あなたの文章真面目に酷評しますPart52 at BUN
あなたの文章真面目に酷評しますPart52 - 暇つぶし2ch139:名無し物書き@推敲中?
07/08/17 08:50:17
 小柄な老人の体が突然三倍近くも膨れ上がったのを見て、表情の凍ったセルゲイはスペズナフナイフを取り落とした。
 今度は一体どんなトリックを使ったんだ。パニックで頭の中が痺れてしまい、お得意の八百長を暴く時のいろはもすっ飛んでしまったようである。
 ただひとつ彼に解る事は、今の老人の肉体は彼等コサックのどんなに屈強な兵士よりも巨大で、かつ惚れ惚れするくらいダンディだったという事だけだった。

 一枚岩から削り出したようなごついフォルムの上半身は、目の錯覚か真っ赤なオーラに包まれて見えた。恐らくスチームや色つきライトを使ったトリックだ。
 けた外れに分厚い太ももは、最新鋭の重機のように滑らかに伸縮し、実に堂々たる足取りで崩壊する建物の間を進んでくる。やはりこれもトリックだ。
 すくみ上がりそうなほど大きい背丈も、もちろんトリックだ。もはや三メートルに達していようかという高さの肩にくっついた頭から、優越感に浸った目が見下ろしてくる。どんな気分だ? その目にトリックに騙されて逃げ惑う兵士達の姿は、いったいどんな風に映っている?

 老人は兵士達に向かってゆっくりと両手をかざすと、怪しげな妖術でも使うような素振りで腕を振りまわしはじめた。そしてそれはまさに怪しげな妖術だった。
 目の前の風景が暗転し、建物が赤黒く染まったような気がした。思わず笑ってしまいそうだった。その腕はいかにもといった禍々しい光を放ち、人間の体から出るはずのない「ぶうん」という唸りをあげていたのだから。
「ハアアアアアアアアアッ!!」
 腹腔に響く不気味な唸り声に、鳥肌が立った。
 兵士のうちで逃走本能に背けたのはセルゲイただひとりだったようだ。上官が撤退命令を叫んでいたように聴こえたが、くだらない幻聴に付き合ってなどいられない。
 だって曹長、こんなの明らかなトリックじゃないですか。
 セルゲイは真相をえぐり出すナイフを拾い上げると、熱気と狂気をはらんで著しく歪んだ元老人の顔をぎろりとにらみつけた。
 その面の皮剥いでやる。顔の筋肉がこわばっていたので、上手く表情が作れたかは甚だ疑問だった。
 熱に浮かされたように彼は前進した。


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