09/04/04 13:21:50
夕焼け 花束 制服
卒業式の帰り道。花束を持つ学生達。卒業式に来なかった彼女は川沿いの土手に寝転がっていた。
「ここにいたんだ」
彼女はそのままの姿勢で頷いた。
「制服じゃないんだ」
「あたしのは…… 汚れちゃったから」 見上げたまま彼女は言った。
「そう」
僕は彼女の横に寝転び同じように空を仰いだ。夕暮れの空のグラデーションに僕はとても胸が苦しくなった。
「手、握っていい?」
不意に彼女が呟いた。
「………うん」
突然の言葉に戸惑いながらも僕は彼女に応えた。彼女の手は冷たくも温かくもなく僕と同じ温度だった。
夕焼けは河原を染めて、川面をきらきらと輝かせていた。
「どこかの国では好きな人と一緒に夕日に洗われると生まれ変われるんだって。」
「都合良すぎない?」
「駄目かな?」
「ううん、駄目じゃない」
そこで初めて彼女は少しはにかんだ。
橙色の波はゆっくりと街を沈めて、その優しい琥珀の中で僕らは微睡んだ。僕は目を閉じて強く彼女の手を握った。
次に目を開いた時にはきっと………