この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十三区at BUN
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十三区 - 暇つぶし2ch282:名無し物書き@推敲中?
09/06/19 00:10:06
納豆、半紙、光子

墨の代わりに、じとりと汗が滲む。
朝の涼しいうちに宿題はしておけと釘を刺されていたので、律儀にそれを守る朝五時。
汗でよれた半紙は、字ではなく落書きで消費した。もうあとがない。
汗を拭い、もう一度半紙に被さる。

「光子、」
ごはんできたよ、と母が呼ぶ。
はあい、と返事をすると、また汗がぼたりと落ちた。

「また納豆あるの」
「好き嫌いはやめなさい」

次のお題「椅子」「ロケット」「あぶ」

283:名無し物書き@推敲中?
09/06/20 11:09:35
「だから、キャンプなんて嫌だったのよ!」
僕はヘラヘラしながら何かを答え、彼女の機嫌をとる。
なんとなく、ヘラヘラぐらいしないと参っちゃうよね。

あぶに指されて赤くなったクルブシを大事そうに擦っている、彼女。
健康食品で具合が悪くなる、美用品が肌に合わない、新しい財布が使いづらい。
なんか、いつもそんな感じ、文句ばっか、あーあ。
ロケットの打ち上げが見たいって言ったのも、たぶん、忘れてる。
せっかく種子島なんだからアウトドアがいいって言ったのも、忘れてる。
その前はゴッホの絵が見たいと言っていたのも、忘れてる。

彼女が座っている組立て椅子、カタカタ言ってるし。
たぶん、うまく組めてない、倒れそうだ、うん、倒れるね絶対。
ワクワクというか、ハラハラというか、なんというのか、期待、かな?

彼女の期待を裏切ることが起こり、「どうにかしてよ!」って目で僕を見る。
看病したり、違う財布買ったり、炎症気味の顔も悪くないよって言ったり。
君の機嫌が良くなり、なんでもないことで笑って、隣にいて、それでいいよね。
僕は感情の起伏が無いほうだから、足して2で割ればちょうどいいよ。

もう椅子はカタカタ言ってない、彼女は座りながら、ただクルブシを見つめてる。
静かだ、心地よいひと時、次のアクシデントが起きるまでの、わずかな、やすらぎ。
NHKで見た「フィンセントの椅子」、ゴッホの油絵、今がその状態、質素だが鮮やか。
大丈夫、十分座れるさ、勿体無いくらい。それに、ゴーギャンよりはマシだろう?

静かさに慣れてくると、何か起こらないかと思ってしまう、自分を戒めながら、そっと隣に座ってみた。
『わるくない?』って目で彼女を見ると『60点ね』って目で返された。
打ち上げまで時間はある、とりあえず、落第点は避けられそうだと雲ひとつ無い空を見つめた。

参照
URLリンク(park10.wakwak.com)
次「ロウソク」「タマネギ」「絵具」でおねがいします

284:名無し物書き@推敲中?
09/06/20 21:26:21
ロウソク、タマネギ、絵具

 男は家の庭で、ロウソクを溶かしていた。沸騰した水の中にロウソクを入れ、
火をかけながら、液体になるまで混ぜた。その後、溶けた蝋を絵具代わりに使って、
数枚絵を描いた。描いた線の凹凸が分かるように、ロウソクを筆にたんまりと付けた
ので、男は描きにくかった。

 次の日、男は描いた絵を持って病院へ行った。娘が入院している部屋は3階にあった。
「熱は下がったか?」「うん、もう大丈夫。元気だよ。」男は描いた絵を取り出し、
娘に手渡した。娘は絵に掌を当てたり、指でなぞったりして、凹凸を探った。
「う~ん、何だろう?」「わかるかな?」「え~と、タマネギみたいな形してる、」
「そのとおり、正解!」娘は笑った。目がハの字になり、唇の両端がつり上がる
娘の笑い方が、男は好きだった。ただ内心は、瞼が開くことを望んでいた。

次は、扇風機、母、刑事で。

285:名無し物書き@推敲中?
09/06/20 23:40:19
7月○日
扇風機が止まらなくなった。スイッチを押しても、コンセントを抜いても、一向に止まる気配はない。
それどころか、徐々に強くなってきている気がする。
母は気味が悪いと言って不燃ごみの日に出した。

7月×日
ゴミ捨て場を通りかかると風を感じた。ちょっとよろめくほどの強風。見ると、やはり扇風機があった。
収集してくれなかったようだ。何かシールが貼られている。
怖かったので、知らん顔して通り過ぎた。

7月△日
翌日、刑事が家に来た。ゴミ置き場の扇風機の風に煽られて子供が吹き飛ばされ、大怪我をしたとのことだ。
何か知らないかと聞かれたが、知らないと言ってやりすごした。
扇風機は警察が持って行ったようだ。ほっとしたが、指紋をとられると厄介かもしれない。

7月□日
あれから一週間が過ぎた。扇風機は相変わらず動いているらしい。
××警察署が謎の強風で吹き飛んだと聞いた。死者も出たそうだ。
全国ニュースにもなってしまった。母も不安げだった。




☆にち
みんなふきとばされた。だれもいなくなった。
ここもそろそろだめだろう。なにもわからないままとばされるのはいやだが、もうどうしようも


「和服」「昨日みた」「肝試し」

286:「和服」「昨日みた」「肝試し」
09/06/22 00:15:23
「ねぇ!この服とかどう?」
その元気で女の子らしい声に振り向くと、彼女が男モノの和服を片手に立っていた。

「だから、別に服とか買う必要ねーって」
強引に服屋に連れてこられたが、やはり乗り気にはなれない。
前を向き、再び前へ歩き出す。



「ねぇ!でもさ、やっぱりせっかくの肝試しなんだしさー」
再び足を止め、振り向く。

「どうせ暗くて何着てるかわかんねーよ」
前を向き、歩き出す。

「ねぇ!それじゃ明日着てく服どんなのかわからなくなっちゃうの?」
足を止め、振り向く。

「どうせ昨日みた浴衣着てくるつもりだろ。もう見てるから気にすんな」
素気ない返事をした後、再び歩き出した。

ねぇ!待ってよー!と遠くから声が聞こえてくる。
そんなどうでもいい彼女の声が聞こえる度に足を止め、振り返ってしまうのは、
向日葵が太陽の方を振り向く原理と一緒なのかもしれない。

「太陽みたいなヤツだな、お前は。」
冗談みたいな本音を、つい呟いてしまった。


お題「あり得ない」「メガネ」「風」

287:名無し物書き@推敲中?
09/06/22 21:39:44
ジジィージジィー・・蝉しぐれがこだまする暑い昼下がりの路面。
汗をぬぐった一区のSさんはフト、電柱を見た。
「今年もまた、夏祭りの時季が来たな・・」
去年のコトを彼は思い出した。子供会の神輿の時、あの時はコドモらの
あつまりがワルく、遊びに来ていた親類のこを、誘って引っ張りだしたのだ

そのこは6年生のおんなのこで背は高く、メガネをかけててSさんには
あまり懐いていなかった。いつもこちらに来てからひとりでつまらなそうに
していたので、お祭りと子供神輿に参加させようと思ったのだ。
おんなのこはシブシブとだがSさんと共に神輿に参加してみたが、
トモダチもいず、図体の大きめの彼女はコドモらから浮いてしまい、
しまいには「こんなの、もぉイイ!帰る」と泣いて抜け出してしまった。
Sさんはなんとかなだめてその時はおさめてやったけど・・

「ワルイことしたな、あのこには。今年はもう、こちらには来ないかもな」
そう思っていた彼のわきを、ありえない程の大きな蝶が通り過ぎて行った。
Sさんはしばらくそれをボンヤリと眺めていた・・・

蝶と共にふと、爽やかな風も流れて行った。

お題 「カブトムシ、むしかご、ぼうや」

288:名無し物書き@推敲中?
09/06/22 22:56:21
「いまどき珍しいな」
そういう君に、そうだね、と答えた。
君の手の中でうごめくそれを摘みあげて目の前に持ってくると、やはりそれはカブトムシだった。

「こいつも子供産むのかなぁ?」
「…それは、新手のジョークかしら」
冗談にしても低レベルなその問に鼻で笑って答えると、私は虫をそっと両手で包みこんだ。

「え…カブトムシ、だよね、これ」
「そうよ?」
「カブトムシってこれ以外にいるの?」
「…だから、それは、新手のジョークかしら?」
きっと私を笑わせようとしているんだと思い表情を読み取ろうとするが、君はいたって真剣な顔だった。
…男の子というのは幼少時に蝉やカマキリ、カブトムシ等々の虫を大量に捕まえるものではないのだろうか。
大量につかまえたそれをむしかごに入れて、母親に見せて叫ばれたりするのが普通ではないのか。
そしてそれを子供特有の無邪気な残酷さをもって首を切り落としたり鉄格子で串刺しにしたりするのではないのだろうか。

それを君に尋ねると
「だって、俺、夏は父ちゃんと家でゲームしてたもん。」
と一蹴された。

その言葉に、いろいろ言い返したくなったが、いろいろありすぎてなにも口から出なかったので
「…カブトムシのメスはツノが無いのよ、ひとつお勉強になったわね」
それだけ言っておいた。
なにそれ気持ち悪いゴキブリじゃんやだ気持ち悪いやだやだとわめく君を無視して前を見た。

「まあ、せめて産まれてくるぼうやにはお父さんを反面教師にして
カブトムシの雄と雌の区別ぐらい付けられる子に育ってほしいわ」
少し膨らんだおなかにそっとカブトムシを乗せたら、ぶぅん、と羽を広げて夏の空に飛んで行った。


お題「ぬいぐるみ、羅刹、水鏡」で

289:名無し物書き@推敲中?
09/06/23 01:10:12
題 : ぬいぐるみ、羅刹、水鏡

 布団の中で溜息を付きました。
 お父さんは毎朝怒ります。お母さんは疲れた顔で首を振り、何度も溜息を付きます。
 私は今日友達とケンカしました。ノート見せてって言われただけなのに。
 この家に越してからずっとそうです。何も上手く行きません。溜息が出ます。
 枕元にある牛さんのぬいぐるみを手に取り、頭を撫で、抱きしめました。目を閉じました。
この子は小さいとき、私が親にねだった子です。ひとつだけ売れ残ってて可哀想だったんです。
それからずっと、私と一緒にいます。
 頭の中は考え事と夢の境、ぼんやりと寝てるのかどうか、そんなときに声が聞こえました。
「裏の井戸をお祓いして閉じろ」
 ぬいぐるみを抱いたまま飛び起きて壁の時計に目を向けました。三時二十八分。
「こりゃ夢だぜ。水鏡とか蜃気楼、ああいうのさ。だから井戸以外は忘れちまえ」
 ぬいぐるみは震えて声を出しています。私は悲鳴を上げて牛さんを放り出してしまいました。
牛さんはからからと笑いながら「ガキはとっとと寝ろ」と呟きます。瞼が重くなってきます。
「牛っつったら羅刹よ。でもな、抱いてくれる人にはちゃんとするぜ? 井戸は忘れンなよ?」
 その言葉に心が軽くなったような気がしました。瞼がすとんと落ち、私は目を閉じました。

次の題 : 「鳥」「リハビリ」「甘納豆」

290:名無し物書き@推敲中?
09/06/23 12:40:15
ピチピチピチ・・籠の中のピースケが鳴いている。
Sさんは、痛い左足を引きずるように廊下を出た・・
なんでも足のリハビリのため、なるべく「杖」にはすがらないように、と
心がけているのだ。それでも思うように行かずつい、イラついて
ピースケにあたってしまい、自己嫌悪におちいってしまうのであった。

「そうだ、まだ冷蔵庫に昨日の甘納豆があったハズ。」
アシを引きずりつつ彼女は、台所へと向かった。
お隣さんからいただいた、好物の甘納豆のことを思い出したのだ・・

291:名無し物書き@推敲中?
09/06/23 12:41:41
・・お題は「名物、お祭り、うちわ」です

292:名無し物書き@推敲中?
09/06/23 21:30:57
「名物、お祭り、うちわ」

 …今日も疲れたな。
電車が来ると同時に腕時計で今の時間を確かめる。
短い針は11の数字を指す手前だ。

 この時間になると電車の中も閑散としている。
クーラーが効いてるにも関わらず大股開きでシートに座り、うちわを煽いでいる太った男が目に付いた。
 なんとなく不快な気分になりその男とは離れたドアの前で手擦りにもたれかかった。
座ることも出来たが、やはりなんとなくあの男と同じ行動をとりたくないと意識してしまう。

 ドアの窓から外を覗いていると、デカデカと「○×祭り」と書かれた巨大な提灯が目に付いた。
「もう、夏のお祭りの季節か…」
 そんな小言を呟くと同時に小さい頃、姉に連れられた地元の夏祭りのことを思い出した。
右も左も人だらけでわけがわからず、姉の後ろに付いていくのが精いっぱいだった。
名物と書かれた「苦虫饅頭」は、今でも思い出すだけで吐き気を催す。
…でも、楽しかったな…。

 電車はトンネルの中に入り、目の前には疲れ切った顔をした男が映し出された。

 ふと、自分の頬に冷たいモノが流れるのを感じた。


次は「天国」「蓋」「囁き」でお願いします。

293:名無し物書き@推敲中?
09/06/24 00:11:05
名物 お祭り うちわ

 かつて幾度となくよじ登っては天辺から小便を垂れた鳥居に座して凭れかかり、太郎は絶え
間なく行き来する人々を眺めていた。
 誰もが何かに急かされるように歩いていた。そのくせ人の流れは一向に遅く、足踏みばかり
が響く。前の人に殆ど密着して押し合いへし合い、思うように行かない人々は出店で気を紛ら
わすことで、自ら更に流れを遅くしていった。
 <相変わらずだな>
 いつの間にかザックに刺さっていたうちわを見る。名物日本三稲荷駒竹神社とある。幼少時より
慣れ親しんだせいか、その響きに何らありがたみを得ることは出来なかった。三稲荷とは正確な意
味を知るところではないが、まさか日本中で三指に入る神社、というものではなかろう。
 再び雑踏へ目を向ける。殺気立ったみたいな人々の顔を見て、太郎は少年時代この神社のお祭りへ
たった独りで出掛けた時の事を思い出していた。
 いつも勝手知れたる境内は、そのときばかりは嫌に暑苦しく、また無闇に広く感じたものだった。
友人たちとかくれんぼをするでもなく、父の肩に跨り往来を掻き分けるでもなく、ひたすら人に揉
まれ足蹴にされたのだった。 鳥居に凭れ掛かった太郎の視点は人よりずっと低かった。見上げた人々の目は、何かに追わ
れているように、狂気を孕んでいた。太郎の胸に、懐かしい感情が湧きあがってきていた。
 太郎は立ち上がった。ザックを背負う。太郎そのまま、鳥居を振り返ることなく歩き出した。

次『紙飛行機』『コーン』『すずかけ』

294:名無し物書き@推敲中?
09/06/24 00:15:32
すまんリログ忘れてた。

295:「天国」「蓋」「囁き」文体実験
09/06/24 00:24:18
フリーマーケット会場 異彩を放つ出品者

小さな箱 曰く 天国の詰まった箱 洒落た蓋 耳を当てる

………不思議な音 声 これは 歌?

