07/08/17 12:37:43
>>26です。
前回指摘されたことを意識しながら書き直してみました。
言い忘れていましたが、続物の冒頭部分です。
三日前から続いている雨は、夏の暑苦しい空気をさらに濃くし、草木独特の匂いを家中に噎せ返る程、立ち込めさせていた。
その陰雨が、ただでさえくらいこの場を余計に暗くさせて、私を苛立たせている。
このじめじめとした儀式はどうしても好きになれない。
それでも、単調で響く木魚の音と、地の底から響いてくるような和尚の声は、遠慮なく耳に入ってきた。
早く終わって欲しい。私は、縋る気持ちで母の方に視線を送った。
けど、喪服姿で正座をしている母からは、いつもの明るい表情は消えてしまっていた。
これでは抜け出したい、なんてとてもじゃないけど言えない。
それに、あの明るい表情の代わりに現れた今にも泣き出してしまいそうな母の顔に、苛立っていた私の気持ちも、いつの間にか悲しみに染まってしまっていた。
「それでは、お焼香願います」
和尚の声に、母を初め、親戚達がみんな立ち上がった。
つられて私も立ち上がり列に並ぶ。母が香を摘んで鼻の付け根に持っていくのが見えた。
おもむろに視線を動かすと、ふと黒い額縁がすっと視界に入ってきた。
写真には、皺だらけの口元が少しだけ緩んでいる顔。
そういえば、その人の笑顔を久しぶりに見たような気がする。
それが写真の中の、口元だけの笑みであっても。
いつから笑った顔を見なくなっていたんだろう。
そう考えながら、私も香を摘んだ。