この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十三区at BUN
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十三区 - 暇つぶし2ch400:名無し物書き@推敲中?
09/10/12 10:46:32
「坂道」「標識」「どんぐり」

「縄文時代はおそらく主食か、それに次ぐ食糧だったようです」
「どんぐりがですか?」
「ええ、灰汁を抜いた上で粉食に加工して焼くか、茹でて食べたらしい」
郷土史家のアザイ先生は、城址に続く坂道を登りながら言った。
紅葉はもう終わりに近づいているが、晴れた日射は少し汗をもよおさせる。
「それで、城址の石組みの再建工事で発見された大量のどんぐりは」
「うーん、時代が違いますね。炭化した状態で発見されましたが、縄文期と言う
のはありえない。石組みははるかに後代のものですから」
「祭祀に使ったとか」
「あるかもしれない。まだまだそういったものや、非常食にしても資料が足りない」
「どんぐりはありふれていますから、物を数えるためのツールに使ったという説も
ある。場合によってはアンデスの文明でのキープに近い表記法に使われたという
話を唱える研究者もいます。現存して発掘されることは難しいです。石造の遺構
とかと比較して、そういう意味で明確には解らない」
「城の場合は」
「あの城の場合は分からないです。今回の調査は、あくまで崩れそうな二の丸
近辺の石組をはいで露出した場所です。本丸を掘れれば何か、どんぐりうんぬん
以外に何か成果は出る可能性はあるが、現状ではああいう核心的な場所は、
まだまだ聖域あつかいですね」
「縄文の人物が、仮にどんぐりを使って示すとしたら何ですか」
「うーん。僕としてはその説の提唱者では無いですが、仮にあるとしたら収穫物
の集計や、集落の人口や、また祖先からの口承の補助とか、
ああ、それから遠征した狩りの先発部隊の向かった先の標識のような可能性もある」
私の脳裏に、毛皮を着た背丈は低いが、屈強な男達の小集団が浮かんだ。
この坂道から観える山岳は、ほどなく白く冠雪するだろう。
豊穣をもたらすが、同時に生命に危険ももたらす。
彼らは、後続の男達に、そして村に残る女達に、何を伝えようとしたのだろう。

御題です。「納豆」「キャンプ」「変わった食べ方」

401:名無し物書き@推敲中?
09/10/12 14:28:53
母ちゃんが買って来たスーパーの袋を漁る。じゃがいも、にんじん、たまねぎ、カレー粉。
「あれ、納豆は?」
僕は母ちゃんに抗議した。また忘れやがった。
「買ってくる!お金くれ!」
「あんた、わざわざカレーに納豆入れんのやめなさいよ」
母ちゃんはいつも僕に言う。けど僕は譲らない。
去年の夏休み、父ちゃんがキャンプに連れてってくれた。父ちゃんと会うのは久しぶりだった。
その時に、ありきたりではあるけれど父ちゃんはカレーを作った。
僕が父ちゃんの料理を食べたのはそれが初めてだった。
「納豆入れるとうまいんだ」
「変わった食べ方だね」
抵抗はあったけど、食べてみると凄くおいしかった。
僕の両親は僕が今より小さい頃に離婚した。
キャンプへ行った翌月には再婚相手との間に父ちゃんの子供が産まれた。
僕はもう父ちゃんには会えないかもしれない。
けれど、あのカレーの味は忘れないんだ。

同じお題で

402:「納豆」「キャンプ」「変わった食べ方」
09/10/12 19:02:34
10月12日(月) new!

今日あった話して良いですか?
今日ね、大阪は大阪市、御堂筋のホコ天で
納豆の躍り食い大会が催されたんですよ。
三連休の最終日ってこともあって
前日、前々日に比べて、参加者はちょっと少なかったんですけど
それでも納豆ってホラ、珍しいじゃないですか。
それに天然物だって云うから、
なんだかんだで、そこそこ集まったんですよね。人。
勿論、こうしてチラ裏(笑)な日記書いてる私も
絶賛参加してきたんですけど(笑)
でも納豆ってホント久しぶりで、超懐かしかったです。
昔、ガールスカウト・キャンプに参加した時以来かも。
これ以上は年齢バレそうなんでやめますね(爆)
で、みなさん納豆ってどうやって食べますか?
躍り食いっていうだけあって、生なんで
大体の人は鼻を摘んで丸呑み派だと思うんですけど
中には持参の卵に絡めて食べる人とか居て(笑)
変わった食べ方ですよね(笑)
チャレンジャー過ぎて真似できない(笑)
でも、結局優勝したのはその人でした。
やっぱり勝負する時は、大きくでないと勝てないってコトなのかなあ・・・残念(泣)
来年もまたやるみたいなんで、大阪に遊びに来た人は
是非参加してみてくださいね☆

P.S
お土産屋さんでも取り扱ってるみたいですけど
あれは岡山産の養殖なので悪しからず。岡山の人ゴメンナサイ><


次のお題は「都市伝説」「ブログ」「2get」でお願いします

403:名無し物書き@推敲中?
09/10/12 19:33:46
新宮寺の前で午前2時に「死者の同窓会」というタイトルのブログをアップすると何かが起こるらしい。
そんな都市伝説があるそうだ。僕と竹田はその情報をオカルト好きの平田先輩に教わった。
金曜日の深夜、僕らは新宮寺の前で待ち合わせをした。興味本位で、その都市伝説を試してみることにしたのだ。
午前2時ぴったり。竹田は適当な文章を書いて、それに「死者の同窓会」というタイトルを付けてアップした。
「どう?」
僕は緊張しながら竹田に尋ねた。辺りはしんとしている。
「………」
竹田が不自然に黙り込んでいるので僕は少し足が震え出した。
「いきなりコメントが付いた」
竹田が俺に携帯の画面を見せた。

本当にやったんだ(笑)ばーか
名前欄:平田

「なんだよ、ビビらせんなよ」
胸を撫で下ろしながらそう言った次の瞬間、僕は息をのんだ。新しいコメントが着いたのだ。

2get
名前欄:水野

先月、事故で亡くなった同級生の名前だった。

同じ題で!

404:名無し物書き@推敲中?
09/10/12 19:36:36
我ながら上手くできたぞ!www
無駄口すまそ

405:名無し物書き@推敲中?
09/10/12 23:28:51
この板で草生やす奴は物書きとしてのプライドないんだろうな。

406:名無し物書き@推敲中?
09/10/13 04:31:10
確かに上手い
お題がすごく自然に馴染んでるわ
面白くはないが。

407:名無し物書き@推敲中?
09/10/13 21:10:07
んじゃ、また書く


「2get」
俺はたまたま開いた2ちゃんねるの板に新着スレッドを発見し何気なくレスをした。
不具合のためかそのスレッドはすぐにDAT落ちした。なんだってんだ。内定無しの俺にぴったしな待遇だ。
今日は大学を自主休講して朝から一日中家でこうしてだらだらしている。
卒業はまだまだ先だが今から不安で息が詰まりそうになる。
2ちゃんねるに飽きると、俺は自身の日常を不毛に書き連ねている自分のブログを開いた。
気晴らしに絶叫マシンにでも乗りてぇなー。そんなことを書いた日記に新着コメントの表示を見つけた。
それをクリックすると「ようこそ」の四文字だけが並んだ。
「なんだ、ようこそって」
俺は少し不審に思ったがしばらくするとそんなことも忘れ、まどろんでいるうちに眠りに落ちてしまった。

目を開けた数秒後、俺は自分の置かれた状況を把握出来ず、小さく叫んだ。
「誰か、誰か、出してくれ」
いたずらにしては度が過ぎていると思った。狭いエレベーターの個室に俺は閉じ込められている。
薄暗い証明が点いているがボタンを押しても反応しない。
俺の住んでいるマンションのエレベーターではないようだ。
すると唐突にエレベーターが動き出した。ゆっくりと上昇していく。全身にじわじわと冷や汗が滲む。
俺はふと自分のブログを思い出した。絶叫マシン…でもなんでだよ…
そして俺は、その日記についた「ようこそ」というコメントの主を特定してしまった。

俺はレスをしてしまったんだ。すぐに消滅したあの奇妙なスレッドに。
「ようこそ。これであなたも都市伝説の主人公に!」

408:名無し物書き@推敲中?
09/10/13 21:13:55
ちと無理矢理だったかなぁ

次は烏龍茶、芸人、お台場

409:名無し物書き@推敲中?
09/10/13 23:53:38
>>356-357,373,407-408
はあ。。。

410:名無し物書き@推敲中?
09/10/14 00:12:41
キモい馴れ合いスレ

411:名無し物書き@推敲中?
09/10/14 05:26:02
お台場で芸人が烏龍茶を飲んだ。

......すまん、完全な上げだ

412:名無し物書き@推敲中?
09/10/15 07:19:33
お台場に行って芸人と会い、一緒に烏龍茶を飲んだ。

「キーボード」「タピオカ」「天皇陛下」

413:名無し物書き@推敲中?
09/10/15 13:00:19
重複ですがご勘弁を。余計な感想ですが>>407さんいいなあ。

烏龍茶というクソ芸人を主役にしたお台場カンフーというクソ映画が公開された。
しみじみとクソだった。

お次は>>412さん継続で「キーボード」「タピオカ」「天皇陛下」でお願いします

414:名無し物書き@推敲中?
09/10/15 14:05:17
烏龍茶、芸人、お台場

今年のお盆に、家族でお台場に行った。私自身は東京は久しぶりである。
ゆりかもめに乗るのも初めてである。事前に思ったより左右にゆれるので
驚いた。途中テレビ局の横を通る。看板番組由来のイベントをやっていた。
期間中はタレントが場内ツアーに応援にくるらしい。おおむね関西方面所属
の芸人コンビとからしい。
台場駅で降りて、目的地に向かう。その日は太陽がぐらぐらと頭上から
熱射をたたきつけて、暑いことおびただしい。子供には帽子をかぶらせ
ていたが、自分の分をすっかり忘れていた。

砂っぽい林の向こうに、ロボットの上半身が観えた。思ったより大きい。
ロボットのバーニアを収納した背部のランドセルがイメージより分厚いのを
除けば、なかなかの雰囲気である。
下の子と妻は、日傘の陰で遠巻きにロボットを観ていた。私は上の坊主と
ロボットの周囲を写真を撮りながら巡った。息子はそれ程そのロボットの
アニメは観たことが無い。太陽に眼をしかめながら、「おおきいね」と言った。

露天風の食べ物を並んで買って、場外の手洗い場の近くの防風林の下で
食べた。変電室がある辺りである。自販機は殆ど空か、冷却用の待機状態
で、仕方なく売店で「まだ、冷えてないです」と、言われた飲み物を買う。
ジュースは冷えていないと美味しくないと思ったので、ペットボトルの烏龍茶
にする。

毎正時と三十分には、ロボットが効果音とともに可動する。
シンガーが、ナレーターでロボットの意義とか、そういうのを話す。
録音した音声なので、毎回言う事は同じだ。
『はげやま、はげやま』
と、やたら言うので、総監督への個人的な怨恨でもあるのかと思った。


お次は>>412さん継続で「キーボード」「タピオカ」「天皇陛下」でお願いします。

415:名無し物書き@推敲中?
09/10/15 21:12:15
確かに(略)面白くはないが。

416:名無し物書き@推敲中?
09/10/15 22:39:21
んじゃ、また書く

カントリーの烏龍茶を買ってきみも当てよう。
人気芸人たちがお台場で待ち受けているぞ。

ちと無理矢理だったかなぁ

417:「キーボード」「タピオカ」「天皇陛下」
09/10/16 18:11:24

『βさんからIM通してツイッターサービスまがいのメモが。たぶん暗号』
そんなコメントと共に、IMを通して豚からメッセージが送られてきた。
『βから、将棋と豚へ
〝平成天皇陛下がタピオカを食べている〟』
『どう?』
将棋は文面を凝視したまま、アゴに手をあて
薄く伸びたヒゲを数度なぞると、思いつくままにキーボードを叩き始めた。
『確かに暗号だな。重要なのは、【平成天皇陛下】と【タピオカ】の二単語で
あとはノイズ。どちらかが鍵だが、タピオカはフリーソフトの
tapiocaのことだろうな。tapiocaを単純に数字変換するなら、20、1、21、9、15、3、1』
『2進数か16進数で換数してみる?』
『そうだな。数列上の15を考慮して、2進数で換数しよう。
10010、1、10011、1001、1111、11、1
あとは【平成天皇陛下】を数値化すれば、アルゴリズム解析できそうだが
そうなると素数条件が要るな。ああ、それで平成〝天皇陛下〟か』
『どういうこと?』
『平成に入ってから、素数の西暦年は幾つある』
『えーと、今年が2009だから、1993、1997、1999、2003、の4つあるね』
『そう、4つもある。だから残りの〝天皇陛下〟のキーワードを用いて一つに絞る。
それぞれの年号を〝皇紀〟換算すると、2653、2657、2659、2663となり、この中で
2653だけが素数にならない。1993は、平成5年か。どっちも素数だな』
『おー。さすが! そこまで分かったら大丈夫だよ。
ちょっと待ってて、今デコードする』
デコート作業に入った豚を待つ間、将棋は悪い予感をひしひしと感じ取っていた。
だから数分後に、豚から送られてきたメッセージの文面に目を通しても、特に驚きはしなかった。
『これ、ちょっとやばいかも。
デコードして出力された文字を並べ替えると、aが二回登場するけど
【kidnap】になったよ。もしかして、誘拐された、ってこと?』


長くてスマソ。お題は継続でお願いします

418:「キーボード」「タピオカ」「天皇陛下」
09/10/17 02:47:14
 単になんとなく、だったのである。
 なんとなく、画面の下にある、「天皇陛下の頭」というリンクを踏んでみたのだ。

 「カチッ」とクリックした途端、妙な窓がいっぱい出て画面が大変な事に。
 「あーあ、やっぱりだ、ブラクラだったか」
 と、キーボードから再起動しようとした丁度その時。

 「この野郎ぉー」と後ろから声がして、兄の鉄拳制裁がとんできた。
 「天皇陛下を何と心得ているのか!」足も飛んできた。
 「ひょえー、お許しをー」
 「天に代わって、この兄が成敗してくれるわ!」

 殴るだけ蹴って殴ると、兄は勝手に出て行った。
 ストレスのはけ口にされた弟は、血まみれの頭でふと思った。
 「別に天皇陛下の頭を踏んだわけでもないのに・・・」と。

 冷えたタピオカミルクが、切れた唇にしみる。やるせない想いで一杯だ。
 「第一、俺って、兄貴って、日本人だったっけ」
 椰子の葉の窓から見えるメコン川は、ゆったりと、しかし何も答えてくれなかった。

