09/10/06 23:49:33
高校三年の学校生活もだんだんと飽きてきて、それと一緒に気温まで上がってくる。毎日室内は蒸し暑くて勉強どころじゃないのにセンセイは受験のためだ、勉強しろ! と日課のように私に言う。
最上級学年になったら後輩からは尊敬されて快適な学校生活が送れるだろうと信じていたのに、実際は三年間のうちで最も強力な五月病にかかっていた。
毎朝待ち合わせをしてる友達と、一緒に通わなくなったら。勉強をはじめてセンセイを見返そうかな。
考えないこともないけれど実行には移せない。私はこれでも成績は良いほうで論理的に物事を考えられているとほめられた事もある。プライドが決意をさせないのかもしれなかった。
五月病が治る気配もなくて、この夏休みはどう過ごそう、先月振ったカレシとまた付き合おうかなっと悩んでいた所に救いの手を差し伸べてくれたのはお父さんだった。
夕食後すぐに部屋に引きこもってケータイをいじるようになってしまった私にお父さんは塾に入るための申込用紙を持ってきてくれた。
最初の一枚はゴミ箱へすぐに捨てた。翌朝には部屋の前に二枚目のそれが置いてあった。
学校で授業をやる気なく受けながら、つい退屈でその紙を見ると大きな文字で夏期講習! と書いてある。その下に小さな文字で料金について。
私はこんなものを持ってきた親父を困らせたやろうとだけ思ってその日の夕食後にそれを伝えた。
最近、科学的やら心理学的やらの本を読み漁っている親父は私の話を聞くと笑っていた。そして、次の日曜日に一緒にこの塾へ行こうとも。
当日、昼の二時に私とお父さんは塾へ到着しました。お父さんが内部の人と一言二言交わすと、私は自習室の一角に案内されいきなり入塾テストなるものを受けさせられました。
全く、問題が解けなかった。
現代文で論理に従って答えたはずが間違っていて残念だった。そんなレベルではまずありませんでした。問題用紙を開くと、何について問われているのかすら分かりませんでした。
悔しかった、です。
362:2/2
09/10/06 23:50:14
帰りのお父さんが運転してくれている車の中で私は久しぶりに涙を流した。
塾でテストを受けることだって無料ではなかっただろうに、私が最上級クラスへ入りたいと言ったときにどうしてただ優しい目で笑っていたのだろうか。
私がそんな神秘的なレベルの人間ではないことはお父さんは知っていたはず。私が明日の学校で先生に頭を下げることも知っているのだろうな。
ちょうどその時、お父さんに「来週の同じ時間に入塾テストを受けに来るぞ」と言われて、私は涙を流すまいと天井を見上げていた視線を、前に戻した。
次は「口車」「柿の種」「坂道」でお願いします。
363:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/10/07 15:19:25
口車 柿の種 坂道
私は数分後に訪れる死に備えて、日本中で生きている数百人の兄弟(姉、妹含む)達の事を考えていた。
私たちのファミリー群(sakamoto1098と呼ばれる)は世間的に不良品グループと言われ続けていた。私の今回の自殺でまた一つ、このことの証明に役に立ってしまうと思うとちょっぴり悔しい。
人工子宮が実用化されて四半世紀。
単純に良質な日本人を大量生産させる目的のために創られた私たち優生人種(通称:プラモデル)。
すぐれた遺伝子だけで産まれ構成され完全管理の環境での育児、教育を受け日本の国力維持目的で存在している私たちプラモデル人間。
でも、もう限界が来ていた。私の持つ精神的な寿命が来たらしい。
筑波の医療施設で地道に働いていた私が通常人(通称:原型)の友人の口車にのせられ上京し暮らして1年。
常に人を疑わない良質特質をもつ私たちプラモデルを食い物にしている原型達にいいように利用され坂道を転げ落ちるように生活がすさみこうなってしまった。
sakamoto1098と呼ばれる遺伝子要素を使用している私の属するファミリーは産まれ出た262体のうち既に半数が死を選んでいる。
人工意識である私たちの共通の母親と父親に最後の別れを済ませ、端末の接続を切り、電源を落とす。
私のこれまでの人生のすべてが記録される柿の種程の大きさの政府から支給されたメモリーチップを手に取り自殺ほう助器具へセットし、準備を済ませる。私のこの人生は解析され、これから誕生する優生人種の為に役に立つらしい。
私の人生がこんな小さなメモリー書き込まれるのだと思うとなんだか不思議で笑いが込み上げてきたが、右手の人差し指でスイッチを無造作に押し、安らかな 無 を待ち目を閉じた。
364:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/10/07 15:21:09
お題は継続でお願いします。
365:お題「柿の種」「口車」「坂道」
09/10/08 08:57:01
柿の種は口車に乗せられて、ピーナッツと義兄弟の契りを結んだ。
しかし、それが彼の転落人生の始まりだったのだ。
ピーナッツは名前の通り、ピーナッツ野郎で、
彼の周辺には、常に女関係の刃傷沙汰が途絶えなかった。
柿の種が、いくら助言しても、ピーナッツは一時反省するばかりで
根本的な改善に至らない。
そこで、柿の種は決心した。
ピーナッツを殺して、義兄弟の契りを解約することを。
というのは建前の理由で、柿の種は三十三歳まで童貞続きな自分と対照的に、
華やかな人生を送るピーナッツが許せなかったのだ。
柿の種は深夜ピーナッツの自宅を訪れると、用意してあった包丁を懐から抜き、寝室へと向かった。
寝息を立てるピーナッツ。その隣には、腕枕で女が眠っている。
怒りは心頭した!
柿の種、刺す! ピーナッツ絶叫! 女絶叫!
壮絶、柿の種VSピーナッツ。今日のチケットは売り切れました。
決着はラウンド1、柿の種がピーナッツを一発KOで制しました。
柿の種は良いことを思いついた。
そうだ、ピーナッツの周辺には女関係のイザコザが絶えない。
今回のこれは、何もオレが罪を被る必要はあるまい。この女に!
憎きピーナッツ野郎に軽々と股を開く、脳軽女に押しつけてやればいいのだ!
気絶しろ! 柿の種が脅すと恐怖のあまり、女は失禁しながら気絶した。
柿の種は凶器の包丁から、自らの指紋を拭い、女の手に取らせた。
それから、夜の闇へ飛び出した。
久々に見た女の生全裸に猛々しく勃起するピーナッツが、駆ける脚の邪魔になる。
しかし、擦れる亀頭から得られる快楽は圧倒的で、その快楽に夢中になっていたせいで、長い長い坂道の頂上でつまづき、転がりながら落ちていく柿の種。
目を覚ました時には、清潔な病室のベッドの上で全ての記憶を失っていた。
(続かない)
お次は「毎日」「鉄板」「鯛焼き」でお願いします
366:毎日 鉄板 鯛焼き
09/10/08 14:12:11
僕がベランダで洗濯物を干しているときであった。隣りから「Kさんちのお父さん!」と声がした。仕
切りのむこうからS氏の娘さんがのりだしていた。「Kさんも洗濯ですか?」大学生の彼女は手に洗
濯物をぶら下げながらこう訊ねてきた。Sさんちとは仲良くさせて頂いていて、ついこの間も家族同
士でバーベキューをしたばかりだった。
「Kさん、Kさん!この間お借りしていた鉄板を返さなくちゃいけないと思って」
「別にいつだっていいんだよNちゃん」僕は習慣的に毎日昼寝をする体質になっており、昼近くに
なったそのとき、もう眠くてたまらなかったのだ。「でも、結局はお返しするんだもん」僕は別に断る
理由もなかったので場をはやく切り上げようと承諾した。
彼女は鉄板と一緒に麻布で買ったという鯛焼きをもってきた。玄関で帰そうとしたのだが、Sさん
ちとの往来は家族同様のものにもなっていたので、気軽に、ある意味図々しく室内に入ってくる彼
女をとめることができなかった。
「お邪魔じゃありません?」
「いやいや、それよりNちゃんこそ大学は?」
「えへへ、今日は風が強いからサボっちゃいました!」彼女は無邪気にもほどがあるほど、無邪気
であった。おそらくはその外面からしか想像は出来ないのだが、彼女はブラジャーさえ着けてはい
ないようであった。さすがに家族同様とはいえこればかりは僕も目のやり場に困るほどであった。
「Nちゃん、でもブラぐらいはつけた方がいいぞ」
「ふふーん、実は下もつけてないんですよ!」
彼女がいうには、これからシャワーを浴びて新しい下着で出かけたいので、ありとあらゆる洗濯物
をなるべく洗っておきたかったからだそうだ。「私のは全部私が洗濯するんですよ。だから一つでも
やっといたほうが次の手間がはぶけるんだもん」そういうと一気にお茶をのみほした。
僕は彼女が帰った後うまく眠ることができなくなってしまい、またベランダに出て煙草を吸った。もし
かしたら、僕らのマンションは最寄の駅から真っ直ぐに一本道で通うことができるようになっていた
ので、彼女がでかけていく後ろ姿を見届けられるかもしれないと思うこともあった。でも彼女は何時
間か経っても出かけていってはいないようであった。
僕は隣りのむこう側で気配をうかがうような、そんな空想にいつまでもとらわれていた。
367:名無し物書き@推敲中?
09/10/08 14:13:30
「橋脚」「スケボー」「詩」
368:名無し物書き@推敲中?
09/10/08 15:58:53
「橋脚」「スケボー」「詩」
毎日毎日、橋を大量の自動車が目的を持って通過していく。しばしば夜のニュースの交通情報コーナーではただの無機物のそれがテレビにさえ映る。
多くの人の役に立ち、地味ながらも人々にしっかりと存在を認識されているそれも橋脚なしには立っていられない。
しかしどうだろうか。
河原で野球やバーベキューを楽しむことがあっても、橋脚そのものは滅多にまともな目的で使われない。
橋脚の近くには橋の上から大人が落としたタバコの吸殻。不良少年の描いた理解しがたい落書き。紙屑と川魚の死体。
あまりにも可哀想ではないだろうか。
そう考えたある高校生は、親から小学生の時に買ってもらったスケボーに乗ってとある河原に来た。
土曜日だったので、河原には人が多い。しかし少年は彼らに興味などない。また彼らも少年など視界にすら入っていないが。
少年はスケボーを降りると一直線に橋脚へ向かう。近づくにすれて橋の影に入り日差しは来なくなり、ゴミにより異臭が漂っていたが彼は眉を顰めるに留まり、歩を止めることはなかった。
橋脚そのものまでたどり着くと、少年はローファーのまま足を川に入れ、まずは橋脚に手で触れた。数分、目を閉じそのままで居る。
水が靴の中に入ってくる感触も橋脚の冷たさも少年は心地よいとさえ感じた。
次に、ポケットから一編の詩を書いた原稿用紙とセロファンテープを取り出し、それを橋脚に貼り付け、少年は頭を下げた。
詩の中身は子供時代への決別。彼は次にこの川を通るときは上を自分の車で通ると決めていた。
満足した少年はスケボーを名もない草村に投げ込み、徒歩で川を後にした。
河川敷を上がる際に大学生のようなカップルとすれ違ったが、双方共に何も見ていないふりをしていた。
その後直ぐにカップルは少年の足が濡れていた事を笑い、更にはどこからか来たおっさんが野グソの後に彼の原稿用紙を利用していたがそのどちらも少年には関係のない話であろう。
今日も、川と橋には別段変化はない。
次「恋路」「マドンナ」「物語」
369:お題「恋路」「マドンナ」「物語」
09/10/08 20:38:32
『恋路恋路恋の路。嗚呼、僕は傷ついた一頭の獅子だ。
友よ。君とはひととき路を違えるけれど、いつの日かまた会おう。
長い長い旅路を終えた、どこか、人生のふもとで』
親友に想い人を寝取られた雄は、なぜか全く無関係の雌に
このような葉書を送りつけた。
受け取った雌は、はじめ手にした時、送り先を間違えたのか?
と善意的に考えたが、表面にしっかりと住所が記載してあった所から見るに
どうもそういう理由(わけ)ではないらしい。
ならば、どういう理由(わけ)だよ。と一人ごちるが、送り主の雄は現在失踪中である。
どうしたものか、このまま黒山羊さんとして美味しく頂いてしまうか?
悩むことも束の間、やがて雌はその葉書の存在を忘れてしまった。
その頃の雄は、港のBarマドンナでウイスキーの馥郁たる香りに酔っていた。
フフ、ここが巷のBarだね! と字面に起こさなければ分からないギャグを
ホステスさんに振りまきながら、盛大に愛想笑いを買っていた。
大満足である。ママの、バケツプリン並にボリューム感のあるおっぱいに
我を預けた雄は、ぼんやりと滲む意識で安い造りの天井を見上げながら
これが物語だよ! この生き方が物語そのものなんだよ!
若いうちの波瀾万丈は買ってでもしろ、って言うだろ!
とクダをまいたりしちゃうのだから、もう見てられない。
そのような幸せな物語が、雄に訪れていれば、自分は少し幸せだ。
雌はそんなことを想像しながら眠りに就いた。
次のお題は「幽霊」「グラス」「鍵」でお願いします
370:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 00:45:30
ダイニングのドアを開け、暗闇の室内に照明をともすと、ワイングラスが純白のテーブ
ルクロスに半透明の赤いシミをうがった。精巧な装飾がほどこされたベネチアの特産品を
よく見ると、ふたつの任務を立派にこなしつつ、自分とマンションとの共通のあるじを待
っていたようだ。ボウルに入れられた鍵と、プレートの下にある書き置きとから、事態は
容易に推察された。
念のためと表現するには慌ただしく、マンションの内部を確認して回った結果、やはり
というべきか、今朝までの同居人はきれいさっぱり消え去っていた。真昼の幽霊さながら
に。
371:「幽霊」「グラス」「鍵」
09/10/09 03:37:13
違和感に気づいて注視してみると、ワイングラスの底に残る赤い物体はワインらしくもなく
蠢きながら苦悶する断末魔の表情を見せていた。
絶え間なく苦痛に責め立てられているかのようなその表情に、思わず自分も顔をしかめたが、
しかしワインが飲みたかったのでそれをそのまま口に仰ぎ入れた。
ぶよぶよとした感触が口腔内で蠢いたが、繰り返し咀嚼するとガラスのこすれ合うような
甲高い悲鳴を残してそれは液体に戻った。飲み込んだそれがワインらしく喉に染みた。
自分は幽霊に憑かれている。見覚えのない顔。子供か、あるいは老人のものか。
奴はいつどこにでも現れる。例えば今日、帰宅したときは鍵穴に取り憑いて自分の前に現れた。
自分は吐き気を訴える口と化した鍵穴に、金属製の鍵を思い切り差し込み、捻った。
ぶちゅ、となにかの千切れる音がして、血が流れ出したが、鍵はちゃんと開いたので、
自分は家に帰り夕食を取ることが出来た。
恨まれるような因縁も、憎まれるような諍いも記憶にない。だから最近、あの幽霊はかつて僕に
ひどいことをして後悔してる奴で、こうしていちいちスリッパに取り憑いたりして僕に足を
蹴り入れられたりするのを喜んでいるのではないだろうか、という気がしてくるのだ。
372:「幽霊」「グラス」「鍵」
09/10/09 03:38:40
次は「右クリック」「左クリック」「センターホイール」でお願いします。
373:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 10:27:17
>>372
いい加減、変なお題やめようよ。
もう少し考えたお題を望む…
「恋路」「マドンナ」「物語」
「毎日」「鉄板」「鯛焼き」
「金曜」「深夜」「一時」とか
374:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 12:55:00
ひとそれぞれの遊び方があっていいんじゃないの。
気乗りしないお題のときは降りればいいし。
おれは久々に来たけど、いくつかの意図があってほぼお題を振らないし。
375:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 21:24:01
そーれ最初は右クリックだ、フックだボディだボディだチンだ
ほれほれ、左クリックだ
とどめはセンターホイールをぐりぐりしてやるぜ!
