか」
次元はステアリングを左に切った、右へ流れていく赤い信号機。
「……線香花火、あれが人生だなんてクソくらえだろ」
ルパンはダッシュボードを蹴り上げる。
「どうしたルパン? らしくないぜ」
「いや……悪い。で、このキャンディ型の代物なんだが、
リドゥー症候群で唯一回復した娘がアフガニスタンにいたんだ。そいつの謎を解く鍵なのさ」
515:「コレラ」「兵隊」「骸骨」2/2
09/12/07 08:36:34
「ふむ」
「アフガン戦争で、イギリス人将校の骸骨将軍と呼ばれた男がいた。
その男の娘がこの生き残った娘なんだが、兵隊やアフガン人を使って娘のために
人体実験を繰り返しワクチンを作り出したたらしい。骸骨将軍の部隊は彼を残して
アフガニスタンで全滅している。軍の報告書ではコレラが原因って事になっているが、
将軍が帰還すると、娘が回復したと噂されているんだ。
同じ病気に苦しむ人々がそのワクチンを欲しがっているんだが、幻とされてきた、噂も噂でしかないとな」
「なるほどな。その鍵は何に使うんだ?」
「病気の治療に使ったワクチンを収めたボックスを開ける鍵だ。世界でそこにしかない。
アフガニスタンの精神病院に収容されている骸骨将軍が持っている情報を得たんだ。
幻じゃなかった、ワクチンは存在する」
「ん、なんでそいつがそんなとこにいるんだ」
「娘が死んで狂いやがった」
「じゃぁ、ワクチンは無駄足になるんじゃないのか?」
「いや、娘が死んだのはアフガンの地雷でだ」
「せっかく生き残ったのにな」
ワイパーが忙しく動き、いつの間にかフロントグラスに積もり始めている雪をせわしなくかき分けている。
暗闇の中を白い粉が上塗りしようとしていた。
「ルパン、五右衛門がそろそろヤバイんじゃないか」
荷台で震えている無表情な五右衛門の肩に雪が積もっている。
「ふへっくしょん!」耐えきれなくなった五右衛門が大きなくしゃみをした。
夏美は、ノートにそこまで書くと、机の上に載せたハルカと二人で撮った写真を見つめた。
ハルカは絶対助かるんだ。あたしがルパンになって、病気を盗んでやるんだから。
間に合え。
夏美はそう思いながら、力強く文字を書き続けた。
次のお題「ロックンロール」「聖書」「吐息」
516:名無し物書き@推敲中?
09/12/07 18:58:44
―麗しきは偽りなり、生彩なる美は虚しき。されど主の教えに傅きたる
女性は讃うるるなり。薫香やその価値は粉飾にはあらず。その中から溢るる―
(旧約聖書 箴言31章10節―31節)
会場は、来訪者の数が増えてきた。
本部から推薦があった女の子ふたりにインタビューをする。
僕は地方のタウン誌の記者だ。
「どのくらい前からコスプレを始めたんですか?」
マユという小柄な少女が「一年……半くらい前なんかな?」
もうひとりのミユキは「私は一年くらいです」と答えた。
「コスプレのきっかけは?」
「私はマンガとか描くのが好きで、それで今、同時開催してるコミケの方には前から来てて、
スカウトされたんです。なんて」
ミユキは笑いながら言った。「声がでかいから、とかそんな理由ですよ、きっと」
「なるほど。どうですか実際には?」「んー、はずかしいです。でも今は考え方が変わりました」
「それは?」
「観てくれる方はその時間を私たちにくれはるんですよね。パフォーマンスしなきゃ失礼だと……
もちろん、営利はご法度でおひねりも頂けませんが」
「あれ?あそこのカンパ用の箱じゃないかな?」
文化会館前、箱の傍らで最近流行りらしいガールズ・ロックンロール・バンドのユニットの
演奏が始まった。
マユがハスキーな声で答えた。「あの……書かないで欲しいんですが、私たちのグループ
の仲の良いグループに、伝説のコスプレーヤーがおるんです」
「もう、歳も結構いっちゃてるんですが、めっさ元気なお姉さんがおって。怪我して入院
してるんです」「事故?」マユが眼を伏せて答えた。「配達でね。おおきなクルマに、
あてられた……お姉さん苦労人で。高校も途中で辞めて仕事に就いた。
だからコスプレはお姉さんの大事な『部活』って言うか。簡単に言うたらあかんけど」
そうか、むしろ普通のマニアックでない高校生より、彼女たちは社会の陰影を観ているように
思った。
「写真、撮らせて頂くけど、いいですか?」「ああ、記者さん、きれいに撮ってや」
……君達は、充分綺麗だよ。僕はデジタル一眼のファインダー越しに、
羨望の入り混じった吐息を吐いた。
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517:名無し物書き@推敲中?
09/12/07 19:03:49
次のお題「大鍋」「ドレス」「鯛焼き」
518:名無し物書き@推敲中?
