07/08/17 23:05:12
おねがいいたします。
土曜の朝九時に目が覚めたら上出来だ。目覚まし時計も鳴らないのに、
すっきり爽やかな気分で朝が来た。
だけど、ベッドの中に一人ってことに気が付いて、ちょっとだけ焦って
布団を跳ね飛ばして、裸足で歩く音をぺたぺたさせながらドアを開けたら
丁度、坊主頭のドレミどりんが出かけようとしているところだった。咄嗟
に行く手を阻むべく、顔を見上げて立ちはだかり、両手を広げた。
「一人でどこ行くの?」
「どいてくれる? シャンプー買いに行くんだから」
ドレミどりんは、キャンキャンわめく子犬には興味ないみたいな鬚面の、
ものすごく渋い顔で間抜けなことを言った。
「シャンプーなんか、いらないでしょ、坊主なんだから。石鹸で十分」
「失礼なことを言うんじゃない。石鹸でいいわけがない。地肌に悪いじゃ
ないか」
「百歩譲ってシャンプー使ってもいいけど、ちょっと待ってよ。久し振り
に休みが一緒なんだからさ」
そうなのだ、折角一緒に住み始めたっていうのに、全然擦れ違いの日々
なのだ。ドレミどりんは、仕事が徹底的に不規則で、土日はおろか、昼も
夜もないのだ。普通のお勤め生活をしているあたしと休みが合うなんて、
月に一度の奇跡なのだ。
「待てないね。置いてっちゃうもんね。寝坊した庄野さんが悪い」
あたしは二重に落ち込んだ。休みに九時まで寝ているのは罪なのか、こ
んな仕打ちを受けるのか、と言いたかった。それに、いつものことだから
仕方ないのだけれど、ドレミどりんは、朝っぱらからあたしのことを庄野
さんと呼んだ。多分、ご機嫌ナナメ、なのだ。機嫌がいいと、庄野っち、
と呼ぶ。大差ないか。本当は下の名前、未春、とか、ミハルちゃん、とか
って呼んでほしい。