「らめえぇぇぇ。イッちゃうううううううううううううううううう」
376:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 21:25:52
自分から進んでこんな事をやる日がくるなんて思いもしなかったな。
私はぼんやりとそんな事を考えながら図書室のパソコンで地道にレポートのための資料を探している。
キーボードでキーワードを入力して左クリックで検索。サイトを軽く覗いて面白いと思った資料を無造作に右クリックでコピーする。
学校のパソコンにはメモ帳しか入っていなかったのでどれくらいの資料を集めたか具体的な量は分からないが、ある程度スクロールできる程度には溜まった。
ただし自分で面白いと思った情報しかコピーしていないので、これだけの資料できちんとレポートが書けるかは全く分からない。
どうして私がこんなにもやる気なく資料を集めているかというと、この二年間で「3」を私にくれたことのない意地悪な社会科教師が出した宿題だからだ。
図書室には勿論今回のレポートに利用できる本がたくさんある。でも、ただでさえ活字が嫌いな私には更にやりたくもないレポートの資料を本で探すなんて出来ない。
広く浅く、けれど少しでも気軽に。図書室にパソコンがあってよかった。
まぁ、とりあえずセンターホイールを十周できるぐらいまで資料を集めれば何とか書けるだろう。
嫌な作業だけれどこれ以上の訳にはいかない。しょうがないよね。
私は止まってしまっていた手をまた動かし始め、広大なネットの海の探検を再開した。
次「活字」「来客」「作業」
377:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 21:26:52
被ったああああorz
>>375さんの出すお題でお願いしますorz
378:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 22:00:08
「来客か?」
新聞の活字を見るともなく眺めつつ、俺は秘書の明日山に問いかける。
朝のコーヒーを飲み干すまでは頭の働きも我ながらいまひとつだ。
「ええ。どうします?」
「室長は現在作業中です、とでも答えとけ」
「いいんですか。あんな美人を待たせておくなんて……」
「何だと? それを早く言え」
俺は新聞を放り出した。
「とりあえず部屋へ通しておけ。待った、その前にコーヒーを頼む」
……急いで丁稚上げた感強いですがご勘弁を。
次は>>373から「恋路」「マドンナ」「物語」で。
379:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 22:46:04
>>378
それは
>>368-369で使われた
ネタの一例です(でも出された物はきちんと消化)
「やあジュゴン、僕は君を愛しているよ。」
「ロバ、私もよ。」
そう言うと、二人はお互いに近付きあい……
「ああ、この子は恋愛が出来るのね。」
最近都で流行りの、小説の一ページを読みながら、どこに言う訳でも無く呟く。
「姫様、こちらの方はいかがでしょうか。」
この城の中に、心ときめくような事は何一つ無い。
「姫様、今日もお美しいようですね。」
誰と話をしても、聞かされるのはいつも決まった定型文。
「姫よ、お前は隣国へ嫁ぐがよい。」
城にあるのは、王達の策略、臣下の争い、そして―
「ほら、こちらが隣国の王子でいらっしゃる―」
「嫌よ、私は政治の道具になんてなりたくないわ。」
「駄目。これは確定事項であって―」
「えーこの度は、隣国の―王子と、我が国の―」
「姫様、早く夜伽の準備を―」
自分の運命、だった。
「……夢、かしら。」
ここ最近見るようになった、近い未来の自分を具象化したような、嫌な夢。
「嫌よ、こんな事。私も、物語に出てくるような、美しい恋がしたい……」
姫は、ただそれだけを願っていた。
Next theme「水鳥」「蝋燭」「乱世」
380:名無し物書き@推敲中
09/10/10 00:28:59
「やられちゃいましたよー」
Mが帰ってくるなり言った。リース契約満了をもって他社に切り替えたいと意向だそうだ。
「まあ、堅実な客は堅実な客だ。乱世ってやつかね」「まあ、そうですけどね」
「出力機は二台持って欲しいと言う提案も駄目だったんだろ?」
Mは夜中までかかってその客の色校用の機械を修理した経験がある。
コートを着て、外に出た。公園の水場の水鳥に、親子が餌をやっている。
帰りに営業時間に間に合わないかもしれないので、店までケーキを取りに行った。
かたかた、かたかた、箱の中で鳴るのはケーキを彩る小物か、蝋燭の類だと思う。雪は、期待するが降らない。
「あーちゃん、あーちゃん、あーちゃん、あーちゃん」
かたかたと鳴る音に節を付けるように、娘の名前を歌いながら会社に帰る。
娘は、私の妹に、どうしても印象が重なる。妹は、もう中二と小六の男の子がいる。
会社に帰って、机の下にケーキの箱を置いて、MとSさんとEさんの四人で三時のお茶を飲んだ。
「御題・『こむらがえり』『午前様』『電卓』」
381:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/10/10 02:27:52
こむらがえり 午前様 電卓
「う・うぅ・うう…」隣の布団で寝ている主人の声で目が覚めた。
「あっちゃん?…どうしたの?」と声をかける。
何時なんだろう…枕もとの小さな灯かりで午前4時25分と確認できた。
「う・うぅ・うう…」まだ小刻みに布団が揺れていた。
「ふ・ふ・くらは・・ぎがぁー」と主人が苦しそうに答えた。
パソコンやコピーFAX機などのリース品を扱う仕事の主人だが、去年からの景気悪化でいつも忙しく仕事をしていて、また今夜も午前様だった。
「お水を持ってきてあげようか」私は、何とか治まった、こむらがえりをおこした主人の右ふくらはぎをさすりながら聞く。
立ち上がり台所へ向かう途中でテーブルにある家計簿と電卓を見つけ、出しっぱなしで眠ってしまったことに気付く。
隣の部屋で眠る娘の様子を見てから水の入ったコップを持ってゆくとすでに主人は寝息を立て眠ってしまっていた。
コップの水をぐいっと自分で飲み干し布団に入ると主人の寝顔を見た。
「あっ!」さっき主人のことを あっちゃん っていう新婚時代の名で呼んだことを思い出し笑った。
私の妊娠のことは明日報告することにした。
これで私たちも中二と小六の男の子がいる義妹と同じく2人の子を持つ親になるのだ。
「これからもよろしくね!お父さん!」シワの増えた主人の寝顔を指でなぞり眠りについた。
382:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/10/10 02:33:55
Next theme「コンサート」「台風」「雑草」
383:名無し物書き@推敲中?
09/10/10 03:17:09
「はい、そこ!土をほじくらない!」
大音響での猛抗議は特設ステージ上から発せられた。
「たしかにここは野球場だけど。おれのコンサート会場なの。夏の高校野球じゃないの」
「雑草は抜かにゃならんべな」との返答は動作を再開しながら行われた。「これも仕事だで」
台風の目かと見紛うほどの静けさが閑散たる場内を支配した。
つぎのお題は、北極、観測、疑念
384:お題「北極、観測、疑念」
09/10/10 07:55:35
北極星を常時監視していれば航路に迷うことはない。
そう教えられて、私は方位磁石を持たずに
イカダ一つで航海に出た。
今はとても後悔している。
あの、一口ネタを教えてくれた漁師は
もしかすると、私を騙したのかもしれない。
疑念は尽きないが、私は大海原を一人往くしかないのだ。
どこだ、どこにある……北極大陸!
次のお題は「皇帝」「ペンギン」「撲殺」でよろしくお願いします
385:北極 観測 疑念
09/10/10 09:38:29
恋人ができた。
それまでの孤独だった僕の人生に彼女は春の木洩れ日のようなあたたかさをもたらしてくれたの
だが、ある日、「あなたと一緒にいると、まるで北極にいるみたいだわ」と一言だけを残し去っていった。
彼女がいなくなると僕は腹がたった。何が《北極にいるみたい》だ。僕はこうゆう奴が大嫌いだった。
自分をどこかの作家かなんかと勘違いしたのか、ただのきれい事を並べて世間を評する奴には虫
唾がはしった。
たしかに付き合う前には会社の同僚から彼女に対してよい印象は聞けなかった。容姿は美しいの
だが男にはまるで無関心なんだ、という噂をよく耳にしていた。よく言う女性至上主義者みたいな
感じだった。でもそんな彼女が二十数年間女の子と付き合ったこともない僕と一緒にいてくれたの
だ。今思えば、彼女が最後に残した言葉といい態度といい、世間の評判どおりの人だったのかも
しれない・・・でも、本当に長い間、誰も見向きもしなかった僕と少ない時間だけれども同じ時を共
有してくれたのはたしかだった。
彼女が恋しかった。あれから数日たった今、僕がどんなに彼女を求めているかをこんなにも感じた
ことはなかった。僕は深酒をした。そうしないと眠れなくなっていた。
午前3時ごろ、誰かがマンションの扉をたたいた。
僕は無視しようとしたのだが、それはいつまでたっても扉をたたくのを止めなかったので、僕はベッ
ドからおき上がった。玄関に近づいていこうとしたとき、鍵がかかっていたはずの扉が開いた。
そこには彼女がいた。
「入ってもいい?」と彼女はいった。僕はあ然として、どう判断していいのかもわからなかったので
口を閉ざしたままだったが、彼女はそんな僕を見つめながら靴を脱いで部屋に入っていってしまっ
た。そして、彼女は脇に抱えた大きな箱の梱包を、部屋の入り口でたたずむ僕をまったく無視して
とき始めた。中には天体望遠鏡がはいっていた。
「ここでオーロラを観測しようと思って」彼女はそういうままカーテンを開けて、それを南の空に向け
始めた。空には大きな月があるだけで僕にはオーロラは見えなかった。
彼女は恥かしくてこんな芝居をしているのか、《本当にオーロラが見える》のか、それとも、実際に
ここが《北極》だったのか、そのとき、僕の頭のなかには様々な疑念が渦巻いては消えていくだけだった。
386:名無し物書き@推敲中?
09/10/10 09:40:34
お題は上の人ので。
387:名無し物書き@推敲中?
09/10/10 12:58:36
刑事「撲殺犯人はお前だな」
皇帝ペンギン「はい、ボクがやりました」
388:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/10/10 15:09:25
「皇帝」「ペンギン」「撲殺」
私の最近の悩みは配下どもが良い情報ばかりを知らせて都合の悪い事は私のところまで上げて来ないことだ。
私はそんな度量の小さい皇帝ではないのに…
私のこの国は戦後の壊滅的な破壊から数十年で世界でも有数の経済大国へと発展した。
私専用の40インチディスプレイには刻々と世界中の生の情報が送られて来ていた。
「まったく!どの国も大したことはない!!」そう吐き捨て立ち上がる。
ちょっと散歩へでかけることにしよう。
私はこんな身分でもシークレットサービスは1人もつけない主義でこれまでやってきた。
男はペンギンのようなちょっと不恰好な歩き方で秋晴れの青空の世界へ出て行った。
数時間後、1人の男の撲殺死体が公園で発見された。
板橋警察署の発表では近所に住む住人とのトラブルだったようだ。
その無職男が住んでいたワンルームのアパートを調べるため警官が入った。
そこには異臭がたちこめた汚れた部屋、不釣合いな40インチプラズマテレビ、デル製のデスクトップPCが置かれていた。
調べによるとこの男はネット掲示板では 皇帝 と呼ばれていて自分が世界を影で支えている人類史上最も優れた人物だと書き込み続けていたらしい…
389:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/10/10 15:11:08
つぎのお題は、印鑑、虫歯、善人 でお願いします。
390:名無し物書き@推敲中
09/10/10 18:35:26
印鑑、虫歯、善人
「総力戦だ。セブンが敵の主力を倒した。散り散りになっている今が
チャンスだ」『……おそらく残っているのは民間人ですが……』
「かまわない。彼らは地球人に紛れ、段々と虫歯のように侵食を
始める。ソガ。フルハシ。高熱価ナパーム準備」
そう言うと、隊長は機長席ごしに、散開したユカード星人の降着
カプセルの成層圏上部に環状に漂う無数の機体を眺めた。
「人間か、彼は確かに優れた地球人だ」
アルファ号のコクピットの後部でアマギ隊員と目が合う。
何か言いたげだが、ソガ隊員は睫毛を伏せて空間ソナーの画面に
座り直した。
全ての侵略に、まるで印鑑を押すように、漏れがあってはならない。
観測艇イプシロンの加圧スーツを脱ぎに、脱衣室に入る。
「善なる善は、何処に属す……」隊長のめらめらと燃える瞳が記憶に
焼き付いた。「僕は……善人か……?」
ダンは、脱衣室のファスナーを閉めた。
次のお題は、「稲刈り・レコード・フィギュア」
391:390
09/10/10 18:37:26
失礼。
「アルファ号のコクピットの後部でアマギ隊員と目が合う。
何か言いたげだが、アマギ隊員は睫毛を伏せて空間ソナーの画面に
座り直した。」
次のお題は、「稲刈り・レコード・フィギュア」
392:名無し物書き@推敲中?
