08/07/02 19:30:56
即興の魅力!
創造力と妄想を駆使して書きまくれ。
お約束
1: 前の投稿者が決めた3つの語(句)を全て使って文章を書く。
2: 小説・評論・雑文・通告・㌧㌦系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
3: 文章は5行以上15行以下を目安に。横幅は常識の範囲で。でも目安は目安。
4: 最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、固有名詞は避けること。
5: お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
6: 感想のいらない人は、本文もしくはメール欄にその旨を記入のこと。
前スレ
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十ニヶ条
スレリンク(bun板)
関連スレ
この三語で書け! 即興文スレ 感想文集第12巻
スレリンク(bun板)
裏三語スレ より良き即興の為に 第四章
スレリンク(bun板)
既に落ちている関連スレ(参考までに)
この三語で書け! 即興文スレ 良作選
スレリンク(bun板)
2:名無し物書き@推敲中?
08/07/02 19:31:24
過去スレ
この3語で書け!即興文ものスレ
URLリンク(cheese.2ch.net)
この3語で書け! 即興文ものスレ 巻之二
URLリンク(cheese.2ch.net)
この三語で書け! 即興文ものスレ 巻之三
URLリンク(cheese.2ch.net)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第四幕
URLリンク(cheese.2ch.net)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第五夜
URLリンク(cheese.2ch.net)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第六稿
URLリンク(book.2ch.net)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第七層
URLリンク(book.2ch.net)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第八層
URLリンク(book.2ch.net)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第九層
URLリンク(book.2ch.net)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層
URLリンク(book.2ch.net)
3:名無し物書き@推敲中?
08/07/02 19:32:17
過去スレ続き
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十壱層
URLリンク(book.2ch.net)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十二単
スレリンク(bun板)l50
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十三層
スレリンク(bun板)l50
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十四段
スレリンク(bun板)l50
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十五連
スレリンク(bun板)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十六期
スレリンク(bun板)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十七期
スレリンク(bun板)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十八期
スレリンク(bun板)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十九ボックス
スレリンク(bun板)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十ボックス
スレリンク(bun板)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十一ヶ条
スレリンク(bun板)
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十ニヶ条
スレリンク(bun板)
4:名無し物書き@推敲中?
08/07/02 19:32:39
さあどうぞ
5:名無し物書き@推敲中?
08/07/02 19:33:46
合意なきテンプレの改変は荒らしの自白に等しい
6:名無し物書き@推敲中?
08/07/02 19:41:42
そう思うなら削除依頼出して自分で新スレ立てれば
俺はこのスレ使うけど
つかどうせ別に今まで不文律になってたことだろ
7:名無し物書き@推敲中?
08/07/02 20:02:44
荒らしが涙目になってるよ。よっぽど必死なんだな
8:名無し物書き@推敲中?
08/07/02 20:42:46
>>1乙
9:名無し物書き@推敲中?
08/07/02 20:50:49
お題は?
10:名無し物書き@推敲中?
08/07/02 20:51:41
負け犬の遠吠え
11:名無し物書き@推敲中?
08/07/02 21:11:34
次は「縄張り」「遠吠え」「未成年」でヨロシク
12:名無し物書き@推敲中?
08/07/02 21:16:44
ヨロシクって・・・また自己レスで解決すれば?
13:「縄張り」「遠吠え」「未成年」
08/07/03 01:40:08
11じゃないけど書いてみた
青年は駆けて戻ったが、もう遅い。
下宿は縄張りされ、捜査員が何人も部屋を荒らし回っている。
ソファーを切り裂き、額縁を壊し、血眼で本を探しているのだ。
指揮官らしき男が、冷たく微笑んだ。
「悪いね、学生さん。これも仕事なんでね」
青年は一応、「なんという横暴!これは文化の自殺だ。」とか嘆いてみた。
が、両腕を締め上げられた身では、ただの負け犬の遠吠えだ。
余りに無力な抗議を、捜査員の声がさえぎった。「見つけたぞ、この本だ!」
「残念だったな、坊や」指揮官が指差す先に、プレハブの様な建物がある。
「まだ未成年だし、仕方ないとは思うがね。ま、行ってくるんだな」
粗末な建物に、小さな机とパイプ椅子が2つ。
その椅子の一つに、捜査を依頼した元締が待っていた。
「ひどい、ここまでするのか・・・」
青年は椅子に座ると、本が積まれた机に顔を埋める。「・・・ひどいよ、母さん」
詰まれた写真集のその表紙に、水着姿の少女が屈託のない微笑を浮かべていた。
※なんか手塚治虫っぽいなあ。
次のお題は:「水面張力」「遠足」「未完成」でお願いしまふ。
14:名無し物書き@推敲中?
08/07/05 17:48:55
茂沢さんの後をついて山奥を進んだ。
前に進むには背の高い枯れ草を押し分けるしかない。
下草を踏み、茎を折る高い音が続く。
「クマは縄張りをもってないんです。」と茂沢さんが言った。
「だからエサのあるところにはクマたちが集まってきます。このあたりはエサ
の少ない貧しい場所。クマはめったにいないんです。」
悲しい風のような音が聞こえて、茂沢さんは立ちどまった。
私も立ちどまって耳をすませた。
「遠吠えですね。何が吠えているんでしょう。」と聞いてみた。
茂沢さんが私の顔を見た。何か言いたそうだった。
突然、枯れ草の中に茂沢さんが飛び込んだ。
ガサガサする音が続いて彼はたちまち遠ざかっていった。
ずっと遠くになってから茂沢さんの怒ったような叫び声が聞こえた。
「あれは・・未成年が死んでいく声だ・・・、お前と同じ・・捨てられた未成年だ・・・」
私はその場所でひとりぼっちになった。
15:名無し物書き@推敲中?
08/07/05 18:19:43
緑江博士は親から受け継いだ幼稚園の園長先生だ。
工学部時代から続けてきた研究がとうとう完成しようとしていた。
園長先生は、マイクロバスにいちご組の園児20人をのせて、
静かな広い湖に遠足にやってきた。
博士が開発したアメンボスーツを取り出すと、
園児たちは大喜びで着替えた。
幼稚園の小さなプールでやったことのある遊びだ。
アクアスーツのような形だが、
アメンボスーツを着ると水面張力の働きで、
水の上を立って歩けるようになる。
全員に着替えさせて、いっせいに走って湖に跳びこむ。
歓声があがる。たちまち湖を駆けていく。
20人の園児たちは岸からどんどん離れていく。
「おーい、あんまり遠くにいくなよ~」
園長先生が大声を出す。
「はーい」園児たちが返事する。
実はアメンボスーツは未完成だった。
前に進むことは出来ても、曲がったり、後ずさりはできない。
そのことを、博士も園児たちもまだ知らなかった。
次は、「炭酸」「隣家」「橋げた」
16:名無し物書き@推敲中?
08/07/08 00:20:58
高校最後の夏、隆志とよくこの橋げたの下で待ち合わせた。
わざわざ町の予備校に通っていた隆志は、いつも自転車を飛ばして
やってくる。
私は待ち合わせをするたびに、隆志の好きな炭酸ジュースを
買っておいた。息を切らせた隆志が旨そうに喉を鳴らして炭酸ジュースを
飲む。それを見るだけで私は幸福だったから。
ある日、隆志との待ち合わせに出かけようと自転車を出していた私に
隣家のおばさんが声をかけてきた。
「これ、たくさんいただいたからおすそわけ」
おばさんが差し出した袋には、炭酸ジュースがたくさん入っていた。
私はうれしくなっておばさんにお礼を言うと、そのまま袋をカゴに乗せて
いつもの橋げたの下に飛んでいった。
隆志はもう来ていた。
「ごめんね、遅れて。はい、これ」
私が差し出した少しぬるいジュースを、隆志はサンキューと言って
いつものように喉をそらせて飲んだ。
「ブッ」
隆志がジュースを吐き出す。
「これ…、酒?」
慌てて缶を覗き込むと、『ピーチツリーフィズ』と書いてあった。
私たちは肩を寄せて大笑いし、そしてキスをした。
次は「映画」「宝石」「硬式」
17:「映画」「宝石」「硬式」
08/07/09 01:10:32
硬式テニスボールみたいなもので、急所を何度も殴られたらしい。
病室で頭を起こすと、俺の記憶は消えていた。「お、俺は、誰だ?」
白衣の男が、じっと笑っている。 「まあ、これを見て下さい!」
黄色いカーテンがさっと開かれると、そこには52型のハイビジョンTV。
そこで俺自身の録画映像が、ニコニコと話している。
「やあ、こんにちは。僕はね、記憶を消去する前の君だよ。」
「な、何だ、何だ、何だ」「まあまあ」。画像は続いた。
「僕というか君は、いわゆる映画ヲタでね。ただどんな宝石にも飽きがくる様に
どんな好きな作品だって、百回は見れば飽きる。そこで・・・」
分かった。自分のアイデアだけに理解が早いや。「すると・・・」「その通り!」
診察台の下には、何百枚ものDVDが安置されていた。
どの映画も期待できそうだ、なんたって自分が厳選したのだから。
一瞬、「待てよ」と思った。「これと似た展開が、どこかの映画にあった様な気がする」
その映画の主人公は、「こんな事はまやかしだ!」って怒ってなかったっけ?
なんて一瞬の疑惑も、一枚目のDVDの冒頭5分であっけなく吹き飛んでしまったけど。
※思い浮かぶ最大が52型・・・
次のお題は:「計画」「月の石」「旧式」でお願いしまふ。
18::「計画」「月の石」「旧式」
08/07/09 10:13:56
「マスター、おかわり頂戴」
彼女はその華奢な人差し指でグラスの淵を軽く叩いた。僕は彼女の胸に輝くペンダントにそっと触れた。
「不思議な光を放つ石だね」
「月の石なの。おばあちゃんの形見」そう言うと彼女はさりげなく手を払いのけた。
僕はロックグラスに入れられたウィスキーを一口含んだ。
「形見?どうしてそんなものを身につけるんだい?」
「どうしてって。そういうものでしょ?」
「僕には理解できないな。過去のことなんてどうでもいいだろ。大切なのは今だろ?」
バーテンダーが彼女の前にそっとグラスを置いた。ありがと、と彼女は微笑んだ。
「あなた、旧式ね?」
「ああ、でも関係ないだろそれは」
地球は氷河期に突入し、その寒さから身を守るために全人類アンドロイド化計画が実行され
たのはもう随分と昔になる。生まれてすぐ魂を抜き取られ、機械人形の中に注入される。
その魂を生み出すために残された人間たちがどこかに幽閉されているらしいのだが、
もし僕に母親がいるとすれば、その人間たちの誰かになるのだろう。
人間は若いと「理解できないだろうな」といって馬鹿にされていたそうだ。
一方アンドロイドは若いほうが性能がよく、理解がいい。
彼女はカンパリソーダを半分まで一気に飲み、力なくグラスを置いた。
「まあ、私もお婆ちゃんなんて覚えてないけどね」
彼女は遠くを見つめ、そうつぶやいた。
次のお題は「クッキー」「トマト」「ブランデー」でお願いします
19:「クッキー」「トマト」「ブランデー」
08/07/09 12:23:57
「ね、これ食べてみて」
彼女が差し出したクッキーは、ほんのり赤かった。一口食べると、甘みの
なかにほんのり不思議な味がする。
「これ、なに?」
「トマト味のクッキーよ」
彼女は得意そうな笑顔で答えた。彼女はよく変わったお菓子を作った。
どれも彼女の庭でとれた野菜や果物が入っている。そして僕は必ず味見を
させられるのだ。
「おいしいでしょ?今回は自信があるの」
「こないだのキャベツのケーキよりは美味しいな」
彼女は笑うと、バッグから新品のブランデーのビンを取り出した。
「ブランデーなんか飲むの?」
「違うわ。これから庭で取れる木苺を漬けて果実酒を作るのよ」
「へえ、それは本当に旨そうだな」
「でしょ。でも出来上がるまで半年くらいかかるわね」
彼女はガラガラした氷砂糖の袋を示して片目をつぶってみせた。
あれから1年、あの木苺酒を飲んだ男はどんなヤツだろう。一口くらい
飲んでみたいものだったな。僕は妻の漬けた梅酒を飲みながらそんなことを
思い出していた。
次は「リンゴ」「電話」「スプレー」で。
20:「リンゴ」「電話」「スプレー」
08/07/12 09:35:22
「……緊急の依頼だ。青森から池袋のサンシャインまで、リンゴを一箱運んで
もらいたい。4時間以内に」
電話口の向こうで依頼人は、さらりと無茶を口にした。
「羽田まで空輸して、ヘリで輸送では駄目なのか?」
「駄目だ。羽田も成田も、抵抗勢力が網を張っている。直接空輸が絶対条件だ」
青森から東京まで、直線距離で700kmを超える。しかも都内となると、ヘリもしくは
VTOL。しかしヘリの速度は最大でも330km。間に合わない。ハリアーではビルの
ヘリポートが持たない……
いや、ただ一つだけ手がある。アレならば。
「やってみよう」
電話を切った俺はとある番号をプッシュした。接続先は、米軍横田基地。
3時間と42分後。サンシャインビル屋上から20フィートの地点でホバリングに
移行した俺は、驚愕の表情を浮かべる依頼人に軽く手を振って見せた。
世界で唯一実用化されたレシプロ固定翼垂直離着陸機、V-22オスプレー。
こいつがあれば、何程のものでもない。
次のお題は、「逆上」「ジプシー」「女神」で。
21:名無し物書き@推敲中?
08/07/14 22:56:37
久しぶりに来たけど、このスレなんか絶望的なまでに劣化してるね。なんで?
22:名無し物書き@推敲中?
08/07/14 23:00:41
波の上がり下がりがあるんだよ
あと感想は簡素スレで
23:名無し物書き@推敲中?
