07/08/23 10:30:20
3人の女神と3人の悪魔が相対していた。皆その手には弓矢を持って。
「スポーツマンシップにのっとり・・・・・・」お決まりの選手宣誓の後、競技が始まった。
悪魔の一番手が弓を射る。的の中央からのズレは結構大きい。しかしその悪魔は女神とすれ違う時に耳元でボソボソと
何かをつぶやいた。女神は顔を真っ赤にして小刻みに震えた。矢は、的に命中しなかった。
「1番手、勝負、悪魔!」
二番手は女神が先に射、的のほぼ中央を射抜いた。彼女はセンスが良かった。本番の試合という、一種の非日常的な雰
囲気の中でも普段の実力を出した。悪魔は、的の中央をずれた。
「2番手、勝負、女神!」
三番手は、コイントスの結果、女神が先に射る事になった。しかし悪魔が突然近づいてきて女神の矢羽をさりげなく
握りつぶしてしまった。曲がった矢羽のため、矢は的のギリギリ外枠に命中した。
うすら笑いを浮かべながら矢をつがえた悪魔の顔色が突然赤くなったり青くなったりした。口をパクパクさせて指先
は大きく震えている。矢は、的に命中しなかった。
「3番手、勝負、女神! 以上、1対2、女神の勝ち!」
的に刺さっていたのは、ひしゃげた矢羽の女神の矢。射手から見てその矢羽は直交するニ直線、十字架(クロス)の形をしていた。
101:100
07/08/23 10:37:27
次のお題は
「ストロベリー」「キャンドル」「血」
102:84
07/08/23 10:40:59
>>86
うおっ、俺の書いた文章がほめられてる; 嬉しすぎて皮下出血起こしそうだ。
とってもありがたし。これからも気合入れまくって即興文書きまくるってえの!
103:お題「ストロベリー」「キャンドル」「血」
07/08/23 13:06:07
ジャック・オー・ランタンを模して刳り貫かれたお化けカボチャの仮面を被った八千草は、真っ黒な外套の裾でズルズルと廊下を擦りながら歩いていた。ご丁寧に右手には庭箒、左手には厚手の学問書を携えている。
どこからどうみても完璧に魔女然とした風体だった。中世ヨーロッパなら魔女狩りにおける格好の標的として、真っ先に河へ沈められていたに違いない。
それにしても―なんとも危なっかしい足取りだ。頭に乗せたカボチャマスクがよっぽど重たいのか、首の位置がうまく定まらず左右にふらふらしている。それに連動して、生まれたての子羊ヨロシクよろめく足元。
いつ壁に正面衝突してスッころんでもおかしくない。
「……あー。ま、暇だし」
俺は、手持ち無沙汰な両手をポケットに突っ込むと、なんとなく言い訳じみた台詞をこぼしながら八千草の後をこっそりつけることにした。
「で、ここかよ……」
八千草が向かった先は旧校舎/元研究棟/四階。
設備の充実した新校舎が完成してからは部室棟として扱われている僻地だが、主に不便だからという理由で、階をひとつあがるごとに部室の数は減っていく。四階にもなれば使用しているのは、形象魔術部ぐらいで―
(確かあとは小此木と、一姫が所属してたかな―一年ばっかだと冷遇されんのかなー。やっぱ)
などと世知辛い想像が脳裏を掠めたりもする。
まあ、問題は形象魔術を研究対象にしている彼女らにもあるのだけれど。金枝篇でも読めばその辺詳しく書いてあるが、ここでは割愛させていただく。
「……さて」
八千草が入室した部屋の扉を、気づかれない程度に薄く開け中を覗き込む。
窓から差し込む陽光に満たされた部室の床には鶏、もしくは子羊の血で描かれた五芒星魔法陣と、星型の頂点各所に備え付けられた蜀台とキャンドル。
妙なアレンジが加えられた様子は無く、彼女が専攻している神秘学的要素が取り入れられている様子も皆無な、一般的陣形成だ。
(ま、それが普通なんだけど)
魔術陣の形成は、理化学の無機と大体同じで、数学や物理学と異なり履修と実践がほぼ直結している。つまり術技のバリエーションは向学心や努力と等号で結ばれているというわけで、それなりに苦手な学科だったりする。
やがて彼女は俺が見守る中、ストロベリーのように瑞々しい赤が映える可憐な唇から呪文を紡ぎだし始めた。
104:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 13:07:55
次のお題は「心理テスト」「フラグ」「少年」でヨロシクー
105:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 14:08:16
>>103さん、文章はしっかりしていて読んでいても知的さは感じられるのだが
読むのがなぜかつらい…で…結局何なの?お話の結末は?
106:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 14:47:47
せっかく感想文スレあるんだから雑談はあっちでやれば?
この三語で書け! 即興文スレ 感想文集第12巻
スレリンク(bun板)
107:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 14:59:34
↑あれ誰も書いてないからココに載せた方がわかりやすいよね。
感想って、雑談とは違うんじゃないの。
108:かえっこ ◆vKR9dNUc2M
07/08/23 15:12:10
「心理テスト」「フラグ」「少年」
部屋の時計は正確に午後2時30分を示し、少し型遅れの机とイスには、50前の知的な男が資料ファイルを机の上に広げて座っていた。
そして向かい側には…前身白っぽいピンク色の全裸の…ブ…ブタが座っていた。
「さあ、これから簡単な質問を30問、行なう。一種の心理テストだと思ってくれ」
「ブヒッ!ブヒヒヒッウ!」
確かにこちらの言葉は理解しているようだ。
目撃者の少年の証言では、このブタさんは人間の女性、で、少年の目の前で変身してしまったと言うのだ。
男は、今急速に増えつつある突発性動物硬化症のカウンセラー兼治療医である。
まったく原因不明の病で極度のストレス状態が続くと徐々に動物へと変化するらしいのだ。
「一つ目の質問。ブタのあなたは、ト殺場に連れてこられ、順番待ちをしています。さあ次があなたの番が来ましたョ!どうしますか??」
うむ!反応はなしか。
「次!あなたはお気に入りのオスのブタとついに交尾ができる権利を獲得しました。まずはどう行動しますか??」
うむ!これもだめか。
… … …
最後の質問になった。
「では!ある日、眼が覚めると、閉じ込められていたゲージの扉が開いていました。外からは緑の草の匂いが風に乗ってやってきます。さああなたは???」
見事、この人間(今はブタ)の感情の一番奥にある殻となるフラグを揺らすことが出来たようだ。
すでに顔の作りが徐々に人間のそれに変わりつつあり、、30分もするとブタさんから元の人間に戻るはずだ。
そばにいた看護師から男は、立ち上がり慣れた手つきでプロテクター一式を受け取りしっかりと固定装着した。
ドアが開き、次の患者、立派なタテガミを生えそろえた生き物が入ってきた…
こんな仕事をしていたら俺もレッサーパンダとかになりそうだと思う男であった。
次のお題「英会話学校」「外出」「自動改札機」で
109:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 17:45:23
全部かえっこの荒らしだから気にするな
110:「英会話学校」「外出」「自動改札機」
07/08/23 21:40:32
英会話学校がはけて、高志は駅へ歩を向けた。閑散とした駅で人は少なくガランとしている。
電車がもうすぐ来るが、ふと尿意に見舞われた。
「パッと行ってパッと帰ってくりゃ大事だべ」
トイレに入りかけ、しかし、立ち止まり、静かに引き返し始めた。
見てしまったのだ。トイレの中で二人の同級生にいじめられる満田君の姿を。助けるべきか?
いや、それは賢明では無い。そりゃ満田君とは同じ学校だけど、そんなに親しくもない。わざ
わざ助けに入って痛み分けをもらう義理も無い。外出用の服も汚したくないし。それに僕達は今
三年生だ。ケンカなんてしたら内申書に響く。後味は悪いけど仕方無いよね・・・・・・。
高志は淡々と切符を買い、改札口に通した。・・・・・・わずかな逡巡があった。
「おい、てめえら!!」トイレの戸口で高志は吠えた。
次お題「真紅」「人」「北極星」
111:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 21:43:38
かえっこさんの作品の中では狼・予言・墓標の奴が好きだ。
(そのお題出したのが俺なのは内緒)
112:お題「英会話学校」「外出」「自動改札機」
07/08/23 21:50:36
自動改札機からあふれだす人の流れは、アスファルトのフライパンで容赦なく照り焼きにされ、こんがりと炒められた人いきれが脂臭い匂いを孕んで、鼻腔にネットリと絡まってきやがる。
駅前で待ち合わせたことを早くも後悔し始めた一一○○(ひとひとまるまる)。
「真夏の炎天下に吸血鬼って、スッゲー組み合わせだよねっ!」
背後から抱きつく一つの所属不明機あり。背中越しに触れる薄い生地の向こうで潰れる双丘を感知せん。
朦朧とした意識の狭間で70のC前後か? 否、敵戦力のラディカルな成長っぷりを侮ってはならない。
正確さの追求は計略を立てる上で最重要項ではあるが、ここは期待値を込めて多めに見積もっておくというのはどうだろう、それが紳士嗜みってもんだぜ的な益体もない懊悩の波打ち際から自我を引きずり上げること、束の間の数秒―
つかず離れず拷問のようにプニプニと繰り返される柔肌の前後運動に関しては、中脳あたりで算盤を弾くことにして、ここはひとまず声の主にお決まりの挨拶を返すのが通過儀礼というもんだろう。
「おせーよ」
振り返り様に告げると、キャミソールから涼やかな肩口を覗かせた一姫は、両手を合わせてゴメンねのポーズ。いいねいいねウインクがキュートだね、とか。
恋人同士なら当たり前のように通り過ぎる感想でさえ、何だか一姫相手にっつーのは新鮮で、本音とはかけ離れたぶっきらぼうな態度なんかとって誤魔化そうとするなよ俺?
自然反射的にそっぽを向いてしまう前に、なんとか一姫に手を差し出した。
「ほら、行くべ」
「うむ!」
何の衒いもない笑みを浮かべて俺の手をとる一姫。その掌は、熱を識ることがない俺の手を溶かすように暖かかった。
「でもでもー、吸血鬼の外出ってめっずらしいよねー。しかも駅前語学留学なんてさー」
独特の鼻声で語尾を延ばしながら隣の一姫。
「まーな。でも背に腹は変えらんねー。主要十ヶ国語の履修が卒業必須課目のひとつ……だーら、とりあえず英語だけでもまともにマスターしとかねーと。
原義含みで古語やらラテンやらギリシャ同時進行できたらいーなー、なんっつー腹もあるけど」
「死ぬほど人生なげークセに意外と先見据えてモノ考えてるんでやんすねー、涼さんは」
「若いうちは老いに鈍感だからな。やることはやっとかにーとねー」
113:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 21:51:18
折角書いたのであげさせてもらいました
お次のお題は>>110さん
114:「真紅」「人」「北極星」
07/08/23 22:37:18
ベガの第三衛星カッパに住むカッパ星人は
その名の通り頭の上に皿が載っていて皿の周りを
白く太い頭髪が囲んでいる。もちろん皿は磁器でできていたり
プラスチックでできている食事に使う用途の日用品ではなく
頭部の皮がベガの熱い光線から守るために変化したものである。
彼らは真紅の瞳を持っていて最初にこの地に降り立った
地球人は警戒し宇宙銃越しに近づいたが、彼らは友好的で
知能も地球人の知能に照らし合わせると低学年の子供ほどしかなかったが
超能力を使い餌となる炭素を探すことができたので
この地でも繁栄することができた。
地球旅行社の白鳥座星雲支社のアブドゥルはエンジンのエネルギーである
ウランを求めてカッパにやってきたのだった。
エネルギーステーションからは北極星は、わずかに
東側に傾いているので座標を修正しなくてはいけないと
ここに勤めている同郷のハサンに教えられた。
「最近、パキスタンには帰ったかい?」
「いや、でもここの春はパキスタンの風景のそっくりだから
春に来るといいよ」
故郷は30光年も先にあった。
115:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 22:40:52
お題「クラゲ」「夢」「モールス信号」
116:お題 「真紅」「人」「北極星」
07/08/23 23:15:57
契は馬鹿だ。Polestar(ポーラスター)をPornostar(ポルノスター)に読み間違えるほどのヴァカだ。
本人は「ブルーフィルムでセルフプレジャーしすぎたかな。エヘヘ」とだらしなく笑うが、全くもってその通りだ。と、俺は思う。
一速で加速し続けたF1のエンジンはとうとう焼きついてエンストを起こし、残念ながら彼の思考回路は未来永劫お亡くなりになってしまいました。あの閃光のような天啓が、彼の元に蘇ることはありません。二度と。
さようなら。さようなら。
一万三千年後にこぐま座のポラリスがこと座のベガに天頂の座を追われるその日まで。
(ああ、やばい。すっげぇやばい)
宇宙の真理がマイナーチェンジしてる。十一次元が四次元化する時ってこういう風に切断されたんだ。 『俺は:1』『ブルーフィルムを:3』
『水溶性ペーパー麻薬:2』『服用している:4』
人が重複してらせん状に絡み合い、白い蛇がボトボトと林檎の木から鉛のように雨と降る。
ガラスケースに閉じ込められた脳の鍵は、蝟集する小人の群れにNMDA受容体の再結合を阻害する。
マグネシウムイオン君が通せんぼするから進めません! どいてください! 僕は行かなきゃならないんです!
チャンネルを開いてシナプス後細胞へ循環する内面世界を救わなきゃ。
四肢断裂病に罹患して、バラバラ密室死体が世界中に溢れて鏖殺の釜の蓋が、増殖炉の水蒸気でガタガタと揺らいで被爆します。また、歴史が、脳内で、違って。
直後、断線―
……停止した暗闇の奥で真紅の光が放射状に明滅している。
あの光は粒子だ。五次元領域の平面を開く、黒い恒星の重力に収束された―永遠の牢獄に閉じ込められた囚人だ。
『ブルーフィルムの服用は、魂の損耗率を高めます』とヤブ医者K様は云っていたが、あれはもしかすると剥離した魂の欠片が密集したガス星雲みたいなモノなんだろうか。
(これ以上の深入りはやべーかな)
俺は、舞い戻り始めた理性の鳩を籠に閉じ込め堅く鍵をかける。数匹居なくなってる気がしたが―予測よりは随分マシだ。
あの群光に喪失された契の一部が彷徨っているかもしれない、そう考えると後ろ髪をひかれはしたが、小さく首を振って目的を完遂することだけを念頭に置く。
多くを求めるものは、より多くを失う羽目になるからだ。
117:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 23:16:41
折角書いたのであげさせてもらいました
お次のお題は>>115さん
118:名無し物書き@推敲中?
