07/08/28 03:33:47
久々にスレへ来てみた。腕試しに>>472でも直してみる。
おれは9月1日に朝礼で突っ立っていた。
始業式早々、そいつが自殺したと、公務員よろしく、校長は酷く事務的に語った。
そいつは、住んでいたニュータウンが接する山の中で、ひっそりと首を吊っていたそうだ。
部活に励んでいた時、爽やかな風が吹き下りてきたことがあった。
実は、その特別な緑の匂いを含ませるのが、その山だった。
聞けば、そいつはその山に、何かを振り切る様に時々登っていたとのこと。
振り返れば、自分の家も、学校も見えるその山を―。
しかし、駅を通過する電車や救急車のサイレンの不協和音も、特別な風を伝って聞こえてしまう。
これでは、風情も何もあったものではない。……そいつの凶報も。
かつて、ニュータウンが出来る前に毘沙門さまのが祀ってあった場所がある。
今そこは開拓され、既に誰かの家が建っている。
毘沙門像は、解体されて件の山中へと移り、基礎と外郭は真新しく修飾され、
毘沙門さまのおられる内郭だけ、以前と同様古めかしい設計となっている。
そいつは生前、ぽつりと漏らしていたそうだ。
あれじゃまるで毘沙門さまが閉じ込められている様だ、と。
おれがはじき跳ばした沢蟹は、繁みに弾み落ち、見つけられなくなってしまった。