07/08/25 13:56:08
とあるアメリカの寿司屋に派手なガンマンが女連れで入ってきた。ワシの羽根飾りのマント、真っ赤なスカーフ、まばゆいイエローのハット。
顔も気さくで明るそうだ。そいつは椅子にもたれると、ギコギコ揺らしながら連れ合いの美女と談笑し始めた。
始めのうちは周囲も愉快そうに聞き耳を立てていたが、酒が入るにつれちょいとばかしうるさくなってきた。
「おれっちはよぉ~お~。狙ったエモノはぜってえ~にハズさねえ!ぜってえ~に、ハズさねえ!」
「・・・・・・うるさいぞ」店中の人間の気持ちを代弁した彼は、質素な身なりのガンマンだった。そのこげ茶色で統一された服や装飾品はとても
古ぼけていて、汚れていた。よく見るとドロや砂があちこちに付着している。
かくして、決闘となった。
お互いに背を向けて10歩ずつ歩いたところで振り向き、撃ち合うルールだ。店主がカウント役をつとめた。
「1、2、3、・・・」派手ガンマンはやや歩幅を短くした。対してボロガンマンの歩幅は長い。
「10!」派手ガンマンは相手に背を向けたままリボルバー銃を連射し始めた。これが相手よりも必ず先に着弾させる
彼の得意技だったのである。しかしその弾はボロガンマンの頭上を過ぎてゆく。うつぶせに、しかし頭を相手に向けた
状態で地面に伏し、自己の被弾率を最小にしながらじっくり相手を狙い打つ、ボロガンマンの戦法だった。
ボロガンマンが敵の頭部にスコープを定めきった丁度その瞬間、ボロガンマンは眉間を打ち抜かれて絶命した。
「あの野郎の後ろ撃ちの弾がたまたまマグレ当たりしやがったんだ!クソ、ついてねえよな」とは、寿司屋にいた客達の談である。
しかしボロガンマンは己が死ぬ間際に、確かに見た。
二丁先の高見台から自分をライフル銃で狙い打つ、敵ガンマンの連れ添い人、あの美女の姿を。
次お題「ヒスイ」「右」「左」