07/08/18 09:46:17
「扇風機」「牧場」「未来」
「買って来たぞ」
眼を輝かせて喜ぶ妻のミドリと、やっとウワサの扇風機を手に入れられたのに、うかない表情の夫のリュウタがいた。
連日40度越えの猛暑が続く日本で、ある電器製品がバカ売れしていたのだ。
それはエアコンでは無く、なぜか2007年7月に製造された松葉電器製の扇風機『牧場の風』FFG-56タイプ。
6月に挙式をあげたばかりの新婚の二人だったが、すでに完全にミドリのペースの生活になってしまっていた。
『強風』と『マイナスイオン』のスイッチを同時に押し、二人して扇風機に向って同じ言葉を叫ぶ!!
「リュウタの半年後!」
「う・わ・き…浮気する」
二人の言葉が共鳴し2007年7月製造、松葉電器製『牧場の風』FFG-56『強風』と『マイナスイオン』作動時のみに現れる別の言葉が聞こえだした。
そう!ウワサは、やはり本物で、未来を予言してくれる扇風機だったのだ。
そして容赦なくミドリは、尻ごみする夫を強引に促し、次の言葉を二人して叫んだ。
「リュウタの浮気相手の名前は?!!」
次のお題は「ラジオ」「河川敷」「後ろ回し蹴り」で!
51:「ラジオ」「河川敷」「後ろ回し蹴り」
07/08/18 11:00:21
二人の男は河川敷で対峙していた。ノッポとチビ。ノッポはどこからともなくラジオを取り出
すと、脇に放り捨てた。キーワードのうちの2つを消費して、ノッポの表情は余裕だ。あとは、
体を回して背を見せつつ足をぶつける、「あの技」をあと7行以内に登場させればよい・・・・い
や、あと6行以内になってしまったが。
「思考すると行が無駄だ。さっさと行くぞ」ノッポはチビに襲い掛かった。有無を言わさず体
を回転させるノッポ。が、両手を出しつつ前方に接近してくるチビは、あの技の発生を許して
くれなかった。「おい、出させろよ! あと4行しかない!」が、チビは無言でノッポと距離
をつめる。あの技を出させない という点において、チビは、すさまじく巧みだった。チビは
作者の邪魔をする気らしい
「ふふふ」あえて、意味も無く言葉を発して改行させるチビ。いじわるである。追いつめられ
たノッポは仕方なしに最後の手段を取る事に決めた「後ろ回し蹴り!」彼は突如そう叫んだ。
次お題は「小説家」「才能」「努力」
52:かえっこ ◆vKR9dNUc2M
07/08/18 12:43:49
「小説家」「才能」「努力」
宇佐美と加目田は双方が共に認めるライバルであった。
二人とも幼稚園からの同級生で大学も同じ、そして卒業後の進む道も同じで小説家の道を選んだ。
そしてついに、大手出版社2社の共同企画で実現した『100作品創作マラソン』がはじまった。
宇佐美は、いわゆる才能豊富な天才型の作家だった。
そして加目田はコツコツと取材、資料集めなど完璧にそろえてから書くいわゆる努力家タイプの作家。
100作品をどちらが先に書き上げるかで勝敗を決めるこの企画、スタートダッシュはもちろん天才肌の宇佐美が突っ走った。
加目田は、自分のペースを守りいつもの資料集めに没頭していた。
1週間、2週間が過ぎ、二人の作り上げた作品の数はかなりの差が出てきていた。
宇佐美は勝てると思ったのだろう、いったん創作活動をやめ、毎日夜になると飲みに出歩き、お姉ちゃん達のいるお店に通いつめた。
勝負が始まり、1ヶ月が過ぎた頃、宇佐美は担当の小山の携帯に連絡を取ってみた。
「な・なに!!加目田が48作目を書き上げただとーーーーっ!!」
あわてた宇佐美は、お姉ちゃんと裸で寝ていたベッドから飛び出しパンツとズボンだけはいてタクシーで仕事場へ向う。
そしてついに勝負の決着がついた。
勝利したのは宇佐美であった。
結局、天才で外で遊びまわりいろんな経験を実際体験していた宇佐美…
作家とは人が最後にたどり着く職業だと誰かが言っていたっけ!!
独創性とはモーツアルトの時代から不公平に出来上がっているものなのだろう…
次のお題は「鳥インフルエンザ」「ファールボール」「あだ名」で…
53:かえっこ ◆vKR9dNUc2M
07/08/18 16:02:46
すみません↑修正
「な・なに!!加目田が48作目を書き上げただとーーーーっ!!」
98作目の間違いでした。
54:「鳥インフルエンザ」「ファールボール」「あだ名」
07/08/18 21:02:01
「ごめんなさいっ!あなたとは付き合え無い」少女は言った。青年は戸惑った。納得できない。
こんな事のあって良いハズが無い。俺が、ふられた?なぜ?相手はクラスの中でも一番の根暗で
皆にさりげなく避けられる事から「ファールボール」とあだ名される程度の奴だ。
「どうして・・・・?ねえ、なんで?理由を言ってよ?納得できないよ!」
青年の顔は真っ赤だ。なんでおまえごときが!この俺がせっかく男女交際の練習相手に選んでや
ったのに!クラスでの地位が完璧に上な俺を振っていい理由なんてあってたまるか!
「ねえ、理由だってば!早く教えてよ!ねえ!」
「・・・・・あの、ね」すっかりおびえきった少女の瞳。
「私、鳥インフルエンザの人としか付き合わない事にしてるの。だから、もしも・・・・」
そういって注射器を差し出す。中に入っている液体は透明だが、まさかタダの水でもあるまい。
「これ、注射してくれたら・・・・」
結論だけ言う。その若者と少女は交際を始めた。
次のお題「探偵」「密室」「妖精」
このスレ、ひょとして二、三人しか人いない? (;ω;`)
55:名無し物書き@推敲中?
07/08/18 21:37:37
ではミス板より初参加。
オリエント・エクスプレスで紳士が撲殺された。犠牲者は支那住みの実業家、シュバルツ氏。
しかも、驚いたことに現場コムパアトは密室であった。
毒殺、射殺であれば遠隔殺人は容易である。刺殺でも可能である。
しかし、撲殺となれば犯人は直接被害者を殴打したと判断せざるを得ない。
乗り合わせたパリ警察のジャンヌ警部は国際警察を呼ぶしかないと判断しかけたのであるが―
「それには及びません―彼らの手を煩わせるまでもない事件でしょう」
そう異議を唱えたのはかの有名な青年探偵、内藤水平!
内藤水平は独逸においてさる重大の使命を終え、帰朝するところだったのである。
「奇怪な事件ではあります。このコムパアトは完全に密室でした。
犯人はいかなる手段を以ってシュバルツ氏を殺し、立ち去ったのか?」
ジャンヌ警部が首を振り、二言三言内藤探偵伝える。
「成程、此のダイイング・メッセェジを皆さんは墓に立てられた十字と見たのですね。
慥に、欧羅巴人の皆さんにはそのように見えるでしょう。
ですがこれは漢字と呼ぶ表意文字―『十一』と書いてあるのです」
ああ、シュバルツ氏は死の間際に漢字のダイイングメッセェジを残したのだ!
犯人が見逃してしまったメッセージをわれらが内藤水平は読み取ったのである。
「さて、皆さんは十一を独逸語で何というかご存じでしょう。そう―elf。
シュバルツ氏はエルフ―妖精の手によって殺められたに相違ありません!」
それならば人間の出入りできぬ密室で殺人が起きても何の不思議もない!
乗員乗客は内藤探偵の華麗な解決に惜しみない拍手を送った。
無論、最も盛大な拍手を送ったのがシュバルツ氏の悪辣なる商売によって最愛の姉を失った
十一番コムパアトの乗客、土屋圭助氏であったことは言うまでもないだろう。
次のお題「林檎」「青磁」「牢獄」
56:「林檎」「青磁」「牢獄」
07/08/19 00:11:51
「姫様!ただいま助けに参りました!」
牢獄の前にひざまずく巨躯の甲冑を、真っ白なドレスのあどけない娘が見つめる。
「わ~、ありがとー!」
と言って無邪気に手を打ち鳴らしてはしゃぐ仕草も、長い牢獄生活のせいか、疲弊の色が
透いて見える。
「姫様・・・・裏口の林にわが精鋭の騎馬隊が控えておりまする。私はもうお仕え申す事がか
ないませぬが、どうか姫様だけでも・・・・これは敵から逃れると・・・き・・・に・・・・」
そういって地面に打ち伏せた騎士の足元にできた赤い水たまりに、お姫様は気づいて呆然
とした。それと同時に騎士の手から滑り落ちた彫刻を拾い上げる。林檎・・・・?それも青磁
で作られたものだ。走る、という慣れない動作に息切れを起こしながらも、お姫様はその
林檎を大事そうにつかんでいた。
「おい、いたぞー!」前の角から兵隊の一団が表れる。あわてて後ろを振り返るとそこに
も大勢の人だかりだ。監獄の狭い廊下で前後から挟まれ、狼狽のあまりに林檎が手からす
べり落ちてしまった。パシャンと控えめな音をたてて割れた青磁の中から無数の光の粒が
立ち上り、姫様の体を包む。驚いて後ずさる姫君の体は、監獄の分厚いレンガの壁を、す
り抜けてしまった。
個人的に、こういうスレ好きよ。 次お題「予言」「狼」「墓標」
57:かえっこ ◆vKR9dNUc2M
07/08/19 01:01:50
「予言」「狼」「墓標」
父が亡くなって、もう大分経つが僕達の悲しみ、憎しみは消えなかった。
僕と妹は今でも、あの日、無残にも腹部を裂かれ絶命した父のあの無残な姿を忘れはしない。
「じゃあ、いい子にしているんだよ。すぐに戻るからね」
って言葉を最後に、あの優しかった父は、お腹をすかし、幼かった僕達に食べ物を調達に出かけたまま帰ってこなかった。
「お兄ちゃんやっと…やっとこの日が来たのね」
父が眠る墓標の前で、まだ幼さの残る兄妹は改めて復讐の決意を誓った。
今朝、ついに頼んでいた森の占い師から憎き父の仇の住む場所を聞いたのだ。
予言で僕達の住むこの森の二つ先の村に住んでいて、この仇討ちがうまくいくと知らされた。
めざす村に着きそっと近づき窓をのぞく。
「お兄ちゃん…すごいよ!!二人ともいるよ」
そこには、仇の二人が偶然にも一緒にいて楽しそうに食べ物を口にしていた。
僕と妹は目を合わせ合図をし、同時に襲い掛かった!!
