07/09/04 11:14:39
牢獄のようなこの部屋で、文章を打ち込んでいる。ディスプレイの青白い光は俺
の顔をどう照らしているのだろう。ハエがいる。羽音をたてて俺の思考を阻害してい
る。
キーボードを止めて思考を止めれば、ハエがわずらわしいと感じないのかもしれな
い。ベッドに突っ伏した。
それでも思考は止まらない。
何も考えないのは逆に難しく、ラジカセの音をゼロにしてもスピーカーからサーッとい
う音が漏れるのと同じように、考えるのをやめても思考のノイズが頭の中で鳴る。
羽音が不快だ。
ハエは天井で俺を見下ろすようにとまった。汚い部屋だなあとか、汚らしい男だな
あ、とかそういうことを思っているのだろうか。だがハエのほうがよっぽど不潔だ。ぶっ殺
す。手元のティッシュ箱を投げつけたらハエにあたった。殺すつもりではいたが、あたる
とは思っていなかった。
ハエはそのままティッシュ箱と一緒にカーペットに墜落した。ティッシュのバーコードが印
刷されているところに汚らしいハエの体液がこびりついた。一枚のティッシュを取り出し
て、ハエをつまみ手の中で不快な感触を確かめる。気持ち悪い。ハエを包んだティッ
シュで箱の汚れもふき取った。
ゴミ箱の中には黄ばんで丸まったティッシュの塊が山と盛られており、一番上の塊は
今朝捨てたもので、精液の匂いがする。ティッシュの山にハエの死骸を捨てた。精液
の染みこんだ、生の象徴の中に死骸が包まれる。
いや、ティッシュの中にあったのは数億もの命の素であり、今はただのタンパク質なの
だから何の例えにもなっていないのかもしれない。生も死もない。俺はただゴミ箱の中
にゴミを捨てただけだ。
ハエを殺してもテキストを打ち込む速度に変わりは無かった。締め切りも字数制限
もないのだからそれでも構わない。パソコンのカーソルが次に打ち込まれる文字を待
ち構えるように点滅しているが、キーボードに置かれた指はぴくりとも動かないので、俺
はまたベッドに突っ伏した。
他スレで書き散らしものです。酷評よろしくおねがいします。