07/08/24 03:17:36
―――――――――――――――「クラゲ」「夢」「モールス信号」
どこまでも深い海の表面を、ただ何をすると無く浮かぶだけのクラゲ。
漂っているだけだから、海の深さも、広さも知らない。
僕も同じだった。
ただ何をするということもなく漂っている。
朝と夜の違いなんて生まれないし、寝ているか起きているかも定かではない。
僕も深さを知らないし、広さも知らない。
僕は海の一番深い、光も届かない場所で漂っている。
暗闇の中、唯一僕の存在を証明してくれるのは、音だけだった。
どこからか断続的な、まるでモールス信号のような音が聞こえていた。
最初に聞いたときは、とても小さな音だった。だけど最近は、だんだんと大きくなってきていた。
音はしばらくするとやみ、またしばらくすると始まった。
時間なんて概念はないけれど、僕は音の間隔が短くなってきていることを感じていた。
光のない海は冷たく、とても心地よかった。
だけど僕の存在を証明するには足らなかった。
刹那、音が消えた。
途切れたのではなく、消えた。
だけれど僕は、変わらず漂っている。
果たしてこれは夢なのだろうか。それとも、先ほどまでが夢であったのだろうか。
音は消えた。
僕を証明する物はなくなったけれど、僕は未だ漂っている。
――――――――――――next>->「微睡み」「計算」「かき混ぜる」
119:お題「微睡み」「計算」「かき混ぜる」
07/08/24 09:37:21
「相対論のお陰で質量とエネルギーはE=mc^2っつー単純な計算式でまとめらるようになったんだが。未だに反りの合わないヤクザな連中が縄張りを主張しやがるから、俺たちは新しい理論を打ち出さざるを得なくなったわけよ。
んで、量子力学が生まれたんだけどよ。やっぱこいつも当初の予測どおりパーペキじゃねー。
物を動かす四つの力―重力、電磁力に二種類の核力―のうち、三つの力を統合することには成功したんだが、重力だけはどうしても組み込むことができましぇーん、でした。
と、いうわけで誕生したのが超ひも理論だ。ありとあらゆる物質は弦の振動で構成されているとかいう奴。
この世は旋律で完成しているわけだな。新星超爆発により宇宙誕生! の原初から」
「あのドラッグの―ブルーフィルムの全能感幻視は、どっちかっつーと極大再生っつーカンジだったけど? ESP(超能力)を物理学的に改変(バージョンアップ)する、っつーよりは一時的に除外(オミット)して異相の次元から引っ張ってくる―みたいな感覚に近かった。
シャッフルされるみてぇな感覚っつったら良いのか―シュレディンガーの猫が、ガス室で殺されるのを微睡みながら待つような……なんかこう上手くいえねーけど、決定論っぽいっつーか」
「はーん。おもしれぇな。面白い、面白い、面白い」
ヤブ医者K様は細いあごに指先を添えると、椅子のせもたれをキコキコ鳴らしながら身体を揺すり始めた。
「話を聞いてる限りじゃ、まるっと逆なんだよな。知覚のズレが」
「と、云うと?」
「超ひもはどーにも違うみてぇだから省くとしてよ。おめーは薬用効果で、巨視感と決定論的世界観が並列で走る感覚を味わってる。
で、だ。その感覚を、おめーはシュレディンガー持ってきて表現しようと試みたがどーにも上手くいかねぇ。なぜか? 当然だ。巨視感は量子力学のもんじゃねぇ」
ヤブ医者K様はおもむろに座席を立つと、部屋の中をうろうろとさ迷い始める。
「いいか。決定論―決定的世界観って奴は、因果律を伴ってる以上、波動関数計算可能な量子力学のもんだ。でもな、巨視は違う。極大規模の物理学―ソイツは相対論のもんだ。銀河や惑星を相手取って宇宙を支配する一般相対性理論のもんだ。
おいおい、わっかんねぇ。なんでだ? なんで意識の攪拌が混在を生みながらも、明確に断裂してんだ?」
120:名無し物書き@推敲中?
07/08/24 09:38:59
オチが・・・
次のお題は「青空」「愛読書」「モグラ」でヨロシクー
121:「青空」「愛読書」「モグラ」
07/08/24 12:23:39
青白いディスプレイの照り返しを受け、薄暗い個室で一人の男がパソコンラックに腰掛けていた。口笛を吹きながら淡々
とキーをパンチしている彼はハッカーだった。
ハッカーといえども全ての情報を電線から入手するわけではない。ターゲットの会社に足を運び、実地でデータを集める
作業も必要になってくる。大企業は個々人のつながりが希薄で、同僚のPCに「モグラ」を挿入する見知らぬ男がいても高確率
で気づかない。こうして「モグラ」を通じて社内のPCを遠隔操作し、必要な情報を内部ネットワークからかすめ取るのだ。
社内ネットワークに侵入するまでは、まるで青空のピクニックのように気楽な足取りだった。しかし運営データのバンク
にアクセスするときのパスワード認証でまごついた。「flower0825」これがパスワードのハズである。あの女社長に回線修理
業者を装って聞き出したパスワードだ。嘘ではあるまい。
タイマーが動き出した。2:00、1:59、1:58・・・・・・あと2分以内に中に入らないと回線がダウンしてきっと侵入アドレスから
ハッカーである俺の存在がバレてしまう。一旦脱出しようとするも、戻るコマンドはロックされていた。俺は急いでパスワ
ード探査ソフトを起動した。ありとあらゆる文字列を繰り返し入力して、パスワードを特定してくれる。10文字以内のパス
ワードなら2分丁度で開くハズだ。しかし・・・・・・。
彼は頭を抱えた。もしも10文字以上のパスワードだったら?・・・・・・終わりだ。浦世界での信用を失い、もう二度と飯は食え
まい。いや、その前に刑務所に入れられる。肉体の貧弱な彼の事、檻の中ではさぞかし素敵な仕打ちを受ける事だろう・・・・・・
愛読書のカーネギー語録を思い返すが、こんな時、偉人のキレイ事は何の役にも立たない。
0:11、0:10・・・・・・ふと社長室の中にあった大きな藤の花を思い出した。女社長が手ずから水やりしていた、あの薄紫の
見事な藤を。
彼は慌てて探査ソフトを止め、パスワードを手動で入れた。「wistaria0825」
ゲートが開いた。
次お題「アイボリーホワイト」「世界」「何」
122:121
07/08/24 12:27:40
誤字訂正
13行目 浦世界 → 裏社会
なんだよ浦世界って・・・・・・orz
123:名無し物書き@推敲中?
07/08/24 12:46:18
>>122
イサキは、イサキは釣れたの?
124:「アイボリーホワイト」「世界」「何」
07/08/24 18:56:32
二つを並べてみる。
アイボリーホワイトと、瑠璃色。俺と弟のコップ。二ヶ月前、父が買ってくれたものだ。
「ほら、お前たちに買ってやったぞ。うちには食器が少ないからな」
当時は俺だって無邪気に喜んでいた。
でも今になって考えてみれば、罪滅ぼしのつもりだったのかもしれない。
二つのコップの入った紙袋を持ってきた、その翌日から、父は帰ってこなくなった。
置き手紙もあった。けれどあんまりにも平凡な内容で、父が母以外の女のところへ行ったなんて、にわかには信じられなかった。
母は泣いていた。俺は内容を覚えていない。
「女手一つで息子三人を育て上げ……」なんてのはテレビでよくある美談だ。
でもその裏には、もっとたくさんの悲惨な現実が溢れていると知った。
歳をとった女性が就ける職業なんて、とても限られている。
ハローワークに行った母は、毎日肩を落として帰ってきた。
残念ながらあなたにあう仕事は無いようですねぇ、なんて言うのよ、なんて愚痴をこぼしていた。
役所から貰えるお金じゃあ、全然足りない。弟はお腹がすいたと泣いてばかり。
ある日俺が高校へ行くと、先生が気の毒そうな顔をして待ち受けていた。どうやら俺はいつの間にか高校を中退していたらしい。
帰ると母一言、「ごめん」と言った。そしてその日から、彼女は一日中寝て過ごすようになってしまった。
ガスが止まり、一週間ほどして電気が、そしてすぐに蛇口をひねっても水が出なくなった。
翌日、俺は家を出た。黄ばんだホワイトアイボリーのコップを残して。
次、「絵の具」「扇風機」「ペットボトル」
125:名無し物書き@推敲中?
07/08/24 21:42:11
>>124
お題「アイボリーホワイト」しか消化できて無いッスよ~;
さすがに三個中一個だけしか使わないのはヒドイ・・・・・・
126:名無し物書き@推敲中?
07/08/24 22:07:11
>>125
あ、忘れてました。すみませんorz 回線切って(ry してきます
お題は引き続き、「アイボリーホワイト」「世界」「何」 で。
127:「絵の具」「扇風機」「ペットボトル」
07/08/24 22:09:01
昔の写真をいじっていると雨に濡れた若い男女のものを見つけた。当時の情景がまぶたの裏に浮かび上がってくる・・・・・・
俺はキャンバスに絵の具を塗りたくっていた。貴子はソファでつまらなさそうに雑誌のページを繰っている。扇風機に向
かって「あ~~」と声をかけた。声色の変化を楽しむ遊びだが、迷惑だ。同じ部屋にいられるだけでも迷惑なのに、音をた
てて気を散らすとは何事か。頬がこわばるのを感じた。
「ねえ、何の絵、描いてるの~?」「トンビだ」
「へぇ~、ところでさ~、今日ね、友達が彼氏と遊園地いったんだって~」「へぇ、そうか」
「・・・・・・ねえ、ヒマ~」「へぇ、そうか」
突如、中身入りのペットボトルが飛んできて俺の頭に当たった。貴子は目を真っ赤にして部屋を出て行った。
芸術家と付き合うっていうのはこういう事なんだぞ?そこらへんも承知の上で交際を始めたハズだろうが。とは思っても、
さすがに後味が悪いので後を追うことにした。捕まえた。雨の中でグショグショに濡れている。そこで写真を撮った。
「何見てるんですか?」妻が話しかけてきた。髪が白い。老いたなあ、俺も、こいつも。
「なに、昔の写真だよ」俺の眼前にいるこの女、貴子では無い。
あんな口うるさく文句言う女とは違って、こちらの都合をなんでも素直に聞いてくれる従順な女を捕まえて結婚したのだ。
そのお陰で俺は一日中絵を描いていられるし、ケンカも起きていない。芸術家の妻は、こうでなければな。
次お題「薄紫」「口」「病」
128:名無し物書き@推敲中?
07/08/24 22:12:11
なにやらややこしい事になってるみたいですが
次お題は「薄紫」「口」「病」でおねげーしますだ
129:「薄紫」「口」「病」
07/08/24 22:31:42
アンタレスからの通信が一週間ほど途絶えているとの
連絡が総務省に入ってきたのは私が昼食から帰って
デスクで「あなたにも買える!中古宇宙船!」という
特集が組まれた男性雑誌を読んでいるときだった。
同僚の木下は「悪いけど」と言って午後、一番で
スクランブル化されたメッセージを定期的に
アンタレスの送るよう課長からの指示を持ってきた。
俺は思わず、何で俺がやらなきゃいけないのかと
怒りがわいてきたが木下には1000日本ドルほどの
借金があって、それを帳消しにしてくれるかも
という期待があったのでぐっとこらえた。
その後、定期船からの連絡によるとアンタレスには
奇病が発生し現地人や出張で地球から派遣されてる人間
みんな死んだそうである。奇病は口の周りに
薄紫のシミが浮かびやがて赤茶け皮膚をやぶって血液が
出て来るそうだが、処置の仕方が分からずバイオレベル5
つまり着陸もアンタレスからの出星もできなくなった。
130:名無し物書き@推敲中?
07/08/24 22:34:16
次は「渋谷」「ワキガ」「友達」で
131:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 00:36:44
僕には友達がいない。
学生時代からそれは変わることはなかったが、別にどうということはなかった。
しかし社会人として会社に勤めるようになってから、問題は深刻化した。
人はみな僕を避け、陰で悪口を言っているようだった。
笑われることにも、避けられることにも慣れてはいたが、一番の問題は仕事に支障が来したことだった。
あからさまに仕事の量を減らされ、何もすることがなく戸惑っている僕を笑っているのだ。
お茶を入れてくれることもないし、僕がトイレに行こうとするとすぐ様に「清掃中」の札を立てられた。
給料も気持ち下がったし、このままでは生活さえ危うい。
すべては、ワキガが原因だった。
少しでも汗をかけば臭いが強くなり、エレベーターでは顔をしかめられない日はなかった。
なるべく汗をかかないようにと試行錯誤したが、どれもうまくはいかなかった。
脇に紙製のパッドを入れても、ワキガを防止する薬を塗っても、何も解決はしなかった。
ついに僕は、医者に行くことにした。
ワキガで医者に行くなんて、少しおかしな気がしたが、このままではいけない。
意を決して渋谷のとある病院に出向くことにした。
ぼくはことのすべてを医者に話して、汗を抑える薬やワキガを抑制する薬を出して貰えるように頼んだ。
なんならレーザー治療ででも治してくれとも言った。
132:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 00:37:20
だが医者が僕に処方したのは、精神安定剤だった。
僕は抗議した。僕が欲しかった物はこんなものじゃなかった。
飲んでも身体がだるくなるだけで、ワキガの臭いは一つも弱まることはなかった。
「あなたはワキガではないんですよ」
問い詰める僕に、まるで嫌な物でも見るかのような目で吐き捨てた。
僕を苦しめてきたあの目だった。
ワキガではないなんてことはありえない。この臭いは、ワキガは、実際に僕を苦しめているではないか。
ずっとこれが原因で友達もいなかった。それを、よくもぬけぬけと「ワキガじゃない」だなんて―
数日後、両親がやってきて、一緒にあの病院へ行くことになった。
両親とは疎遠だった。小さい頃、意を決して相談したのだが、医者と同じあの目をして僕を拒んだ。それ以来僕は彼らに心を開くことはなかった。
「息子さんのことで、相談があります」
そう医者は告げると、僕を残して両親とともに消えていった。
それからしばらく経ったある日、両親から連絡があり、一緒に片田舎の病院へとやってきた。
これから数日、入院して治療していくそうだった。
仕事のことが気がかりであったが、ワキガを治してくれるとのことだったので、喜んで受け入れた。
その病院でも、あの忌まわしい目で見られたが、治ればそんなものとはおさらばだ。
僕は、何年も感じたことのない充実感を、わずかに感じた。
三句:「もたれる」「質素な」「寿司屋」
133:「もたれる」「質素な」「寿司屋」
07/08/25 13:56:08
とあるアメリカの寿司屋に派手なガンマンが女連れで入ってきた。ワシの羽根飾りのマント、真っ赤なスカーフ、まばゆいイエローのハット。
顔も気さくで明るそうだ。そいつは椅子にもたれると、ギコギコ揺らしながら連れ合いの美女と談笑し始めた。
始めのうちは周囲も愉快そうに聞き耳を立てていたが、酒が入るにつれちょいとばかしうるさくなってきた。
「おれっちはよぉ~お~。狙ったエモノはぜってえ~にハズさねえ!ぜってえ~に、ハズさねえ!」
「・・・・・・うるさいぞ」店中の人間の気持ちを代弁した彼は、質素な身なりのガンマンだった。そのこげ茶色で統一された服や装飾品はとても
古ぼけていて、汚れていた。よく見るとドロや砂があちこちに付着している。
かくして、決闘となった。
お互いに背を向けて10歩ずつ歩いたところで振り向き、撃ち合うルールだ。店主がカウント役をつとめた。
「1、2、3、・・・」派手ガンマンはやや歩幅を短くした。対してボロガンマンの歩幅は長い。
「10!」派手ガンマンは相手に背を向けたままリボルバー銃を連射し始めた。これが相手よりも必ず先に着弾させる
彼の得意技だったのである。しかしその弾はボロガンマンの頭上を過ぎてゆく。うつぶせに、しかし頭を相手に向けた
状態で地面に伏し、自己の被弾率を最小にしながらじっくり相手を狙い打つ、ボロガンマンの戦法だった。
ボロガンマンが敵の頭部にスコープを定めきった丁度その瞬間、ボロガンマンは眉間を打ち抜かれて絶命した。
「あの野郎の後ろ撃ちの弾がたまたまマグレ当たりしやがったんだ!クソ、ついてねえよな」とは、寿司屋にいた客達の談である。
しかしボロガンマンは己が死ぬ間際に、確かに見た。
二丁先の高見台から自分をライフル銃で狙い打つ、敵ガンマンの連れ添い人、あの美女の姿を。
次お題「ヒスイ」「右」「左」
134:お題「ヒスイ」「右」「左」
07/08/25 15:54:12
―Right or Left?