08/07/14 23:06:30
まあ、もともとレベルの低いスレではあったよね
前スレの終盤にいくらかましなのが出たくらいで
24:「逆上」「ジプシー」「女神」
08/07/15 00:29:12
ある朝のこと、
雲の上から地上をご覧になっていた女神様は
ある国の山腹の牧草地に
金髪の美しい少年があるのを見つけ、
これは一発ハメたいなと思い立ち、
ただちに人間の姿になって少年のいる牧草地へと降臨しました。
この地にふさわしい、流れ者の女ジプシーといったお姿でした。
さっそくさっき少年がいた牧草地へ向かいましたが
もう少年はいませんでした。
仕方ないので近くの家に少年のことを尋ねにいきました。
その家の主人は忙しい最中に突然わけのわからない、
しかし妙になまめかしく清潔感のある女ジプシーが現れたのを観て
いてもたってもいられず女の話も聞かずに
家に連れ込んで犯しました。
あとから家に入ってきた女房はその姿に逆上し、
偶然手に持っていたナタで二人をめっためたに切りつけて
そのまま発狂して家から飛び出していきました。
牧草地のすみにかがみ込んでいた少年は
母親が突然叫びながら家から飛び出して行ったのを見て、
うんこの途中でしたがぐっとズボンをあげて
家へとかけていきました。
家へ着くと裸の男女のかけらが
まるでミキサーが爆発して中身をぶちまけたかのように散乱してあました。
そのうち部屋のすみに父親の首をみつけ
机の上に誰のものとも知れぬおっぱいが乗っけてあるのをみつけ
少年は何が起きたかを悟り、うんこをぶちまけると同時に射精し、
そのままばたりとあおむけになりました。
そのとき頭を強く打って脳が出たので死にました。
つぎは
「机」「カマキリ」「コンドル」で
25:名無し物書き@推敲中?
08/07/15 12:10:02
うーん
26:名無し物書き@推敲中?
08/07/20 09:00:23
がんばりましょう
27:名無し物書き@推敲中?
08/07/20 21:35:11
夾竹桃の花は美しく鮮やかで、埃っぽい夏の熱気にも負けない。通っていた高校の中庭に咲きほこっていた。
開け放たれた教室の窓から、湿気と熱気を含んだ風が舞い込む。粗末なカーテンが思い切り膨らむ。
遠くからリコーダーで演奏される『コンドルは飛んでいく』が聞こえてくる。
落書きだらけの机に頬を預けると、ひやりと冷たかった。
「サボリ?」唐突に声をかけられて、私は飛び起きた。
「違う。体育出られないから」
相手が誰かも確かめないで、私は言い訳した。戸口からこちらを見ているシルエットは、痩せぎすだった。
なんだ、カマキリか。私は心の中で吐き捨てた。尖った顎と、流行おくれの眼鏡フレームのせいで、彼は
カマキリとひそかに綽名されていたからだ。
「僕はサボリ」そういうと、カマキリはずかずかと私の座っている席に近づいてきた。
「つまんねーし。何か話しよ」
びっくりするほど無防備な笑顔をカマキリは見せた。ろくに喋ったこともないくせに。
訳のわからないうとましさを感じて、私は立ち上がった。
「いいよ。そういうのは」体育を休んでいる女子に声をかけるデリカシーのなさに苛立っていたのかもしれない。
「気分悪いから保健室行く」
カマキリの横をすりぬけて、私は教室を飛び出した。
夾竹桃には、強い強い毒があるんだね。人を殺すほどに強い毒が。
それを知ったのは私が社会人になってからだ。
生き生きと夏の空に映える、花も緑も、自分の中に在る毒に気づいていたのだろうか。
次は「禊」「ゆとり」「地球」で
28:ジェニオ ◆194x6FzO7Q
08/07/22 23:25:21
『ウォーターフォール』
滝の中に入ると聞こえてくるのは水の音だけだ。耳を折り曲げ、ねじ曲げてビュワビュ
ワと音を立てている。頭を叩く水の固まりが骨伝導して脳の奥深くに響く。重い水が肩を、
頭を叩く。分厚い水の板が体をビリビリと揺るがす。なめらかな力強い流水は粘りがあっ
て、精一杯踏ん張っていなければ絡め取られそうだ。
これだけ強い力なら、きっと洗い流してくれるだろう、と思えた。何かわからないけれ
ど、これまでの人生で降り積もった塵芥をこの身からすすいでくれ。
腕を広げた。重い水を広げた腕で受けると、押し戻されてしまう。それでも少しずつ腕
を広げていく。掌を上に向ける。肩が外れそうだ。たたきつける水の束は切れ目なく腕を
打ち続ける。
ふいに体が後ろによろめいた。そのとき同時に目の前、水の膜一枚隔てたところを何か
が流れていった。一瞬視界を黒く染める。すぐに元の景色。水の膜でぼんやりとしている
森の緑が帰ってきた。耳を叩く滝の音に混じってどぼんと大きな音がした。よろめいた体
が元の位置に戻ろうとする勢いのまま足元を見ると、大きな丸い石が足と足の間にあった。
危険は感じなかった。水に押されて石を避ける。それが当然のように思えた。心は満腹
したような気分でいっぱいだった。不安など何もないようだ。そーゆーもんなんだよな。
きりきりに張り詰めた弦はゆるめられた。まだまだ次の矢をつがえるゆとりがあるわけじ
ゃない。それでも少し。少しまし。
禊を済ませ、滝壺から離れて岩に座り、落ちてきた石を眺める。水の膜に覆われた球形
の石は、まるで宇宙から見た水の惑星のようだった。
自分も、あの石も同じ地球のかけらだと思うと、美しいものの仲間に入れたような気が
した。
マイナスイオンのシャワーが頬の笑いじわにたまり雫となって落ちた。
麦茶 扇風機 カラン
29:麦茶 扇風機 カラン
08/07/27 14:52:00
「爆破は男のロマンだっ」
深夜の研究室にDr.ボーンヘッドの絶叫が反響する。
机の上には黒く解けた金属容器の残骸があり、鼻を衝く匂いと
拡散してゆく黒煙の残影が揺れていた。
異常な爆発音に隣室にいた助手たちが駆け込んでくる。
「博士、すごい音がしましたけど何事ですか?」
「うむ、見事な爆発であった。」
「見事な爆発って、そりゃいいですけど。どうするんですか博士。
やかん爆発させちゃって、麦茶作れなくなっちゃったじゃないですか。
このクーラーどころか扇風機すらないこの部屋で干乾びて死ねというんですか。」
「このIT時代に何を言うか、水で作る麦茶があるだろう。」
「そんな予算ありませんよ。博士が何でも爆発させるから備品の補充だって
ままならないんですから…」
「うむ、ならば水道水で我慢するほか有るまい。」
焼けたカランを回すと勢いよく水が流れ出した。
「最初は生ぬるいがこうしてしばらく出しておけば冷えた水が出てくる。
最近は浄水施設も高度化して水質も良くなってるはずだ。味見をしてやろう。」
手近に合ったビーカーを手に取り、中身を流しに空けたとき、液体と一緒に
小石のようなものがかちりと音を立てた。
その爆発を起こしたルビジウム結晶がなぜ放置されていたかはともかく
屋根を吹き飛ばすほどの爆発に博士が上機嫌だったことは言うまでもない。
次「バケツ」「雑巾」「温度計」
30:「バケツ」「雑巾」「温度計」
08/07/29 11:51:53
まだ八時だっていうのに、お日さまは庭を燃やすみたいにカンカン照りだ。
玄関の温度計も三十四度なんてランボーな数字を指していて、もう、なんてっかナツ、
って感じである。でも鞄を持って玄関に走り出たあたしは、なんだかいつもより元気が
湧いてくるのを感じた。だって今日は終業式だし。
「おい、今日雑巾いるっていってたろ。箪笥から選んでおいたからこれ持ってけ」
運動靴の紐を縛っていると、父さんが巾着を持ってきてくれた。忘れてた。終業式の
午前中は毎回大掃除なのだ。
「通信簿が楽しみだな。母さんの仏前にも報告しないとならないし」
「そうだね」
風船みたいにふくれ上がったあたしの元気は、やっぱり風船みたいにしぼんでしまった。
母さんが死んで三カ月になる。いてあたりまえだった母さんがいなくなって、
あたしと父さんは今後のこと、家族のこと、いろいろ相談したけれど、ぽっかり空いた穴は
どうしたって埋まらなかった。お互いに友達とか会社とか、付き合いやすい忙しさにかまけて
なんとか『取り返しのつかなさ』を忘れようとはしたけれど、結局そんなことは無駄なんだって
最近やっとわかり始めてきた。
今年の夏は父さんと過ごすのだ。家事もあたしがやるのだ。のだのだ。
学校に着くとおざなりな朝礼があって、すぐに大掃除になった。箒で埃を払ったあと、
雑巾で棚やら机やらをすべて拭く。ブリキのバケツの端っこには殺人的に臭い古雑巾が
かかっていて、糊に浸したみたいにガピガピに固まっていた。みんな家から持ってきた
新しい雑巾を出して、なるべく水がキレイなうちにさっさと手を突っ込もうとする。あたしも
自分の巾着をあけた。
中にあったのは、母さんがタオルを縫って作ってくれた、真っ白フカフカな雑巾だった。
あたしは巾着の口を締めて、バケツにかかった古雑巾をつまんだ。
次「トマト」「釣り竿」「蝉の声」で。
31:「トマト」「釣り竿」「蝉の声」
08/07/29 23:52:58
ドイツから日本に留学に来たフランツを連れて釣りに出かけた。
お目当ての池に着くと、僕は釣り竿を1本フランツに渡して、僕はさっさと糸をたらした。
「餌もつけずにつれるのかい?」と怪訝そうに尋ねるフランツに
僕は「大丈夫、ブラックバスなら虫でも何でもいい。僕はアリをつけた」と答えた。
「アリなんかじゃ食いつかないだろう」とフランツは笑った。
「じゃあ、フランツは何を餌にするつもりだい?」と僕が聞くと
「今、この泣いてるのはなんだい?」とフランツが尋ね返したので、
「ひぐらし……餌にしちゃグロいもの選ぶんだな」と笑った。
フランツがムキになって、それで釣るとか言い出した。
フランツは蝉の声に耳を澄まし辺りを見回したが一向に見つけられない。
僕はすぐに見つけると、ひぐらしを素手で捕まえるとフランツに渡した。
「フランツ、気の目は節穴かい?」
「節穴?何のこと?」
「日本じゃ注意力が散漫で見逃すことをそういうんだよ」
『そうなの……ドイツじゃ、『目にトマトをくっつけてるんじゃないか?』って言うんだよ』
次のお題:『せんべい』『鼻血』『野球』
32:『せんべい』『鼻血』『野球』
08/07/30 01:16:47
その日のビールはかつてなく苦いものであった。
贔屓にしている野球チームが視聴率もピークであろう午後8時45分に
とんでもない失策を全国中継で晒してしまったのだ。
ツーアウト満塁で一打逆転のピンチの場面、なんでもないピッチャー
フライを顔面に当て、鼻血を出しながら見失ったボールを捜す間に
ランナーがホームイン。オーロラビジョンいっぱいに映し出された
ピッチャーの顔は滑稽を通り越して悲壮感すら漂っていた。
実況のアナウンサーの声は放送時間枠内に試合が収まった安堵感を
漂わせながら今日の試合を振り返り始めた。
なんだか苦いだけのビールを早々に飲み干し、せんべいと麦茶を
テーブルに並べて俺はチャンネルをお笑い番組に変えた。
次「きっぷ」「コイン」「靴下」で
33:名無し物書き@推敲中?
08/07/30 02:35:24
何連投すれば気がすむんだよニート
34:名無し物書き@推敲中?
08/07/30 02:43:50
うるさいw中卒w
35:名無し物書き@推敲中?
08/08/03 16:44:13
何でこんなに荒れてんの?