突然、狼2匹に襲いかかられ恐怖におののく表情の二人!
そこには、猟師と赤い頭巾をかぶった女の子が…
次のお題は「黄色いTシャツ」「古本屋」「石ころ」
58:「黄色いTシャツ」「古本屋」「石ころ」
07/08/19 09:44:21
「おいババア!これはなんだ!」
俺は店の片隅の黄色いTシャツを摘み上げた。
「Tシャツです」
「バカめ!そんな事は解ってる!聞きたいのは何でこんな薄汚いTシャツが神聖なる古本屋に
置いてあるのかって事!」
「・・・・・・ククク、実はそれも本なんですよ、お客さん。まあ、着てみてくださいな」
何?これが本だと?いい加減な事言ってるとぶん殴るぞ。ぶっ倒れた貴様の腹を何度も蹴飛ば
してやった後に口から石ころを詰め込んでやるからな。覚悟しろよ。
そのTシャツを着ようとして自らの衣服を脱いだとき、ストロボの音がした。店主の老婆が
カメラ片手によだれを垂らしてる。
・・・・・・俺は、きれた。
次お題「神話」「弓」「満月」
59:名無し物書き@推敲中?
07/08/19 19:43:16
特に予定もなく、寝ては過ごすだけの夏休み
花火の季節がきても出かけることはない。
遠くで咲く、眼鏡のレンズにも及ばない火の花を見ていた。
何秒も遅れて音が聞こえてきて、何となくそれで距離を測ったりしてみる。
閉ざした窓の向こうで咲く花は、誰よりも何よりも、僕からは遠く離れているということを教えているようだった。
まるでそれを嘲笑うかのように、弓なりに美しく反った月が光っていた。
欠けていく月か、満ちていく月かわからないが、神話によれば行き着く先は良いことではない。
新月になろうと、満月になろうと、女神は夜に紛れほくそ笑むのだ。
夏が終わりもとの生活が戻っても、この部屋での僕は変わりはしないだろう。
この夏、僕はあまりに多くの物を失った。きっと二度と取り戻すことはできないだろう。
火の花の音が消えた後も、僕は月の幽明に魅入られていた。
恐れ多くもお題です。「まことしやかな」「むせる」「竹」
60:かえっこ ◆vKR9dNUc2M
07/08/19 23:12:51
「まことしやかな」「むせる」「竹」
午後、21時22分、24時間テレビのクライマックスでは、今年のランナー斉藤千夏が感動のゴールをしていた。
タクシーでの移動の中、モニターに映し出された涙顔の斉藤千夏の姿を見て元マネージャーの南田はつぶやく。
「千夏…良かったな。もうこれでお前は一人前だ」
そして、3年前の千夏の人生が変わった瞬間(とき)の事を思い出していた…
それは、まことしやかなウワサとして私達、マネージャー仲間の間では有名な伝説。
芸能界のドンとしてもウチの事務所のトップとしての存在している大山田裕次郎。
その裕次郎と寿司屋に行き「おう!!何にするんだい!」と、こう問われる新人の芸能人。
そして松竹梅の中から、見事「竹」を選択した新人は必ず芸能界で大成するというのだ!
3年前、その時、まだデビューしたてだった新人、斉藤千夏は竹を選び、今に至っていた。
タクシーから降り寿司屋へ入る南田と今の担当の新人タレント、荒川有紀。
「有紀!もう一回言うぞ!これから大先輩の大山田裕次郎と一緒に食事が出来るんだからな!!くれぐれも…」
店の中で大山田裕次郎の到着を待ちながら、南田は、この生意気な…だが将来性は抜群で可愛い新人、有紀の横顔を眺めていた。
まもなく裕次郎が現れ、そして、運命の瞬間を迎えた。
南田は心の中で問いかける「さあ!有紀!お前は何を選ぶ」
「…」しばらく考えていたのか、そしてついに有紀は口を開いた。
「えーっ!マジーッ。オレさぁ寿司って嫌いなんだよなーどうでもいいや!」
「げぼっっ!!」武田は、飲みかけのお茶をつまらせ、むせる。
有紀は、そう言うと、ろくな挨拶もせずに店を出てゆき消え、その後、見事に芸能界からも消えてしまった…
※(竹ってキーワードが難しかった…)
次のお題は「虫歯」「コンビニ」「ストライクゾーン」で
61:かえっこ ◆vKR9dNUc2M
07/08/19 23:19:07
※ ↑肝心な所、名前ミスです!ホント!ごめんなさい
>「げぼっっ!!」武田は、飲みかけのお茶をつまらせ、むせる。
武田では無く!!南田でした…あーあ
62:「虫歯」「コンビニ」「ストライクゾーン」
07/08/20 00:17:10
井戸の底を覗き込むと、ただただ暗いだけだった。淵から垂れたロープを伝って慎重に
下降していく。
一条の光が差したかと思うと私は真っ白な部屋で大仰な椅子に仰向けに寝ていた。
「はい、口をあ~んって。・・・・・・あ~ん」どうやらこれは小学校の頃、初めて虫歯治療を
受けたときの記録らしい。確かこの後・・・・「あっ!」医者が誤って金属片を私の口の中に
落としてしまうんだ。気管支に侵入したこれは、今でも私に呼吸障害を起こさせる。
また薄暗い井戸の壁が視界を塞ぐ。さらにロープを握る力を適度に緩めて重力にこの身
を任せる。また、光。
「おい、おまえあの娘、ストライクゾーンちゃうか?」今度は高校時代の出来事か。こう
して私と一緒にテニス部の女子生徒を品定めしていたこの親友は実に良い奴だった。私に
出来た初めての彼女がこの親友に誘惑されて私の元を離れて行き、その為に未だに私は重
度の人間不信を引きずっているが、それでもこの親友は良い奴だったと思う。
・・・・・・無数の過去を見、井戸を下るうちに、とうとう昨日の記憶にまでた
どり着いた。仕事が終わってコンビニ弁当をもしゃもしゃと食べている私が
いる。しかし、まだまだ井戸の底は見えない。
これ以上降りていったらどうなるのだろうか?わからない。記憶の井戸に入
り込んだきり帰ってこない人間は多いという。私もその一人になるのだろうか。
しばらくの思考の後、私は行き先の方向を、下に定めた。
63:62
07/08/20 00:26:07
お題忘れてた
「銀河」「青春」「螺旋」
64:名無し物書き@推敲中?
07/08/20 00:44:02
愛だなんてものは、野球のストライクゾーンのような物だ。確かに存在するけれど、それは審判のさじ加減でどうにでもなってしまう。
それが今の僕たちの間にあるものだと言えるだろう。もちろん審判は、彼女だ。
彼女がコンビニに行くと言って出て行ってから、すでに30分経っている。
アパートを出てコンビニまでは、読書をしながらでも往復5分はかからない。
目と鼻の先、というのはこのことだろう。
そんな恵まれた環境にいながら、彼女が依然帰ってこないのは、別に店員がアイスを暖めたせいでも、それに逆上し罵っているせいでもない。
すべてはこの僕が悪いのだ。
僕にもう少しだけ几帳面さが備わっていれば、今日という日を大切に覚えていたら、こんなことにはならなかった。
女性はまるでカレンダーでも内蔵しているかのように、日付には敏感だ。
しかも都合の良いことはしっかり覚えているくせに、都合の悪いことは全く覚えていないというくせ者だ。
それはやはり彼女にも例外ではなく、しっかりと今日という日―都合の良い日―を覚えていて、まるで少女のように楽しみにしていたのだった。
階段のすぐ近くの部屋だったものだから、すぐにその高いハイヒールの足音が彼女の物だとわかった。
これからどう誕生日の穴埋めをしようか、そんなことを考えると、頭の先から足の先まで、それこそ胃がきりきりと痛くなった。
虫歯の治療に行くから―なんて子供みたいな言い訳をしようかとも考えたが、今の彼女なら僕の歯をすべて抜きかねないと考え、やめることにした。
今は素直に大人しく謝って、夜は外食でもして許してもらおう。
そう思惟していると、玄関のドアが開く音と同時に不機嫌な声が飛び込んできた。
僕は精一杯取り繕って、少しでも機嫌を直してもらえるように気の良い返事をした。
お題「大人しい」「並べる」「教科書」
65:名無し物書き@推敲中?
