08/05/02 17:06:06
酷評お願いします
赤、黄、青、それからピンクにオレンジと、とりどりの雨着を羽織って、何人もの園児
たちが、若い保育士たちに率いられて道の向こうの歩道を歩いている。灰色の空と灰色の
建物たちを背景にして、まるで突然遊園地が現れたかのように、彼らの一角だけが場違い
に騒がしい。
雨は少し前にあがったばかりだ。蒸し暑く、ジャケットの下のシャツが背中に張り付い
て不愉快である。あの子たちの雨着の下も、きっと汗に湿っているだろう。それなのにあ
あも無邪気に笑っていられるのは、彼らが内省を知らないからだ。意識の針が常に外側を
向いている。それが幼児のもっとも顕著な特徴だと、僕は思う。そしてそれが羨ましくも
あり、苛だたしくもある。あの群れに飛び込んで、君たちはいったい何者なのかと、一人
一人に問い詰めたくなる。
「可愛いね」
隣の詩織が言った。膨らんだ腹に右手を添えて、その内部にいるものを重ねるかのよう
に、うっとりとした目付きで彼らを眺めている。だが詩織の言葉は、独りでに口をついて
出た感慨のようでいてその実、僕を測っているのである。子の父親として、母親の夫とし
てふさわしいかどうか。その打算を、彼女自身が意識しているのかどうかはわからないが。
「可愛い子もいれば、そうでない子もいるね」と僕は答えた。
「ひどいなあ」と詩織は苦笑する。
「ひどいもなにも、実際にそうなんだから仕方ない。見た目の良し悪しは子どもにだってあるよ」
「私が言ってるのは見た目の事じゃなくて」
「どんな意味でも同じことだよ。可愛いか可愛くないかは、子どもによるよ」
そしてそれを認める者による。