09/12/08 00:36:41
大鍋 ドレス 鯛焼き
未だ乾ききっていない風と、ほんの少し緑を残す土手。寒空に陽光は暖かかったが、小刻み
に体を震えさせる人々の心までをも和らげることはなかった。
鍋はまだ煮えぬのかと寒さを露わにする中年を酒でごまかし、火に薪をくべるが、煙が立つ
ばかりでちっとも火力は増えない。端ではヨップが喚き立て、もう一方では老人どもが恨めし
そうに手をこすりあわせている。
「どうしよう。ちっとも温まらない」
大柄な少年が似合わず心配そうに言う。その傍らの少女もまた、似たような顔をして弱い火
を見つめる。
子供会主催の秋の芋煮会。毎年茂居町の行事として行われるこの行事は、近年変化してきた
気候により、今年はあまり芳しくなかった。夏が長く続いたせいか、水を含んだ空気が薪を湿
気られたのかもしれない。そのくせ気温は例年並みで、神様のどうした嫌がらせか、今年の子
供たちは悪戦苦闘を強いられるばかりだ。
「うーん。灯油でもまこうか」
「え、いいのかなあ」
「いいよいいよ。やっちゃおうよ」
しびれを切らした少女の提案に、大柄な少年は乗り気ではなかったが、結局その案を取るこ
とにした。
519:名無し物書き@推敲中?
09/12/08 00:37:25
結果火は回り、鍋も温まってきたが、その分薪は使い果たしてしまった。どうしたものかと
迷う内に、やはり少女が具を全部いっぺんに入れてしまえとした。
「いいのかなあ」
少年は相変わらず不安がっている。そんな少年を後目に少女は大量の具をぶち込まれた大鍋
をかき混ぜた。
「なんか灰汁がすごいよ。取ってもきりがない」
「それに肉もバラバラになっちゃった」
大鍋にしては、随分酷いものだった。
大凡にして鍋は大きいほど味の調節が楽だ。比率分配が簡単だからだ。にも拘わらず、味が
やけに奇妙である。
「なんだか、変に甘いよ。肉味のぜんざいみたいだ」
感想も妙である。子供たちの頭にいくつも疑問符が浮かんだ。なんでこんな味になったんだ
ろう。そこへ近付く足音、それに強烈な酒の匂い。
「ういっく。どうしたクソガキども」
すっかり出来上がった中年親父がそこにいた。もう鍋などはどうでもいいという風情だ。
「なんか味が変なの。どうしよう」
少女が言う。すると中年は胸を張って答えた。
「おう。寂しい鍋なんでよ。おれさまが鯛焼きでドレスアップしてやったのよ。良い隠し味だ
ろう」
520:名無し物書き@推敲中?
09/12/08 00:39:49
がはは、と親父は豪傑笑いをして去っていった。
台無しであった。
子供たちは皆顔を青くした。この親父はなんということをしてくれたのだろう。とてもじゃ
ないが食えない。
「DSやろうか」
「うん」
その後子供は帰宅し、皆で楽しくDSを遊んだ。それに気付いたのは老人どもだけであった。
酔っ払い共が鍋を処理したのは言うまでもない。
次
「ミミズ」「ネズミ」「たこ焼き」
521:「ミミズ」「ネズミ」「たこ焼き」
09/12/08 08:53:48
「おとうさん。みっちゃん~、ゆうくん、たこ焼き買ってきたよ~
あれ、パパは?」
母屋の方で妻の声がする。俺は土蔵の二階で汗をかきながら
困難な探し物をしていた。
「ネズミにひかれたか……」
家を出て一家をかまえた弟の依頼で、同級会の幹事に選ばれた
ので、小学校の卒業写真集を見つけてくれとの事。
お袋は介護施設に入所してしまっているので、聞く相手もいない。
さて、困ったねえ……天袋を開けると、どさどさ、と、書物が落ちてきた。
拾い上げて見てみると、随分昔の、明治か大正の小学校の教科書
とかである。
「これはこれで価値があるかな……」いつかの時代の先祖の使った
ものらしい。ちょっと興味が出てくる。あれこれ手にして土蔵の換気窓
の灯りでながめてみる。そうしていたら、どうもその一冊に、落書きが
してあった。絵はほとんど無く、文字で書いたものだ。
判読が難しいミミズがのたくったような字で、「未来の書」
とか書いてある。
『大戦後、日本は無類の経済発展をとげるなり』
『だっことか言う人形が空前の流行になるなり』
『女は露出が大きくなって、お尻の割れ目の上のほうをを平気でズボン
から見せる』
『二厘くらいではんぶるぐばーがとか食えるようになるなり』
『米国で黒人大統領が誕生するなり』
なんだこれは、と思った。
『美知絵と雄太という子供が生まれたとき、天体が衝突して地球は
終わるなり』えー、それは……
『これは、うそうそなり』なんだ?