※なんかわからん展開だ
 次のお題は:「電卓」「砂丘」「てんこもり」で御願いします

419:名無し物書き@推敲中?
09/10/17 08:25:51
日本で初めて電卓が発売されたのは東京オリンピックがあった1964年である。
この年砂丘で有名な鳥取で生まれた彩花、といっても当時はこういう女の名は
皆無に近かったがとにかく彩花は当時の鳥取に限らず日本海側の温泉であった
女体てんこもりつまり女の体に魚介類をてんこもりにするという愚かな風習が
どうしても許せなかったしあんなもので喜ぶハゲ散らかしたおっさんの存在が
どうしても許せなかったのである晩ハゲ散らかしたおっさんを殺害しました。


420:「電卓」「砂丘」「てんこもり」
09/10/17 09:59:39

そしてそのおっさん殺害したオマンコは女体てんこもりのまま逃走開始、
明日無き闘争だっつって疾走さながらの失踪、
でもすぐ見つかっちゃうのだって彼女、女体てんこもりのままだから。
人間的にとてもイレギュラー? って何言ってんだろ俺、
そんな俺は彼女を匿った若い男性Aなんですけど、まったく不純な動機ではないですよ、
だって彼女てんこもりのまんまだから、マンマンも生臭い、
血に染まったその両手はもっと血生臭いなんつってゲラゲラゲラ、
ゲラ刷りの一面は号外で殺人犯の彼女を捜索してるけど、彼女はもうここにはいない

寝入りばなの彩花ちんの双子の砂丘をもみしだいたら、それだけはどうしても許せない、
どうしてそんなもので悦ぶのあんたもハゲと同じ下等な法悦に身をゆだねた獣ね、
って罵られたり蹴られたりしたんでムカついて、その拍子でサクッとね

これは日本で初めてオリンピックが開催され、
ついでに電卓なんかも発売されちゃったりなんかした1964年のことで、
今は2009年なんだけど無期懲役の俺は恩赦も貰えずここに詰まっている


※なんかわからん展開だ
お題は「昭和64年」「アルミ」「偽札」でお願い


421:名無し物書き@推敲中?
09/10/17 18:13:05
ぼくは道端の歩道の柵に自転車をワイヤーで停めて、店の薄暗い階段を昇った。
中古らしい大型のレコード・ラックに、大量のレコードがジャケットの背表紙を
見せて並んでいた。昭和64年、寮や学食で観るテレビは、天皇陛下の御病状を
逐一伝えていた。その頃、貸しレコード屋は全面的にCDに移行しつつあって、
状態のいいアナログ盤が安価で買えた。ぼくは、ぱたぱたと両手のひとさし指と
中指でレコードをめくっていった。逆に数量が多いので、それだけで満足感が
いっぱいになり、棚から取り出し、レジまで持っていく事は少なかった。
店の奥に向かって、洋盤の棚のLPを順に観ていった。この店は何度か来た
事があるので、品揃えが一新する事は無かったが、ごくたまに、新入荷か、
倉庫か何かから棚に並べたのか、見た事の無いLPが追加されていた。
そうやって棚の奥の方までLPをめくっていった。指が、ふいに、めくって押さえ
ていた重ねられたLPにはさまれた。白く塗装された、アルミの、棚とLPの
間に、食いついたように指がはさまれた。咄嗟にぼくは、いろんな対処法を
考えた。店員を呼ぼうか、間抜け過ぎるな。痛みの感覚はだんだん薄くなるが、
指は白くなる。はあ、息を吐いて僕は両手の指を勢い良く引き抜いた。どん、
とLPの加重が棚の奥の壁面に当った。右手の指に、LPの包装のビニール袋
のきれっぱしと、血が付いていた。音が大きかったので、ぼくは店員の方を見た。
店員は店のカウンターの奥から段ボール箱に入った中古レコードの荷だし作業
中だった。ぼくは左手の掌で、そっと右手の中指をぬぐった。LPのジャケットの
写真の印刷が、反転して指に貼り付いていた。眼を近づけて見た。45度ずつ
回転した印刷の点が、なにか、がらくためいた、ポップな、偽札めいて見えた。

お題、「昭和64年」「アルミ」「偽札」継続でお願いします。

422:名無し物書き@推敲中?
09/10/17 20:17:40
「昭和64年製造の1円玉は偽札だあっ! これ豆知識な」
「いや、アルミ製だからそもそも札じゃねえし」

次のお題:「予言」「BGM」「甘い蜜」


423:「予言」「BGM」「甘い蜜」
09/10/18 02:50:37
予鈴がなっても女子生徒たちの話が中断されることはなかった。
隣のクラスの誰々が告白したとか、やれ援交してる子がBMWに送り迎えされてたとか、
どこどこの香水が甘い香りだとか、山田キモイとか。
一部の生徒が話をやめ席に着いたので、話の内容がよく聞こえるようになっていた。
その中で一つ気になる言葉が聞こえてきた。
「素数の年の予言」その年になるとこの学校から一人生徒が消える。
他愛のない学校の怪談話に過ぎないが、なぜかその話が気になった。
だが詳しい話が始まる前に教師が教室に入ってきて、その会話も中断された。
昼休み、校内放送から委員が選曲したBGMが流れる中、先ほどの怪談をしていた女子
グループに近づく。女子達の前の席では一人ブツブツ山田がつぶやいている。キモイ。
普段はあまり話さないので、女子達に警戒されながらも話を聞く事ができた。
素数の数字の年に学校に預言者が現れ、ある事に気づいた生徒を生贄に選び出す。
選ばれた生徒は、まるで甘い蜜に誘われる蝶の様にふらふらと何処かへ消えてしまう。
女子に話を聞く間、つぶやく山田の声が耳に届く。最初は判らない言葉が徐々に聞き
取れてくる。そして素数を数えている事に気づいたとき、山田が振り返えった。
「今年はきぃみぃだー!!」   
しばし沈黙。女子と一緒に計算をする。全会一致、再来年ですね。山田、キモイ。


「お茶目」「散々」「後悔」



424:名無し物書き@推敲中?
09/10/18 10:14:58
そりゃあ、おれも昔はお茶目すぎて散々後悔したよ。

※なんかわからん展開だ
長くてスマソ。お題は継続でお願いします

425:お茶目 散々 後悔
09/10/19 19:15:23
 人身事故のために××線がとまった。これは近頃流行といってもいいくらいで驚くに値しない。
でも僕が偶然にも現場に居合わせたとしたら、驚かなかったとはいえないであろう。僕はそんな嘘
をつきたくはない。
 そのとき女はある複雑なやり方で自らの人生に幕をおろした。その自殺方法はものすごく卑猥で、
あまりにも卑劣な行動をともなっていた。実際に目にしたのは数人であるはずだ。ほんの一瞬の
ことであり、とりとめもなく行われたのだ。そういった事情もあり、実際に具体的な報道にでるまで
には到らなかった。幸いなことである。
 しかしながらその日帰宅したとき、既にネット上ではこの件が話題となっていた。事実を知る当の
私にとっては、事実無根の中傷や、まるでやっかみのように何故だか当事者放置で噛み付き合っ
ているものたちもあった。まるで滑稽なことだ。そんななか、僕は事実を一つ一つより分け、ある一
つのブログに到達をした。おそらくこれが自殺当事者のものなのは間違いがなさそうだ。青くてき
れいな書体のブログだった。
 カラダに飼っている死の兆候を他人が読み取ることは難しい。ブログから察する限りにおいても、
それは当事者に見られなかった。しかしながらそのプロフィールにおいて、自らをお茶目であると
か、座右の銘ごとく、好きな言葉はあえて後悔をしないだとか、些細なことではあるが、僕がプロフ
ァイリングをしたならばきっとこの女は自尊心がおそろしく強く、それでいて世間の価値観とは恐ろ
しく乖離をした人物ではあるのかなと察するのだった。
 自殺の前日までブログは更新されている。明るく朗らかな文章とは別に彼女は徐々に死に近づい
ていったのだろう。
 僕はさかのぼり幾つかの更新履歴をたどっていった。読んでいくにつれ、それがどこかで見たこと
のある文章へといくつかぶつかり出したのだ。僕はすっかり忘れていたのだが、この人は僕がか
つてとある掲示板で徹底的にやりあった人なのは間違いがなさそうである。一部を転写していた
のだ。この人は散々周りの人に迷惑をかけ、最後には、それが誰でもそうあるようにその場から消
えていった。もしくは匿名の隠れ蓑の中で、一つの抽象になったのかも知れなかった。
 僕は何だか悲しくもないのが悲しかった。これ以上僕からつけ加える事はないように思う。

426:名無し物書き@推敲中?
09/10/19 19:16:13
「分身」「スプーン」「陽だまり」

427:分身 スプーン 陽だまり
09/10/19 21:04:38



ばあちゃんが死んだ。
二日前に親からの電話でそれを知って、今、俺は夜行バスの中だ。
バスに揺られる時間は暇そのものだが眠る気にはなれずに何をするわけでもなく、ぼんやりと座っている。
俺の頭を占めていたのは、「死」ということとばあちゃんが半々だった。

ばあちゃんは優しくて、モノを擦り切れるまで使うようなひとだった。
昔、縁側の陽だまりでスイカを食おうとした時、ばあちゃんの差し出したスプーンは古くて曇りきっていた。
子どもとしては嫌だったし、そのせいかスイカも不味かったのを覚えている。

あれから、元気だったばあちゃんも最近は入退院を繰り返すようになって、ぼけ始めていた。
俺はばあちゃんに忘れられる事が何より怖かった。


バスは予定通り夜中に駅前に到着し、俺はタクシーを呼んで実家に帰った。
それからは一族総出で葬儀の準備に追われた。
目まぐるしく、厳かな葬儀だった。

最後に、ばあちゃんの家の食器棚を片づけていたが、ふとあのスプーンが気になった。
普段のスプーンやらフォークやらを入れていた引き戸を開けてみる。
それなりに古いスプーンはいくつかあったが、あの日のものは見あたらなかった。

代わりに、ばあちゃんの家に不似合いな真新しいスプーンが目についた。
新調したんだろうか。
曇り一つないスプーンには俺の分身が映っていた。



「とかげ」「ティッシュ」「留守電」

428:とかげ ティッシュ 留守電
09/10/21 00:22:42
ティッシュの使い道は色々ある。だからすぐに無くなってしまう。
週に一箱だから、約一ヶ月に一回は買出しだ。こまめな広告チェックは欠かせない。今日は絶対
にのがせないな。お店に行った。
山済みであるはずのティッシュの山が遠くからでもわかるように残り一つになっていた。寝坊した
のが失敗だ。でもまだ3時。この街のティッシュ消費率はそんなに高かったのか。
僕はスーパーの入り口からダッシュをした。僕が箱のふにゃふにゃしたビニルの取っ手をつかんだ
時に、にわかにもう一つの手が伸びてきた。わずかに僕のが早い。でもそれが主婦であれば気を
つけねばならぬ。主婦はがめつい。
ふと僕がその肌色のきれいな手の持ち主に気をつけてみると、近所の美人さんだった。いつも僕
のアパートの付近で犬の散歩をしているから僕にはすぐにわかった。僕のことは知らないだろうが。
彼女は僕に気がつくとすぐに手を引っ込めた。「どうぞ」といって。ちょっと頬を桃色にしたのがかわ
いかった。
僕は彼女が気になった。出会いなんてこんなもんだ。ふとした日常が運命の出会いなんて事はあ
りえなくはない。僕が彼女を見るのは犬の散歩のときに限られる。僕には犬がいない。残念だ。で
もいい考えが浮んだ。僕はさっそく近所の自然公園にいって犬の代わりを探した。すぐに見つかっ
た。ひもがくっ付いている動物でさえあれば何でもよい。
「こんにちは」
だいたいこうやって何気ない出会いがよいのだ。
「お宅のワンちゃんはかわいいですね」僕はいった。彼女は僕の犬を見て驚くだろうか。僕はどきど
きした。
「まあ、かわいいとかげ(?)ちゃんですね」僕の作戦は成功した。次の日も、また次の日も僕たちは
街角の片隅で出合った。出会いが重なればお互いに意識しあうのも無理もないことだ。僕たちは結
ばれた。
しかし僕には恋人がいた。結局、この恋人もいっぱいティッシュを使うので、ティッシュ切れにはう
るさかった。僕が犬のお姉さんを家に呼んでいい事をしようとしたときだった。電話がなった。僕は
きっときゃつはこんな時に電話してくると確信があったので留守電にしといた。留守電が言った。
「ちゃんとティッシュ買っといてね」犬の彼女を見た。彼女は怒るどころか、僕のとかげの背中をかわ
いいと撫でていた。お姉さんはすてきな女性だ。

429:名無し物書き@推敲中?
09/10/21 00:25:01
「大仏」「紅葉」「高速道路」

430:大仏、紅葉、高速道路
09/10/21 23:46:28
高速道路がえらい渋滞だとラジオが告げている。
車同士の接触事故で車はひっくり返り、運転手が
抜け出せず道路の真ん中で救助を待っているのだ。
この時期、紅葉が綺麗だからと観光に出掛けたのが
間違いだったかもしれない。
渋滞というものは非常にイライラする。ラジオは抑揚の無い声で
実況しており、同じ景色しか見えないこの状況が、
昼間観光先で見た大仏を思い出させる。
生きている身としては、同じ景色の同じ格好はとてもつらい。
だから一刻も早くこの車から出して欲しい。
意識が遠のいてきたのか、唯一事故で壊れなかったラジオが
掠れて聴こえ始めた。

「バスタオル」 「辞書」 「深夜」

431:名無し物書き@推敲中?
09/10/22 20:45:09
あたしはお風呂場を飛び出すと、深夜にもかかわらずバスタオル一枚の
姿で一階の書店に行き、辞書を本棚から引っ張り出しページをめくった。
「ああん、ミトラヴァルナ語なんて地球の辞書に載ってないじゃん!」

次のお題:「カレンダー」「土偶」「予習」

432:名無し物書き@推敲中?
09/10/22 21:29:07
ひろくんに告げるかどうかまだ迷っている。
来る前に電話をもらっていたので、すき焼きの下準備は済んでいる。
テーブルに並べた野菜諸々の皿にはラップがしてある。

ひろくんは部屋に来るなり「なんだ?豪華だね」とテーブルの上を観て言った。
「なにか、あ、誕生日か?」見当違いの事を言った。
ひろくんはネクタイをゆるめながらしゃべる。職場の帰りに寄ったわけである。
「まいった。あんま若い子にアイデア出させるもんじゃないな」
ひろくんだってまだ三十前だ。
「アカレンダー!」「アオレンダー!」「キレンダー!」
急にひろくん叫び出した。声はそこそこ賃貸マンションなので抑えている。
「五人合わせて、ゴレンダー!!」「なにそれ」

「最近さ、ご当地戦隊とかなんとかいうのが、一部の地方自治体で、はやって
るらしい。それで若い奴が調子に乗って会議にかけたら通っちまって……
アオレンダー役がまわってきそうだ」
「それどういうとき役るの?」
「祭りとか、市民のまあ子供の来るイベントだな」
ひろくんはカバンからラフスケッチを出した。アイデアを会議にかけた後輩職員
が書いたもののカラーコピーだ。
変身ヒーローの顔には、地元の有名な土偶の顔をかたどったマスクが色々
アレンジして付いている。
アオレンダーは中でも、そこそこかっこいいような気がする。ひろくんは背が高い。
意外と似合うんじゃないかな。

