07/09/01 01:00:09
「インドを訪問した人は、二通りに分かれる。徹底的に嫌うか、どうしようもなく嵌まるか」
自分がとちらか、確かめたかった。
カルカッタのホテルから、一歩も出れなかった人を知っている。
「ずっと毛布を被って寝ていた。でも、街の奔流に耐えられなかった」
一歩踏み出して、知った。
熱い、 空気が濃い。まるで、じりじり熱した中華鍋だ。そこに、いきなり放り込まれた。
「タナカさんですか?」
それは僕の名前?
「オニモツ、お預かりします」
魔術のように、もう僕の手には、トランクがない。
光るように黒い、目の前の、顔。それは異国の顔だ。
「水」
彼の動きを見て、思った。やっと、僕は身軽だ。