『そのかわり会社でのジュンちゃんとの浮気が発覚して、おくさんと、
みっちと、ゆうはこの家を出て行くなり。代々の家系は断絶するなり。
めでたし、めでたし』
次のお題「通販」「無礼者」「映画」
522:「ネズミ」「ミミズ」「たこ焼き」
09/12/08 09:53:45
な、何だろう。
田舎のネズミさんは、一パック、土をほじくってミミズを捕まえてそれを土産に都会、
渋谷というところに町のネズミさんを頼って東京見物に来ていた。心に描いていた町並みは
もっと洗練されているはずであった。あれはダンボール、へえ、人とネズミが一緒にゴミ漁り。
「よく来た。ここいら、近年、ネズミ人口が増えている。まあ、食事を豪華に用意した。何でも食べて帰ってくれ。」
お世話になりますと丁寧にお辞儀をする。そう、何か、あまりといえば清潔感が乏しい
町並みであった。それでも、ご馳走を山と出され自分の土産を出し損ねた。
「何それ。ハハハ、何か動いている。ヘエ、見たことない。」
知らない。ミミズを知らない。コレは彼らの食生活で欠かせない。ミミズがいる土壌は
美味しい野菜が育つものと決まっている。やっぱり、どうも昔から都会に生きるネズキさんとは
生態も違っているような。
「あれね、夜になると建設される家。地下道とかに。昼間は撤去される。」
フーン、ままあ、彼の想像通り、ネオンの輝きは凄い。これこそ、不夜城という奴か。
これは早々に帰ろう。借りてきたお人よしのタヌキさんの携帯を取り出す。
「僕だけど。そう、田舎のネズミ。迎えに来て。帰る。もう、早くないかって。
いいの。少し見た。」
出ました。現われいでたるたこ焼きマントマン。その背中に乗っけてもらう。
「そうお、ハハハ、一度遊びに行く。一匹でいいや。食べてみる。せっかく持ってきてくれて。
へえ、これがミミズね。」
もう、早く帰ろう。家路の食卓が待ち遠しい。ヤッパリ住み馴れたミミズがいっぱい
溢れる土の中の田舎暮らしが彼にとって最高の住み家であった。
523:名無し物書き@推敲中?
09/12/10 23:23:26
「通販」「無礼者」「映画」
今どきシブヤなんて
たいして
モノ揃ってないし
ぶっちゃけ
通販のが
チョー楽だっつったのに
「いーぢゃん。マルキューで買い物してさっ、その後映画行こぉ?」
真狸香がそう言うから
仕方なく
あたし
電車に乗る
「何よ。映画ってロクなのやってないじゃん。アニメばっかで」
散々買い物に付き合わされて
やっぱいーモノ全然なくて
あたし不機嫌
「へえ、ルパン今度はアフガン行っちゃうんだー」
真狸香のノー天気なことばに
なんかムカつく
タコ焼き食いながら仕方なく映画見てたら
「こぉの、無礼者がぁーっ!! 映画館でそんなもん食うなぁ」
なに? このオヤジ
ウザい
ってゆうか
早いとこ消えて
ハゲ
次のお題:「手紙」「電球」「カギ」
524:「手紙」「電球」「カギ」
09/12/11 03:50:16
雪の無人駅に線路をきしませ、二両編成のくたびれた車両がやってくる。
私は毛糸の手袋をした手で手動式のドアを開き、大きな荷物を引きずって無人の車内へ乗りこんだ。
暖房が、冷え切った頬を急速に暖めていく。頭を振ると、ホームで降られた、雪の残りが鼻の頭に落ちてきた。
私は、少しぬれた手袋を脱ぐ、白くなっている指先に息を吹きかけた。電車はゆっくりと動き出す。
窓の外では、先ほどから緩やかに降っていた雪が少し右へ流れていくのが見えた。
雪の向こうの灰色の街は、一体いつからあって、いつまで在るんだろう。そんな事を考える。
私が東京に行っている間に、生まれてから過ごしたこの街は変わるのだろうか。ここに帰ってこれるんだろうか。
どこにあるのかわからない太陽が雪雲の向こうで沈んでいき、窓外に夜が迫る。
このまま、電車が止まらないで、ずっと街が流れていく様を見ていたいなと思う。電車に乗っている間は、
私の時間が止まっている気がするから。何もなくならない。何も変わる事なんてない。
でも、夜が走り、街はどんどん輪郭を失っていく、ぽつぽつと現れる明かりが、胸を締め付けた。
旧式の電球式の明りが灯り、窓外の景色が消え、ガラスは私の姿を映し出す鏡になる。私の持つカバンのポケットからは、
手紙の端っこが飛び出している。ラブレター。そんな言葉が少しだけ重くて、封を切ることができないでいた。