「ライトはライトでも正解のライトだ。ザッツオーライト」
開かれた右の掌には、羽を休めて眠るダブルイーグルが収まっていた。
安堵に肩をなで下ろす俺とは反対に、太一は口元をいびつに歪めて嘲笑いながら、オーバーリアクションに肩をすくめる。「亜鳥(アトリ)に、感謝しろよ」と。
「眠り姫様は素晴らしい才能をお持ちのようだ。まるで女王のような……」
以前、学内三悪と名高いサバト部の隷従魔人、木津河は亜鳥の豪運をチェスに喩えて評したが。
俺の彼女に対する印象と言えば
―Black or White?
BrackBrain(マヌケ)な俺を勝利に導く、敗北の穢れを知らない真っ白な風の女神。
ウェッジウッドのように柔らかな温もりをまとう肌も、青々とした若竹のごとく清冽な色彩を放つネフライトめいたその瞳も、彼女を示すパーツ/記号なにもかもが人類凡百を遥か彼方に凌駕して、完成している。
無様な俺に比べて、なんと美しいことか。まるで、太陽と井戸底の蛙だ。
「そんな彼女が俺にベタ惚れなんてマジまいっちゃうぜ! もう!」
「嘘こけ」
背中から蹴り飛ばされ、あえなく転倒したところに腕ひしぎ十字固めを決められる。
「ギブギブギブギブ! マジで折れる! マジで右腕折れますって、太一っさん! ごめんなさい調子乗ってました!」
「で、どーすんよ。契約、続行すんの?」
右腕に組み付いた姿勢のまま、尋ねてくる太一。俺は亜鳥の穏やかな寝顔をパブロフ的に脳裏によぎらせ、それを僅かな逡巡で塗りつぶしながら、回答を捻り出す。
「今度の契約はパスします。太一のラプラスは亜鳥の運命過剰補正を押さえ込むのに役立つけど、どーも彼女密かにストレス溜め込んでるみたいなので。
俺個人としては、トンデモ事件に巻き込まれるのはもうコリゴリなんだけど、それもまた含み損っていうか」
「ふーん」
玩具のようにもてあそんでいた俺の腕から剥がれ、腰元を掌で叩きながら太一は小さく
「粗砥、MO化計画コンプリーツ」
と呟きながら首を左右に振り振り去っていった。
そんな太一の背中を見送る俺は、肩に乗っかった疲労をもてあまして床へ腰を落ろし、そのまま上半身も倒して寝転がる。
(さて、俺の明日はどっちだ……。アイツ、転がし方に容赦ないからなー)
―Right or Left?
135:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 15:56:45
次のお題は「生活」「春秋」「テロリスト」でヨロシクー
136:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 16:52:48
強盗のサムはジプシーの老人を殺害し、人より三倍長く生きられるという翡翠の首飾りを手に入れた。
サムは町へ戻ろうと道を急いだが、夜が更け森の中で道に迷ってしまい、右も左もわからず途方にくれていると
グルルルッという自分を狙う低い唸り声の存在に気づいた。狼だった。
狼は月明かりに照らされ、美しく光る翡翠の深緑に引き寄せられるように全速力でサムに襲い掛かってきた。
首飾りを捨てるという選択肢もあったのだろうが、必死で逃げるサムにはそんな冷静な考えを持つ余裕はなかった。
無我夢中で木の枝や草木の茂みを掻き分け、前へ前へ走ると突然足元の地面が崩れ激痛がサムの身体を襲う。
町の住民が獣を撃退するために仕掛けた落とし穴だった。穴の底には大量に鉄製の鋭い杭が打ち込まれておりサムの
全身を隈なく貫いていた。身動きもとれず、喉を潰され叫ぶことも出来ずに、絶え間なく狂いたくなる程の苦痛が全身を駆け巡る。
ところが死ぬ気配は微塵も無く、サムの意識は翌日もさらに翌日もハッキリしたままだった・・・。
誰にも発見される事なく月日はどんどん過ぎて行った。腐敗してゆく自分の肉体を感じながら、野鳥に眼球を刳り貫かれながら、
サムは自分が殺したジプシーの老人の最後の言葉を反芻していた。
「長生き出来るという事は決して幸せな事ではない」
塵となって消えるまで、サムは常人の三倍生きた。
137:136
07/08/25 16:57:10
被ってしまった・・・最悪
138:「テロリスト」「生活」「春秋」
07/08/25 20:13:21
「オラオラー!手を上げろ~!俺たちゃ義勇兵だー!」
建物の中の人間達は唖然としている・・・・・・そこはテロリストが来るような場所では無かったので。
「オラ~!手ぇ上げろっつってんだよ~クソヤローどもめ!」
数発の銃弾が天井に撃ち込まれてようやく人々は大人しく両手を上げた。しかし皆、納得いかない表情である。
なにせその建物の看板にはこう書いてあった。
「文芸春秋社」と。なぜ文芸者にテロリストが?皆、そう思っていたに違いない。
「おら~、社長さんよぉ、オメー何あんなもん芥川賞にしてんだよ、あ~?ア○ッテの人なんてよぉ」
「いや、それは、その・・・・・・」
「どうみても俺が送ったヤツのが面白えだろうが、あぁ~?」
「ですから、我々は選考に関与しておりません!」
「・・・・・・嘘つくんじゃねーよ、文芸春秋に芥川賞作品載っけてんだろーがよぉ」
その場にいた人間は、文芸テロとでもいうべき前代未聞の犯罪者達と、その犯人が文芸者の端くれにも
関わらず受賞作品の決定は作家達からなる選考委員会によって行われるという初歩的な知識も知らない
事に驚き、一部の者などは彼がどんな小説を書いたのか興味を持つまでに至った。
「とにかく、俺が書いたこの『寿司屋のガンマン』>>133 、芥川賞にしろってえの!そんぐらいできるだろ?」
社長に向けられる銃口。とりあえず、一読する社長。それは寿司屋の前で決闘する二人のガンマンの話だった。
「無茶だ!短すぎる!それに文体にセンスが無い!もっさりしすぎてて折角の決闘シーンが台無しだ。そ
れにライフル銃でボロガンマンを狙う美女だぁ?アイデアもくだらなすぎるよ!」
小説の品定めが生活の一部となっている人間である。ついつい本音が出てしまい、一瞬の間をおいて後悔した。
テロリストのリーダーはありったけの銃弾を会社の中にバラ巻いて、仲間と共に逃げ出した。
次お題「死」「再生」「創造」
139:138
07/08/25 20:18:17
誤字 6行目 文芸者 → 文芸社
13行目 知識も知らない → 知識も持たない
次お題は変わらず「死」「再生」「創造」
140:「死」「再生」「創造」
07/08/25 20:29:52
昔、フランスにランボーという詩人がいた。
機関銃を相手に一人で数千人の兵士と戦いながら
休息の合間に疲れた心を詩で癒したと言う
伝説の吟遊詩人である。というのはもちろん嘘で
興味ある人は昨今、インターネット上で電子百科事典の
バイブルと化しているウィペディアを参考にすると良い。
そして二千年後の今日、銀河を行き交うタンカー船に
無賃乗車した詩人が窓の外にうつる星の死と再生の物語を
暗い倉庫の中で壁にコインで書きなぐっている。
想像は彼の心で宇宙になり、やがて何千光年先で
広がる宇宙につながるだろう。
「エイズ」「TV」「バイク」
141:140
07/08/25 20:34:06
想像は彼の心で 誤
創造は彼の心で 正
推敲は大事だなorz
142:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 21:06:26
推敲してから書き込もうな。
そして何も「俺が書かなきゃ」なんて気に負うことはないんだ。
書きたい物が浮かんだら書こうな。
人の趣旨にどうこう言う権限なんて無いが、あまりに見苦しいから言わせてくれな。
143:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 21:11:36
「俺が書かなきゃ」なんて思ってる奴居るのか?
144:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 21:15:47
ここ最近の多すぎるまでの書き込み!
恐ろしいほど夏を感じさせるクオリティーの低下!
間違いなく複数人ないし一人が、出ないうんこをひねり出してるっ!
145:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 21:20:56
半年前からほとんど変わってねーだろwwwww
クオリティが低いのは別に今始まったことじゃねーよ
146:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 21:41:05
自分の作品に、自信があるならクオリティが
低かったら目立つわけで喜ばしいことだろ?
それとも、それで埋没しちゃうようなものなのか?
文章書きなら戯言言わず文章を書けよ。
147:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 21:42:22
>>142>>144
>>1 嫁カス
>小説・評論・雑文・通告・㌧㌦系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
雑文だろうがオチなしだろうがなんでもありなんだよ!!
148:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 22:15:30
>>147
>小説・評論・雑文・通告・㌧㌦系、ジャンルは自由。
コレを間違って解釈してないか?
>>142>>144 の言いたいことは、少しは読むほうの気持ち、読まされる方の気持ちになれってこと。
だいたい、嫁カスって言葉使う時点でそんなヤツの短時間でひねり出す落書きは、程度が知れてる…
149:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 22:41:30
スレリンク(bun板)
続きはこっちでよろしく
150:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 22:55:31
って!現在のお題は「エイズ」「TV」「バイク」 ですな。
「エイズ」て言う言葉をどう料理出来るか!でその人のレベルが測れるナ!(密かなたのしみ)
151:「エイズ」「TV」「バイク」
07/08/25 23:41:50
バイクから降りて、私は月葉画伯の屋敷に足を踏み入れた。ホコリの上に幾多もの足跡が残っていた。画伯は故人で屋敷も
空き家な上に立ち入り禁止になっているのだが、ここに忍び込む連中が大勢いるのだ。画伯の最後の一枚を求めて。
月葉画伯はエイズという業病を背負いながらもその一生を絵描きに費やした人間である。彼が死んだ時、アトリエから出て
きたのは「四季のヘビ」と銘打たれる「三枚」の絵だった。それぞれ、春、夏、秋をモチーフにした三枚の絵だったが、屋敷
のどこを探しても冬のヘビの絵だけが見つからなかったのだ。
取材に来たTV局がいろいろ調べに来た事もあったが徒労だったようだ。庭に咲くスイートピーの俯瞰図が最後の絵だった
のではないかと推測する人間もいて、実際にそれを撮影した写真も出回っているが、あれはどうみたって絵ではない。
私には幸運が二つあった。一つは幼い頃に死期間近の月葉画伯と親交があった事だ。彼は極度の人嫌いだったそうだが、
好奇心半分に屋敷の庭に入り込んだ幼き私に絵を見せてくれたり話を聞かせてくれたり、親切にしてくれた。「私は最後
の絵は礼拝室の中に描こうと思うんだよ」と語っていたのを覚えてる。
もう一つの幸運、それは役所の無人建造物を取り扱う部署に配属された事。こうして堂々と屋敷の中を探索できる。
私は礼拝室のあちこち探しまわったが、絵らしきものは見つからなかった。熱心な月葉ファンの先人たちが親切にも
聖母像をカチ割ってくれていたが、中に絵が入っていた形跡は無い。ふと私はオルガンの蓋を開けてみた。中には無数の
弦が張ってあり、それらの一本一本に不規則で綿密な変色部が見られたが、それはやはり絵では無かった。
気の抜けた私は戯れにオルガンの鍵盤を叩いてみた。ラの音を出したその鍵盤は、レとファの中間にあった。稲妻に
打たれたような気がして、私は逐一鍵盤を叩いては弦を正しい位置に張り替える作業に没頭した。
こうして全て正しい位置に張りかえた弦達を遠目に見やると、土の中でスヤスヤと眠る一匹のヘビが現れた。
次お題「交差点」「悪魔」「人」
152:お題「エイズ」「TV」「バイク」
07/08/26 00:14:28
エイズなんて病気に罹患する奴はクズだ。そんな風潮は少なからずある。体裁は同情を装っても、オマエの放埓な生活が導き出した罰がそれだよ、と無言の内に責められている気がして、とてもじゃないが告白する気になんてなれない。
陽性反応が出て、ご家族にご連絡を、と担当の医師は勧めたけれど俺は猫のようにひっそりと野垂れ死ぬつもりだった。
処方薬を毎食後、十錠ほど摂取する。
抗HIV薬剤を初めに、低下した腎機能を補うためのプレドニン、サイクロスポリ―最近は手慣れたもんで、機械作業のようにそれらを処理していくが、当初は苦痛で苦痛で仕方がなかった。
一つ錠剤をかじるたび、一口液状薬を嚥下するたび、細胞の一つ一つが薬剤に犯されていく気がして、病院特有の薬品臭さが体から漂ってきやしないものかと何度もシャワーを浴び、皮膚をかぶれさせた。
死の恐怖は、ヒトをナイーブにする。
生の有様を強く実感すると共に、我慢の制動は次第に効かなくなっていく。
「おまえは変わったよ」―幾度も幾人にもそう告げられ、告げられるたびに周りから一人ずつ人は減り、気がつけば理想的な孤独を手に入れていた。
起床、錠剤、バイト、錠剤、TV、錠剤、就寝、時折通院の日々を延々と繰り返して、鬱々と日々は磨り減っていく。不幸にもエイズに罹患した血友病の少年が記したエッセイや、重病人が読むスピリチュアルケアの啓蒙書を紐解いても、なんら心に変化は起こらなかった。
最早、俺は終わっていく人間で、変化は内側にしか生まれない。
どんな素晴らしい言葉も、どんな美しい景色も、触れられない影のように素通りしていく。あと太陽を何度目にすることができるだろうか。
メンテナンスを怠りがちだった中型バイクにまたがりながら、目を閉じて考える。このままリヤブレーキがぶっ壊れて天寿を全うする前に、ガードレールに激突して死ねないだろうか、とか。
されど、何一つとして成せることはなかった。
試しても、心の根深い部分が抵抗の悲鳴をあげるのだ。目を閉じていることができない。死は圧倒的な圧力を伴って、ありとあらゆる敗北感と無情を俺に明け渡す。
……明日、再び目を開くことはできるだろうか。
猫のように死にたい俺は、意識が眠りに落ちる直前にいつもそれを思う。Memento mori。
ヒトは、どのように生きても罪深い。
153:名無し物書き@推敲中?
