08/03/13 01:36:23
行商人ロレンスは古い知人のいる村を訪れた帰り、積荷に紛れ込んでいた美しい娘と出会う。
豊作の神ホロを名乗る娘は確かに人ならざる獣の耳と尻尾を持っていた。
ホロはここから出て行きたいと言う。豊作の神がいなくなっては大変ではないかと心配したものの、
ホロが言うには神に祈る時代は終わり、頼みの綱は新しい農法技術だという。
人に顧みられず、それでいて囚われている、そんな神なのだと。
ロレンスは、単身では逃げることがかなわぬというホロを拒むことが出来ず、連れて行けという懇願を受け入れた。
思わぬ二人旅、ホロの老獪さに翻弄されるロレンスだったが、次第に心地よく思うようになっていた。
道中、ある銀貨が値上がりするという噂を聞いた。うまく買い付ければかなりのもうけになる。
が、罠を察知したロレンスは、流布されたこの噂はいったい何のためなのかを探る。これが罠なら近い将来銀貨の価値は下がるはず。
それが行きずりの行商人を罠にかける程度の策略なはずがない。
陰謀の標的が一国の通貨であり国王だと確信したロレンスは一連の仕手の裏をかいてもうけを横からかっさらうことを思い立つ。
本当に銀貨の価値が上がれば仕掛け人の思惑の裏をかける。莫大な財力で買い付け銀貨の価値をあげてやればよいのだ。
ロレンスが向かった先は地元で有名なミローネ商会に足を踏み入れた。
うまくいけばかなりの大金が入ることになった。ところが仕掛け人はその動きを察知して、ロレンスに刺客を送る。
ロレンスを守るためにホロは囮を買って出、単身町を逃げ回る。そして身柄を囚われてしまう。
ロレンスは人質と引き替えに手を引くという要求を呑んだふりをして、ミローネ商会の助けを借りて、ホロ奪還に乗り出す。ロレンスとホロは地下水道を逃げる。
追い詰められた時、ホロはロレンスを守るべく、目の前で真の姿を取り戻す。それは二人の決別の時でもあった。
神と恐れられた獣は敵を蹴散らし、悲しい目をして暗がりに消えて行った。