街を離れる私は、心を置いていくのが怖い。心は閉じたまま、カギをかけていたかった。東京でひとりでやっていけるように。
私は、窓を開け、手紙を引っ張り上げる。そして、窓外へ投げた。あて先も送り主も無記名の手紙が、雪風にあおられ、
回転しながら視界から消えてく。少しだけ胸の奥が痛んだけれど、私は急いでうつむいたまま窓を閉めた。
今は、自分の顔を見たくない。線路の継ぎ目を越える音だけが、規則正しく響き続けている。
次のお題「バラ」「お茶」「電話」
525:「バラ」「お茶」「電話」
09/12/11 21:31:24
「きれいだね……なんて言うバラなのかな」
台所でお茶を入れていた久美子が笑って答えた。
「クララ・ルドヴィヒ。冬薔薇で無い品種よ」小さな濃厚な赤色を
した小さなバラだ。
窓際のテーブルに紅茶茶碗がふたつ並んだ。
「ほんと、今回はお世話になっちゃって……」
久美子は有料ホームのパンフレットを眺めながら言った。
子供達がそれぞれ家庭を持ち、彼女はこの家でひとりになった。
「もったいないような気がするね。いい家じゃないか。憲一君も、
由美子さんも欲しがるんじゃないかな」私は壁の柱を軽く掌で
叩いた。
「いいえ……」
久美子は横顔に、作り笑顔をした。「思い出が有り過ぎるもの」
彼女の夫は地元の資本家であった。若い頃からの放蕩ぶりは
収まらず、最後には妾宅で急死した。
「まあ、それも人生よね」寂しそうに笑った。
私は医療施設の嘱託をしている。その施設と関係のある有料
老人ホームへの久美子の入居を手伝った。
「若いって、いいことよね。あれから何年経ったかしら?」
「あれから?」
久美子は、そっとうかがうように、私の顔を見て、また目を伏せた。
……あれから……そうだ。もう60年になる。覚えている。だが、
私は、そらとぼけた。「じゃ、こことここに捺印」契約書に鉛筆で
丸を描いていく。
久美子は指に力を込め、ひとつひとつ印を押した。
「電話してね」
「うん」私は、靴を履きながら、はっきりしない声で答えた。
あの、ふた枝の小さなバラは、からむように茎を寄り添わせていた。
しばし覗いた赤い赤い情熱の埋もれ火を、また私は深くうずめた。
次のお題「熱湯」「遺伝子」「ハイキング」
526:「バラ」「お茶」「電話」
09/12/12 16:29:39
《もう一本書かせて頂きます。お眼汚ししてすみません。》
「Communication request. Here Charlie,O.V.E.」
「Here U.H.V. YAMATO communication permitted. 」
「Arrived spot area.」
俺は機体のノーズを下げ、低速で舐めるように洋上を進行している。
吹き付けるジェットに、浮力のある黄色い緩衝材の貼りついたジュ
ラルミンの断片が浮きつ沈みつ、ゆったりと回転しながら漂った。
空中空母、天鶴の残骸らしい破片は、海域を40km以上に渡って
散乱していた。生存者の存在を示す着色剤の痕跡も洋上に観測
できない。残骸はバラバラの状態だった。搭載していた8機のF-8
「隼」の機体もみえない。大和の青島飛行隊長から秘話電話が入る。
『やはり、<引き伸ばされたような痕跡>か?』
「そうです。被撃墜、もしくは事故というには範囲が広すぎます」
『そうか、ご苦労、帰ってお茶でも飲んでくれ』
―――――お茶――――――
…………これも、『Turnaround Expatriate Aggressive』
(攻撃的変成異世界来訪者)の仕業ということか……
俺はスティックをゆっくりと倒した。恐怖がじわじわと飛行服の背中を
なでまわす。 T.E.A. の正体は、今のところ人類の誰も知らない。
先月、米海軍の大型空母K.O.B.54が沈められ、中国海軍の海底空母、
濤馗も何者かに襲われた。それはまるで瞬間的に引き裂かれるよう
だったと言う。この海の中に、おそろしい敵が眠っている。「彼ら」の
目的は、わからない。
俺はF-8sv海隼偵の可変ノズルを引き上げ、超音速飛行に切りかえた。
―そしてそれが、自衛隊旗艦・UTシステム搭載超大型護衛艦大和と、
異次元からの侵略者との壮絶な戦いの序章だった。
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527:名無し物書き@推敲中?
