07/08/27 17:12:10
おれは9月1日に朝礼で突っ立っていた。
校長は、そいつが自殺したと言った。
男が住んでいたニュータウンが接する、山の中で、そいつは首を縊った。
おれがあの夏の日の特別な風を受けていた、その風が吹き下りてくる、特別な緑の匂いを含ませるのが、その山だった。
そいつはその山に、ときどき登っていた。
何かを振り切るように、振り返れば自分の家も、学校も見えるその山を登った。
しかし振り返らなくても、駅を通過する電車のや救急車のサイレンの音は、そいつを追い越していってしまっていた。
かつて、ニュータウンが出来る前に毘沙門さまのあった場所がある。
いまはそこには、もちろん誰かの家が建っている。
毘沙門さまは解体されて、山の中へと移された。
基礎と外郭だけが真新しく、毘沙門さまの奉られる内郭だけが古めかしく立った。
そいつはそれをながめた。
そいつはそれをまるで毘沙門様が閉じ込められているようにみたという。
はじき跳ばされた沢蟹は、羊歯の繁みにいってしまって、見つけられなくなってしまった。
以上、長くなりましたが酷評よろしくお願いします