09/10/11 20:01:07
「まだこんなもの集めているのか」
次郎の部屋にあったフィギュアを見て、苦笑混じりに郷はつぶやく。
ジャック。かつて怪獣に襲われ死んだ自分と一体化し、地球の平和を守ってきたM78星雲のヒーロー。
「それだけは特別だよ。なにしろ俺にとっては、兄さんみたいな存在なんだからな」
そう言って照れ臭そうにそっぽを向いた横顔には、たしかに郷の記憶にある少年の面影があった。
だが。かつての少年も今は精悍な顔つきとなり、背丈も郷と同じくらいとなっている。いつまでも郷が
あの頃のままの姿……自分を慕ってくれた女性に少年を預け、地球を去った頃とまるで変わらない姿で
いるのとは対照的に。
「兄さんと姉さんの遺品もまだ奥の部屋に残してあるぜ。あの頃姉さんが郷さんといっしょに聴いてた
レコードもそのままさ。もっとも今どき音楽聴くのにレコード盤でもないけどな」
にっ、と白い歯を出して笑う。兄と姉を殺され、ほどなく兄代わりと頼っていた郷にも去られてから
次郎がどれほどの苦労を重ねてきたのか郷は知らない。
だがその次郎も今では、かつて自分が所属していた地球防衛組織の隊長として活躍するようになっていた。
(たくましくなったな……次郎。結局、俺はお前に何もしてやれなかった……)
「ルミ子さんも今じゃ農家の嫁さんで、ふたりの子供の母親さ。たまの休暇に連絡したらとれたてのお米
ごちそうしてあげるから稲刈りの手伝いに来い、なんて言われちゃってさ。参ったよ」
そう冗談めかして言ってから、次郎は不意に真剣な目で郷を見た。
「郷さん。今回は……いつまでこの星にいられるんだい」
次のお題は「予習」「さよなら」「世界」
393:名無し物書き@推敲中?
09/10/11 21:40:34
来週からセンター試験が始まる。僕は午後10時に帰宅してからもう4時間くらい机にかじりついている。
途中、母が夜食を持って来てくれた。試験対策と平行して明日の授業の予習もしなければならない。
今日のノルマはあと70ページ。僕は問題集を解きながらふと部屋の隅に片付けられたギターに目をやる。
「明日から全国ツアーだな」
ギターに話しかけるように僕はそう言った。幼なじみのユウヤと僕はミュージシャンを目指してコンビを組んでいた。
僕だって確かに本気だった。しかし大学には行きたい。保険無しでミュージシャンを目指すなどただの頭の悪い奴じゃないか。
僕はそう思っていた。僕はユウヤの熱意を踏みにじるように去年の夏、活動休止を申し出た。
ユウヤは泣いていた。お前と音楽がしたい、そう言ってくれた。しかし俺には勇気が無かった。
「さよならするにはまだ早過ぎるぞ。いつかまた、二人で曲作ろうな」そう言ってユウヤは高校を辞めた。
その後ユウヤはひとりで各地を周り路上ライヴを行った。そしてある時、地方の有名なインディーズバンドのメンバーがあいつをスカウトした。
ユウヤはそのバンドのギタリストとして、これからライヴハウスを周る。
先週、ユウヤが作った曲のデモテープが届いた。
“そっちの世界は何が見える?
俺が今見てる世界は想像以上にどぎつくて逃げ出したくなるほどさ
それでもいつか俺達が夢見た場所に続いてる”
夜が明けそうだ。試験まで、眠ってなどいられない。
次は、音楽、失恋、飛行機
394:名無し物書き@推敲中?
09/10/11 22:20:54
どうせ失恋するのなら、
最後にはちゃんとさよならを言いたい。
アカイロはそんな少女だった。
しかし、その恋は初恋で、さよならを言うには予習が要る。
世界はそんな風に上手くできていない。
結局、アカイロは別れ際にさんざん泣き通して、
上手くさよならを言うことができなかった。
そして、今、ぼくは彼女との別れの局面を迎えている。
結局、ぼくもまた、いつかの彼女のように泣き通しで、
上手くさよならを言うことができないでいる。
やがて彼女は炉に送られ灰になる。
炎は時間の流れで消えるけれど
さよならを言えない世界は、これからも続くのだ。
折角書いたのでスマソ
お題は上の方の「音楽」「失恋」「飛行機」継続でよろしくお願いします
395:「音楽」「失恋」「飛行機」
09/10/11 23:05:02
『60年代が誇る、偉大なミュージシャンの多くは
70年代を迎える前に死んだ。
60年代を乗り切ったミュージシャンでさえ
幸せな70年代を迎えたのは一握りしか居ない。
ほとんどの飛行機は、音楽を乗せたまま落ちてしまった。
その落ちた音楽を探す旅に俺は出る。
無茶なことを言っているのは承知の上だが、聞こえるんだ。
調和のとれたレットイットビーの音が』
とにかく踊れる音楽ならばなんでも良い、派のグリンプスが
いきなりそんなことを言い出すのは意外な気もしたが
根本的に他人を理解することは不可能だ、と考えているグリントは
グリンプスの発言を認めた。
しかし、一つの価値観に基づいて、音楽を奏でるチームを
バンドと呼ぶのなら、これは全くの破局であり、失恋にも似ている。
つまり、音楽とバンドはどの時代もやがて
失恋の憂き目に相対する運命にあるのだろう。
ただ、幸せなのは、失恋するまでは
ずっと、誰もが一つの音楽を愛し続けることができる。
グリントは、今頃、空の上を飛んでいるだろうグリンプスの飛行機のことを思い
世界中の飛行機が落ちなければ良い、と思った。
お次は「イモリ」「標識」「炎天下」でよろしくお願いします
396:392
09/10/11 23:30:41
重複ですがご勘弁を。余計な感想ですが>>393さんいいなあ。
飛行機はすでにゆっくりと低空を飛び始めている。まずい。これって超まずい。
「どーすんのよおっ。あたし、操縦なんかできないわよっ」
傷心旅行(センチメンタル・ジャーニー)を気取って、せいぜい地味臭いカッコで
小さなトランクひとつに収まる荷物だけを手に、二ヶ月に一本しか飛ばないという
クルクルク島行きの便にようやく乗り込んだばかりだというのに。
失恋ついでに思い切ってあの世までジャンプしちゃうつもりは、あいにくだけど
今のあたしにはまだない。
「ま、全ては運命って奴かね。ここで景気よくおっ死んじまうっつうのも」
「だったらあんただけ死になさいよっ。やだやだ。あたしまだ死にたくなぁい」
悟りすましたような顔で、落ち着き払って座席に腰を下ろしたまま水割りの
グラスをちびちび飲んでいるサングラスの優男を一喝しておいてから、あたしは
その場で地団駄を踏みながら泣きわめいた。
「おいおい、やめとけや。墜落早まっちまうかもしれねえだろ。今のうちから
心配しなくても、この世は麗しきミューズたちの奏でる音楽のごとく全てどこかで
うまいこと調和がとれてるもんだぜ。あんたもこの際運命を信じて、パイロット
抜きでもこの機が墜落しない方に賭けてみなって」
「酔っぱらいが何偉そうに運命語ってんのよお。バカバカ」
「だーかーら。そんな足バタバタさせてっとスカートの奥まで丸見えだぞ」
「エッチ。へンタイ。見んなド助平っ」
怒りに任せて振り回した古いトランクの持ち手がいきなり壊れ、勢いで狭い
機内をすっ飛んでったトランクは飛行機の窓を直撃した。
ぴきっ。頑丈なはずの窓ガラスに大きくヒビが入る。
「げ。嘘だろ」
さすがに優男が顔色を変えて、腰を浮かせた。
お次は>>395さん継続で「イモリ」「標識」「炎天下」でお願いします
397:イモリ 標識 炎天下
09/10/11 23:56:13
おばあちゃんちは長野にある。小学生5年生の頃、私は夏休みの半月以上をあの町で過ごした。
あいつは、茂みに潜んでいたイモリを拾い上げて、いきなり私に投げ付けて来たんだ。
私は悲鳴を上げて逃げ出した。あいつは私を指差して笑っていた。
そんな出会い方だったから、私はあいつのことが大嫌いだった。
夏休みが終わりに近付いた8月の下旬。気温は日に日に落ち着いて来ていたけど、その日も炎天下の暑苦しい日だった。
あいつは私を山奥に連れて行ったんだ。どうせまた虫で私を驚かせたりするんだろうと思っていたけど、ついて行った。
“立ち入り禁止”の標識が立ててある場所で立ち止まると、「ここなら誰も来ないな」と言ってあいつは私を見つめた。
キスしていい?あいつは私にそう言った。私は恥ずかしくて何も言えなかったけど、無言で目をつぶったんだった。
あいつとは毎年夏にしか会えない。
けれど10歳から16歳の今日まで、あいつと会わない夏はない。
次は サンドイッチ 姉 体育祭でお願いします。
398:サンドイッチ 姉 体育祭
09/10/12 08:49:08
月曜日の午前11時ごろ高校三年生になる姉が死んだ。死亡時刻は警察による推定である。
僕が帰宅したとき、それはいつもと変わりなくただ薄暗い室内だったので壁の電源を入れたの
だが、そこから見えるダイニングの奥のほうで、まだ薄っすらと夕闇がレースのカーテンごしに室
内に流れ込んでいる窓を背景にして《何か大きなもの》が天井からぶら下がっているのが見えた
んだった。それは微動だにせず静謐に僕を待っていた。僕の家族はまだ全体的に年をとっている
とはいえなかった。当然のごとく家族に関して僕の観念的な印象に《死》というものはなかった。だ
からそれが姉であるとは背中を僕のほうに向けてぶら下がっていた状態から向う側に回り込んで、
その異常なまでに歪んだ死に顔を見るまで気づきもしなかったのだった。姉は制服のままだった。
つまり家を出た後にまた戻ってきたのだろうと推測はつく。テーブルの上には何かを包み込むため
のような布切れが用意されており、キッチンでは作りかけのサンドイッチが手付かずに放置されて
いた。何のために一回家を出て、また戻り、しかもそこら辺のコンビにかなんかで購入すればいい
ものの手作りでサンドイッチを仕上げようとし、それなのにサンドイッチは作りかけで中途半端のま
ま自ら死を選んだりするものだろうか。人の意思というものはそんな短時間で、性急的に変革をす
る、あるいは何事かに強いられるなんてことがありうるのだろうか。
その後の警察の調べで姉は前日の体育祭にも出席してないとのことであった。あの健康的な姉
は何をしていたのだろうか。あの時も家を朝はやく出ている。姉のカラダに目立った外傷もなく自ら
の意思で首をくくったのに疑いはないとの報告が電話に出た母にもたらされた。室内を物色された
形跡もなく事件性はまったく感じられないと新聞にもでた。
あれから一ヶ月がたつ。時は人々の心も変える。家庭内にはまだ沈痛な空気が流れてはいるも
のの、どん底の倦怠的な不健康さはなくなっていた。生きている人たちは生きるための術をとらな
くてはならないのだ。そして僕も同様にそうであらねばならないだろう。僕はあの時、姉の《死骸》か
ら枝垂れ柳のように垂れ下った右腕に《掴まされていた》ずっしりとしたま新しい幾枚もの札束を今
でも肌身はなさず持ち歩いているのであった。
399:名無し物書き@推敲中?
09/10/12 08:49:53
「坂道」「標識」「どんぐり」
400:名無し物書き@推敲中?
09/10/12 10:46:32
「坂道」「標識」「どんぐり」
「縄文時代はおそらく主食か、それに次ぐ食糧だったようです」
「どんぐりがですか?」
「ええ、灰汁を抜いた上で粉食に加工して焼くか、茹でて食べたらしい」
郷土史家のアザイ先生は、城址に続く坂道を登りながら言った。
紅葉はもう終わりに近づいているが、晴れた日射は少し汗をもよおさせる。
「それで、城址の石組みの再建工事で発見された大量のどんぐりは」
「うーん、時代が違いますね。炭化した状態で発見されましたが、縄文期と言う
のはありえない。石組みははるかに後代のものですから」
「祭祀に使ったとか」
「あるかもしれない。まだまだそういったものや、非常食にしても資料が足りない」
「どんぐりはありふれていますから、物を数えるためのツールに使ったという説も
ある。場合によってはアンデスの文明でのキープに近い表記法に使われたという
話を唱える研究者もいます。現存して発掘されることは難しいです。石造の遺構
とかと比較して、そういう意味で明確には解らない」
「城の場合は」
「あの城の場合は分からないです。今回の調査は、あくまで崩れそうな二の丸
近辺の石組をはいで露出した場所です。本丸を掘れれば何か、どんぐりうんぬん
以外に何か成果は出る可能性はあるが、現状ではああいう核心的な場所は、
まだまだ聖域あつかいですね」
「縄文の人物が、仮にどんぐりを使って示すとしたら何ですか」
「うーん。僕としてはその説の提唱者では無いですが、仮にあるとしたら収穫物
の集計や、集落の人口や、また祖先からの口承の補助とか、
ああ、それから遠征した狩りの先発部隊の向かった先の標識のような可能性もある」
私の脳裏に、毛皮を着た背丈は低いが、屈強な男達の小集団が浮かんだ。
この坂道から観える山岳は、ほどなく白く冠雪するだろう。
豊穣をもたらすが、同時に生命に危険ももたらす。
彼らは、後続の男達に、そして村に残る女達に、何を伝えようとしたのだろう。
御題です。「納豆」「キャンプ」「変わった食べ方」
401:名無し物書き@推敲中?
09/10/12 14:28:53
母ちゃんが買って来たスーパーの袋を漁る。じゃがいも、にんじん、たまねぎ、カレー粉。
「あれ、納豆は?」
僕は母ちゃんに抗議した。また忘れやがった。
「買ってくる!お金くれ!」
「あんた、わざわざカレーに納豆入れんのやめなさいよ」
母ちゃんはいつも僕に言う。けど僕は譲らない。
去年の夏休み、父ちゃんがキャンプに連れてってくれた。父ちゃんと会うのは久しぶりだった。
その時に、ありきたりではあるけれど父ちゃんはカレーを作った。
僕が父ちゃんの料理を食べたのはそれが初めてだった。
「納豆入れるとうまいんだ」
「変わった食べ方だね」
抵抗はあったけど、食べてみると凄くおいしかった。
僕の両親は僕が今より小さい頃に離婚した。
キャンプへ行った翌月には再婚相手との間に父ちゃんの子供が産まれた。
僕はもう父ちゃんには会えないかもしれない。
けれど、あのカレーの味は忘れないんだ。
同じお題で
402:「納豆」「キャンプ」「変わった食べ方」
09/10/12 19:02:34
10月12日(月) new!
今日あった話して良いですか?
今日ね、大阪は大阪市、御堂筋のホコ天で
納豆の躍り食い大会が催されたんですよ。
三連休の最終日ってこともあって
前日、前々日に比べて、参加者はちょっと少なかったんですけど
それでも納豆ってホラ、珍しいじゃないですか。
それに天然物だって云うから、
なんだかんだで、そこそこ集まったんですよね。人。
勿論、こうしてチラ裏(笑)な日記書いてる私も
絶賛参加してきたんですけど(笑)
でも納豆ってホント久しぶりで、超懐かしかったです。
昔、ガールスカウト・キャンプに参加した時以来かも。
これ以上は年齢バレそうなんでやめますね(爆)
で、みなさん納豆ってどうやって食べますか?