09/12/13 14:02:51
「大腸の入り口に大きなポリープがありますね、癌にこれはなりっかっています。癌でしょう。よかったです。検査を受けて。」
極めて明るく平然と言い放つお医者さん。凍りつく自分を物ともしない。驚きより宙を彷徨うごとき己に頓着せず嬉々たる笑みすら
浮かべ、とくとくとエコーの画像解説に余念が無い。エコー検査真っ只中のあられもない恰好のまま、顔だけ巡らし懸命に見入る。
ま、まあそういうこともあるだろう。帰りの会計、え、え、2万4千円。そんなかかるつもりなかった。た、足りない。銀行のキャッシュカードの
機械があった。暗証番号が押せない。反応してくれない。ぶれる。焦る。
「あのさあ、自業自得だよね。言わせて貰えば、厚子さん。」
「そうそう、ワンパターンのネタ。文才の無さ。お粗末極まる文章といえるか疑わしいレベルの低さ。付け加える処に推敲ゼロ。」
「酒の飲みすぎ。パートを辞め、執筆小説すべて落選。それからだんだん言動もおかしくなった。」
ここは厚子さんの家の台所。冷蔵庫の食材、調理器具が織りなすは時ならぬ家の住人が寝静まった真夜中のハイキング、園遊会。
「皆さん、聞いてください。」ザワザワ噂話ガピタリと止む。「何、そういうあなたはお豆腐さん。」
「そうです。何を隠そう、我こそ遺伝子組み換え交配豆腐。ジャジャーン、ここに登場。
「大変な事態です。こういう時こそ一致団結。事態を打開しましょう。」どう、打開をする。質問が集中。
「さあ、汽笛の合図、ヤカンさん、熱湯の湯気を一発お願いします。」
ププ、ポンポン、綿雲、羊雲、シュークリーム雲。ラララ、片付け、お掃除、大掃除。まったくやらない
厚子さんに代わって冷蔵庫、電子レンジ、ガス台の汚れ落し、換気扇の油落し、要らない野菜屑はゴミ箱の中へ。
私達、キッチン家族、仲間一同、気合を入れて頑張りましょう。お鍋、グラスは磨いて、茶碗の茶渋はハイター。水周りも抜かりなくハイタを撒いて!
夜の魔法、夜中の魔法、キッチンに降り敷く魔法の星屑、魔法のミルキーウェイ。
それをこの家の一人娘が目をまん丸に見ている事を誰も気が付かなかった。
528:名無し物書き@推敲中?
09/12/13 14:07:46
お題「魔法」「ブロッコリー」「クリスマス」
529:「魔法」「ブロッコリー」「クリスマス」
09/12/13 19:13:03
「野菜もうちで作れればいいね」
たっこは、前から言っていたが、近くの園芸店で、ブロッコリーの鉢を、
買ってきた。プランターに植え替えて、ベランダに置いた。
「スーパーで買ってきたほうが手軽じゃない?」僕が言うと、
「気分の問題」と、たっこは言った。植物を育てるのは、確かにひと財産、
家に導入したという気分になる。
プランターの向きを前後入れ替えたり、水をやったりするくらいだが、
丸いブロッコリーの花つぼみがだんだん成長してくると、それは可愛らしく、
動物の仔の頭のようにふくらんできて、なんとなく食べてしまうのは惜しくなった。
「食べよっか?」たっこは吹っ切るように言った。三ヶ月も育てていれば情が、
わくというものだが、たっこは、そういう点ではある意味、真摯である。
クリスマスイブ、僕が会社から帰ってくるのを待って、たっこはブロッコリー
を茹ではじめた。皿を電子レンジで暖め、それに盛り付けたブロッコリー
は、美味しそうで、クリスマス・ケーキの存在が、ちょっとかすむくらいだった。
楽しい思い出だ。
たっことは、最後までこじれた感じにはならなかった。別れた理由も、その
必然も、僕も、たっこも結局、分からないんじゃないかと思う。
「また、一緒に暮らそうと思ったら、三回だけベルを鳴らして」
僕はベランダに出た。一株だけ残したブロッコリーに、小さな黄色い花が
咲いている。その、つぶつぶとした花の集合体は、何かを誘いかけている
ような気がした。
僕は携帯電話のアドレスを見る。それは多分一度だけ有効な魔法。
魔法の番号。たっこの携帯電話番号。
次のお題。「夕日」「ホームセンター」「泣きやむ(泣きやんだ)(泣きやんで)…」
530:夕日 ホームセンター 泣きやんだ
09/12/13 22:57:28
空は泣きやんだ後の目の色をした夕日である。
午後から降り続いた雨は、買い物の合間に
すっかり止んでいた。買い揃えた一人暮らし分の
日用品は非常に軽くて、何もホームセンターでなくても
揃いそうな品ばかりである。
本当は傘を買いたかったのだが、ここに来るまでさして来た
傘に、実家の香りが染み付いている気がして、急に愛しく
なったのだ。
夕日の下、傘を広げると小さな穴が無数に見えた。そろそろ
代え時なのだが、せめて一人暮らしに慣れるまでもう少し、と、
私は周囲の目を気にせず傘をさして歩き続けた。
「オッドアイ」 「画家」 「未亡人」
531:「オッドアイ」「画家」「未亡人」
09/12/14 06:57:03