36:「きっぷ」「靴下」「コイン」
08/08/12 04:24:31
僕の姉は、背が高くて、髪が長くて、物静かで、成績も良くて、運動も得意
で、料理もできて、全方位的に完璧なんだけれど、何ヶ月かに一度、ポタシア
ン星人になる。ポタシアン星人になった姉は、嬌声を上げて笑い、騒ぐ。その
度に、僕は普段の穏当な姉とポタシアン星人とのギャップにあてられて、気持
ちが八方塞がりになる。
今日も僕の部屋に来て、
「母星に帰るための切符が無いの!」
とかなんとか言ったので、僕が無言でカードケースにしまっていた古い乗車
券を取り出すと、すかさずひったくって大事そうに見つめた後、
「ありがとう! さようなら。これはお礼よ。地球では無意味だろうけれど」
なんて言って銀色のコインを押し付けて去っていった。
呆然とコインを眺めていると、溜まっていた思いが閾値を越えてしまって、
僕は知らず靴下のままサンダルをつっかけて家から飛び出していた。
縁の部分が磨り減った、くすんだ鈍色のコイン。表面には日本國百円という文字と
桜の花が刻まれている。どう見たって古びた百円玉にしか見えないこれが、ポタシア
ン星の通貨、なんだろうか。
「ただの百円玉じゃないか」
口の中で吐き捨て、目の前の自動販売機に投入する。
─カラン。渇いた音。取り出し口に手を突っ込み、再び投入する。カラン。
何度入れても頑迷に拒絶する機械に苛立ちながら、改めてポタシアン星の通
貨を観察する。鈍く光る硬貨には、両面に同じ文字と桜の花が刻まれていた。
「……どっちも表、か」
声が少し震えた。姉(いや、ポタシアン星人か?)の言外のメッセージに、
胸の奥が締め付けられるような、熱くて痛いような気持ちになって、自然と頬
が緩んだ。
次は「ハンガー」「辞書」「青色」
37:「ハンガー」「辞書」「青色」
08/08/16 19:54:39
ピンク色のハンガーが飛んできて真っ青なクッションに当たって跳ね上がった。
それがイスの向こうに飛んでいった次には、女の筋肉質の尻も飛んできた。
青いスカートの女は手に持っていた紙の辞書を開いて、何かを手帳に書き始めた。
明くる朝、ハンガーは破れたビニールと共にクッションの上に投げられていた。
次の日には、クッションの上で新聞と雑誌の下敷きにハンガーはなっていた。
しかし、ある朝、青いクッションの上に細い線を器用に曲げて作られたピンク色を
した四つ足の小さな何かが乗っていた。線の端からは針金が覗いている。
そして、次の日の休日、それは小さな棚のガラス天板の上まで登っていた。
よくよく見ると、大きな耳と大きな鼻をした犬っぽい動物に見えた。
さらに次の次の休日。犬の傍では子犬がじゃれるようになり、二匹の背後には
白に包まれた針金でできた犬小屋もできていた。
夏の終わりがすぎる頃、ガラスの天板の上には、ピンクの親犬に白い三匹の子犬、
白い犬小屋、緑色の幹をした木、橙や黄色や黒や緑色をした小鳥やバッタやセミや
猫などが、ハンガーでできた花が咲く中で、柵に囲まれて遊んでいた。
そこに自転車とポストが加わる頃、季節は青空も澄み渡る秋を迎えた。
次は「ゴム風船」「ビキニ」「人工衛星」でお願いします。
38:「ゴム風船」「ビキニ」「人工衛星」
08/08/18 01:22:09
俺の部屋は突然宇宙人に侵略された。
目の前にいるのは夜店で売ってるようなゴム風船の人形だったが
本人が「侵略しに来た。」と言ってるんだから間違いないだろう。
「で、何がしたいんですか?」
至極当然ながら侵略の意図を尋ねてみた。
侵略を止めろ、宇宙人はそう言った。
何十年か前のビキニ環礁の原爆実験でいくつかの人工衛星が故障し、
放置された人工衛星から放出される電波のせいで彼らの星の人々が
精神を病んでしまっているらしいのだ。
そんな、他所の国の原爆実験やら衛星やらの責任を問われても…
困った俺は部屋の中を見回す。そして、ガスレンジの横のアルミホ
イルを手にとって言った。
「これを衛星に巻き付けて来てください。」
アルミホイルを受け取った宇宙人は天高く昇っていった。
「宇宙船しゃなくて直接移動するのか…」
地球とは違う方向で発展した彼らの文明に金属は存在しないらしい。
次は「運動会」「プロテイン」「パワー」で。
39:「運動会」「プロテイン」「パワー」
08/08/19 13:11:06
「オレは運動会だ。オレはプロテインだ。オレはパワーだ」
「オレは運動会を飲む。オレはプロテインを飲む。オレはパワーを飲む」
「オレは運動会を走る。オレはプロテインを走る。オレはパワーを走る」
100円を入れる。
ボタンを押す。
そうすると、そういうイメージのものが出てきた。
僕は出てきたものを手に取った。
でも、それだけだった。
まじまじと見つめる。
華美な台紙にそういうものが刻印してある。
きっと良いものなのだろう。
だから、他の人に譲った。
すると、喜ばれた。
どうやら良いことをしたらしいのが分かった僕はそこを後にした。
次は「メイド喫茶」「スパルタスロン」「ベスト盤」で。
40:「メイド喫茶」「スパルタスロン」「ベスト盤」
08/08/23 23:41:52
メイド…それは、人間に残された最後の開拓地である。
なんて言ってる場合じゃない。スパルタスロンは何百Kmもの距離だ。
毎日数十Kmも走ると意識も朦朧、そのボーとした頭で水色のドアを開ける。
「お帰りなさいませぇ~」と、色白のウエイトレスが一斉にご挨拶。
喫茶店なのか。まずは一休み。「あ、アイスコーヒーの大ひとつ」「はぁ~い」
机に頭をつけながら、アイスコーヒーをすする。
「うーん、BGMが古すぎるね。『時のないホテル』って・・・昔のベスト版かな?」
などと薀蓄を傾けてると、突然、ごつい体格の男が、突然入ってきた。
「き、君!」と叫ばれ思わず男を見る。すごい迫力だ。「手違いだ、すぐに戻り給え!」
「はあぁ…?」答えると貧血なのかグラリときた。「行ってらっしゃいませぇ~」
目を開けると、見知らぬ病院の天井と、母と妹の顔が見えた。
「あ、意識戻ったっ」「もう、この子は・・・走り過ぎで倒れて・・・どうなる事かと・・・」
「いや、実は・・・」と、言いかけて口をつぐむ。信用される訳がない。
三途の川の直前には、水色のドアの古臭いメイド喫茶があるぞ、なんて。
メイド…それは、人間に残された最後の開拓地である。
※ この曲って…ベスト版に入ってるか?
次のお題は:「天国」「国税」「石油」でお願いします。
41:「天国」「国税」「石油」
08/09/05 16:04:37
「天国へ送ってやる」だからこいつは感謝するべきなのだ。
目の前で助命を懇願し、家族との休暇の予定を述べている丸い肉塊は、
本来であれば天国などへ行けるはずのない丸い肉塊なのである。
「今まで国政に尽くしてきたんだから少しくらい見逃してくれても良いじゃないか」
栄養を吸うだけ吸って、種子も付けずに端から腐り、蠅の唾液さえ
甘く感じ始めているこの肉塊をこれ以上成熟させてどうするというのだ。
肉塊は、石油価格の高騰の原因はサブプライムを野放しにした
アメリカ政府にあるとはいえドル高を維持しなければ輸出産業の衰弱から
大規模な不況を引き起こすのだから、私が国税を掠めて事務所のバイトの
女の子を好きに扱うことは全て悪くないのだヨ実は、と言った。
「なるほど一理ある」というと肉塊は「やっと分かってくれたか」と心から
ほっとしたような気の抜けた表情をしたのでそのまま殺してやった。
仕事を終えると羽を伸ばして、
窓から空へ飛び立った。
神が死んで以来、天使の仕事も泥臭くなったものだ。
次は「いまだに」「残ってたのか」「このスレッド」でお願いします。
42:「いまだに」「残ってたのか」「このスレッド」
08/09/06 11:43:27
既に存在すらないと思っていた懐かしい場所。口の悪い仲間達。
久しぶりに来てみたらお題の出し方さえお粗末になっていた。
泣いた。
喉の奥から「いまだに残ってたのかこのスレッド」なんて言葉がもれた。
こみ上げるのは懐かしさでもなければ感動でもない。
”このやろう、ふざけやがって”それは深いあきらめと少しの怒りだ。
自治坊じみた行為だが私は書かずにいられない。
「>>41よ、それは既に文章だ。お題になってない。ここは三語スレだぜ」
そうして私は書き込みボタンを押したのだった。
次のお題は「さんま」「犬」「富士山」
43:「さんま」「犬」「富士山」
08/09/06 17:04:57
最後の家族である、お父さんまで死んでしまった。
新しい家は愛知県犬山市。天使の降りてくる街というのが売り文句。
雨の日の名鉄犬山線の車内は異様に臭い。始発でも臭い。意味が分からない。
ずっと昔の伊勢湾台風のとき、名古屋の地下鉄は全て水没してしまい、
水抜きに何日もかかったそうだけれど、そのとき全て腐ってしまったのではないかと思う。
大雨波浪警報の中、日本海が見たくなって、名古屋、岐阜、松本、長野で乗り換えて、
鈍行で富山。電車に乗っても雨。降りても雨。そこから海岸へ向かって、タクシーで数十分。
駅裏のタクシー乗り場の看板に悪戯書きがされている。「富士山タクシー」。丈夫そうで良い。
後部座席でもシートベルトを締めるように運転手にしかられた。この座席も臭い。雨のせいだ。
日本海は、暗かった。そして臭かった。こんな雨なんかじゃない、台風がいつか来て、そして去れば、
少しは澄んだ空気の感触を思い出せるのだろうか。
「10年ROMれ」「自治厨乙」「感想スレ行け」
44:お題:「10年ROMれ」「自治厨乙」「感想スレ行け」
08/09/06 19:08:48
あらすじ。父親が「10年ROMれ」とレスした相手は、実の娘だった。
娘は言われた通りに10年ROMり、お陰で108の殺人技を身につけることができた。
それらの殺人技を駆使して、父親を地下駐車場に追い詰めてるシーンからお話は始まる。
「我が娘ッ……!」
「クソ親父ッ……!」
「どうして10年もROMったりした……! どうして自治厨乙と流さなかった……!
そうすれば、10年も引きこもって青春を無駄にすることもなかった筈だ……!」
「若すぎたんだ……あの頃の私はまだ12歳!
どうして40間際のあんたのように上手く大人をやれる……!
あんたの心無い発言に、センシティブなエモーション系マイマインドは徹底的にブロークンされたよ……
この思春期にしか味わうことのできない、痛烈な敗北感が分かるか? 大人になってしまったアンタに!」
「なら、感想スレに行けば良かったんだ……あのスレに書き込めば、自治厨を自治する厨が現れる。
奴らなら、お前の怒りを代弁してくれた筈だ!」
「いいや……あんたは何にも分かっちゃいない。私は、そう、気づいたんだ。10年ROMる過程で。
奴らは、とどのつまりストレスの捌け口を欲しているだけだとッ!
ルールだ、規則だ、何のかんのと口実をつけては、益体も無い主張を垂れ流したいだけなんだとッ!
あんただって、そうだろう!? 将来性の薄いこんな板のこんなスレに書き込んで、
あまつさえ『10年ROMれ』と言ってしまうアンタだって!」
2ちゃんねらー―それは、嘘を嘘と見抜き、罵詈雑言を罵詈雑言で洗い流す鬼の道を行く者。
ましてや、我々が対等なユーザーであるならば(ry
「相撲」「神様」「チャリティーマッチ」
45:「相撲」「神様」「チャリティーマッチ」
08/09/06 19:20:40
ある日、神様は世界の貧しい人々を救うために相撲のチャリティーマッチを開いた。
世界中の神様たちがマワシ一丁の姿になり、世界中の人間が入場料を払ってそれを見物に来た。
だが、神様たちの力が強大すぎたのと、自国の神様が負けたことに腹を立てた人間たちは宗教戦争を起こし、救うはずの貧しい人々は、皆殺されてしまいました。
「映画」「文学」「バイオレンス」
46:「映画」「文学」「バイオレンス」
08/09/06 23:31:09
「なにか面白い文学作品を書こうと思う。なにか、歴史に残るような。なにがいいと思う?」
「……エロティシズム、グロテスク、バイオレンス」
「はあ?」
「その3つがあれば俺は面白いと思う」
「……引くわ」
ひとになにか意見を求める時点で、歴史に残るような作品を書くことなんて出来ないのだときみは気付くべきである。 「なにか面白い映画を撮ろうと思う。なにか、歴史に残るような。なにがいいと思う?」
「……エロティシズム、グロテスク、バイオレンス。18禁で」
「はあ? またそれ? ていうかお前、18禁て」
「その3つ、もとい4つを兼ね備えた映画があれば、俺は勃起」
「ちょっと待て」
ひとになにか意見を求める時点で、歴史に残るような作品を作ることなんて出来ないのだと、きみは本当に気付くべきである。
「なあ。なにか面白い音楽を作ろうかと思う。なにか、歴史に残るような。なにがいいと思う?」
「……いい加減にしてくれよ」
駄文スマソ
「田んぼ」「果樹園」「お爺ちゃん」
47:「田んぼ」「果樹園」「お爺ちゃん」
08/09/08 22:50:54
一年ぶりだった。
段々に広がる田んぼの横を太郎が上っていく。
周りの山々はお握りの様に頂を丸めているというのに、その山にだけ木が残っていた。
その山の上にだけ、柿だけの果樹園があった。
リュックの揺れる音に息切れが勝った頃、太郎の足は緩んだ。
木々の狭間に、動く藁色が見えた。
「お爺ちゃん」
間、
藁帽子を被る影が又動いた。
48:47
08/09/08 22:52:59
次は「焼酎」「米」「ハンマー」で。
49:名無し物書き@推敲中?
08/09/10 17:22:19
「やっていけない」
大好きだった親父は遺書を残して酒蔵で首を吊った。
公には酒も飲めない未成年のまま、俺はこの焼酎の造り酒屋を継いだ。
借金は2000万だか3000万だか…
ぴんと来ない金額が残されていた。
親父は放漫経営をしていたわけではない。
むしろ真面目に昔ながらの方法で清らかな水、無農薬米、そして土中に埋めた甕で長い間、ゆっくりと寝かせた焼酎を作っていた。
親父は誰のために酒をつくっていたのだろうか?
ある大企業メーカーの酒造部のえらいさんが言っていた。
「米焼酎は、芋焼酎と違って丁寧に作ろうが、適当につくろうが消費者は味なんてわかんないんだよ」
へえ~わかんないのか、わかんない奴のために真面目な親父は死んだのか…
俺は復讐のつもりで安い米を仕入れ、水道水で仕込み、甕で3ヶ月寝かせただけで焼酎を出荷した。
気がつくと会社の通帳には9桁の数字が並んでいた。
今、俺はハンマーで甕を割っているところだ。
TVニュースでは「三笠フーズ」が事故米を酒造メーカーに販売していたと報じている。
俺の復讐は終わった。
次は「蒲焼」「高速道路」「ビキニ」で。
50:蒲焼・高速道路・ビキニ
08/09/10 22:10:40
真夏の日差しがボンネットに照りつける。今なら、目玉焼きでも蒲焼きでもこの上で作れるだろう。
私はフリーの記者で、隣県で開かれるA国首脳の歓迎式典に向かうところであった。
その途中、高速道路上で車が急に立ち往生してしまったのだ。
死んだ父の愛用の車で、古いが手入れはいきとどいている。故障したことなど今まで一度もないというのに。
ロードサービスを頼んだが、なかなか来ない。時計を見るが、式典の開始時間はとうに過ぎていた。
(ったく、よりによってこんな大事なときに……このポンコツ!)
車内のテレビには、式典会場の映像が生中継されている。ビキニ姿の美女たちがフラダンスを披露していた。
ようやく係員が到着し点検してもらう。だがおかしいことに、故障している部分はどこにも無いというのだ。
そんなことないだろうと思い、キーをまわしてみると、勢いよくエンジンが掛かった。
(これは一体どうしたことか)
すると、突如テレビの中から乾いた破裂音が響いた。
式典に乱入したテロリストたちにより、会場は一瞬で血の海と化した。
もし時間通りについていたら今頃私も……
フロントガラスに、一瞬父の顔が見えた気がした。
51:名無し物書き@推敲中?
08/09/10 22:15:38
彼女たちは、海外からこの日本に留学しに来たはずだった。
もちろん働きながら得るその収入がこの国の法律では法外に安い最低労働賃金以下であるとは知る由もなく
故郷で待つ家族にとっては貴重な仕送りであったのだから多少、過酷な労働でも文句は言わなかった。
ただ、彼女たちがひとつ悔しい思いをしていたのは『夢』が壊れたことだ。
コンナ素晴らしい国に来たというのに奴隷のような扱いで、故郷に戻ってから役に立つはずだった技術研修も
絵空事に終わり、毎日毎日さんまの蒲焼の缶詰とご飯だけの生活、「お金のために生きてるんじゃない」と
いう娘もいたが、彼女たち自身それが真実ではないと気付いてもいた。
それでも故郷に送金できているうちはましだった。
雇い主の不正と不法行為で彼女たちは入国管理局によって強制退去させられたのだった。
成田に向かう高速道路の社内で、入国管理官は海外から来た娘たちが不安そうに財布の中の写真を
見つめているのを見た。
写真の中には家族とともにうつるビキニ姿の女の子の笑顔を見つけた。
この笑顔はもう戻ってこない。
彼女たちの青春と夢を奪った私利私欲を管理官は心の底から恨むのだった。
次は「高原」「星座」「殺人未遂」で。
52:名無し物書き@推敲中?