07/08/26 00:15:11
折角書いたのであげさせてもらいました
お次のお題は>>151さん
154:名無し物書き@推敲中?
07/08/26 00:51:54
私としては>>152さんの方が好みだったかな。
次お題「交差点」「悪魔」「人」 ですね。
155:名無し物書き@推敲中?
07/08/27 02:47:59
人の姿をした悪魔は、今日も昨日と同じようにスクランブル交差点に紛れた。
車が止まる一瞬に、それぞれどこかを見つめその群れに紛れた。
何一つ成長するものがない都会。そこに巣くうのは果たして人ならざるもの達ばかりだった。
どこか誰かは言ったよう。都会とは人の夢を食らい成長するものだと。
しかしそれは真であろうか。
まるで夢遊病者のような振る舞いで行き交うものを見れば、外からは「夢を食われた哀れなもの」とでも写るのだろう。
果たしてそれは、夢を失った故に都会に引き寄せられるのであって、決して「夢を食われた」などということはないのだ
今日も昨日と同じように、スクランブル交差点で人が交わる。
いや、人の皮を被った悪魔といった方が相応しい。
果たして彼らの目には、一体何が映っているのだろうか。
「停滞」「カーニバル」「守る」
156:「停滞」「カーニバル」「守る」
07/08/27 11:46:43
ブラジルにまで嫁いでしまい、連絡が停滞気味だった双子の兄貴から手紙が届いた。
「久しぶりだな、タケル。こっちに遊びにこないか?素晴らしいカーニバルがあるんだ。
旅費は任せろ!兄ちゃんのオゴリだ」
丁度そろそろ有給とって旅行でもしようと思っていた矢先だ。そして手紙には
旅券が一式全部同封されていた。断る理由は無さそうだ。
カーニバルの日、俺はホテルブラジリアから西に3km程の場所にある廃ビルの前で
待ち合わせる事になった。ブラジルではポルトガル語が使われるが、タクシーの運転手
を始め、だいたい英語が通じるのでなんとかなった。
廃ビルの前に到着した時、突然防護服ずくめの男たちが周囲から現れて銃口を向けて
きた。なんだこれ?と思って固まったのも3秒間、俺は危機感に従って廃ビルの中に逃げ
込んだ。男たちは追ってきた。身を守るべき銃火器も無く、さらに見知らぬビルでの逃
走劇だ。あっという間に俺は追い詰められた。なんで俺がこんな目に?しかし次の瞬間、
疑問は解け始めてきた。
その男たちが持っていた一枚のポスター、見知らぬポルトガル語の下にある英語の脚注
「political prisoner(政治犯)」その上にあるのは紛うかた無き兄貴の顔写真。俺は自分
がブラジルに呼ばれた本当の理由に気づくと同時に、胸部に熱い弾丸をもらった。
次お題「ビーフ」「カレー」「ライス」
157:代理人
07/08/27 14:09:43
お題「ビーフ」「カレー」「ライス」で誰か混乱して下の感想専用スレに書いた人がいるよう!
スレリンク(bun板)l50
この三語で書け! 即興文スレ 感想文集第12巻
っていうわけでおせっかいだが、こっちへ移しておきます。
ついでにあげます!
感想スレ >374さんの作品
「ビーフ」「カレー」「ライス」
ここはおいしいと評判の洋食店
看板には毒々しい文字で「うぬらばや」とかいてあり、パッと見ただけでは、誰もはいりたがらない店だ。
だが、そこの料理の味は天下一品である。
今日も昼休みの合間をぬって、昼だというのに2~3人ほどしかいないその洋食店へやってきた。
「う~ん、ビーフシチューにしようかなぁー、それともカレーライスかなー」
黒いもの同士で悩んでいると、店の奥から声が聞こえてきた。
はっきりとは聞き取れないのだが、確かに日本語で話しているようだった。
「かゆ……うま」
かろうじて聞き取れたのは、それだけだった。
次のお題 「かゆ」 「うま」 「ヘルプミー!レオン!」
158:お題「かゆ」 「うま」 「ヘルプミー!レオン!」
07/08/27 14:46:48
「ゾンビニート。腐乱夏厨。偉大じゃないか、彼らは。まるで休みなく働くハムスター小屋の車輪のようだね。俺が言ったんじゃないですよ、トイレの落書きにそう書いてあったんです」
あまりに辛辣な物言いに世界は氷河期を迎えました。
「ヘルプミー! レオン!」
聞こえません、なにも聞こえません。吹きすさぶ豪雪の、狂ったようなエガラップに掻き消されて、稚拙なネタなどすべりマクリマクリスティ温度はさらに低下する一方です。
某・全裸にネクタイ一丁のN川さんが、舞台袖で自分の出番はまだかまだかとウズウズしてるみたいですが、華麗に無視しておきましょう。○MRと言った方が通りはいいですかね? ちなみにMMRではありませんよ悪しからず。
まあ、いずれにせよ脱衣キャラは江頭一人で十分です。
赤い彗星の片割れが淘汰されてしまったように、一つの番組に脱衣キャラが二人も登場すると場が壊れます。嘘です。脱衣キャラは好きなのでイクラでも登場すれば良いと思います。
タラちゃんは言いました。「かゆ」、と。
さすれば海は二つに開かれん。イスラエルの民を率いてカナンを目指したモーセのごとく。
俗に言うエジプト記ですね。俺のターン的なアレの祖国です。本編を鑑賞したことはありませんが、目玉のついた逆三角錐状のペンダントをぶら下げていたので多分そうだろうと思います。
憶測でしか物が言えません。
「ツンデレは属性じゃなくてプロセスなんだ!」
と声高々にモーセは神に訴えました。しかる後に呪われて、祖国を追われた彼は百年も放浪する羽目になりました。しかも、彼一人だけ約束の地に帰還することができずに、山の天辺で野垂れ死にました。
それも全て憶測でしかありません。
「うま」と僕は言います。あなたはこのラストに対して、何らかのやるせない憤懣を覚えるでしょうか?
いやはや、しかしそれも憶測でしかないのです。某少佐もこう申しておりました。
「ネットは広大だわ」
どっとはらいどっとはらい。
159:名無し物書き@推敲中?
07/08/27 14:47:48
次のお題は「マイナー」「緩急」「博打」でヨロシクー
160:「停滞」「カーニバル」「守る」
07/08/27 23:25:36
「お若いの、どうかね?マイナーな博打だが」妙な緩急をつけたしゃべり方。いかにも怪しい感じだ。
「ふぅん・・・・・・よし、やる!」
内容は簡単、二匹のヘビを戦わせて勝つ方を予想するというものだ。当たれば2倍。負ければ0。大変解りやすい。
しかも私には少々自信があった。ヘビは割と好きな動物で知識が豊富なのだ。
さて、一匹はシマヘビだったが、もう一匹もシマヘビだった。片方は黒一色で、もう片方は淡黄に黒の縦縞。で
も両方シマヘビだ・・・・・・つまらない。同じ種類じゃどっちが勝つかはほぼ五分五分ではないか。まあ、ヘビを好ん
で攻撃するヘビなんて手ごろなところじゃシマヘビぐらいか。
私は体が一回り大きくて元気よさそうな淡黄色の子に1000円賭けた。賭けを宣言した瞬間に老人はヘビを抑える
手を離してお互いを戦わせた。淡黄色の子はロクに動かず黒い子に咬まれた。老人は淡黄が食われる前に黒を引き
剥がした。
「毎度ありぃ」舌打ちしながら私はそのいかがわしい裏通りを後にした。
※
老人は去っていく女の子を見送りながらポケットにある保冷剤で右手を冷やし始めた。
次のカモが賭けた方のヘビをその極端に冷え切った右手で掴んでやるために。
次お題「ヒヨコ」「黒」「木」
161:160
07/08/27 23:27:08
題名ミス
「停滞」「カーニバル」「守る」→「マイナー」「緩急」「賭博」
162:お題「ヒヨコ」「黒」「木」
07/08/28 23:04:07
美しい話が書けるだろうか、と僕はいつも怖がっている。何を?
JR環状線大阪駅から京橋駅に下るまでの短い乗車時間、携帯画面を覗き込みながら、文才の天使が右脳に降臨してくれるタイミングを密かに待っている。
キツネ狩りの罠を張っている気分に近い。ただ、獲物はイギリス童話にして最も捕らえやすい動物などではなく、時には虎のような艱難を、時には象のような重圧を伴って思考にインターセプトしようとする。
物語が書けるか、書けないか。違いはソレを受諾できるか、排除してしまうか。
その辺にあるんじゃないかと妄想したりもするけれど、果たして何も語り得ない人間が、語り部たる価値はあるのかと、自身を小一時間問い詰めるほどの忍耐もなく、漠々と翳る黒い月に視線を飛ばしながら自嘲したりする。
「諦めるために、人生は長すぎる」なんて。
帰宅ラッシュをやり過ごし、閑散とし始めた車内には空調が効きすぎていて二の腕に鳥肌が立つ。
桜ノ宮駅から臨める車窓越しの運河一帯は、一足早く夏の面影を置き去りにしようとしていた。
あと、一週間もたたずに夏は終わる。木々が色づき始めるのもまもなくだろう。
僕は手持ち無沙汰に、単語をパズルピースのように配列し始める。祭り、夜店、同級生の浴衣、ソースの匂い、白熱灯の柔らかい明かりに発電機の振動。
ほんのひと月前のことなのに、なにもかもが懐かしく思えて、ふと遠い昔の記憶にまで足を伸ばしてみる。そこにあるのは、埃を被ったまま色褪せずに眠るアルバムのような―ゆうに十年近くは経年していながら今にも手に取れそうなほど鮮明に描くことができる記憶。
そして迂闊にも僕は、それらを引きずり出してきてしまった。
唐突にインターセプトされた思考がベクトルを換え、流れるままに留まることを知らず、美しい話が書けるんじゃないか、その一心で記憶を調理していく。脳内タイピングするその掌で、その指先で踊る食材は、切断され、加熱され、皿に盛り付けられて生々しさを失っていく。
『夜店で親に買って貰ったカラーヒヨコをうっかり踏み潰して殺してしまった』
と云う記憶は、輪郭が曖昧であるにも関わらず、詳細な描写や心理が後付的に添付され、優秀な偽造貨幣を発行する精度で、本当の記憶を塗り潰していく。
誰でもなく自身への誠実さを喪失し、完成する物語。僕は、いつもそれを怖がっている。
163:名無し物書き@推敲中?
07/08/28 23:05:42
次のお題は「失格」「サイン」「大学ノート」でヨロシクー
164:失格、サイン、大学ノート
07/08/29 06:36:34
―上司に酒を奢られたら、翌朝は這ってでも定時に出勤しろ。
俺は終電の座席でだらしなく脚を崩し、酩酊状態で先輩の言葉を思い出していた。
この分だと明日も遅刻かもしれない。 サラリーマン失格。 いずれクビか……
連日の外回りの疲れが祟り脚がとてもだるく、座席の前方に思い切り投げ出したくなったが
他の客と面倒になるのも困る。 どんなに酔っ払ってもその位の常識は残っているのだ。
俺はぎりぎり周りの迷惑にならないよう脚の位置を正すと、ふと左隣の女の手元の動きに気付いた。
膝の上の大きなカバンに大学ノートを乗せ何か描き込んでいる。 ん……漫画か?
酔っ払いの大胆さで、俺は出来るだけ姿勢を変えずに、今度はしっかりとノートを覗いてやった。
何か、少女漫画のようなイラストだ。 「同人誌」というどこかで聞いた言葉を思い出す。
気が付くと俺は女に声をかけていた。 いや喋ったのは俺でなく酒だろう。
「何を描いてるの?」
女が振り向いた。 やや驚いたような丸い瞳。 少しニキビが残る頬に赤みが差したように見える。
「あ……イラストです。下手ですけど」 女は軽く微笑むとすぐ下を向いて作業を再開してしまった。
俺はどうしていいのか分からず、社交辞令的なことを言って会話を切り上げた。
―見た感じ地方出身の専門学校生か短大生、そんなところか……でも何故終電なんかに乗ってるんだろう。
バイト帰りか? などと俺は再び酔いどれの無意味な思索に没頭した。
「はい。どうぞ」
どれだけ時間が経ったのか、左から女の声がして生臭い瞑想から覚めた。
振り返ると娘が悪戯っぽく何かを差し出している。 切り取った大学ノートの一頁。
先ほどのイラストとは異なる、だけどやはり少女漫画風の男性の、お世辞にも上手いとはいえない
横顔が描かれていて、傍らに不思議な名前のサインがあった。 ―もしかしてこれ、オレ?
女の小顔が少しうつむいた。
165:名無し物書き@推敲中?
07/08/29 06:44:56
次のお題は、「バーボン」 「アニメ」 「深夜」 でお願いします
166:名無し物書き@推敲中?