ひろくんはビールを飲み出す。「あれ?コップが一個しかないぞ」
「ううん。私風邪っぽくて」台所でダシを暖める。

ひろくん?もうすこし時間をください。
わたしは、母親になる予習に、静かな腹式呼吸の練習を、はじめた。

次の御題、「野球」「卒業」「ナイフ」でお願いします。

433:名無し物書き@推敲中?
09/10/22 22:12:54
野球 ナイフ 卒業
あれで野球やってるつもりだったよな、と、ぼくは言った。
ああ、蹴ってるのにな、と、相方が言った。
どう見てもサッカーに近いよな、と、ぼくは言った。
まあ、ベースランニングするけどな、と、相方が言った。
グローブが要らないからよかったよな、と、ぼくは言った。
よく考えたよな、ガキなのに、と、相方が言った。
でも、誰が持ってきてたんだろうな、あのボール、と、ぼくは言った。
誰か買ってもらってたんじゃね、と、相方が言った。
甘やかされてんなあ、と、ぼくは言った。
ナイフ買ってもらってた奴のセリフか、と、相方が言った。
アウトドアにナイフは必須だよ、と、ぼくは言った。
キックベースにもドッジボールは必須だよ、と、相方が言った。
ぜってーおめーのボールだったべ、と、ぼくは思った。
小学生の元気なかけ声はいくらでも響くが、カラスの鳴き声はしない。

つぎのお題は、ベース、元気、カラス。

434:名無し物書き@推敲中?
09/10/22 22:40:47
カ~ラ~ス~、なぜ鳴くの~。志村けんならこう言うであろう。
カラスの勝手でしょう。
ベースとなるのは不条理または無意味である。
論外であるほどよく、不毛であるほどよい。
ゆえに我曰く。元気があり余ってたんだな。

つぎのお題は「江戸」「小判」「発掘」でヨロシク

435:名無し物書き@推敲中?
09/10/22 22:41:29
「カラス」
「スカラべ」
「ベース」
「スライム」
「ムース」
「スタッフ」
「フェイス」
「スタイル」
「ルース」
「……」
「元気ないね。どうかした?」
「もういい。おれの負けっす」

次のお題:「超特急」「繭」「ルーズリーフ」

436:名無し物書き@推敲中?
09/10/22 22:54:43
新人を発掘したいんだよね。大型新人。小判ザメみたいなのはいらない。
時代を築きたいんだよ。江戸時代よりも強固な。そこでは俺様がルールだ。

次は「閉店」「出社」「残務」ね

437:名無し物書き@推敲中?
09/10/23 17:59:50
来月で閉店なのに休日出社して残務処理。休日手当くれお。


次は「異次元」「猫」「大河原」

438:名無し物書き@推敲中?
09/10/23 19:08:39
おれはロドリゴ。今まさにどでかい悩みを抱え込んでいる最中だ。
大河原というのを地名として処理していいのか人名として処理していいのか。
異次元の悩みとも言える。固有名詞は禁じ手だからだ。処理速度は制止にちかいが
猫の手はいらないニャリヨ-。

次「小泉」「清水」「石塚」

439:「閉店 出社 残務」
09/10/24 16:04:30
 閉店セールは間もなく終ろうとしていた。外は雨だった。一時間前から強くふりだし客足はぱた
りととまっていた。既に最終日であり、社長が現れて店員の一人一人を奥の事務所に呼び出して
いた。残った従業員だけで、その日の残務処理も事足りそうだった。
 明日から僕も新しい会社へ出社しなければならなかったので、早々と挨拶を済ませて帰りたいと
ころだった。閉店の10分まえには最後の客もいなくなった。僕はバックヤードの折りたたみ椅子に
腰かけて従業員の出勤カードを眺めていた。社長が現れた。
「ご苦労さん。店の中はいつもどおりこのままにして置いてください。あとは全部業者が片付けてく
れます」
 実質この社長の言いなりに経営されていた店舗は遅かれ早かれこうなる運命だったのかもしれ
ない。誰もこの人には逆らえなかった。最後に残ったのはただ同然で処理される在庫の山だけだ。
「みんな事務所であなたがくるのをまってるんですよ」
 僕は社長につれられていった。でも事務所の中には誰もいなかった。
「君たちにはだいぶ世話になったね。本当にご苦労さん。君たちとは今日でお別れだけど、またど
こかで出会えたとしたら、よろしく頼みますよ。それで最後に惜別の礼としてみんなにはもうプレゼ
ントしたんだけど、私はもう次の事業が決まっているんだ。それはね、ここでためたお金を全てつ
ぎ込んだ一大事業なんだ。もうみんなにあげちゃったけど君もどうだろう?」
 いつもは殺風景の事務所に5つの白い変なものがあった。
「これは繭といってね。映画からヒントをえたんだけど、この中にはいってもう一つの時間を体験で
きる機械ってわけなんだ。つまり夢を見るようなもんなんだけど、実際にはもっとリアルだ。脳の一
部に刺激を加えることで、人の視聴覚をコントロールできる代物さ。みんな今体験中だよ」
みんなが戻ってこなかったのが今になってわかった。 1/4

440:「異次元 猫 大河原」 「小泉 清水 石塚」
09/10/24 16:06:27
 「そうかい、それは残念だね。じゃあ、がんばって」社長は僕の意思を尊重した。
 僕は小泉、清水、石塚なんてもう会わなくてもよかったが、大河原さんだけには会いたかった。
大河原さんは小泉、清水、石塚の3人とも寝ていた。そして僕とも。でも彼女は4人の中で僕が一
番よかったといってくれた。何よりもあとの奴らはただ暇つぶしに寝ただけなんだと。
 僕は暗くなった店内を歩いて時間をつぶした。あの3人のうちに大河原さんだけを残していくのに
は僕は堪えられそうになかった。
「よう、H君」
 僕を誰かが呼んだ気がした。でも、誰もいない。闇にまぎれ誰かがいるのだろうか。
「H!おまえだよ」
 小さくて黒い野良猫がバックヤードの方から現れたが、こいつがしゃべってるとは現実的に思え
なかった。
「おまえは社長にだまされなかったけど、他の奴らはだまされちゃった!」やっぱり猫がしゃべって
いた。「よう、よう、よう。きいてるの?」声の言いぐさは乞食のように意地汚かった。
 猫は立ち上がって、商品棚のチョコレートを取ろうとしていた。「おい!これ取ってくれ」
 僕はヘッテのミルクチョコをとってあげた。猫は両手でそれを取ろうとしたが、肉球を滑らせ、受け
取りそこなった。床に落ちたそれをガリガリと爪で引っかいて中身を取り出そうとした。
「もういいや」猫はアルミがガリガリになったチョコはそのままにして言った。「大河原さんはもう戻っ
てこないね。君は知らないのだろうけど、あのカプセルは未来からやって来たのもなんだよ。僕も
その未来からやって来て、つまりあの社長とやらを未来の法律にのっとって逮捕するために来た
んだ。社長は違法なものを転位させた罪さ。僕は追っかけてきたの。でもね、僕はこの次元に来る
までは自分が猫ってことがわからなかったんだよ。つまり君には難しいだろうけど、僕たちは未来
から来たといったが、それは単純に君たちがこれから行くところの未来ではないんだ。僕たちがそ
うしようとするときには、あくまで異なる次元、異次元をもってこれを体験しなければならない。次元
を超えると、生き物はある種、変質をするらしい。わかるかい?簡単に言えば、僕がもともといた
時は、時系列的には未来なんだけど、まるで君たちの成長した結果の未来ではないということさ」
2/4

441:「超特急 繭 ルーズリーフ」 1/2
09/10/24 16:08:01
 僕は猫が言っている事がさっぱりわからなかったけど、結局僕が求めるのは、大河原さんの件
だけなので、そのことについて聞いてみた。
「うん、うん。じゃあ君の言うことはわかるよ。ある意味で君は賢明な選択をしている。世の中は不
明なことばかりなんだな。実に!それを全て理解するなんてことは不可能さ。君はそれを理解して、
要領よく僕に決断を迫ったことは正しいね。事態は切迫しているんだ。君はすぐにでもタイムステッ
プをして大河原さんを助けなければならない。時間を跳び越すんだ。やり方は簡単。まあ、そこの
ルーズリーフを取り出してごらん」
 僕は言われたとおり、文房具売り場のルーズリーフを取り出した。そして、それが何を意味する
のかなんててんで知れなかったが、理解しようともせず、言われるままに猫のやり方をしてみた。
ルーズリーフは時間を跳び越す入り口である。そこに君はどれくらいの速さで移動するかの選
択を書き込めば良いんだ、と猫は言った。普通、急行、特急と、まるで銀河鉄道をまねたような選
択を猫は言った。馬鹿げている。でも僕は書き込んだ。超特急。
 何も起こりそうにはなかった。ルーズリーフはただのルーズリーフであり、その上にかかれた文
字はただの文字にすぎなかった。そしてあまりの異質の静けさとともに、猫も消えていた。
僕はきっと夢を見てたんだ。そう思おうとした。そうでもしないとこの馬鹿げた現実に気が狂って
しまうんじゃないかと思ったのだ。でもそのとき、僕がルーズリーフを閉じたその時に、閉じた隙間
からは核分裂の光を思わせるような閃光がほとばしった。僕はとっさの事であわゆくそれを落とし
そうになったが、僕に突き刺さるように放たれた光をこじあけるように、掴んでいたルーズリーフの
間に指を差し込んで、それを開いた。瞬く間に僕は全体的な光にのみこまれた。そして意識を失っ
た。次の瞬間に、僕はまたもとの店の中にいた。 3/4

442:「超特急 繭 ルーズリーフ」 2/2
09/10/24 16:10:16
 「社長が呼んでいるから先に行くね」と大河原さんが言っていた。
 時計を見ると閉店20分前だった。僕は大河原さんに社長のところには行かないほうがいいと言
った。でも理由を説明することはこの限られた時間では困難だった。社長には大河原さんは逆らえ
ないし、おまけに僕が彼女を説得するだけの理由にはまったく意味をなしていないことは現実的に
たしかだった。だから僕は社長に変な機械に入ってくれといわれても、絶対にはいってはいけない
とだけ念をおして伝えた。彼女に僕の真剣さを伝えるために、僕は念をおしてそれを伝えた。
 僕はさっきと同じように事務所に呼ばれた。でもそのとき、僕が事務所の中にはいろうとした時、
廊下の向かいにある鏡に映った僕の姿は僕ではなく、小泉だった。そして事務所内には大河原さ
んの姿がなく、繭がまた5つあった。ふたたび同じように社長に言われ、闇から猫が現れ、僕はま
たタイムステップをした。次には、僕は清水であった。僕がいま清水であると自覚したとき、小泉の
時と同じく、全ての清水に関する出来事が僕の中で明白になった。次には、石塚になっていた。で
は僕という存在は一体何ものなんだろう。そして僕はまた大河原さんになっていた。今度は僕に話
しかけてきたのは、僕であり、小泉であり、清水であり、石塚だった。僕が大河原さんになったとき、
僕は僕を含めてその4人ともどうやって寝ているのかもわかった。 4/4


「インフルエンザ」「検温」「エレベーター」


443:インフjルエンザ、検温、エレベーター
09/10/24 18:19:25
いつもなら3階の自分の部屋まで階段を上っていくのだが、
今日はなんだか身体がだるくて上る気がしない。
買い物袋もそんなに中身があるわけではないのにやたら重く感じる。
今日くらいは、と、エレベーターに乗り込んだ。
やはりもう歳なのだろうか。昨晩少し遊びに出掛けただけなのに、
こんなにも身体に響くなんて、とため息が出る。
部屋の鍵が開いていたので「ただいまー」と声をかけると、娘が嬉々とした
表情で出迎えた。
「お帰り、お母さん。ねえ聞いて!うちの担任の先生、インフルエンザに
 かかったってよ!今朝方すごい熱が上がったんだって」
「もしかしたら私も熱が出て、明日学校休めるかも」などと、中学生の娘は
ふざけながら体温計を探し始めた。
娘の検温結果は今の様子では平熱なのだろうが、参ったなあと
私はまた溜息が出た。
休みたいなあと騒ぐ娘の傍らで、私は携帯を開くと密かに先生へメールを送った。
娘より先に私にうつったようです、それから昨夜は楽しかったです、と。
「きっと明日熱出るかもね」と言って苦笑すると、娘は怪訝な顔をした。
「先生に感謝しなさいよ」と付け加えて、娘から体温計を取ると、私も検温を始めた。

「テレビ」 「友人」 「電話」

444:名無し物書き@推敲中?
09/10/24 18:55:04
もう返事もしたくない気分だったので、背を向けてひとりテレビを観ていると、突然背後から直也が、外見からは想像もつかないほどの強い力で私の身体を抱きすくめた。
「なっ、何すんのよ!」
「うるせえよ。こっちが大人しくハイハイ言ってるからってずいぶん馬鹿にしやがって。お前みたいな女はこうしてやらあ」
両手で乳房の膨らみを、乱暴にわしづかみにされる。
「痛い、痛いってばあ。やめてっ」
「黙れよ。すぐに気持ちよくしてやるぜ」
左手で乳房を揉みしだき続けながら、右手が乱暴にブラウスのボタンを引きちぎる。
「いつまでも、どの女相手でもただの万年メル友人生なんてもう真っ平なんだよ。俺を甘く見て部屋に上げたりするからこんな目に遭うんだ。もう逃がしゃしねえぜ」
ベージュのブラジャーをむしり取られ、乳首を指先でこりこりといじられる。
「ほれ見ろ。もうこんなになってるじゃねえか。この淫乱女がよう」
「ああっ……だめ。やめてよ。やめてったら」
身動きができない。そうだ。電話だ。誰かに電話して助けを呼ぼう。
無我夢中で右手を、サイドボード上にある携帯電話まで伸ばそうとする。
「おっと」
ぐいっ、と身体全体が後ろに引っ張られた。勢い余って床に倒れてしまう。すかさず直也が身体の上に馬乗りになると、両足首をつかんで勢いよく左右に拡げた。
「いやあああっ」
「へえ。見た目どおり可愛いパンティ穿いてるんだな。どれ」
ぐりぐりと指がパンティの布越しに、船底型のふっくらと温かなふくらみの間の亀裂に食い込み、やわやわとこすりつけてくる。
「嫌がってる割には、だいぶいい感じに濡れてきてやがるぜ。へへ」
亀裂をなぞっていた指先が、小さなこりこりとした突起に触れた。
「だめえっ!」
「わかったわかった。ちゃんと直にいじってやるよ」
必死の抵抗も虚しく、パンティがゆっくりとずり下ろされてゆく。
「綾奈って、けっこう毛深いんだな……」