画家は夕刻前に館に到着した。門番は言い付かられていたらしく、
画家の粗末な馬車を敷地内に入れる事を許可した。広い前庭の石畳
の道を母屋へと進む。荘厳な二階建ての建物の白い壁を、曇天を
透過した夕日のほのかな光が浮き立たせていた。
画材と持ち運ぶには少々重量があるイーゼルを馬車から降ろす。
下女が画家を邸内に案内する。窓は締め切られ、そこここに蝋燭
のペンダントがゆらめいている。邸の外部は石組みにモルタルで
形成されているが、内部は渋く沈んだ木製の壁板と調度で誂えら
れている。長椅子に座りしばし待った。
扉が開き、下女を従えて今回の依頼主が部屋にゆっくりと歩みこんで
来た。古い、フレームの入ったスカートを履いている。この屋の主人だ。
また彼女の衣服も、濃い茶色の色彩で統一されており、所々にビーズ
やレース使いはしているが、重々しい、時代がかった扮装に見える。
「いらしてくれて感謝します」彼女は低く、老人特有のかすれた声で
言った。「いえ、お呼びくださったことを感謝します」
茶を飲み、時候の話をすこしして、主人の未亡人は私を地下のアトリエ
に案内した。そこは広い板の間部屋で、この館が歴史が古く、また贅沢
な構造である事を示していた。「ご依頼があります」未亡人は下女を
全員部屋から出した後で言った。「私の、一番可愛らしかった頃を、
描いてください」
画家は、左目の眼帯を外した。青い右目の虹彩と反して、隠された
左目は透き通るような紅い虹彩をしている。幼い頃、馬から落ちて、
怪我をしてから、画家の瞳は、オッドアイになった。それから、地を
さまよう亡霊や、未来の映像が左目に映し出されるようになった。
何度も恐れ、逃げ続けた未知の能力が、今は画家の生業を助ける。
未亡人は、椅子に座り、画家の指示でポーズを細かく修正した。
赤い瞳で、その姿は、未亡人の、老婆は、十四歳の彼女の姿へと
急速に変貌した。
次のお題「保存液」「自転車」「かごめかごめ」
532:名無し物書き@推敲中?
09/12/18 03:58:04
保存液 かごめかごめ 自転車
保存液から眼球を取り出しゆっくり、慎重に右の穴に埋め込む。一度強く目を閉じ、それから徐々に瞼を開いていく。何回かまばたきをし、鏡を見ながら位置を確かめる。
君と右眼を失ってからどれくらい経つだろう。今でもまだ残された左眼は君の夢を見る。君は近いようで遠い、あの時の淡い青のワンピースのままで………。
距離感が掴めないのは片方になった眼のせいだけじゃない。出会った頃からそうだった。捉えどころのない、ピントがずれた世界に生きる君。
触れたくても、触れられない。チェーンの外れた自転車を漕ぐみたいに近づく事が出来ない。むしろどんどん遠ざかっていく。そして最後まで触れる事は出来なかった。
優しい風に呼ばれ窓に目をやる。カーテンが揺れている。君のいた窓辺。君のいたキッチン。ソファー、庭。全てにまだ君の温もりが残っている。まるでついさっきまでそこにいたように。君の香りが。君の気配が………。だから僕は君を探す。
顔の無いかごめかごめ。鬼のいない鬼ごっこ。鬼だけの隠れん坊………。君はもういない、だけど僕は探し続ける。片方の眼を頼りに。僕はさまよい続ける。片方の眼だけで。
次題 囁き 火傷 侮辱
533:囁き 火傷 侮辱
09/12/19 20:29:44
土壁の部屋で俺は目が覚めた。古い畳は、薄い布団から身を起こした
ときに、みしっと僅かな音を立てた。
中庭に向かう俺の寝かされていた二階の障子は開け放たれており、
この家の子供か、女の子が庭の水道で遊んでいた。
ああ……あの囁きを思い出した。「あなたは帰ることが、もうできないの」
そうか、俺はランニング・シャツの二の腕に、ある筈の酷く引き攣れた
火傷の痕を観た。古い傷だ。
……その傷痕は既に無く、やや日に焼けた清浄な腕があった。そうか……
帰れない、帰れない。俺は、水中に転落して、ドアが開かなくなった車中の、
最後の記憶を思い出した。
記憶はまだ残っている。いつまでもつかは判らない。俺の人生を、あるいは
清めた気分だろうが、神様、これはちょっとした侮辱だ。
次のお題「悪夢」「片方」「テロップ」
534:悪夢、片方、テロップ
09/12/19 22:10:38
目を閉じれば浮かぶ言葉たちが、テロップのように頭の中を流れる。
それらは一文字一文字が鮮やかな色彩を持って美しく、
このまま眠りについた先が永遠の悪夢でも構わないと思った。
たくさんの選択肢をたどって、ついにたどりついた二択。
残されたもう片方の選択肢はまた誰かの人生に入り込んで
選ばれていくのだろう。
頭に流れる文字達はやがて透明になり、かすれて行った。
そんな形にも音にも残らぬ遺書が、綺麗に僕を堕とした。
「パンツ」 「あぐら」 「休日」
535:パンツあぐら休日
09/12/21 00:12:21