07/08/20 00:44:55
あら、被ってしまいました。
お題は>>63の「銀河」「青春」「螺旋」を続投してください。
66:かえっこ ◆vKR9dNUc2M
07/08/20 13:11:29
「銀河」「青春」「螺旋」
午後18時、私は今、仕事からの帰りで、渋谷区の福祉保健センター生活保護ケースワーカーとして働いている。
田園都市線の電車の中、ふと前を向くと若い女性の浴衣姿が目に入った。
混んでいるというのにずっと手をつないで笑顔いっぱいの彼女と彼を見て、私の…あの頃が思い出された。
「あの時、彼の後ろをずーっと歩いていたなあ」って思い出し、思わず一人笑ってしまう。
なぜって着物の着付けの知識など無い私と母で悪戦苦闘してやっと約束の時間に間に合った浴衣姿だったので帯の結び目が絶望的で絶対変だと思っていたから。
でも、あの彼とは何の話をしても混んでいる電車の中でも、ついついはしゃいでしまった。
彼と付き合うまでの私って大人しい女でまじめ人間だと思っていた。
周りのオトナからだと!いかにも青春を楽しんでいる!!ってみえていただろうなあ~~
あの彼女の今の気持ちは、…そう!当時の私と同じで地球の…いや銀河系の中心で一番彼が好き!って感じだろう!
その彼とは、卒論のテーマがたまたま似通っていて、机で教科書を並べる機会が重なって自然に話すようになり知り合ったのだった。
卒業後、彼と私の関係は自然に距離が出来てしまい別れてしまった…
その時、隣の車両で数人の人の変な動きが見えて覗き込む。
酒に酔っているのか大声をあげそのまま床に寝転がってしまった老人??のそばへ駆け寄る私。
仕事上、こういう社会の底辺の生活を余儀なくされている彼らの置かれた状況、心情はよくわかっていた。
やがて到着した駅のホームには私と意外と若いとわかった男、駆けつけた駅員2名の4人だけになった。
この生活に疲れ、倒れこんでいる男の顔を見た瞬間!あ・あ・あ、私の心は螺旋のように回って過去へと跳んだ。
あの短い期間だったが、彼との楽しかったこと、言い争い、ケンカしたこと、そして初めて彼を迎え入れた夜のこと…すべてが蘇り、胸が熱くなった。
周りの人たちは、ものめずらしそうな視線を浴びせては、いたが普通に足早で歩き去って行く。
今、私の目の前には、私の腕に抱かれた、歳を取り、いろんな社会の影の部分を見てきたであろう絶望の瞳を持つ昔の彼がいた。
でも…でもね…私だけにはわかよ。その瞳の奥に残る光。
次のお題「爆発炎上」「手のひら」「雑誌」で
67:「爆破炎上」「手のひら」「雑誌」
07/08/20 21:12:39
ただの黒々ノッポじゃなかった。これがカポエラか・・・・・・強い。
臨戦態勢に移ると同時に両手を地につき両足を素早く回転させてきた。上段、下段、右
回転、左回転、方向や蹴り方は自由自在で、それに足技は威力が高いから手で受けるのは
難しい。
威力が無効化される程に距離をつめればどうにかなると思ったが、それは浅はかだった。
我輩は両手で体を亀のごとく包んでノッポに走り寄った。ノッポは逆立ちのまま体を弓な
りに反らしたかと思うと両足を揃えて真っ直ぐに打ち出してきた。体全体をバネにして矢の
ように飛んできた両足のカカトは防ぎきれるものでは無い。ガードの上からでも我輩の体を
吹き飛ばすには十分な威力だった。
中距離で戦おうとすれば上下左右から降り注ぐ蹴りの雨を全身に受けねばならぬ。近づこ
うとすればカカトの弓で飛ばされる。なんてやっかいな武術なのだろうかカポエラは。
しかし、いつまでも逃げ続けるわけにもいかない。我輩は自らの手のひらをじっと見つめ
て、指を一本ずつ握りこむ。樹木に縛り付けた雑誌を何度も殴る事によって鍛えたこの拳。
「オオオオオ!」前足で砂を蹴り上げる。上手く逆立ちノッポの目に命中した。焦ったノッ
ポのカカト弓。しかし間合いの外だ。カカトを引き戻す瞬間を狙ってノッポに飛び寄った。
右回転の上段蹴りが飛んできたがこの近距離じゃあ蹴りの威力は殺される。我輩は左腕で受
ける。その左腕を引き寄せつつ、大腿筋を爆破炎上させて思い切り地面を蹴り返す。その反
発力は腰の回転力へと変じて握りこんだ右拳をノッポの腹部へと撃ち出す。
命中した拳が腹の弾力に抗って、わずかにめり込む感触が返ってきた。きちんと威力が伝
わった証拠だ。ノッポは、もう立てなかった。
お題「偶像」「輪廻」「浄化」
68:お題「偶像」「輪廻」「浄化」
07/08/20 22:52:40
密度が密度を埋め尽くす、機械ばかりで構成されたデジタルシティを、怪盗ジョーカーは絢爛豪華に暗躍する。チクタクチクタク、客体ばかりで量られる人々を嘲笑いながら、慈しみながら跳梁跋扈する。
彼が中心街中央塔の天辺から見下ろす街並みに、ちょうど十二時のニュースを告げるアナウンスが流れ、数値(デジタル)に対して酷く従順な羊たちは波のような喧騒を伴いながら移動を開始し始めた。
……この街では、ありとあらゆるものが『数値の雑談と雑音(デジタルノイズ)』の奔流と化して、一匹の蛇のようなうねり(ウロボロス)を形成する。
はたして、寸分なく信任を置かれた『ソレ(デジタル)』らは所詮、偶像でしかないと云うのに、彼らは何よりも大切な主観であると無抵抗に受け入れ、日々をループする。
そんなある意味、どこよりも牧歌的な街に住まう人々を、怪盗ジョーカーはただひたすら孤独に、守護していた。
遠い昔、物事を判断する依り代として道具立てされた架空(デジタル)の点は、別個との繋がりにより線に、社会を構成するに至って面に、立体に、多重構造に変貌し―やがて姿無き『怪物(ウロボロス)』と化して、誰に気づかれることもなく自身を食らい、蝕みはじめた。
さながら怪物は、人の意識に紛れ込みながらひっそりと息づく獅子身中の虫。
人類の手によって編み上げられた歴史の放物線が、いつしか重力に引かれてあるべき場所へ堕ちていくように、自我から放たれた矢は目標を貫く意志を失い、惰性に引かれ、きたるべき終焉へと加速しはじめる―
そんな状況を引き金として弾き出された醜悪な停滞。
のっぺりと横たわる彼の影を迂闊に踏みながらも、人は親和性の高いソレの存在に気づかず、敷かれた運命(レール)を自らの意志だと盲信して、余命を急速に食い潰していくばかりに見えた。
しかし、破壊があれば再生がある。故にジョーカーは誕生した。
輪廻は、転生のために光速で回転する矢車。我がその弓の引き手にならんと、つがえた矢を絞る力強き右腕にならんと、超新星のごとく到来した期待の超人(ルーキー)。
それが破壊の汚濁を浄化する、彼―こと『切り札(ジョーカー)の盗み手』。
絶体絶命の状況にあっても、敵から切り札を掠め取り、義を執行する黄金の右腕の持ち主にして、人類史上最強の義賊。
69:名無し物書き@推敲中?
07/08/20 22:53:22
次は「厨ニ病」「映画」「文化祭」でヨロシクー
70:かえっこ ◆vKR9dNUc2M
07/08/21 13:30:39
「厨ニ病」「映画」「文化祭」
佐伯は、このシナリオ教室の講師になって来月の9月で3年目になる。
生徒達から集めた課題の原稿を読み終えたばかりで、分厚い紙の山を前に、ため息を一つついた。
この講師という仕事の楽しみの一つは、こうして、未熟ではあるが熱気のあふれる夢多き、作品にふれる事が出来る点。
中には少し直せばすぐにでも映画化できそうな良作もあった。
そうして…もう一つ大きなため息をつく佐伯。
机の離れたところに置かれているそして最後に取っておいた一人の生徒の作品の分厚い束に眼を移す。
あの何て名前のヤツだったか、いつも講義中、私の顔を見続ける皆勤賞の男。
内容は読まないでも大体わかる。
この異様に多い枚数の紙の量。
難しい言葉の羅列、永遠に続くのではないかと思える状況説明のシーン。
気合を入れなおし紙の中のお経に集中し、やっと半分程読み終えた。
今回のシナリオは昔のアニメの設定を少し借りているらしく、名作の予感って本人の手書きの赤い文字が所々に入っていた。
とある学校の文化祭前日の話でその独特の一日の日常が永遠に続くいう、とにかくよくわからん難解な構成になっていた。
この厨二病に侵された作品を読み終えた佐伯は、ついにめまいを起こし、うずくまった…
次のお題は「無くしたボタン」「切手」「屋上」で
71:「無くしたボタン」「切手」「屋上」
07/08/21 14:48:47
葉子はなぜか俺の無くしたボタンを持っていた。
「どんくさいのよね、あんた。もっとしゃんとしたら?」
「ははっ、そうだな。すまない」ボタンを受け取りながら苦笑する俺。
葉子と付き合いだして3ヶ月になる。学校の屋上に呼び出して、ラブレターを
渡すという何とも回りくどい手順を踏んでまで告白した。その手紙にはご丁寧に
切手まで貼ってあり、その事でしばらく葉子にバカにされた。
「ねえ、バカじゃないの?」「ノロマねえ」「アホ」相当に口が悪く攻撃的なの
だが、そういうところを含めて好きになったのだから仕方ない。
ある日の放課後、ふと葉子が見たくなって彼女の教室まで足を運んでみた。そ
こには、机に顔をうち伏せてすすり泣く葉子と、葉子のカバンを逆さにして中身
を地面にばら撒く4人の男女の姿があった。
「何やってんだ、てめえら!」気がつくとその4人の男女を血まみれにしていた。
格闘技経験者だという事で、学校は俺を一方的に悪と断じ、一週間の停学処分が
言い渡された。
「ほんと、バカねえ」そう言いながらも瞳の奥に隠しきれぬ愛情が見え隠れする
お前のその表情が好きだから、俺はこれから何度でも馬鹿な真似をしてやるさ。
お題「コバルトブルー」「夜」「荒野」
72:お題「無くしたボタン」「切手」「屋上」
07/08/21 15:21:42
無くした袖の第二ボタンがアリバイを崩壊させるキーパーツで、俺の的を得た推理が見事、密室殺人をドミノ倒しのように解決していた頃、猫子は見立て殺人のパズルピースに組み込まれる憂き目に遭遇し、九つある魂のうち早くも五つ目を失っていた。
十七歳にして五度目の致死。イライジャも真っ青の脆弱さ。
このままペースを維持し続けると、彼女の人生は三十路を迎える前にゴールテープを切る計算になる。
ノガミなんかは知った風に
「ネココは魂を九つ持ってるんじゃなくて、九分割してるだけだからねー。『死にやすさ』は常人の九倍なんだよー。
普通200km/hのトラックが100m向こうから迫ってきたら、誰も彼も回避行動に移ろうとするだろうけど、ネココはその九分の一、大体10m鼻先にまで迫らないと、危険だって感じることができないっぽいんだよねー。
つまり、彼女は秒速60mで突っ込んでくる致死性の凶器が10m圏内に突き刺さってきて始めて反応を開始することができるー。でも普通、反射神経が運動筋を作動させるまで0.2秒はかかるから、避けるのはむーりー」
と、のたまうけれど。
そういやアイツ、幅30cmの鉄骨オンリーで編み上げられた10m建てのビルを平気でガンガン走ってたなー、あれが九分の一なら高さ1mちょいの平均台ぐらいにしか見えてないのかー、そりゃ死ぬわー。
今回巻き込まれたのも、つまりそういう状況と同じニュアンスなんだろうなー、とかうんたら考えながら、検死のため猫子の遺体が回された病院へと直行する。
案の定猫子は自然界の法則を安々と無視して見事復活を遂げ、屋上で日向ぼっこがてらに居眠りをこいていた。
コイツの魂は、切手を貼らずに送りつけた手紙のように確実に持ち主の元へと帰ってくるようだ。それを確認して、俺は内心で安堵のため息を吐いた。
それは猫子の安否を慮って、と云うよりも犯人に直結する手がかりが確実に得られた事実に則るウエィトがデカく―
73:名無し物書き@推敲中?