07/08/29 16:12:09
最近の流行はアニメを見ながらバーボン、これだね。
特に深夜がおすすめ。木曜日なんかやばい。ボトル3本あけてもまだ入る。
だけど、素人にはお勧めできない。もたれる。胃がもたれる。つまみがなけりゃ翌日死ねる。これ危険。
酒臭いのをなんて言い訳できよう?「アニメでバーボンしてたので」
言えるか?君は言えようか?いいや言えまいて、素直につまみを食べるか、お子様は寝てろってことだ。
上級者ともなれば、つまみはタカタで十分なんだが、俺はあえての饅頭。これだね。
アニメを肴にバーボン、時々タカタ ってのが王道、だけど俺は饅頭。あえての饅頭。
そうこうしてると、家人が起きてくるときがある。絶体絶命。
急いでチャンネルを変えるか、バーボンを隠すかはどちらでもいい。俺の場合は饅頭も隠さないといけないから、大変。
「私の饅頭食べたでしょう」なんて問い詰められた日には、ビールも飲めない。
だけど俺はそんな危険を冒しても、この日課をやめることはない。
まんじゅう食いながら焼酎、これだね。
―え?
167:「バーボン」 「アニメ」 「深夜」
07/08/30 21:36:50
「おい、タケル!酒買いに行くぞ!」
またじいちゃんの強引な道連れだ。俺はため息をつきながらも追従する。じいちゃんは
こう見えても拳法の先生だ。未だに引退せずに俺を始めとする弟子達に毎日拳法を教え
ている。バーボンを飲みながら深夜アニメを見てたりするけど、皆からの信頼は厚い。
「っ・・・・・・気ぃつけろよ」猛スピードですれ違ってきた自転車の若者がボヤいた。俺は軽く
頭を下げて視線をそらすが、じいちゃんは違った。
「そっちが気ぃつけろよ」急ブレーキを踏んだ若者が目を細めて近づいてきた。
じいちゃんの流れるような化頸からの寸頸。腹を押さえて前かがみになる若者。
「行くぞ、タケル」と言って振り返ったじいちゃんが次の瞬間に崩れ落ちた。背後
には鉄パイプ を持った若者がいる。その若者がもう一度パイプを振り下ろそうと
しているのが見えて、俺の脳髄が燃え上がった。パイプを持った手元あたりに蹴りを
いれ、即座に距離を詰める。
通常の打撃が威力を発揮しにくい至近距離。しかし俺たちが一番真価を発揮しやすい至近距離。
相手のフックを軽く払って発頸。吹き飛んだ先には都合よく壁があった。すかさず間合いをつめる。
発頸。発頸。発頸・・・・・・。
気がついたら俺の袖は吐しゃ物でくすんだ淡黄色に汚れていた。
「じいちゃん!」助けおこすと、軽く頬を吊り上げてから目を細め、口を開いた。
「それでいいんだよ。さっき自転車に轢かれそうになった時、おまえの心は負けてた。
ただただ無難に無難にってな。だから俺はアイツに怒鳴り返したんだぞ。いいか?なめ
られて黙っているのは男じゃねえんだよ」
次の日から俺は、学校でイジメられなくなった。
次お題「黄金時代」「無敵」「最後」
168:お題「黄金時代」「無敵」「最後」
07/08/31 00:10:01
「無敵の英雄? あのジジイが? 冗談は止せよ。老いぼれすぎて相手にする奴が居なくなっただけだろ?」
ドギは、太陽の黒点みたいなツラに、真っ白い歯を浮かべながらそう笑い飛ばした。
『リングの魔術師』と謳われたミツナガの魔法は、十二時の鐘をとうの昔に迎えている。黄金の右ストレートは土くれへ、幻惑の左フックは空へと霧散し、残ったのは人々を魅了した夢の抜け殻が一つだけだ―と、遠い眼をしながら鼻で嘲笑った。
「格闘家はヘビーな職業だ。職業そのものが生き様だ。だからこそ、一生に一度だけ花を開くのさ。そこらじゅうに咲いてる雑草みたいに、何度も花をつけたりしない」
もしそんな奴が居たら、そいつは悪魔と取り引きをしたんだ。プレースタイルを金で買い取る、シナリオ屋に魂を売ったんだ。
一つ言葉を吐き出すたび、次第に歪んでいく彼の表情。
何を想っているのか、僕が想像するには手に余る。けれど、ミツナガという元ヒーローにどんな幻想を抱いていたのかを喚起させるには十分だった。おそらく、彼もまた、ミツナガという夢に魅せられていた観客の一人だったことがあるんだろう。
ドギは、胸にわだかまる憤懣を強烈な右ストレートに押し付けてサンドバックへお見舞いすると、その一撃を契機に背を向けた。もう何も語ることはないし、聞きたくもないとでも言うように。
それでも僕は、彼を苛立たせることになるだろうと知りながらも声をかける。
「最後の一戦、見に行くだろ」と。
元英雄対現王者。歴史にその名を深々と刻み込む生涯無敗同士の頂上決戦。
格闘技ファンなら新旧問わず一度は思い描いただろう絵空事が、現実になるんだ。たとえそれが、どんな残酷な結果をもたらしたとしても、彼のファンなら―彼の背を理想と仰いで追い求めてきた人間なら、見に行くべきじゃないか……
……僕は思う。
目も眩むばかりに煌々と輝く黄金時代を築く。それは英雄にとっての絶対条件だ。
そして、最終幕に見事な散り際を見せること。それも英雄にとっての絶対条件ではないだろうか、と。
桜を国花に謳う国を祖国に持つミツナガなら尚更、そういった機微に精通しているだろう。たとえ、敗北するにせよ美しい散り際を見せてくれる筈だ。
そして無敵の英雄は、その背に重く圧し掛かる二つの看板を一つ下ろし、ようやくただの英雄になることを許されるのだ。
169:名無し物書き@推敲中?
07/08/31 00:11:22
次のお題は「カツラ」「女子トイレ」「警告」でヨロシクー
170:ルゥ ◆1twshhDf4c
07/08/31 04:44:21
「カツラ」「女子トイレ」「警告」
蝉の鳴き声が幾重にも響き、頭の中で鳴いているのかと錯覚を起こしそうだった。
なぜ学校にはこんなに木が多いのか、蝉が多いのか。
強い日差しで目を細めてみる母校は、相変わらずきれいともきたないとも言えない様子で建っていた。
約束の時間まで少し時間があったので、校舎内を散策してみることにする。
女子トイレの前の廊下と、かつてのHR教室の扉には、
高校時代に友人とふざけて描いた落書きが残っていた。
思えば、高校時代は悪ふざけばかりしていた気がする。
こっそり夜の学校に忍び込んで宴会もしたし、カツラだと噂される先生のズラ疑惑の真相も追った。
先生から警告と罰の繰り返し受け、ずいぶん手を焼かせていた。
ただ、いじめだけは自分の中のモラルに反するので手を出さなかったけれども。
陳腐な言い草だけれども、愉快で充実した高校生活だった。
時間になったので、とある教室に向かった。
教壇に立つと、一瞬生徒たちの視線が私に集まる。
―今度は、目の前のこの子達に楽しんでもらおう。
私が教師になった原点は、結局自分の高校生活なのだ。
次は「カルチャーショック」「みかん」「星座」でお願いします。
171:ルゥ ◆1twshhDf4c
07/08/31 04:48:27
訂正
9行目
正→警告と罰を繰り返し受け
語→警告と罰の繰り返し受け
中途半端に前の文章の名残が……。
すみませんでした。
172:「カルチャーショック」「みかん」「星座」
07/09/03 02:15:08
2月8日
今日は朝子と星を見に行った。好きな星座を聞いた。さそり座だそうだ。その後俺の部屋に呼んだ。
こたつでごろごろした。みかんを10個も食いやがって(笑)
でも、朝子は一度も笑わなかった。
2月12日
今日は朝子と香港に旅行に行った。カルチャーショックに戸惑う俺の姿は我ながら滑稽だった。おい
しい中華料理屋で食事してから市内を散策した。橋ゲタの上に変な鳥がいた。すっごくすっごく
楽しかった。
でも、朝子は一度も笑わなかった。
6月20日
なぜだ!朝子が何をやっても笑わない。昔、一度だけ見たきりだ。そのとろけるような笑顔に
心を焼かれて、好きになったっていうのに。そういえば、あの時はなんで笑っていたんだっけ?
そうだ、朝子が俺のマフラーをふざけて絞めてきた時だ。跡が残るほど強く絞めてきたのを周り
のみんなが止めてくれた時だ。朝子はきっとふざけ合いが好きなんだな。
6月21日
朝子にいろいろちょっかいを出してふざけ合ってみた。でも朝子は何もやってこないし笑わな
い。なぜだ?マフラーじゃないとダメなのか?明日、マフラーを引っ張りだしてみようと思う。
『これから先の日付が彼の日記帳に書き込まれる事は無かった』
次お題「間合い」「緊迫」「速度」
173:名無し物書き@推敲中?
07/09/10 11:35:01
カーニバルが終わったらいきなり誰も書かなくなりました。
今のお題は、「間合い」「緊迫」「速度」 です。
名作尾長居します。
174:名無し物書き@推敲中?
07/09/10 17:11:11
絵を描いているとき。特に、自分の内臓をひりだすような強烈な心象画を描いているとき。
僕は、絵に間合いを感じるときがある。
それは遠すぎてもいけない。油断して近づきすぎるのは、なおいけない。及び腰で中途な距離を置くのなんてのは、まったくもって言語道断だ。
こいつはまったくいやらしい存在だ。ようよう描きあがったと思ったところで、忽然と現れて僕の邪魔をしていく。
あるときは風景画の、青々と茂る木々のタッチから。
またあるときは人物画の、活発な婦人の頬の紅から。
そしてあるときは僕の心象の、一番深くてデリケートな、真っ黒で真っ白で灰色で、誰にも触らせやしなかった無彩色の部分から!
今僕の目の前にある大きなパレットには、僕の恥も外聞もすべて描きなぐった白黒の世界が広がっている。
凹凸があり、濃淡があり、ベタと塗りつぶしたところがあり、繊細に書き込んだところがあり。また、それらの中庸たる要素が無作法かつ無節操に飛び散らかっている。
まるでゴチャゴチャの世界の中心には、大きな空白があいていた。
わかる、絵が間合いを放っている。
一歩引き、左手のパレットを静かに置く。一本の筆に、一色の色をのせ、右手に強く握る。
肩を、二の腕を、手首を、指先を、心臓から筆先にいたるまでを、弓矢のごとく引き絞り。
距離を、絵との距離を。速度を、絵に対する速度を。強さを、打ち倒すための力加減を。
あらゆる要綱を十分に吟味し。一度、舌をなめずり。
一息に、足を踏み込み、逆袈裟に撃ち振るった。
モノクロの世界の中に。鮮烈な赤が、一閃。
打ち抜いた絵の鮮血が、一閃。
駄文失礼。次のお題は「洗濯機」「お流れ」「誕生日パーチー」
175:かえっこ ◆vKR9dNUc2M
07/09/11 18:02:34
「洗濯機」「お流れ」「誕生日パーチー」
午後2時、家事もひと段落して、もうすぐ娘も学校から帰ってくる頃。
それまでの間、ちょっとソファーに座り、一休み。
洗濯機の周る音が遠くで聞こえていた。
その時、携帯へメールの着信があり、そこには久しぶりの名前の表示。
学生の時、仲の良かったきよみから。
最後に合ったのは3年前、そうあの時以来…
「誕生日パーチーを代代開催ちます!集ばってチョッ」
昔と変わらない変換間違いの多いきよみの相変わらずメールに懐かしさを覚えた。
そう3年前もこうしてきよみからのメールが来たのだった。
そしてあの時、お流れになってしまった真弓の誕生パーティー。
突然、死んでしまった真弓。
とても仲の良かった私たち女4人組み…
今は3人になってしまったが、よし今度の週末久しぶりに集まってみよう…
そして…あの時、出来なかった真弓の誕生日パーティーを…
次のお題 「開店セール」「サイズ違い」「号泣」で
176:「洗濯機」「お流れ」「誕生日パーチー」
07/09/11 18:56:40
お、これは懐かしい。私は旧友の桜井に向けてひらひらと手を振ってみせた。
歩道には私と桜井の二人しかおらず、彼はもうすぐすれ違おうとする私の存在に容易に気づいた。
しかし彼は、曖昧な笑顔とともに会釈をして、わざわざ脇にある田んぼのあぜ道にそれていった。
・・・・・・この後、彼を尾行し始めた私のぶしつけな所業をどうか責めないでくれたまえ。桜井は大学
時代に同じ部活で4年間苦楽を共にしてきた仲間だった。風変わりな性格で皆と距離をおいていた。
卒業後の進路を誰にも告げず、連絡先を無断で変えてしまった。桜井の行方は実の両親ですら知ら
ないというのを聞いて大変驚いたのを覚えている。
仕事の為に訪れた辺境の地方都市でそんな謎めいた彼に十年ぶりに再会できたのである。たとえ見つ
かって怒られようとも彼の現状が知りたかった。彼は口数は少なかったが、とっても優しくて純真で、
まるで子羊のような内面を持っていた。
うす茶色のさびれたボロアパートへと彼が入っていき、そこに「桜井」という名札の部屋があるのを
見つけた。ドアの前でどうしたものかと逡巡していたところ、突然ドアが開いた。
「やあ、松原。ちょっと上がっていくか?」
彼は私の尾行については何も言及しなかった。ごうごうと音をたてる洗濯機の脇をすり抜けて彼の
部屋に足を踏み入れた。そこにはなんと加奈子がいた。これまた私達の同級生で、常に明るくて
わいわい騒ぐのが大好きな陽気な子だった。無口な桜井との組み合わせがとても意外だ。
しかし今私の目の前にいる彼女には昔の面影がとぼしく、頬肉はやせこけており、視線はあらぬ方向
を向いている。来訪した私の存在にも気づいていないようだ。誕生日パーチーだとか、
お流れがどうとか、あらぬ言葉をぶつぶつつぶやいてクスクス笑っている。
「卒業と同時に付き合い始めたんだけどね。どこへ行ってもつまらないって言うんだよ。いっつも
つまらないって言うんだ。だから、ちょっと、ね」と、ぎこちなくうつむく桜井。
その後、私が病院に運び込んだ加奈子を見て、医師は重度のヘロイン中毒だと告げた。
177:176
07/09/11 19:01:42
うひゃw かぶったwww
しかも内容も旧友モノでかぶってるしwww
次お題は かえっこちゃんの「開店セール」「サイズ違い」「号泣」でヨロヨロ~www
178:「開店セール」「サイズ違い」「号泣」
07/09/12 01:45:48
家から少し離れたところにデパートが建った。
「開店セール最終日に一度行ってみる」と私が言うと、友人は言った。
「あそこの服屋に面白い店員がいるらしいよ」と。
そして現在、その服屋にいるのだが、それらしい人物は見受けられない。
この服を見積もってくれた店員も、むしろ丁寧で良い印象だった。
そんなことを考えながら試着をしていたのだが。
「ん? あれ? 入らない?」
これは、ちょっと。うん、小さいのだ。服が小さかったわけで、決して私がどうのではない、はず。
一目で気に入っていた服が入らないというのは、乙女心にはショックにすぎる。
涙目になりながらも、別段小さく見えたわけでもない服のサイズを確認してみる。
「よかった、サイズ違いなだけだ」
元々ワンサイズ小さいものだったことに、ほっと息を吐く。
ひとつ大きいものを持ってきてもらおうと顔を出すと、さきほどの店員がなにやら頭を下げている。
「も、申し訳ありません。そちらの服の在庫はそのサイズが一番小さなものでして」
「またなの! ? これで何度目よ。友達も同じことがよくあるって言ってたわよ?」
どうやら面白い店員にはすでに遭遇済みだったようだ。
一縷の望みを賭け、近くにいた店員を呼んだ。
覚束ない足取りで家に戻った私は、鍵を閉め、号泣した。
駄文にて失礼しました。お題は「晩夏」「科学」「右腕」でお願いしまーす。
179:名無し物書き@推敲中?