躍り食いっていうだけあって、生なんで
大体の人は鼻を摘んで丸呑み派だと思うんですけど
中には持参の卵に絡めて食べる人とか居て(笑)
変わった食べ方ですよね(笑)
チャレンジャー過ぎて真似できない(笑)
でも、結局優勝したのはその人でした。
やっぱり勝負する時は、大きくでないと勝てないってコトなのかなあ・・・残念(泣)
来年もまたやるみたいなんで、大阪に遊びに来た人は
是非参加してみてくださいね☆
P.S
お土産屋さんでも取り扱ってるみたいですけど
あれは岡山産の養殖なので悪しからず。岡山の人ゴメンナサイ><
次のお題は「都市伝説」「ブログ」「2get」でお願いします
403:名無し物書き@推敲中?
09/10/12 19:33:46
新宮寺の前で午前2時に「死者の同窓会」というタイトルのブログをアップすると何かが起こるらしい。
そんな都市伝説があるそうだ。僕と竹田はその情報をオカルト好きの平田先輩に教わった。
金曜日の深夜、僕らは新宮寺の前で待ち合わせをした。興味本位で、その都市伝説を試してみることにしたのだ。
午前2時ぴったり。竹田は適当な文章を書いて、それに「死者の同窓会」というタイトルを付けてアップした。
「どう?」
僕は緊張しながら竹田に尋ねた。辺りはしんとしている。
「………」
竹田が不自然に黙り込んでいるので僕は少し足が震え出した。
「いきなりコメントが付いた」
竹田が俺に携帯の画面を見せた。
本当にやったんだ(笑)ばーか
名前欄:平田
「なんだよ、ビビらせんなよ」
胸を撫で下ろしながらそう言った次の瞬間、僕は息をのんだ。新しいコメントが着いたのだ。
2get
名前欄:水野
先月、事故で亡くなった同級生の名前だった。
同じ題で!
404:名無し物書き@推敲中?
09/10/12 19:36:36
我ながら上手くできたぞ!www
無駄口すまそ
405:名無し物書き@推敲中?
09/10/12 23:28:51
この板で草生やす奴は物書きとしてのプライドないんだろうな。
406:名無し物書き@推敲中?
09/10/13 04:31:10
確かに上手い
お題がすごく自然に馴染んでるわ
面白くはないが。
407:名無し物書き@推敲中?
09/10/13 21:10:07
んじゃ、また書く
「2get」
俺はたまたま開いた2ちゃんねるの板に新着スレッドを発見し何気なくレスをした。
不具合のためかそのスレッドはすぐにDAT落ちした。なんだってんだ。内定無しの俺にぴったしな待遇だ。
今日は大学を自主休講して朝から一日中家でこうしてだらだらしている。
卒業はまだまだ先だが今から不安で息が詰まりそうになる。
2ちゃんねるに飽きると、俺は自身の日常を不毛に書き連ねている自分のブログを開いた。
気晴らしに絶叫マシンにでも乗りてぇなー。そんなことを書いた日記に新着コメントの表示を見つけた。
それをクリックすると「ようこそ」の四文字だけが並んだ。
「なんだ、ようこそって」
俺は少し不審に思ったがしばらくするとそんなことも忘れ、まどろんでいるうちに眠りに落ちてしまった。
目を開けた数秒後、俺は自分の置かれた状況を把握出来ず、小さく叫んだ。
「誰か、誰か、出してくれ」
いたずらにしては度が過ぎていると思った。狭いエレベーターの個室に俺は閉じ込められている。
薄暗い証明が点いているがボタンを押しても反応しない。
俺の住んでいるマンションのエレベーターではないようだ。
すると唐突にエレベーターが動き出した。ゆっくりと上昇していく。全身にじわじわと冷や汗が滲む。
俺はふと自分のブログを思い出した。絶叫マシン…でもなんでだよ…
そして俺は、その日記についた「ようこそ」というコメントの主を特定してしまった。
俺はレスをしてしまったんだ。すぐに消滅したあの奇妙なスレッドに。
「ようこそ。これであなたも都市伝説の主人公に!」
408:名無し物書き@推敲中?
09/10/13 21:13:55
ちと無理矢理だったかなぁ
次は烏龍茶、芸人、お台場
409:名無し物書き@推敲中?
09/10/13 23:53:38
>>356-357,373,407-408
はあ。。。
410:名無し物書き@推敲中?
09/10/14 00:12:41
キモい馴れ合いスレ
411:名無し物書き@推敲中?
09/10/14 05:26:02
お台場で芸人が烏龍茶を飲んだ。
......すまん、完全な上げだ
412:名無し物書き@推敲中?
09/10/15 07:19:33
お台場に行って芸人と会い、一緒に烏龍茶を飲んだ。
「キーボード」「タピオカ」「天皇陛下」
413:名無し物書き@推敲中?
09/10/15 13:00:19
重複ですがご勘弁を。余計な感想ですが>>407さんいいなあ。
烏龍茶というクソ芸人を主役にしたお台場カンフーというクソ映画が公開された。
しみじみとクソだった。
お次は>>412さん継続で「キーボード」「タピオカ」「天皇陛下」でお願いします
414:名無し物書き@推敲中?
09/10/15 14:05:17
烏龍茶、芸人、お台場
今年のお盆に、家族でお台場に行った。私自身は東京は久しぶりである。
ゆりかもめに乗るのも初めてである。事前に思ったより左右にゆれるので
驚いた。途中テレビ局の横を通る。看板番組由来のイベントをやっていた。
期間中はタレントが場内ツアーに応援にくるらしい。おおむね関西方面所属
の芸人コンビとからしい。
台場駅で降りて、目的地に向かう。その日は太陽がぐらぐらと頭上から
熱射をたたきつけて、暑いことおびただしい。子供には帽子をかぶらせ
ていたが、自分の分をすっかり忘れていた。
砂っぽい林の向こうに、ロボットの上半身が観えた。思ったより大きい。
ロボットのバーニアを収納した背部のランドセルがイメージより分厚いのを
除けば、なかなかの雰囲気である。
下の子と妻は、日傘の陰で遠巻きにロボットを観ていた。私は上の坊主と
ロボットの周囲を写真を撮りながら巡った。息子はそれ程そのロボットの
アニメは観たことが無い。太陽に眼をしかめながら、「おおきいね」と言った。
露天風の食べ物を並んで買って、場外の手洗い場の近くの防風林の下で
食べた。変電室がある辺りである。自販機は殆ど空か、冷却用の待機状態
で、仕方なく売店で「まだ、冷えてないです」と、言われた飲み物を買う。
ジュースは冷えていないと美味しくないと思ったので、ペットボトルの烏龍茶
にする。
毎正時と三十分には、ロボットが効果音とともに可動する。
シンガーが、ナレーターでロボットの意義とか、そういうのを話す。
録音した音声なので、毎回言う事は同じだ。
『はげやま、はげやま』
と、やたら言うので、総監督への個人的な怨恨でもあるのかと思った。
お次は>>412さん継続で「キーボード」「タピオカ」「天皇陛下」でお願いします。
415:名無し物書き@推敲中?
09/10/15 21:12:15
確かに(略)面白くはないが。
416:名無し物書き@推敲中?
09/10/15 22:39:21
んじゃ、また書く
カントリーの烏龍茶を買ってきみも当てよう。
人気芸人たちがお台場で待ち受けているぞ。
ちと無理矢理だったかなぁ
417:「キーボード」「タピオカ」「天皇陛下」
09/10/16 18:11:24
『βさんからIM通してツイッターサービスまがいのメモが。たぶん暗号』
そんなコメントと共に、IMを通して豚からメッセージが送られてきた。
『βから、将棋と豚へ
〝平成天皇陛下がタピオカを食べている〟』
『どう?』
将棋は文面を凝視したまま、アゴに手をあて
薄く伸びたヒゲを数度なぞると、思いつくままにキーボードを叩き始めた。
『確かに暗号だな。重要なのは、【平成天皇陛下】と【タピオカ】の二単語で
あとはノイズ。どちらかが鍵だが、タピオカはフリーソフトの
tapiocaのことだろうな。tapiocaを単純に数字変換するなら、20、1、21、9、15、3、1』
『2進数か16進数で換数してみる?』
『そうだな。数列上の15を考慮して、2進数で換数しよう。
10010、1、10011、1001、1111、11、1
あとは【平成天皇陛下】を数値化すれば、アルゴリズム解析できそうだが
そうなると素数条件が要るな。ああ、それで平成〝天皇陛下〟か』
『どういうこと?』
『平成に入ってから、素数の西暦年は幾つある』
『えーと、今年が2009だから、1993、1997、1999、2003、の4つあるね』
『そう、4つもある。だから残りの〝天皇陛下〟のキーワードを用いて一つに絞る。
それぞれの年号を〝皇紀〟換算すると、2653、2657、2659、2663となり、この中で
2653だけが素数にならない。1993は、平成5年か。どっちも素数だな』
『おー。さすが! そこまで分かったら大丈夫だよ。
ちょっと待ってて、今デコードする』
デコート作業に入った豚を待つ間、将棋は悪い予感をひしひしと感じ取っていた。
だから数分後に、豚から送られてきたメッセージの文面に目を通しても、特に驚きはしなかった。
『これ、ちょっとやばいかも。
デコードして出力された文字を並べ替えると、aが二回登場するけど
【kidnap】になったよ。もしかして、誘拐された、ってこと?』
長くてスマソ。お題は継続でお願いします
418:「キーボード」「タピオカ」「天皇陛下」
09/10/17 02:47:14
単になんとなく、だったのである。
なんとなく、画面の下にある、「天皇陛下の頭」というリンクを踏んでみたのだ。
「カチッ」とクリックした途端、妙な窓がいっぱい出て画面が大変な事に。
「あーあ、やっぱりだ、ブラクラだったか」
と、キーボードから再起動しようとした丁度その時。
「この野郎ぉー」と後ろから声がして、兄の鉄拳制裁がとんできた。
「天皇陛下を何と心得ているのか!」足も飛んできた。
「ひょえー、お許しをー」
「天に代わって、この兄が成敗してくれるわ!」
殴るだけ蹴って殴ると、兄は勝手に出て行った。
ストレスのはけ口にされた弟は、血まみれの頭でふと思った。
「別に天皇陛下の頭を踏んだわけでもないのに・・・」と。
冷えたタピオカミルクが、切れた唇にしみる。やるせない想いで一杯だ。
「第一、俺って、兄貴って、日本人だったっけ」
椰子の葉の窓から見えるメコン川は、ゆったりと、しかし何も答えてくれなかった。
※なんかわからん展開だ
次のお題は:「電卓」「砂丘」「てんこもり」で御願いします
419:名無し物書き@推敲中?
09/10/17 08:25:51
日本で初めて電卓が発売されたのは東京オリンピックがあった1964年である。
この年砂丘で有名な鳥取で生まれた彩花、といっても当時はこういう女の名は
皆無に近かったがとにかく彩花は当時の鳥取に限らず日本海側の温泉であった
女体てんこもりつまり女の体に魚介類をてんこもりにするという愚かな風習が
どうしても許せなかったしあんなもので喜ぶハゲ散らかしたおっさんの存在が
どうしても許せなかったのである晩ハゲ散らかしたおっさんを殺害しました。
420:「電卓」「砂丘」「てんこもり」
09/10/17 09:59:39
そしてそのおっさん殺害したオマンコは女体てんこもりのまま逃走開始、
明日無き闘争だっつって疾走さながらの失踪、
でもすぐ見つかっちゃうのだって彼女、女体てんこもりのままだから。
人間的にとてもイレギュラー? って何言ってんだろ俺、
そんな俺は彼女を匿った若い男性Aなんですけど、まったく不純な動機ではないですよ、
だって彼女てんこもりのまんまだから、マンマンも生臭い、
血に染まったその両手はもっと血生臭いなんつってゲラゲラゲラ、
ゲラ刷りの一面は号外で殺人犯の彼女を捜索してるけど、彼女はもうここにはいない
寝入りばなの彩花ちんの双子の砂丘をもみしだいたら、それだけはどうしても許せない、
どうしてそんなもので悦ぶのあんたもハゲと同じ下等な法悦に身をゆだねた獣ね、
って罵られたり蹴られたりしたんでムカついて、その拍子でサクッとね
これは日本で初めてオリンピックが開催され、
ついでに電卓なんかも発売されちゃったりなんかした1964年のことで、
今は2009年なんだけど無期懲役の俺は恩赦も貰えずここに詰まっている
※なんかわからん展開だ
お題は「昭和64年」「アルミ」「偽札」でお願い
421:名無し物書き@推敲中?
09/10/17 18:13:05
ぼくは道端の歩道の柵に自転車をワイヤーで停めて、店の薄暗い階段を昇った。
中古らしい大型のレコード・ラックに、大量のレコードがジャケットの背表紙を
見せて並んでいた。昭和64年、寮や学食で観るテレビは、天皇陛下の御病状を
逐一伝えていた。その頃、貸しレコード屋は全面的にCDに移行しつつあって、
状態のいいアナログ盤が安価で買えた。ぼくは、ぱたぱたと両手のひとさし指と
中指でレコードをめくっていった。逆に数量が多いので、それだけで満足感が
いっぱいになり、棚から取り出し、レジまで持っていく事は少なかった。
店の奥に向かって、洋盤の棚のLPを順に観ていった。この店は何度か来た
事があるので、品揃えが一新する事は無かったが、ごくたまに、新入荷か、
倉庫か何かから棚に並べたのか、見た事の無いLPが追加されていた。
そうやって棚の奥の方までLPをめくっていった。指が、ふいに、めくって押さえ
ていた重ねられたLPにはさまれた。白く塗装された、アルミの、棚とLPの
間に、食いついたように指がはさまれた。咄嗟にぼくは、いろんな対処法を
考えた。店員を呼ぼうか、間抜け過ぎるな。痛みの感覚はだんだん薄くなるが、
指は白くなる。はあ、息を吐いて僕は両手の指を勢い良く引き抜いた。どん、
とLPの加重が棚の奥の壁面に当った。右手の指に、LPの包装のビニール袋
のきれっぱしと、血が付いていた。音が大きかったので、ぼくは店員の方を見た。
店員は店のカウンターの奥から段ボール箱に入った中古レコードの荷だし作業
中だった。ぼくは左手の掌で、そっと右手の中指をぬぐった。LPのジャケットの
写真の印刷が、反転して指に貼り付いていた。眼を近づけて見た。45度ずつ
回転した印刷の点が、なにか、がらくためいた、ポップな、偽札めいて見えた。
お題、「昭和64年」「アルミ」「偽札」継続でお願いします。
422:名無し物書き@推敲中?