千代子はパンツ姿のまま洗面台に向かう。化粧を落としているらしい。また、
妙な店で働いてきたのか。そういえば、昨晩は帰ってくるのが随分と遅かった。
僕はあぐらをかき、テレビをつけた。しかし、画面に集中できずに首を振る。
久しぶりに見た千代子の裸体が、頭の中に張り付いていた。
「千代子、昨日はどこへ行っていたんだ」
「んー?」
やる気のない声だけが返ってきた。質問への答えはない。代わりに、水のは
ねる音がした。
「久しぶりの休日だ、って昨日言っていたじゃないか」
「ごめんごめん」
笑い声交じりの千代子の声に、僕は微かな苛立ちを覚えた。もともと、あの
店で働くことを僕はよく思っていない。千代子はまだ若いのだ。いや、幼いと
もいえる。金がないのであれば、僕が渡してやるというのに、千代子はかたく
なに拒んだ。
気にならないわけではない。だけど僕は不満を喉の奥に押し込め、それ以上
は何も言わなかった。互いのことには深く干渉しない。それが、僕たちが同居
する際に作った最初のルールだったからだ。
次「娘」「蜘蛛」「独り言」
536:娘、蜘蛛、独り言
09/12/22 17:50:55
「あの子、さっきから独り言ばかりしゃべってる」
そう母に言われたのは、夕食後の団欒時だった。
団欒時といっても、父と母、そして僕の三人だけで
過ごす時間であり、母のいう「あの子」は部屋の隅で
壁に向かい膝を抱いていた。
あの子は父の妹の娘である。事情があって我が家に
同居しているが、ちっとも僕ら家族に懐かない。
父も母も同居始めはとても気に掛けていたが、最近は
勝手にしろと言わんばかりに、関わりを持とうとしない。
僕はそんな彼女をちょっと憐れんで、話し掛けるように
している。今日も壁に向かっているあの子に近寄ると
同じように膝を抱いて座った。彼女は壁の隅に巣を張った
小さな蜘蛛を見つめていた。「何してるの?」と問うと、
彼女は「ママと話をしてるの」と言った。そして言ったと
同時に、小さな指を伸ばすと蜘蛛を摘み殺してしまった。
僕はただ彼女の指先を凝視した。指先にはタバコを押しつけ
られた火傷の跡がある。
「夜の蜘蛛は、親だと思って殺さないといけないの」
彼女が指先を擦った時、僕はそこから視線を逸らした。
彼女の母の死因は未だ不明だが、僕はさきほどの
幼い指先に、確かな殺意を見た。
「足音」「笑う」「早朝」
537:名無し物書き@推敲中?
09/12/22 23:39:45
早朝 足音 笑う
早朝のホーム。酔っ払い達が夢の後。青白い馬の蹄の音。迷子達の足音。僕はじっと線路を見下ろし、その鉄の冷たさを想像していた。
何故この場所を選ぶのだろう。死んだ事がないし死んだ者から聞いた訳ではないが、結構な痛みを味わいそうだし、電車が止まるとことで沢山の人が迷惑する。
迷惑をかけたいのさ。そうだろうか?そうだよ。迷惑をかけることで怒りであれ、憐れみであれ大勢の人々の関心が自分に集まる。
今までになかったほどの関心が。それがたとえほんの一時でも。死を選ぶやつの理由なんて大体そんなところさ。そう言って彼は自嘲気味に笑う
そんなものなのかなあ、僕は線路に散らばった僕の欠片を想像した。パーツの配分は滅茶苦茶でお世辞にも美しいとは言えない。でもどれも愛おしい僕。
何かを掴もうと開かれた手首。片方だけ立った足。その全ての部位の一方に柘榴の輝き。その全てが一つだった跡。僕は彼らを思い泣いてしまった。
けたたましいベルとともに日常が始まりだした。僕は慌ててホームに背を向け、おぼつかない足取りで亡者の群れに紛れた。溺れそうになりながら階段を上りようやく地上に出る。だけどやはり気圧が変わっただけで。息苦しさは消えなかった。
次題 人魚 シアン 竪琴
538:人魚 シアン 竪琴
09/12/23 13:15:33
「ラスプーチンって知ってますか」河童は訊いてきた。
「ロマノフ王朝に入り込んだ怪僧」
「彼は、陰謀でシアン化合物入りの菓子を食わされたけど、死なず、銃殺された」
「……河に投げ入れられたあと、十字を切っていた」
「あなた、お詳しいですね。素人とは思えない」俺はやれやれ、と思った。
「何回言えば分かる?俺は奇現象研究家だ」
「だから……ここにいるの!何度説明させるの?」俺の語尾は欽ちゃんっぽくなった。
河童はしばらく黙っていた、「……だから、あなたの尻小玉をいわば罠の餌として……」
そうだ。だからこの人里離れた河畔にいるわけだ。
「あなた、前提が間違っている。河童が尻小玉を抜くというのは俗説。溺れた人の肛門が開くのは、
体内の常在菌の活動が、停止した生命活動で活発になり、腹圧の限界を超えてガスが体外に出る事と、
肛門括約筋は、随意・不随意の支配下にありますから、死ぬと緩むんです」
俺は、尻小玉の存在そのものを……「で、わたし、河童じゃなくて人魚です」
ええ?じゃそのクチバシとか背中の甲羅とか、頭の皿は?