08/09/10 22:15:50
お題決めてなかった、次は「自転車」「胸焼け」「誘拐」で。
53:51
08/09/10 22:27:22
51のお題は無視してください。
54:名無し物書き@推敲中?
08/09/10 22:33:59
>>44
ワロタw
55:名無し物書き@推敲中?
08/09/11 23:10:01
【社会】中国人実習生に対する「人権侵害」の疑い…日ポリ化工を告発 - 外国人労働者奈良保証人バンク
スレリンク(newsplus板)
1 名前: ◆SCHearTCPU @説教部屋に来なさい→胸のときめきφ ★[tokimeki2ch@gmail.com] 投稿日:2008/09/11(木) 11:19:06 ID:???0 ?2BP(0)
外国人技術者の技能向上を目的とした国の制度を利用して来日し、
ユニットバスメーカー「日ポリ化工」(本社・奈良県香芝市)の
同県山添村の工場で働く中国人実習生5人が、同制度で禁止されている
研修時間外の残業を求められたり、劣悪な環境で
働かされて人権侵害を受けたとして、同社の不正行為の認定を求めて近く、
大阪入国管理局へ告発することが11日、分かった。
56:名無し物書き@推敲中?
08/09/20 12:28:23
一輪車の嫁は自転車だった。結婚前は大恋愛だったが、いざ生活を始めると、
二人の関係は一変した。自転車は一輪車に、あなたは刹那的で余裕がないと非難した。
一輪車にも自覚はあった。だがどうすることもできなかった。結婚三年目に、二人は離婚した。
一輪車はキックボードと再婚した。キックボードは一輪車を褒めた。あなたに遊びが
ないなんて嘘よ。だって、実用目的で一輪車に乗る人なんて、サーカスを除けば
どこにもいないんだから、と。一輪車は感激し、キックボードと幸せな家庭を築いた。
自転車はリヤカーと再婚した。自転車はリヤカーの安定感を愛した。リヤカーは
自転車の速さと、スマートさを愛した。二人は連結して子供を作った。子どもの名前は
三輪車といった。
あるとき、やさぐれた凶悪犯が現れた。三輪オートである。三輪オートは若かりし頃、
実を粉にして働いたが、今では社会に顧みられず、人と話すときも相手はまるで、
見せ物を見るような目で彼を見るのだった。彼は町の公園で、一人で遊ぶ三輪車を
発見した。彼は三輪車を誘拐し、人知れず養子にして可愛がった。自転車とリヤカーは
火の消えたような生活をするようになった。
数年後、偶然一輪車が三輪車と出あった。三輪車には自転車の面影があった。彼は
風の噂で、自転車の子が行方不明であることを知っていた。彼は三輪車をパトカーの
元に連れて行き、身元の照会を頼んだ。自転車とリヤカーがやってきて、親子は感動の
再会を果たした。三輪オートは逮捕された。自転車は一輪車に感謝した。一輪車は
照れていった。
「ぼくらは不幸な別れ方をしたけど、いつも君の幸福を願っていたよ」「わたしもよ」
彼らは友人として家族ぐるみの付き合いをするようになった。その年の暮れ、自転車
夫婦のもとから一輪車夫婦の元へ、高級オイルの差し入れがあった。乾杯した
一輪車とキックボードは、オイルの差しすぎでベタベタになってしまった。二人は言った。
「ああ、美味いオイルも飲み過ぎると胸焼けするね」「ほんとね」と。
次は「刺身」「とんぼ」「ボールペン」で。
57:名無し物書き@推敲中?
08/09/25 00:24:01
妻との関係がぎくしゃくしだしたのは、多分あの出来事がきっかけだ。
結婚して間もない頃だった。
「お前のお袋さんは娘に何を教えて来たんだ?」
魚を満足に捌けない妻に向かって言った言葉だ。ほんの軽口、冗談のつもりだった。
刺身なんか作れなくても、出来合いのもので良かったのに。
妻は顔を青ざめさせ、何も言い返さなかった。
「ちょこれーと。とっとっとっと…」
何も知らない無邪気な娘の姿に、目頭がつんと熱くなる。
「とーまーとっ。とっとっとっと…ママのばんっ」
娘が勝手に始めたしりとりに、妻が笑顔で答える。
「じゃあ、トンボ」
「とーんぼっ」
妻がテーブルに置かれた紙を目で示した。
「ぼっぼっぼっぼ…パパのばんっ」
本当にこの生活が終わるのか?
ならば、娘は譲らない。この子がいなくなったらもう何も残らない。
絶対これだけは譲れない。
「じゃあ、ボールペン…」
「やったーっ! パパの負け!」
次は「双眼鏡」「眼鏡」「顕微鏡」
58:名無し物書き@推敲中?
08/09/28 23:37:26
「もっと早く警察に知らせておくべきでしたな。
そうすれば、大切な家宝を奪われることもなかったでしょう」
「そ、そんなことを言われましても、盗まれたことに気づいたのはつい今しがたですし……」
「やれやれ。わしが見たところ、これは怪盗555号のしわざ。
奴は盗みの前に必ず予告を出します。この家にも予告は届いているはず」
「予告状ですか……そのような物は届いていないと思いますが」
「予告状というより、予告ですな。そしてそれは家宝が納められていた
金庫がある場所、つまりこの部屋にあるはず」
「ええっ、そのような物は見当たりませんが」
「君の目は節穴かね。むっ、ありましたぞ、これだ」
「……米つぶに見えますが」
「この米つぶに細かな文字で書いてあるはず。怪盗555号の盗みの予告がね。
そのなまくらな眼鏡を外し、この顕微鏡でよく見てみなさい」
「警部さん、これ、双眼鏡じゃないですか。近くは見えませんよ」
「ふむ、君のつっこみどころはそこかね」
次は「橋」「階段」「交差点」で。
59:名無し物書き@推敲中?
08/09/30 14:16:24
あれ?―「?」マークを頭に載せたまま、自分を意識した。
見ると目の前に人の列がある。
長い長い列が階段に向かって伸びている。
人々は大抵が白装束だったが、中には普段着のままの人もいた。
もしや、これが天国への階段っていうやつ?
天を仰いでそう思った瞬間、声が聞こえた。
「おまえは死に損ないのようだ。この階段を上ってゆくと、
橋が架かっておる。よいか、渡っている時に下を覗き込んではならん」
果たして声の言うとおりだった。階段を上ると橋があった。
何事もなく橋を渡り終えようとした―その時であった。
足元でキャンキャン犬が吠え始めたのだ。
飼い犬のタロウに違いないと悟るや、
居てもたってもおれず、とうとう橋下を覗き込んでしまった。
水面に、タロウが映っていた。よく見ようと顔を水面に近づけると、
タロウがペロペロ顔を舐めてきた。
くすぐったいや…
すると人の声が聞こえた―誰かの声が。
「君、大丈夫かい?」
背中のアスファルトを意識しながら目を開けた。
見回すと、交差点だった。大の字で倒れている。
「君、車で撥ねられたんだよ。救急車が来るから動くなよ」
別の誰かが言った。
次「気圏オペラ」「星座」「デジャヴ」
60:名無し物書き@推敲中?
08/10/04 01:31:21
(注:気圏オペラ=宮澤賢治の造語。宇宙を舞台に見立て、すべての命を役者と見なしたと思われる表現)
ついに人類が宇宙に出る瞬間が来た。しかも、それが自分だとは何たる幸運だろう。
幾多の船内実験に数十時間を費やし、ついに私が夢見た・・・いや、全人類が夢見た瞬間がやってきた。
それは宇宙服に身に包んだ船外活動だ。
「いいか、不安で一杯だと思うが、訓練を思い出せば問題無い。冷静にやれよ」
国籍の違うキャプテンが言ってくれたが、キャプテンは勘違いをしている。
私には不安をこれっぽっちも抱いていない。あるのは喜びと・・・なんだろう、不思議な気持ちがもう一つ、自分でもわからないが存在しているらしい。
外に出て、私は目を見張った。
宇宙服の内部にある無線の声が一切耳に入らないくらいだ。
360度、星、月、星、星、太陽、星、星・・・
見慣れた星座も、地上ではただの配列だが、ここでは違う。まさに巨人であり、まさに白鳥であった。それほど、魂を感じるのだった。
『・・・』
・・・そして、目の前の地球。
・・・・・・それを真正面から見ると、こんなにも小さく、こんなにも大きく、こんなにも感動的なのかと驚いてしまう。
・・・・・・・・・この景色をどこかで見たことがある気がする。
『・・!』
・・・産まれる前、地上に降りることを決意した日の、デジャブなのだろうか・・・
・・・・・・幾万の命が刹那を生きるためにドラマを繰り返す、
この気圏オペラを見るたった一つの特等席に座ること・・・
『!!!か!!だ!』
・・・それが私に与えられた運命のすべてだったのだ・・・・
『・・・命綱を自分から切るなんて! 今助ける!助けるから動くな! 今』
私は通信を切った。そして、産まれ出るときと同じように、この星へと降りていった。
次は「ギター」「猫」「花火」
61:バンネン ◆FoInddBoZI
08/10/05 05:26:35
夜、寝ころびながら壁に立てかけたギターに手を伸ばしポロンと爪をたてた。
窓の外、塀の上で器用に足を折りたたんで目を瞑っていた野良猫が頭を持ち上げた。
黒い空が赤と黄色を青に輝いた。猫の頭の向こうで丸い花火が咲いている。
ヒューと音がしてボンと弾けた。猫が向こうを向いた。
とうもろこし お米 キャッサバ
62:名無し物書き@推敲中?
08/10/05 11:08:14
第25回全国カレーフェスタのために、カレーショップ「ダルシム」のメンバーはミーティングを繰り返していた。
「斬新なナタデココのカレーはついに完成した。カレーの概念をひっくり返す傑作だと思う。」
「しかし・・・問題は『お米』の方ですね。」
「うむ。普通のカレーと同じようにライスにかけると、まるでフルーツポンチとご飯を混ぜたような、ものすごい違和感があるんだ。」
「何か、代わりになるものはないかしら・・・ んーと、タイ米、大麦、大豆、とうもろこし、ソラマメ、クスクス・・・」
「それ、どうだろう?」
「え? クスクスですか?」
「いや、とうもろこしだ。それならドライカレーにも入れるから、合うんじゃないだろうか?」
「やってみましょう。」
さっそくやってみたが、米にかけていないコーンとナタデココのカレーになってしまい、物足りなかった。
「ダメか・・・もっと、穀物に近いものがいいな。」
「芋類はどうでしょうか? ジャガイモ、サツマイモ、山芋、キャッサバ、タロイモ」
「うーん、とりあえず全部試してみようか。」
さっそく全部の芋で試作品を作ってみた。
「・・・そういうわけなんです、刑事さん。自分たちはキャッサバに食用じゃない品種があり、シアン化化合物の毒を持っているなんて知りませんでした。
まさか試食した助手が死ぬなんて・・・カレーで人が死ぬなんて思ってもいませんでした。」
63:名無し物書き@推敲中?
08/10/05 11:08:54
次を忘れた。次は「コンピューター」「幽霊」「冬」
64:名無し物書き@推敲中?
08/10/10 02:15:14
ねえ、あなた、幽霊って信じますか。
そんなもの、いるわけないって?
ふふっ、ところが幽霊は存在するんです。
私がそう言うのだから、間違いありません。
そう、私は幽霊。コンピューターの幽霊です。
それもあなたに捨てられたパソコンの幽霊なんです。
あ、信じてませんね?
でも本当にコンピューターにも魂があるんですよ。
夏の暑さにも冬の寒さにも負けず共に頑張って来た私を
あなたは簡単に捨てた。
いえそんな、恨んでるなんてことは無いです。本当です。
このパソコンは快適ですか。あ、そんな質問も無意味ですよね。
すぐに飽きてまた新しいのを買うんですもん。
でもね、安心してください。例え容れ物は変わっても、
魂は不滅です。私はずっとあなたと一緒です。
次は「アイドル」「焼酎」「麒麟」
65:名無し物書き@推敲中?
08/10/14 20:44:12
満月の綺麗な夜だった
眩しいくらいにひかるその光で、
暗く濁った俺の目を刺した刹那
俺のアイドルは、永遠にそれとなった
なあ、麒麟なんて存在するのかよ
なんて話しかけて、買えなかったキリンビールの館を蹴り
ワンカップ焼酎をすする
わらいながらそれを見上げた途端
ぶ厚くて黒いかたまりが、ちいさなそれを覆って、もうどこにいるのかわからなくなった
ああ、もうおわりなのかきょうは、はやいな
やがて俺の頬が濡れて、焼酎が増えた
「ほくろ」「笑顔」「その声」
66:名無し物書き@推敲中?
08/10/14 23:15:27
なあ、あいつはどこだ? 隠さないでくれよ。
え? そんなはずねえだろ、昨日の夜はぴんぴんしてたぜ。
はあ? 何で俺があいつを殺さなきゃならない。
あいつだけじゃない? 他にも殺した? 大勢?
それじゃあ俺は殺人鬼か? バカ言うなって。
第一あいつは生きてるし、昨日も一緒だったんだぜ。
何ヶ月も前に死んでるはずがないんだよ。
丸顔に右目の下に泣きぼくろ。間違いようがないよ。
特に美人じゃないが、笑顔が可愛いんだ。
ん? 刑事さんも目の下にほくろがあるんだな。
あ……? ははーん、こんなところで何してるんだ?
おいおい、とぼけたって無駄だって。何かの遊びか?
ちょっと化けたからって、その声だけは誤摩化しようがないぜ。
ずっと探してたんだぞ。あ、昨日会ったよな。あれ? どうだったっけ。
おい、どうしたんだよ、何で逃げる。逃げるなって。逃げるなーっ!