07/09/12 02:04:31
意味がわからない
180:名無し物書き@推敲中?
07/09/12 03:04:53
確かにひどい。
「またなの! ? これで何度目よ。友達もココでは同じことがよくあるって言ってたわよ?」
どうやら面白くない作品にはすでに遭遇済みだったようだ。
一縷の望みを賭け、近くのレスをさかのぼり読んだ。
覚束ないマウス操作で我に戻った私は、PC画面閉め、号泣した。
今のお題は「晩夏」「科学」「右腕」
181:「晩夏」「科学」「右腕」
07/09/12 14:16:34
猛暑の影響か晩夏とはいえ寝苦しい夜が続いていた。
そこでブチギレたヒロムは叔父の天才科学者タダヲにある発明を依頼したのだった―
「ヒロム遂に完成したぞ!これで残暑もムフフと快適に!その名も『芸者マクラ』!!」
「サンキュー叔父さん。ところで何だよその『芸者マクラ』って?俺は安眠グッズを頼んだはずだけど」
「よくぞ聞いてくれた!この発明はマクラに芸者の機能を付け加える事により宴会気分でウハウハな気分に浸りつつ
楽しく夏を乗り切ろうという画期的な発明なのだ!挨拶しろ芸者マクラ」
「へぇ、このお人が旦那はんでっか?」
「うおっ!?喋った!」
「うむ。この発明のためわざわざ京都まで行って本物の芸者さんに協力して貰って製作したからな。リアルだぞ」
「すげぇー。予想してたのとは根本的に何か違うけどこれは熱い!」
「ふふふ、思春期の男なら誰しもが憧れるロマンが詰まった力作をたっぷりと堪能してくれ」
「科学ってマジすげぇな~何でも出来るんだね」
「興味があるならヒロムもどうだ将来科学者になってみては?俺の右腕にしてやってもよいぞ?」
「遠慮しときます」
こうして御機嫌なヒロムが芸者マクラを手に嬉々として帰宅したその夜。
大きな期待を胸に布団に芸者マクラを敷こうとしたその時、突然芸者マクラが暴れだした。
「旦那はん!おやめになっておくれやす!」
「な、なんだよ突然!どうしたんだよ芸者マクラ!?」
「旦那はん……アタシは『芸者』マクラおす。『遊女』とは違います。ですから「床」の務めは致しまへん」
―お後がよろしいようで。
次のお題は「指名手配」「アイドル」「殺虫剤」でお願いします。
182:名無し物書き@推敲中?
07/09/12 14:27:39
なんでこんなにくだらないのに面白いんだろ
理解できない
183:名無し物書き@推敲中?
07/09/12 14:33:38
ありえない普通使わないような単語の登場と、普通ありえない展開が魅力なのかも。
自分で故意に書いていない 素 な所がくだらなくて面白いんだと思う。
応援します!!
184:お題「指名手配」「アイドル」「殺虫剤」
07/09/12 20:52:59
真理は呆然と目の前の男を眺めていた。右手には銃。近所のコンビニから出てきた真理
を、男はこの銃で脅しつけ、彼女の住む安アパートへと案内させたのだった。
「じっとしててくれよ」
男は哀願するような口調で言うと、奥の台所へ向かった。心細くて俯く。泣くもんか、
と思う。明日にはバラエティ番組の収録があるのだから目を腫らすわけにはいかない。
きっ、と真理は顔を上げた。と同時に、いい匂いがしてきて戸惑う。
「なにしてんの?」
「親子丼つくってる。くうか?」
「え、あ、うん」
返事をすると同時に腹が鳴った。男が笑う。耳まで赤くして、真理が言い訳をする。
「あ、朝からろくなもの食べてなくて、それで」
「笑って悪かった。……こんなもんで脅しつけたのも、悪かったよ」
男は苦笑して、顔の前で銃を振って見せた。そのまま男は料理に集中し、慣れた手つき
で親子丼をつくってみせると、真理と向かい合ってテーブルについた。むさぼる。
「お腹、減ってたの」
「まーな。おれ、指名手配犯だからあんまスーパーとか行けないし。ていうかあんた、タ
レントの清水マリカに似てない?」
「本人だからね。あと、できればアイドルと呼んでいただきたいんだけど」
男が飯を喉に詰まらせた。笑いながら水を飲ませてやる。一息つくと、男はぼそっと呟いた。
「テレビで見るより美人だ」
真理が複雑な顔で何か言い返そうとしたとき、チャイムが鳴った。すぐにドアを叩く音
に変わる。呼びかける声に男が顔色を変えた。
「やっべ、警察かも」
慌てる男に片目をつぶり、おもむろに殺虫剤を手に取ると、真理はたちあがった。玄関に向かう。
「ごめんなさい、ゴキブリ追い回してたから、出るの遅くなっちゃった」
警察を適当にあしらうと、ドアを閉めた。ぽかんとする男を振り返り、笑ってみせる。
「お互い有名人みたいだし、仲良くしましょ。ただし、ほとぼりが冷めたらでてってよ」
口では出て行けと言いながら、真理は、指名手配犯を気に入っている自分に気付いていた。
次のお題は「衣がえ」「虫」「家族」でお願いします。
185:名無し物書き@推敲中?
07/09/12 21:04:15
アイドルがどうして安アパートでコンビニなんですか?
変な疑問はあるけど面白い。
なにより、とってつけじゃなくちゃんと3語が生きてるのがいいね
186:「衣がえ」「虫」「家族」
07/09/12 22:17:25
俺はピンクの棒切れを振り上げて、黒い虫をやたらめったらに叩いた。ぐぅ、とか、ひぃ、とか声をあげて
俺の膝元近くまでの大きさを持ったその虫は次第に動きを鈍くしていく。やがてそいつは部屋のドアから逃
げていった。今日こそは止めを刺そうと思うものの、全身を襲う倦怠感がひどくてそれもままならない。
やがて世界の色彩が退屈になってきた。さっきまでの棒切れも元のくすんだ鉄の金属光沢を放っている。
「トオルちゃん?」ドアの向こう側から控えめに母が声をかけてきた。
「は~い、何ぃ?」母親は、大切にしなければいけない。いつまでも無職のこんな「僕」の面倒を見てくれる
唯一の家族だからな。さっき幻覚の虫と格闘したときの騒音で驚かせてしまったのだろう。ごめんなさいね。
その意を告げると母はあからさまな安堵を浮かべ、僕の部屋に入って来てアクエリアスのペットボトルを
手渡してくれた。
「ありがとうね」そして視線をPCの画面に戻す。コイツは僕の「覚醒中の世界」で神々しい黄金に輝き、どん
なに沢山クスリを吸っても手を触れる気分にならず、無傷のままになっている。
衣がえした母が夕食を運んできてくれた。ビーフカレーとコーンスープだ。ついでに粗末なセロハン包装の白い粉
もある。キッチンでこっそりと母が用いているのを偶然見咎めた時、僕は必死にそれをねだった。その結果、毎度
の食事のお盆の上にこの粉が乗るようになった。ご飯を美味しくいただいた後、いつもどおり僕は白い粉を鼻腔を用いて
吸引する。また、世界が面白くなってきた。
ひとしきり歪んで踊る家具を楽しんでいたところ、またあの黒い虫が現れた。今度は逃がさないぞ。そう思い、
俺は青緑に明滅するドアに施錠してからピンクの棒切れを振り上げた。・・・・・・ひとしきり殴った後、いつもどおりに
虫は逃げようとしたがドアは開かない。その背中に何度も棒を振り下ろした。やがて床にはオレンジ色の水溜りが
できて、虫はピクリとも動かなくなった。
「やった!とうとうやったぞ!お母さん、来てよ!とうとう虫を殺したよ!」しかし、いつまで経っても母は現れなかった。
187:186
07/09/12 22:21:40
次お題「喜劇」「陽」「時計」
188:「喜劇」「陽」「時計」
07/09/13 07:35:10
歩哨のローテーションが偶然重なっていたらしい。
週に一度か二度、国境線越しに彼女と顔を合わせることがあった。
お互いに仮想敵国、最初は、ともすれば今すぐ発砲するぞ、と二人で警戒心を丸出しにしていた。
彼女がフランス兵だというだけで憎悪が私の心を覆い尽くしていたのだ。
数年前から、暇つぶしに聞くラジオにはフランス人がいかに卑劣かを語る番組が増えてきていたし、新聞も似たようなものだ。
戦争―今で言う第二次世界大戦―の開戦時期をメディアはこぞって予測した。
もちろん戦争には勝ち負けがあるもので、おのずとその結果も。「勝利」の単語しか目にしたことはないが。
しかし小柄な彼女とずっと向き合っているうちに、色々なことに気がついた。
無線で話すときに語尾が弱くなること、歩き出すときは必ず左足からであること……。
監視が興味になり、それが恋慕へと変化するのに、長い時間はかからなかった。
私は、母国ドイツを牛耳る、大きな誰かに洗脳されていたのかもしれない。
世界の発展を阻害するイギリスやフランスが、自らだけの利益のために、戦争をけしかけるというシナリオ。
けれどそれも喜劇だ。ずっと踊らされていれば、これほど思い悩むこともない。
見つかれば間違いなく射殺される。決して越えてはならぬ境界線は、どんな山より高くどんな海より深く、私たち二人の間に横たわっていた。
昼前から夕方まで。五時間の任務の間、ずっと彼女と私は同じ場所に立ち続ける。
太陽の高さ、方角が変化し、影がその形を変えてゆく。しかし二人の影はずっと平行で、交わることがない。
「私たち、まるで砂時計だね。」
彼女がフランスなまりのドイツ語で言った。
私は、ああ、とドイツなまりのフランス語で返す。
それが最初に交わした会話。
そして二本の砂時計がゆっくりと近づき、寄り添うような短針と長針の、一つの時計へと変わった。
次、「ギター」「机」「文庫本」
189:名無し物書き@推敲中?
07/09/14 19:43:16
俺はギターをかき鳴らしていた。
今日本屋で買ってきた文庫本は僕に強烈なインスピレーションを与えた。それを読み上げたとき、自分でも気づかぬ内にギターを掻き抱いていた。
鋭く切り裂くように、優しく愛撫するように、時には涙が出そうなほど感情的に俺は弦をはじく。
我ながら素晴らしい演奏だった、なんの防音対策もなされていないこのぼろアパートでこれだけ激しい演奏をして、なんの苦情もないというのがその証拠だ。隣人もみな聞きほれているに違いない。
今まで数々の賞を勝ち取ってきた俺の天才性により磨きがかかっていくのがわかる。
机の上に駆け上がり、ギターヘッドを鋭く打ちたて。情熱的なピッキングがクライマックスを奏でる。
そして最後の、鋭い一撃、張り詰めた空気が爆発する。
確かに、溢れんばかりの歓声がこの耳に聞こえた。
演奏終了後の倦怠感を背負いながら俺は壁にかけた賞状を満足げに眺めた
『エアギター選手権 金賞』
とりあえず、ぐちゃぐちゃになった部屋を片付けた。
190:名無し物書き@推敲中?