「ああ、これは、クチバシは呼吸用と、海中は異波長ですから変換器。甲羅は浮力体。頭の皿は塩分補給用の
行動食の電解質滴下用具です」「脚二本あるじゃねえか!」
「海でのあれは、70年代風に言うとアタッチメントです。海中を100ノットで泳ぐメカというか」
彼女は、そう言って扮装を解いた。なまめかしく意図せずして手を伸ばすことを誘うようなくびれた裸体が
硬質であり、また暖かく包み込む白い曲線を月光にひいた。
髪に、唇に甘い香りがする。彼女は自ら俺の手を秘所におずおずと導いた。俺は、彼女の潤った身体を、
幾度となく潜り、締め上げ、深く漂った。彼女は、しばらく耐えたあと深く咥え込み、不規則に痙攣した。
「ああ、いい月だ、君が人魚なら、竪琴を弾いてくれないか?」
彼女は、また驚いたような丸いまなこを開いた。
「誤解です。竪琴というのは一種の美化で、本来は『堅事』と言うのが正しい。我々種族が、
『どうでもいいことをさも重要であるように、かたっくるしく薀蓄たれる事』の意味です」
「じゃ、あなたとわたしの子供が生まれたら、連れてきます。教育は陸上の方が選択の幅があるから」
彼女はそう言うと、俺の意見も聞かずにとっとと海に帰っていった。
539:名無し物書き@推敲中?
09/12/23 13:16:27
次のお題「食玩」「デート」「ドリフト」
540:食玩 デート ドリフト
09/12/26 14:54:42
もう夜半すぎのことだった。とある山の林道沿いに車をとめて僕たちは肩を寄せ合っていた。そこ
はちょうど山間部から街を見下ろせる場所で夜景がきれいだったし、人通りもなかった。僕たちは
そこでよくデートをした。僕は彼女のウェーブのかかった髪に指を絡ませて首筋を眺めていた。視
線を上に向けると街の灯りが彼女の瞳に映ってきれいだった。彼女はずっとフロントガラス越しに
街を見ていた。
「さっきから下のほうで光が動いているわ」
光の帯が時おり真黒な山肌からレーザー光線のようにとび出たりしていたのだった。
「あれはドリフト族っていって峠を車で徘徊してる奴らのライトだよ」
彼女はそう聞くとじっと僕を見詰めたまま僕の方に頭を預け冷たい手を僕のズボンのポケットに
突っ込んできた。彼女はいつもそうすることが好きだった。
「世の中にはいろんな人がいるのね。なんだか不思議な気分になっちゃう」
僕の首筋にかかる彼女の息は熱かった。きっと僕と求めていることは同じだろうと思った。僕が
彼女の唇に近づいた時に彼女は僕のポケットからゴソゴソと何かを取りだした。
「これ何?」
それは確か昼飯の時に買ったお茶についてきたおまけだった。僕がその食玩について説明しよ
うとする前に彼女から切り出した。
「これって、いやらしい玩具じゃない?」
「お茶のおまけだったんだ。ただポケットに突っ込んどいただけだよ」
彼女はもう僕からカラダをはなしていた。
「ねえ、K子。たしかにそれはいやらしいことにも使える。でも世の中は不景気なんだ。売上を上
げるためにどこの企業も躍起になってる。ルールがありそうで生きるためなら何でもありともあ
る意味言えるんだ。おもちゃのマッサージ器と書いてあるけど、もちろん君の言ったように別の
使い方もある。それを目的でお茶を買っちゃう人もいるんだよ。悲しいけどこれが現実なんだ」
「あなたは何の目的でお茶を買ったの?」
「ただそのお茶をいつも飲んでるからだよ。それだけの理由さ」
僕は彼女のカラダを引き寄せようとした。彼女は僕を見つめたまま言った。
「世の中が狂っているのか、私が狂っているのか、ほんとうにわからなくって」
僕が彼女を抱き寄せると、彼女の言葉が僕にも感染した気がした。
「暇つぶし」「国債」「銃弾」
541:暇つぶし、国債、銃弾
09/12/28 22:11:46
まいってしまった。さて、どうしよう。
部屋が汚いことも、それを今日片付けようと
思っていたことも、今はどうでもいい。
真昼のニュースは、どこぞの国のお偉いさんが
銃弾に倒れたと緊急放送ばかりしている。
どのチャンネルにまわしても、きっと同じだから、
テレビももう気にしない。
暇つぶしに小説を書こうと思ったけれど、
さて、国債をどう使って書いたらいいものか。
「眼差し」 「無言」 「親子」