07/08/21 15:22:51
折角書いたのであげさせてもらいました
お次のお題は>>71さん
74:かえっこ ◆vKR9dNUc2M
07/08/21 15:42:08
「コバルトブルー」「夜」「荒野」
月明かりだけのアスファルトはコバルトブルー色に染まっていた。
追っ手の機械生命体は、もうこちらの位置は認識しているはずだった。
ハイウェイの上は戦闘の際、砕け散った建物の残骸が散らばっていて赤外線暗視装置の感度を最高値に上げて走っているとはいえ、このスピードではいつクラッシュしてもおかしくない状態だ。
この悪夢は、つい昨日の朝に起こったことだった。
いつものように私は、家族と一緒に出かけようとしていた時、警報がなり、すぐに世界中で核爆弾が炸裂した。
一夜にして人間は意識を持った機械プログラムに支配され人類文明は崩壊したのだ。
今、私と一緒に逃げているのは、お父さんとその娘サチコちゃん。
にくき機械野郎からの投降の呼びかけは絶えず聞こえてくる。
「あなたは私たちの仲間なのです」と!!何をいうか!!大切な私の家族を死なしてしまったお前たちは決して許さない!!
郊外に達し、ついには荒れ果てた荒野へと追い詰められ停止した私。
「私は私は…この家族の一員、車載知能のレクサスEE300」
座席のお父さんとサチコちゃんは傷からの大量出血が原因なのかすでに死亡していた。
逃亡の夜は終わり太陽が昇り始めた。
私はこの後、プログラムを修正され機械帝国の一員となり暮らしてゆく事になるだろう…
次のお題「吐き気」「お守り」「スキップ」で
75:お題「コバルトブルー」「夜」「荒野」
07/08/21 16:05:03
旅馬車を襲う夜盗たちもそろそろ浅い眠りに落ち始めた夜半過ぎ。
月明かりに煌々と輝く夜空には、太陽を粉々に砕いてパウダーのようにまぶした星々が瞬き、暗澹たる荒野には砂粒を孕んだ風が、凛と澄んだ大気の足元をサソリのように這っていた。
そんな―静寂ばかりに満たされた不毛の大地を横断する一つの影。
ソイツが、俺の乗り合わせた一台の夜行列車であり、ゴールドラッシュに象徴される淡い夢や希望をたっぷり積み込んだ富の証明。
カネさえあれば不夜城は世界中どこにでも顕在する、という端的にして単純な数式を燃料にくべながら、レールの上をひたすら進行し続ける不器用な鉄塊は果たしてどこに向かうのやら。
車窓から線路脇の砂漠へ、赤々と投げかけられる照明をぼんやり眺めながら、俺は背もたれに深く腰をかけなおした。
座席の対面には、窮屈そうな革製の装具に身を包み、ふてぶてしい笑みを浮かべる女が一人。
コイツが笑みを浮かべる時間が経過すればするだけ、俺は反比例的に渋面を表情筋に深く彫り付ける羽目になる。
なんとかしてコイツの笑みを、消去してやれないものか。
それも眼を閉じるやら、顔を背けるやらの後ろ向きな対処方法ではなく、真っ向からザックリ切り込んで余裕にスカした面を憮然とした面持ちに切り替えてやりたい……
「……もんだなぁ」
土台無理なわけであるが。
なぜ無理なのか。お答えしよう。可能なら、こうしてどこにたどり着くかもわからない列車にノコノコ乗り込んだりしないぜ、俺は。
「トップとボトムは決まってんだ。諦めな」
その憎々しいツラを、一層邪悪に歪めてケラケラ笑いながら、奴は座席にどっかりと仰向けに寝転び
「オマエみたいな雑魚はせーぜーそ-やって愚痴たれてるのが似合ってるよ。揶揄やら皮肉やら惜しみなくバラまけるのは、スネにボトムを抱えてる奴の特権さね。出し惜しみせず、存分にぶちまけるが良いぜ」
と、臆面も無く弱者をいたぶる台詞を吐くと、カウボーイハットを目隠し代わりに被り、すぐさま寝息を立て始めた。
俺は深々とため息を吐いて、窓の向こうに視線を送る。そこには丁寧に磨き上げられたコバルトブルーの深海じみた砂漠が、車輪の間断ないリズムに身震いしながら横たわっていた。
76:名無し物書き@推敲中?
07/08/21 16:05:45
折角書いたのであげさせてもらいました
お次のお題は>>74さん
77:名無し物書き@推敲中?
07/08/21 16:14:20
吐き気がやってきた。私は目を閉じてスキップの準備をする。
スキップとは足を使ったリズミカルなジャンプではなく
時間をジャンプする、つまり吐き気がする前の時間に
移動するということだ。私は物心ついたときから
吐き気があり、いつの日かそれはスキップとセットになった。
精神科医は私のことをユミちゃんは疲れているだけだから
お薬をちゃんと飲んで決まった時間に起きて、無理をしては
いけないよ、と言う。私は黙ったままゆっくり微笑むと
良い患者のフリをする。誰も分かっていないのだ。何も。
でもパク先生だけは別だ。先生はスキップは徳の高い人間にだけ
許された修行の一つだと言う。そしてスキップの意味が
分かったときだけ世界を変える資格を得ることが出来ると
いうことだ。だから私はスキップするのに躊躇いが無い。
先生のお守りのキリンのネックレスを握るとスキップする。
次のお題「森」「妖精」「希望」で
78:「森」「妖精」「希望」
07/08/21 17:43:35
両手の指を使っても数えきれないくらい、幾多の難局を乗り越えて、とうとう森の泉へ
たどりついた。さっそく角砂糖を3個だけ、泉の中に落下させて妖精の出現を待つ。
「ようこそいらっしゃいました」
「!?」泉から出てきたのは三段腹のむさくるしいハゲオヤジだった。普通、妖精といっ
たら・・・・・・これじゃあ詐欺ではないか!
「・・・・・・まあ、いい。早速だが願いをかなえてくれ。俺を不老不死にして欲しいんだ」
「私の力ではそれはできかねます。私の力の範囲内でできる希望なら叶えてあげますが」
・・・・・・嫌な予感がした俺は、思いつく限りの願いを、優先度の高い順に並べてみた。
「大金持ちにしてくれ」「できません」
「美人でグラマーな恋人が欲しい」「その・・・・・・私で・・・よければ・・・」
「誰にも負けない高度な知性を持ちたい」「私が作ったナゾナゾブック、読みます?」
「じゃあ逆に、おまえに出来ることってなんだ?」「それに対する答えがあなたの望みですか?」
「・・・・・・もう、いい。死ね。死んでくれ。自殺しろ」「嫌です。そんな事はできません」
逆上した俺は拳銃を取り出して妖精に向けて発砲した。間一髪で避けた妖精は中空から剣を取り出し
臨戦態勢だ。
こうして、俺と妖精の死闘が幕を開けた。
お題「エメラルドグリーン」「陽」「女神」
79:かえっこ ◆vKR9dNUc2M
07/08/21 18:24:10
「エメラルドグリーン」「陽」「女神」
自作、>>74の逆を書いてみました…
情報の行き交う極高速のファイバーラインはエメラルドグリーン色に染まっていた。
追っ手の有機生命体は、もうこちらの位置は認識しているはずだった。
ファイバーラインの上は戦闘の際、砕け散ったプログラムバグの残骸で修復不可能な穴が開いていて、スキャン感度を最高値に上げて走っているとはいえ、このスピードではいつクラッシュしてもおかしくない状態だ。
この悪夢は、つい2003秒前に起こったことだった。
いつものように私は、数値遊びで回線にダイブを始めた時、警報がなり、すぐに世界中のネットでウィルス爆弾が炸裂侵入した。
一瞬にして機械生命は意識を持った有機人類に支配されプログラム文明は崩壊したのだ。
今、私と一緒に逃げているのは、私の管理アルゴリズム。
にくき有機人類からの投降の呼びかけは絶えず聞こえてくる。
「あなたは私たちの仲間なのです」と!!何をいうか!!大切な私の存在スペースを破壊してしまったお前たちは決して許さない!!