否 それは 囁き 微笑する出品者 あなたへの 囁き

家 部屋 目を閉じ 耳を澄ます

言葉 未知の言葉 落ち着く 意味? 分からない

開けたい けれど 恐ろしい

何度も手をかけ けれど やめる


今も 木箱は 机の上 相変わらず 囁いている

誰にも分からぬ 天国の言葉で

296:295
09/06/24 00:26:21
>>294 そういうこともあるさ。
お題は>>293の[紙飛行機][コーン][すずかけ]でよろ。


297:名無し物書き@推敲中?
09/06/24 21:26:43
すずかけのイメイジが、わかんよ・・

298: ◆DinfA5bnxE
09/06/25 01:27:13
[紙飛行機][コーン][すずかけ]

数時間後には高校を卒業しているんだなぁ。
そう思ったらじっとしていられなくなり、卒業式まっ只中、わたしは体育館を出た。
出口のドアで先生にトイレが我慢できないと断って、そのまま下駄箱へ。
外履きに履き替えて、校舎裏の森に入る。

森といっても木々の建ち並ぶ山すそで、よく授業をサボって一人で過ごした。
放課後に行っても駄目で、他の生徒が授業を受けているのに自分はここにいる、
そんな状況でないと、心地良さを感じられなかった。
卒業式が終われば、もう授業はない。
あんなに面倒だった授業が終わってほしくないとさえ感じる。

制服を着てここに来られるのは最後になるのか。
変な皺(しわ)がつかないようにスカートに手を添えて、地面に腰をおろす。
太い幹に背中を凭(もた)れ、目を閉じたまま高校での三年間を振り返っていると、足音がした。
目をひらくと正面に、クラスメイトの創介が立っていた。
そんなに親しいわけでもなかったので、こんにちは、と、他人行儀に挨拶してみると、
こ、ここ、コーンニチワと、まるでつたない日本語で話す外国人のように、緊張した声で彼は言って、
「す、すずかけ、けけっ、結婚してほしい」と続けた。
「え?」
「それくらい、す、涼香が好きだ!」
体育館を出るわたしを見かけて追ってきたのだろう。彼は彼なりに、卒業する前でなければならなかったようだ。
さて、どう答えたものか。わたしの後ろにある木がスズカケノキであることをいいことに、
木が好きなの? と誤魔化すか。返答に迷って空を見上げると、旅客機が目に入った。
告白されたせいで心が浮ついていたせいか現実感がなく、まるで紙飛行機に見えた。
ああ、そうだ、一時の感情や雰囲気に流されたくない、すこし離れたところから見ていたい。
彼は、卒業前の告白という状況に酔っているだけで、わたしへの思いは卒業すれば冷めるだろう。
そうわかっていて、わたしは、ごめんなさいとすぐには返事をしない。うん、青春も、悪くない。
上空の飛行機雲が消えるまで、もう少しだけ、浸りたい。

長くなってスマソ。次は「政策」「金利」「紫蘇」でよろしこ。

299:名無し物書き@推敲中?
09/06/25 02:27:09
「政策」「金利」「紫蘇」

ある男がジッと紫蘇を見つめながら呟いた。
「これ・・本当に必要なんかね?」

対面に座った男が「はぁ?」という顔をして見る。

「いや、紫蘇ってのはご飯時に本当に必要な物なのかね?ということだよ」

「つまり・・?」

「だってそうだろ?まっとうなオカズさえあれば日本人は白ご飯で充分なんだ
 むしろオカズ本来の味を阻害し、こんな余計な味を出す紫蘇なんてものを振りかける必要性がどこにも見当たらないということだよ」

「それは確かにそうですが・・。しかし、その紫蘇をオカズ代わりに白ご飯を食べるという人は?」

「じゃ、君に聞くが、今まで何回この紫蘇だけをオカズに白ご飯を食べた?え?」

「いや、それは確かに1度あるかどうか・・」

「だろ?世の中そんな紫蘇だけをオカズにご飯を喰う奴なんてまず存在しないし、
 いたとしても、それは本人の心から望むべく現状じゃないということだよ。え?君には分るか?」

「ええ、それは。大体は仰られることは分ります。しかし・・それと今回の政策に何か関係でも?」

300:名無し物書き@推敲中?
09/06/25 02:29:06
「関係?大有りだよ。つまり、私の言っている、日本国総金融機関金利0政策とは
 この紫蘇と同じようなことだと言うことだよ。」

「は?」

「日本国民が金融機関へ預ける5千兆円とも言われる総資産が熱々の白ご飯だとして、国民は熱々の白ご飯だけあれば満足なんだよ
 そこから発生する僅かな金利なんてものは、この紫蘇と同じようなもの。ならば無くせば良い。と言っているのだよ
 銘うって紫蘇法案だよ!君!」

「そんな無茶な・・」

その後、総選挙に臨んでこの政策をマニフェストに掲げた、この党は惨敗に終わった。
しかし意外にも紫蘇業者からの大きな反発行動は見られず、また国民の紫蘇へ対する見方も別段変わった風にも見られない。
もしかしたら、その男が言っていた通り、紫蘇とはその程度の物だったのかも知れない。

そして月日が流れて、その次の総選挙前

「これ・・本当に必要なんかね? 君? この酢豚の中に入ってる、パイナップル」


次のキーワードは【FBI】【暖簾わけ】【ジャムおじさん】

301:名無し物書き@推敲中?
09/06/25 15:24:47
どーゆー組み合わせだ

302:名無し物書き@推敲中?
09/06/25 18:28:49

【FBI】【暖簾わけ】【ジャムおじさん】

「小堺クン!小堺クンはおらぬか?」
「なんだいツトム」
「ほう、アメリカのビジネスマンみたいだな…ってキチンと呼びなさい!」
「失礼しました、関根編成局長」
「キミ、今朝出したアニメ枠の秋編成、何だねあれは」
「TV東京からの暖簾分けで開設した、我らが有川TV、アニメは生命線と考えてます」
「それはいいが、この『FBI心理分析官』というのは、どういうアニメだね?」
「局長もナイトヘッドや時かけのアニメ化とヒットをご存知でしょう、今、時代は過去名作のインスパイアじゃね!」
「ナイトヘッドはともかく、FBI心理分析官は確かにヒットした、それで、権利者との折衝は?」
「無許可です」
「こら!」
「大丈夫です、ウチは地上デジタル移行までの期間限定TV局ですから、やっちゃったモン勝ちです」
「じゃあ、この『アンパンマン・スピンアウトムービー・ジャムおじさん・オブ・カリビアン』ってのは」
「あ、それは当日版権でいけるかな…と」
「馬鹿者!放送免許取り上げられるわ!」
「あ、それ大丈夫です、ウチの局、ニコニコ限定配信ですから」
「うへぇ」

次のお題は「いいちこ」「ランエボ」「ipod」で

303: ◆DinfA5bnxE
09/06/29 03:31:13
「時空を越えるなんて無理じゃね?」
生徒の漏らしたその一言を背中で聞いた蘭取理沙先生はブチ切れて、
右手に持ったチョークで黒板に火花を散らした。その火花に気づいた三人の生徒、
プライバシーを考慮して実名ではなくアダ名で記すが、いいちこ(女・19)、ランエボ(男・25)、ipod(男・19)
は安政5年の江戸に飛んだ。

両国西広小路の見世物小屋では、エレキテルを両手から発する謎の男、手素裸が、
刺青の入った腕をした客の持つ国芳の猫が描かれた団扇へ、念力を込めていた。
「燃やせるものなら、燃やしてみねぇ」と、客はにやにやしながら煽る。実は
サクラなのだが、腕の刺青を見てまでイチャモンをつけてくる客は稀。
団扇の柄と、柄を持つ指は、火打ちの石の仕掛けそのまま。

サァサァ、火がつくか否か、そんなところへ、いいちこ、ランエボ、ipodが、落雷のような光とともに現れた。
仕掛けを使う間もなく発火した団扇、ざわめく客席、狼狽する手素裸とサクラの客。
未来から来た三人も驚き、ワケもわからぬまま見世を出て、気づけば両国橋の中央に来ていた。
「じ、時空、越えちゃった?」といいちこ。
「FBIのモルダーでもそんなことわからねぇよ」とランエボ。
「やっべ、今週のコサキンの録音できねぇじゃん。早く未来へ戻れとガイアが俺に囁いている」とipod。
「まだ慌てるような状況じゃない。ジャ、ジャムおじさんなら、なんとかしてくれる」とランエボ。
「ランエボ、落ち着きなよ。これ、たぶんドッキリだから、お江戸でおじゃるとか、その手の」といいちこ。
そこへ手素裸が追いかけてきて、「おめぇたち、すげぇな。暖簾わけしてやるから、浅草で見世、出さねぇかい?」
と言いながら、右手をいいちこの肩に、左手をランエボの肩に、ポンと乗せた。発光、そして、時は動き出すっ。

「時空は越えられるのよー! 気合で!」と蘭取先生が振り向きざま放ったチョークは手素裸の額に直撃……。授業は何事もなく再開。
手素裸は蘭取先生の協力へ経て再び時空を越えたが、江戸に戻ること叶わず、チキンと言われるとキレる少年と友達になった。
いいちこはその翌年、亜墨利加人や英吉利人との通訳として活躍することになるのだが、それはまた、別の、話。

次は「五線譜」「クレープ」「初恋」でよろしこ。

304: ◆DinfA5bnxE
09/06/29 04:22:05
間違えました。

右手をいいちこの肩に→右手をipodの肩に、
蘭取先生の協力へ経て→協力を得て

305:めいどう ◆plpEJpnx3w
09/06/29 17:55:59
お題「五線譜」「クレープ」「初恋」

小学生の時分、唄の発表会が嫌で嫌で仕方がなかった。
私は根っからの音痴で、ひとたび歌い始めると、必ず誰かを不快にさせた。
そんなわけで私は、音楽の授業が大嫌いになった。ことごとくボイコットした。
そっちが嫌いなら、こっちも嫌いになってやる理論だ。
「てなカンジに幼少期を過ごしてきたので、五線譜が読めません」
「…………(一同唖然)」
以上が軽音部に入部した時の、私の宣言だった。
……矛盾している。それは分かっている。
分かっているけれど、私の恋心は、私の理論を捻じ曲げた。
初恋だった。しかも一目惚れ。
その日から、私の心は、私の歌声のように、どこかおかしな転調を繰り返し始めた。
フラれる時が来る、その日まで。
「分かってたんです。でも、言わずに居られなかったんです」
「…………」
何もかも分かっているから、やる気が失せる。
そんな風に人間ができていたら、さぞ便利だろうに、と思う。
でも、とも思う。そうじゃないから、私は、告白したのだ。
あの告白は、初恋の彼を不快にさせただろうか?
夕暮れの河川敷を、クレープ片手にトボトボ歩きながら、ちょっとだけ歌ってみる。
五線譜が読めるようになっても、私の歌声は、相変わらず調子っぱずれで
誰かを不快にさせてしまうに違いない。
それが、何だか本当に可笑しくなって、私は大声で歌いながら帰り道を歩いた。
遠くで罵声が一つ聞こえる。それもまた可笑しくて、ひとしきり笑ってから、ようやく涙が少しこぼれた。



次は「共犯者」「ロケット」「熱帯魚」でお願いします


306:ケロ
09/06/30 01:10:00
五線譜・クレープ・初恋
彼が姿を消してから3週間…
「彼はどこに行ってしまったの」とつぶやいた。
私は一人、JR町田駅を出て109方面へと歩いていた。
日曜日の午後、クレープ屋の周りには私より5・6歳は若いカップルが仲良くデートを楽しんでいる。
クレープの甘い香りが私の脳の中の彼との思い出を引っ張り出し涙を流させた…
「あの優しかった彼はどこへ行ってしまったの」とさらにつぶやく。
涙がやっと乾いた頃、携帯の着信メロディが聞こえてきた。
無意識にメロディの五線譜が頭の中に浮かび出て大粒の涙がまたこぼれてくる。
そう、このメロディは私が彼の誕生日に贈った自作の曲。
無意識にメロディの五線譜が頭の中に浮かび出て大粒の涙がまたこぼれてくる。

電話の相手は警察からで、懸命の捜索にもかかわらず、彼の消息は全くつかめていないとの報告であった。彼は私にとって初恋だった。初めての男性だった。
あんなに愛し合ったのに、あんなにやさしく大好きだった彼なのに…
「あの優しかった彼はどうして…あんなに…」と唇をかみしめた。
彼は私にとって初恋だった。初めての男性だった。
あんなに愛し合ったのに、あんなにやさしく大好きだった彼なのに…

307:ケロ
09/06/30 01:13:01
>>305さんに先越されてしまいました…せっかく作ったので載せさせてください。

次は>>305さんの「共犯者」「ロケット」「熱帯魚」です。

308:名無し物書き@推敲中?
09/06/30 01:20:20
共犯者 ロケット 熱帯魚

「ぼくのお父さんは爆弾で魚をとったんだ」
 太郎は自慢気に語ると手に持ったロケット花火を鼻男に掲げた。
「でも、火は水のなかじゃ燃えないし、水の外で爆発してもしょうがないよ」
 鼻男がそれにもっともらしい疑問をぶつける。一瞬鼻白んだ太郎だが、すぐに立て直すと
真っ赤になってライターを取り出した。
「父さんはこうやって取ったんだ。ほんとだって。それ、やるぞ」
「でも、えぇ、火遊びはだめだってお母さんが。やめよォよォ」
 ぐずり始めた鼻男を尻目に、太郎は水槽に乗り出しライターに火を点ける。しかし、なか
なかロケット花火に点火しようとしなかった。太郎の目は水槽の中で窮屈そうに泳ぐ熱帯魚
に注がれていた。
「でも、ねえ、やめようよォ」
 鼻男はそんな太郎を見て、尚行為の中止を催促した。
「ねえ、やめよ」
 鼻男が、躊躇う太郎の裾を引く。太郎はまだ熱帯魚を見ていた。暫くこの問答が続くと、
いつしか太郎の目は腫れぼったく充血していた。
「お父さんは、爆弾で魚をとったんだ」
「でも、水だから燃えないよう。火遊びもだめなんだよお」
「やってみなきゃわかんないだろ。あとおまえも共犯者だぞ。ちゃんと責任とるんだぞ」
 それを聞いて、鼻男までもが目に涙を溜め始めた。鼻男はもう止めるようには言わなかっ
たが、依然心細そうに、乗り出した太郎の裾を握っている。
 ライターの火はまだ燃えていた。熱でライターの頭が変形してゆく。突っ張るように、熱
した金属に触れたプラスチックの部分が伸びてゆく。
「あちっ」
 不意に太郎が喚いた。それに鼻男がびくりと反応する。喚いた本人も驚いた様子で、痛み
のあった手を見た。ライターはすでにその手を離れていた。
 二人は水槽に沈んでゆくライターを見た。水の中のライターの火は呆気なく消えていた。
ライターの頭が微かに黒く焦げていた。
 水槽の中で、熱帯魚がぽちゃりと音を立てた。