お題は継続で

445:名無し物書き@推敲中?
09/10/24 19:17:25
「趣味が釣り?ああ、釣りは良く分かんないけどね」
「あ、そうですか」
「海、行くと釣り?」
「まあ、そうそうしょっちゅうでもないですが」
「ふ~ん。釣り、どういうとこ面白いの」
「来たー、というか引くー、と言うか」
「今までで最高にでかい魚、なに釣ったの?」
「シイラですか」
「シイラって、ちょっと平べったい」
「ええ、ちょっとカラフルな」
「どうやって釣るの?」
「ルアーですね。パヤオって浮き漁礁があるんですよ」
「ふ~ん、そこに寄ってくるの」
「そうです。で、逃げる魚をナブラって言うんですが、
それ目掛けて投げては巻き、投げては巻きで」
「咥えるの?こんな感じで」
「ええ、ガツーンと来ますね」
「面白い?」
「はい」
「それじゃ、電話、お友達紹介してくれる?」
『え~~~~~~』
「もしもし?お久しぶりです。テレビ観てました?」

次のお題は「カメラ」「井戸」「書留」

446:名無し物書き@推敲中?
09/10/24 21:16:23
カメラ屋の裏の井戸には精霊が出る。この前もひと稼ぎさせてもらった。こんな具合だ。
「あなたが落とした書留はこの金の書留ですか。それとも銀の書留ですか」
「いいえ。わたしが落としたのは中身が空っぽの現金書留です」
「まあ、あなたはなんて正直な方なのでしょう。ごほうびに
この金の書留と銀の書留を差し上げましょう」

次のお題は「小泉」「清水」「石塚」

447:名無し物書き@推敲中?
09/10/24 21:52:35
「カメラ」「井戸」「書留」

僕はそのとき、彼女と野井戸の話をしていたんだと思う。草原が終わって雑木林が始まるそのちょうど境い目
あたりにあるという、その井戸が実在するものだったかどうか。それは今の僕にはどうでもいいことだ。
「深いのよ。とても深いの。ちょうどハルキ君の心の奥みたいに」
「ぼくの心? そんなに深いものじゃないよ」
「嘘。どんなに言いつくろってみても、あなたの目はいつもここではないどこか遠く、私には手の届かない
ようなところを見ている」彼女は悲しそうに微笑しながら小さく放屁した。「とにかく、とっても深いの」
彼女ははっとするような容姿というわけではなかったけど、完璧な美しい曲線を描く見事なあごの持ち主だった。
カメラを手にした写真家志望の男の子が通りすがりに彼女と出会ったら、思わず足を止めてレンズを向けずにはいられないことだろう。
「ゆうべは遅くまで、何を読んでいたの?」
「サリンジャー」
まさか彼女のロ・バを連想させる、生命感溢れる寝言が耳についてどうにも寝られなかった、などとは言い出せず、
ぼくはとりあえずそう答えておいた。
「あなたってサリンジャーかフィッツジェラルドばかりね。そんなに面白いの」
「そうだね。君が面白いと思えば、それは君にも面白いものだと思う。ぼくはそれに対して、何ら意見を
口にするつもりはない。ぼく宛の書留郵便がぼくの手元にしか届かないのと同じように、読書による感動と
いうものはしょせん、読んだ本人の心にしか届かないものだ」
「あなたって変わってるわね。そんな理屈をつけないと読書の感想も口にできないの」
彼女の鮒のような目を見ながら、ぼくは彼女の見ているぼくと本来のぼくのことについて考えてみた。結局
答えはすぐには出ず、彼女はまた井戸の話を始めた。
「すごく深いって聞いたわ。前に寝たことがある男の子が言ってたのだけれど、彼ったらお前のおまんこよりも
深い、だなんて。あれで洗練された言い回しのつもりかしら」
ぼくは軽く勃起したペニスを、さりげなくジーンズの上から押さえつけた。やれやれ。

次のお題:「相撲」「通勤電車」「右利き」


448:名無し物書き@推敲中?
09/10/25 15:48:28
「通勤電車、相撲、右利き」
毎朝、高校へ向かう通勤電車はさながら地獄ね缶詰なのだ。
せっかく朝早くから整えてきたヘアーメイクも
ふわりとほのかに香る香水だって缶詰のなかでは
全くの場違いで、異邦人の様に私は感じるのだ。
不機嫌な感情を顔から発散する様に
何人たりとも近付くことなんか赦さないこの私に
なんと、ファンが出来たのはつい三日前。
その私のファンというのは、ヨレヨレのスーツよろしく
ヨレヨレのサラリーマンで私のお尻をまさぐってくるのだ。
勿論抵抗は試みたのだけど、大人数で相撲を取るような
この満員電車で満足な抵抗など勿論出来なくて
揚げ句の果てにこの私の右手をギュッと握り込んでくるサラリーマン。
くそう。この私の手は貴様の汚らわしい股間を
掴む為に存在するわけではないのに
一体、どうしたものかしら。
今日は耳元で熱い吐息がかかり、私の脳と精神を
ぐちゃぐちゃに掻き回す。
余りの怒りに脳の皺がノビきって何も考えられない。
……私をここまでコケにしてくれたおバカさんは、
貴方が初めてですよ。
私の中に眠るフリーザ様が目覚める。
フリーザ様はサラリーマンの股間に宛がわれた右手に力を込める。
今日のこの日ほど、左利きから右利きへ矯正した
両親を感謝することはないだろう。
私は、いやフリーザ様は両親への感謝と
溜まりに溜まった怒りを噛み締めサラリーマンの股間を
握り潰してやった。
穏やかな初秋の風を受け、私は高校へ向かう。
明日は今日より少しはマシになるだろう。そんな気がしていた。
次「呪い、ロリータ、焼きたてパン」

449:名無し物書き@推敲中?
09/10/25 16:40:04
「呪い、ロリータ、焼きたてパン」

スーパーの入り口をレジの並んだ角を左に曲がると、店内
焼きたてパンの大きなケースがある。幾つもの透明プラス
チックの扉があって、惣菜パンから一斤売りの食パン、フラ
ンスパンや菓子パンが並んでいた。
会社帰りにスーパーに行くと、私は必ずそのコーナーに並
んだ。19時半に賞味時間の残りで、20%引きになる。
本当は価格が問題ではなく、その店内の工房から、少女の
ような女性が店内に出てきて、棚の商品を再度陳列しなおし、
値引きの値札を付けていく。
私は、世に言うロリータ・コンプレックスでは無い。
しかし、その「主任」とエプロンの腰に名札を付けた女性は、
その身体の部分部分が、小さく、華奢で、まるで十代の前半
のような小柄で、可憐な印象だった。
事件が起こったとき、それはすぐさま私や、他の街や、その
スーパーの誰もが気付かなかった。
彼女は、冷蔵庫に詰められ、埠頭から引き上げられた。
少年犯罪だった。だから、私は、彼女の名前と
年齢しか報道で知らなかった。
私は、そのときは、気分は沈んだが、直接の接点が無い彼女
に、それ以上の感情は、湧かなかった。
二年後、定期診断で私は、自分があと一年生きられない事を
知った。不思議と、私は平静に、医者の宣告を受け入れた。
有給をとった。車とカメラを買った。
街の噂を調べて、「子供達」の居場所を調べた。
私は、今、ショットガンの銃身を切断している。ライフル所持の
免許は、私が生きているうちには降りないだろう。
呪いでは無く、これは、清算である。

次の御題「ガムテープ」「百科事典」「完全犯罪」

450:名無し物書き@推敲中?
09/10/25 17:06:03
お題がかぶったら先に出されたのを優先だよ。
>>1のお約束を読んでから楽しく参加してね。

451:名無し物書き@推敲中?
09/10/25 18:13:51
「ガムテープ」「百科事典」「完全犯罪」

ろくに抵抗の手段も思いつかないまま、三人揃ってガムテープで両手首と両足首とをぐるぐる巻きに
され床に転がされた。情けないもんでたったこれだけのことで、簡単に身体の自由など奪われてしまう。
「ひゃあはははっ、いい格好じゃねえか。なあ小泉、清水、石塚よおっ」
馬鹿だこいつ。優位に立ったおかげで完全に自分に酔って精神イッちまってる。もっともそんな奴を前に
ただ黙って転がってるしかない俺らも俺らだが。
「今までの恨みも合わせて、俺様の気が済むまでいたぶってやるぜえ。けけけ。どうしたよ、お前ら。
いつものように俺様に向かって何か威勢のいいことを言ってみなよ。猫の手はいらないとか、カメラ屋の
裏の井戸には精霊が出るとかよお」
つくづく馬鹿。最初に口をガムテで塞ぎやがったのはお前だろうが。まあ分かった上でいたぶってるつもりで
いるなら、とりあえずは好きなようにさせとくしかないんだが。
「その後は裏の採石場の穴にでも放り込んでやるぜっ。上からユンボで石投げ入れておけば、死体は永遠に
見つかりっこねえ。完全犯罪の成立ってわけだ。へぇへへへ、俺様賢い。俺様最高っ。俺様まんせー」
ひとしきり騒いでから、その場にしゃがんで俺の顔をのぞき込んでくる。臭い息が顔じゅうにかかって俺は
顔をしかめた。
……こいつってたぶん、死ぬまで童貞のままなんだろうな。
「で、例の百科事典はどこにやったんだ。石塚クン。どうせ言っても言わなくても許してやる気なんざ
さらさらねえけどな。どうせなら言ってから死んだ方が気分いいだろ」
アホか。どのみち殺されるとわかってて、隠し場所をわざわざ教えてやる馬鹿がどこにいる。

次のお題:「聴診器」「帯」「リモコン」

452:名無し物書き@推敲中?
09/10/25 20:55:42
何が気に食わないのかはわかりませんが荒らさないでくださいよ。

453:名無し物書き@推敲中?
09/10/26 21:58:35
聴診器 帯 リモコン

遠くに聴こえる学生達の声。保健室で彼女と二人きりになった僕にはもう非常ベルの音は聞こえなかった。

彼女は聴診器を当てるように僕の胸に手を当てた。

「聴こえる……」

彼女の言葉は空気の振動ではなく、彼女の脳から直接僕の脳に響いていた。そして彼女の香水の匂いは僕を粒子にし、そのたびに僕は宇宙を周回してはここに戻って来てを繰り返していた。

「私のも聴いて……」

予想していたにも関わらず僕は酷く動揺した。けど、拒むことも出来なかった。ゆっくり手を伸ばすと、彼女はその手を取り無駄を省いた。だから僕は言い訳をする必要がなくなった。
制服越しの彼女の胸は色んなものを取っ払って、僕を純化していった。彼女の左手が僕の腿に触れたとき僕のリモコンは奪われ彼女のものになった。

もともと緩んでいた心の帯が急速に解けていく。二人の吐く息と熱が空間を作っていった。カーテン越しの十月の太陽の光も、非常ベルも消毒液の匂いも、もう特別な意味を持たない。


次題 宗教 統一 集合体


454:名無し物書き@推敲中?
09/10/27 02:51:22
【宗教】【 統一】【 集合体 】
「木村君、ちょっと来てくれないか」
部長に呼ばれた。間違いようも無く例の商品の件だ。
「営業の報告は、君も耳にはしていると思う」「はい……」床の大理石材が、冷え冷えと感じた。
「やっぱりね。消費者はあのフレーバーは受け入れ難いようだ。手直しと言う事になると思う」
私は黙っていた。
「ブランドの旧来の加糖商品系列との統一をしたい意向は、上層部もあった。いわばそれを
テコに力押しで押し切る目論見だった」
私は、今回初めて主管に立った。女性と言う事もあり、気負いが無かったかというと、自信は
無い。
「ドリンクの味と言うのは簡単には変えられない。客は、旧来の商品に愛着もある」
人口甘味料の甘みは、糖とは異なる。普通、複数種の甘味料を使うのは、人口甘味独特の
後味をマスキングするためだ。
「まあ、ドリンクの味には各社独特の戦略がある。宗教戦争と喩える人間も居る。
客が望んだ味覚なら売れるが、そうでない場合は抵抗を受ける」
今回、マスキングとあわせて、フレーバーの積極的使用を提言せざるを得なかった。社の
意向としては、加糖飲料との印象的な差を縮めるというのが、命題だった。
フレーバーも結果的に後味のマスキングに使われる。
「どうするかだな……」と、部長は老眼鏡を拭きながら言った。
私はスーパー等への強力なプッシュを思い出した。敗北という気持ちが、現実の出荷ケース
の減少から、押し寄せてくる。
試作現場の研究所には何度も足を運んだ。
節目には必ず私はティスティングした。正直に言えば、商品のアピールと言う課題の上で、
狭い研究所の中で、フレーバーの増量に鈍磨していった可能性は否定できない。
私は、主管を降りることになった。企業は各部署が連携を持つ集合体である。
私は、勢い込んでいなかったか、もっとリサーチを重んじるべきではなかったか。

久しぶりに早く家に帰る。息子が飛びついてくる。
「……どうしたの?なにかあったの?」子供は敏感だ。抱きしめる。
玄関の先のリビングには、不評だったドリンクが冷蔵庫に入っている。
「……ただいま」私は、その私の戦友にも、万感を込めて帰宅を報告した。
                         次の御題【迎撃】【梅干】【毛ばたき】

455:名無し物書き@推敲中?
09/10/27 17:44:13
「迎撃」「梅干」「毛ばたき」

「逃げよう」
絞り出すような声で長妻が言う。
「逃げる? 何を言うか、貴様っ、我々ポッポ軍はいつ、いかなる敵に対しても、決してひるむ
ことなく立ち向かってゆくのがモットーである、敵前逃亡などという軟弱な真似は許されんっ」
周囲を意識しているときの癖で、ことさらに大時代な口調になった亀井が吠える。
「逃げよう、逃げるんだ、とりあえず、しばらく逃げ回っていれば奴らだってあきらめてくれる」
「寝言を言うなっ! 何を軟弱なことを、たかが数万の敵くらいこのわしひとりで迎撃してくれるわっ」
「口先だけで威勢のいいことを言うのはよせ、おれも前にそれでひどい目に遭ったんだ、覚えていないか?」
前原が冷静な口調でたしなめる。
「長妻の言うことにも一理ある、今おれたちがここで踏ん張って抵抗してみたところで、ここにある武器だけ
では奴らには何のダメージも与えることはできん、なでられたほどにも感じないことだろう」
そう言ってデスクの上にあった毛ばたきで、揶揄するように軽く亀井の頭をなでてみせた。
「貴様っ、貴様までわしを愚弄するかっ」
駄目だ、こいつには説得は通じん。そう言いたげな目で前原は藤井と岡田に目配せをした。うなずいてふたりも
立ち上がり、前原の後に続いて部屋を出る。
下の階は大部分の兵たちが逃げ出した後らしく、がらんとして薄暗かった。奥の炊事場にぽつん、と灯りがついて
いるのが見える。
「あんたたち、ここはとりあえず逃げ出すつもりなんでしょ? ちょうど良かったわ。今残っていたお米でご飯を
炊いて、おにぎりをこしらえていたところなの」
三人の姿を見て、景子が明るく笑いかける。
「梅干もあったから入れておいたわ、知ってる? 梅干入りのおにぎりは腐りにくいのよ、殺菌効果があるの、
これ豆知識ね」
おどけた表情に三人も、つられてつい笑ってしまう。
「やだぁ。あたしこんにゃくゼリー嫌い~」
冷蔵庫の中をのぞき込みながら、相変わらず空気の読めないみずほがつぶやく。
「食料品探しもいいけど、あんたもおにぎり手伝いなさいよ。ほら、男どもも」