「怪盗」「強盗」「泥棒」
67:アシュレー ◆r1if.ivhdg
08/10/16 23:24:06
「この強盗め!」
この家の主と見受ける白髪の男はそう言いいながら日本刀のさやを投げすて、
切っ先を向けてきた。しかし刃は部屋の明りを受けながら小刻みに震えている。
私は初老の男を見つめ、ゆっくりと右手をあげ、訂正を求めるために人差し指
を伸ばして言った。
「怪盗と呼んでほしいものですね」
ひとつ微笑みかけると、老人は一歩下がった。意図せず引いた自分に驚くよ
うに目を見張り自分の足元を確認している。顔を上げるとうわずった声で口走
った。
「何言ってんだ! どっちにしろ泥棒風情じゃねえかよ」
この邸宅の主ならばもう少しましな口の利き方ができると踏んでいたが、
「どうやら、ずいぶんな小者のようですね」
思考の最後だけが声に現れた。
「ふざけるんじゃねえ!」
男は刀を大きく振りかぶった。仕方ない、私は人差し指と中指で袖口からカ
ード抜き、手首をしならせて放った。カードが空気を裂く。振りかぶった刀が
最上段に到達する前にカードは男の首をかすめて奥の壁に突き刺さる。
男の首から血しぶきがはぜた。
振り上げた刀はそのまま後ろへと落ちてゆく。男も刀に引っ張られて反っく
り返った。
「こんなことをさせないで欲しかったですね」
これでは確かに強盗と呼ばれても仕方ないかもしれない。そう思うと憂鬱だ
った。
ベンジャミン ルクソール アセトアルデヒド
68:名無し物書き@推敲中?
08/10/17 07:16:09
石を積み上げただけの小さな墓に小さな花束を供えた。
「ベンジャミン……君の犠牲は無駄にしない」
ぽつりとつぶやき、手を合わせる。
アセトアルデヒドなどの有毒物質は今や世界的な問題となっている。
この墓の下に眠る彼もまたその犠牲者と言えるだろう。
「そろそろ出発だ。エジプト行きの便が出る」
後ろから友が肩を叩いた。
「ああ……」
「元気出せ。落ち込んでる暇なんか無いぞ」
「ああ……」
「今度の発表はルクソールだったな。観光にもいいところだ」
「ああ……」
「それからな」
「ああ……」
「モルモットにいちいち名前付けんな」
次『くるみ割り』『ブラインド』『ハンカチーフ』
69:名無し物書き@推敲中?
08/10/21 03:36:10
「どうだい仕事には慣れたかい? キョウコちゃん」
彼女が仕事をやりかけたとたん、部長の妨害が入るのはいつものこと。
「ああ、そういうのは慣れてる山田さんにやってもらうといいよ。それよりお茶が欲しいな。
君の入れたお茶は本当に美味しいね。本当、いい奥さんになれると思うなあ」
新人の頃はちゃんと仕事をこなして認めてもらいたいものなのに、毎度この調子だ。
「仕事が終わったら一緒に飲みに行こうよ、親睦を兼ねて。ね? ね?」
「部長……私、お茶をいれる以外にも特技があるんですよ」
「ん? 何かな? 料理とか? それともお花?」
「これです」と言って、彼女がポケットから取り出して見せたのは二つの胡桃。
ミシッ……ビキッ
握りしめられたこぶしから胡桃の残骸がポロッと落ちる。
彼女がにこっと笑い、「くるみ割りです」と言ったとたん、
部長は何やらわけのわからないことを言いながら、脱兎のごとく部長室に退散した。
そしてブラインド越しにこっそり彼女の様子を伺いつつハンカチーフで汗を拭っている。
悪い人じゃないんだけどね……
次『発泡スチロール』『扇子』『オーケストラ』
70:名無し物書き@推敲中?
08/10/30 21:04:06
『発泡スチロール』『扇子』『オーケストラ』
富豪が考えたゲームのために、三人の若者が連れてこられた。
報奨金は富豪にとっては遊び程度の額でしかなかったが、
不況に喘ぐ若者たちにとっては大金だった。
真剣な面持ちで前に立つ三人に、富豪はでっぷりと太った腹をさすりながら言った。
「ここに棒がある。使い方は自由だ。一番心を動かした者を勝ちとしよう。
三日後に審査をする。よく考えて使うように」
はい、と返事をして飛び出していく若者たちを眺め、富豪は鷹揚に頷いた。
これでしばらくは退屈しないで済みそうだ。
三日の後、館の特設ステージに緊張した若者たちの姿があった。
審査員席の革張りのソファーには富豪がグラスを手に座っている。
その両脇から、肌も露わな美女たちが腕を巻き付け、しな垂れかかっていた。
一人目の若者はオーケストラを引き連れて戻ってきた。
棒をタクトに、様々な名曲を奏でた。富豪は口を開けて聞き惚れた。
「すばらしい。気持ちが晴れ渡るようだ」若者は一礼して下がった。
二人目の若者は馬に乗って戻ってきた。
手には弓、矢の代りに棒を使い、見事に的を射落とした。
さらに目の前を駆ける馬から富豪の膝へと扇子が投げ込まれた。
「流鏑馬か。扇子とは縁起がいい」満足げな富豪に一礼して二人目も去った。
三人目の若者は発泡スチロールの板を持って戻ってきた。
黙礼し、おもむろに棒の先を板に擦りつけた。ギギイイ、耐え難い不協和音が響き渡る。
「うひゃああ、これはひどい、やめろ、やめないか」両手で耳を塞ぎ富豪が喚いた。
「おまえは失格だ!すぐにここから出ていけ」富豪は怒りにまかせ、グラスを投げつけた。
飛んできたグラスをひょい、とよけ、耳栓をはずして若者が言った。
「一番心を動かしたのはわたしのようですね。……わたしの勝ちです」
次「ひるね ごみばこ ふるいにっき」
71:名無し物書き@推敲中?
08/11/12 15:55:16
ちかちゃん、昼寝ばかりしてないで、天気がいいんだからお外で遊んできなさい。
おもちゃや、食べた終わったお菓子の袋など散らかし放題の部屋に
小学生の娘があられもない格好で寝転んでいる。
「まったく、こんなに散らかして…。ゴミはちゃんとゴミ箱へ捨てるようにって前も言ったでしょう」
むくっと起き上がり、寝ぼけ眼を右手で擦りながらぼーっとしている娘を横目に
私は仕方なし、テキパキと子供部屋を片付けはじめた。
あちこちに散らばるおもちゃを拾い集め、押入れの収納ケースにどさりと入れる。
ふと、ケースの隙間に学習帳のような古いノートが目に留まる。
なんでこんなところにノートが…と不思議に思い手に取ると
それは私が小学生の時に書いていた古い日記だった。
懐かしく思いぺらっと日記をみひらく。
○がつ×にち はれ
きょうも、おひるねをしていたら、ママにしかられました。
あと、ごみはごみばこにすてるようにいわれました。
(こ、これは、子供に見せられない……)
私は子供の手の届かない棚の奥にそれをしまうとソーッと押入れの戸を閉めた。
何食わぬ顔で振り返ると娘がにたーっと嫌な笑みを浮かべ私を見ていた……。
次「小春日和」「爆発」「ネクタイ」
72:71
08/11/12 16:08:07
訂正
最初の一行目 「」 でくくるの忘れました。
73:名無し物書き@推敲中?
08/11/12 20:39:36
「小春日和」「爆発」「ネクタイ」
初夏、鮮やかな緑の中、目を見開いたばかりの赤ちゃんが笑顔を爆発させる。
夏。早朝、子供達がラジオ体操に集まった。眠い目を擦り挨拶。公園。スタンプカード。
台風直下、青年は竜に見立てた滑り台に、赤い傘で突撃する。
体育の日、しょぼくれた小父さん。一人息子の運動会に向かう途中。ネクタイをゆるめる。
小春日和。老婦人の夏。季節外れの麦わら帽子。
「ありがとう」そっと、優しい声がして私は抜かれた。
ここの感想スレってどこかにあるの?
この駄レスには感想不要。
次『赤ちゃん』『スタンプカード』『宇宙空母』
74:名無し物書き@推敲中?
08/11/13 05:02:27
『赤ちゃん』『スタンプカード』『宇宙空母』
「お願いします」とスタンプカードを出すと、天使はにっこり笑った。
「よくがんばりましたね。これで2万個…犬にな生まれ変われますよ」
だけど彼は頭を振る。「いえ、人間に転生できるまでスタンプ貯めます」
「でも…人間だとあと1億9998万個も要りますよ、いいんですか?」
いいんだ、待とう。もう一度、人間として現世に生まれ変わるために!
犬なんかで妥協しちゃいけない。鎖に繋がれて残飯をもらう人生…あ、犬生か。
以前は失敗したな、バクテリアで生まれて、2分で熱湯で即死だもんな。
そして気が遠くなる程の後、一人の赤ちゃんがめでたく誕生した。
「なんだか…疲れた顔した子だわ」
「とりあえずセンターに行こう、政府がうるさいしな」
センターへの細い通路をゆくと、待ち構えていた登録官が事務的に言った。
「これで4人、ノルマはあと26人だ。」
カーテンを引くと、窓の外には見慣れた宇宙があった。
「人類の保存こそが使命だ。この宇宙空母が、6億光年の彼方に着くその日まで。
例えそれが狭い船室での一生でも。継ぎ穂という意味だけの人生でも!」
※文章まで疲れてる・・・
次のお題は:「赤頭巾」「スタンプラリー」「酵母」でお願いしまふ。
75:名無し物書き@推敲中?
08/11/13 14:05:00
>>73さん↓に完走スレあります。
この三語で書け! 即興文スレ 感想文集第12巻
スレリンク(bun板)l50
76:名無し物書き@推敲中?
08/11/13 15:10:45
少女は自分を暖めようと一本のマッチに火をつけた。
するとマッチの炎と共に暖かい暖炉や、こんがりと焼けた七面鳥、酵母でふんわりとしたパン、
綺麗に飾られたクリスマスツリーなどの幻影が目の前に現れた。
しかし、マッチの火が消えると同時にその幻影は消えてしまった。
もう一本マッチに火をつけるとそこには自分を可愛がってくれたおばあちゃんの幻影が現れた。
少女はそのおばちゃんが消えないように持っているマッチ全てに火をつけた。
するとそのおばあちゃんは少女を光と共に優しく抱きしめてくれた……。
「おわりました~」
その少女を演じていた女の子は元気よくそういうとその部屋の出口付近に備え付けてある
無人のスタンプマシーンの差込口にカードを挿入した。
「キーキーガチャン」スタンプを押す機械音が鳴り響く。
「これで4つめがおわったわ」
女の子はそういうと次の扉を開けた。そこは森の場面のスタジオになっていた。
手前のつくられた切り株の上に赤頭巾とぶどう酒、お菓子入った籠、それから何か書いてある紙がおいてあった。
彼女はその紙を手に取り、目を通す。
「次はグリム童話ね……あぁおおかみのお腹に入るのいやだなぁ」
そういいながらも赤頭巾をかぶり、お菓子とぶどう酒の入った籠を下げ、森の道を歩いていく……。
ここはバーチャル童話アトラクション施設。
彼女の童話スタンプラリーの旅は続くのであった。
次は「黒酢」「万年筆」「シュラフ」←寝袋のことです
77:ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2
08/11/13 15:49:22
「黒酢」「万年筆」「シュラフ」
白い壁と床の通路を歩き、自動扉を抜けると、淡いグリーンに統一された落ち着きのある部屋に出た。
俺もついにシュラフ生命社、医療センターの厄介になる時が来たのだ。
完全癒し系のきれいなお姉さんに一通りの説明を聞き、いまどき珍しい年代物の万年筆で承諾のサインを済ます。
体の最終チェックを受け冬眠剤の入ったジェル状の液体を一気に飲み干す。
同じサービスを受けている友人に聞いていた通り黒酢の味がした。
準備が完了し全裸になった俺はシュラフ(寝袋のこと)装置の中に体を滑り込ませる。
これで俺は6ヶ月間極低温状態で眠ることになる。
半年眠り、1週間起きてまた半年。
そんな暮らしをこれからずっと続け俺は待ち続ける。
末期癌の俺にはこの道しか残されていない。
治療法が見つかる未来の世界を待ち続ける。
プチタイムマシンの力を借りながら…
78:ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2
08/11/13 15:56:42
次は「レシート」「お情け」「エラー表示」で!!
79:名無し物書き@推敲中?
08/11/13 17:31:10
「レシート」「お情け」「エラー表示」
その男が店の自動ドアからでたとたん僕は待っていましたとばかりに声をかけた。
「あの~すみません、そのカバンの中みせてもらえますか?」
男は声をかけられると一瞬足早に去ろうとしたのだが、それより先に僕の手が彼の右腕を掴んでいた。
明らかに動揺しているその男に力のこもった視線を送り、語気を強め強要するとしぶしぶその男はカバンの中身を見せ始めた。
中には歯磨き粉が三本、単三電池が5個、それからビタミン剤が乱雑に放り込んであった。
「この商品のレシートはありますか?」
彼は口を噤むしかなかった。現場も確認していたし、当然のことである。
「万引きしましたね……犯罪ですよ」低くそして重みのある声で彼にそういうと
彼は、家の事情やら、不遇な身の上を目に涙を溜めて話し始めた。
お情けで許してもらおうというのか…よくあるパターンだ、甘い。
僕は彼の腕を強く握ったまま、次の台詞を言おうとした……とその時、後ろから警備の男が寄ってきた。
「どうかなさいましたか?」胸板の厚い屈強そうな警備の男が言った。
「この人万引きをして逃げようとしてました」
「そうですか、ご協力ありがとうございます。ところであなたは?」
「け、警備のものです…・・・」
「あれ……おかしいなぁ、警備はウチの会社が一任されてるはずですけど……IDカードありますか?」
あらかじめ用意をしてあったカードを男に渡すと小型のスキャナーらしきもので、カードを読み込み始めた。
警備の男は不思議そうな顔をしながら何度か読み込みを試みたが、エラー表示がでるだけだった。
僕が偽造したものだから当然である。
「すみませんが、あなたも一緒に事務所にきていただけませんか?
最近万引き犯を捕まえた振りをして、その人を強請る犯罪があると通達がきてますので……。」
後悔したが時既に遅し、スーパーの事務所で事情聴取をされたあと、
万引き男と仲良くパトカーに乗る羽目になったのであった。
※大分削ったのですが、長くなってしまいすみません……。
次は「露天風呂」「円高」「カラス」でおねがいします。
80:「露天風呂」「円高」「カラス」
08/11/14 09:03:21
旅行社貸し切りの大型バスが、駐車場に到着した。
ここは日本有数の温泉場で、日帰り温泉としても人気が高い。
小旗を掲げたツアーコンダクターが団体客を先導しながら
露天風呂の方へと小走りに駆けていく。
「えーみなさん、遅れないでついてきて下さいね。ええと、ハリーアップ!こっちこっち」
案内人が片言の英語混じりの日本語で注意を促した。
見れば客たちは様々な人種で、聞こえる言葉も日本語ではない。
「ここの温泉は30分で出発です。サーテイミニッツ、オッケー?