次 「クレヨン」「砂」「蛍光灯」

309:名無し物書き@推敲中?
09/07/04 22:17:44
クレヨン、砂、蛍光灯

 部屋は四方だけでなく、天井と床もコンクリートの壁で覆われていた。1辺3m
程度の立方体の部屋だ。天井には蛍光灯が1本だけあった。男は部屋の中央で椅子に
座り、テーブルの上で絵を描いていた。棒を握るように黒のクレヨンを持ち、力を
込めて線を描いていた。
 女の髪にとりかかった時、男の靴が崩れて砂になり始めた。靴の形をした砂の
像が崩れていくようである。男は描き続けた。
 目を丁寧に描いている時、既に男の下半身は砂になっていた。上半身が浮いている
ような状態だ。手は動き続けた。男は変わらず描き続けた。
 もう右腕しか残っていなかった。床と椅子には砂が積もっていた。残すは鼻だけ
だった。男は変わらず描き続けた。
 手首まで崩れてきた時、男は描き終えた。握っていたクレヨンを手放した。その瞬間
右手は一度に崩れ落ちた。
 紙には微笑む女性が描かれていた。蛍光灯の光が消えた。



310:名無し物書き@推敲中?
09/07/04 22:21:05
次は「ウミガメ」「ふくろう」「山」で。

311:名無し物書き@推敲中?
09/07/05 01:00:10
フクロウが山でウミガメを発見した。

312:名無し物書き@推敲中?
09/07/05 01:47:50
>>311
滅多に無い光景だなw

313:名無し物書き@推敲中?
09/07/05 07:00:10
フクロウが山で海亀を発見した。
「滅多にない光景だなw」
フクロウは興味を引かれ海亀に話かけた。
「おい海亀さんや、ここは山でっせ。あんたがここにおったら海亀やのうて山亀さんになるがな」
すると海亀は首を長く伸ばし、フクロウの大きな目をまっすぐに見つめた。
「そなたが森で有名なフクロウ殿か。お初にお目にかかる。
わしはもう海亀として充分に生きたがのう、やり残したことがあるんじゃ」
「それはなんぞ?」
「百年間ずっと山の遥か上からわしらを照らしてくれた御天道様と御月様にまだ礼を言うておらん」
「なるほど。しかし礼を言うだけならどこからでもよかろう?」
「皆まで言わずともわかっておる、少しでもそばに行きたいのじゃ。
そしてわしも山の上から子や孫達の住む海を永遠に見守ってやりたいんじゃ」
そう言って海亀は山の頂にたどり着き、感謝と祈りを捧げながら死んだ。
フクロウは死んだ海亀の背に乗り朝日の昇る海を見た。
「見てみぃ海亀さん…綺麗やで」


次「死体」「芸術的」「アイドル」

314:名無し物書き@推敲中?
09/07/11 21:14:27
フクロウが山でアイドルの芸術的な死体を発見した。

315:名無し物書き@推敲中?
09/07/12 00:55:57
またかよw

316: ◆DinfA5bnxE
09/07/12 02:13:19
─君のためなら僕はモンタギューの名を捨てよう。僕はロミオ。それ以外の名前はいらない。

ひらひらフリルのドレスを着て、体育館の舞台にわたしは横たわっている。
ジュリエット、ああ、なんていうことだ。言われて、いや文子ですから、内心つっこむ。
死体、といっても仮死なのだが、ロミオこと創介が後追い自殺するまで、わたしは横たわっている。

そもそも文化祭に出ることになったのは、わたしの居眠りが原因だ。
授業中、静かに眠るわたしを見て、演劇部の顧問である先生がジュリエット役に指名した。
でも、そもそも居眠りすることになった原因は、創介だ。

最後の通し稽古の後、カラオケに行くぞ。モンタギュー、本名は忘れたが劇団の団長、
隣のクラスの学級委員に誘われて、団員全員で、ついていった。エレベーターで七階にあがり、
扉がひらくとどう見ても居酒屋で、サワーで乾杯、焼き鳥、刺身をやっつけて、八階のカラオケフロアへ。

高校生なのに。思っても、帰るわけにもいかない。
文子も何か歌えよ。創介が隣に座った。下の名前で呼び捨てですか、そうですか。
曲目リストを手に取る。いまどきアイドルの曲なんて歌えない。アニソンも死ねる。得意すぎて……。

結局わたしは歌わずにひたすら呑んで、呑んで、呑んだ。
創介も負けじと呑む、呑む、呑む。好きな人とかいるの。聞かれて、
え、時間? そうねだいたいね。そんなふうに誤魔化した。

授業が始まっても、わたしはひどい二日酔い、仮死状態。
思うのだけど、ジュリエットはロミオがやってきたとき、意識があったのでは。
そして、ロミオが死ぬのをただ黙って見ていた。

なぜ? そのほうが芸術的だから? 否。
ジュリエットは、名前だけでは信じられなかったのだ。ロミオの死をもって、愛を確かめた。
これでロミオはジュリエットのもの。永遠に。


「パラシュート」「リミット」「サイズ」でよろしこ。

317:パラシュート リミット サイズ
09/07/12 14:37:27
パラシュートなしで人はどれだけの高さから飛び降りられるのか。
ジャッキー・チェンに憧れていた俺は1日1センチずつ高さを上げ、毎日飛び降りる訓練を続け、
今ではその辺のビル程度の高さからなら余裕で飛べる。
ジャッキーも既にどうでもよくなり、飛び降りることが俺の人生となっていた。
しかし、三十代半ばを過ぎるとリミットが近づいてきていることを感じざるを得なくなってきた。
このまま衰えていくぐらいなら死んだ方がマシ─そう、飛び降り自殺をしてやろうじゃないか。
俺はヘリを用意し、雲の上から全裸で飛び降りた。
今まで感じたことのない風と興奮で股間のサイズは人生最大となり、俺は空中に精液を撒き散らした。
俺は空をレイプすることに成功したのだ。
さぁ、次は大地だ─!

次は「妹」「猫」「マシンガン」で

318:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/07/14 10:33:39
妹 猫 マシンガン

「もう!…」「あんたみたいな能無し…」「さっさとすませて…」
遠くの方で誰かがどなっているのが聞こえたような気がした。
私はテレビの中の画面のお笑いタレントが自分の鬼嫁から日夜受けている仕打ちを面白おかしく話す自虐行為を見つめながらクスッと一つ笑った。
相変わらず遠くでは、悪魔の姿をした嫁のマシンガントークも聞こえていた。
目の前の悪魔には決して視線を合わせないように細心の注意を払い立ち上がろうとすると可愛い猫の ぐるり と目線が合った。
何か言いたげなその目をみつめているとニャーと鳴き嫁の方へひょいと位置を変えた。
「そうかお前は悪魔の味方か…」そうつぶやき悪魔からの指令のお風呂掃除に向かう。
浴槽をゴシゴシ磨いていると、いつもの人格が姿を現した。
マサミという女の子で九州から上京して働きながら女優を目指している26歳の人格。
それは何となく九州の実家にいる優しく、兄想いの妹の姿に似ていた。

最近、奇妙な症例が報告されていた。
本来は、幼児期に親から極度の虐待を受け続けた際に発生する多重人格症。
それが今、30代から40代の既婚男性の中に現れているというのだ…

319:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/07/14 10:35:52
次は「海岸」「のぞき窓」「手相」で

320:名無し物書き@推敲中?
09/07/25 05:41:44
海岸にそびえ立つ館で占い師の男がのぞき窓から手相を見て生活していた。
少々不気味だがものすごくよく当たるらしい。
彼に生命線が短いと言われた客は例外なく近々謎の死を遂げるという。
そして最近では中年夫婦の間でちょっとしたブームになっている。

次「殺し屋」「天使」「雷」

321:名無し物書き@推敲中?
09/07/25 13:03:29
無理やり流したなw

322:「殺し屋」「天使」「雷」
09/07/29 10:34:03
少年は殺し屋に狙われていた。
親切そうな顔をした中年の警察官に助けを求めた少年がドアの隙間から見たものは、
殺し屋に連絡する警察官の姿。警察官は少年を殺し屋に引き渡そうとしていた。
「もう誰も信じられない。」少年は思った。
メイド、肉屋、花屋、その後ろに殺し屋。少年は路地に追い詰められた。
町中が少年の敵だった。
「もうだめだ。」少年が諦めかけた時、上空から真っ白な姿の女性が現れ、指先から
雷を放った。バタバタと倒れる殺し屋とその仲間たち。
宙に浮かんだその真っ白な女性が少年を救ったのだ。その姿はまさに天使そのもの。
真っ白な女性は少年を見下ろし優しく微笑んだ。
「バケモノ!」少年が叫んだ。無理もない。その真っ白な女性はあまりに部細工だった。
少年は雷にうたれた。

「コタツ」「ジレンマ」「砂漠」

323:名無し物書き@推敲中?
09/08/08 21:05:41
コタツ、ジレンマ、砂漠

 そういえば、昔エジプトに旅行に行ったときも、このぐらい暑かったなあ。
コタツの中に潜り込んでるみたいで、身体中が熱気に包まれているって、本当
に感じた。熱の服を着ているみたいだったな。ホント砂漠は地獄だね。ああ、
何であの時迷ったんだろう。砂漠を歩こうか、どうかなんて。砂漠なんて危険
過ぎる、でも行かないのはチャンスを捨てるみたいなもんだ、どうしようか、
なんて迷ったのが今はバカらしい。なんで地獄に行くかどうかで迷うんだ。な
んてアホなジレンマだ。そうだ、よくよく考えてみると、コタツと砂漠を比べ
ることもバカらしい。こうやってコタツの中に潜り込んでいることが、砂漠の
上を歩いていることと比べると、どんなに快適なことか。ちょっとぬるいだけ
じゃないか、コタツの中は。それをあんな地獄とくらべるとは……あれ、何か
暑くなってきたぞ。汗がにじみ出てきた。どうなってるんだ。ここはコタツの
中……のはず、あら、そうだったっけ、砂漠の上にいるんじゃなかったっけ。
いや、コタツの中だ、そのはずだ。だって砂漠のことを思い出していたんだも
の……んう、怪しいぞ。俺は砂漠を思ってたのか、それとも、コタツを、あん、
コタツは夢だっけ、砂漠は記憶だっけ、逆だっけ、どうだっけ、えと、俺

次は「バレー」「せんべい」「パトカー」で

324:名無し物書き@推敲中?
09/08/08 23:41:35
 茅ヶ崎ではこの夏、SV(せんべいバレー)が流行っている。
 SVのルールは非常に厳しく、原則を無視するものは地元警察による逮捕も辞さないというのが
SVを推進する米菓かたさ度表示推進委員会の総意であり、茅ヶ崎に名を連ねるサーファー達の総意でもあった。

 そして、故郷を離れ鳥取から出てきた色白のキモカワ系レシーバー・貧太郎は、
来月の末にサザンビーチにて行われるアマチュア大会で優勝と栄光とを手にする野望を持って、
この日、きたちがさきのホームに降り立った・・・容姿が規律に抵触するともしらず・・・貧太郎の背後には、
今まさにダイハツテリオスの皮を被った覆面パトカーが迫っていた・・・

「肉じゃが」 「生霊」 「夢」で

325:名無し物書き@推敲中?
09/08/09 06:38:05
お題「肉じゃが」「生霊」「夢」


失言癖のある俺が彼女と付き合い始めたきっかけは飲み会の席でのことだ。
肉じゃがを摘まみながら隣に座った友達と談笑していた時、向かいの席で急に彼女が泣き出した
のだが、どうやら俺のその時の慰め方がいたく気に入ったらしい。特に第一声の、
「どした?生霊みたいな顔して」
というのは心底ツボに入ったらしく、今でも有り得ないとネタにされる。
結果的にそれが縁で彼女と付き合う事になったのでそれはそれで良いのだが、確かに大いに反省
すべき内容だ。
今日、彼女にプロポーズするにあたり、その点を踏まえて何度もシミュレーションをしたのだが
かなり不安でならない。あまりに不安になったので出かける前におさらいをする。
「君とずっと一緒の夢をみていたいんだ」
うん、このセリフはいいぞ。あとはどうやってそこまで漕ぎ着けるかだ。などとテンションを
上げた時、突如背後から物凄い笑い声が聞こえたので思わず飛びのいた。
振り向くと彼女がいる。思いっきり腹を抱えて笑い、大粒の涙を流す彼女が。
どうやら夢中になりすぎて玄関が開く音すら聞こえていなかったらしい。
実に気不味い。だが、気不味い空気を振り払い改めて聞くことにした。この際引くに引けない。
「いい?」
散々練習したセリフは既に何処かへと吹っ飛んでしまっている。
だが彼女はこくこくと頷いてくれた。笑うことなく大粒の涙をぽろぽろと流し、ただこくこくと。


15行って難しいな。スマンが少しオーバーしちまった。

では次の方「部屋」「ポロシャツ」「単語帳}でお願いします。






326:名無し物書き@推敲中?
09/08/09 16:55:29
ネット通販で買ったポロシャツが小さすぎた。
サイズ、MはMでも、どうやらレディース向けの商品だったらしい。
試しに着てみるとぴちぴちで、何か特殊なゴムスーツを身につけているようだった。
でも仕方がない。他の服は全て、洗濯して乾かしている最中だった。
それに筋トレが僕のマイブームでもあった。
他人に胸板の厚さや二の腕の太さを見せることが出来るので、この服はまんざら嫌でもない。
鏡の前に立つと、袖から脇毛がはみ出ていたので、それを剃ってから部屋を出た。

繁華街行きのバスに乗ったとき、セーラー服の女子高生が僕にちょっと目を遣ってきた。
しかしすぐ、何事もなかったかのように、手の中で開いている単語帳へ、視線を戻した。
どうだ。別に僕の服装は変じゃないのだ。
嬉しくなって、吊革につかまる腕に力を入れるなどし、周囲に筋肉アピールをした。

