08/05/09 01:33:18
酷評おねがいします
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頭上からチリンという音がした。
見上げてみれば、木造二階建てのベランダに風鈴が見える。
まだ夏にはほど遠い、4月の末。5月の蒸し暑さが時々感じられる。
そんな時期の昼下がりの事だった。
子供の笑い声が脇を僕の駆け抜け、近くの木々が、風に揺らぎ葉音を立てる。
そんな中を、赤い単車がエンジン音を立て走っていくのが見える。
まわりにはたくさんの住宅街。
僕はスーツの赤い格子柄ネクタイを少し緩め、夏には少し早いんじゃないかなと、
風鈴を見て思う。
右手に握っている、A4用紙をもう一度見てみる。
そこには社長宅への地図が書かれている。どうも、あの風鈴がある家がそうみたいだ。
新人なのに、社長宅になんか行ってどうするんだろう、と思う。
まったく、昨日のオリエンテーションに遅れなかったら一人で行く羽目にならなかったのにと
何かしら込み上げてくるものがある。