次:「経済」「桜」「メモリアル」

456:経済、桜、メモリアル
09/10/31 00:39:59
メモリアルと書かれた小さなノートは娘の日記帳だ。
本当はダイアリーなのだが、どこで覚えたのか、メモリアルという
言葉に日記という意味を見出しているらしい。
その小さなノートには、毎日の他愛無いことが元気いっぱいつづられている。
しおりが挟まっているページが一番新しい日記なのだろう、ぱらぱら捲ると、
しおりと呼ぶにはあまりにも粗末な桜の形をした紙切れが滑り落ちた。
昨日書かれたばかりのその日記は、誕生日についてのものだった。
私は娘と二人暮らしの母子家庭で、経済的な余裕が無い。
娘の誕生日も毎年ろくに祝ってやれず、昨日もケーキのような菓子パン一つで
お祝いした。日記にはその菓子パンがとても美味しかったと書かれてある。
そして、私から貰ったしおりが、すぐに日記のページを探せて助かると。
先ほど滑り落ちたしおりを挟むと、私はそのままノートを抱きしめた。
菓子パン一つではあんまりだからと、レシートの裏をピンク色に塗り、桜の形に
切り取ったものをプレゼントしたのだ。娘がいつも日記を書くたびにノートの端を
折っていたので、思いつきで作ったのだが、本当に喜んでくれていたのだと
私はとても嬉しくなった。親子といえど、人の日記を読むのはためらわれるのだが、
娘の本心を知りたくて、私はノートを開いたのだ。昨日の娘の喜んだ様子を少しでも
疑った自分が恥ずかしくなって、私はごめんねと呟きながら、それでも微笑んだ。

お次「憂鬱」 「夜明け」 「気合い」

457:名無し物書き@推敲中?
09/10/31 09:58:05
「憂鬱」 「夜明け」 「気合い」

「気合だ!気合!」
波濤の上で漁労長が叫ぶ。今日は波が高い。
俺は、速度を調整しながら、延縄を引き揚げていた。
昨日五時間かけて仕掛けたマグロ用の延縄である。
ずどん!と中型のマグロが甲板に突入してくる。
仕掛けを切って、頭に棍棒をくらわす。
ギャフで引っ掛け、解体用の包丁で鰓をマグロの
口から掻き出す。保冷庫にギャフで引きずっていって、
そのまま氷の詰まった庫内に落とす。

俺は、憂鬱だった。
なんで今日か、と思った。今日くらいは陸の、
あいつのそばに居たかった。
キャビンの電話が鳴る。船長が拡声器で叫んだ。

「ウマレタ・オトコ・ゲンキ」

俺は、がくがくと膝の力が抜けてしまった。
夜明けの海に、港へと疾走する第12○○丸。
俺は、泣いているのをかくす為、甲板に風に向かって
立ち尽くしていた。

次の御題「キノコ」「スカート」「文庫本」

458:キノコ、スカート、文庫本
09/11/02 22:37:29
おかっぱ頭の彼女はクラスメイトから
キノコとあだ名をつけられて笑われていた。
友達が居ないのか、いつも図書室で本を読んでいる。
僕は暇さえあれば、図書室に通って彼女を盗み見ているが、
周囲から馬鹿にされるほど、彼女が変わった容姿をしているとは
思わない。むしろ、スカートの紺色と対極するようにすらりと伸びた
白い美脚なんか、クラスの女子の誰よりも魅力的に感じる。
一冊の文庫本に触れる愛らしい指先と真摯な眼差し、そして凛とした佇まい。
キノコ、なんてあだ名ではもったいないではないか。
もっと高貴に、あるいは高級に、マツタケとかそういう方が似合うと思うのだ。

「白昼夢」 「迷路」 「靴紐」


459:白昼夢 迷路 靴紐
09/11/03 16:32:16
徹夜明けの昼前にうとうとしていたことは覚えている。
気がつくと通路に立っていた。目の前には十字を形作る通路と、通路の先に階段。通路の先に壁がある。壁の上に階段が捻れていた。三方に伸びた通路は更に従事を描き、複雑に絡み合って上に延びていた。
漠然と夢を見ていることがわかった。そして、通路や階段に足を着けている限り、歩き続けられることも何故かわかった。
「夢だしな」
俺は呟くと歩き出した。
十字を右に、壁に足をかける。その途端、壁は通路に、後ろの通路は壁になる。
いくつの通路と階段を抜けただろう。
「遊ぼ。私が鬼ね」
小さな女の子が走ってくる。俺は自分の夢に苦笑しながら、おどけて逃げるしぐさをする。
女の子の顔に笑顔が浮かぶ。
「キャハハハハハハ」
耳をつんざく声。一気に身体の熱が奪われる。
力の限り走る。いくら走っても女の子の声からは逃げられない。
通路に靴が転がっているのが見えた。靴紐がほどけかけたスニーカー。
ドン!
通路から押し出された。俺の革靴が宙を舞う。
「バイバイ」
女の子の肉食獣のような笑み。それが見えたのは随分と下に堕ちてからだった。
「目玉」「初雪」「オリーブオイル」


460:名無し物書き@推敲中?
09/11/03 16:43:31
>>459
三語のうち一語しか使われていない気が
「白昼夢」「迷路」はどこに?

461:名無し物書き@推敲中?
09/11/04 22:17:19
「目玉」「初雪」「オリーブオイル」

お客さんこんなのどうですか?
え?なになに?
これ。本日の目玉商品。
目玉商品。今時言わないよ目玉商品なんて。
広告に載ってない品。
載ってないのかよ。大事よ広告。
来店してくれた人だけのサプライズ商品ね。
まあいいや。どんなの?
これ。初雪のオリーブオイル和え。
うまいの?それうまいの?
かき氷風。
いらねえよ。初雪って冬だろ。冬にかき氷って。
かき氷風な。
同じだろ!
同じじゃねえよ。ポイントはオリーブオイルだから。
ずいぶんまずそうだな、おい。
失礼なこと言うな。フローズンオリーブオイルだから。
カクテルになっちゃったよ。もういいわ。

つぎは「広告」「カクテル」「かき氷」

462:広告、カクテル、かき氷
09/11/05 23:34:33
結婚式は真っ赤なカクテルドレスに決めた。
彼と飲食店の前を通った際に、店の壁に貼られた広告が
決め手となった。それはイチゴ味のかき氷の紹介で、
カメラの写し方がいいのか、非常に魅力的に見えたのだ。
私の頭の中では、白いタキシードの彼が真っ赤なドレスの私を
抱き上げているイメージなのである。
「これよ、これ!」と、私が店の壁に両手をついて叫んだとたん、
呆れたような冷めた声で彼が言った。
「さっきドレスの試着も入らなかったのに、また食い物かよ」

「停電」 「夜風」 「回想」

463:名無し物書き@推敲中?
09/11/06 02:14:25

停電
私は長い廊下を歩いていた。もうずっと歩いてきたような気もするし、今目覚めたような気もする。とにかく、蛍光灯の無機質な青白い光で照らされた廊下を歩いている。どういう構造の建物なのか、廊下はどこまでも続くように思われる。

どれくらい歩いただろうか、突然、視界で捉えられる一番奥の蛍光灯が消えた。そしてそれを合図にぱっぱっとひとつずつこちらに向かって灯りが消えていく。私は何故か恐ろしくなり来た道を戻り、全速力で駆け出した。
しかし反対側も同じように停電が始まっていて私は挟み撃ちされてしまった。為す術を失った私はその場に倒れ、最後の灯りが消える前に意識を失った。

回想
彼女と出逢ったのは展覧会だった。

私は一つの絵の前で恐らく二時間ほどその絵について思い巡らしていた。私は深い黙想に入っていった。真っ白な空間。その遠くに何かが動いている。徐々に近寄っていくとそれは一人の女だった。
彼女は裸で体の所々に血のような朱色が曲線に沿って流れている。彼女は新体操のような動きでその朱色を白い空間に撒き散らしていた。
その動きは激しくなる事もなく途切れることもなく、一定のリズムで続けられていた。
やがて視界は彼女から遠ざかり、その白に現実が滲んできて私は展覧会に戻って来た。絵と私の間に女が立っていた。それが彼女だった。彼女は黙想の女とは全く似ていなかったが、間違いなく黙想の中の女だった。

夜風
窓の隙間から入ってくる心地良い夜風につい眠ってしまったようだ。何か夢を見たような気がするが思い出せない。
窓から見える松が月に照らされて何か意味ありげに闇に映えている。少し考えてみるが、いっこうにその何かは出て来なかった。
今日はもうこれ以上書けそうにないと思い、書きかけの原稿を片付け電気スタンドを消そうとしたときだった。スイッチに手が伸びない。理由は分からないが灯りを消すのを躊躇しているようなのだ。

「まあいいさ、別に消すこともない」
そうして私は灯りを消すのを止めそのまま横になり、今度は深い眠りに入っていった。瞼の向こうに青白い光を捉えながら。

次題 スコープ ラジオ トンネル

464:名無し物書き@推敲中?
09/11/06 17:53:09
「スコープ」「 ラジオ」 「トンネル」

朝の霧が、疎らな林間に立ち昇っている。
セイコは、ランクルのルーフキャリアに囲まれた車体の天井の
ハッチを開けた。雨季は過ぎ、昼は高熱の大地と化す草原も、
その昼は抜けるような青天井を維持したままの夜間の放射冷却
で濡れた衣服が肌に貼り付くように寒い。
セイコは900mmの望遠レンズの外気温との慣らしの間に、ハッチ
の下の撮影台に昇ってスコープで四方を確認した。
昨日から追っていたガゼルの集団は3kmほど先に留まって
いる。
セイコはラジオをつけた。天候の確認である。その間、始終
ランクルの周囲を目視で確認する。ガードネットを張った車内は
まず安全だったが、車内から身を乗り出した時が危険だった。
鉱山技師だった祖父の話を思い出した。
深い立坑の中では、電波が減衰し、ラジオが聴こえなくなる
場合があるそうだ。垂直に地面から掘り下げられた立坑の
底部では、真昼間でも空の星が観える。
並んで停車していた保護官のレンジローバーで、保護官と
手伝いの男が起き出す。もっとも危険なのは密猟者との遭遇だ。
セイコは、またスコープを取り出す。
「お前は、お前は食われない」1頭の子供のガゼルに願を
かける。ライオンはそばに居る。スコープの、レンズでできた
トンネルの彼方から願をかける。

次の御題「フライ」「コード」「回転」

465:名無し物書き@推敲中?
09/11/08 02:27:38
フライ コード 回転
 貧乏ながらせめてもの贅沢に、食材の普通は捨ててしまう部分の数々をフライにすることにした。
 大根の皮、人参の皮、魚の骨、キャベツの芯。殆どタダのような品々を、使い込んだ油で素揚げしてしまうのだ。野菜チップスに骨せんべい。揚げたてに塩を振れば味は言うまでもなかろう。百円も出して科学めいたジャンクフードを食べるよりはずっと良い。
 電気フライヤーにコードをつなぎ、油の温まるのを待つ。二度揚げしてパリパリにしてやろう。塩の他に胡椒も良い。一度揚げて醤油につけてからもう一度揚げるのも良い。他には何があるだろう。味付け無しというのもやってみようかしら。
 そろそろ温まった頃か。油が跳ねないように慌てずやるんだ。よし、量もそれほど多くないし、全部一息に入れてしまおう。うん、いつ聞いても小気味良い音だ。胡椒よし。塩よし。醤油は、と、棚の中かな。
 この棚がまた遠い。早くしなければ焦げてしまうぞ。それ静かに早く、と。
 うォッとぉ……あ、ああ! コードが脚に! あ、あ! フライヤーが! 野菜が! 回転して落ちてゆく!
「貧乏人は揚げ物も食っちゃいけないのかよ……」

466:名無し物書き@推敲中?
09/11/08 02:28:39

籾殻 糞 ミニ四駆

467:名無し物書き@推敲中?
09/11/09 15:55:20
籾殻 糞 ミニ四駆

『糞ッ、ミニ四駆走らせてたら籾殻の中に突っ込んじまったぜ!』

「無理矢理一行ネタかよ。真面目に書けよ」
「るせえな。このところ決まって毎週末にアク制くらうんで機嫌悪りいんだよ」

『どうだ、これがボクの秘密兵器、ビチ糞型ミニ四駆<スカトロン一号>だ! ズルズルののゲル状ボディで、籾殻を撒いたコースの上だって楽らく走行勝利もゲット』

「待て待て。ゲル状ボディのミニ四駆ってどんなんだよ。<スカトロン一号>って名前もダサくねえか? お前やる気ねえだろ」
「るせえっつの。だいたい『ミニ四駆』なんてお題じゃ書ける場面も限られんだろ」
「それは想像力不足って奴だ。たとえばこういうシチュエーションだって」

『富市は慎重に小型トラックで一本道を進んでいった。一面田畑が広がるこの辺りでは、夜になると街灯もほとんどないに等しい。おまけに道は細く、自動車一台がやっと通れるほどだ。
 夏の盛りではあるが、開いた運転席の窓からの夜風は涼しく感じられる。牛糞に籾殻を混ぜ込んだ肥料の臭いにはいささか閉口だが、この村で暮らしていくうちにいずれ慣れることだろう。由美子も和夫も、早く慣れてくれるといいのだが。
 助手席には玩具屋の包装紙に包まれた小さな箱。和夫へのクリスマスプレゼントにと町まで買いに行ったミニ四駆だ。
 クリスマスにはふたりに会える。和夫は喜んでくれるだろうか』

「こら待ててめえ。散々人の書いたものに文句つけといて自分はどうなんだ。なんで場面が夏の盛りだってのに、いきなしクリスマスプレゼントが出てくるんだよ」
「いけね。適当に書き進めてるうちにミスった。では気分を変えて」

『切り立った崖の上には、白亜の建物がそびえ立っていた。
 コードネーム<ミニ四駆>からの情報では、ターゲットは間違いなくあの中に囚われているはずだ。俺は<糞>と<籾殻>に目配せした。ふたりは小さくうなずいてから、MP-5SDサブマシンガンの銃口を上げると、高い塀目がけて』