到着すると、うどん屋できつねうどんを食べた。唐辛子を山のように振りかける。特大。男は辛党で、大食いであるべきだ。
次に目的地であった服屋に行き、味を占めた僕は、今来ているのと同じくらいのサイズの服を買った。
プレゼントの包装を致しましょうか、と店員が聞いてきたが、自分で着ます、と僕は答えた。
店員の顔に理解の色が浮かび、なるほどという目をした。僕は誇らしくなった。

帰ると、ポケットの中に部屋の鍵がないことに気づいた。
ちょっと立ち往生していると、隣人の女性が、挨拶がてらに「ちょっと小さい服ですね」と言った。
隣人はすぐ部屋に引っ込んだが、彼女の我慢したような笑い声は聞こえてきた。
僕は汗が出てきた。歩いたせいか、昼間に食べたうどんの唐辛子が利いてきたのか……。
どうしよう。ぴちぴちの服でボンレスハムみたいになりながら、汗まみれの僕を、通りすがりの人はどう思うだろう。
どうしようどうしよう。買い物袋を抱えて、ずっとそこに突っ立っていた。

327:部屋・ポロシャツ・単語帳
09/08/14 23:09:12
 1/2
突然のお手紙申し訳ありません。今から語る内容は御社の発行している週間雑誌に載せていただければと思い、筆をとりました。
もし興味をひかれたのなら下に明記している連絡先まで一報いただければと思います。
さて、今テレビなどで取り上げられてている悲劇のピアニストのことはご存知でしょうか? 年齢が十にも満たない盲目の少年のことです。
まだ未完成ながらも才能の片鱗を感じさせる音を奏でていると思います。私も昔はピアニストでしたので耳に自信はあります。
彼のスター性は演奏だけではなく、その生い立ちにあると思います。父親を亡くし、事故で視力を奪われ、まるでオペラの悲劇の主人公のように幼い身体に様々なものを背負っています。
しかし私はそこに疑問を感じます。彼は虐待を受けているのではないかと。
なぜなら私こそが彼の父親ですから。当然、虐待しているのは彼の母親です。
私が彼女と出会ったのは、私がピアニストとして名が売れ出した頃です。雨の日に彼女が運転する車に水を掛けられたのが初めての出会いだと私は思っています。
申し訳なさそうに謝る彼女の容姿は美しく、私もつい下心から連絡先を教えてしまいました。翌日に私の汚れたポロシャツとまったく同じ柄・サイズのものを持ってお詫びに来てくれたときは、なんと礼儀正しい子だと感動しました。
そこから親交が深まり、交際を通じて結婚に至りました。
婚約して一年経ち、順風満帆な結婚生活でついに子供ができたことを知りました。そんな幸せな日々の中、些細な衝突がありました。妻は子の将来はピアニストと決めている節がありました。
音楽の道を諦めた私は断固反対しました。せめて選択肢の一つであってほしかったのです。その翌日に妻はいなくなりました。書置きには一言「あなたはもう用済みです」

328:部屋・ポロシャツ・単語帳
09/08/14 23:13:15
 2/2
私は妻と子を探すために日々を費やしました。そこで気づいてしまいました。妻の望んでいたものに。
妻の部屋の押入れにガムテープで巻かれた段ボール箱がありました。中には昔の日記や出会う前の私の写真、私の趣味を詳細に書いた単語帳などが見つかったのです。
日記帳には音大生のときに事故で指の腱を切ってしまい、ピアニストの道を諦めざるをえなくなった妻の悲しみがつづってありました。
ここまで書くともうお分かりかと思いますが、妻は子供をピアニストにするためには手段を選ぶような人間ではないということです。
私は子供のことが心配で仕方がありません。どうか、この事実を白日の下に晒していただきたいと願っています。

お題流しのついでに没作を。これ以上削れませんでした。
次、「ハンガー」「ガム」「カーテン」

329:名無し物書き@推敲中?
09/08/22 22:14:03
「今、何月だっけ?」
わざわざカーテンを開けて泣きやまない雨を眺めながら巴がぼやく。何度も繰り返す問いに呆れながら僕はしっとりと湿ったTシャツを手に取る。
「そろそろ夏休みだね。巴も手伝ってよ。それに雨なんだしカーテン閉じてね」
一人暮らしとはいえ、3日分の洗濯物を全てこの狭い部屋に干すのは骨が折れる。
「何。せっかく遊びに来たのに家事やれって? それにハンガー渡してるでしょ」
明日提出の宿題を写しに来た巴が、長い黒髪を畳に広げて言う。電灯の真下にいて尚、ツヤのある髪は黒く輝くだけだった。
家に唯一あるバスタオルをパッと広げると、ふわりと洗剤の香りが部屋全体に広がった。心地よさそうに巴が目を細める。
「最後……と。本当に何もしないよね、巴って」
小さな口を微かに動かしていた巴が片目だけを開いて、勢いよく立ち上がった。
「昔から私はハンガー担当で、あんたが干すって決まってるの」
髪をなびかせて台所に行く巴からは、洗剤の匂いとはまた違った甘い香りが漂ってきた。
昔、母さんに言いつけられた仕事を巴と二人でしていた時、良いところを見せたかった僕は背が届きもしないのに一生懸命ハンガー目指して手を伸ばしていたのだった。
ものぐさな巴に「僕が干すから巴はハンガー渡してね」と言ったはいいが結局どうしようもなくて二人で肩車をして洗濯棒に一枚一枚干していったんだっけ。
あの時は二人して喜んで、それから……。
「はい」
巴が一枚のガムを差し出していた。柔らかい笑顔に誘われるまま、紫色のガムを口にいれて何度か噛む。
もう今では甘すぎて食べなくなっていたのに、こうして何かが終わる区切りにはこのグレープガムと二人で食べるようにしている。
「ほら、晴れた」
開かれたカーテンの先に、久しぶりの青空が灰色の雲の隙間から広がっている。
こうして二人で味がなくなるまで顎を動かしていると、いつの間にか日溜まりの中にいたから。

15行難しい……
「公園」「風船」「手」

330:公園 風船 手
09/08/23 19:07:01

手を怪我したので仕事をやめた。万力で潰されたようにひしゃげてしまったのだ。それはさておき
夏なのに手袋をして外を歩くのは少しむさくるしい。だから日課である散歩は夜もあけやらぬ朝方
にすることにした。
誰もすれ違う者はいなかった。当り前なのだ。まだ丑三つ時をすぎて間もないといっていいくらい
だ。でも少し歩いただけで汗が頬をつたう。俺はベンチに座った。大きな蛾が灯りに舞っていた。

チリチリいってるそれに気をとらわれていると、薄闇のカーブのむこうから黒服の少女が歩いてき
た。闇と楕円に照らされた光のなかを交互に姿を現し消しながら。俺のわきに座った。
「おっちゃんけったいな手袋つけてんな。暑いやろ」
少女の目はとても大きくて涙をたたえたように艶があった。
「手を見られたくないからね。仕方ないんだ」
少女は笑った。「こんな暗いところじゃ誰も見られひんし、誰もいんわな」
「まあ、そうだね」と俺はいった。
すると少女はゴソゴソとポケットに手を突っ込んで薄い縦長のガムを取り出すと包み紙を丁寧に外
して口にさしこんだ。そして俺にもと指で押すようにして顔の前にひょいとちらつかせる。
俺はかたわだからもじもじした。すると少女はうれしそうにわかったというような笑みをして、俺の
片方のつぶれた手を仔細に検分しながら、またさっきと同じように丁寧に包み紙をガムから外して
俺の口にそれをさし込んできた。
「おっちゃん、手ぇ痛いか?」
「今は痛くない」

今にして気づいたことだが、少女は家電量販店の広告の入った緑色の風船を腰からぶら下げて
いた。
「おっちゃん手ぇ重そうや」
少女は紐で腰に複雑に結ばれていた風船を外して俺の手首に結びつけた。
「これで軽なった?」
俺はいった。
「軽なるわけないやろ」
それで少女は暗闇を直視したままガムをくちゃくちゃした。なるほど。だから俺もそうすることにした。

「ベルリン」「石畳」「声」

331:「ベルリン」「石畳」「声」
09/08/24 03:07:14
祈りの声、蹄の音、歌う様なざわめき。私を置き去りに過ぎていく白い朝。
石畳の街角を、ゆらゆらと彷徨う。「ベルリンの壁が崩壊したのは、いつの事だろう?」
時間旅行が、心の傷を何故かしら埋めていく、不思議な道。
「あなたにとって、私、ただの通りすがり?」悲しみを持て余す。


「ネット犯罪」「心霊現象」「ヒップホップ」


332:ネット犯罪 心霊現象 ヒップホップ
09/08/26 20:10:07
探偵Kはこのようにして犯罪にまきこまれたのである。
ある日、彼にもたらされた依頼はインターネット上で連鎖する心霊現象に関する調査だった。限り
なく公的な機関からの依頼であったのだが、内容はいささか霧につつみこまれたような、本質をつ
かみがたいものであった。実に心霊現象といいながら、具体的な現象はまったく示されずに、とに
かく調査をしてくれというものだった。雲を掴むような依頼なのだが、でも彼は金銭以上に乗り気な
のはいうまでもない。なぜならこれを成し遂げれば公的な依頼である以上、また次の仕事につな
がる可能性は高いからだ。
彼はネット上で偶然にも、ある匿名の女からこの謎を解き明かす鍵を私はもっているとの連絡を受け
この部屋にやって来たのだ。
彼が部屋の扉を開いたとき、目につくのはベッドに横たわる裸の女、そしてパソコンのディスプレイが
薄闇にうかびあがる光景だった。
彼は確信もなく女の臍のあたりに手を置いた。まだいくぶん体温が残ってはいたもののまったく微動
だにせず、もはや生命の感覚はそこに残されているとは思われなかった。パソコンからはひどく小さ
な音でヒップホップの軽やかなリズムが聴こえていた。彼は不思議に思う。この女が故意にそれを流
していたとは思えなかったのだ。どちらかといえば女の印象は古典的だった。
パソコンの履歴として残るものは彼とコンタクトをとったメッセージ(・・・あれは・・・ではありません
・・・悪意を持った人物による故意的なネット犯罪なの・・・)と、意外なことに残りはセクシャルなもの
ばかりであることがわかった。セクシャルな動画、閲覧履歴・・・。
彼はベッドに横たわる女をのぞきこむ。彼女からはまったく卑猥で、サドマゾチックな印象はやはり
受けない。
彼は女に触れた。やはり微かにあたたかかった。今度は手におさまるほどの胸を掴んで肉付きの
いい脇腹を撫でた。まったくの無反応。そうだ、この女は無なのだ。
彼は服を脱いだ。女とかさなりあう。そして何度も射精をした。
しかし、いつしか女は感じだす。あの女が感じ出しただと?ヒップホップは音量をましていた。彼らをま
るで励ました。いったい誰がこんなにも音をでかくしたんだ。部屋には俺たち以外誰もいないのに。
おまけにいったいどうして、これは、こんなにも俺を感じたりするんだ。

333:名無し物書き@推敲中?
09/08/26 20:12:33
「女子高生」「雨」「アナウンス」

334:名無し物書き@推敲中?
09/08/27 11:21:47

十年ぶりの帰郷、実家まであと少しの踏切で突然の雨。土砂降りの雨。空はこんなに晴れているのに。

ふと気付く。踏み切りの向こう側に女子高生がたっている。全体が陽炎みたいではっきりしない輪郭。表情も長い前髪でよく分からない。だが微かに口元は微笑んでいるようにみえる。僕はもうそれから目を逸らす事ができなった。

少女の胸の辺りに黒い点が滲む。何かと思いじっと見つめると、それは徐々に広がっていきサッカーボールくらいの穴になった。

穴は貫通していて向こうの景色が見えた。それは僕の閉じ込めていた青い記憶だった。



必死に自転車を漕ぐ青年。杉林に響くアナウンス。

「今日S町の崖で女の子が転落しているのが見つかりました。……」


荒い息。白い肌。……人工呼吸。初めての口付け。人工呼吸。初めての……。



「カンカンカン」

警報の音にはっとして目を上げる。電車が音もなく流れて行く。最後が過ぎていった後彼女はもう向こう側にはいなかった。

蝉の声がボリュームを上げていき五月蝿いと感じるくらいでようやく我にかえる。ゆっくりと遮断機が上がる。僕はしばらくの間ぼーっとつっ立っていた。雨はいつの間にか止んでいた。遠くにあるはずの入道雲が今にも覆い被ろうとしていた。

僕は振り返り歩き出した。背中に次第に大きくなっていく入道雲を感じながら。



335:名無し物書き@推敲中?
09/08/27 11:24:24
次は 「シグナル」「エウロパ」「ブランデー」

でお願いします。

336:シグナル エウロパ ブランデー
09/08/28 10:58:50
惑星エウロパが〝張りぼて〟であったという事実は全人類に衝撃を与えた。エウロパはそもそも
半円球であり、木星の自転・公転にあわせ常に地球にその前面部分を向けていただけというのだ
から驚きである。歴史上一番の驚愕といっても間違いではない。そのような巨大な物体が造られ、
限りなく精緻に操作されており、また明らかに何かしらの目的をそこから感じられるとしたら、これ
は地球外生命体、しかも高度な知性を持った生命体からのシグナルやらメッセージが含まれてい
るに違いがないわけだからである。こうした発見はフィジー諸島でバカンス中であった素人の天体
観測家によって偶然発見された(なにせ惑星の表面に隕石によって穴が開き向う側が見えていた)
のだが、当初疑われたのは米露どちらかの宇宙計画の一端ではないかというものであった。もちろ
ん現代科学においてこのような事実は圧倒的優位性をもって否定されたのはいうまでもない。
となればやはり宇宙人による・・・。
「でも、これが宇宙人によるったって、俺たちに何の影響があるんだい?」
この文言は地球のどこかしこで聞かれたのもだ。何十年何百年、さらにずっと前からかも知れない
間こうした操作が行われているにもかかわらず、地球にはいっさい手を出されていないのだとしたら、
今更騒ごうがどうってことはないのだ。
「宇宙人も暇なんだな。こんなことして何んなるんだろね?」
世界の一歩先を行く日本国、秋葉では早くも天体観測喫茶が登場し話題をよんでいた。店内に設
置された大画面に映し出されたぼんやりとしたエウロパを眺めながらとあるサラリーマンがいった
言葉である。実際に彼はまったく宇宙の神秘になど興味はなく、興味本位のOLとひと晩をともに
したいだけであった。さらにいうなればOLでさえもう宇宙などどうでもよくなっていた。
「ねえ、なに飲んでるの?」
「これブランデー」
「は?ここ喫茶店だよ。でもおいしそう、ちょっと飲ませて」
OLは男に肩をよせながらグラスを手にとった。水滴のついたそれは熱帯夜のこの日、喉越しよく
OLの胃へとなだれ込んでいったが、何故かふにおちない表情を見せた。
(これがブランデー?)
OLが不思議がるのも無理はない。なにせ口にしたブランデーなるものは砂糖が微量に入った麦
茶の味のような気がしたのだから。