じゃあ解散、楽しんで下さい。レッツエンジョイ!」
通じたのかどうか、外人たちは慣れた様子で脱衣所の方へとなだれ込んでいく。
客の姿が見えなくなると、旅行社の社員は自販機のホットコーヒーを手に、
バスの運転手へと話しかけた。
「お疲れ様です。急がせて済みません。次のほねほね温泉が宿泊地になるので、
今日の仕事も終わりです。もう少しがんばりましょう」
「ありがとうございます。私はいいですが、お客が疲れたでしょう。
今日だけで7カ所の温泉巡りなんてどう考えても無理がありますよ」
客たちは疲れ切っていた。風呂に入ってものんびりとくつろぐどころではない。
どこの温泉でも、写真を撮って大急ぎで湯に浸かり、せかされるように上がって
バスに乗って次の温泉へ、と慌ただしく旅立つのだ。
「仕方ないですよ。もともとは十日かけて温泉巡りをする筈が、
円高で滞在費がかかるからって、三日で同じコースを回ることになったんですから
・・・・・・あ、戻ってきた。お疲れさま、カムヒヤプリーズ」
客がぞろぞろと戻ってきたのを見て、ツアーコンダクターは笑顔で小旗を振った。
「じゃあ次に行きます。次は宿泊地なのでのんびりと温泉を楽しんで下さいね。
ええと、ネクストプレイスイズノットカラスノギョウズイ・・・英語でなんて言うんだろう」
通じるとも思えないあやしげな英語で、ガイドはにこやかに語りかけた。
全員が乗り込むと、バスは疲れ切った外人客たちを乗せ、再び道を走りだした。
「トースト 鉢植え 携帯電話」
81:お題「トースト」「鉢植え」「携帯電話」
08/11/14 18:23:44
『ベランダから外を見ろ』
と、一本電話を掛けるだけで良い。
性格上それだけで十分なのは、事前に把握済みだ。
興味をそそられた彼女は、ベランダに続く雨戸へ手を掛けるだろう。
そして、それを開き一歩踏み出した瞬間、装置は連続的に作動する。
……あらかじめ漏電している洗濯機のケーブルを、雨戸の傍へ引っ掛けておいた。それは、雨戸が開かれることによって外れ、ちょうど彼女の足に接触する位置にある。
それに触れることによって彼女は感電し、一時的に筋肉が硬直する―足は段差を踏み越えようとしている途中だ―止まろうと思っても彼女は止まれずに、ベランダの手すりへ激突するだろう。
そのショックで手すりの外側に吊るされた鉢植えの支えは外れ、重さ一キロ近い物体は地上二十メートル下の地面へと叩きつけられる。
そのとき、下を歩いているのは―
僕は携帯から電話をかけた。
5コール目で電話に出た彼女に告げる。
「ベランダから、外を見て」
「どうしたの? 忘れ物? ……本当なら出てあげたいんだけど、ゴメンなさい。トーストを焼こうと思って、トースターのスイッチを入れた途端、ブレーカーが落ちちゃって」
「あ、そうなんだ。別に大した用事じゃなかったんだ。……母さん」
「なに?」
「行ってきます」
僕は携帯を切って、真上を見上げる。
目を細めると、二十メートル先にある鉢植えの底が小さな黒い染みのように、空へ浮かんでいた。
行数オーバーした上に、動機まで書ききれなかった・・・orz
「トイレ」「高速道路」「ハンバーガー」
82:ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2
08/11/16 04:30:13
「トイレ」「高速道路」「ハンバーガー」
午後4時、10歳の男の子とその両親を乗せた1台の白いカローラが高速道路を走っていた。
遊園地で思いっきり、楽しく過ごしたはずなのに、なぜか、その車は、くすんだ白色をしてサービスエリアへ入っていった。
「体は勝手なもんだな。金策の心配をしなくていいと決めた途端、血便、止まっちまった…よ、あはは…」
今日で、すべて、何もかも終わるのだと決心した父はトイレから出て息子達の待つマクドナルドへ向かう。
「父ちゃん!母ちゃん!今日は、すごくたのしかったね」
息子は父がすすめた一番高いメニューを断わって普通のハンバーガーをほおばりながら父と母の瞳を交互に見つめた。
「これはね、今週で終わりなんだって!来週からはお父さんとお母さんの人形が付いてるんだよ!」
ハッピーセットのキャラクター人形がおどけた動きで踊りながら首を振っていた。
「…来週も…ここに来て…親子全部…集めたい・け・ど…」
息子は父と母の瞳を交互に見つめた後、つぶやいた…
「で・も…もういいんだ…も・う 終わっても…」
父と母は、いつのまにか成長し、すべてを納得してなお微笑みを絶やさない息子にショックを受け、言葉を失った。
最初は父と母が泣き、その後、息子の眼からも涙がこぼれだし、3人は涙が枯れるまで人目をはばからず泣き続けた。
10歳の男の子とその両親を乗せた1台の白いカローラは、もう帰らないハズだった家へと向かっていた。
夜も遅くなり、まばらに光る暗い街灯に照らされているだけのはずなのに、なぜか、その車は、澄みきった鮮やかな白色をしていた。
83:ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2
08/11/16 04:34:23
ちょっと1行が長くなってしまいました。
次は「色あせたタオル」「夕刊」「血豆」で!
84:名無し物書き@推敲中?
08/11/22 07:40:07
「色あせたタオル」「夕刊」「血豆」
「血豆ぼ~ん!」
ステテコ、ハラマキ姿のオヤジが俺の前を遮る。
「ちぃちぃまめまめちぃまめまめ~
ちぃちぃまめまめちぃまめまめ~
ちぃちぃちぃちぃ……武雄ぼ~ん!」
俺はにこやかな顔で軽く挨拶をする。
須藤さんはこちらの挨拶など眼中にない。
くるっと腰から方向転換し、向こうから来た買い物袋を下げた女性に向かって進んでいく。
「ちぃちぃたけたけちぃたけたけ~……」
斜向かいのお宅である武田さんの奥さんにターゲットを変えたようだ。
玄関前にて腕時計のストップウォッチを確認する。
15分23秒…平均並みのタイムだ。
首から下げた色あせたタオルで汗を拭うとポストに差し込まれた夕刊を手に取る。
一面の見出しは、元総務省事務次官夫妻殺人事件。
物騒な世の中になったものだなどとぼんやり思いながら、
俺は日課であるランニングを終えた。
次は
「エグゼクティブチェア」「アスピリン」「狐」でお願いします。
85:名無し物書き@推敲中?
08/11/30 04:21:22
86:sou
08/12/01 23:38:17
「それでは今回の商談は成立ということで。今後ともお互い良きパートナーでありますよう」
恰幅のいいタヌキ親父、いや、オヤジの狸達は満足気に太鼓腹を叩きつつ去っていった。
部屋に残された一匹の狐は、深呼吸してエグゼクティブチェアに深く腰掛けた。
「はあ、いつもながら大きな商談は肩が凝る」
大理石のテーブルに置かれたケースから油揚げを取り出し、細く丸めて口にくわえ、火を点けた。
煙をくゆらせ、目を細める「ああ、香ばしい……」
ここは世界に名を響かせるキタキツネ商事の社長室。
遺伝子組み換えコーンからセミコーンダクターまで、あらゆるものを扱う大企業のトップの部屋。
社長狐であるコンタロウは、せわしない業務のなか、束の間の休息に浸っていた。
だが、その貴重な静寂は、一本の内線電話によって引き裂かれた。
「社長! 大変ですにゃあ!」秘書であるタマ子の引きつった声が鼓膜に刺さる。
同時に、部屋のドアを蹴破るようにゴリラの群れが乱入してきた。
「ウホッ! さあ、そのイスを明け渡してもらおうか。メインバンクは既に籠絡したぞ」
勝ち誇ったように胸を叩き、ドラミングを始めるゴリラたち。
「お前らは確か、外資証券のゴリラーマン・ブラザーズの幹部たち!」
外資がキタキツネ商事を狙っていることは耳にしていたが、こんな突拍子もない事態は想定外だった。
コンタロウは持病の狭心症が潜む左胸に痛みを覚え、倍量のアスピリンを咄嗟に口に含み噛み砕いた。
「まさか、そんな……。まるで狐につままれたようだ……」
87:sou
08/12/01 23:44:55
お題は「寂れた」「掲示板」「誰もいない」で。
88:sm ◆ley8NheQbk
08/12/01 23:50:25
あんたはけいいちという名だったか。
まあ座りなさい。年寄りの話なんぞつまらんものだが少し聞いてみなさい。
仕事をやめたいということじゃが。30をすぎたということじゃが。まあ、好きにすればよろしかろうが。
今日はなんでもない。わしが若い頃狐にだまされた話をしようと思ってな。
あれはわしがまだ二十になったばかりの頃じゃった。ここらへんもほんに田舎で、わしはなにかの用で山道を歩いておった。道の途中、きれいな娘さんが猟師のしかけた罠に足をはさまれ困っておっての。わしは助けようと近寄った。
「ひどいことじゃ」。
「いとうてかないませぬ」。「外してやろう。少し痛むだろうが暴れなさんな。ん……あんたは?」。
「いえ……」。
娘っ子は狐だった。山道に似合わぬあでやかな晴着の裾からは、獣の毛がのぞいておった。おそらくまだそこまで化す力の強くない若い雌狐じゃったんじゃろ。わしは助けると行ったはずみ、雌狐の罠を解いてやった。
「ありがとうぞんじます。そのう……」。
「いいからいきなせえ」。
89:名無し物書き@推敲中?
08/12/01 23:53:49
>>88
誤爆?
90:sm ◆ley8NheQbk
08/12/02 00:22:52
雌狐は礼をなんどもしながら、化身を解くこともなく山道を登っていきやがて消えた。
「ばばあ上の道で狐が出たぞ。えらいべっぴんさんのかっこをしちょった」。
「化ける狐なんぞおらんが。信じるはだまくらかされるのはじまりじゃ。つまらんがこというてねでさっと寝え」。
「つまらんがてほんとやに。こっちがつまらんが」。
わしがつまらんのと狐の娘っ子の女らしさにかきみだされ寝むれんでおると、コンコン、コンコンと雨戸が鳴りおった。
「よすけさん起きてくだせえ。よすけさん」。
「……もう。寝ちょるがに。で、なんよ。昼間の、その、……か」。
「ええ。昼間のそれでます」一応のお礼をと存じまして夜分ながらおうかがいしたというわけでして」。
「お礼なんぞええよ。それより足の具合はどうや。痛むか」。
「おかげさまで、どうにか」。
「そいつはよかった」。
「……」。
「……」。
「その、お礼の品がございまして」。
「お礼なんていいち言うとるがに」。
「ですが、取ってもらわぬことには帰るにも帰れませんで」。
「いいちいうのにねえ。で、なんや?」。
「なんだと思いますか」。
「なんだもなにもわかるかい」。
「言って見てください」。
「言うちなんよ。くれようちするもんをあらかじめ言えるアホがおるか」。
「ですからたとえばです」。
「たとえば?」。
「たとえばです」。
「たとえばか」。
「たとえばです」。
「強いて言うなら―
91:sm ◆ley8NheQbk
08/12/02 00:25:23
ごめん、かぶったな。こばくではこざいません。タイミングが前後しましたが、狐アスピリンエクゼクティブチェアで書いてます。
92:sm ◆ley8NheQbk
08/12/02 00:40:47
「強いて言うなら。なんでございますか?」。
「エクゼクティブチェアやろか」。
「エクゼクティブチェアでございますか」。
「そうやき。エクゼクティブチェアやき。だいたいさ、エクゼクティブチェアってさ、その名の通りエクゼクティブだからいいよね」。
「エクゼクティブチェア、ですか。わかります。わたしのお持ちにあがったお礼の品も、奇遇なことに、それです、エクゼクティブチェアです」。
「エクゼクティブチェアか」。
「エクゼクティブチェアです」。
「お礼なんぞいいが、どれ、見してみ」。
「エクゼクティブチェアをですか?」。
「エクゼクティブチェアを」。
「もちろんです。が、明日です。エクゼクティブチェアをご覧に頂くのは、本日はそこはかとなく日和がわるうございます」。
「マジで?。エクゼクティブチェアってそんなのあんの?」。
「はい、あります。ありますです。なんせエクゼクティブですから」。
「エクゼクティブだからか」。
「左様でございます。一口にエクゼクティブといってもいろいろと難しゅうこともございまして」。
「やはりそうか。エクゼクティブだもんな」。
「ええ」。
93:sm ◆ley8NheQbk
08/12/02 01:01:59
その次の日の夜、わしはその雌狐の再度の訪問を受け、エクゼクティブチェアを譲り受けた。
わしは本当に感動したよ。なんせエクゼクティブチェアじゃからな。若いあんたなどにはエクゼクティブチェアなんぞは日常茶飯時だろうが、
なんせわしらのころは時代が違ったからの。エクゼクティブチェアなんぞまわりの誰もこれっきしもの経験なんぞなかった。
だがな、
94:sm ◆ley8NheQbk
08/12/02 01:15:51
その狐の送ってくれたエクゼクティブチェアはな、娘狐の精一杯の努力の結果じゃったんかもしらんが、なんと、アスピリン製やったんや。
そのエクゼクティブチェアは、はじからはじまでそっくり、アスピリンの丸薬で構成されていた。
にエクゼクティブチェアをアスピリンで作ろうともええが、アスピリンて、四季の変化のなかで、けっこう風化すんねん!。
て、話や。
いいから年上の言うことは聞いとき。つまりな、アスピリンでエクゼクティブチェアをつくんなてことや。あとや、ええ歳してぽんぽん仕事やめんきいてこと。な。頼むで。
終り。次の題は前の人ので
95:sm ◆ley8NheQbk
08/12/02 01:38:34
ていうかぶっちゃけどう?。
お題を見て、狐→だます→アスピリンでエクゼクティブチェアをつくってだまそうとするもだましきれてない狐→、みたいなのが思い浮かんだんだけど、めんどくさくなって、後半がプロットそのものになってしまった。
96:名無し物書き@推敲中?
