あなたの文章真面目に酷評しますPart60at BUN
あなたの文章真面目に酷評しますPart60 - 暇つぶし2ch554:509-510 1/2
08/04/29 20:25:50
書庫はぼんやりと見わたせた。
王様の目にとまった一冊の書物にはKの文字をかたどった紋章が皮の表面に刻まれていた。
「そんなお姿で寒くはないのですか?」
「おまえか・・・」
振り向いた王様はだらんと腕をたらし、焦点の定まらない眼差しで家臣の一人を見た。
「こんな夜中にどうなされました」
「なんでもない」
家臣は眉間に皺をよせ王様の顔をうかがった。
「なんでもないのであれば、寝室のほうへ戻りましょう」
それでなくとも無音な空間でこの何気ない家臣の言葉は王様の沈黙によってあっという間にかき消された。
「・・・よ。この書庫にはたくさんの本があるが、お前はこれらをすべて管理しているか」
「私はあなた様の生まれる前からこの国に使えてきた者でございます。すべて承知しております」
「ならばこの棚の所・・・」王様は一つの棚の一箇所を示した。「ここだけがどうしてたえず書物の出入りをし
ているかのようではないか」
書棚はいずれも少なからずほこりをかぶっていたのだが、その一箇所のスペースだけが書物の出入りを思わ
せるようにほこりが掃われているのだった。
「ここに所蔵された数えきれぬほどの書物、私はそのすべてを管理し、内容をすべて把握しているものです。
しかし、ただの一冊の書物だけは私にもわかりかねます。なぜなら、それはたえず編さんを繰り返されておる
もので、一冊の書物でありながら実は読んだ次からはまるで違ったものに変化してしまったといった具合であ
りまして、そうしますとところでそういったものが実は書物ではないといった説もかつては存在しましたが、しかし
ながら今ではそういった説も覆され実はやはり立派な書物であるといわれておるわけであります。こういった
実際的な書物のあり様、および様々な諸説によって隔てられた私にはまるで把握しているということを拒絶
されているのでございます。また申しあげますと、この書物は見たところでは何回の編さんを重ねたかは不明
なのでございますが、いくら上塗りの繰り返しをされようともそのもの自体の厚さに何ら変化はございませぬ。
だからこそ、王様のご覧のとおりそのようなきっちりした形のほこりの跡をこの書棚に残しているといったありさま
なのです」


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