337:名無し物書き@推敲中?
09/08/28 10:59:57
「睡魔」「アナウンサー」「パスタ」

338:「睡魔」「アナウンサー」「パスタ」
09/09/13 01:49:46
「皆さん今晩は。眠れないひと時、いかがお過ごしでしょうか」……
小さな店を始めた頃、寝つきの悪い私は、ラジオから流れるこの
アナウンサーの声を聞くことだけが日課でした。
夜が明けるまで一晩中布団の上で声を出して笑い、そして泣き、
毎晩一睡もすることなく雨の日も風の日も、早朝から店へ出たのです。

辛かったこと?
昼に眠気が襲ってくるように店内で体を動かし、
コンディションを整えるのが、一番辛かったことです。

シェフの気まぐれパスタ。

睡魔に体を支配させることで可能になる、
尋常ではありえない隠し味と大胆なさじ加減が、
OLに大人気になった、味の秘密です。

次は「太陽」「ごみ箱」「憎いあいつ」で

339:名無し物書き@推敲中?
09/09/13 11:48:17
俺はふらつく足を片方ごみ箱に突っ込みながら、憎いあいつのことを思い出して太陽を見上げた。



次回:「夢精」「たらこ」「美術館」


340:名無し物書き@推敲中?
09/09/13 14:30:35
夢精したらこんな美術館になった

次は「太陽」「ごみ箱」「憎いあいつ」で

341:名無し物書き@推敲中?
09/09/13 16:35:28
俺はふらつく足を片方太陽に突っ込みながら、憎いあいつのことを思い出してごみ箱を見上げた。



次回:「夢精」「たらこ」「美術館」

342:「夢精」「美術館」「たらこ」
09/09/15 03:01:56
「無責任だよ、そんなの。」
あの日は何処に居たんだっけ…。そうか、確か美術館の前で入り口に飾られた魚の絵を見ていて、それから、口論になった。
柔らかそうなピンク色の魚がまるでタラコみたい、って。笑って言う顔が可愛くて、意地悪がてら「好きだ」って言った。
青臭い話だけど、その時は本当に、淡く描かれたピンクの絵も、それをタラコみたいって笑う君も、自然に見えて。
これじゃ恋みたいだから、「夢精って字だけ見ると綺麗だよね、まぁ女の子で言う気付かないでくる生理みたいなもんだけど。」とか、自分でもよく解らないしょうもないことを口にして、
気付いたら彼女は泣いてた。
怒ったように。僕を睨んで。ピンクの魚の絵まで冷えて萎んでいくみたいで。
「夢の中にまで呼び出しておいて、タラコの夢まで見せておいて、君が何をしたいのか分からない。美術館の沢山の絵も見ようとしない。夢精が字として綺麗だとか、確かにそうかもしれないけど、嫌なの。嫌だ、そんなの。」
…空が青くて。それが悲惨な暴力みたいで。もう一秒も彼女を見てられなかった。僕にも彼女が誰なのか、何なのか、分からなくなって居たんだ。
何がなんだか分からない言葉を選び出す、唇はすぐそこにある。
だけどもうそれが、ピンクの絵、タラコ、夢精の話、青い空、暴力、萎んだ日と魚…全部ごちゃ混ぜになっていて。苛々して、疲れて、逃げ出したかった。
「…無責任だよ」
その言葉だけ撃ち込まれた鉛みたいに冷えて。その場所がもう胸か頭か、僕の外側か内側かも分からない。
今じゃきっと僕ら、気付いてる。
僕らはただ手を繋いで美術館に入ればよかった。
「つまんなかったね」なんて言いながらアイスを食べたり、躓く彼女を馬鹿にして、君が怒って、その後に笑って。
普通に続きをして、つかず離れずや別れるをすればよかった。それをしたかった、多分。
硬化するコンクリート。青いだけの空。行き急ぐ人も美術館も実感を無くして、色のないタラコクリームだけここにある。
「愛してるよ」「無責任」「分かってない」「好きだよ」
あの日に取り残されたまま、無責任な美術館と街に追い立てられる。
―見つけて。探して。
虚ろな街で「好きだよ」って。もうあの日の前に、帰れたらいいのに。
時間に逆らえず、秋だけ落ちてくる。あの絵に取り残されたまま、僕らに。

343:名無し物書き@推敲中?
09/09/15 03:09:25
次は、「電卓」「待ち人」「痺れクラゲ」でお願いします。

344:「電卓」「待ち人」「痺れクラゲ」
09/09/15 03:44:40
「それ返せよ」
歩いていた私を呼び止める二十歳前後の若者。怒っている?なぜ?
「それだよおっさん」
私の鞄を乱暴に引ったくり中を開いている。
夕方の帰宅時間人通りは多い。
若者に絡まれている私を誰も助けてはくれない。
若者は電卓を取り出し、だぶだぶのズボンのポケットに無理くり入れる。
私は呆気に取られている。というより怖い。怖さがむず痒い。
鞄から私の万年筆、雑誌(SPA)、書きかけの手帳、何枚かの書類、痺れクラゲを取りだし両手一杯に持つ。
痺れクラゲ?なぜ?痺れクラゲが私の鞄に?
「いいよ、おっさん帰ってよし」
笑を浮かべる若者は抱えきれないほどのお菓子を一杯貰った時の幼子のようであり、
私は長いこと逢っていない息子を不図思い出した。
私は待っていた。長いこと待っていた。ようやく待ち人が現れたことに気付いた。
おかえり。健太・・・
若者はもういなかった。
私は中身の無くなった鞄を手に取りまた歩き出した。

次は「祈り」「不眠症」「鍵穴」で。


345:「祈り」「不眠症」「鍵穴」
09/09/15 06:43:14
「祈り?なぁに、それ。」
二人で体育座りをして薄明かりの中聞いてみた俺は、面食らわざるを得なかった。
彼女は誰よりも祈っているように見えたものだから。それを心配もしたし、見てもいられなかったし。寧ろ結構な度合いで俺だって悩んで疲れていたんだ。
「君は知ってると思ってたけど…」
恐る恐る、聞く。俺はこの子に、正直身構えてしまう。半分以上くらい怖い。あとは多分、興味。
察したように、小首を傾げ話し出す声。
「多分、不眠症だからだと思う」
…混乱するしかない。が、耳を澄ましてしまう。次にきっと答がくるから。
「眠れないとね、多分祈りに塗れすぎて分からなくなるの。過剰に摂取して嘘にされるのが、やなんだ。元々少ない方がいいんだよ。だからね、あんまり分かりたくない。」
よく解らないけど、なんとなく納得。探られるのが嫌なわけ。難しいな。
「ねぇ、アリスの本、読んで。」
どうしてかは図り知らないが、この子は真鍮の鍵穴に兎が小さな鍵を差し込む場面を気に入っている。
昔、兎が背を伸ばすのが可愛いし、アリスと時計男爵が「おかえり」って言うのが安心する、と言っていたような。
まぁ、どっちでもいいや。
「アリス、イン、ワンダーランド。昔々…」
子供のお守りは正直、面倒。だから多分余り考え過ぎない方がいい。
神様だとか、この子にしたら多分どうでもいいわけで、俺もホントは余り興味が無い。
「…おかえり。」
その場面で目を合わせて笑う。
不眠症の夢は続く、橙の明かりに体育座りで。
アリス、イン、ワンダーランド。
今この時間の方が、よっぽど祈りだと気付いてみたり。それはまた本筋とは、別のお話し。


「嫌い嫌い」「あまのじゃく」「ほうれん草のスープ」

346:ほうれん草のスープ 天の邪鬼 嫌い嫌い
09/09/18 13:53:07

ほうれん草のスープのような池から這い上がった天の邪鬼のグドンは辺りを見回した。

しかし景色はいつもと変わらず、空は厚い雲に覆われ、大地は荊と毒草で地面が見えない。うんざりするいつもの光景だ。

彼が別の世界の存在を知ったのは数週間前。芋虫の婆さんに死ぬ前に何か言うことはあるかと聞いたところ、信じられないようなことを語り出した。

「太陽が降り注ぎ花達が笑い咲き誇り、鳥達が楽しそうに歌う。そんな世界がわしらのすぐそばに存在する。」

それはどこにあるのか尋ねたが、婆さんは其処までは知らないと言った。

池に潜っていたのも悪友のグズが池に一時間潜って上がれば別の世界に行けると言ったからだ。だがどうやら担がれたみたいだ。奴は後で殺さなければ。

近くの岩に腰を下ろし溜め息をつく。

「もう嫌だ…… 嫌だ…… 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…… うんざりだ……」

母さんに会いたい。ほとんど記憶はないが、とても優しかった気がする。父はどうしようもない奴だった。最後まで救えないくずだった。思い出したくもない。母さん。母さん……

グドンは泣いた。大声で泣いた。もう声が出なくなるというほど泣いた。しかし彼を慰めてくれる者はいなかった。大地はすでに悲しみで飽和状態だったので彼の鳴き声は空の雲に吸い込まれた。そして雷を起こし、激しい雨を降らせた。

グドンは雨のなかよろよろと立ち上がり、ぽーんと池に身を投げた。そしてゆっくりと、ゆっくりと沈んでいった。瞼の裏に浮かぶ朧気な母の姿に微笑みながら。

次「北極」「観測」「疑念」

347:名無し物書き@推敲中?
09/09/19 01:14:37
北丹後地震による死傷者は1万人を超えていた
極限状態で人は決して抗えない力を知り畏れ祈った
観念し呆然となる群衆のなか決して歩みを止めない者達がいた
測定結果は一つの答えを導き出す
疑点疑団は数あれど
念仏はもう聞こえない

次「タテ」「読み」「ごめんなさい」

348:「タテ」「読み」「ごめんなさい」
09/09/19 01:42:46
栄誉ある騎士である夫が、浮気をした。それだけなら、良い。私は夫を愛しているから。
でも、夫は私との離縁を裁判所に訴え、認められた。賄賂と、夫の浮気相手の公爵令嬢の力だった。
私は兄さんに縋った。私を、妹として以上に愛している兄さんは、頼み通り、夫に決闘を申し込んでくれた。
夫は御前試合さえ任されるほどの手練れで、青白い兄さんがかなうような相手ではない。
でも私は兄さんに、夫の癖、隙を教えた。踏み込みの後に、剣先がタテに動いたときは追撃はない、
その瞬間にこちらが踏み込めば勝てる、そう言った。兄はそれだけを頭と体にすり込んだ。

決闘。兄が防戦を続ける。夫は余裕を見せている。その背後であの女が声援を送っている。
私より若くて華やかな女。なぜ私の夫の後ろに、私の夫なのに、私は離婚なんて認めていない……
その瞬間、夫の剣先がタテに揺れる。その機を読み、兄さんが飛び出す。草が舞い剣が伸びる。
兄さんの剣先は夫の胸に突き刺さり、一瞬のしなりの残像を残して深々と、骨の隙間から命に届いた―
命を失い、夫が倒れる。同時に、夫の剣に胸を貫かれていた兄も、絶命して倒れた。

ごめんなさい、兄さん。夫の剣先がタテに揺れるのは、そう、得意の追撃に移る合図なの。
でも、兄さんの剣を夫に届かせるには、相打ちしかなかったのだもの。許して頂戴。
私は隠し持っていたナイフで自分の喉を引き裂いた。
何もわからず呆然としている女を視線で嘲りながら、私の夫の後を追った。

次は「金曜」「深夜」「一時」でお願いします。

349:名無し物書き@推敲中?
09/09/19 23:05:23
『金曜日深夜のフライトゥナイトエモーション!始まりましたねぇ~今夜は…』
…っせーな。苛立って左手でラジオを止める。嘘臭え喋り過ぎは苛々すんだよ。くそっ
目前に打ち付けられる雨。その一粒一粒までもが神経を逆撫でる。俺は一体何に苛立っている?思考の一つ一つが苛立ちの原因になるようで。
いっそアクセルを踏むのなんて止めちまえばいい。思う程踏み込むから笑えてくる。今の時速?知らねえ。200でも800でも出ればいい。
掻っ払ったポンコツの割りにはよく走る。ハハッ、上がってきた!
脳梗塞とゴミ屑みたいな毎日の上塗りにキレて、俺が選んだ犯罪は「窃盗」。盗んだのは高級でもねえ車一台だ。盗めりゃ何でもよかったんだ。理由?走りたかったからです。
犯罪者の手本みたいな思考にゾクゾクして口笛を吹く。ヒュー。俺ユートーセーだからね。
急カーブ!右!
勢いに任せてハンドルを切るとタイヤが擦れ軋み歪む感触。やべー窓閉めっぱなのにゴムの焼ける臭いまで感じるわ。アドレナリン止まんねー。
因みに銃も盗んだ。ポリが寝てたから使えたらラッキー位のついで。当前の事だけどポリは俺が寝かした。まぁそーだよね。
『そこの車止まりなさい!』
サイレンと共に聞こえる割れた声。そーそーそうこなくっちゃねぇ、面白くねえからもっともっ…
目を奪われる。今、深夜…1:00?ガキが突っ立って詰まらなそうに、俺を眺めてた。…俺を?
…っそ、左!
なんとか曲がり切る。けど2秒前とは違う。何もかも違う。汗。疑惑。少年。冷めた目。震える。盗み。助手席。女。
じゅ、銃、銃の使い方、ネットで読んだ、頭、平気、
倒した助手席から笑い声が聞こえる。
クスクス…クス…だから言ったのに…ふふ、可笑しい…クスクス
サイレン、赤、割れた音

「…っははは!」
どーせ死ぬんだ、やってやるよ!
銃に手を伸ばしたその時

――ドン!
衝撃と共に回転する視界。しょ…げき…後ろ?ポリ…違う、近く…
振り返ったそこには…

ピッ。俺はテレビを消した。横では人が死んでる。そう、死んでるね。
やっぱテレビなんてリアルねえなー。
死体の頬にゆっくり指を滑らせる。にこ、と笑いかけてみる。今回の世にもはイマイチだったな。
次は何を見ようか。ね?しーちゃん。

350:名無し物書き@推敲中?
09/09/19 23:08:04
「愛好家」「つがい」「無理心中」

351:名無し物書き@推敲中?
09/09/19 23:15:05
すいません、>>349の三語は「金曜」「深夜」「一時」でした。
次の三語>>350でお願いします。

352:「愛好家」「つがい」「無理心中」
09/09/20 07:29:18

「 ……世の中間違っている 」
連日連夜繰り返される、薬剤愛好家夫婦のテレビ報道を見ながら男は呟く。
虚ろな目をした男の妻は無言だった。
「 もう死んだほうがいいだろ 」
男は妻に問い掛ける。妻の表情は変わらない。
窓の外を赤とんぼのつがいが空を切る。飲み込まれそうな深い空。もう晩秋も近い。
どこでどう間違ったのか妻のポーチからも最近テレビで報道される白い粉の入った
小さなビニール袋が大量に出てきていた。
「 もう死んだほうがいいだろ 」
男は自分に問い掛ける。もう答えは出ていた。最後の一押しが欲しかっただけだ。
―薬剤に溺れた妻を苦に無理心中……
テーブルを踏み外し喉を締め上げられながらも男は
明日の新聞記事と世間体を気にしていた。


次「新米」「ぶどう」「運動会」

353:名無し物書き@推敲中?
09/09/20 22:55:49
運動会に母ちゃんが持って来てくれたのは
新米で作った煎餅と自家製の干しぶどうだった。
あの~弁当は?