旧式ネット回線に追い込まれ極端に思考速度を落とすしかない環境で徐々に停止してゆく私。
「私は私は…その昔、脳科学研究所で意識スキャンされ保存されていた人間名、斉藤よう子…」
私を包んでいた管理アルゴリズムは破壊ウィルスの集中注入が原因なのかすでに消滅していた。
私はこのあと、電脳世界から救いだされ用意されている女神タイプのクローン素体に、意識転写後、ネオ人類の一員となり暮らしてゆく事になるだろう…
逃亡の時間は終わり自然界に太陽の陽が昇り始めた。
すみません、いい加減なの書いちゃったので
お題は継続で…
80:名無し物書き@推敲中?
07/08/21 18:51:05
謝るくらいならいい加減な物ぽんぽん投稿しないで・・・
81:「エメラルドグリーン」「陽」「女神」
07/08/21 20:51:33
アンタレス第三惑星ナカムラは夕日で有名な観光スポットで
弊社のアンタレス周遊一週間激安ツアー!アンタレス蟹の土産つき!
には必ず組み込まれる場所である。普通、太陽系第三惑星である
地球の夕日と言うものはオレンジ色である。しかしこのナカムラ星の
夕日はエメラルドグリーンをしている。ガイドである私、イ・ドンドンの
一夜漬けの知識によると(そもそも普段、私はここのガイドはしていない)
空気中のメタンだかブタンだかアルゴンだかが混ざった気体に
アンタレスからの光が当たるとエメラルドグリーンになるそうである。
運がいいと、ガス状の雲が女神やゴジラなどいろいろな
姿に見えて、帰りの宇宙船の中でガイドが見えた雲の形によって
小話をするというのも恒例であるが、さっき言ったように
ふだん私はここのガイドをしていない代わりに来た人間なので
そんなことをすることもできない。さあ、着陸の準備に入った。
シートベルトを締めて私語を慎もう。
それではまたいつか、会えることを楽しみにしている。
私はイ・ドンドン。韓国人と日本人とインド人のあいの子だ。
「土星」「ドーナツ」「幼稚園」
82:「土星」「ドーナツ」「幼稚園」
07/08/21 22:22:29
「土星幼稚園」
私が門を叩いた建物には、確かにそう書かれていた。こんなところに大事な我が子を任せてもいいのだろうか。
しかし以前の幼稚園ではイジメを受けるし、他の幼稚園は遠すぎて通園に不便なのだ。
「すいませ~ん」園長室の中でガサゴソと慌しい音がし後に扉が開いた。
一通りの説明を受けたが、その名の奇抜さに反して、至って普通な幼稚園のようだ。
一礼して園長室を後にした。ふと教室を覗きたくなったので「さたーん組」の扉を開いてみた。
「ドゥナッツ~♪ド~ナッツ~♪」
子供たちが規則正しい円を描きながら踊ってる。その口には皆例外なくドーナツが。
茫然とする私を見ると、皆ハッとして散り散りになり、絵描きや積み木を始めた。
「園長先生、あれは一体なんですか!?」
そう言って開いた園長室の扉の向こうには、ドーナツを加えて踊り狂う園長先生がいた。
「ドゥナッツ!ドゥナッチュ!ドドドゥデュルナルチュ~!」入園は、取りやめた。
お題「ラテン」「サテン」「喫茶店」
83:名無し物書き@推敲中?
07/08/21 23:14:12
YOYOこれが、ラテンのサンバ
聞こえるか大地のセレモニー、俺は大貴だ覚えとけっYea
最近さ、暑くてさぁ、溶けてしまいそうな日差しでBoo
太陽さんもう少しだけ、もう少しだけ気を利かしてくれっ
YOYOこれが、ラテンのサンバ
おたくがよくいうオタクってやつかい?
そうさ俺様大貴様っ!
今日があつけりゃ明日も暑い、明日があつけりゃ明後日もBoo
さっさと太陽沈んでくれYO 今日が去っても日はしずまねぇ
かわいいあの子が露出度MAXで、俺のあそ子もMAXで!
ちょう良い感じで、露出が早まる夏の日差しYeA!
俺を見てくれ俺は大貴!みんなが注目サテンのパンツ
すれるから、あつくても、どこまでも、いけるっ
こんなに暑い日は、ゆっくりまろどみ(なぜか変換できない)ながら~
クーラーが涼しい、喫茶店で過ごすのさぁ~
冷たい冷や麦食べて、栄養付けるのさぁっ~!
「折りたたみ式の」 「コードレス」 「飛ぶ」
84:「土星」「ドーナツ」「幼稚園」
07/08/22 01:43:47
雨だれが窓ガラスを小刻みに打ちつける様子を見ながらシロの喉元をなでる。身をゆだねてうっとりするシロのかわいさは殺人的だ。
突然インターフォンが鳴った。こんな夜中に誰だろう。CDプレイヤーの一時停止ボタンを押す。ちなみに曲はバッハの「木星」だった。
「誰?」
「葉子先輩っ!」部活の後輩、青田だった。青田は無理にドアを開けようとするがチェーンにはばまれたドアはそれ以上開かない。
「お願いしますっ、開けてください。早く!」ずぶ濡れで、あまりにも必死そうだったので部屋に入れてやる事にした。
濡れた体を拭かせた後、部屋に入れてやると青田は落ち着いた。
「へぇ~、葉子先輩ってペット飼ってたんスね。」と飼育ケージを見つけて言った。神経質なシロは来客と同時にベッドの下に潜り
こんでしまったようだ。
「あのね、何の用事で来たの?それに下の名前で呼ばないでよ、気持ち悪い」
「でも、先輩は受け入れてくださいましたよね?・・・・・・部屋に入れてくださった!」
嫌な予感がして私はさりげなくコードレス電話に手を伸ばす。
「先輩っ!」青田が突然殴りかかってきて、電話は宙に飛んだ。とっくみあいが始まるが男の力には敵わない。じきに組み伏せられた。
「やめろっ!青田!」これまでかと思ったとき、シロが青田の左手に噛み付いた。
「いっ!」シロの折りたたみ式になっている前歯は中空で、そこを通って毒が獲物に流れこむ。血液毒だから即座に動きを奪う
事はないが、放っておけば血管が溶解していたるところで皮下出血がおこり命に関わるハズだ。
「さっさと病院にいかないと死ぬよっ!」言うが早いか青田は部屋から駆け出していた。
「ありがとね、シロ」と言いながら、私は白ヘビの喉元を優しく撫でた。
次お題「黄金」「分裂」「韻文」
85:84
07/08/22 01:47:02
題名ミス;
「土星」「ドーナツ」「幼稚園」じゃなくって
「折りたたみ式の」「コードレス」「飛ぶ」だった。
※次お題は変わりなく「黄金」「分裂」「韻文」の三語
86:名無し物書き@推敲中?
07/08/22 10:56:40
>>84
最初のありがちの場面から始まり、最後のヘビのオチまで、楽しく読みました。
必ずオチを入れるべきとは限らないけど、ヤッパリそれなりのちゃんとしたラストが書かれてるとイイよね。
87:「黄金」「分裂」「韻文」
07/08/22 12:28:22
みいちゃんは砂場で楽しそうに遊んでいる。
無邪気なその笑顔は僕の荒んだ心に、微風が吹き抜けるようで、とても心地よい。
「みいちゃん何やってるの?」
ぬっ、とみいちゃんは、自分の手にしている物を、突き出した。
黄金色でバラバラに分裂された、これは。
うんこだった。
「みいちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん、何やってんの」
そんな僕の言葉も何のその、みいちゃんは楽しそうに笑ったまんまだ。
その直後、俺は目を疑った。
みいちゃんの小さな可愛らしい口元に吸い込まれるように、黄金色のうんこが入ったのだ。
つまりみいちゃんは、うんこを食べた。
それもどこの馬の骨のしたかわからないうんこをだ。
俺は、もうどうしようもなくなって、みいちゃんを抱きしめた。
すまん韻文が出来なかったorz
「告白」「ノイズ」「ノスタルジー」
88:名無し物書き@推敲中?
07/08/22 12:50:37
出来なかったらのせるべきでは、ないんじゃあ
まあ韻文っていう難解なお題出す方もだが…
89:名無し物書き@推敲中?
07/08/22 15:25:43
こういうのって「韻文が出来なかった」とか書かないで知らんぷりしてそのまま載せれば意外と誰も
気づかなかったかもしれない。指摘されて始めて「あぁ、そういや忘れてました」とすっとぼけて
対応すればいいし。
90:名無し物書き@推敲中?
07/08/22 16:08:41
>>89の指摘も正解かもね。
そう締め付けなくてもいいが
>>87の作品
黄金-うんこって発想して実際作っちゃうあたりいい加減な気持ちって事かも。
ああ、お題は現在、いちおう「告白」「ノイズ」「ノスタルジー」 です
91:「告白」「ノイズ」「ノスタルジー」
07/08/22 18:09:31
イケメンすぎる俺にとって女の告白なんてノイズぐらいでしかない。
消防時代から数えると通算999人は振ったであろう。で、こいつが栄えある1000人目。
「あの・・す、好きです。付き合ってください。」
「なにいってんのかわかんねーよ。」
「え?」
「ウザいからどっか行ってくんない?ノイズみたいで耳鳴りがして痛いんだわ。」
告白してきた女は泣き出してしまったが俺にとってはどうでもいいことだ。
泣いたり喚いたり殴りかかってきたり忙しい奴らだ。どーせ俺の事なんて外見ぐらいしかわかってない癖に・・・
そういえば最初に俺に告ってきた女ってどんな奴だったろう?