08/12/02 02:38:27
幽霊の存在理由って何だろう
誰かに自分をわかってもらいたいとか
死んでも誰かを憎み続けたいとか
じゃあ、みんな死んじゃったらどうなのかな
生きた人間がいなくなったらどうすればいいのかな
開けっ放しの窓
床に散らばるガラスの破片
倒れた机と椅子
掲示板には修学旅行の日程表
ついにその日は来なかったけど
誰もいない
寂れた校舎の中
ひとり待っている
何を
誰を
次は「カウント」「壜底」「コール音」
97: ◆/9YkwhtEh6
08/12/02 03:04:59
光が頭上で踊っている。
いや、頭上なのか? と、マスクの裏で思う。
激しい痛みが全身を襲っているはずなのだが、
痛みが激しすぎて何も感じることさえできない
永遠の一瞬にとらわれてた。
ワン、トゥー、とカウントが進む。
スリーで反射的に体を起こした。
光は、今度は真横で踊った。
カメラマンどもめ、と、マスクの裏で思う。
人の痛みで稼ぎやがって……。
今日は勝つと娘に約束したんだ。心のなかでそうつぶやいたとき、
足を引っ張られ、気づくとリング下に立っていた。
同時に、後頭部が破裂し、倒れると、目の前に壜底が転がっていた。
立つんだ……。立って、娘に勝ったと言うんだ……。しかし、動けない。
かけられないコール音だけが、マスクの裏で鳴り続けていた。
「良心」「思いやり」「信じる」
98:名無し物書き@推敲中?
08/12/02 11:54:51
>>95
雑談はは感想スレで。
てか、いくらなんでも長すぎ。もう少しこのスレROMって書き込んでね。
99:ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2
08/12/02 14:57:55
「良心」「思いやり」「信じる」
「困ったねー何とかしてもらわないと~~!」
「そういう事情がお有りなのですかー?それはさぞ、お困りでしょう。では今日にでも、全額わたくしの方でたてかえさせていただきます」
財前伸治は、体内に内蔵されている携帯の通話回線を切った後、思わず口元をほこぼらせた。
苦情電話一本かけるだけで今月の生活費が手に入ったのだから当然である。
「ケッ!!ホント!こいつらは、何でも信じるんだナ!!」
ライフサイエンスの発達により遺伝子、タンパク質及び脳細胞もろもろの関係が研究されてゆき、人間が元来もつ、良心という感情の発生元が解明された。
両親たちは、こぞって自分の子供たちにこの遺伝子操作技術を使い、赤ちゃんを誕生させた。
つまりは、いい子、やさしい子、思いやりのある子、人のため、世の中の役にたつ子たちをと望みをかけて…
親としては当然である。
結果、今やこの日本は、その半数以上がこの善人の集団で社会が動いていた。
遺伝子操作されていないノーマル(嘘を平気で実行できる普通の人)の財前は次の善人のカモの電話ナンバーをコールした。
欲しいと思っていた最新立体ディスプレイの代金を貢いでくれる良い人に…
100:ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2
08/12/02 14:59:48
次のお題「レシピ」「10代」「ビニール傘」で!!
101:お題「レシピ」「10代」「ビニール傘」
08/12/02 23:42:19
「幸せになりたい?」
今朝の登校時。
玄関で靴を履いていた僕の背中に、姉はそんな言葉を投げかけた。
僕が素直に「なりたい」と言うと、彼女は「なら、今日は傘を持っていきなさい」と、一番安上がりなビニール傘を手渡してきた。
主にディスカウントショップで取り扱われている、非常に小さく安っぽいそれを受け取った僕が「雨、降るの?」と問うと、彼女は肯いた。
「レシピ通りならね」
それは返答になっていない。
通学路を歩きながら、通りすがる人の手元を追う。しかし、誰一人として傘を持っていない。今日の降水確率は10代。降らない可能性は90%近くもある。
どことなくきまりの悪さを覚えながら、胸のうちで姉の言葉を反芻する。
『その傘、旧校舎の玄関にさして置くのよ。良いわね』
現在、旧校舎は利用されていない。その上、本校舎からそれなりに距離があるため、いつも無人の気配が漂っている。果たして、なにか意味があるのだろうか。
(……もしかして、からかわれただけ?)
そんな杞憂も実際に雨が降る頃には、胸のどこかへ流れて消えた。
ついでに、傘も消えてなくなっていた。幸せになるどころか、逆に不幸が浮き彫りになっただけの結末に、己の不運を嘆きながら雨の街をひた走る……僕の背中にかかったのは、雨粒よりも柔らかな少女の声。
「あの、もし良かったら、傘、入っていきませんか?」
「というのが、事の顛末です」「そう」
濡れた髪の毛を拭きながらの報告に、姉はそっけない。
「女の子の持ってた傘が、今朝さして置いたヤツだったってのは、どういう理屈?」
「ああ、それは『七夕の日に、旧校舎にさしてある傘で相合傘すると両想いになれる』っていう、ジンクスがウチの学校にはあってだな。
……アタシがその口だったから、どっかの誰かのために恩返しでもしてやろうかなー、と思ってさ。いやまさか、アンタにお鉢が回ってくるとはねー」
そう言って意地悪く笑う姉は、最後に一言付け足した。
「な、レシピ通りだったろ?」
起承転結付きで15行は難しい・・・orz >>74さんのように綺麗にまとめてみたいものです。
長すぎたので、お題は継続でお願いします。
「レシピ」「10代」「ビニール傘」
102:「レシピ」「10代」「ビニール傘」
08/12/03 01:14:11
「先生、うちの息子、どうしてこんなことになってしまったんでしょう? レシピ通り育てたのに!」
遠山(母)は悲痛な表情で訴えていた。僕が高校教師になってからの六年間で培った、
二者面談のパターン分けで言うところのBパターン……必要以上にナイーブな母親というヤツだ。
「はぁ……良い息子さんと思いますが……あの、遠山くんのレシピ、見せて貰ってよろしいでしょうか?」
「ええ、これです」
文科省発行のそのレシピによると、遠山は『10代になったら焦げ目が付くまで弱火でじっくり炒め、
裏返して砂糖を振りかけましょう』となっている。
「私、ちゃんとレシピ通りあの子が親の愛情に飢えるまでじっくり放置して、荒れてきたら手の平返して
甘やかしたのに……なのに、家に寄りつかないんです! 雨の中、公園のベンチで落ち込んでる
あの子をビニール傘持ってって、こう、こんな感じで迎えに行ったりもしたのに!」
「はぁ……それは感動的ですね(行動理由がレシピじゃなければね)」
とりあえず適当に相づちで流し遠山(母)には帰って貰い、翌日遠山(息子)を呼び出した。
「遠山、なんかお前、最近家に寄りつかないらしいじゃないか」と訊くと、
「お袋、同じ料理ばっか作るんだもん。婆ちゃんから貰ったレシピが三種類しか無いからって……」
遠山(息子)はゲロ吐きそうな表情でそう答えた。
次のお題は「尻」「穴」「致命的」でお願いします。
103:ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2
08/12/03 02:16:15
「尻」「穴」「致命的」
「たいへんな事になった」
今日、何度、この言葉を口にしたことだろうか。
阿相総理は緊急事態と判断し、各方面にひそかに指示をだした。
原因はわかっていた。
そう、虫なのだ!新種の虫!
生物学者に言わせればコレは宇宙から飛来した異星の生物の可能性もあるらしい。
…べらんめぇ!そんな事はどうでもいいんだと心の中で毒づく。
日本中で突然現れた被害。
その…虫が…その…つまり人間のお尻に。
その…虫が…その…つまりお尻の穴に。
入り込んで大腸に住み付き寄生してしまう。
外科的に取り出すことは不可能、薬剤で始末も出来ない。
患者は特に命の心配もなく、病気になるわけでもない。
いや!むしろ取リ憑かれた人間は健康になるのだが…
…べらんめぇ!そんな事はどうでもいいんだと心の中で毒づく。
政治家には大問題なのであり、致命的になってしまうのだ。
そう!大問題!取リ憑かれた人間は、正直者になってしまうのである…
104:ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2
08/12/03 02:19:00
このキーワードだとこうなるわな!
お題は継続で!
もっときれいな話を、どなたかこの3つで頼みます。
105:「尻」「穴」「致命的」
08/12/04 09:55:57
大学からの帰り道、齋藤浩一は悩んでいた。
夕暮れ時、薄暗い並木道の数歩先を憧れの河合洋子が歩いている。
授業の時と同じ、清楚な白いブラウスにカーディガン、紺のタイトスカート。
シンプルな服装だけに、スタイルの良さが際だって見える。
伝え聞いたところでは、財閥系の家柄で海外からの帰国子女だという。
そうした略歴も、庶民である浩一にとってはあまりに眩しく、
気後れからこれまで話をしたことはなかった。
が、二人きりの今、この場所でなら自然に話しかけられそうに思えた。
と、浩一の視線が洋子のスカートにとまった。
スカートの丁度盛り上がる辺りに何か白いものが見えたのだった。
ゴミかと思い、左右に揺れる丸い丘に視線を凝らす。
―穴があいている。
スカートの縫い目がほつれてちらちらと内側が見えていた。
最初目に入った白いものはゴミではなく、ブラウスの裾なのだった。
浩一は焦った。教えてあげなければ洋子が恥をかくことになる。
人通りの多い駅前の大通りまであと少しのところで浩一は声を上げた。
スカートのお尻に穴があいて、下着が見えてますよ。
おもいきって大声を出した。洋子が振り向く。
緊張しすぎてからからになった喉を通ったのは別の言葉だった。
尻の穴が丸見えだよっ!
驚愕と羞恥と怒りで洋子の顔が歪んだ。この変態っ!
浩一の頬にびんたを食らわせ、洋子は走り去って行った。
致命的な言葉のミスによって浩一の恋は終わってしまった。
呆然と立ちすくむ浩一の周りを静かに闇が包みこんだ。
「銀杏 狛犬 時計」
106:名無し物書き@推敲中?
08/12/06 07:38:15
少年が長い階段を上り切ると、境内は鎮まり返っていた。
はっきり聞いたわけでは無いが、声がしていたような気がしたのだが。
息を切らしながら、すっかり銀杏の葉で黄色くなった境内を見回してみる。
散々ねだって買ってもらったキャラクターウオッチを無くしたのに気づいたのは
昨日の夜のこと。落としたとすれば昨日ぎんなん拾いをしたこの境内の中だ。
ゴムバンドが緩かったから何かの拍子に外れてしまったのだろう。
多分この辺だろうとあたりを付け、二つある狛犬の台座の下を中心に捜索を始めた。
銀杏の葉をかき分け、懸命に探すが見つからない。半ば諦めかけたとき、
目の端できらりと何かが光った。はっと少年が目を見張る。
台座の上に目当ての腕時計はあった。だがどういうわけか、狛犬の前脚にそれは嵌っていた。
切れ目の無いゴムバンドは、台座にぴったり付いている狛犬の前脚から
どうやっても取れそうに無い。いったいどうしてこんなことになっているのだろう。
これを外すにはゴムバンドを切るしかなさそうだ。少年は悔しげに唇を噛んだ。
と、石の像がカタカタと動き出した。
ぱかんと口を開けた少年の前で、狛犬が申し訳なさそうにそーっと前脚を上げた。
次は「恋」「鯉」「故意」
107:「恋」「鯉」「故意」
08/12/06 09:56:35
「悩んでるんです……恋に」
「鯉ですか?」
ファミレスで不味いコーヒーを満喫する最中、背後の席から聞こえてきた深刻そうなその会話に、
僕は思わず聞き耳を立ててしまった。
それとなく背後の席を伺う。深刻そうな男と、真剣そうな男が向かい合って座っていた。
「ええ、恋なんです。彼女のことを考えると胸が苦しくなって」
「彼女、ということは、雌なんですね」
「や、やめてください、雌なんて言い方! で、ちょっとでも彼女のことを考えると胸が苦しくなって、
今だって、居ても立っても居られないです……どうしたらいいのかと」
「うーん……鯉ですか」
「恋なんです」
「…………食べちゃったらどうですか?」
「た、食べる!?」
「食べる前には泥抜きを忘れちゃいけませんよ。囲いの中で十日くらい餌を与えずにおくんです」
「な、なるほど……わかりました、やってみます!」
あのとき僕が故意に聞き流すことをしなければ、翌週の新聞地域欄に載った誘拐監禁事件を
未然に防げたかと思うと残念至極な話である。
次は「慈雨」「十」「汁」でお願いします。
108:ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2
08/12/08 00:48:39
「慈雨」「十」「汁」
昨夜から降っている雨音で恭子は目覚めた。
2泊3日の休暇も今日で終わり。
「うーん、よく眠ったなぁー」
となりの部屋には、すでに旅館の朝食の準備が出来ているようで味噌汁(?)の香りがしていた。
食事を終え、身支度を済ませ、友人と旅館の玄関に立つと外気(?)は寒く用意していた長袖のシャツを着る。
なんて気持ちのいい雨なんだろう。
この雨は観光カタログに載っていた『慈雨(じう)』まさに草木をうるおし育てる命の雨。
もう十分に1996年の日本を満喫した。
失われた美しさを完璧なまでに再現したこの『日本(ニッポン)館』から現実に戻る時きたのだ。
幾重にも閉じられた扉をくぐり、外に出ると、むっとする熱帯化した東京のいつもの熱波の世界。
恭子達がさっきまで過ごしていた所は広大な敷地に建設し、再現された人工の20世紀の日本。
2188年の今、美しい四季につつまれた昔の日本の姿はすでに無かった。
日本は深刻な温暖化によって熱帯と化し異様な植物達が支配している。
今度の12月の休暇には、結婚するつもりの彼と奮発して、雪の降り積もる冬(?)の日本館を訪れるつもりだった。
雪の冷たさってどんなものだろうと考えながら恭子と友人はエアコンがフル回転している田園都市線の中に消えていった。
109:ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2
08/12/08 00:49:28
次のお題は「せんべい」「日没」「手のひら」でお願いします。
110:名無し物書き@推敲中?
08/12/15 12:24:10
佐智子はワイドショーを見ながら茶の間でごろ寝していた。
レポーターの芝居がかった声色と、せんべいをかじる音が空虚に部屋を満たしている。
炊事、洗濯、掃除。
家事のことはなるべく考えない。平和な日常を享受するコツは、上手にフタを閉められるか、だ。
人生と同様に、一日には一回の日没が訪れる。
胸元に、せんべいのかけらが零れおちた。手を伸ばしかねている間に、それはコロコロと床まで転がり落ちていく。
やれやれ、と拾い上げながら、佐智子は20年の結婚生活を漠然と思った。
私の手のひらには、何があるのだろう?