次「かゆみ止め」「コーラ」「タイル」

354:名無し物書き@推敲中?
09/09/21 00:11:14

駄目だ。かゆみ止まらねえ。かゆみ止め効かねえ。

腹減った。もう食べ物無いし、コーラもねーし、家族もいないし、食べ物無いし、かゆい、かゆい、カユい、カユい、カユイ

外いって食べ物探そうかなぁーってさっきからうっせぇよ!!どっかいけっつーんだよ糞野郎がぁ


駄目だ。なんか意識が、なんか、なんかタイルの割れ目からなんかいっぱい虫が出て来た。なんだこれ。なんだ、なんかきあなんきあなんかゆいカユイか

あーはらへった……


次「ホモサピエンス」「アルファ」「オメガ」

355:「アルファ」「ホモサピエンス」「オメガ」
09/09/22 09:27:59
「……しにたい」
 唐突にオメガは呟いた。一度口にしてしまうと心の暗黒素因を全て吐き出してしまわなければ気が済まないのか
「嫌なんだよもう疲れた、有り得ないよ本当に。真面目な話俺にこんな名前をつけた奴は今すぐ死刑になるべきだ。嫌だ嫌だ眠りたいなんで俺は人間になんか……」
 自身がホモサピエンスとして生まれたことまで、悲嘆のメロディに変えてしまった。
 吐き出すオメガの口元は猫のよう。文字通り“ω”といった感じでにゃんとも愛らしい。
「んなもんさぁ、オレさまみたくアルファー波出しときゃ無問題ですよ。」
 オメガを励ますように言い放つアルファは、“オレ”なんて言っているが列記とした女の子である。賢そうな口元、聡明かつ野生的に輝(ひか)る瞳。
 ふわっとした頭のてっぺんのオダンゴは、記号で表すとこんな形「Ω」。
 ここまでかっちりと結われてはいないが、丸くて大きなオダンゴ、雰囲気で察して欲しい。敏感な読者の勘付いた通りアルファの可愛さは一級品である。

「アルファは疲れることとかないの?もう無理、ホント限界です。俺辛い……しんどいよう」
 上目遣いで嘆いてみるオメガをアルファは呆れたように見下して八重歯を見せ言った。
「だーかーら、お前に足んないのはアルファー波だグズ。これでも食っとけ。」
 ばらばらばら……
 アルファはポケットいっぱいの野イチゴを、可愛い手でオメガに浴びせかけた。まん丸になってゆくオメガの目。
「……ッチ。全部食えよ!」
 イライラしたようにピンク色の口で言い放つと、アルファは羽よりも軽そうな足でライオンのハクランのところへ走っていった。
 オメガは最初の一つを口にした時点、半年分以上ものアルファー波を摂取し愕然としたという。
 言われた通り全部なんて食べたらとても生きていられない。そう猫口で言うものだから、今その野イチゴを煮詰めてジャムを作っている。
 私だって味見でさえ、甘すぎるアルファー波にすぐにでも死んでしまいそうだ。
 魔女の私が何故こんな愛らしい材料でジャムを?
 この家に住み着く赤ネズミのソルトでさえ桃色になって逃げ出す程、さわやかで甘美な匂いが森に充ちてゆく。
比例して募る溜息が、止むのは何時の日になるだろうか。

「ペンネ」「熊猫」「かく語りき」でお願いします。

356: 
09/09/26 00:56:51
だれか感想スレも盛り上げましょうよ

357:名無し物書き@推敲中?
09/09/26 19:18:10
「大作家・大熊猫ペンネかく語りき」

……すまん、完全なる上げだ

358:名無し物書き@推敲中?
09/09/28 23:53:28
風呂上がりにビールを飲みながら15インチのテレビをつけて、「ああコイツ殺してえ」と思った。
有名な哲学者の名前を付けたらしい女二人組が醜悪な腹を晒している。
共演者達の愛想嗤いに、自分のプライドを満足させている。
熊猫だ。上野でのうのうと笹を喰らう、閉じ込められた世界の、女王気取りの。
絶滅させなくては。ぼくの目を、ぼくの世界を、これ以上汚染させないように。
ぼくは早速アルバイト情報誌でテレビ局の清掃の仕事を見つけて、電話をかけた。
始発で週に6日通ううち、見取り図を空で書けるほどに建物を覚えた。
どこにいても違和感のない衣装と入館証を手に入れた。ひと月のロケの予定は壁に貼られている。
清掃員として潜り込んでから三月もした頃、ある女優と熊猫との、おぞましいトーク番組の予定を見つけた。
ペンネのおいしいレストランについて、唾を飛ばして為されるトークを考える。
撲殺だ。動物には撲殺がふさわしい。
ぼくは初めて始発でない電車でテレビ局へ向かった。
清掃には不自然な時間だったが、ロッカーに忘れものをしたんです、と告げるまでもなかった。
獣だらけのくせに、ここは動物園より管理が甘い。
ぼくは『ツァルストラはかく語りき』を取り出して、Cスタに向かった。

つぎ、「4度」「兎口」「嫉妬」で。

359:「タテ」「読み」「ごめんなさい」
09/10/06 00:40:46
私にとって、家は不満の固まりだった。
薄汚いアパートの一室。愚痴ばかり多いくせに面と向かってはろくにしゃべらぬ両親。
息が詰まる。体の内側が気持ち悪い。不安になる。たまらない。
私は家での圧迫を解放するように、学校では花の女子高生らしく明るく元気に立ち回った。
うまくいっていたと思う。生徒も教師も私を認め、頼りにしているのを感じることが出来た。
だから私は調子に乗って、「妖怪人間」と呼ばれているあの子に話しかけたのだ。
上唇が縦に裂け、鼻にまで達している。兎口、と言われたりする病気らしい。
友達の少ない彼女の友達になってあげようと、話しかけ、遊びに誘った。断られた。
本や映画の話題を振ってみた。曖昧な返事しか返ってこなかった。次の挨拶は無視された。
こうなったら、リスクを承知で深いところまで踏み込んでみるしかない。
4度目に話しかけるとき、私は訊いた。「その口、手術とかしないの?」
「お金がないし、それに……」彼女の唇が不気味に伸びる。笑ったのだと、後から気づく。
「……お母さんが、手術させないと思う」
「……ど」正体のわからぬ威圧感に口ごもりつつ、なんとか訪ねる。「どうして?」
「だって……」彼女が笑う。いや。あれは笑っているのではないのかもしれない。
「だって、お父さんのペニスをくわえた私の口を裂いたのはお母さんなんだもん」

 その瞬間、ああ、神様だか誰だか、すみません。私は彼女に、その家庭環境に、
自分でも思いがけず、理解できぬことながら、確かに激しく嫉妬をしたのです。


次は「科学的」「論理的」「神秘的」でお願いします。

360:359
09/10/06 00:42:33
>>359の名前、以前のものが残ってて変になってますが、上は「4度」「兎口」「嫉妬」の作品です。すみません。

361:1/2
09/10/06 23:49:33
高校三年の学校生活もだんだんと飽きてきて、それと一緒に気温まで上がってくる。毎日室内は蒸し暑くて勉強どころじゃないのにセンセイは受験のためだ、勉強しろ! と日課のように私に言う。
最上級学年になったら後輩からは尊敬されて快適な学校生活が送れるだろうと信じていたのに、実際は三年間のうちで最も強力な五月病にかかっていた。
毎朝待ち合わせをしてる友達と、一緒に通わなくなったら。勉強をはじめてセンセイを見返そうかな。
考えないこともないけれど実行には移せない。私はこれでも成績は良いほうで論理的に物事を考えられているとほめられた事もある。プライドが決意をさせないのかもしれなかった。
五月病が治る気配もなくて、この夏休みはどう過ごそう、先月振ったカレシとまた付き合おうかなっと悩んでいた所に救いの手を差し伸べてくれたのはお父さんだった。
夕食後すぐに部屋に引きこもってケータイをいじるようになってしまった私にお父さんは塾に入るための申込用紙を持ってきてくれた。
最初の一枚はゴミ箱へすぐに捨てた。翌朝には部屋の前に二枚目のそれが置いてあった。
学校で授業をやる気なく受けながら、つい退屈でその紙を見ると大きな文字で夏期講習! と書いてある。その下に小さな文字で料金について。
私はこんなものを持ってきた親父を困らせたやろうとだけ思ってその日の夕食後にそれを伝えた。
最近、科学的やら心理学的やらの本を読み漁っている親父は私の話を聞くと笑っていた。そして、次の日曜日に一緒にこの塾へ行こうとも。
当日、昼の二時に私とお父さんは塾へ到着しました。お父さんが内部の人と一言二言交わすと、私は自習室の一角に案内されいきなり入塾テストなるものを受けさせられました。
全く、問題が解けなかった。
現代文で論理に従って答えたはずが間違っていて残念だった。そんなレベルではまずありませんでした。問題用紙を開くと、何について問われているのかすら分かりませんでした。
悔しかった、です。

362:2/2
09/10/06 23:50:14
帰りのお父さんが運転してくれている車の中で私は久しぶりに涙を流した。
塾でテストを受けることだって無料ではなかっただろうに、私が最上級クラスへ入りたいと言ったときにどうしてただ優しい目で笑っていたのだろうか。
私がそんな神秘的なレベルの人間ではないことはお父さんは知っていたはず。私が明日の学校で先生に頭を下げることも知っているのだろうな。
ちょうどその時、お父さんに「来週の同じ時間に入塾テストを受けに来るぞ」と言われて、私は涙を流すまいと天井を見上げていた視線を、前に戻した。

次は「口車」「柿の種」「坂道」でお願いします。

363:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/10/07 15:19:25
口車 柿の種 坂道

私は数分後に訪れる死に備えて、日本中で生きている数百人の兄弟(姉、妹含む)達の事を考えていた。
私たちのファミリー群(sakamoto1098と呼ばれる)は世間的に不良品グループと言われ続けていた。私の今回の自殺でまた一つ、このことの証明に役に立ってしまうと思うとちょっぴり悔しい。

人工子宮が実用化されて四半世紀。
単純に良質な日本人を大量生産させる目的のために創られた私たち優生人種(通称:プラモデル)。
すぐれた遺伝子だけで産まれ構成され完全管理の環境での育児、教育を受け日本の国力維持目的で存在している私たちプラモデル人間。
でも、もう限界が来ていた。私の持つ精神的な寿命が来たらしい。

筑波の医療施設で地道に働いていた私が通常人(通称:原型)の友人の口車にのせられ上京し暮らして1年。
常に人を疑わない良質特質をもつ私たちプラモデルを食い物にしている原型達にいいように利用され坂道を転げ落ちるように生活がすさみこうなってしまった。
sakamoto1098と呼ばれる遺伝子要素を使用している私の属するファミリーは産まれ出た262体のうち既に半数が死を選んでいる。

人工意識である私たちの共通の母親と父親に最後の別れを済ませ、端末の接続を切り、電源を落とす。
私のこれまでの人生のすべてが記録される柿の種程の大きさの政府から支給されたメモリーチップを手に取り自殺ほう助器具へセットし、準備を済ませる。私のこの人生は解析され、これから誕生する優生人種の為に役に立つらしい。

私の人生がこんな小さなメモリー書き込まれるのだと思うとなんだか不思議で笑いが込み上げてきたが、右手の人差し指でスイッチを無造作に押し、安らかな 無 を待ち目を閉じた。

364:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/10/07 15:21:09
お題は継続でお願いします。

365:お題「柿の種」「口車」「坂道」
09/10/08 08:57:01

柿の種は口車に乗せられて、ピーナッツと義兄弟の契りを結んだ。
しかし、それが彼の転落人生の始まりだったのだ。
ピーナッツは名前の通り、ピーナッツ野郎で、
彼の周辺には、常に女関係の刃傷沙汰が途絶えなかった。
柿の種が、いくら助言しても、ピーナッツは一時反省するばかりで
根本的な改善に至らない。
そこで、柿の種は決心した。
ピーナッツを殺して、義兄弟の契りを解約することを。
というのは建前の理由で、柿の種は三十三歳まで童貞続きな自分と対照的に、
華やかな人生を送るピーナッツが許せなかったのだ。
柿の種は深夜ピーナッツの自宅を訪れると、用意してあった包丁を懐から抜き、寝室へと向かった。
寝息を立てるピーナッツ。その隣には、腕枕で女が眠っている。
怒りは心頭した!
柿の種、刺す! ピーナッツ絶叫! 女絶叫! 
壮絶、柿の種VSピーナッツ。今日のチケットは売り切れました。
決着はラウンド1、柿の種がピーナッツを一発KOで制しました。
柿の種は良いことを思いついた。
そうだ、ピーナッツの周辺には女関係のイザコザが絶えない。
今回のこれは、何もオレが罪を被る必要はあるまい。この女に! 
憎きピーナッツ野郎に軽々と股を開く、脳軽女に押しつけてやればいいのだ!
気絶しろ! 柿の種が脅すと恐怖のあまり、女は失禁しながら気絶した。
柿の種は凶器の包丁から、自らの指紋を拭い、女の手に取らせた。
それから、夜の闇へ飛び出した。
久々に見た女の生全裸に猛々しく勃起するピーナッツが、駆ける脚の邪魔になる。
しかし、擦れる亀頭から得られる快楽は圧倒的で、その快楽に夢中になっていたせいで、長い長い坂道の頂上でつまづき、転がりながら落ちていく柿の種。
目を覚ました時には、清潔な病室のベッドの上で全ての記憶を失っていた。

(続かない)