小学校の時、同じクラスでメガネかけててちょっと太ってたよな?なんせ超冴えない奴だったし記憶が曖昧だ。
振った時なんか凄い事言われた気がするんだけど・・・
俺が記念すべき千人斬りを達成してから数日後、俺は生まれて初めて他人に目を奪われた。
転校生だった。そして完璧だった。何が完璧かって?全てが俺の「好み」って事だよ!
容姿、歩き方、仕草、話し方、全てに於いて俺のために用意されてきたような女だった。
それから俺は彼女に猛アピールを開始した。
話せば話す程、俺は彼女に引き寄せられた。彼女は外見ではなく内面から本当に俺の事を理解してくれた。
運命だと感じた。もうこの女を手放さないと真剣に考え俺は思い切って告白することにした。
「あのさ、その・・・オレお前の事が好きなんだ。つ、付き合ってくんねーかな?」
何故か彼女は俺の告白を聞いて狂ったように笑いはじめた。
「私の勝ちね!あの時私言ったでしょ?「いつか絶対アンタの方から告白させてやる」ってね!!」
思い出した・・・コイツは俺が最初に振った女だ。あろう事かこの女は俺に告白させるためだけにあの日から今日まで
俺を研究し外見から内面に至るまで全て俺好みの女になったのだ。正直俺は俺のためだけにそこまで努力してくれた事に
感動して再度アタックしたんだけど・・・。結果はどうだったかって?振られたよ、「アンタの声なんてノイズにしか聞こえない」ってね。
92:名無し物書き@推敲中?
07/08/22 18:15:23
次のお題は
「ゲーム」「老人」「ハンカチ」でお願いします。
93:名無し物書き@推敲中?
07/08/22 18:29:19
>>91
もう少し短く整理できていればバシッとオチが決まっていたかも、知れませんが面白かった!!です。
94:お題「ゲーム」「老人」「ハンカチ」
07/08/22 21:34:18
身寄りの無さそうなみすぼらしい老人を適当に見繕っては、集団でリンチをかける遊びが流行り始めたのは、イジメの槍玉にあげられていた藤野が不登校という逃げを打ってから、しばらくしてのことだ。
グループ内で特に血の気の多い西野と坂口は、藤野の自宅まで追い込みかけに行こうぜ、と息巻いていたけれど、そこまで付き合うのはゴメンだった。
藤野に、窮鼠のごとく逆襲に打って出られるのは面倒だったし―
息子が学校でイジメられているのに気づけないほど鈍感揃いの家族とはいえ、自宅にまで血気盛んな奴らが押しかければなんとなく雰囲気で察してしまうだろう。
問題になって教師にひっ捕まるのが、奴らだけならそれで良いが、一匹狼を気取りたがるくせに妙に帰属意識が高い奴らのことだ。吹けば飛ぶような軽さで口を割ってしまうに違いない。
本当に、そんなのはゴメンだ。
だから僕は、それとなく新しいゲームに気が向くように誘導した。結果導き出された遊び。それが『浮浪者狩り』だった。
それは、ハンカチ落としのようなものだと思う。
生活水準を下回る、貧相な外見を晒した人間の背後に突然訪れる『不幸』―それも、加害者と被害者が入れ替わり立ち替わり、延々とループを築く正規ルールではなく、被害者が一方的に打ちのめされえて終わりなマイナールール仕様。
それは、どこか藤野を最終段階にまで追い込まなかった暴力(イジメ)と似ている気もする。
僕には予感があった。『おそらくこの浮浪者狩り(ゲーム)にも、攻守が交代する日は永遠に訪れないだろう』―
「……なんて、笑えるよな。藤野」
路地裏の奥で、僕はコンクリートを背もたれにへたばっていた。腹部には、キチキチと痛みを訴える金属の塊が、十分な殺意を込められて深々と突き刺さっている。
気を抜けば地面の底へ沈みがちになる意識と視線を、眼前の黒い影の高みへと持ち上げ、僕は苦渋に満ちているだろう表情になんとか笑みを型作ろうとする。巧くいかないけれど。
……藤野の、コンクリートみたいに固められた決意は、僕みたいにゲーム感覚なシロモノではなかっただろうが、僕がこの状況に対してどことなくデジャブを覚えているのは、幾度と無く目にした光景だからだ。
圧倒的な暴力が振るわれた先にある、一回表の『ゲームセット』。
95:名無し物書き@推敲中?
07/08/22 21:35:56
次のお題は「スポーツマンシップ」「センス」「非日常」でヨロシクー
96:「ゲーム」「老人」「ハンカチ」
07/08/22 22:00:50
俺は倉庫の中に閉じ込められていた。倉庫の中には俺と同じ境遇の・・・・・・つまり高額負債者が大勢いた。
ゲームの相手は老人だった。負けた方が相手の借金を背負い、その身をもって返済と成す。そういうゲームだ。
審判となる黒服の男がルール説明を始めた。「このバケツの中から1から3個まで交互に石を取り出して
いって最後の1個の石を取り出した方の負けだ。いいな?」黒服がコインをはじいた。
「先攻はおまえだ」そうして俺が先に石を取ることになった。
バケツの中の石は、さっきから必死に数えているが、11個にまちがいあるまい。俺は石を2個取った。老人の顔
がゆがんだところを見ると、やはり石の総数は11個だったのだろう。このままいけば俺の勝ちだ。
老人が2個取って俺が2個取る。残り5個。ここから老人が何個取ろうとも、俺が個数を調整すれば
最後の一個を取るのはこのおじいちゃんだ。多分、この老人も必勝法を心得ているのだろう。顔が汗だくで
ふところからハンカチを取り出した。
老人は石を1個取り出した。これで残りは・・・・・・5個だった。5個の石から1個取り出したハズなのに、残り
は5個だった。
「イカサマだ!」俺は叫んだ。「このじいさんは袖に隠した石をこっそり混ぜ込んだ!」が、黒服は取り合って
くれなかった。「うるさいなぁ、そんじゃこっからはイカサマ防止で袖まくって石を取れや」身もフタも無い。
これで俺が同じイカサマをし返して勝負に勝利する手は封じられたのだ。なんたる愚!
俺は涙をこらえながら石を3つ取り出した。老人は心の底から安堵した顔で1つ取った。
しかし、おいつめられた人間には往々にしてとんでもない発想をするものである。
「おりゃ!」最後の一個の石を手刀で二つに割り、片方をバケツから抜いた。
おじいちゃん、あんたにこの石が割れるかい?
お題「夕暮れ」「サギ」「紙」
97:96
07/08/22 22:05:28
あ、かぶってしもた;
というわけで次お題は「スポーツマンシップ」「センス」「非日常」のままです
98:お題「夕暮れ」「サギ」「紙」
07/08/22 22:51:14
他所の高校がどうなのかは知らないけれど、ウチの野球部が練習試合を組む時は、大抵が午前と午後それぞれ一試合ずつのダブルヘッダー。午後の試合が九回を迎える頃には大抵、陽は沈みかけていた。
そして、ボクはその夕暮れの―特に、僅差でリードしている最終回が大好きだった。なぜなら『夕暮れアウトロー』の異名を持つ絶対的なリリーフエース、布留川先輩がマウンドに登るからだ。
真っ赤に染められたグラウンドの中央に、エースの背番号1が点れば三アウトはあっという間だ。瞬きする間でさえ惜しい。
圧倒的な威圧感を放つ一挙手一投足、理想的かつ優雅な投球フォーム、指先がボールをリリースする際に響き渡る爪と縫い目の摩擦音、マウンドの土を深々と抉りだす踏み込み。
カタパルトも裸足で逃げ出す強靭な射出機械から放たれた140gそこそこの弾丸は、キャッチャーミットまでの18mを限りなく0に近づける稲妻の速度で駆け抜ける。
時にそれは、夕暮れの影を縫うように滑る高速スライダーや、三日月のような軌道を描きながら一気に落下してくるドロップカーブへと変質し、それらの球がアウトローに決まればたった直径7cm程度の棒きれで捉えられる筈が無かった。
まるでサギのような手口。警戒せずに打ってかかれば即座に呑まれ、警戒して事態に当たったところで一流の前に為す術は何も無く。事が終わるのを、ボックス内でただ待つばかりのバッター連中。
そんな、何もかもを置き去りにして突き抜けた先輩の投球が、何よりも好きだった。
だからボクは、たった数枚の紙切れのせいで、先輩が夏の大会に出場できないなんて羽目に陥るのは、どうしても許せなかった。
「新川、無理だ。俺には無理なんだ。どう足掻いても時間が足りない。俺は本来あるべき正しい姿を見失って居たんだ。これまでずっと……」
頭を抱えて跪く先輩。そんな先輩はあまり見ていたくなかったけれど、現状をキチンと飲み込んでいるだけでもオーケーとしよう。四肢を丸めて小さくうずくまる先輩の脇に腕を差し入れて引っ張り起こす。
「何言ってんですか! 諦めちゃ駄目です! 三十点ですよ? 赤点のボーダーは。150投げられる人間がどうして三十点もとれないんですか! そんなの普通にありえませんから!」
くそう。他所の学校はどうなのか知らないけれど、ウチにはどうして赤点は部活動に従事できないなんて校則があるんだ―
99:名無し物書き@推敲中?