09/10/17 20:17:40
「昭和64年製造の1円玉は偽札だあっ! これ豆知識な」
「いや、アルミ製だからそもそも札じゃねえし」
次のお題:「予言」「BGM」「甘い蜜」
423:「予言」「BGM」「甘い蜜」
09/10/18 02:50:37
予鈴がなっても女子生徒たちの話が中断されることはなかった。
隣のクラスの誰々が告白したとか、やれ援交してる子がBMWに送り迎えされてたとか、
どこどこの香水が甘い香りだとか、山田キモイとか。
一部の生徒が話をやめ席に着いたので、話の内容がよく聞こえるようになっていた。
その中で一つ気になる言葉が聞こえてきた。
「素数の年の予言」その年になるとこの学校から一人生徒が消える。
他愛のない学校の怪談話に過ぎないが、なぜかその話が気になった。
だが詳しい話が始まる前に教師が教室に入ってきて、その会話も中断された。
昼休み、校内放送から委員が選曲したBGMが流れる中、先ほどの怪談をしていた女子
グループに近づく。女子達の前の席では一人ブツブツ山田がつぶやいている。キモイ。
普段はあまり話さないので、女子達に警戒されながらも話を聞く事ができた。
素数の数字の年に学校に預言者が現れ、ある事に気づいた生徒を生贄に選び出す。
選ばれた生徒は、まるで甘い蜜に誘われる蝶の様にふらふらと何処かへ消えてしまう。
女子に話を聞く間、つぶやく山田の声が耳に届く。最初は判らない言葉が徐々に聞き
取れてくる。そして素数を数えている事に気づいたとき、山田が振り返えった。
「今年はきぃみぃだー!!」
しばし沈黙。女子と一緒に計算をする。全会一致、再来年ですね。山田、キモイ。
「お茶目」「散々」「後悔」
424:名無し物書き@推敲中?
09/10/18 10:14:58
そりゃあ、おれも昔はお茶目すぎて散々後悔したよ。
※なんかわからん展開だ
長くてスマソ。お題は継続でお願いします
425:お茶目 散々 後悔
09/10/19 19:15:23
人身事故のために××線がとまった。これは近頃流行といってもいいくらいで驚くに値しない。
でも僕が偶然にも現場に居合わせたとしたら、驚かなかったとはいえないであろう。僕はそんな嘘
をつきたくはない。
そのとき女はある複雑なやり方で自らの人生に幕をおろした。その自殺方法はものすごく卑猥で、
あまりにも卑劣な行動をともなっていた。実際に目にしたのは数人であるはずだ。ほんの一瞬の
ことであり、とりとめもなく行われたのだ。そういった事情もあり、実際に具体的な報道にでるまで
には到らなかった。幸いなことである。
しかしながらその日帰宅したとき、既にネット上ではこの件が話題となっていた。事実を知る当の
私にとっては、事実無根の中傷や、まるでやっかみのように何故だか当事者放置で噛み付き合っ
ているものたちもあった。まるで滑稽なことだ。そんななか、僕は事実を一つ一つより分け、ある一
つのブログに到達をした。おそらくこれが自殺当事者のものなのは間違いがなさそうだ。青くてき
れいな書体のブログだった。
カラダに飼っている死の兆候を他人が読み取ることは難しい。ブログから察する限りにおいても、
それは当事者に見られなかった。しかしながらそのプロフィールにおいて、自らをお茶目であると
か、座右の銘ごとく、好きな言葉はあえて後悔をしないだとか、些細なことではあるが、僕がプロフ
ァイリングをしたならばきっとこの女は自尊心がおそろしく強く、それでいて世間の価値観とは恐ろ
しく乖離をした人物ではあるのかなと察するのだった。
自殺の前日までブログは更新されている。明るく朗らかな文章とは別に彼女は徐々に死に近づい
ていったのだろう。
僕はさかのぼり幾つかの更新履歴をたどっていった。読んでいくにつれ、それがどこかで見たこと
のある文章へといくつかぶつかり出したのだ。僕はすっかり忘れていたのだが、この人は僕がか
つてとある掲示板で徹底的にやりあった人なのは間違いがなさそうである。一部を転写していた
のだ。この人は散々周りの人に迷惑をかけ、最後には、それが誰でもそうあるようにその場から消
えていった。もしくは匿名の隠れ蓑の中で、一つの抽象になったのかも知れなかった。
僕は何だか悲しくもないのが悲しかった。これ以上僕からつけ加える事はないように思う。
426:名無し物書き@推敲中?
09/10/19 19:16:13
「分身」「スプーン」「陽だまり」
427:分身 スプーン 陽だまり
09/10/19 21:04:38
ばあちゃんが死んだ。
二日前に親からの電話でそれを知って、今、俺は夜行バスの中だ。
バスに揺られる時間は暇そのものだが眠る気にはなれずに何をするわけでもなく、ぼんやりと座っている。
俺の頭を占めていたのは、「死」ということとばあちゃんが半々だった。
ばあちゃんは優しくて、モノを擦り切れるまで使うようなひとだった。
昔、縁側の陽だまりでスイカを食おうとした時、ばあちゃんの差し出したスプーンは古くて曇りきっていた。
子どもとしては嫌だったし、そのせいかスイカも不味かったのを覚えている。
あれから、元気だったばあちゃんも最近は入退院を繰り返すようになって、ぼけ始めていた。
俺はばあちゃんに忘れられる事が何より怖かった。
バスは予定通り夜中に駅前に到着し、俺はタクシーを呼んで実家に帰った。
それからは一族総出で葬儀の準備に追われた。
目まぐるしく、厳かな葬儀だった。
最後に、ばあちゃんの家の食器棚を片づけていたが、ふとあのスプーンが気になった。
普段のスプーンやらフォークやらを入れていた引き戸を開けてみる。
それなりに古いスプーンはいくつかあったが、あの日のものは見あたらなかった。
代わりに、ばあちゃんの家に不似合いな真新しいスプーンが目についた。
新調したんだろうか。
曇り一つないスプーンには俺の分身が映っていた。
「とかげ」「ティッシュ」「留守電」
428:とかげ ティッシュ 留守電
09/10/21 00:22:42
ティッシュの使い道は色々ある。だからすぐに無くなってしまう。
週に一箱だから、約一ヶ月に一回は買出しだ。こまめな広告チェックは欠かせない。今日は絶対
にのがせないな。お店に行った。
山済みであるはずのティッシュの山が遠くからでもわかるように残り一つになっていた。寝坊した
のが失敗だ。でもまだ3時。この街のティッシュ消費率はそんなに高かったのか。
僕はスーパーの入り口からダッシュをした。僕が箱のふにゃふにゃしたビニルの取っ手をつかんだ
時に、にわかにもう一つの手が伸びてきた。わずかに僕のが早い。でもそれが主婦であれば気を
つけねばならぬ。主婦はがめつい。
ふと僕がその肌色のきれいな手の持ち主に気をつけてみると、近所の美人さんだった。いつも僕
のアパートの付近で犬の散歩をしているから僕にはすぐにわかった。僕のことは知らないだろうが。
彼女は僕に気がつくとすぐに手を引っ込めた。「どうぞ」といって。ちょっと頬を桃色にしたのがかわ
いかった。
僕は彼女が気になった。出会いなんてこんなもんだ。ふとした日常が運命の出会いなんて事はあ
りえなくはない。僕が彼女を見るのは犬の散歩のときに限られる。僕には犬がいない。残念だ。で
もいい考えが浮んだ。僕はさっそく近所の自然公園にいって犬の代わりを探した。すぐに見つかっ
た。ひもがくっ付いている動物でさえあれば何でもよい。
「こんにちは」
だいたいこうやって何気ない出会いがよいのだ。
「お宅のワンちゃんはかわいいですね」僕はいった。彼女は僕の犬を見て驚くだろうか。僕はどきど
きした。
「まあ、かわいいとかげ(?)ちゃんですね」僕の作戦は成功した。次の日も、また次の日も僕たちは
街角の片隅で出合った。出会いが重なればお互いに意識しあうのも無理もないことだ。僕たちは結
ばれた。
しかし僕には恋人がいた。結局、この恋人もいっぱいティッシュを使うので、ティッシュ切れにはう
るさかった。僕が犬のお姉さんを家に呼んでいい事をしようとしたときだった。電話がなった。僕は
きっときゃつはこんな時に電話してくると確信があったので留守電にしといた。留守電が言った。
「ちゃんとティッシュ買っといてね」犬の彼女を見た。彼女は怒るどころか、僕のとかげの背中をかわ
いいと撫でていた。お姉さんはすてきな女性だ。
429:名無し物書き@推敲中?
09/10/21 00:25:01
「大仏」「紅葉」「高速道路」
430:大仏、紅葉、高速道路
09/10/21 23:46:28
高速道路がえらい渋滞だとラジオが告げている。
車同士の接触事故で車はひっくり返り、運転手が
抜け出せず道路の真ん中で救助を待っているのだ。
この時期、紅葉が綺麗だからと観光に出掛けたのが
間違いだったかもしれない。
渋滞というものは非常にイライラする。ラジオは抑揚の無い声で
実況しており、同じ景色しか見えないこの状況が、
昼間観光先で見た大仏を思い出させる。
生きている身としては、同じ景色の同じ格好はとてもつらい。
だから一刻も早くこの車から出して欲しい。
意識が遠のいてきたのか、唯一事故で壊れなかったラジオが
掠れて聴こえ始めた。
「バスタオル」 「辞書」 「深夜」
431:名無し物書き@推敲中?
09/10/22 20:45:09
あたしはお風呂場を飛び出すと、深夜にもかかわらずバスタオル一枚の
姿で一階の書店に行き、辞書を本棚から引っ張り出しページをめくった。
「ああん、ミトラヴァルナ語なんて地球の辞書に載ってないじゃん!」
次のお題:「カレンダー」「土偶」「予習」
432:名無し物書き@推敲中?
09/10/22 21:29:07
ひろくんに告げるかどうかまだ迷っている。
来る前に電話をもらっていたので、すき焼きの下準備は済んでいる。
テーブルに並べた野菜諸々の皿にはラップがしてある。
ひろくんは部屋に来るなり「なんだ?豪華だね」とテーブルの上を観て言った。
「なにか、あ、誕生日か?」見当違いの事を言った。
ひろくんはネクタイをゆるめながらしゃべる。職場の帰りに寄ったわけである。
「まいった。あんま若い子にアイデア出させるもんじゃないな」
ひろくんだってまだ三十前だ。
「アカレンダー!」「アオレンダー!」「キレンダー!」
急にひろくん叫び出した。声はそこそこ賃貸マンションなので抑えている。
「五人合わせて、ゴレンダー!!」「なにそれ」
「最近さ、ご当地戦隊とかなんとかいうのが、一部の地方自治体で、はやって
るらしい。それで若い奴が調子に乗って会議にかけたら通っちまって……
アオレンダー役がまわってきそうだ」
「それどういうとき役るの?」
「祭りとか、市民のまあ子供の来るイベントだな」
ひろくんはカバンからラフスケッチを出した。アイデアを会議にかけた後輩職員
が書いたもののカラーコピーだ。
変身ヒーローの顔には、地元の有名な土偶の顔をかたどったマスクが色々
アレンジして付いている。
アオレンダーは中でも、そこそこかっこいいような気がする。ひろくんは背が高い。
意外と似合うんじゃないかな。
ひろくんはビールを飲み出す。「あれ?コップが一個しかないぞ」
「ううん。私風邪っぽくて」台所でダシを暖める。
ひろくん?もうすこし時間をください。
わたしは、母親になる予習に、静かな腹式呼吸の練習を、はじめた。
次の御題、「野球」「卒業」「ナイフ」でお願いします。
433:名無し物書き@推敲中?
09/10/22 22:12:54
野球 ナイフ 卒業
あれで野球やってるつもりだったよな、と、ぼくは言った。
ああ、蹴ってるのにな、と、相方が言った。
どう見てもサッカーに近いよな、と、ぼくは言った。
まあ、ベースランニングするけどな、と、相方が言った。
グローブが要らないからよかったよな、と、ぼくは言った。
よく考えたよな、ガキなのに、と、相方が言った。
でも、誰が持ってきてたんだろうな、あのボール、と、ぼくは言った。
誰か買ってもらってたんじゃね、と、相方が言った。
甘やかされてんなあ、と、ぼくは言った。
ナイフ買ってもらってた奴のセリフか、と、相方が言った。
アウトドアにナイフは必須だよ、と、ぼくは言った。
キックベースにもドッジボールは必須だよ、と、相方が言った。
ぜってーおめーのボールだったべ、と、ぼくは思った。
小学生の元気なかけ声はいくらでも響くが、カラスの鳴き声はしない。
つぎのお題は、ベース、元気、カラス。
434:名無し物書き@推敲中?
09/10/22 22:40:47
カ~ラ~ス~、なぜ鳴くの~。志村けんならこう言うであろう。
カラスの勝手でしょう。
ベースとなるのは不条理または無意味である。
論外であるほどよく、不毛であるほどよい。
ゆえに我曰く。元気があり余ってたんだな。
つぎのお題は「江戸」「小判」「発掘」でヨロシク
435:名無し物書き@推敲中?
09/10/22 22:41:29
「カラス」
「スカラべ」
「ベース」
「スライム」
「ムース」
「スタッフ」
「フェイス」
「スタイル」
「ルース」
「……」
「元気ないね。どうかした?」
「もういい。おれの負けっす」
次のお題:「超特急」「繭」「ルーズリーフ」
436:名無し物書き@推敲中?
09/10/22 22:54:43
新人を発掘したいんだよね。大型新人。小判ザメみたいなのはいらない。
時代を築きたいんだよ。江戸時代よりも強固な。そこでは俺様がルールだ。
次は「閉店」「出社」「残務」ね
437:名無し物書き@推敲中?
09/10/23 17:59:50
来月で閉店なのに休日出社して残務処理。休日手当くれお。
次は「異次元」「猫」「大河原」
438:名無し物書き@推敲中?