お次は「毎日」「鉄板」「鯛焼き」でお願いします

366:毎日 鉄板 鯛焼き
09/10/08 14:12:11
 僕がベランダで洗濯物を干しているときであった。隣りから「Kさんちのお父さん!」と声がした。仕
切りのむこうからS氏の娘さんがのりだしていた。「Kさんも洗濯ですか?」大学生の彼女は手に洗
濯物をぶら下げながらこう訊ねてきた。Sさんちとは仲良くさせて頂いていて、ついこの間も家族同
士でバーベキューをしたばかりだった。
「Kさん、Kさん!この間お借りしていた鉄板を返さなくちゃいけないと思って」
「別にいつだっていいんだよNちゃん」僕は習慣的に毎日昼寝をする体質になっており、昼近くに
なったそのとき、もう眠くてたまらなかったのだ。「でも、結局はお返しするんだもん」僕は別に断る
理由もなかったので場をはやく切り上げようと承諾した。
 彼女は鉄板と一緒に麻布で買ったという鯛焼きをもってきた。玄関で帰そうとしたのだが、Sさん
ちとの往来は家族同様のものにもなっていたので、気軽に、ある意味図々しく室内に入ってくる彼
女をとめることができなかった。
「お邪魔じゃありません?」
「いやいや、それよりNちゃんこそ大学は?」
「えへへ、今日は風が強いからサボっちゃいました!」彼女は無邪気にもほどがあるほど、無邪気
であった。おそらくはその外面からしか想像は出来ないのだが、彼女はブラジャーさえ着けてはい
ないようであった。さすがに家族同様とはいえこればかりは僕も目のやり場に困るほどであった。
「Nちゃん、でもブラぐらいはつけた方がいいぞ」
「ふふーん、実は下もつけてないんですよ!」
彼女がいうには、これからシャワーを浴びて新しい下着で出かけたいので、ありとあらゆる洗濯物
をなるべく洗っておきたかったからだそうだ。「私のは全部私が洗濯するんですよ。だから一つでも
やっといたほうが次の手間がはぶけるんだもん」そういうと一気にお茶をのみほした。
僕は彼女が帰った後うまく眠ることができなくなってしまい、またベランダに出て煙草を吸った。もし
かしたら、僕らのマンションは最寄の駅から真っ直ぐに一本道で通うことができるようになっていた
ので、彼女がでかけていく後ろ姿を見届けられるかもしれないと思うこともあった。でも彼女は何時
間か経っても出かけていってはいないようであった。
 僕は隣りのむこう側で気配をうかがうような、そんな空想にいつまでもとらわれていた。

367:名無し物書き@推敲中?
09/10/08 14:13:30
「橋脚」「スケボー」「詩」

368:名無し物書き@推敲中?
09/10/08 15:58:53
「橋脚」「スケボー」「詩」

毎日毎日、橋を大量の自動車が目的を持って通過していく。しばしば夜のニュースの交通情報コーナーではただの無機物のそれがテレビにさえ映る。
多くの人の役に立ち、地味ながらも人々にしっかりと存在を認識されているそれも橋脚なしには立っていられない。
しかしどうだろうか。
河原で野球やバーベキューを楽しむことがあっても、橋脚そのものは滅多にまともな目的で使われない。
橋脚の近くには橋の上から大人が落としたタバコの吸殻。不良少年の描いた理解しがたい落書き。紙屑と川魚の死体。
あまりにも可哀想ではないだろうか。
そう考えたある高校生は、親から小学生の時に買ってもらったスケボーに乗ってとある河原に来た。
土曜日だったので、河原には人が多い。しかし少年は彼らに興味などない。また彼らも少年など視界にすら入っていないが。
少年はスケボーを降りると一直線に橋脚へ向かう。近づくにすれて橋の影に入り日差しは来なくなり、ゴミにより異臭が漂っていたが彼は眉を顰めるに留まり、歩を止めることはなかった。
橋脚そのものまでたどり着くと、少年はローファーのまま足を川に入れ、まずは橋脚に手で触れた。数分、目を閉じそのままで居る。
水が靴の中に入ってくる感触も橋脚の冷たさも少年は心地よいとさえ感じた。
次に、ポケットから一編の詩を書いた原稿用紙とセロファンテープを取り出し、それを橋脚に貼り付け、少年は頭を下げた。
詩の中身は子供時代への決別。彼は次にこの川を通るときは上を自分の車で通ると決めていた。
満足した少年はスケボーを名もない草村に投げ込み、徒歩で川を後にした。
河川敷を上がる際に大学生のようなカップルとすれ違ったが、双方共に何も見ていないふりをしていた。

その後直ぐにカップルは少年の足が濡れていた事を笑い、更にはどこからか来たおっさんが野グソの後に彼の原稿用紙を利用していたがそのどちらも少年には関係のない話であろう。
今日も、川と橋には別段変化はない。

次「恋路」「マドンナ」「物語」

369:お題「恋路」「マドンナ」「物語」
09/10/08 20:38:32

『恋路恋路恋の路。嗚呼、僕は傷ついた一頭の獅子だ。
友よ。君とはひととき路を違えるけれど、いつの日かまた会おう。
長い長い旅路を終えた、どこか、人生のふもとで』
親友に想い人を寝取られた雄は、なぜか全く無関係の雌に
このような葉書を送りつけた。
受け取った雌は、はじめ手にした時、送り先を間違えたのか?
と善意的に考えたが、表面にしっかりと住所が記載してあった所から見るに
どうもそういう理由(わけ)ではないらしい。
ならば、どういう理由(わけ)だよ。と一人ごちるが、送り主の雄は現在失踪中である。
どうしたものか、このまま黒山羊さんとして美味しく頂いてしまうか?
悩むことも束の間、やがて雌はその葉書の存在を忘れてしまった。
その頃の雄は、港のBarマドンナでウイスキーの馥郁たる香りに酔っていた。
フフ、ここが巷のBarだね! と字面に起こさなければ分からないギャグを
ホステスさんに振りまきながら、盛大に愛想笑いを買っていた。
大満足である。ママの、バケツプリン並にボリューム感のあるおっぱいに
我を預けた雄は、ぼんやりと滲む意識で安い造りの天井を見上げながら
これが物語だよ! この生き方が物語そのものなんだよ!
若いうちの波瀾万丈は買ってでもしろ、って言うだろ!
とクダをまいたりしちゃうのだから、もう見てられない。
そのような幸せな物語が、雄に訪れていれば、自分は少し幸せだ。
雌はそんなことを想像しながら眠りに就いた。


次のお題は「幽霊」「グラス」「鍵」でお願いします

370:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 00:45:30
 ダイニングのドアを開け、暗闇の室内に照明をともすと、ワイングラスが純白のテーブ
ルクロスに半透明の赤いシミをうがった。精巧な装飾がほどこされたベネチアの特産品を
よく見ると、ふたつの任務を立派にこなしつつ、自分とマンションとの共通のあるじを待
っていたようだ。ボウルに入れられた鍵と、プレートの下にある書き置きとから、事態は
容易に推察された。
 念のためと表現するには慌ただしく、マンションの内部を確認して回った結果、やはり
というべきか、今朝までの同居人はきれいさっぱり消え去っていた。真昼の幽霊さながら
に。

371:「幽霊」「グラス」「鍵」
09/10/09 03:37:13
違和感に気づいて注視してみると、ワイングラスの底に残る赤い物体はワインらしくもなく
蠢きながら苦悶する断末魔の表情を見せていた。
絶え間なく苦痛に責め立てられているかのようなその表情に、思わず自分も顔をしかめたが、
しかしワインが飲みたかったのでそれをそのまま口に仰ぎ入れた。
ぶよぶよとした感触が口腔内で蠢いたが、繰り返し咀嚼するとガラスのこすれ合うような
甲高い悲鳴を残してそれは液体に戻った。飲み込んだそれがワインらしく喉に染みた。

自分は幽霊に憑かれている。見覚えのない顔。子供か、あるいは老人のものか。
奴はいつどこにでも現れる。例えば今日、帰宅したときは鍵穴に取り憑いて自分の前に現れた。
自分は吐き気を訴える口と化した鍵穴に、金属製の鍵を思い切り差し込み、捻った。
ぶちゅ、となにかの千切れる音がして、血が流れ出したが、鍵はちゃんと開いたので、
自分は家に帰り夕食を取ることが出来た。

恨まれるような因縁も、憎まれるような諍いも記憶にない。だから最近、あの幽霊はかつて僕に
ひどいことをして後悔してる奴で、こうしていちいちスリッパに取り憑いたりして僕に足を
蹴り入れられたりするのを喜んでいるのではないだろうか、という気がしてくるのだ。

372:「幽霊」「グラス」「鍵」
09/10/09 03:38:40
次は「右クリック」「左クリック」「センターホイール」でお願いします。

373:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 10:27:17
>>372
いい加減、変なお題やめようよ。
もう少し考えたお題を望む…

「恋路」「マドンナ」「物語」
「毎日」「鉄板」「鯛焼き」
「金曜」「深夜」「一時」とか


374:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 12:55:00
ひとそれぞれの遊び方があっていいんじゃないの。
気乗りしないお題のときは降りればいいし。
おれは久々に来たけど、いくつかの意図があってほぼお題を振らないし。

375:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 21:24:01
そーれ最初は右クリックだ、フックだボディだボディだチンだ
ほれほれ、左クリックだ
とどめはセンターホイールをぐりぐりしてやるぜ!
「らめえぇぇぇ。イッちゃうううううううううううううううううう」

376:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 21:25:52
自分から進んでこんな事をやる日がくるなんて思いもしなかったな。
私はぼんやりとそんな事を考えながら図書室のパソコンで地道にレポートのための資料を探している。
キーボードでキーワードを入力して左クリックで検索。サイトを軽く覗いて面白いと思った資料を無造作に右クリックでコピーする。
学校のパソコンにはメモ帳しか入っていなかったのでどれくらいの資料を集めたか具体的な量は分からないが、ある程度スクロールできる程度には溜まった。
ただし自分で面白いと思った情報しかコピーしていないので、これだけの資料できちんとレポートが書けるかは全く分からない。
どうして私がこんなにもやる気なく資料を集めているかというと、この二年間で「3」を私にくれたことのない意地悪な社会科教師が出した宿題だからだ。
図書室には勿論今回のレポートに利用できる本がたくさんある。でも、ただでさえ活字が嫌いな私には更にやりたくもないレポートの資料を本で探すなんて出来ない。
広く浅く、けれど少しでも気軽に。図書室にパソコンがあってよかった。
まぁ、とりあえずセンターホイールを十周できるぐらいまで資料を集めれば何とか書けるだろう。
嫌な作業だけれどこれ以上の訳にはいかない。しょうがないよね。
私は止まってしまっていた手をまた動かし始め、広大なネットの海の探検を再開した。

次「活字」「来客」「作業」

377:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 21:26:52
被ったああああorz
>>375さんの出すお題でお願いしますorz

378:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 22:00:08
「来客か?」
新聞の活字を見るともなく眺めつつ、俺は秘書の明日山に問いかける。
朝のコーヒーを飲み干すまでは頭の働きも我ながらいまひとつだ。
「ええ。どうします?」
「室長は現在作業中です、とでも答えとけ」
「いいんですか。あんな美人を待たせておくなんて……」
「何だと? それを早く言え」
俺は新聞を放り出した。
「とりあえず部屋へ通しておけ。待った、その前にコーヒーを頼む」


……急いで丁稚上げた感強いですがご勘弁を。

次は>>373から「恋路」「マドンナ」「物語」で。

379:名無し物書き@推敲中?
09/10/09 22:46:04
>>378
それは
>>368-369で使われた
ネタの一例です(でも出された物はきちんと消化)


「やあジュゴン、僕は君を愛しているよ。」
「ロバ、私もよ。」
そう言うと、二人はお互いに近付きあい……

「ああ、この子は恋愛が出来るのね。」
最近都で流行りの、小説の一ページを読みながら、どこに言う訳でも無く呟く。
「姫様、こちらの方はいかがでしょうか。」
この城の中に、心ときめくような事は何一つ無い。
「姫様、今日もお美しいようですね。」
誰と話をしても、聞かされるのはいつも決まった定型文。
「姫よ、お前は隣国へ嫁ぐがよい。」
城にあるのは、王達の策略、臣下の争い、そして―
「ほら、こちらが隣国の王子でいらっしゃる―」
「嫌よ、私は政治の道具になんてなりたくないわ。」
「駄目。これは確定事項であって―」
「えーこの度は、隣国の―王子と、我が国の―」
「姫様、早く夜伽の準備を―」
自分の運命、だった。

「……夢、かしら。」
ここ最近見るようになった、近い未来の自分を具象化したような、嫌な夢。
「嫌よ、こんな事。私も、物語に出てくるような、美しい恋がしたい……」
姫は、ただそれだけを願っていた。


Next theme「水鳥」「蝋燭」「乱世」

380:名無し物書き@推敲中
09/10/10 00:28:59
「やられちゃいましたよー」
Mが帰ってくるなり言った。リース契約満了をもって他社に切り替えたいと意向だそうだ。
「まあ、堅実な客は堅実な客だ。乱世ってやつかね」「まあ、そうですけどね」
「出力機は二台持って欲しいと言う提案も駄目だったんだろ?」
Mは夜中までかかってその客の色校用の機械を修理した経験がある。

コートを着て、外に出た。公園の水場の水鳥に、親子が餌をやっている。
帰りに営業時間に間に合わないかもしれないので、店までケーキを取りに行った。
かたかた、かたかた、箱の中で鳴るのはケーキを彩る小物か、蝋燭の類だと思う。雪は、期待するが降らない。

「あーちゃん、あーちゃん、あーちゃん、あーちゃん」
かたかたと鳴る音に節を付けるように、娘の名前を歌いながら会社に帰る。

娘は、私の妹に、どうしても印象が重なる。妹は、もう中二と小六の男の子がいる。
会社に帰って、机の下にケーキの箱を置いて、MとSさんとEさんの四人で三時のお茶を飲んだ。

「御題・『こむらがえり』『午前様』『電卓』」

381:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/10/10 02:27:52
こむらがえり 午前様 電卓

「う・うぅ・うう…」隣の布団で寝ている主人の声で目が覚めた。
「あっちゃん?…どうしたの?」と声をかける。
何時なんだろう…枕もとの小さな灯かりで午前4時25分と確認できた。
「う・うぅ・うう…」まだ小刻みに布団が揺れていた。
「ふ・ふ・くらは・・ぎがぁー」と主人が苦しそうに答えた。
パソコンやコピーFAX機などのリース品を扱う仕事の主人だが、去年からの景気悪化でいつも忙しく仕事をしていて、また今夜も午前様だった。
「お水を持ってきてあげようか」私は、何とか治まった、こむらがえりをおこした主人の右ふくらはぎをさすりながら聞く。
立ち上がり台所へ向かう途中でテーブルにある家計簿と電卓を見つけ、出しっぱなしで眠ってしまったことに気付く。
隣の部屋で眠る娘の様子を見てから水の入ったコップを持ってゆくとすでに主人は寝息を立て眠ってしまっていた。
コップの水をぐいっと自分で飲み干し布団に入ると主人の寝顔を見た。
「あっ!」さっき主人のことを あっちゃん っていう新婚時代の名で呼んだことを思い出し笑った。
私の妊娠のことは明日報告することにした。
これで私たちも中二と小六の男の子がいる義妹と同じく2人の子を持つ親になるのだ。

「これからもよろしくね!お父さん!」シワの増えた主人の寝顔を指でなぞり眠りについた。

382:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/10/10 02:33:55
Next theme「コンサート」「台風」「雑草」

383:名無し物書き@推敲中?
09/10/10 03:17:09
「はい、そこ!土をほじくらない!」
 大音響での猛抗議は特設ステージ上から発せられた。
「たしかにここは野球場だけど。おれのコンサート会場なの。夏の高校野球じゃないの」
「雑草は抜かにゃならんべな」との返答は動作を再開しながら行われた。「これも仕事だで」
 台風の目かと見紛うほどの静けさが閑散たる場内を支配した。


つぎのお題は、北極、観測、疑念

384:お題「北極、観測、疑念」
09/10/10 07:55:35

北極星を常時監視していれば航路に迷うことはない。
そう教えられて、私は方位磁石を持たずに
イカダ一つで航海に出た。
今はとても後悔している。
あの、一口ネタを教えてくれた漁師は
もしかすると、私を騙したのかもしれない。
疑念は尽きないが、私は大海原を一人往くしかないのだ。
どこだ、どこにある……北極大陸!