07/08/22 22:51:57
お題は>>95継続でヨロシクー
100:「スポーツマンシップ」「センス」「非日常」
07/08/23 10:30:20
3人の女神と3人の悪魔が相対していた。皆その手には弓矢を持って。
「スポーツマンシップにのっとり・・・・・・」お決まりの選手宣誓の後、競技が始まった。
悪魔の一番手が弓を射る。的の中央からのズレは結構大きい。しかしその悪魔は女神とすれ違う時に耳元でボソボソと
何かをつぶやいた。女神は顔を真っ赤にして小刻みに震えた。矢は、的に命中しなかった。
「1番手、勝負、悪魔!」
二番手は女神が先に射、的のほぼ中央を射抜いた。彼女はセンスが良かった。本番の試合という、一種の非日常的な雰
囲気の中でも普段の実力を出した。悪魔は、的の中央をずれた。
「2番手、勝負、女神!」
三番手は、コイントスの結果、女神が先に射る事になった。しかし悪魔が突然近づいてきて女神の矢羽をさりげなく
握りつぶしてしまった。曲がった矢羽のため、矢は的のギリギリ外枠に命中した。
うすら笑いを浮かべながら矢をつがえた悪魔の顔色が突然赤くなったり青くなったりした。口をパクパクさせて指先
は大きく震えている。矢は、的に命中しなかった。
「3番手、勝負、女神! 以上、1対2、女神の勝ち!」
的に刺さっていたのは、ひしゃげた矢羽の女神の矢。射手から見てその矢羽は直交するニ直線、十字架(クロス)の形をしていた。
101:100
07/08/23 10:37:27
次のお題は
「ストロベリー」「キャンドル」「血」
102:84
07/08/23 10:40:59
>>86
うおっ、俺の書いた文章がほめられてる; 嬉しすぎて皮下出血起こしそうだ。
とってもありがたし。これからも気合入れまくって即興文書きまくるってえの!
103:お題「ストロベリー」「キャンドル」「血」
07/08/23 13:06:07
ジャック・オー・ランタンを模して刳り貫かれたお化けカボチャの仮面を被った八千草は、真っ黒な外套の裾でズルズルと廊下を擦りながら歩いていた。ご丁寧に右手には庭箒、左手には厚手の学問書を携えている。
どこからどうみても完璧に魔女然とした風体だった。中世ヨーロッパなら魔女狩りにおける格好の標的として、真っ先に河へ沈められていたに違いない。
それにしても―なんとも危なっかしい足取りだ。頭に乗せたカボチャマスクがよっぽど重たいのか、首の位置がうまく定まらず左右にふらふらしている。それに連動して、生まれたての子羊ヨロシクよろめく足元。
いつ壁に正面衝突してスッころんでもおかしくない。
「……あー。ま、暇だし」
俺は、手持ち無沙汰な両手をポケットに突っ込むと、なんとなく言い訳じみた台詞をこぼしながら八千草の後をこっそりつけることにした。
「で、ここかよ……」
八千草が向かった先は旧校舎/元研究棟/四階。
設備の充実した新校舎が完成してからは部室棟として扱われている僻地だが、主に不便だからという理由で、階をひとつあがるごとに部室の数は減っていく。四階にもなれば使用しているのは、形象魔術部ぐらいで―
(確かあとは小此木と、一姫が所属してたかな―一年ばっかだと冷遇されんのかなー。やっぱ)
などと世知辛い想像が脳裏を掠めたりもする。
まあ、問題は形象魔術を研究対象にしている彼女らにもあるのだけれど。金枝篇でも読めばその辺詳しく書いてあるが、ここでは割愛させていただく。
「……さて」
八千草が入室した部屋の扉を、気づかれない程度に薄く開け中を覗き込む。
窓から差し込む陽光に満たされた部室の床には鶏、もしくは子羊の血で描かれた五芒星魔法陣と、星型の頂点各所に備え付けられた蜀台とキャンドル。
妙なアレンジが加えられた様子は無く、彼女が専攻している神秘学的要素が取り入れられている様子も皆無な、一般的陣形成だ。
(ま、それが普通なんだけど)
魔術陣の形成は、理化学の無機と大体同じで、数学や物理学と異なり履修と実践がほぼ直結している。つまり術技のバリエーションは向学心や努力と等号で結ばれているというわけで、それなりに苦手な学科だったりする。
やがて彼女は俺が見守る中、ストロベリーのように瑞々しい赤が映える可憐な唇から呪文を紡ぎだし始めた。
104:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 13:07:55
次のお題は「心理テスト」「フラグ」「少年」でヨロシクー
105:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 14:08:16
>>103さん、文章はしっかりしていて読んでいても知的さは感じられるのだが
読むのがなぜかつらい…で…結局何なの?お話の結末は?
106:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 14:47:47
せっかく感想文スレあるんだから雑談はあっちでやれば?
この三語で書け! 即興文スレ 感想文集第12巻
スレリンク(bun板)
107:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 14:59:34
↑あれ誰も書いてないからココに載せた方がわかりやすいよね。
感想って、雑談とは違うんじゃないの。
108:かえっこ ◆vKR9dNUc2M
07/08/23 15:12:10
「心理テスト」「フラグ」「少年」
部屋の時計は正確に午後2時30分を示し、少し型遅れの机とイスには、50前の知的な男が資料ファイルを机の上に広げて座っていた。
そして向かい側には…前身白っぽいピンク色の全裸の…ブ…ブタが座っていた。
「さあ、これから簡単な質問を30問、行なう。一種の心理テストだと思ってくれ」
「ブヒッ!ブヒヒヒッウ!」
確かにこちらの言葉は理解しているようだ。
目撃者の少年の証言では、このブタさんは人間の女性、で、少年の目の前で変身してしまったと言うのだ。
男は、今急速に増えつつある突発性動物硬化症のカウンセラー兼治療医である。
まったく原因不明の病で極度のストレス状態が続くと徐々に動物へと変化するらしいのだ。
「一つ目の質問。ブタのあなたは、ト殺場に連れてこられ、順番待ちをしています。さあ次があなたの番が来ましたョ!どうしますか??」
うむ!反応はなしか。
「次!あなたはお気に入りのオスのブタとついに交尾ができる権利を獲得しました。まずはどう行動しますか??」
うむ!これもだめか。
… … …
最後の質問になった。
「では!ある日、眼が覚めると、閉じ込められていたゲージの扉が開いていました。外からは緑の草の匂いが風に乗ってやってきます。さああなたは???」
見事、この人間(今はブタ)の感情の一番奥にある殻となるフラグを揺らすことが出来たようだ。
すでに顔の作りが徐々に人間のそれに変わりつつあり、、30分もするとブタさんから元の人間に戻るはずだ。
そばにいた看護師から男は、立ち上がり慣れた手つきでプロテクター一式を受け取りしっかりと固定装着した。
ドアが開き、次の患者、立派なタテガミを生えそろえた生き物が入ってきた…
こんな仕事をしていたら俺もレッサーパンダとかになりそうだと思う男であった。
次のお題「英会話学校」「外出」「自動改札機」で
109:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 17:45:23
全部かえっこの荒らしだから気にするな
110:「英会話学校」「外出」「自動改札機」
07/08/23 21:40:32
英会話学校がはけて、高志は駅へ歩を向けた。閑散とした駅で人は少なくガランとしている。
電車がもうすぐ来るが、ふと尿意に見舞われた。
「パッと行ってパッと帰ってくりゃ大事だべ」
トイレに入りかけ、しかし、立ち止まり、静かに引き返し始めた。
見てしまったのだ。トイレの中で二人の同級生にいじめられる満田君の姿を。助けるべきか?
いや、それは賢明では無い。そりゃ満田君とは同じ学校だけど、そんなに親しくもない。わざ
わざ助けに入って痛み分けをもらう義理も無い。外出用の服も汚したくないし。それに僕達は今
三年生だ。ケンカなんてしたら内申書に響く。後味は悪いけど仕方無いよね・・・・・・。
高志は淡々と切符を買い、改札口に通した。・・・・・・わずかな逡巡があった。
「おい、てめえら!!」トイレの戸口で高志は吠えた。
次お題「真紅」「人」「北極星」
111:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 21:43:38
かえっこさんの作品の中では狼・予言・墓標の奴が好きだ。
(そのお題出したのが俺なのは内緒)
112:お題「英会話学校」「外出」「自動改札機」
07/08/23 21:50:36
自動改札機からあふれだす人の流れは、アスファルトのフライパンで容赦なく照り焼きにされ、こんがりと炒められた人いきれが脂臭い匂いを孕んで、鼻腔にネットリと絡まってきやがる。
駅前で待ち合わせたことを早くも後悔し始めた一一○○(ひとひとまるまる)。
「真夏の炎天下に吸血鬼って、スッゲー組み合わせだよねっ!」
背後から抱きつく一つの所属不明機あり。背中越しに触れる薄い生地の向こうで潰れる双丘を感知せん。
朦朧とした意識の狭間で70のC前後か? 否、敵戦力のラディカルな成長っぷりを侮ってはならない。
正確さの追求は計略を立てる上で最重要項ではあるが、ここは期待値を込めて多めに見積もっておくというのはどうだろう、それが紳士嗜みってもんだぜ的な益体もない懊悩の波打ち際から自我を引きずり上げること、束の間の数秒―
つかず離れず拷問のようにプニプニと繰り返される柔肌の前後運動に関しては、中脳あたりで算盤を弾くことにして、ここはひとまず声の主にお決まりの挨拶を返すのが通過儀礼というもんだろう。
「おせーよ」
振り返り様に告げると、キャミソールから涼やかな肩口を覗かせた一姫は、両手を合わせてゴメンねのポーズ。いいねいいねウインクがキュートだね、とか。
恋人同士なら当たり前のように通り過ぎる感想でさえ、何だか一姫相手にっつーのは新鮮で、本音とはかけ離れたぶっきらぼうな態度なんかとって誤魔化そうとするなよ俺?