111:名無し物書き@推敲中?
08/12/15 12:26:47
思考の過程に不自然さがありますね。読まないとわからない
112:名無し物書き@推敲中?
08/12/15 12:31:43
末尾の力もどっかで逃げてる
113:名無し物書き@推敲中?
08/12/15 20:32:49
三語しようぜ!
114:しん太
08/12/15 22:24:11
「せんべい」「日没」「手のひら」
「世界が終わる前の最後の日没って見たくない?」
イリルはテトラポットに座り、水平線の向こうを見つめながら言った。
「え?」
僕は言葉の意味が分からず、そう聞き返した。
「見たくない? 最後の日没……」
イリルはそう続けた。
「最後の日没……?」
僕は再び聞き返した。
「見れるよ。見せてやるよ」
イリルは齧りかけのせんべいをテトラポットとテトラポットの隙間の海へと
落とした。
「確かにもうすぐ日没の時間だけど、一体何が……?」
僕は戸惑って彼に尋ねた。
日没が始まった。眩しい光が僕等二人を照らす。僕等は手を目の前にかざして、
目を細めて光を見つめた。
「それはこういうことだ!」
イリルはそう言って僕の背中をドンッと強く押した。僕の体は遥か下の海へ
テトラポットに何度も体をぶつけながら落ちた。
イリルは両の手のひらを合わせてお辞儀をした。
虫の息になった僕が遥か上にいるイリルを見上げると、イリルの目は異様な色
を帯びてギンギンと輝いていた。
宇宙ステーション、屍、千年でお願いします。
115:名無し物書き@推敲中?
08/12/15 23:28:45
俺、源田廉介はいつものようにパブで黒ビールを飲んでいる。
独身だから稼ぎは全て自分に仕えるのが何ともありがたい。趣味といえば酒ぐらいか。
こうして酒を飲みながら、暗いこの世を千年一日の観を抱きつつ生きるのが俺の人生。
思えば20XX年の世界恐慌以来、失業率も犯罪発生率も自殺率も上がった。
大都会の公園や河川敷にはホームレスの屍が晒されているのも珍しくない。
科学の進歩だの福祉の向上だの、どれも胡散臭い言葉に思えて仕方のないこの頃。
宇宙ステーションの爆発で残骸が地球上に降り注ぎ、この日本でも被害が出て以来
不況による政府の財政破綻なども相まって宇宙開発もとっくに中止されてしまった。
もはや地方は無人の壮大な秘境に戻ろうとしており、残された都市部も限られた職や金、
娯楽を求めて人が多く彷徨い、ますます退廃と空虚と沈鬱に満ち満ちている。
冷えたフライドポテトを頬張って席を立とうとすると、女が近寄って来た。若い。20代か。
「あんたが廉さん?お願いなんだけど、私の姉貴を騙して捨てた男をお掃除してくれない?」
「代金は?」
「今から半分払うわ。残りは仕事後で。これでいいでしょ?」
「明日もう一度ここに来てくれ。顔写真を忘れるなよ」
俺はそう言って店を出た。4年前から始めたスイーパー(掃除屋)稼業も板に付いてきたかな。
風が吹くと桶屋が儲かるらしいが、不況になると風俗と殺し屋が儲かるんだよな・・・これが。 fin
116:アシュレー ◆r1if.ivhdg
08/12/15 23:51:06
あれなに? お星さまの間をぬって夜空をまっすぐに飛んでいる光。
ずっと同じ速さで進んでいる。すごく早いわ。時計の秒針より早いわ。
宇宙ステーションさ
へー。宇宙ステーションてなあに。
千年前に人の手によって作られた船だよ。夜空を飛んで星から星へと光を運ぶんだ。
じゃあ、お星さまが光っているのは宇宙ステーションのおかげなのね。
ああそうさ。でもまっすぐにすすんだら、その道から外れたお星さまには光がお届けできないわ。
ああそうさ。だからほら、見てごらん。天の河には、まだ光が残っているけれど、天の河から外れたところにはまばらにしか星がないんだよ。
まばらといってもいっぱいあるわ。
今はまだね。でもこれから消えてしまうんだ。
えっ。さびしい。涙がこぼれてきた。止まらないわ。
大丈夫。ボクがとめてみせる。
夜の森に屍がひとつ。
見開かれた瞳は星を映し、
頬を伝う涙の跡は固く乾いている。
未知 トリアージ つむじ風
117:ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2
08/12/16 14:30:23
「未知」「トリアージ」「つむじ風」
数か月前、無数の巨大円盤群が突然出現し、これまで未知の存在だったエイリアンが現実のものとなり、世界中は大混乱に陥った。
国防大臣はその責任の重大さに表情がこわばり、膝の震えを何とか抑え異星生物、地球種管理総督の部屋にいた。
「では、どうしても全人類の30%以上の救済は考えていただけないのですね」
異様に背の高い総督ルワージイは無言の返事を返す。
銀河系規模の時空の転移現象の発生から人類を救済すべくあらわれた銀河連邦のエイリアン。
高度に発達した銀河連邦種族にとっては、つむじ風程の影響なのだろうが人類にとっては種の絶滅に等しい危機。
だが、救済には一つの条件が付けられていて、「ノアの箱舟」に乗船できるのは選ばれし人類のみというわけであった。
エイリアンはこの選出に、人類が大災害などの発生時の死傷者救済に採用している考え方、トリアージを使った。
つまり救うべき価値のある人類の選別方法として黒、赤、黄、緑の4つのカテゴリーにランク分けするというのである。
国防大臣ら、その国の指導者層のみに知らされたこの取り決めは銀河連邦種族側主導で数日中にも開始される。
「これは人類の未来にとって必要なものなのだ」と国防大臣は自分に言い聞かせながら総督の部屋からその他の各指導者とともに席を立った。
選別にはもう一つ、人類に知らされていない事がら、つまり、今回の第一選考基準は知的生命として基本となる倫理面が最重要とされていて、社会的地位は考慮されていないという事実があった。
退室する各指導者達の後ろ姿を見送る地球総督。
その視覚内の、総督のみに見える識別評価を示す色はすべて同色だった。
『矯正もしくは治療など可能性は見込めず、救命不可能、つまり必要のない人物』をあらわす黒色をしていた。
118:ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2
08/12/16 14:34:39
次のお題は継続でお願いします。
119:お題「未知」「トリアージ」「つむじ風」
08/12/16 16:59:26
秋葉原通り魔事件で問題視された、トリアージについてのニュースが午後六時のニュース番組を適当に埋めている頃、隣の磯坂さん家では、未知の議題がお茶の間に持ち込まれていた。
豚の人権問題である。豚に人権はあるのか、果たして。
動物はそもそも機械である、とキリスト教を狂信する神部さんは、卓袱台をひっくり返し、人は天使にも豚にもなれるのに、どうして豚になろうとするのか、と訴える建部さんに、それは命中した。
しこたま。とても良い角度で。
クリティカルでアートな物理法則が頭蓋を砕き、脳漿を撒き散らし、建部さんはデスった。という夢をぼんやり見ていた藁小屋の豚は、風速二十メートル程度のつむじ風に飲まれて非常に残念な感じになった。
という現実逃避で、現実を逃避しようとした神部さんだが、夕暮れ空を切り裂くジェット機の羽の音に鼓膜をつんざかれて我に返った。
神部さんは救急トリアージを建部さんに試みたが、ただのしかばねがそこにはあった。仕方が無いので、神部さんは豚(山羊)のように建部さんを貪り、全てを無かったことにしてみた。
目を覆ってしまいたくなるほどの惨状ではあったが、誰一人としてそれを観ていないので問題ない。
竜巻のおよそ五分の一以下の速度で通り過ぎる、つむじ風のようなリアルタイムが、晴れた日の午後六時に磯坂さん家の庭先を掠めていった。
それだけだって言ってんの。今日のテレビが。メメタァ。
お題は継続でお願いします。
120: ◆iicafiaxus
08/12/17 01:25:09
#「未知」「トリアージ」「つむじ風」
二階の自室でくつろいでいると、中学まで一緒だった幼馴染の祥子から電話があった。
「あのさ、もし暇なら今から数学の宿題とか聞きに行ってもいい?
特進コースなんだから被服科の数学くらい余裕でしょう?」
懐かしい声の端々が、卒業から一年もたたないのにすっかり可愛くなった気がする。
「うん、じゃあ持っておいでよ。昔のようにちゃぶ台を出すから勉強しよう」
僕は電話を置くと立ち上がって、まず部屋の中を一望する。祥子が来るまであと十五分。
そう、これは祥子とよく遊んだころには無かったものを隠す、いわばトリアージだ。
まず机の上のロリコン漫画とパソコンラックのエロ同人ゲームは絶対「赤」、
こんな未知の世界をちょっとでも一般人に見せたら幼稚園以来の信頼関係が破綻する。
天井のアイドルポスターはまあ普通だし、黄色かな。余裕があれば片付けよう。
パソコンに入ってる動画はさすがに見られないでしょう。緑。
…と、優先順位をつけて押し入れや見えない場所に移動していく。
やがて呼び鈴が鳴り、応対した母に案内されて祥子が僕の部屋のドアを開けた。
「やあ祥子、久し振り。散らかってるけどいらっしゃい」
応対した僕の胸元に、祥子の視線が釘付けになっている。
あー、そういえばふたなり萌えTシャツを着たままだったっけ…。
背景の足元を、どこからともなく枯葉がつむじ風に乗って吹かれていく。
#次は「IT」「パスポート」「試験」で。
121:名無し物書き@推敲中?
08/12/17 23:08:20
#「IT」「パスポート」「試験」
仕事が終わり、一路家に向かって足を速める。
世間の人は私の実年齢を知ったら驚くかもしれない。ただ私はボケ防止と
家のリフォーム費用捻出のため、体を動かせるうちは仕事をして、何らかの
「社会貢献」というものをしようと思っているのだ。
「IT」というものにも少しずつだが慣れてきたと思う。はじめは飛び交う単語
そのものに右往左往して、息子にいちいち尋ねないとロクに使えなかったが、
今ではインターネットやメールの送受信を一人でこなせるようになった。
来月には英国に仕事も兼ねて出掛ける。この年齢にして、再びパスポートを
使うことになるとは夢にも思わなかったなあ・・・。
63年前に終わった戦争で、私は外務省付きの海軍スパイとして世界各地を
飛び回った。しかしあの頃は重い使命感と緊迫感に押し潰されそうな状態で、
楽しさなどほとんど感じられなかった。しかし今は違う。世界は一部紛争の
耐えない地域があるとはいえ、やはり全体には平和をひしひしと感じる。
死ぬまでにもっといろいろなところを見てみたいと思うようになってきた。
そういえば、来週は漢字検定の試験か。今年95歳、まだまだ安楽の余生は早い。
122:sou
08/12/21 02:00:19
薄暗い照明の下、俺は目覚めた。周囲を数人の男達と堆く積まれた機材が取り囲んでいる。
「麻酔が切れたようだね。喜び給え、手術は成功だ」白衣の老人が笑みを湛えて語りかけてきた。
霞がかった記憶を少しずつ呼び起こす。そう、俺はモルモットなのだ。
職を失い食うに困り、高額な報酬目当てに、奇妙な実験の被検体に申し込んだことを思い出した。
「世の中にはITという言葉が氾濫しているが、その実態は朧気なものだ。
だが、この技術は違う。人間を新たな地平へ導くパスポートとなり得るものだ。
……もう一度説明しよう。君の脳に埋め込んだチップは、無線でサーバーと繋がっている。
それを通して君は、好きな時に好きなだけ、無限の情報へ脳から直接アクセスできる。
何らの端末も介さずに、だ。逆に君の得た知識も自動的にサーバーに蓄積される。
この技術を全ての人間に施したとしたならどうなる? 完全なる集合知が完成されるのだよ!」
所長と呼ばれている老人は、瞳に薄暗い光を宿し、身振り手振りを交えて饒舌に語った。
「さあ、サーバーとの結合試験を始めよう」
合図とともに、俺の脳におびただしい量の情報が流れ込んできた。
歴史、世界情勢、哲学、文学、政治経済……。俺は気分が悪くなり、実験を遮った。
情報で膨れ上がった脳と対照的に、心の中が急速に虚無に支配されていくのを感じながら。
「所長、大変です! 別室で休んでいた被検者が自殺を!」
「……そうか。予想はしていたのだ。知識を得るということは真実に近付くことだからな。
世界はどうしようもなく不確かで、救いようがなく、生きる価値がないという真実に」
123:sou
08/12/21 02:05:43
お題継続で書きました(IT、パスポート、試験)
次は「桜」「逆光」「駆け抜ける」でどうぞ。
124:お題「桜」「逆光」「駆け抜ける」
08/12/21 13:38:49
写真を撮られると、魂が抜かれる。
噂が現実になる街で、誰かがそんな噂を流した。お陰で街は大パニックに陥った。そして、二、三日もするとパニックは収まり、ほとんどの人間は自宅に引きこもった。以降の話である。
「噂の効力が消える七十五日目まで粘るつもりかな?」
「丁度、桜が散る頃ですね」
ほとんど無人の街を、俺とB子さんは両手をバンザイしながらフラついていた。理由はあるが割愛する。そんなホールドアップ姿勢のまま河川敷を訪れると予想通り居たぜ犯人。
街で一番大きな桜の木の下に陣取って一人宴会を開いてやがる。
「あながた犯人です」
B子さんが犯人(と思わしきリーマン風男性)に向かって、ズビシッと人差し指を突きつけると犯人(ryは早撃ちの要領で一眼レフカメラを俺たちに向け、シャッターを切った。
駆け抜ける逆光。抜かれる魂。しかし俺たちは余裕で無事。
B子さんは、その隙に犯人へと接近、腕を捻り上げ行動を抑止した。
俺は犯人の一眼レフを拾い上げ、種明かし。
「無駄です。俺たちは妖怪『猫又』なので魂が九個ぐらいあります。動機は花見の陣取りが面倒くさかった、とかその辺で良いですね」
俺とB子さんはその足で特殊対策本部に犯人を運搬し、事件は解決。いつも通りのパターンである。
その後、犯人がどうなったのかは知らないが街に平和は戻った。めでたし。
次は「子猫」「戦争」「宇宙」でお願いします。