09/10/23 19:08:39
おれはロドリゴ。今まさにどでかい悩みを抱え込んでいる最中だ。
大河原というのを地名として処理していいのか人名として処理していいのか。
異次元の悩みとも言える。固有名詞は禁じ手だからだ。処理速度は制止にちかいが
猫の手はいらないニャリヨ-。
次「小泉」「清水」「石塚」
439:「閉店 出社 残務」
09/10/24 16:04:30
閉店セールは間もなく終ろうとしていた。外は雨だった。一時間前から強くふりだし客足はぱた
りととまっていた。既に最終日であり、社長が現れて店員の一人一人を奥の事務所に呼び出して
いた。残った従業員だけで、その日の残務処理も事足りそうだった。
明日から僕も新しい会社へ出社しなければならなかったので、早々と挨拶を済ませて帰りたいと
ころだった。閉店の10分まえには最後の客もいなくなった。僕はバックヤードの折りたたみ椅子に
腰かけて従業員の出勤カードを眺めていた。社長が現れた。
「ご苦労さん。店の中はいつもどおりこのままにして置いてください。あとは全部業者が片付けてく
れます」
実質この社長の言いなりに経営されていた店舗は遅かれ早かれこうなる運命だったのかもしれ
ない。誰もこの人には逆らえなかった。最後に残ったのはただ同然で処理される在庫の山だけだ。
「みんな事務所であなたがくるのをまってるんですよ」
僕は社長につれられていった。でも事務所の中には誰もいなかった。
「君たちにはだいぶ世話になったね。本当にご苦労さん。君たちとは今日でお別れだけど、またど
こかで出会えたとしたら、よろしく頼みますよ。それで最後に惜別の礼としてみんなにはもうプレゼ
ントしたんだけど、私はもう次の事業が決まっているんだ。それはね、ここでためたお金を全てつ
ぎ込んだ一大事業なんだ。もうみんなにあげちゃったけど君もどうだろう?」
いつもは殺風景の事務所に5つの白い変なものがあった。
「これは繭といってね。映画からヒントをえたんだけど、この中にはいってもう一つの時間を体験で
きる機械ってわけなんだ。つまり夢を見るようなもんなんだけど、実際にはもっとリアルだ。脳の一
部に刺激を加えることで、人の視聴覚をコントロールできる代物さ。みんな今体験中だよ」
みんなが戻ってこなかったのが今になってわかった。 1/4
440:「異次元 猫 大河原」 「小泉 清水 石塚」
09/10/24 16:06:27
「そうかい、それは残念だね。じゃあ、がんばって」社長は僕の意思を尊重した。
僕は小泉、清水、石塚なんてもう会わなくてもよかったが、大河原さんだけには会いたかった。
大河原さんは小泉、清水、石塚の3人とも寝ていた。そして僕とも。でも彼女は4人の中で僕が一
番よかったといってくれた。何よりもあとの奴らはただ暇つぶしに寝ただけなんだと。
僕は暗くなった店内を歩いて時間をつぶした。あの3人のうちに大河原さんだけを残していくのに
は僕は堪えられそうになかった。
「よう、H君」
僕を誰かが呼んだ気がした。でも、誰もいない。闇にまぎれ誰かがいるのだろうか。
「H!おまえだよ」
小さくて黒い野良猫がバックヤードの方から現れたが、こいつがしゃべってるとは現実的に思え
なかった。
「おまえは社長にだまされなかったけど、他の奴らはだまされちゃった!」やっぱり猫がしゃべって
いた。「よう、よう、よう。きいてるの?」声の言いぐさは乞食のように意地汚かった。
猫は立ち上がって、商品棚のチョコレートを取ろうとしていた。「おい!これ取ってくれ」
僕はヘッテのミルクチョコをとってあげた。猫は両手でそれを取ろうとしたが、肉球を滑らせ、受け
取りそこなった。床に落ちたそれをガリガリと爪で引っかいて中身を取り出そうとした。
「もういいや」猫はアルミがガリガリになったチョコはそのままにして言った。「大河原さんはもう戻っ
てこないね。君は知らないのだろうけど、あのカプセルは未来からやって来たのもなんだよ。僕も
その未来からやって来て、つまりあの社長とやらを未来の法律にのっとって逮捕するために来た
んだ。社長は違法なものを転位させた罪さ。僕は追っかけてきたの。でもね、僕はこの次元に来る
までは自分が猫ってことがわからなかったんだよ。つまり君には難しいだろうけど、僕たちは未来
から来たといったが、それは単純に君たちがこれから行くところの未来ではないんだ。僕たちがそ
うしようとするときには、あくまで異なる次元、異次元をもってこれを体験しなければならない。次元
を超えると、生き物はある種、変質をするらしい。わかるかい?簡単に言えば、僕がもともといた
時は、時系列的には未来なんだけど、まるで君たちの成長した結果の未来ではないということさ」
2/4
441:「超特急 繭 ルーズリーフ」 1/2
09/10/24 16:08:01
僕は猫が言っている事がさっぱりわからなかったけど、結局僕が求めるのは、大河原さんの件
だけなので、そのことについて聞いてみた。
「うん、うん。じゃあ君の言うことはわかるよ。ある意味で君は賢明な選択をしている。世の中は不
明なことばかりなんだな。実に!それを全て理解するなんてことは不可能さ。君はそれを理解して、
要領よく僕に決断を迫ったことは正しいね。事態は切迫しているんだ。君はすぐにでもタイムステッ
プをして大河原さんを助けなければならない。時間を跳び越すんだ。やり方は簡単。まあ、そこの
ルーズリーフを取り出してごらん」
僕は言われたとおり、文房具売り場のルーズリーフを取り出した。そして、それが何を意味する
のかなんててんで知れなかったが、理解しようともせず、言われるままに猫のやり方をしてみた。
ルーズリーフは時間を跳び越す入り口である。そこに君はどれくらいの速さで移動するかの選
択を書き込めば良いんだ、と猫は言った。普通、急行、特急と、まるで銀河鉄道をまねたような選
択を猫は言った。馬鹿げている。でも僕は書き込んだ。超特急。
何も起こりそうにはなかった。ルーズリーフはただのルーズリーフであり、その上にかかれた文
字はただの文字にすぎなかった。そしてあまりの異質の静けさとともに、猫も消えていた。
僕はきっと夢を見てたんだ。そう思おうとした。そうでもしないとこの馬鹿げた現実に気が狂って
しまうんじゃないかと思ったのだ。でもそのとき、僕がルーズリーフを閉じたその時に、閉じた隙間
からは核分裂の光を思わせるような閃光がほとばしった。僕はとっさの事であわゆくそれを落とし
そうになったが、僕に突き刺さるように放たれた光をこじあけるように、掴んでいたルーズリーフの
間に指を差し込んで、それを開いた。瞬く間に僕は全体的な光にのみこまれた。そして意識を失っ
た。次の瞬間に、僕はまたもとの店の中にいた。 3/4
442:「超特急 繭 ルーズリーフ」 2/2
09/10/24 16:10:16
「社長が呼んでいるから先に行くね」と大河原さんが言っていた。
時計を見ると閉店20分前だった。僕は大河原さんに社長のところには行かないほうがいいと言
った。でも理由を説明することはこの限られた時間では困難だった。社長には大河原さんは逆らえ
ないし、おまけに僕が彼女を説得するだけの理由にはまったく意味をなしていないことは現実的に
たしかだった。だから僕は社長に変な機械に入ってくれといわれても、絶対にはいってはいけない
とだけ念をおして伝えた。彼女に僕の真剣さを伝えるために、僕は念をおしてそれを伝えた。
僕はさっきと同じように事務所に呼ばれた。でもそのとき、僕が事務所の中にはいろうとした時、
廊下の向かいにある鏡に映った僕の姿は僕ではなく、小泉だった。そして事務所内には大河原さ
んの姿がなく、繭がまた5つあった。ふたたび同じように社長に言われ、闇から猫が現れ、僕はま
たタイムステップをした。次には、僕は清水であった。僕がいま清水であると自覚したとき、小泉の
時と同じく、全ての清水に関する出来事が僕の中で明白になった。次には、石塚になっていた。で
は僕という存在は一体何ものなんだろう。そして僕はまた大河原さんになっていた。今度は僕に話
しかけてきたのは、僕であり、小泉であり、清水であり、石塚だった。僕が大河原さんになったとき、
僕は僕を含めてその4人ともどうやって寝ているのかもわかった。 4/4
「インフルエンザ」「検温」「エレベーター」
443:インフjルエンザ、検温、エレベーター
09/10/24 18:19:25
いつもなら3階の自分の部屋まで階段を上っていくのだが、
今日はなんだか身体がだるくて上る気がしない。
買い物袋もそんなに中身があるわけではないのにやたら重く感じる。
今日くらいは、と、エレベーターに乗り込んだ。
やはりもう歳なのだろうか。昨晩少し遊びに出掛けただけなのに、
こんなにも身体に響くなんて、とため息が出る。
部屋の鍵が開いていたので「ただいまー」と声をかけると、娘が嬉々とした
表情で出迎えた。
「お帰り、お母さん。ねえ聞いて!うちの担任の先生、インフルエンザに
かかったってよ!今朝方すごい熱が上がったんだって」
「もしかしたら私も熱が出て、明日学校休めるかも」などと、中学生の娘は
ふざけながら体温計を探し始めた。
娘の検温結果は今の様子では平熱なのだろうが、参ったなあと
私はまた溜息が出た。
休みたいなあと騒ぐ娘の傍らで、私は携帯を開くと密かに先生へメールを送った。
娘より先に私にうつったようです、それから昨夜は楽しかったです、と。
「きっと明日熱出るかもね」と言って苦笑すると、娘は怪訝な顔をした。
「先生に感謝しなさいよ」と付け加えて、娘から体温計を取ると、私も検温を始めた。
「テレビ」 「友人」 「電話」
444:名無し物書き@推敲中?
09/10/24 18:55:04
もう返事もしたくない気分だったので、背を向けてひとりテレビを観ていると、突然背後から直也が、外見からは想像もつかないほどの強い力で私の身体を抱きすくめた。
「なっ、何すんのよ!」
「うるせえよ。こっちが大人しくハイハイ言ってるからってずいぶん馬鹿にしやがって。お前みたいな女はこうしてやらあ」
両手で乳房の膨らみを、乱暴にわしづかみにされる。
「痛い、痛いってばあ。やめてっ」
「黙れよ。すぐに気持ちよくしてやるぜ」
左手で乳房を揉みしだき続けながら、右手が乱暴にブラウスのボタンを引きちぎる。
「いつまでも、どの女相手でもただの万年メル友人生なんてもう真っ平なんだよ。俺を甘く見て部屋に上げたりするからこんな目に遭うんだ。もう逃がしゃしねえぜ」
ベージュのブラジャーをむしり取られ、乳首を指先でこりこりといじられる。
「ほれ見ろ。もうこんなになってるじゃねえか。この淫乱女がよう」
「ああっ……だめ。やめてよ。やめてったら」
身動きができない。そうだ。電話だ。誰かに電話して助けを呼ぼう。
無我夢中で右手を、サイドボード上にある携帯電話まで伸ばそうとする。
「おっと」
ぐいっ、と身体全体が後ろに引っ張られた。勢い余って床に倒れてしまう。すかさず直也が身体の上に馬乗りになると、両足首をつかんで勢いよく左右に拡げた。
「いやあああっ」
「へえ。見た目どおり可愛いパンティ穿いてるんだな。どれ」
ぐりぐりと指がパンティの布越しに、船底型のふっくらと温かなふくらみの間の亀裂に食い込み、やわやわとこすりつけてくる。
「嫌がってる割には、だいぶいい感じに濡れてきてやがるぜ。へへ」
亀裂をなぞっていた指先が、小さなこりこりとした突起に触れた。
「だめえっ!」
「わかったわかった。ちゃんと直にいじってやるよ」
必死の抵抗も虚しく、パンティがゆっくりとずり下ろされてゆく。
「綾奈って、けっこう毛深いんだな……」
お題は継続で
445:名無し物書き@推敲中?
09/10/24 19:17:25
「趣味が釣り?ああ、釣りは良く分かんないけどね」
「あ、そうですか」
「海、行くと釣り?」
「まあ、そうそうしょっちゅうでもないですが」
「ふ~ん。釣り、どういうとこ面白いの」
「来たー、というか引くー、と言うか」
「今までで最高にでかい魚、なに釣ったの?」
「シイラですか」
「シイラって、ちょっと平べったい」
「ええ、ちょっとカラフルな」
「どうやって釣るの?」
「ルアーですね。パヤオって浮き漁礁があるんですよ」
「ふ~ん、そこに寄ってくるの」
「そうです。で、逃げる魚をナブラって言うんですが、
それ目掛けて投げては巻き、投げては巻きで」
「咥えるの?こんな感じで」
「ええ、ガツーンと来ますね」
「面白い?」
「はい」
「それじゃ、電話、お友達紹介してくれる?」
『え~~~~~~』
「もしもし?お久しぶりです。テレビ観てました?」
次のお題は「カメラ」「井戸」「書留」
446:名無し物書き@推敲中?
09/10/24 21:16:23
カメラ屋の裏の井戸には精霊が出る。この前もひと稼ぎさせてもらった。こんな具合だ。
「あなたが落とした書留はこの金の書留ですか。それとも銀の書留ですか」
「いいえ。わたしが落としたのは中身が空っぽの現金書留です」
「まあ、あなたはなんて正直な方なのでしょう。ごほうびに
この金の書留と銀の書留を差し上げましょう」
次のお題は「小泉」「清水」「石塚」
447:名無し物書き@推敲中?
09/10/24 21:52:35
「カメラ」「井戸」「書留」
僕はそのとき、彼女と野井戸の話をしていたんだと思う。草原が終わって雑木林が始まるそのちょうど境い目
あたりにあるという、その井戸が実在するものだったかどうか。それは今の僕にはどうでもいいことだ。
「深いのよ。とても深いの。ちょうどハルキ君の心の奥みたいに」
「ぼくの心? そんなに深いものじゃないよ」
「嘘。どんなに言いつくろってみても、あなたの目はいつもここではないどこか遠く、私には手の届かない
ようなところを見ている」彼女は悲しそうに微笑しながら小さく放屁した。「とにかく、とっても深いの」
彼女ははっとするような容姿というわけではなかったけど、完璧な美しい曲線を描く見事なあごの持ち主だった。
カメラを手にした写真家志望の男の子が通りすがりに彼女と出会ったら、思わず足を止めてレンズを向けずにはいられないことだろう。
「ゆうべは遅くまで、何を読んでいたの?」
「サリンジャー」
まさか彼女のロ・バを連想させる、生命感溢れる寝言が耳についてどうにも寝られなかった、などとは言い出せず、
ぼくはとりあえずそう答えておいた。
「あなたってサリンジャーかフィッツジェラルドばかりね。そんなに面白いの」
「そうだね。君が面白いと思えば、それは君にも面白いものだと思う。ぼくはそれに対して、何ら意見を
口にするつもりはない。ぼく宛の書留郵便がぼくの手元にしか届かないのと同じように、読書による感動と
いうものはしょせん、読んだ本人の心にしか届かないものだ」
「あなたって変わってるわね。そんな理屈をつけないと読書の感想も口にできないの」
彼女の鮒のような目を見ながら、ぼくは彼女の見ているぼくと本来のぼくのことについて考えてみた。結局
答えはすぐには出ず、彼女はまた井戸の話を始めた。
「すごく深いって聞いたわ。前に寝たことがある男の子が言ってたのだけれど、彼ったらお前のおまんこよりも
深い、だなんて。あれで洗練された言い回しのつもりかしら」
ぼくは軽く勃起したペニスを、さりげなくジーンズの上から押さえつけた。やれやれ。
次のお題:「相撲」「通勤電車」「右利き」
448:名無し物書き@推敲中?
