07/09/03 06:22:48
夏の間鳴り響いた蝉の声もやみ、気づけばもう季節は秋の空が広がる。
アパートで過ごす夜の時間もひところと違って涼しい。
寝苦しい夜も少なくなり、嬉しいはずなのだけれど、何しろ、季節の変わり目というのは物悲しい。
それは毎年のことであって、今さら、いちいち感じることではない。
ただ、常日頃人と接していない生活を送っている反動か、
時間の流れには却って敏感になってしまう。
斉藤は、一人暮らしのアパートの床で、そんな風に物想いに耽っていた。
大学に入学したのは、もう遥か昔のことのように感じられるほど、時間の経つのは早く、残酷だった。
斉藤が通う私立の大学は、名門とは程遠く、多くの人が滑りとめにするような中規模の大学である。
ただ、入りやすい偏差値の割には、就職実績もよく、
様々な設備も充実しているという評判の、よくありがちな私立大学だった。