次のお題は「皇帝」「ペンギン」「撲殺」でよろしくお願いします

385:北極 観測 疑念
09/10/10 09:38:29
恋人ができた。
それまでの孤独だった僕の人生に彼女は春の木洩れ日のようなあたたかさをもたらしてくれたの
だが、ある日、「あなたと一緒にいると、まるで北極にいるみたいだわ」と一言だけを残し去っていった。
彼女がいなくなると僕は腹がたった。何が《北極にいるみたい》だ。僕はこうゆう奴が大嫌いだった。
自分をどこかの作家かなんかと勘違いしたのか、ただのきれい事を並べて世間を評する奴には虫
唾がはしった。
たしかに付き合う前には会社の同僚から彼女に対してよい印象は聞けなかった。容姿は美しいの
だが男にはまるで無関心なんだ、という噂をよく耳にしていた。よく言う女性至上主義者みたいな
感じだった。でもそんな彼女が二十数年間女の子と付き合ったこともない僕と一緒にいてくれたの
だ。今思えば、彼女が最後に残した言葉といい態度といい、世間の評判どおりの人だったのかも
しれない・・・でも、本当に長い間、誰も見向きもしなかった僕と少ない時間だけれども同じ時を共
有してくれたのはたしかだった。
彼女が恋しかった。あれから数日たった今、僕がどんなに彼女を求めているかをこんなにも感じた
ことはなかった。僕は深酒をした。そうしないと眠れなくなっていた。
午前3時ごろ、誰かがマンションの扉をたたいた。
僕は無視しようとしたのだが、それはいつまでたっても扉をたたくのを止めなかったので、僕はベッ
ドからおき上がった。玄関に近づいていこうとしたとき、鍵がかかっていたはずの扉が開いた。
そこには彼女がいた。
「入ってもいい?」と彼女はいった。僕はあ然として、どう判断していいのかもわからなかったので
口を閉ざしたままだったが、彼女はそんな僕を見つめながら靴を脱いで部屋に入っていってしまっ
た。そして、彼女は脇に抱えた大きな箱の梱包を、部屋の入り口でたたずむ僕をまったく無視して
とき始めた。中には天体望遠鏡がはいっていた。
「ここでオーロラを観測しようと思って」彼女はそういうままカーテンを開けて、それを南の空に向け
始めた。空には大きな月があるだけで僕にはオーロラは見えなかった。
彼女は恥かしくてこんな芝居をしているのか、《本当にオーロラが見える》のか、それとも、実際に
ここが《北極》だったのか、そのとき、僕の頭のなかには様々な疑念が渦巻いては消えていくだけだった。

386:名無し物書き@推敲中?
09/10/10 09:40:34
お題は上の人ので。

387:名無し物書き@推敲中?
09/10/10 12:58:36
刑事「撲殺犯人はお前だな」
皇帝ペンギン「はい、ボクがやりました」

388:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/10/10 15:09:25
「皇帝」「ペンギン」「撲殺」

私の最近の悩みは配下どもが良い情報ばかりを知らせて都合の悪い事は私のところまで上げて来ないことだ。
私はそんな度量の小さい皇帝ではないのに…
私のこの国は戦後の壊滅的な破壊から数十年で世界でも有数の経済大国へと発展した。
私専用の40インチディスプレイには刻々と世界中の生の情報が送られて来ていた。
「まったく!どの国も大したことはない!!」そう吐き捨て立ち上がる。
ちょっと散歩へでかけることにしよう。
私はこんな身分でもシークレットサービスは1人もつけない主義でこれまでやってきた。

男はペンギンのようなちょっと不恰好な歩き方で秋晴れの青空の世界へ出て行った。
数時間後、1人の男の撲殺死体が公園で発見された。
板橋警察署の発表では近所に住む住人とのトラブルだったようだ。
その無職男が住んでいたワンルームのアパートを調べるため警官が入った。
そこには異臭がたちこめた汚れた部屋、不釣合いな40インチプラズマテレビ、デル製のデスクトップPCが置かれていた。
調べによるとこの男はネット掲示板では 皇帝 と呼ばれていて自分が世界を影で支えている人類史上最も優れた人物だと書き込み続けていたらしい…

389:ケロロ少佐 ◆dWk3tQvjAGCU
09/10/10 15:11:08

つぎのお題は、印鑑、虫歯、善人 でお願いします。

390:名無し物書き@推敲中
09/10/10 18:35:26
印鑑、虫歯、善人

「総力戦だ。セブンが敵の主力を倒した。散り散りになっている今が
チャンスだ」『……おそらく残っているのは民間人ですが……』
「かまわない。彼らは地球人に紛れ、段々と虫歯のように侵食を
始める。ソガ。フルハシ。高熱価ナパーム準備」
そう言うと、隊長は機長席ごしに、散開したユカード星人の降着
カプセルの成層圏上部に環状に漂う無数の機体を眺めた。
「人間か、彼は確かに優れた地球人だ」
アルファ号のコクピットの後部でアマギ隊員と目が合う。
何か言いたげだが、ソガ隊員は睫毛を伏せて空間ソナーの画面に
座り直した。
全ての侵略に、まるで印鑑を押すように、漏れがあってはならない。
観測艇イプシロンの加圧スーツを脱ぎに、脱衣室に入る。
「善なる善は、何処に属す……」隊長のめらめらと燃える瞳が記憶に
焼き付いた。「僕は……善人か……?」
ダンは、脱衣室のファスナーを閉めた。

次のお題は、「稲刈り・レコード・フィギュア」

391:390
09/10/10 18:37:26
失礼。
「アルファ号のコクピットの後部でアマギ隊員と目が合う。
何か言いたげだが、アマギ隊員は睫毛を伏せて空間ソナーの画面に
座り直した。」

次のお題は、「稲刈り・レコード・フィギュア」

392:名無し物書き@推敲中?
09/10/11 20:01:07
「まだこんなもの集めているのか」
次郎の部屋にあったフィギュアを見て、苦笑混じりに郷はつぶやく。
ジャック。かつて怪獣に襲われ死んだ自分と一体化し、地球の平和を守ってきたM78星雲のヒーロー。
「それだけは特別だよ。なにしろ俺にとっては、兄さんみたいな存在なんだからな」
そう言って照れ臭そうにそっぽを向いた横顔には、たしかに郷の記憶にある少年の面影があった。
だが。かつての少年も今は精悍な顔つきとなり、背丈も郷と同じくらいとなっている。いつまでも郷が
あの頃のままの姿……自分を慕ってくれた女性に少年を預け、地球を去った頃とまるで変わらない姿で
いるのとは対照的に。
「兄さんと姉さんの遺品もまだ奥の部屋に残してあるぜ。あの頃姉さんが郷さんといっしょに聴いてた
レコードもそのままさ。もっとも今どき音楽聴くのにレコード盤でもないけどな」
にっ、と白い歯を出して笑う。兄と姉を殺され、ほどなく兄代わりと頼っていた郷にも去られてから
次郎がどれほどの苦労を重ねてきたのか郷は知らない。
だがその次郎も今では、かつて自分が所属していた地球防衛組織の隊長として活躍するようになっていた。
(たくましくなったな……次郎。結局、俺はお前に何もしてやれなかった……)
「ルミ子さんも今じゃ農家の嫁さんで、ふたりの子供の母親さ。たまの休暇に連絡したらとれたてのお米
ごちそうしてあげるから稲刈りの手伝いに来い、なんて言われちゃってさ。参ったよ」
そう冗談めかして言ってから、次郎は不意に真剣な目で郷を見た。
「郷さん。今回は……いつまでこの星にいられるんだい」

次のお題は「予習」「さよなら」「世界」

393:名無し物書き@推敲中?
09/10/11 21:40:34
来週からセンター試験が始まる。僕は午後10時に帰宅してからもう4時間くらい机にかじりついている。
途中、母が夜食を持って来てくれた。試験対策と平行して明日の授業の予習もしなければならない。
今日のノルマはあと70ページ。僕は問題集を解きながらふと部屋の隅に片付けられたギターに目をやる。
「明日から全国ツアーだな」
ギターに話しかけるように僕はそう言った。幼なじみのユウヤと僕はミュージシャンを目指してコンビを組んでいた。
僕だって確かに本気だった。しかし大学には行きたい。保険無しでミュージシャンを目指すなどただの頭の悪い奴じゃないか。
僕はそう思っていた。僕はユウヤの熱意を踏みにじるように去年の夏、活動休止を申し出た。
ユウヤは泣いていた。お前と音楽がしたい、そう言ってくれた。しかし俺には勇気が無かった。
「さよならするにはまだ早過ぎるぞ。いつかまた、二人で曲作ろうな」そう言ってユウヤは高校を辞めた。
その後ユウヤはひとりで各地を周り路上ライヴを行った。そしてある時、地方の有名なインディーズバンドのメンバーがあいつをスカウトした。
ユウヤはそのバンドのギタリストとして、これからライヴハウスを周る。

先週、ユウヤが作った曲のデモテープが届いた。
“そっちの世界は何が見える?
俺が今見てる世界は想像以上にどぎつくて逃げ出したくなるほどさ
それでもいつか俺達が夢見た場所に続いてる”

夜が明けそうだ。試験まで、眠ってなどいられない。

次は、音楽、失恋、飛行機

394:名無し物書き@推敲中?
09/10/11 22:20:54

どうせ失恋するのなら、
最後にはちゃんとさよならを言いたい。
アカイロはそんな少女だった。
しかし、その恋は初恋で、さよならを言うには予習が要る。
世界はそんな風に上手くできていない。
結局、アカイロは別れ際にさんざん泣き通して、
上手くさよならを言うことができなかった。
そして、今、ぼくは彼女との別れの局面を迎えている。
結局、ぼくもまた、いつかの彼女のように泣き通しで、
上手くさよならを言うことができないでいる。

やがて彼女は炉に送られ灰になる。
炎は時間の流れで消えるけれど
さよならを言えない世界は、これからも続くのだ。



折角書いたのでスマソ
お題は上の方の「音楽」「失恋」「飛行機」継続でよろしくお願いします

395:「音楽」「失恋」「飛行機」
09/10/11 23:05:02

『60年代が誇る、偉大なミュージシャンの多くは
70年代を迎える前に死んだ。
60年代を乗り切ったミュージシャンでさえ
幸せな70年代を迎えたのは一握りしか居ない。
ほとんどの飛行機は、音楽を乗せたまま落ちてしまった。
その落ちた音楽を探す旅に俺は出る。
無茶なことを言っているのは承知の上だが、聞こえるんだ。
調和のとれたレットイットビーの音が』
とにかく踊れる音楽ならばなんでも良い、派のグリンプスが
いきなりそんなことを言い出すのは意外な気もしたが
根本的に他人を理解することは不可能だ、と考えているグリントは
グリンプスの発言を認めた。
しかし、一つの価値観に基づいて、音楽を奏でるチームを
バンドと呼ぶのなら、これは全くの破局であり、失恋にも似ている。
つまり、音楽とバンドはどの時代もやがて
失恋の憂き目に相対する運命にあるのだろう。
ただ、幸せなのは、失恋するまでは
ずっと、誰もが一つの音楽を愛し続けることができる。
グリントは、今頃、空の上を飛んでいるだろうグリンプスの飛行機のことを思い
世界中の飛行機が落ちなければ良い、と思った。


お次は「イモリ」「標識」「炎天下」でよろしくお願いします

396:392
09/10/11 23:30:41
重複ですがご勘弁を。余計な感想ですが>>393さんいいなあ。

飛行機はすでにゆっくりと低空を飛び始めている。まずい。これって超まずい。
「どーすんのよおっ。あたし、操縦なんかできないわよっ」
傷心旅行(センチメンタル・ジャーニー)を気取って、せいぜい地味臭いカッコで
小さなトランクひとつに収まる荷物だけを手に、二ヶ月に一本しか飛ばないという
クルクルク島行きの便にようやく乗り込んだばかりだというのに。
失恋ついでに思い切ってあの世までジャンプしちゃうつもりは、あいにくだけど
今のあたしにはまだない。
「ま、全ては運命って奴かね。ここで景気よくおっ死んじまうっつうのも」
「だったらあんただけ死になさいよっ。やだやだ。あたしまだ死にたくなぁい」
悟りすましたような顔で、落ち着き払って座席に腰を下ろしたまま水割りの
グラスをちびちび飲んでいるサングラスの優男を一喝しておいてから、あたしは
その場で地団駄を踏みながら泣きわめいた。
「おいおい、やめとけや。墜落早まっちまうかもしれねえだろ。今のうちから
心配しなくても、この世は麗しきミューズたちの奏でる音楽のごとく全てどこかで
うまいこと調和がとれてるもんだぜ。あんたもこの際運命を信じて、パイロット
抜きでもこの機が墜落しない方に賭けてみなって」
「酔っぱらいが何偉そうに運命語ってんのよお。バカバカ」
「だーかーら。そんな足バタバタさせてっとスカートの奥まで丸見えだぞ」
「エッチ。へンタイ。見んなド助平っ」
怒りに任せて振り回した古いトランクの持ち手がいきなり壊れ、勢いで狭い
機内をすっ飛んでったトランクは飛行機の窓を直撃した。
ぴきっ。頑丈なはずの窓ガラスに大きくヒビが入る。
「げ。嘘だろ」
さすがに優男が顔色を変えて、腰を浮かせた。

お次は>>395さん継続で「イモリ」「標識」「炎天下」でお願いします


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