09/10/25 15:48:28
「通勤電車、相撲、右利き」
毎朝、高校へ向かう通勤電車はさながら地獄ね缶詰なのだ。
せっかく朝早くから整えてきたヘアーメイクも
ふわりとほのかに香る香水だって缶詰のなかでは
全くの場違いで、異邦人の様に私は感じるのだ。
不機嫌な感情を顔から発散する様に
何人たりとも近付くことなんか赦さないこの私に
なんと、ファンが出来たのはつい三日前。
その私のファンというのは、ヨレヨレのスーツよろしく
ヨレヨレのサラリーマンで私のお尻をまさぐってくるのだ。
勿論抵抗は試みたのだけど、大人数で相撲を取るような
この満員電車で満足な抵抗など勿論出来なくて
揚げ句の果てにこの私の右手をギュッと握り込んでくるサラリーマン。
くそう。この私の手は貴様の汚らわしい股間を
掴む為に存在するわけではないのに
一体、どうしたものかしら。
今日は耳元で熱い吐息がかかり、私の脳と精神を
ぐちゃぐちゃに掻き回す。
余りの怒りに脳の皺がノビきって何も考えられない。
……私をここまでコケにしてくれたおバカさんは、
貴方が初めてですよ。
私の中に眠るフリーザ様が目覚める。
フリーザ様はサラリーマンの股間に宛がわれた右手に力を込める。
今日のこの日ほど、左利きから右利きへ矯正した
両親を感謝することはないだろう。
私は、いやフリーザ様は両親への感謝と
溜まりに溜まった怒りを噛み締めサラリーマンの股間を
握り潰してやった。
穏やかな初秋の風を受け、私は高校へ向かう。
明日は今日より少しはマシになるだろう。そんな気がしていた。
次「呪い、ロリータ、焼きたてパン」
449:名無し物書き@推敲中?
09/10/25 16:40:04
「呪い、ロリータ、焼きたてパン」
スーパーの入り口をレジの並んだ角を左に曲がると、店内
焼きたてパンの大きなケースがある。幾つもの透明プラス
チックの扉があって、惣菜パンから一斤売りの食パン、フラ
ンスパンや菓子パンが並んでいた。
会社帰りにスーパーに行くと、私は必ずそのコーナーに並
んだ。19時半に賞味時間の残りで、20%引きになる。
本当は価格が問題ではなく、その店内の工房から、少女の
ような女性が店内に出てきて、棚の商品を再度陳列しなおし、
値引きの値札を付けていく。
私は、世に言うロリータ・コンプレックスでは無い。
しかし、その「主任」とエプロンの腰に名札を付けた女性は、
その身体の部分部分が、小さく、華奢で、まるで十代の前半
のような小柄で、可憐な印象だった。
事件が起こったとき、それはすぐさま私や、他の街や、その
スーパーの誰もが気付かなかった。
彼女は、冷蔵庫に詰められ、埠頭から引き上げられた。
少年犯罪だった。だから、私は、彼女の名前と
年齢しか報道で知らなかった。
私は、そのときは、気分は沈んだが、直接の接点が無い彼女
に、それ以上の感情は、湧かなかった。
二年後、定期診断で私は、自分があと一年生きられない事を
知った。不思議と、私は平静に、医者の宣告を受け入れた。
有給をとった。車とカメラを買った。
街の噂を調べて、「子供達」の居場所を調べた。
私は、今、ショットガンの銃身を切断している。ライフル所持の
免許は、私が生きているうちには降りないだろう。
呪いでは無く、これは、清算である。
次の御題「ガムテープ」「百科事典」「完全犯罪」
450:名無し物書き@推敲中?
09/10/25 17:06:03
お題がかぶったら先に出されたのを優先だよ。
>>1のお約束を読んでから楽しく参加してね。
451:名無し物書き@推敲中?
09/10/25 18:13:51
「ガムテープ」「百科事典」「完全犯罪」
ろくに抵抗の手段も思いつかないまま、三人揃ってガムテープで両手首と両足首とをぐるぐる巻きに
され床に転がされた。情けないもんでたったこれだけのことで、簡単に身体の自由など奪われてしまう。
「ひゃあはははっ、いい格好じゃねえか。なあ小泉、清水、石塚よおっ」
馬鹿だこいつ。優位に立ったおかげで完全に自分に酔って精神イッちまってる。もっともそんな奴を前に
ただ黙って転がってるしかない俺らも俺らだが。
「今までの恨みも合わせて、俺様の気が済むまでいたぶってやるぜえ。けけけ。どうしたよ、お前ら。
いつものように俺様に向かって何か威勢のいいことを言ってみなよ。猫の手はいらないとか、カメラ屋の
裏の井戸には精霊が出るとかよお」
つくづく馬鹿。最初に口をガムテで塞ぎやがったのはお前だろうが。まあ分かった上でいたぶってるつもりで
いるなら、とりあえずは好きなようにさせとくしかないんだが。
「その後は裏の採石場の穴にでも放り込んでやるぜっ。上からユンボで石投げ入れておけば、死体は永遠に
見つかりっこねえ。完全犯罪の成立ってわけだ。へぇへへへ、俺様賢い。俺様最高っ。俺様まんせー」
ひとしきり騒いでから、その場にしゃがんで俺の顔をのぞき込んでくる。臭い息が顔じゅうにかかって俺は
顔をしかめた。
……こいつってたぶん、死ぬまで童貞のままなんだろうな。
「で、例の百科事典はどこにやったんだ。石塚クン。どうせ言っても言わなくても許してやる気なんざ
さらさらねえけどな。どうせなら言ってから死んだ方が気分いいだろ」
アホか。どのみち殺されるとわかってて、隠し場所をわざわざ教えてやる馬鹿がどこにいる。
次のお題:「聴診器」「帯」「リモコン」
452:名無し物書き@推敲中?
09/10/25 20:55:42
何が気に食わないのかはわかりませんが荒らさないでくださいよ。
453:名無し物書き@推敲中?
09/10/26 21:58:35
聴診器 帯 リモコン
遠くに聴こえる学生達の声。保健室で彼女と二人きりになった僕にはもう非常ベルの音は聞こえなかった。
彼女は聴診器を当てるように僕の胸に手を当てた。
「聴こえる……」
彼女の言葉は空気の振動ではなく、彼女の脳から直接僕の脳に響いていた。そして彼女の香水の匂いは僕を粒子にし、そのたびに僕は宇宙を周回してはここに戻って来てを繰り返していた。
「私のも聴いて……」
予想していたにも関わらず僕は酷く動揺した。けど、拒むことも出来なかった。ゆっくり手を伸ばすと、彼女はその手を取り無駄を省いた。だから僕は言い訳をする必要がなくなった。
制服越しの彼女の胸は色んなものを取っ払って、僕を純化していった。彼女の左手が僕の腿に触れたとき僕のリモコンは奪われ彼女のものになった。
もともと緩んでいた心の帯が急速に解けていく。二人の吐く息と熱が空間を作っていった。カーテン越しの十月の太陽の光も、非常ベルも消毒液の匂いも、もう特別な意味を持たない。
次題 宗教 統一 集合体
454:名無し物書き@推敲中?
09/10/27 02:51:22
【宗教】【 統一】【 集合体 】
「木村君、ちょっと来てくれないか」
部長に呼ばれた。間違いようも無く例の商品の件だ。
「営業の報告は、君も耳にはしていると思う」「はい……」床の大理石材が、冷え冷えと感じた。
「やっぱりね。消費者はあのフレーバーは受け入れ難いようだ。手直しと言う事になると思う」
私は黙っていた。
「ブランドの旧来の加糖商品系列との統一をしたい意向は、上層部もあった。いわばそれを
テコに力押しで押し切る目論見だった」
私は、今回初めて主管に立った。女性と言う事もあり、気負いが無かったかというと、自信は
無い。
「ドリンクの味と言うのは簡単には変えられない。客は、旧来の商品に愛着もある」
人口甘味料の甘みは、糖とは異なる。普通、複数種の甘味料を使うのは、人口甘味独特の
後味をマスキングするためだ。
「まあ、ドリンクの味には各社独特の戦略がある。宗教戦争と喩える人間も居る。
客が望んだ味覚なら売れるが、そうでない場合は抵抗を受ける」
今回、マスキングとあわせて、フレーバーの積極的使用を提言せざるを得なかった。社の
意向としては、加糖飲料との印象的な差を縮めるというのが、命題だった。
フレーバーも結果的に後味のマスキングに使われる。
「どうするかだな……」と、部長は老眼鏡を拭きながら言った。
私はスーパー等への強力なプッシュを思い出した。敗北という気持ちが、現実の出荷ケース
の減少から、押し寄せてくる。
試作現場の研究所には何度も足を運んだ。
節目には必ず私はティスティングした。正直に言えば、商品のアピールと言う課題の上で、
狭い研究所の中で、フレーバーの増量に鈍磨していった可能性は否定できない。
私は、主管を降りることになった。企業は各部署が連携を持つ集合体である。
私は、勢い込んでいなかったか、もっとリサーチを重んじるべきではなかったか。
久しぶりに早く家に帰る。息子が飛びついてくる。
「……どうしたの?なにかあったの?」子供は敏感だ。抱きしめる。
玄関の先のリビングには、不評だったドリンクが冷蔵庫に入っている。
「……ただいま」私は、その私の戦友にも、万感を込めて帰宅を報告した。
次の御題【迎撃】【梅干】【毛ばたき】
455:名無し物書き@推敲中?
09/10/27 17:44:13
「迎撃」「梅干」「毛ばたき」
「逃げよう」
絞り出すような声で長妻が言う。
「逃げる? 何を言うか、貴様っ、我々ポッポ軍はいつ、いかなる敵に対しても、決してひるむ
ことなく立ち向かってゆくのがモットーである、敵前逃亡などという軟弱な真似は許されんっ」
周囲を意識しているときの癖で、ことさらに大時代な口調になった亀井が吠える。
「逃げよう、逃げるんだ、とりあえず、しばらく逃げ回っていれば奴らだってあきらめてくれる」
「寝言を言うなっ! 何を軟弱なことを、たかが数万の敵くらいこのわしひとりで迎撃してくれるわっ」
「口先だけで威勢のいいことを言うのはよせ、おれも前にそれでひどい目に遭ったんだ、覚えていないか?」
前原が冷静な口調でたしなめる。
「長妻の言うことにも一理ある、今おれたちがここで踏ん張って抵抗してみたところで、ここにある武器だけ
では奴らには何のダメージも与えることはできん、なでられたほどにも感じないことだろう」
そう言ってデスクの上にあった毛ばたきで、揶揄するように軽く亀井の頭をなでてみせた。
「貴様っ、貴様までわしを愚弄するかっ」
駄目だ、こいつには説得は通じん。そう言いたげな目で前原は藤井と岡田に目配せをした。うなずいてふたりも
立ち上がり、前原の後に続いて部屋を出る。
下の階は大部分の兵たちが逃げ出した後らしく、がらんとして薄暗かった。奥の炊事場にぽつん、と灯りがついて
いるのが見える。
「あんたたち、ここはとりあえず逃げ出すつもりなんでしょ? ちょうど良かったわ。今残っていたお米でご飯を
炊いて、おにぎりをこしらえていたところなの」
三人の姿を見て、景子が明るく笑いかける。
「梅干もあったから入れておいたわ、知ってる? 梅干入りのおにぎりは腐りにくいのよ、殺菌効果があるの、
これ豆知識ね」
おどけた表情に三人も、つられてつい笑ってしまう。
「やだぁ。あたしこんにゃくゼリー嫌い~」
冷蔵庫の中をのぞき込みながら、相変わらず空気の読めないみずほがつぶやく。
「食料品探しもいいけど、あんたもおにぎり手伝いなさいよ。ほら、男どもも」
次:「経済」「桜」「メモリアル」
456:経済、桜、メモリアル
09/10/31 00:39:59
メモリアルと書かれた小さなノートは娘の日記帳だ。
本当はダイアリーなのだが、どこで覚えたのか、メモリアルという
言葉に日記という意味を見出しているらしい。
その小さなノートには、毎日の他愛無いことが元気いっぱいつづられている。
しおりが挟まっているページが一番新しい日記なのだろう、ぱらぱら捲ると、
しおりと呼ぶにはあまりにも粗末な桜の形をした紙切れが滑り落ちた。
昨日書かれたばかりのその日記は、誕生日についてのものだった。
私は娘と二人暮らしの母子家庭で、経済的な余裕が無い。
娘の誕生日も毎年ろくに祝ってやれず、昨日もケーキのような菓子パン一つで
お祝いした。日記にはその菓子パンがとても美味しかったと書かれてある。
そして、私から貰ったしおりが、すぐに日記のページを探せて助かると。
先ほど滑り落ちたしおりを挟むと、私はそのままノートを抱きしめた。
菓子パン一つではあんまりだからと、レシートの裏をピンク色に塗り、桜の形に
切り取ったものをプレゼントしたのだ。娘がいつも日記を書くたびにノートの端を
折っていたので、思いつきで作ったのだが、本当に喜んでくれていたのだと
私はとても嬉しくなった。親子といえど、人の日記を読むのはためらわれるのだが、
娘の本心を知りたくて、私はノートを開いたのだ。昨日の娘の喜んだ様子を少しでも
疑った自分が恥ずかしくなって、私はごめんねと呟きながら、それでも微笑んだ。
お次「憂鬱」 「夜明け」 「気合い」
457:名無し物書き@推敲中?
