07/09/02 19:36:34
土煙が視界を遮る中、私は小さな集落での略奪任務に集中していた。すっかり荒れ果てた土壌に住む輩にも多少の財産はある。
略奪は勝利者の権利であり、戦乱の時代において古今東西変わる事の無い当然の行為だと長年感じている。
金と食糧と処女。行為も変わらなければ、それによって奪取される物も変わる事は無い。
巨大たる城壁を打ち砕く大鉄槌。白昼光に応える刄。滴る返り血。
これが現代の戦争。
頬に付着する乾いた血痕が涙に道を譲り、細い線を成す。
不快な程、冷たい。
目前に在る人間だった物体は流れ出た鮮血に浸り、首だけがマリオネットの如く異様な方向に転がっている。
「まぁ初めて人を殺したなら無理ないさ。気にすんなよ」
ポンと肩に重みが伝わる。 相変わらず馴れ馴れしい牢人だ。
「何の事?」
「お前さん、泣いてんぜ。少年兵なら尚更辛いか……」
馬鹿明るい髭面が優しく微笑む。薄汚い顔だが、何処か気品が隠れている様にも見える。
「泣いていない。それに」
「それに?」
殺しは慣れて……。
「おっと、じゃあ俺は行くぜ」
牢人はそう言い残すと、少女が犯されているのを見学に行ってしまった。