「いい加減にしろ、お題の処理の仕方が無理矢理すぎんだろ! どこの世界にコードネーム<糞>なんて奴がいるんだよ。もういいよ!」

お題は継続で

468:名無し物書き@推敲中?
09/11/16 23:32:07
籾殻 糞 ミニ四駆

 あるところにミニ四駆が大好きな公爵様がいた。彼はそれゆえミニ四駆公爵と呼ばれ
る程だった。屋敷には下働きの下男たちとたいそう綺麗な奥方が住んでいる。
 ところがある夜、下男の一人が脱糞のために起きだした。行って帰って、また眠る。
・・・・・・そのハズであったが、ふと昼に天日干ししたハズの籾殻が気にかかってしまった。
新入りの男に任せたのだが、ボーっとした男だ。ひょっとしたら干しっぱなしで取り込み
忘れた、などという事も起こりうる。ネズミにでも食われたら大変だ。様子を見に行こう。
 だがしかし廊下を歩み行く最中に、ふと主人の寝室から音が聞こえる。
「ふふっ、旦那様のミニ四駆狂いにも困られたものだ」
 一心不乱に自慢の青いミニ四駆の改造に精を出す、無邪気で子供じみた主人の顔が頭
に浮かび、下男の頬が思わず緩む。軽いノックの後に声をかける。
「旦那様、あまり夜更かしなさいますとお体に障りますぞ」
 しかし返事がない。やれやれ、よほど熱中しているようだ。仕方なくドアを開けてみる。

 するとそこにはミニ四駆型バイブをノリノリで妻にあてがう公爵さまが・・・・・・

469:名無し物書き@推敲中?
09/11/16 23:35:20
シモネタ失礼
次お題「カラス」「ファイル」「症状」

470:名無し物書き@推敲中?
09/11/19 10:56:03
両の手のひらを広げ、其処に今まで幾度、いや何百回
拵えて来たであろう青い、海の青より、空の青よりさらに青い
火の玉を拵える。それはほんのり暖かさを持っていた
「仕舞いだ。オホホ、私が死ぬる。お前は何処でも好きな所に飛んでお行き。」
肩にとまった黒カラスに語りかける。
 自分ほどの大魔法使いはいない。最高位の魔力を我は誇る
それでもそれにしてもいつかは来る。こういう時は来る
今にして思う、我にこの魔力を授けてくれた老魔法使い、その時、その其処彼の思い
がわからなかった。このあたたかさ、このぬくもり、その時、これに気づいていたか。
「頼む。守ってくれ、この盛りを。可愛い森の僕たちを。生きとし生ける、大宇宙を。」
このつぶやき、ささやき、其処に先祖よりの連綿と続く我らの使命を、このここでようやっと
最後の最後のここで理解する。あの若者は我よりも強い、若い、負けるであろう己を予感する
 
 「がっしゃーん、ギャピー。ガラガラ、ドッカン。」
何をやっている。この黒カラスならぬわが娘。私はこれから勇者と魔法戦をまじえんとする真っ最中
あっ、あっ、ファ、ファイルが、投稿原稿が。オモチャではない、やぶくな、さわるな、止めて、よして、助けて。神様、仏様
持病の欝症状が、ぎっくり腰が、イ、イタイ。
「厚子さん、昼ごはんはまだですか。そろそろ昼ですが。」
い、いけない。大変、魔法戦どころでなかった。
た、立ち上がれない。ぎっくり腰が、ど、どうしよう。絶体絶命、大ピンチ。た,助けて。だ、誰か・・・・・・

471:名無し物書き@推敲中?
09/11/19 10:57:48
い、いけない。ハハハ、
初めてでお題を忘れた
魔法使い。赤ん坊。お鍋


472:名無し物魔法使い。赤ん坊。お鍋 書き@推敲中?
09/11/19 16:03:42
俺は工学部の2回生19歳男子。ノベルに応募した。
際どく選外の総評が帰ってくる。授業中携帯に留守電が入っている。
応募した会社の編集者から会いたいとの事。
俺はおそるおそる大手出版社の門をくぐる。受付の連絡で階下に
編集者が来る。まだ若い。
彼女は彼の作品がもったいないと言う。編集長にかけあって指導と
言う事になる。編集者は24歳の女性。眼鏡で整えようとしているが、
まだ幼さの残る可憐さが残る。
この編集者は辛辣で、俺にに複数の作品を書かせ、ことごとく不備な
部分を指摘、矯正していく。
頻度の高い語句は言い換えさせられる。登場人物の曖昧な言動は
排除させられ、物語構造を堅牢にしていく。
俺はフラストレーションがたまり酒場で喧嘩に巻き込まれる。
お鍋をひっくりかえしただけで、飲酒はしていなかったが、未成年
なので収監される。俺は呪う。なんという編集に掴まったのか。
編集者は大叔父に時代小説の重鎮を持つ。当人も現代短歌の若き
旗手だが会社には係累や自分の文才は黙っている。
その頻回のやりとりのなかで、彼女は俺に秘めた恋心を抱く。しかし
自分の感情にはきつく重石をしている。
彼女は最初の応募作を読んで、泣いた。編集部の中で、彼女だけが
登場人物に慟哭した。しかし、それは他の編集者にとって繊細すぎる
箇所で、俺は押されず入賞しなかった。俺は、時折彼女が隠そうとする
強く押し止め表情に気付くが、それが何を意味するか判然としない。
一年後、俺は怒涛の応募を開始する。入賞が相次ぐ。ノベル界の寵児
となる。編集者は、喧騒の背後に、こっそりと身を引こうとする。
魔法使いが与えてくれた、甘美な授業時間は終わったのだ。
「だって、キミ。もう遠くへ行けるもん。ひとりでいけるもんね……」
「教えることもう、無いもんね。大叔父さんに、雰囲気似てたんだ…」

「……いや、まだ、ツンツンしててよ。俺はまだ、赤ん坊でしょ?」
抱きしめる。春の、雪が舞い降りる歩道の街灯の下で。
御題「鑑識」「スキー券」「河童」

473:名無し物書き@推敲中?
09/11/19 16:43:32
三度目の流産の後、妹に薦められて占い師を訪ねた。
「もう、私、赤ちゃんは産めないかもしれません。このまま夫と暮らして
幸せになれるでしょうか?」
「赤ん坊が欲しいかえ?幸せになりたいかえ?」
「はい。でも夫とはすれ違いばかりで、赤ちゃんも流産してしまい、
最近は会話もあまりありません。」
すると、占い師はブツブツと呟きながら広告の裏に何か書いてよこした。
「あんたの妹は何か勘違いしちょる。あたしは占いは出来んがよ。」
それは、おそろしく手間のかかりそうなスープのレシピだった。
「え。占い出来ないんですか?」
「出来ん。魔法使いだからな。
だからお鍋の魔法教えたるで。毎朝、日の出前に汲んだ水で
そのスープ作って旦那さんに飲ませるとエエ。」
「そんな、毎朝日の出前に起きるなんて無理です。仕事だってあるし」
「無理ならすんな。あんなたは幸せになる努力を惜しんだ。それだけのこと。」

私は納得出来なかったが、とりあえずレシピを受け取り帰った。
全くスープを作るつもりなど無かったが、占い師の
「幸せになる努力を惜しんだ。」という言葉がどうしても頭から離れず
三日目には日の出前に起きてしまった。
まだ暗い台所で、お鍋に湯を沸かし、野菜やらベーコンやらをたっぷりと煮込む。
煮込んでいる間は暇なので、ついでに洗濯物をたたむ。アイロンをかける。
まだ、時間があるのでサラダを作る。夕食の下ごしらえをする。
夫を起こして、二人でゆっくり朝食を食べる。スープはとても美味しかった。
あれから半年、私は毎朝儀式のように、同じお鍋に同じスープを同じように作っている。
日の出前に起きるために残業を減らし、なるべく早く帰宅する。
夕食も余裕をもって手作りできるようになり、夫との会話も増えた。
赤ちゃんが居なくても、夫婦二人、これはこれで幸せなのかも知れないと思う。
お鍋の魔法を教えてくれた魔法使いに感謝。

474:473
09/11/19 16:49:02
ごめんなさい
お題は472さんの「鑑識」「スキー券」「河童」 で


475:名無し物書き@推敲中?
09/11/20 14:45:05
 ベッド脇の出窓に置かれた河童のぬいぐるみ。誕生日にあれを残して、貴方は出て行ってしまった
のですよね。学校で初めて声をかけてくれた時の事。内緒でお酒を飲んで、酔っ払ってしまった私を
丁寧に介抱してくれた事もありました。うっかりスキー券を落として慌ててしまい・・・・・・あの頃には
周囲に勘付かれ始めていましたね。海にも行ったし、温泉祭りにだって。二人きりの時間はいつだっ
て宝物で、寂しい時には―今も―思い出に浸りながら河童のぬいぐるみを甘く抱きしめるのです
よ?

「いやぁ、悪かったね。他のヤツのところに行ってみて気づいたんだ。やっぱり君じゃなきゃ駄目なん
だって。君しかいないんだって。もう一度やり直さないか?」
 ひょっこり現れた、貴方の照れくさそうな笑顔。

 あぁ、一体このような空想を何回もてあそんだ事でしょう。でも私にできるのは、貴方が
離れていった理由を考える事だけ。確かなデータに確かなラベルを割り当てる、鑑識官のよ
うな作業だけ。

 きっと私がハタチに満たない男子学生で、貴方が大人の女性教員だったから・・・・・・

476:名無し物書き@推敲中?
09/11/20 14:48:50
次お題
「健康」「ノイズ」「古書」

477:名無し物書き@推敲中?
09/11/21 00:06:52
寂れた、どこか怪しげな古い洋館。推理小説の舞台になりそうな、今にも事件が起こりそうな。そんな洋館の地下のある部屋に一人の若者が今ドアを開け入って来た。

「先生。先生。」

古書や学術書、古今東西様々な事件を綴ったファイルが足の踏み場もない程に散らばっている。
ノイズ混じりのレコードと煙草の煙で埋め尽くされた部屋の奥で先生と呼ばれる推理小説家は安楽椅子に座りうなだれていた。ゆっくりと顔を上げた彼の目はヤニと失望で酷く淀んでいた。

「……君か、悪いけどやっぱり駄目なんだ、全く書けないんだ……。」
「駄目じゃないですか、こんなに散らかして。」

小説家の話を聞いているのかいないのか若者はどこから手を着けても骨の折れそうな部屋をせっせと片付け始めた。

「食事もちゃんととられてるんですか?。」
「……もう昔のように書けないんだ。もう……空っぽなんだ。」

「どうせお酒ばかり飲まれているのでしょう。そんな調子では不健康どころか死にますよ。」

よく見ると若者は本を棚に綺麗に並べたかとおもうと今度はその下の列をバラバラと床に散らかしている。

「頼む。もうここから出してくれ。お願いだ!君の望みはなんでも聞くから。」
小説家は必死に暴れてみたが、椅子と自分を括りつけている縄は肉に食い込むだけで解けるどころか緩む気配すらなかった。すでに小説家には縄を振り解くほどの力は残っていなかった。

若者はゆっくり小説家の方に顔を向け微笑んだ。
「大丈夫です先生。先生は偉大な方なんです。それにどんな天才にもスランプはあります。いつかそれを抜け出してまた傑作を世に産み出していくんです。」

小説家はその残酷な笑みを見ると全てを悟り、力を失った。そして机に突っ伏して狂ったように笑い出した。

「フフフフフフ、ハハハハハハハ」

レコードのヴァイオリンの音色がその狂った笑い声と共鳴しさらにおぞましいものになっていった。そしてそれは石の階段を上り建物全体に響き渡っていった。
寂れた怪しげな、推理小説などでよく出てきそうな、今にも事件が起こりそうな洋館中に………


478:名無し物書き@推敲中?
09/11/21 00:10:51
なんかムチャクチャですみません。お題は継続でお願いします。

479:名無し物書き@推敲中?
09/11/21 13:10:23
クマのマーくんは、けいたいでんわをつくっています。
おかしのあきばこをつなげて、おりがみをはりました
まるとさんかくなマークをいくつもそのうえにかきます
すうじをかきたいのですが、まだかけません
できました。せかいでひとつきりのマーくんのけいたいでんわです
みみにあてます。ジージー、ちいさなノイズがほんとうにきこえてきます
すごく、うれしくなりました。ふ健康そうにしかめつらをしているかあさんクマ
さんはいまにもおかたづけをしなさいと、どなってきそうです。
ニコニコになあれと、けいたいでんわにたのみました。
「マーくん、おやつよ。」ニッコリわらっておおきなおくちを、あさらにおおきくわらいながら
かたりかけてくれました。
古書のやまにうもれ、しかめつらをしているとおさんクマさんをこっそりと
みます。「ぼくとあそべ。」けいたいでんわにささやきます。
「こうしていてもな。アイデアでるわけもないか。あそぼう。マーくん。」
やりました。とおさんがあそんでくれました。
すごいです。おねがいがかなうでんわです。ぜったいにそうです。
もうひとつたのみましょう。ゆきがふれ。
ほんとうにこなゆきがまいおり、うすくあたりにしろいおはなを
さかせてゆきます。
 よくあさ、あたり、のもやまももりも、まっしろ、すべてまっしろ、いちめんのぎんせかい
でした。ゆきがとけ、はるになればクマのマーくんも、いよいよ、まちにまった
いちねんせいです。
お題「森」「グルメ」「ミシン」

480:森、グルメ、ミシン
09/11/22 00:42:34
「あなたはミシンという物をご存知ですか?」
森の奥で運悪く蜘蛛の巣に捕らえられた蝶が、もがくのを止めて言った。
「あれは人間の作った恐ろしい箱です。蜂の針をもっと長くしたような先に、
 色のついた糸を通して、それはそれは目にも止まらぬ早さで動くのです」
蜘蛛は蝶の脇でじっと耳を澄ませながら目を光らせている。
「その箱から出ている色のついた糸、あれはきっとあなたの仲間の物ですよ。
 人間に捕らえられて、あの箱の中に閉じ込められているのです」
「我々の糸に色などあるものか」
ようやく蜘蛛が陽気に口を開いた。すると蝶は大げさに頭を振って言う。
「あなたはさぞや私の仲間たちを食べてきた事でしょう。そろそろ糸に色がつきますよ。
 ほら、私なんて真っ黄色。そんな色の糸が出てごらんなさい、すぐに人間に
 捕らえられて、あの箱に閉じ込められてしまいますよ」
だから私を食べるのをお止しなさい、と、蝶がさも恐ろしげに言う。
蜘蛛はふむ、とあごを撫ぜると、また陽気に口を開いた。
「ご忠告ありがとう。でも僕はグルメだからね、蝶の羽なんて食べたことないんだ」
そう言って、ぽかんとする蝶に蜘蛛は愉快そうに糸を巻いた。