09/10/31 09:58:05
「憂鬱」 「夜明け」 「気合い」
「気合だ!気合!」
波濤の上で漁労長が叫ぶ。今日は波が高い。
俺は、速度を調整しながら、延縄を引き揚げていた。
昨日五時間かけて仕掛けたマグロ用の延縄である。
ずどん!と中型のマグロが甲板に突入してくる。
仕掛けを切って、頭に棍棒をくらわす。
ギャフで引っ掛け、解体用の包丁で鰓をマグロの
口から掻き出す。保冷庫にギャフで引きずっていって、
そのまま氷の詰まった庫内に落とす。
俺は、憂鬱だった。
なんで今日か、と思った。今日くらいは陸の、
あいつのそばに居たかった。
キャビンの電話が鳴る。船長が拡声器で叫んだ。
「ウマレタ・オトコ・ゲンキ」
俺は、がくがくと膝の力が抜けてしまった。
夜明けの海に、港へと疾走する第12○○丸。
俺は、泣いているのをかくす為、甲板に風に向かって
立ち尽くしていた。
次の御題「キノコ」「スカート」「文庫本」
458:キノコ、スカート、文庫本
09/11/02 22:37:29
おかっぱ頭の彼女はクラスメイトから
キノコとあだ名をつけられて笑われていた。
友達が居ないのか、いつも図書室で本を読んでいる。
僕は暇さえあれば、図書室に通って彼女を盗み見ているが、
周囲から馬鹿にされるほど、彼女が変わった容姿をしているとは
思わない。むしろ、スカートの紺色と対極するようにすらりと伸びた
白い美脚なんか、クラスの女子の誰よりも魅力的に感じる。
一冊の文庫本に触れる愛らしい指先と真摯な眼差し、そして凛とした佇まい。
キノコ、なんてあだ名ではもったいないではないか。
もっと高貴に、あるいは高級に、マツタケとかそういう方が似合うと思うのだ。
「白昼夢」 「迷路」 「靴紐」
459:白昼夢 迷路 靴紐
09/11/03 16:32:16
徹夜明けの昼前にうとうとしていたことは覚えている。
気がつくと通路に立っていた。目の前には十字を形作る通路と、通路の先に階段。通路の先に壁がある。壁の上に階段が捻れていた。三方に伸びた通路は更に従事を描き、複雑に絡み合って上に延びていた。
漠然と夢を見ていることがわかった。そして、通路や階段に足を着けている限り、歩き続けられることも何故かわかった。
「夢だしな」
俺は呟くと歩き出した。
十字を右に、壁に足をかける。その途端、壁は通路に、後ろの通路は壁になる。
いくつの通路と階段を抜けただろう。
「遊ぼ。私が鬼ね」
小さな女の子が走ってくる。俺は自分の夢に苦笑しながら、おどけて逃げるしぐさをする。
女の子の顔に笑顔が浮かぶ。
「キャハハハハハハ」
耳をつんざく声。一気に身体の熱が奪われる。
力の限り走る。いくら走っても女の子の声からは逃げられない。
通路に靴が転がっているのが見えた。靴紐がほどけかけたスニーカー。
ドン!
通路から押し出された。俺の革靴が宙を舞う。
「バイバイ」
女の子の肉食獣のような笑み。それが見えたのは随分と下に堕ちてからだった。
「目玉」「初雪」「オリーブオイル」
460:名無し物書き@推敲中?
09/11/03 16:43:31
>>459
三語のうち一語しか使われていない気が
「白昼夢」「迷路」はどこに?
461:名無し物書き@推敲中?
09/11/04 22:17:19
「目玉」「初雪」「オリーブオイル」
お客さんこんなのどうですか?
え?なになに?
これ。本日の目玉商品。
目玉商品。今時言わないよ目玉商品なんて。
広告に載ってない品。
載ってないのかよ。大事よ広告。
来店してくれた人だけのサプライズ商品ね。
まあいいや。どんなの?
これ。初雪のオリーブオイル和え。
うまいの?それうまいの?
かき氷風。
いらねえよ。初雪って冬だろ。冬にかき氷って。
かき氷風な。
同じだろ!
同じじゃねえよ。ポイントはオリーブオイルだから。
ずいぶんまずそうだな、おい。
失礼なこと言うな。フローズンオリーブオイルだから。
カクテルになっちゃったよ。もういいわ。
つぎは「広告」「カクテル」「かき氷」
462:広告、カクテル、かき氷
09/11/05 23:34:33
結婚式は真っ赤なカクテルドレスに決めた。
彼と飲食店の前を通った際に、店の壁に貼られた広告が
決め手となった。それはイチゴ味のかき氷の紹介で、
カメラの写し方がいいのか、非常に魅力的に見えたのだ。
私の頭の中では、白いタキシードの彼が真っ赤なドレスの私を
抱き上げているイメージなのである。
「これよ、これ!」と、私が店の壁に両手をついて叫んだとたん、
呆れたような冷めた声で彼が言った。
「さっきドレスの試着も入らなかったのに、また食い物かよ」
「停電」 「夜風」 「回想」
463:名無し物書き@推敲中?
09/11/06 02:14:25
停電
私は長い廊下を歩いていた。もうずっと歩いてきたような気もするし、今目覚めたような気もする。とにかく、蛍光灯の無機質な青白い光で照らされた廊下を歩いている。どういう構造の建物なのか、廊下はどこまでも続くように思われる。
どれくらい歩いただろうか、突然、視界で捉えられる一番奥の蛍光灯が消えた。そしてそれを合図にぱっぱっとひとつずつこちらに向かって灯りが消えていく。私は何故か恐ろしくなり来た道を戻り、全速力で駆け出した。
しかし反対側も同じように停電が始まっていて私は挟み撃ちされてしまった。為す術を失った私はその場に倒れ、最後の灯りが消える前に意識を失った。
回想
彼女と出逢ったのは展覧会だった。
私は一つの絵の前で恐らく二時間ほどその絵について思い巡らしていた。私は深い黙想に入っていった。真っ白な空間。その遠くに何かが動いている。徐々に近寄っていくとそれは一人の女だった。
彼女は裸で体の所々に血のような朱色が曲線に沿って流れている。彼女は新体操のような動きでその朱色を白い空間に撒き散らしていた。
その動きは激しくなる事もなく途切れることもなく、一定のリズムで続けられていた。
やがて視界は彼女から遠ざかり、その白に現実が滲んできて私は展覧会に戻って来た。絵と私の間に女が立っていた。それが彼女だった。彼女は黙想の女とは全く似ていなかったが、間違いなく黙想の中の女だった。
夜風
窓の隙間から入ってくる心地良い夜風につい眠ってしまったようだ。何か夢を見たような気がするが思い出せない。
窓から見える松が月に照らされて何か意味ありげに闇に映えている。少し考えてみるが、いっこうにその何かは出て来なかった。
今日はもうこれ以上書けそうにないと思い、書きかけの原稿を片付け電気スタンドを消そうとしたときだった。スイッチに手が伸びない。理由は分からないが灯りを消すのを躊躇しているようなのだ。
「まあいいさ、別に消すこともない」
そうして私は灯りを消すのを止めそのまま横になり、今度は深い眠りに入っていった。瞼の向こうに青白い光を捉えながら。
次題 スコープ ラジオ トンネル
464:名無し物書き@推敲中?
09/11/06 17:53:09
「スコープ」「 ラジオ」 「トンネル」
朝の霧が、疎らな林間に立ち昇っている。
セイコは、ランクルのルーフキャリアに囲まれた車体の天井の
ハッチを開けた。雨季は過ぎ、昼は高熱の大地と化す草原も、
その昼は抜けるような青天井を維持したままの夜間の放射冷却
で濡れた衣服が肌に貼り付くように寒い。
セイコは900mmの望遠レンズの外気温との慣らしの間に、ハッチ
の下の撮影台に昇ってスコープで四方を確認した。
昨日から追っていたガゼルの集団は3kmほど先に留まって
いる。
セイコはラジオをつけた。天候の確認である。その間、始終
ランクルの周囲を目視で確認する。ガードネットを張った車内は
まず安全だったが、車内から身を乗り出した時が危険だった。
鉱山技師だった祖父の話を思い出した。
深い立坑の中では、電波が減衰し、ラジオが聴こえなくなる
場合があるそうだ。垂直に地面から掘り下げられた立坑の
底部では、真昼間でも空の星が観える。
並んで停車していた保護官のレンジローバーで、保護官と
手伝いの男が起き出す。もっとも危険なのは密猟者との遭遇だ。
セイコは、またスコープを取り出す。
「お前は、お前は食われない」1頭の子供のガゼルに願を
かける。ライオンはそばに居る。スコープの、レンズでできた
トンネルの彼方から願をかける。
次の御題「フライ」「コード」「回転」
465:名無し物書き@推敲中?
09/11/08 02:27:38
フライ コード 回転
貧乏ながらせめてもの贅沢に、食材の普通は捨ててしまう部分の数々をフライにすることにした。
大根の皮、人参の皮、魚の骨、キャベツの芯。殆どタダのような品々を、使い込んだ油で素揚げしてしまうのだ。野菜チップスに骨せんべい。揚げたてに塩を振れば味は言うまでもなかろう。百円も出して科学めいたジャンクフードを食べるよりはずっと良い。
電気フライヤーにコードをつなぎ、油の温まるのを待つ。二度揚げしてパリパリにしてやろう。塩の他に胡椒も良い。一度揚げて醤油につけてからもう一度揚げるのも良い。他には何があるだろう。味付け無しというのもやってみようかしら。
そろそろ温まった頃か。油が跳ねないように慌てずやるんだ。よし、量もそれほど多くないし、全部一息に入れてしまおう。うん、いつ聞いても小気味良い音だ。胡椒よし。塩よし。醤油は、と、棚の中かな。
この棚がまた遠い。早くしなければ焦げてしまうぞ。それ静かに早く、と。
うォッとぉ……あ、ああ! コードが脚に! あ、あ! フライヤーが! 野菜が! 回転して落ちてゆく!
「貧乏人は揚げ物も食っちゃいけないのかよ……」
466:名無し物書き@推敲中?
09/11/08 02:28:39
次
籾殻 糞 ミニ四駆
467:名無し物書き@推敲中?
09/11/09 15:55:20
籾殻 糞 ミニ四駆
『糞ッ、ミニ四駆走らせてたら籾殻の中に突っ込んじまったぜ!』
「無理矢理一行ネタかよ。真面目に書けよ」
「るせえな。このところ決まって毎週末にアク制くらうんで機嫌悪りいんだよ」
『どうだ、これがボクの秘密兵器、ビチ糞型ミニ四駆<スカトロン一号>だ! ズルズルののゲル状ボディで、籾殻を撒いたコースの上だって楽らく走行勝利もゲット』
「待て待て。ゲル状ボディのミニ四駆ってどんなんだよ。<スカトロン一号>って名前もダサくねえか? お前やる気ねえだろ」
「るせえっつの。だいたい『ミニ四駆』なんてお題じゃ書ける場面も限られんだろ」
「それは想像力不足って奴だ。たとえばこういうシチュエーションだって」
『富市は慎重に小型トラックで一本道を進んでいった。一面田畑が広がるこの辺りでは、夜になると街灯もほとんどないに等しい。おまけに道は細く、自動車一台がやっと通れるほどだ。
夏の盛りではあるが、開いた運転席の窓からの夜風は涼しく感じられる。牛糞に籾殻を混ぜ込んだ肥料の臭いにはいささか閉口だが、この村で暮らしていくうちにいずれ慣れることだろう。由美子も和夫も、早く慣れてくれるといいのだが。
助手席には玩具屋の包装紙に包まれた小さな箱。和夫へのクリスマスプレゼントにと町まで買いに行ったミニ四駆だ。
クリスマスにはふたりに会える。和夫は喜んでくれるだろうか』
「こら待ててめえ。散々人の書いたものに文句つけといて自分はどうなんだ。なんで場面が夏の盛りだってのに、いきなしクリスマスプレゼントが出てくるんだよ」
「いけね。適当に書き進めてるうちにミスった。では気分を変えて」
『切り立った崖の上には、白亜の建物がそびえ立っていた。
コードネーム<ミニ四駆>からの情報では、ターゲットは間違いなくあの中に囚われているはずだ。俺は<糞>と<籾殻>に目配せした。ふたりは小さくうなずいてから、MP-5SDサブマシンガンの銃口を上げると、高い塀目がけて』
「いい加減にしろ、お題の処理の仕方が無理矢理すぎんだろ! どこの世界にコードネーム<糞>なんて奴がいるんだよ。もういいよ!」
お題は継続で
468:名無し物書き@推敲中?
09/11/16 23:32:07
籾殻 糞 ミニ四駆
あるところにミニ四駆が大好きな公爵様がいた。彼はそれゆえミニ四駆公爵と呼ばれ
る程だった。屋敷には下働きの下男たちとたいそう綺麗な奥方が住んでいる。
ところがある夜、下男の一人が脱糞のために起きだした。行って帰って、また眠る。
・・・・・・そのハズであったが、ふと昼に天日干ししたハズの籾殻が気にかかってしまった。
新入りの男に任せたのだが、ボーっとした男だ。ひょっとしたら干しっぱなしで取り込み
忘れた、などという事も起こりうる。ネズミにでも食われたら大変だ。様子を見に行こう。
だがしかし廊下を歩み行く最中に、ふと主人の寝室から音が聞こえる。
「ふふっ、旦那様のミニ四駆狂いにも困られたものだ」
一心不乱に自慢の青いミニ四駆の改造に精を出す、無邪気で子供じみた主人の顔が頭
に浮かび、下男の頬が思わず緩む。軽いノックの後に声をかける。
「旦那様、あまり夜更かしなさいますとお体に障りますぞ」
しかし返事がない。やれやれ、よほど熱中しているようだ。仕方なくドアを開けてみる。
するとそこにはミニ四駆型バイブをノリノリで妻にあてがう公爵さまが・・・・・・
469:名無し物書き@推敲中?
09/11/16 23:35:20
シモネタ失礼
次お題「カラス」「ファイル」「症状」
470:名無し物書き@推敲中?
09/11/19 10:56:03
両の手のひらを広げ、其処に今まで幾度、いや何百回
拵えて来たであろう青い、海の青より、空の青よりさらに青い
火の玉を拵える。それはほんのり暖かさを持っていた
「仕舞いだ。オホホ、私が死ぬる。お前は何処でも好きな所に飛んでお行き。」
肩にとまった黒カラスに語りかける。
自分ほどの大魔法使いはいない。最高位の魔力を我は誇る
それでもそれにしてもいつかは来る。こういう時は来る
今にして思う、我にこの魔力を授けてくれた老魔法使い、その時、その其処彼の思い
がわからなかった。このあたたかさ、このぬくもり、その時、これに気づいていたか。
「頼む。守ってくれ、この盛りを。可愛い森の僕たちを。生きとし生ける、大宇宙を。」
このつぶやき、ささやき、其処に先祖よりの連綿と続く我らの使命を、このここでようやっと
最後の最後のここで理解する。あの若者は我よりも強い、若い、負けるであろう己を予感する
「がっしゃーん、ギャピー。ガラガラ、ドッカン。」
何をやっている。この黒カラスならぬわが娘。私はこれから勇者と魔法戦をまじえんとする真っ最中
あっ、あっ、ファ、ファイルが、投稿原稿が。オモチャではない、やぶくな、さわるな、止めて、よして、助けて。神様、仏様
持病の欝症状が、ぎっくり腰が、イ、イタイ。
「厚子さん、昼ごはんはまだですか。そろそろ昼ですが。」
い、いけない。大変、魔法戦どころでなかった。
た、立ち上がれない。ぎっくり腰が、ど、どうしよう。絶体絶命、大ピンチ。た,助けて。だ、誰か・・・・・・