07/09/14 19:45:27
次のお題は「x軸」「エキストラ」「台本」
191:「x軸」「エキストラ」「台本」
07/09/15 04:11:03
泥棒がいるようだ。さっきからガサガサうるさい。私は布団から静かに身を起こし、あたりを手探る。
金属バットや包丁が理想だったが、生憎と手元には一冊の演劇用台本しか無かった。
(手ぶらよりはマシか)
そろりそろりと隣の部屋へと歩く。音がするのはこの部屋だ。
賊は、数学の文献を読み漁っていた。
「グヘへ・・・x軸、余弦定理、サイクロイド・・・ウひゃっ、ガウス平面!」
「す・・・・・・数学泥棒!?」賊は慌ててこちらを向いた。
「みぃ~た~なぁ~」
「馬鹿!見たも見ないもここは私の家だ。警察に突き出してやる!」
「このナイフの切っ先は三角関数のサインカーブを描くように設計してあるのだよ」
「っ・・・!危ないな、そんな物振り回しおって」
「そして俺のナイフの軌跡はxの1/2乗グラフを描くゥ!刺さったお前の魂はyイコール自然対数eのx乗グラフ
を描きつつ天へと昇るゥゥゥ!セカン、コセカン、アークサインんんん!!!」
「ひゃあ」情けなくも私は尻餅をついてしまった。
「ぎゃっピィィィィィ! それは、ソレは、ソレハァ!アアンッ・・・・・・」
賊の視線は私の取り落とした台本の開いたページに向いている。
その台本の開いたページは天才数学者カルノダの処刑されるシーン。
台詞はエキストラの「数学死ね」 賊は口から泡を吹いて崩れ落ちた。
192:191
07/09/15 04:12:52
次お題「子供の頃」「裏庭」「リンチ」
193:「子供の頃」「裏庭」「リンチ」
07/09/15 09:38:50
今だからこそ客観的にみれるのだが。幼い子供が蟻だの飛蝗だのを弄ぶ様は、まさにリンチというにふさわしい。
ほとんどの子供はそのことに僅かも頓着せず、自分の興味の赴くままにさまざまな悪戯を施し。やがてエスカレートしていく内に罪悪感を覚え、悪いことをするのが恐ろしくなっていくものだ。
ただし、子供の頃の私の場合それは当てはまらない。
僕に善悪の判断だのなんだといったことを教えてくれた人は、いつも家の裏庭に居たからだ。
さんさんと日の照る裏庭で、私はその人にもたれかかりながら本を読む。
夏には涼しげな影で覆われ、冬には暖かく包まれた。
薄緑色の風が、ページを代わりにめくってくれることもあった、彼らは気ままにでたらめにめくっていくのが玉に瑕だが。
その日々は幸福に包まれていた。
「ひさしぶり」
取り壊される僕の旧家の、裏庭に生えた大きな柿の木をなでて、私は言った。
ここが他人の手に渡ると聞いて、慌てて駆けつけたのだが。
数年間ろくに手入れされなかった彼は、いまや大きく手足を広げ。他に移すことも困難となっていた。
ここには大きな切り株が残ることになるんだろう。
涙が溢れるのもかまわず、彼に抱きついた。
「いままで、ありがとう」
さわ、と何時かの風が、髪をなでた気がした。
194:193
07/09/15 09:41:46
次のお題は「半分」「反転」「ハンマー」
195:「半分」「反転」「ハンマー」
07/09/17 08:19:42
三宅浜市役所から、市の漁業組合に緊急招集がかかった。
市内の海水浴場にサメが多数出没したのである。三年前にも
大量のサメが押し寄せたことがあったが、その年の観光客の数は
例年の半分以下に落ち込んだという。同じ轍を踏まぬよう、組合員は
すみやかにこれを駆除し、観光客らの安全を確保せよ、とのお達しであった。
漁師たちはおっ取り刀で自分の船へと向かっていく。藤島は
それを椅子に座りながら見送った。彼は市役所の人間で、組合本部に
残って連絡役を務めるよう命じられたのである。
「暇だ……」
誰も居なくなったのを良い事に、藤島は簡易テーブルに足を乗せ、
椅子を半分浮かせた姿勢で、現在の職務についてごく正直な感想を呟いた。
「今回出没したのはシュモクザメらしいが、俺にはあの頭がどうしても
ハンマーには見えないんだよな。薄すぎるだろう、あれ」
意味のない独り言を呟きながら、椅子の脚二本でどれだけ立っていられるか
試してみた。人間、暇を持て余すと訳の分からない事をするものである。
すると一、二、三まから始まって、四、五、六まで数えたところでバランスを崩す。
椅子はひっくり返り、藤島の視界は反転、そしてそのまま頭から床に落ちた。
「痛え。ああ、じいさまたち、早く帰ってこないかなあ……」
リノリウム張りの床面に身を預け、頭の痛みにうなりながら、藤島は
そんなことを呟いた。
次は「ムスリム」「紙袋」「金字塔」
196:名無し物書き@推敲中?
07/09/17 09:57:15
リノリウム!
殺人事件だな
197:名無し物書き@推敲中?
07/09/17 10:43:21
手持ち無沙汰感がよく出てる
198:「ムスリム」「紙袋」「金字塔」
07/09/20 22:24:57
東武伊勢崎線の車両には時間のせいか、私たち以外の乗客が居なかった。
沈黙が支配する間に耐え切れず私は隣に座った彼女に小声で問いかけた。
「その紙袋は何が入ってるのですか」
彼女は何の疑問も持たずに答えた。
「まい泉知らない?差し入れに持って行こうと思ってかってきたの。小菅じゃなにもなさそうだし」
どうやら彼女はこういったことに慣れていないらしい。
「差し入れは専門の店で買った物しか認められませんよ。そもそもアリはエジプト人だからムスリムでしょ。豚肉は食べられないんじゃないですか」
違う生物を見るような目で彼女は私をみて、驚いたように言った。
「佐藤さんは物知りなんだね。どこでそんなことおぼえるの」
差し入れはともかく、豚肉については常識だし、こんなことで感心されるほうが意外だ。
私は半ばあきれ気味に言った。
「金田一耕助張りの推理をした貴女がそんな常識的なことも知らないなんて、以外ですね」
「金田一耕助という方にはお会いしたことはないですけど、そんなにすごい方なんですか」
探偵小説の世界で金字塔を打ち建てた横溝正史の小説も知らないらしい。
彼女に会うまでは、小説の中のような名探偵に出会えるとは思っても居なかったが、彼女も名探偵の例に漏れず個性的な人らしい。
自分が解明した事件の殺人犯に会いに行くのも変わってる。
そんな彼女の個性的な面に思いをはせているうちに、電車は小菅の駅に着いた。
彼女はアリと何を語るのだろうか。彼女に対する興味は尽きない。
次は「論語」「素麺」「金」
199:「論語」「素麺」「金」
07/09/21 14:25:36
今日の午後の授業は論語でした。昼食の素麺が腹に溜まった上に吹きすさぶ嵐の音が
子守唄のように聞こえて睡魔を抑えるのに必死でした。
すると突然、窓の隙間から風が吹き込んできて、真っ暗になってしまいました。
照明の、金の燭台のロウソクが吹き消えてしまったのです。
しかし真っ暗な中でもカツカツと黒板にチョークを打ちつける音が響いてきます。
「先生、暗くて見えないよ」と誰かが言うと
「ほ、そうか。目明きは不便だね」と笑ってロウソクに火を灯しました。
先生は盲(めしい)なのです。
次お題「城」「湖」「反射」
200:名無し物書き@推敲中?
07/09/21 16:36:40
白いモッコウバラの蔓が窓をすべてふさいでしまってから、一体どれだけの年月が経ったのだろう。
埃の臭いと十分なほどの湿気が充満する城の一角に、彼女が眠る部屋があった。
彼女は長い間、眠っていた。
モッコウバラの芽が出始めた頃にはもう眠っていて、三階はあろうかというこの部屋の窓をふさぐまで、依然眠ったままだった。
しかし彼女は年に一度、目を覚ます。
城のすぐそばにある湖が凍って、ようやく溶け始めた頃にモッコウバラは花を咲かせる。
日差しが強くなった4月の一瞬、花の隙間をぬってその閉め切られた部屋に太陽が差す。
埃が充満したその部屋は不思議と乾燥していて、彼女が息をする度に、部屋中の埃はうれしそうに舞い踊った。
太陽がまるで悲劇の舞台を照らすスポットライトのように彼女を照らすとき、それは踊り続ける埃に反射する。
キラキラと舞い続けるそれを認識すると、彼女はまた目を閉じる。
終わらない冬の一瞬、彼女は暖かい雪を認めて、再び長い眠りについた。
窓一面をふさぐ白いモッコウバラの花は、まるで春の草原に降り積もる雪のようだった。
―「枯れ山」「執念」「はだかる」
201:1/2長くなってしまいすみません
07/09/21 23:23:42
「ごめん。女の、男に対する執念の怖さを俺は知ってる。だから香とは別れられないと思う」
「わかってる。わかってるよ。私、別れてなんて言わない。このままでいよう・・・」
普段は会うといっても、家でごろごろして過ごすことが多い。それは別に浮気現場を目撃されると困るからとか、
後ろめたさからではなくて。ただ俺の行動力の無さの所為だ。
しかし今日は珍しく外に出てきている。しかも遊園地に。これは、由佳の希望。
今まで「行きたいところは?したいことは?」と聞いても「うん、特には」と言うから
外に出るのはあまり好きでないのかと思っていた。でも、そうじゃないらしい。
今まで見たことの無いようなはしゃぎ様だから。俺は嬉しくなる。ごめん、こうやって外に連れ出してやれば、
喜んでくれるんだね。そりゃそうだよな。若い女の子が毎回家でまったりじゃ、飽きちゃうよな。
「ねえ!あっくん、あれ、ひと休みしようー!」
由佳が指差す。観覧車だ。
「はは、観覧車とは地味な。歩き回って疲れた?」
「ううん、大丈夫なんだけど。二人っきりだよー!」そう言って俺の腕に腕を絡めてくる。
笑顔を見ながら、これからはもう少し色んなとこ連れてってやろう、と思った。
202:2/2長くなってしまいすみません
07/09/21 23:24:42
観覧車乗り場で券を渡す。びっくりするくらい人は並んでいない。
由佳が唐突に、スタッフに話しかける。「あのピンクのがいいので、ちょっと待っててもいいですか?」
俺は苦笑した。「何言ってんだよもー。どれも一緒だよ。恥ずかしいだろ」
5分ほど待ってピンクのゴンドラが回ってくる。
「わーい乗るよー!」 内側から簡単なカギをかける。スタッフも外からなにやらやっている。
ゴンドラが高さを増していく。ガラスに張り付いて外を眺める由佳が言う。
「いい景色だねー」 由佳がじっと見ているほうを見てみる。見えるのは、黒と白だけの色彩の、枯れ山だった。
「いい景色ではなくないか?」 俺が真顔で言うと、由佳は俺の目を凝視した。そしてその目を見開いて
「たのしいね!!!」と大声で言った。「え?ああそうだね」と返すと
「たのしいね!あっくん!!!」と言って中腰のままジャンプし始めた。ゴンドラが揺れる。「おいおいおい!危ないよ!何してんの!」
「どうする?おっこって死んだら!」ゴンドラはまるでまるでブランコのように前後に激しく揺れる。
「冗談じゃねーよ」「楽しいねあっくん!!!たのしいたのしい」ゴンドラを揺らし続ける。
揺れはますます激しくなる。「おい!何やってんだよ!落ちるだろ!!」力ずくで止めようと由佳の体を押さえつけるが
ものすごい力で暴れる。こいつは狂ってんだろうか?押さえつける手を外そうとするというよりも、そのままゴンドラを更に揺らそうとする。
何かに取り付かれてしまったのか?!このままじゃ落ちるかもしれない。あと地上に着くまでどれくらいだ?!
斜め上にゴンドラが見える。頂上を少し過ぎたくらいだった。どうにか持ちこたえないと!そう思うと
扉に目が行った。そこで手の力が緩んだ一瞬の隙に、由佳は四つんばいになって扉の前に移動した。
そして唯一の出口に立ちはだかるようにして、笑顔で言った
「ねえあっくん、彼女と別れなくていいからずーっと一緒に居ようよ」
次「殴る」「猫」「時計」
203:名無し物書き@推敲中?
07/09/24 05:39:53
街から外れた古本屋か、或いは田舎の祖父母の家のような臭いが充満する店内には、古ぼけた骨董品と古ぼけたおじいさんがいた。
時間という概念が無いかのように、商品は皆押し黙り、おじいさんは息さえしていないように見えた。
今朝の喧噪とは全く正反対だった。時間に追われる縦社会より、いっそ止まってしまった方が美しいのかも知れない。
目覚まし時計が仕事をさぼったことを知ったのは、とうに彼が僕を起こすべきだった時間から3時間も過ぎてからのことだった。
僕はやり場のない怒りを覚えたが、前日に遅くまで仕事をしていた僕が悪いのだからと、大人の振る舞いに徹した。
「こんなに仕事を押しつけるからいけないんだぞ、と」
耳の中で鳴り響くコール音。それに煽られたかのように心臓が早くなった。
まるで学校をさぼる中学生のような気分だった。もっとも、学校をさぼるよりもっと刺激的なのでだけれど。
結局僕は、「会社で使える100の言い訳!」とかいう本に出てくるようなありきたりな文句で、彼と同じように仕事をさぼることにした。
お前が悪いんだからな、と言いかけて、飲み込んだ。
まるで疲れて死んでしまったかのように針を動かさない時計を見て、少し胸が痛んだ。
時計は毎日同じように、変化のない時間というものを告げている。
時に夜中でも、早朝でも、大声で怒鳴らなくてはいけないという、あまりに勇烈な仕事をしている。
それに比べ僕は、ただ椅子に座ってこなすだけの仕事に根を上げて、不満ばかりを口にしている。
「僕に咎める資格なんて、ない……か。」
少しセンチな気分に浸っていると、腹が減ったのか可愛い鳩が鳴き始めた。
円を描く中心よりやや上で鳴き続ける鳩。12時になったことを知らせてくれているようだ。
普段昼食は会社の近くのコンビニ弁当で済ませているものだから、こう家にいては飢え死にしてしまうことに気づいた。
適当に服を着て、玄関を出た。
いったい何年ぶりだろうか、こんなスーツ以外の服を着たのは。
身体は軽いし、風だってよく通る。収納だってスーツに比べれば格段にいいし、快適この上なかった。
“昼の街”なんてものはとても久しぶりだった。
営業にいた頃はよく出歩いたが、私生活で街をうろつくなんてことは学生以来かも知れない。
204:名無し物書き@推敲中?
07/09/24 05:40:34
昼飯を適当なファーストフード店で済ませると、街を探検することにした。
最近じゃ昼間にどんな人間が歩いていても、怪しまれることはなくなっている。
そりゃ“不審者”だったらすぐに通報されるが、おっさんが出歩く程度は普通のことになっていた。
派手なランジェリーショップや流行らなさそうな植木屋。
完全におばさん向けの服屋に、完全にマニア向けの玩具屋。
どれも会社にいてはみられないもので、どれも好奇心を満たしてくれた。
しかし華やかな表通りとはうってかわって、裏の商店街や街路はまるで廃墟だった。
近道をするために通る人がまばらにいる程度で、あとはシャッターが降りているか、張り紙がしてあるかの店舗ばかりだった。
灰色としか言えない寂れた路地を歩いていると、一匹の猫と眼があった。
道の真ん中で、まるで犬のように”おすわり”をしてこちらを見据えている。なんとも不貞不貞しい猫だ。
「なぁに見てるんだよ」
あまりの不貞不貞しさにすこし恐怖を感じ、強めの口調で言った。
すると猫はこちらを見下すように立ち上がると、そっぽを向いて歩き出した。まるで相手にしてないよ、と言わんばかりに。
2mほど遠ざかった時、猫はちらっと振り返った。先ほどから発している僕のイライラ感を悟られたのか、大きく口を開けて牙を剥きだした。
―いいや何ともない、ただあくびをしただけだった。敵意を持っているのはどうやら僕の方らしい。
誰に見られているというわけでもないのに、照れ笑いを浮かべた。
猫はそれを確認すると、さっと家の中に入っていった。
きっと普通に歩いては到底気づかないような、奥まった場所にそこはあった。
家ではない。骨董品屋だった。
木製の引き戸は、猫一匹が身をよじらせやっと入れる程度開いていた。
それを人一人が悠々と入れるまで開き、挨拶をした。
「にー」
猫は好意とも敵意とも取れぬ声で、返事をした。どうやらここの主人は猫なのかもしれない。
205:名無し物書き@推敲中?