「ミステリアス」 「タバコ」 「独身」

481:「ミステリアス」「タバコ」「独身」
09/11/22 17:50:52
「ミステリアスな女性ね?美人なんだ」
「ちょっと年齢不肖なところもあるんですよ」
「そう。最近は物騒だから、そういう感じの女性はどうかな?」
「そうですよね。僕みたいな冴えない男に惚れるひとはいませんよね」
「自分をいじめるなよ。君はなかなかいい男だよ」
「マスター、サンキュです。さっぱり忘れますよ」
僕は次の誕生日で38歳になる。独身はちょっとさびしいかなと、最近思うように
なった。
彼女とはネットで出合った。非常に頭が良くて、性格が良くて、なによりメールが
まめだった。僕はあれこれ彼女の姿を想像した。
カメラにもクルマにも詳しく、うっかりすると僕の知識を越える。彼女は万能なんだな。
僕には不釣合いだ。僕はそう思いながら、腑に落ちない感じがした。
彼女の地図上のマーカーは、僕の家の近くだ。
それもあって安全だと思った出会い系でアクセスした。しかし、近所に
そんな才媛って居たかな?話題に近郊の店や、遊びのスポットが、頻繁に現れていた。
僕は焦燥にかられた。誰かのいたずらじゃないか?
知識がありすぎる。それも男の趣味の領域だ。ネカマじゃないか?
僕は、確認だけしようと思った。最後になってもいいと思った。
「あなたは、男ですか?女ですか?」しばらくして、返信が来た。
「僕は、ゲートキーパーだ。僕のメールの半分は、僕の文章で、半分は、娘が書いた。
ためすつもりは無かったが、彼女はこういうことにはこわがりだ。彼女の事は、覚えて
ないかな?」
部長の娘だった。近所で何回か酔った部長を送り届けた事がある。
娘は美人で、たおやかな印象だった。
「昔、君は高校生の頃、ボランティアで町内の子供の壊れたおもちゃを直していた
そうだな。そうそう直されると困るんだが。ウチは玩具メーカーだしな」
「熊のおもちゃ、直したんだろ?娘の部屋に今もある。辛い恋愛も、受験も、ずっと
タンスの上で娘を見守っていた。汗かきながら直したって?」
えらい昔の話じゃないか……しかし危ないと言えば危ないが、魅力的と言えば
魅力的な話だ。なにせ部長は創業者一族である。
僕は最近やめていたタバコを、ベランダに出て立て続けに吸った。
御題「ミステリアス」「タバコ」「独身」継続でお願いします。

482:名無し物書き@推敲中?
09/11/25 00:20:18
ミステリアス(神秘的) タバコ 独身
 渇いた風を受け、タバコに火を点ける。今は遠き故郷の味も、これで最後の一本であった。
 ふと空を見上げれば、今日も雲一つ無い晴天。この荒野に入ってから7日経ち、水も残り少なく
なってきていた。雨の少ないこの地に給水出来るオアシスなどあろうはずもなく、機会を見て退散
しなければならない。結局ここでも何を見つけるでもなく、呆けているだけだったわけだ。神秘的
(ミステリアス)な風景を探すだの、よく言ったものだ。
 職に就かず、その日暮らし、独身のまま親を安心させることなく国を出てきた。野望や夢など無
く、社会から疎んじられるのが嫌で始めた旅なぞ、こんなものだろう。しまいには帰るタイミング
まで失ってしまった。
 口の中に苦い味が広がった。気がつくとタバコは燃え尽き、吸っていたのはフィルターであった。
環境保全する気は無いので、吸い殻は地面に捨てる。
 郷愁すらタバコにまかれる私には何が残されているのだろう。無い物ねだりをするだけで、ひと
つ、またひとつと大切なものを落とし続けてきたのではないか。手にあるのは僅かな現金とサバイ
バル道具くらいのものだ。
 もはや昨日のことすら朧気だ。

483:名無し物書き@推敲中?
09/11/25 00:23:56
考えてみればこれまでの人生、特に記憶している出来事などありはしない。物語の主人公までとは
言わないが、せめて思い出し笑いくらいはあっても許されるだろうに。あるのは所詮自嘲だけだ。
 飯を食って、飯を手に入れ、眠るだけの毎日はまるで動物のようだ。時々こうして悩むことはあ
っても、明日になれば忘れている。だが忘れれば忘れるほど、悩みは更新されてゆく。それは人間
のあるべき姿であろうか。
 だが、私にはせいぜい動物の暮らししか出来そうもない。悩みの頻度も減ったような気がする。
 無性に空が見たくなり、寝転がる。すると太陽が眩しいので、思わず目を瞑った。
 私は目を開けることなく、そのまま眠りに就いた。

ミステリアスという横文字がなんとなく気に食わなかったのでこうなっちまいました。すみません。

『聾唖』『依頼』『猫』

484:名無し物書き@推敲中?
09/11/25 23:28:59
「待て! 話を聞け、落ち着け!」
「任務ヲ推敲シマス 任務ヲ推敲シマス」
 くそ、どうなってんだ! 昨日までは平和だった学校が、今はまるで聾唖の暴徒と化している!!
 ここにはもはや青春の可能性など奪われてしまったに等しいのだ。ゾンビのように群がるクラスメート達を日本刀で切り刻む。
「神剣流奥義『レッドブルーム』発動!!!」
 日本舞踏のように滑らかに、血の華が咲き乱れて皆死んだ。くそ、絶対に許さない! 仲間を仲間に殺させる残虐性は世界で
一番の重罪に値する! 俺の頬には涙が伝い落ちていた・・・
「くっくっく! とうとう私の場所までたどり着きましたね!」
「校長!」
 なんと黒幕は校長だったのだ! くそ、なんて事だ! にゃ~ご♪ 校長先生の腕の中で猫が鳴いた。
「さあ行きなさい! ブラックキャットスフィンクス!」
 みるみるうちに巨大化した猫が化け物じみたスフィンクスで俺を高みから見下す程になった。だがしかしここで負けるわけにはいかない。
敵は強大であろうとも、絶対にこいつだけは許さない! 怒りがみなぎり、俺に新たな能力が追加される。
「神剣流奥義『ダイヤモンドブルーム』・・・」
 だが周りは静かなままだ。
「能力発動失敗ですか。怒りで我を見失いましたね・・・って、なにぃぃぃ!」
 突然全てが切り裂かれた。極限までに高速化された太刀筋は肉眼に捉えきれなかったの話だったのだ・・・!
 あたりの空間がダイヤモンドのようにキラキラと保存されたような光景に鮮やかとしか言いようがない。
「だが、いい気になっては困ります。私はただの依頼代行人にすぎませんからね。そう、真の敵は・・・」
「貴様の父親だったのですよ・・・ぐふぅっ、ぐぉぉ!」
「なんだって!!!」
 あまりの事態に俺の頭は混乱から落ち着かず呆然としていた。

485:名無し物書き@推敲中?
09/11/25 23:35:12
次お題
「猛暑」「秋雨」「豪雪」

486:聾唖、依頼、猫
09/11/26 00:14:42
便利屋をしている男の下に、依頼と共に猫が来た。
餌代などは払うから、しばらくこの猫を預かって欲しいとの事。
なんでも、依頼主は事故に合って入院しているらしい。
依頼主の代理人は猫とある程度の金を置いて去っていった。
男は猫など飼ったことも無いが、とりあえず餌を与えていれば
何とかなるだろうと軽い気持ちでいた。ところが、遊び盛りの猫は
するりと窓を抜け出して、外へ出て行ってしまった。
男が慌てて追いかけると、猫は道路の真ん中で虫を追いかけるのに
夢中になっている。これはまずいと思うと同時に、嫌な予感は的中するもので、
一台の車が猫をめがけて走ってくる。大声で猫に向かって叫ぶも、
猫はまったく見向きもしない。男は預かりものに何かあっては大変だと、
ためらい無く道路へ飛び出した。
運良く命はとりとめたものの、男は大怪我で入院を余儀なくされた。
仕方なく、見舞いに訪れた友人へ、猫を世話してくれる人を探すよう頼んだ。

友人が去った後の静まり返った病室で、男ははっと思い出す。
一つ言い忘れたことがある。あの猫が聾唖であるということ。
だから事故に用心するように、と。

先に書かれてしまったのですが、投稿します。
お題は>485さんでお願いします。

487:名無し物書き@推敲中?
09/11/27 10:02:07
猛暑、うだる暑さが続きます。朝露に太陽の光を浴びたトマトにあなたの笑顔が映ります。あなたのために育てました。
ヒンヤリ冷やしたソウメンに、イガイガの取れたて胡瓜共に乗っけましょう。暑くて参っていませんか。あなたの事
だけが気遣われます。私はあなたの喜ぶ顔を心いっパイ広げお帰りを待っています
 秋雨、一雨毎に紅葉はその赤を、私のあなたへの思いを載せて深く染めて行きます
ボージョレヌーボーを気張りました。お手製の桜のチップでいぶした燻製の
干し魚にソーセージがつまみです。あなたへの愛で煙っていました。今年は
生まれて初めて迎えた私の人生最大の解禁日です。
 豪雪、あなたは寒くないですか。あなたのお仕事姿を思い浮かべてタラのお鍋
を野菜と愛を盛って拵えています。早いお帰りを心から待ち焦がれつつ。

男は私のためにある。男は金、保険金。
練炭を車にさあ、積み込んだ
私は女郎蜘蛛、狙った獲物に蜘蛛の糸を巻きつける。
男よ、甘き甘美なる夢を見るべし。一瞬の研ぎ澄ました鎌が天国の至福
の時を取り去るまで。練炭の地獄の赤が炎と化してお前を襲うまで。
お題「お茶漬け」「クロワッサン」「ブラックホール」

488:名無し物書き@推敲中?
09/11/28 21:06:06
「お茶漬け」「クロワッサン」「ブラックホール」

「お邪魔します。へえ、やっぱり女の子の部屋っていいね」
「……恥ずかしいから、あんまりじろじろ見ないで」
「ああ。ごめんごめん」
「コーヒーでもいれよっか。それとも何か食べる? 結局さっきのお店じゃ閉店間際だったしほとんど食べられなかったでしょ。買い置きのクロワッサンでよければ。でなけりゃお茶漬けでも」
「いいね。じゃお言葉に甘えて」
「どっちにする?」
「そうだな。君にしようかな」
「……バカ。エッチ」

「あのね。あの……初めてだから、優しくしてね」
「うん」

「すごく……良かったよ」
(ジョーダンじゃねえ。初めてどころか、こいつぁとんだブラックホールだぜっ)

次のお題;「野生」「男爵」「贈りもの」

489:「野生」「男爵」「贈りもの」
09/11/28 21:49:59
大河の本流は、そのまま川幅を狭めつつ、高地へと至る。
男爵は、私に簡易な測量をするよう命じた。
「ジェス……この先は未踏の地だ」男爵が言う。
火打ち鏨をすって、パイプに火を点す。
私は黙って掌務を進めた。
「私の妻は、病気で亡くなった。だからこうした地方への
探検欲を抑制するものは、無くなった」
煙を吐きつつ男爵が私の方を観た気配がする。
「君には悪いことをしたと、正直に思う。危険な趣味に
君をつき合わせてしまった」
「…………」私は、黙っていた。私は、男爵の農夫から
選抜された。
私の家には、娶ってから日が浅い妻が居た。彼女は、
この探検行に気を揉んでいることだろう。私は、観測器
の脚の傍に、滑らかな表面をした珪酸塩の石だ。
私は、淡い緑色のその石に、妻の瞳の色を思い浮かべた。
「さあ、行くか」男爵が言った。
大いなる野生の懐へと、また歩を進めるのだ。
私は、その小さな滑石を、ポケットに忍び込ませた。
……この石を妻に渡すまで、私は歩き続ける。
ささやかなスーベニール。自然からの贈り物を、彼女に
渡すのだ。

次のお題「食欲」「生地」「けんか」

490:「野生」「男爵」「贈りもの」
09/11/28 21:53:38
の脚の傍に、親指の先ほどの小石を見つけた。
滑らかな表面をした珪酸塩の石だ。

失礼

491:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/11/30 16:08:12
「食欲」「生地」「けんか」


鞠子は電磁カーテンの一部を透明度40%オープンに設定して窓の外の様子を見た。
「よかった!今日も連中の姿は無い!」
彼が亡くなって以来、ずーっと雑誌記者やレポーターの取材に悩まされ続けた鞠子だった。
着替えを済ませ例の場所へ向かう為、タクシーに乗り込む。
今日は 彼 が出来上がっている受け渡しの日、大切な日なのだ。

ショップに着くと白衣を着た数名の技師の説明を聞く。
そしていよいよカプセルが開き少し粘り気のある液体がこぼれ落ちた後、本能とわずかばかりの基礎意識を加えられただけの姿で立ちすくんでいる全裸の 彼 が出てきた。
この 生地 は、まだ無垢のままでして、これからカスタマイズされた ご希望 の構成意識を注入いたします。
「ありがとう。やっと私の元に 彼 が戻ってくるのね…あっ!くれぐれも注入意識は伝えてあるブロックだけにしてくださいね」
と、鞠子は婚約していた彼を殺された悲劇の女性の立場で可愛く付け加えた。

共に暮らし始め、1日が過ぎたが 彼 は昔のままの 彼 だった。
パクパクとものすごい勢いで私の作った料理をおいしそうに平らげてくれる食欲も同じ、…そしてアノ時の性欲も…。
ちょっとお行儀の悪い箸の使い方まで再現されていた。
そして後片付けをしに立ち上がった時、それは発現した。

「人殺し…君は僕を…僕を殺した…」

「ただの けんか だったのよ。殺すつもりはなかったの」
鞠子はうったえ続け涙を流しながらもメーカーへフリーダイヤルへコールをした。
「すみません。今度の モノ もだめです。造り直してください」

今回もだめだった。どうして消せないのだろうかあの時の記憶は…
鞠子は、今日も遠い遠い森の土の下に埋めたオリジナルのやさしかった 彼 を求め続ける。

492:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/11/30 16:12:31
次のお題継続でお願いします。

493:名無し物書き@推敲中?
09/12/01 02:55:18
ああ、今日も疲れた。帰りの電車でつり革にぶら下がりつつ、心底疲れを覚える。
円高で会社の景気も悪化した。この年の暮れにローンの支払い、子供の塾代もあるというのにどうしよう。
懸命に頑張って働いても両の手ですくった砂が片端から漏れていく心地がする。そうだ、俺は、ついウトウトした。
「起きてよ。何眠っているの。嫌ね。」
何、何、ここは何処。
「嫌ね、キッチンよ。寝ぼけないで。ウフフ、眠っていたわよ。私はミョウガ。
私たちはお好み焼きフライパン戦隊じゃないの。」
そうだ、俺はキャベツ。お好み焼きには欠かせない。ザルに開け、水で洗われる間におかしな夢を見た。
何か一生の半分以上生きたような。た、大変。キャベツにはキャベツとしての大事な使命があった。
寝とぼけてはおられぬ。我こそその名も高いキャベツ戦士、シャキッと締まっていこう。
「締まって参ります。ガス台点火、生地戦士、野菜戦士、突入用意。」
タイミングをはずすな。緊張、緊迫、スリリングな一瞬。野菜同士でけんかをしている場合ではない。
ラララ、ラリラリ、豚肉戦士、鰹節戦士、突入、突貫、青海苔参謀長、ぬかるな、仕上げは決めろ。
「参ります。キッチンの小窓より、宇宙に向けてフライパン号発進。」
我らには宇宙の上を救う、食欲を満たすという重大なる使命がある。いざ、行け、進め、フライパン号。
「課長、駅に着きますよ。偉いなあ。寝ぼけても仕事ですね。
新しい企画、お好み焼き開発ですか、頑張りましたものね。送りますよ。
奥さんが待っています。」
お好み焼き戦士ならぬ企業戦士は今日も家路を急ぐのであった。完
お題「バジル」「魔女」「クリスマス」



494:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/12/01 13:20:26
「バジル」「魔女」「クリスマス」

夜9時、慶介は重い足取りで自宅の安アパートへ向かっていた。
今日は彼女の摩耶がアパートで慶介の帰りを待っている日…その足取りはいっそう重かった。
街の中はクリスマスのイルミネーションが眩しく光る。
だが、慶介と同じく、街を歩く男たちの姿は皆、元気がなくうつむいたまま。

「あっ!!忘れた!!」
摩耶が薬草作りで使うバジルを買ってくるように頼まれていたのに…慶介は声を出してしまい頭をかかえた。
摩耶の罵声がいまにも聞こえてくるようだ。

いつの頃からこうなってしまったのか…いやあの時からだ。男女の関係が全く逆転したしまったのは。
この世の女性すべてに魔法の力が備わってしまい魔女となったあの日…
その日から男たちの生活は変わり…いや!世界中そのものが変わった。

魔法使いになった女性たちは、またたく間に社会を支配し、世界中の指導者層はすべて女性に入れ替わってしまった。

インターホンを押し、ドアを開けると摩耶が待っていた。
すぐさま謝ろうとする慶介だったが摩耶はやさしい微笑みで迎えた。
「忘れたんでしょーっ!まったくダメねー」
「まあいいわ!今日はイブだし、許してあ・げ・る」

女性が世界を支配したおかげで戦争もテロも犯罪もほとんどなくなった…男は単なる生殖だけの為に生かされているペットのような存在…
社会の下働きだけの生活だけどベッドに入り摩耶の裸体に触れながら、まあこんな暮らしもいいのかなーって思う慶介だった。

495:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/12/01 13:21:31
お題は継続でお願いします。

496:「バジル」「魔女」「クリスマス」
09/12/01 18:42:02
木曜の魔女とその機体は呼ばれていた。
ドイツ本土攻略の大規模空爆は頻回に及んだ。消耗率は200%
を越える。
直援の戦闘機部隊は、海峡で待ち伏せる敵戦闘機との空戦で、
爆撃地点上空では半数に減った。アブロランカスター・木曜の魔女
は周囲、特に上方からのジェット戦闘機に神経を尖らせた。
不安定な稼働率らしい事はわかっていたが、今となっては旧世代
の航空機ランカスター・では、メッサーの完調な機体からは逃れら
れない。
「トム、来たぞ、うまくやれ」機長の声がする。
トム・マクナライド曹長はスコープを覗いた。
この街の、この橋の破壊で、今日は何人の犠牲者がでるだろう。
「神様……」トムは投下スイッチを押した。笛のような風切り音を
たてて、爆弾がゆっくりと舞い落ちていく。
機体はそのまま着弾点を直進、後続の機体の投下完了を待って
左に旋回、帰途に向かう。
「弁当だ」分厚いサンドイッチを油紙で包んだ物を渡される。魔法瓶
のスープを飲む。サンドイッチは塩気が足りない。バジルか食べつけ
ない何かの香草が口蓋を刺激した。
「クリスマスか……」トムは機長席の窓枠に、ゆれている「魔女」の
マスコットを観た。それは、まだ幼い女の子を模したちいさな
ぬいぐるみだ。
「聖夜には、爆撃は無いだろうな……」
1945年2月13日、木曜の魔女はドレスデン爆撃作戦に参加。被弾撃墜。

次のお題「ラッキー」「不信感」「歳末」

497:ラッキー、不信感、歳末
09/12/01 21:54:20
暇つぶしに入った本屋で、適当に選んだ雑誌の占いを読む。
「周囲の人間に不信感を抱かれそう。言動や行動に注意して!」
と、可愛らしい丸文字が嫌な運勢を告げている。どうやら今月は
星座ランキングの最下位らしい。
「募金など、小さな善良行為が良い結果になって返ってくるかもしれません」
ちょうど歳末たすけあい募金も始まったことだし、この占いを信じて出費しようか。
ラッキーカラーはブラック。ちらりとカバンを覗けば、黒い財布が目に入る。
ふう、と溜め息のような気合入れをして、私は雑誌を棚へ返す。
すぐ隣で見知らぬ女性が、私が読んでいたのと同じ雑誌を熱心に捲っている。
きっとこの人は星座ランキング11位に違いない。盗難注意ってね。
私は立ち読みする女性の脇を、颯爽と通り過ぎる。
女性のカバンから黒い財布を抜き取りながら。

次「双子」 「美声」 「犯行予告」

498:名無し物書き@推敲中?
09/12/04 10:01:09
 タックンは小学校一年生です。ですが積み木が大好きです。お外はポカポカ、青いお空にはフンワリと
ソフトクリーム雲、秋刀魚雲、ドーナツ雲さんが美味しそうに流れて行きます。それでも積み木で
遊んでいます。この前父さんが突然、お誕生日でもないのにポンと買ってきてくれた飛行機のプラモデル
は忘れ去られ棚の上でホコリをかぶって寂しそうです。
 建物が出来ました。デパートです。大変です。爆弾を仕掛けられたとの犯行予告が投げ込まれました。タックンは警察官です
それも一番の偉い、偉ーい人です。まっさきに駆けつけ指揮をとります。
 積み木は変わります。今度は劇場です。それも野外音楽堂です。オペラ歌手が美声を響かせています。タックンはコンサートマスター、
第一バイオリン奏者です。少し習い始めています。がんばって演奏します。
 積み木はまたまた形を変えます。今度はお山が二つできました。双子山です。もう一つ、四角い積み木を紐で
つるしましょう。ロープウェイです。父さんと母さんとタックンで行きました。ここは箱根です。お山が燃えています。
赤や黄色の紅葉で炎みたいに燃え上がっています。お空も茜色に染まっています。赤トンボ
が飛び交っています。芦ノ湖が鏡のように金色に光ってまぶしいです。父さんが肩車をしてくれます。
笑っています。父さんと母さんが大きな声でたくさん、たくさん、笑っています。
タックンも笑います。アハハ、大きな声でいっぱい、いっぱい笑います。
 あっといけません。お外が変です。いつのまにやらどんよりと曇っています。タックンはお片づけ
を始めます。積み木を一つ一つ大切に片付けます。これは母さんが生前に買ってくれた唯一の形見に
なってしまった大事な積み木です。洗濯物がハンガーニ干されて風に揺れています。取り入れましょう。
お風呂も洗います。炊飯器でご飯も炊きましょう。タックンは何でも得意です。上手です。
まだレパートリーは少ないのですがお料理もがんばります。タックンは元気いっぱいです。
さあ、これからタックンは大忙しです。
お題「トナカイ」「シーザーサラダ」「ミュージアム」

499:名無し物書き@推敲中?
09/12/04 19:41:32
「で、トナカイってのは?」
Lはミートボール入りのスパゲティで腹ごしらえしたあと、
シーザーサラダをつまみに地ワインを飲みながら聞いた。

「隠語だ。あの城に半月に一回くらい、車両が入る。
でかい超感度アンテナを運転席の上に乗っけてる。それ
がトナカイの角って訳だ。ありゃ単なる防衛用の探知機
にしてはごつ過ぎる、武装した、偽札・スーパー 『γ』用の
強行輸送車だ」
Gは声を潜めてテーブルの中央に顔を寄せて言った。
周囲は婚礼の前祝の祭りで騒然としており、狭い店内
には地元の人間と観光客が半々位だ。

「正直、拙者はあの伯爵は許してはならないと思う」
Iがぽつりと言った。袋に入れたZ剣を顎下に添えて
眼をつぶっている。
「大赤字だな」Lは、にたり、と笑った。目は醒めている。
「厄介な話だぜ」Gは肩のホルスターのマグナム・ファイン・
チューン・コンバットの重みを感じながら苦笑した。
「Hはどう動くかな?」LはGが材料を持っていないか一応
聞いてみる。
「あの女は、相変わらずさ。欲っぱりだ。それだけさ」
「……いや、城のミュージアムで一度会ったが」Lが言う。
「本当か?」Gが聞き返した。
「お穣ちゃんに情が移ってる気もする。俺等っちの味方に
なるとは限らんだけんどもよう」Lは語尾をふざけて装飾する。
事態はかなりシビアだ。IとGは即座に理解した。
「Zのとっつあんも来てるんだろう」Gも腹が決まったようだ。
「ああ、オールスター・メンバーってやつだ。面白くなるぜ」
URLリンク(imepita.jp) 94.6 KB

次のお題「掃除機」「鉄人」「ひざまくら」

500:名無し物書き@推敲中?
09/12/04 21:25:53
「掃除機」「鉄人」「ひざまくら」
「掃除機に言え! じゃなかった、正直に言え! 貴様が犯人なんだろう」
「だから誤解だよ、刑事さん。俺じゃないんだ。罠だよ。現場にいたっていう
 そいつは鉄人、じゃなかった、別人なんだ」
「言い逃れもたいがいにしろ! お前のやったことのひざまくら、じゃなかった、
ひまざくら、じゃなかった、いざかつら、じゃなくって、えーとあのその」
「チョー意味分かんねえし」

次のお題「暦」「キャンディ」「雑誌」

501:名無し物書き@推敲中?
09/12/04 21:55:55
「いやぁ~!次元、こんなとこで立ち読みかよ!」
 セブンイレブンのドアを開けて、ルパンがやってきた。雑誌売場では、次元がイブサンローランのムックを立ち読みしている。
「次の仕事が決まったらしいじゃねぇか」
「おぉ~とも、この師走には、デカイ金の動くデパートがある」
 ルパンは両手をズボンのポケットに突っ込んで、目の前のガラスに目をやった。次元もガラスを見る。
外の駐車場には、デカイ機械を載せた軽トラックが止まっていた。助手席には、目を閉じて斬鉄剣を抱えたままの和服姿の五右衛門が座っている。その機械は、側面に、山田飴製作所と書いてあった。
「ん~ん、ルパン、今度の獲物にアレが必要なのか?」
「おう、伊●丹の百周年に当たる来年の福袋には、千分の一の確率でマジモンのキャンディ型ダイヤが入るらしい」
「それで、まさか大量の同型飴を作ってすり替えるとか言うんじゃないだろうな」
「ごめいとぉ~、さぁすが相棒の次元、てぇことでさっさと行くわよん」
 と、ルパンが店を出ようとした時、ハーレーが滑り込んできた。革製のつなぎの上からでも巨乳なのがすぐわかる。
峰不二子だ。
「あんれぇ不二子ちゃぁ~ん、どったの」そうおどけて見せるルパンの後ろで、次元が肩をすくめて横を向く。
「ルパンに年賀状を出そうと思ってえ、こうみえても私も日本人だし、暦の上のイベントは見逃さないのよ」
「へぇ~、相変わらずいいお乳だこと」そう言ってルパンは不二子の胸を触ろうとする。
「だぁめよ、キャンディと交換なら考えてあげるけど」
「なんのことかなぁ」
「うふふ、聞いちゃったぁ」
 胸の谷間から受信機を取り出して、そのままルパンの首筋に手を触れると、盗聴器が現れた。
「しっかたないなぁ」
 ルパンはハーレーの後部座席にまたがった。
「んじゃぁ、次元、軽トラの運転よろしくぅ」
 へいへい、といった態度で次元は運転席に乗った。
エンジンがかかるバイクと軽トラ。ハーレーが走り出し、軽トラがその後を追う。
雪が降り出していた。

「へーっくしょん」
 とくしゃみをした銭形警部が伊●丹の警備につくのは大方の予想通りである。

次のお題「ギャング」「ビデオ」「時計」

502:「ギャング」「ビデオ」「時計」
09/12/05 15:21:56
「こりゃギャングだな」店長がビデオを検証しながら言った。
マコトは、まいった問題だな。と思った。店の死活問題だ。
「ほら、餓鬼どもが防犯カメラの位置を把握していて、仲間で
壁をつくって写らないようにしている。その陰で商品をパチ
っていく訳だ」
「性質が悪いですね」二人は玩具店のバックヤードで対処
方法に頭をひねっていた。余り露骨な捕捉をするのは、
他の善良な客に妙な雰囲気を与えかねない。
「捕まえたら捕まえたで最近はモンスター・ペアレンツの
逆ギレだ。なんて時代だよ」
マコトは、今日ここに呼ばれた意味はわかっていた。
「じゃ、ギャラは、よろしくということで」
マコトは、愛くるしい少女にも、少年のようにも観える。
「ああ。怪我だけはさせるなよ。お灸をすえるだけでいいんだ」
マコトは、開店時間を事務所の時計で確認した。

早速マコトは髪をウイッグの中にまとめだす。
『彼女』は、何処にでもとけ込む能力がある。
女子大生Gメン真琴。
空手三段、剣道三段、柔道二段。合気道二段。

次のお題「雪道」「穴」「夜通し」

503:名無し物書き@推敲中?
09/12/06 00:27:03
「雪道」「穴」「夜通し」

BUBUBU-
ひくい、羽音のようなうなりがたえず聞こえてきた。だがもう顔を上げてたしかめるだけの気力もない。かれは疲れきっていた。
このままどこへむかおうとしている?
視界の端に、黄白色のほのほがゆらめいているのがかすかに見えた。
手足の感覚はすでにない。
-死ぬのか。ここで。
マエハラ!
背後から声がきこえた気がした。
「シッカリシロ。マエハラ。ワタシダ。センゴクダ」
「せんごく……仙石、か。そうか。生きていたのか」
その名前の主を、自分はここまで探しに来たのではなかったか。鉛のように重くなった頭で、マエハラと呼ばれた男はそう思い出していた。
「スッカリカラダガヒエキッテイル。ハヤクアタタメネバ」
仙石が体内の小型原子炉を作動させた。マエハラの身体に降り積もったまま凍りついていた雪のかたまりが、原子炉の熱をうけてすこしずつ溶けてゆく。
夜通し雪道をあるいてきた。ただの雪ではない。死の灰をたっぷりと含んだ灰白色の雪。
「ナカマハドウシタ。ミナ、イッショデハナカッタカ」
「死んださ。おそらくは、みな奴らの餌食になったのだ。岡田も、藤井も」
自分のからだを支えてくれる男のことを、いまだにはっきりと思いだせぬままマエハラはかわいた声でつぶやいていた。
「HENOKO作戦を実行する時点で、みずほだけはどこかへ逃げてしまった。亀井は……どうなったのかおぼえていない」
そうだ。ほかにもなんにんか仲間がいたはずだった。予備電子頭脳を作動させながらマエハラはひっしに思いだそうとする。
「おれは直撃をさけ、携帯ミサイルを連射しながら夢中で手ぢかな穴に逃げこんだ。それから……」
「ソレカラ……ドウシタノダ」
それから、それから?
違う!
Hiiii-n
奇妙な電子音が無数の針のように、動きのにぶいマエハラの電子頭脳をつらぬいた。
「違う! お前は仙石なんかじゃない」
OZAWAだ。とうとうここまで追いついてきたのだ。


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