07/09/24 05:42:59
何に使うかわからないような木製の箱や、何か禍々しささえ感じる変な玉、それに人が入れるほどの大きな柱時計や、インカ帝国の秘宝とか呼ばれそうな金に輝くティアラなど、大きさを問わず、様々なものが所狭しと置かれていた。
「いらっしゃい、何か捜し物かね」
「え、えぇ、まぁ」
頭蓋骨の骨董品だと思っていたものが突然しゃべりだし、驚きのあまり変な声を出してしまった。
「なに、驚くことはないよ」
そう言うと頭蓋骨もといおじいさんは、老輩の人の咳ともくしゃみとも取れぬ笑い声を上げた。
薄暗くて顔の輪郭はよく見えないが、骨と皮以外無いのではないかというほど、やせ細っていた。
「電池、ありますか」
とっさのことで、思わず言ってしまった。
こんな骨董品屋に、現代でも使える電池があるわけがなかった。
しかし、おじいさんは嗄れた声で、呟いた。
「―あるよ。単三かい?それとも単四かい?単一も単五もあるからね、好きなものを持っておいき」
夕方、あの骨董品屋で買った真新しい電池(単三)を持って帰宅した。
全く何で骨董品屋に新品の電池があるのか不思議に思ったが、なんてことはない。いつの時代も電池は何かを動かすのに必要なのだ。
依然針を止めたままの目覚まし時計を、まるで眠り姫を抱きかかえるかのように起こすと、そっと背中のカバーを開けた。
音を立てて回り始めた針を確かめると、なんだか安心感と共に焦燥感がわいてきた。
「明日からはまた仕事か」
ずいぶんとずれた時間を直そうと、時計を見た。
「―なんだ、おまえ、さぼってないんじゃないか。」
太い針と長い針は、二人で睦まじく一緒に7時35分を指していた。
途中でこのまま続けると長くなると悟りました。十分長いですが少し強引に終わります。
いくらか端折ったのですが、感想スレにでも御感想を貰えると幸いです。
題「オレンジ」「差し込む」「わずらう」
206:「オレンジ」「差し込む」「わずらう
07/09/26 14:05:02
オレンジの光が差し込む街中を、我輩一人で歩いてた。
券売機のある飯屋に入る。券さえ買えば、後は全てが円滑に進むゆえ。
振り向いた拍子に老人と衝突する。その老人、目をわずらう様子にて、ひどくうろたえた。
近くにいたメガネの若者、こちらをにらみ「気をつけたまえ」と一括した。
老人立ち上がりて「大丈夫ですか?」とこちらの心配など始める。それに答えられないでいると
「相手は目が不自由なんですよ?返事くらいしてあげたらどうですか?」と若者、口を差し挟む。
我輩、失語症なのだ。
207:206
07/09/26 14:06:54
次お題「科学」「空」「薬」
208:名無し物書き@推敲中?
07/09/29 03:49:51
「薬の飲みすぎで効かなくなってますね。」帰り道、さっきの医者の言葉を
思い出す。睡眠薬。飲みすぎた。疲れと不眠でなんだか空を歩いてる
みたいな気分。家に帰ってもすることはゲームとパソコンだけ。部屋から
でるのはご飯の時だけ。母さんもずいぶん疲れてきてるし父さんはあまり
何も言わなくなった。
ほんとに駄目人間。
僕の机の引き出しからもドラえもんが出てくればいいのに。
21世紀の科学で僕を助けて。
なんてね。
209:名無し物書き@推敲中?
07/09/29 03:52:56
カルチャーショック 電気イス 仮面 で。
210:名無し物書き@推敲中?
07/09/30 00:55:57
彼女との出会いはカルチャーショックであった。
今日の空は上手にむらなく描いた自信作
雲は風とワルツを踊るの
はにかみながら、もどかしそうに
私は椅子に座ったまま、彼女から目を離せなかった。
白いワンピースの裾をクルクルとひるがえし、彼女は笑いながら私の顔を覗きこむ。
遠くで雷の産声がする
宇宙のささやき、光のオーケストラ
ああ、私はいつから仮面を必要とするようになったのだろう。
いつから、空は屋根に、雲は煙草に、風はエアコンに、雷は電気いすに、
いつのまにか変わってしまった。
それは拷問なの?処刑なの?どんな罪を犯したの?
大人になったということさ。
私は、かつての私に言った。
彼女はにっこりと、消えいるように微笑んだ。
情報、黒、月
211:名無し物書き@推敲中?
07/09/30 01:18:01
↑なんかポエム調になって恥ずかしいので感想はいいです。
ありがとうございました
212:名無し物書き@推敲中?
07/09/30 15:19:52
彩花は黒のワンピースを着て全身8ヶ所をメッタ刺しにして灯油に火をつけて
殺した父親の燃え上がる姿をただ呆然として見つめているだけでありました。
パトカーの音が遠くから近づいてきて逃げなければいけない状況というのに。
彩花はただ自分の初潮はじめての生理月のものを汚したこのハゲが許せない。
このハゲが直接彩花に性的虐待をしたとかそういうことはまったくなかった。
ただ彩花に初めての月のものが来た平成11年11月11日11時11分11秒に不幸にも
彩花は決して知ってはならないおぞましい情報を知ってしまったのであった。
このハゲが彩花の小学校の学級担任と不倫をしてるというおぞましい情報だ。
次のお題は運命と激流と激突ですがなんか現実の事件なので感想はいいです。
213:「運命」「激流」「激突」
07/09/30 16:35:16
ひどい嵐でした。工場を出、家に帰らなければいけないのですが、とても嫌でした。
激流をもって逆巻く河を通りすぎる頃には両の靴は水浸しで、地を踏むたびにグニュリ
としぼみました。
どこからか飛んできた段ボールの箱がスネに激突し、涙がこぼれました。なんだか口
の中がしょっぱいです。ようやく家の格子戸をくぐり抜けたときには、もうへとへとで
した。
「やあ、おかえり。大変だったろう」そう言って夫はニコリと微笑みました。御勝手の
ほうからコオンスウプの匂いがします。
214:213
07/09/30 16:39:25
次お題「畳」「ほおずき」「夜中」
215:名無し物書き@推敲中?
07/10/02 15:16:15
バタン!
なんとも乱暴にドアを閉めるものだ。
キングがいつもの時間に帰ってきたのだ。
午前2時40分。
彼の帰りはいつも夜中だ。
冷蔵庫からコカ・コーラを取り出し一気に全部飲んでしまう。
ダイニングルームのソファーに座りテレビをつけた。
彼はいつもこうやってここでテレビショッピングの番組を1時間は見る。
気が向けば気に入った商品を注文することだってある。
先日もこの番組で彼はまぐろの缶詰めを10個も買ったのだ。
キッチンの窓際には鉢にいれた植物が3つ並べてある。
ほおずきだ。ほおずきには色々な種類があるそうだが彼が育てているのは
食用だそうだ。
本日のテレビショッピングの商品も皆それなりにすばらしかったが
彼に番組へのテレフォンコールをさせるまでにはいたらなかった。
服を着替えて彼は寝室へと向かう。
彼の寝室にはベッドは無く代わりに日本の畳というものが敷かれている。
この畳というものがキングのお気に入りだ。
4年前キングが日本の映画を観て畳を知りすぐに自分の寝室に備え付けて
しまったのだ。
午前5時。
お気に入りの畳の上にふとんを敷きようやくキングは遅い眠りについた。
216:名無し物書き@推敲中?
07/10/02 15:17:58
ゾンビ ティラノザウルス 底なし沼 でお願いします。
217:名無し物書き@推敲中?
07/10/02 15:22:02
ゾンビBEのツラはティラノザウルス並みに凶悪で底なし沼の落選続きだった。。。
218:404
07/10/02 21:04:17
今日の父は嬉しそうでしたが、悲しそうでした。よく笑うのですが、ぎこちなかったのです。
居間でテレビを見ているときも、些細な事で笑い続けました。
「ゾンビが出てきた底なし沼から、今度はティラノザウルスが出たってさ」
僕も釣り込まれて、自然とケラケラ笑っていました。とても楽しかったです。
そして今夜も父は電灯修理の仕事に出かけましたが、見送りから戻ってきた母の目が真っ赤
になってました。
後で知った事なのですが、あの日に父は、軍の人体実験に連れていかれたのです。
次お題「犬」「柿」「縁側」
219:名無し物書き@推敲中?
07/10/02 23:05:48
お題「犬」「柿」「縁側」
『ヴーッ、ガウッガウッ…ガウッ!』
さっきから、庭の方でうちの犬が騒がしい、
まるで親の仇でも見つけたかの様に、庭にいる犬は何かに対して激しく吠えたてている。
自室でお気に入りの小説を読んでいた私は、
最初は『暫くすれば疲れて吠えるのを止めるだろ……』と、思い、無視を決め込んで読書に興じていた。
だが、5分経とうと、10分経とうと、一向に犬は吠えるのを止める様子が無く、
そろそろ鬱陶しく思いつつあった。
――ったく、仕方が無い………。
いい加減、煩わしく思った私は読んでいた小説にしおりを挟み、
気だるい気分を感じながら縁側に向かう。
その目的は無論、水をぶっかかけるなり怒鳴るなりして五月蝿い犬を黙らせる、
只、それだけだ。
犬が吠えている理由なんぞ知る気は無かった、
どうやらうちの犬は子供が嫌いらしく、小学生が家の近くを通りかかっただけで吠えかかるのだ。
それも昼夜を問わず、だ。
220:名無し物書き@推敲中?
07/10/02 23:07:04
志貴ー!にげてっー!
221:名無し物書き@推敲中?
07/10/02 23:07:41
どうせ今回も、下校中の小学生が家の近くを通りかかったのだろう。
そして、何時まで経っても犬が吠えるのを止めないのは、
多分、その小学生が庭の柿の実を盗もうとしているのだろう。
因みに言っておくが、うちの庭に生えている柿は渋柿だ、
その事はうちの隣近所も知っている事実だ。
それにも関わらず、季節が秋になる度に、子供があらゆる手段でうちの柿を盗んでは、
その場で柿を齧り、そして苦虫を噛み潰したような表情を浮べるのだ。
どうやら、子供と言うのはちっとも懲りない生き物の様だ。
………まあ、そんな私自身も、子供の頃に何度も同じ事をやっては、言葉通りの苦渋を味わったのだが………
と、そんな事を考えている間に縁側、そして庭へ続く障子の前に辿りついた。
222:名無し物書き@推敲中?
07/10/02 23:08:19
『ガウッガウッガウッガウッ!!』
障子の向こうで、未だに犬の吠え続ける声が聞こえる。
どうやら、犬は吠えるのに夢中で私が来た事に全く気付いていない様だ。
良し、一発怒鳴り倒す!
そう心に決め、障子戸を開け放ち――私は思い出した。
そうだった、数年前に犬は病気で死んでいたんだ。
私の視界に映る庭には、五月蝿いくらいに吠えたてていた筈の犬の姿は無く、
その代わりに、主の無い薄汚れた犬小屋だけが、うら寂しく其処にあった。
………あれほど五月蝿かった家族の一員は、もう2度と五月蝿く吠える事は無い。
その事実を改めて受け止めた私は、1人、縁側で静かに涙するのだった。
とある、秋晴れの1日の出来事だった。
次のお題は「鏡」「剣」「記憶」
223:「犬」「柿」「縁側」
07/10/02 23:16:44
ただいま、と言って玄関をくぐる。
珍しく父が先に帰っているらしく、声が聞こえてきた。
居間の戸を開けると、テレビの画面には大写しの王貞治。
また一本ホームランを打ったらしい。
「ああなんだ、お前か。おかえり。」
父が上機嫌だから、今日は夕食中もテレビが見れそうだ。
「おい、飯はまだか。」父はちゃぶ台を手の平ではたいて大声でがなり立てる。
あらあらまだですよ、という母の返事が返ってきた。
困っているようでいて、その声には幾分と嬉しさも混じっている。
手持ちぶさたになり庭先へと出てみると、妹が犬ときゃっきゃと遊んでいた。
柴犬だろう。まだ一、二歳といったところか。
「おいおいそれはどこの犬だい?」
「よく分かんないけど、さっきここにやって来たの。」
「へえ。食事の匂いにつられたのかな。なんていう名前だろう。」
首輪がついているので、どこかの飼い犬には違いない。
「さあねえ、なんていうんだろう。」
そう答えたが妹はあまり関心がないらしく、夢中で犬の体中をなで回したり、叩いてみたりしている。
「じゃあこの犬の名前は、自分が決めてやろう。そうだな。ねこ、だな。」
「あはは、お兄ちゃん、そんなわけがないじゃない。」
笑いながら犬の頭を両手でわしづかみにする。犬は至極迷惑そうな顔をしていた。
そうしていると母がやって来た。干し柿でも食べなさい、と言う。
ちょっと前まで縁側に干してあったやつだ。
一囓り、口に含んだ干し柿は、むせかえるほど甘かった。
次、「白黒」「野球」「猫」
224:223
07/10/02 23:18:13
>>222様とかぶってしまったので、
お題は>>222の「鏡」「剣」「記憶」でお願いします。
225:名無し物書き@推敲中?
07/10/03 03:14:26
人生とはなんて空しい物なのだろう。
ある一定の時期を越えれば、待っているのはまるで変化のない単調な毎日。
つまらない紙切れと向かい合って、何も疑うことなくその時間が来るまで仕事をする。
その後は取り付かれたように酒や異性に快楽を求めてさまようばかり。
主婦にとってもそれは同じで、毎朝同じ時間に同じことをして、少ないお金をやりくりして献立を考える。
少しでも安く買うためにチラシと向かい合って、スーパーマーケットで小太りのおばさん連中と競うかの如くプラスティック製のかごに食べ物を放り込む。
気づけば旦那は年を取り、自分も年を取っている。
旦那は帰っては愚痴を吐くばかりで、たまに愚痴をこぼすと不機嫌になる。
鏡の中には世界を敵に回し、世界一不幸で、世界一やつれた顔をしたおばさんがいる。
どんどん記憶は曖昧になっていくし、ただ過ごすだけの毎日だってやり過ごせなくなってきている。
人生はなんて空しい物なのだろう。
ある時期を過ぎれば、色を落とし世界も止まり音も途絶える。単調でつまらない生活が待っているのだ。
まるで生け花の剣山のようだ。
麗しい花を生けるそのときが絶頂であって、一度その針の山すべてが埋まってしまえば、あとは何かを得るにはその花を落とさなければならない。
あとは枯れて朽ちるのを待つだけ。美しさを保つ術は無いのだ。
人生とはなんと儚いものなのだろうか。
「利口な」「鍵」「はじく」