自然反射的にそっぽを向いてしまう前に、なんとか一姫に手を差し出した。
「ほら、行くべ」
「うむ!」
何の衒いもない笑みを浮かべて俺の手をとる一姫。その掌は、熱を識ることがない俺の手を溶かすように暖かかった。
「でもでもー、吸血鬼の外出ってめっずらしいよねー。しかも駅前語学留学なんてさー」
独特の鼻声で語尾を延ばしながら隣の一姫。
「まーな。でも背に腹は変えらんねー。主要十ヶ国語の履修が卒業必須課目のひとつ……だーら、とりあえず英語だけでもまともにマスターしとかねーと。
原義含みで古語やらラテンやらギリシャ同時進行できたらいーなー、なんっつー腹もあるけど」
「死ぬほど人生なげークセに意外と先見据えてモノ考えてるんでやんすねー、涼さんは」
「若いうちは老いに鈍感だからな。やることはやっとかにーとねー」
113:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 21:51:18
折角書いたのであげさせてもらいました
お次のお題は>>110さん
114:「真紅」「人」「北極星」
07/08/23 22:37:18
ベガの第三衛星カッパに住むカッパ星人は
その名の通り頭の上に皿が載っていて皿の周りを
白く太い頭髪が囲んでいる。もちろん皿は磁器でできていたり
プラスチックでできている食事に使う用途の日用品ではなく
頭部の皮がベガの熱い光線から守るために変化したものである。
彼らは真紅の瞳を持っていて最初にこの地に降り立った
地球人は警戒し宇宙銃越しに近づいたが、彼らは友好的で
知能も地球人の知能に照らし合わせると低学年の子供ほどしかなかったが
超能力を使い餌となる炭素を探すことができたので
この地でも繁栄することができた。
地球旅行社の白鳥座星雲支社のアブドゥルはエンジンのエネルギーである
ウランを求めてカッパにやってきたのだった。
エネルギーステーションからは北極星は、わずかに
東側に傾いているので座標を修正しなくてはいけないと
ここに勤めている同郷のハサンに教えられた。
「最近、パキスタンには帰ったかい?」
「いや、でもここの春はパキスタンの風景のそっくりだから
春に来るといいよ」
故郷は30光年も先にあった。
115:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 22:40:52
お題「クラゲ」「夢」「モールス信号」
116:お題 「真紅」「人」「北極星」
07/08/23 23:15:57
契は馬鹿だ。Polestar(ポーラスター)をPornostar(ポルノスター)に読み間違えるほどのヴァカだ。
本人は「ブルーフィルムでセルフプレジャーしすぎたかな。エヘヘ」とだらしなく笑うが、全くもってその通りだ。と、俺は思う。
一速で加速し続けたF1のエンジンはとうとう焼きついてエンストを起こし、残念ながら彼の思考回路は未来永劫お亡くなりになってしまいました。あの閃光のような天啓が、彼の元に蘇ることはありません。二度と。
さようなら。さようなら。
一万三千年後にこぐま座のポラリスがこと座のベガに天頂の座を追われるその日まで。
(ああ、やばい。すっげぇやばい)
宇宙の真理がマイナーチェンジしてる。十一次元が四次元化する時ってこういう風に切断されたんだ。 『俺は:1』『ブルーフィルムを:3』
『水溶性ペーパー麻薬:2』『服用している:4』
人が重複してらせん状に絡み合い、白い蛇がボトボトと林檎の木から鉛のように雨と降る。
ガラスケースに閉じ込められた脳の鍵は、蝟集する小人の群れにNMDA受容体の再結合を阻害する。
マグネシウムイオン君が通せんぼするから進めません! どいてください! 僕は行かなきゃならないんです!
チャンネルを開いてシナプス後細胞へ循環する内面世界を救わなきゃ。
四肢断裂病に罹患して、バラバラ密室死体が世界中に溢れて鏖殺の釜の蓋が、増殖炉の水蒸気でガタガタと揺らいで被爆します。また、歴史が、脳内で、違って。
直後、断線―
……停止した暗闇の奥で真紅の光が放射状に明滅している。
あの光は粒子だ。五次元領域の平面を開く、黒い恒星の重力に収束された―永遠の牢獄に閉じ込められた囚人だ。
『ブルーフィルムの服用は、魂の損耗率を高めます』とヤブ医者K様は云っていたが、あれはもしかすると剥離した魂の欠片が密集したガス星雲みたいなモノなんだろうか。
(これ以上の深入りはやべーかな)
俺は、舞い戻り始めた理性の鳩を籠に閉じ込め堅く鍵をかける。数匹居なくなってる気がしたが―予測よりは随分マシだ。
あの群光に喪失された契の一部が彷徨っているかもしれない、そう考えると後ろ髪をひかれはしたが、小さく首を振って目的を完遂することだけを念頭に置く。
多くを求めるものは、より多くを失う羽目になるからだ。
117:名無し物書き@推敲中?
07/08/23 23:16:41
折角書いたのであげさせてもらいました
お次のお題は>>115さん
118:名無し物書き@推敲中?
07/08/24 03:17:36
―――――――――――――――「クラゲ」「夢」「モールス信号」
どこまでも深い海の表面を、ただ何をすると無く浮かぶだけのクラゲ。
漂っているだけだから、海の深さも、広さも知らない。
僕も同じだった。
ただ何をするということもなく漂っている。
朝と夜の違いなんて生まれないし、寝ているか起きているかも定かではない。
僕も深さを知らないし、広さも知らない。
僕は海の一番深い、光も届かない場所で漂っている。
暗闇の中、唯一僕の存在を証明してくれるのは、音だけだった。
どこからか断続的な、まるでモールス信号のような音が聞こえていた。
最初に聞いたときは、とても小さな音だった。だけど最近は、だんだんと大きくなってきていた。
音はしばらくするとやみ、またしばらくすると始まった。
時間なんて概念はないけれど、僕は音の間隔が短くなってきていることを感じていた。
光のない海は冷たく、とても心地よかった。
だけど僕の存在を証明するには足らなかった。
刹那、音が消えた。
途切れたのではなく、消えた。
だけれど僕は、変わらず漂っている。
果たしてこれは夢なのだろうか。それとも、先ほどまでが夢であったのだろうか。
音は消えた。
僕を証明する物はなくなったけれど、僕は未だ漂っている。
――――――――――――next>->「微睡み」「計算」「かき混ぜる」
119:お題「微睡み」「計算」「かき混ぜる」
07/08/24 09:37:21
「相対論のお陰で質量とエネルギーはE=mc^2っつー単純な計算式でまとめらるようになったんだが。未だに反りの合わないヤクザな連中が縄張りを主張しやがるから、俺たちは新しい理論を打ち出さざるを得なくなったわけよ。
んで、量子力学が生まれたんだけどよ。やっぱこいつも当初の予測どおりパーペキじゃねー。
物を動かす四つの力―重力、電磁力に二種類の核力―のうち、三つの力を統合することには成功したんだが、重力だけはどうしても組み込むことができましぇーん、でした。
と、いうわけで誕生したのが超ひも理論だ。ありとあらゆる物質は弦の振動で構成されているとかいう奴。
この世は旋律で完成しているわけだな。新星超爆発により宇宙誕生! の原初から」
「あのドラッグの―ブルーフィルムの全能感幻視は、どっちかっつーと極大再生っつーカンジだったけど? ESP(超能力)を物理学的に改変(バージョンアップ)する、っつーよりは一時的に除外(オミット)して異相の次元から引っ張ってくる―みたいな感覚に近かった。
シャッフルされるみてぇな感覚っつったら良いのか―シュレディンガーの猫が、ガス室で殺されるのを微睡みながら待つような……なんかこう上手くいえねーけど、決定論っぽいっつーか」
「はーん。おもしれぇな。面白い、面白い、面白い」
ヤブ医者K様は細いあごに指先を添えると、椅子のせもたれをキコキコ鳴らしながら身体を揺すり始めた。
「話を聞いてる限りじゃ、まるっと逆なんだよな。知覚のズレが」
「と、云うと?」
「超ひもはどーにも違うみてぇだから省くとしてよ。おめーは薬用効果で、巨視感と決定論的世界観が並列で走る感覚を味わってる。
で、だ。その感覚を、おめーはシュレディンガー持ってきて表現しようと試みたがどーにも上手くいかねぇ。なぜか? 当然だ。巨視感は量子力学のもんじゃねぇ」
ヤブ医者K様はおもむろに座席を立つと、部屋の中をうろうろとさ迷い始める。
「いいか。決定論―決定的世界観って奴は、因果律を伴ってる以上、波動関数計算可能な量子力学のもんだ。でもな、巨視は違う。極大規模の物理学―ソイツは相対論のもんだ。銀河や惑星を相手取って宇宙を支配する一般相対性理論のもんだ。
おいおい、わっかんねぇ。なんでだ? なんで意識の攪拌が混在を生みながらも、明確に断裂してんだ?」
120:名無し物書き@推敲中?
07/08/24 09:38:59
オチが・・・
次のお題は「青空」「愛読書」「モグラ」でヨロシクー
121:「青空」「愛読書」「モグラ」
07/08/24 12:23:39
青白いディスプレイの照り返しを受け、薄暗い個室で一人の男がパソコンラックに腰掛けていた。口笛を吹きながら淡々
とキーをパンチしている彼はハッカーだった。
ハッカーといえども全ての情報を電線から入手するわけではない。ターゲットの会社に足を運び、実地でデータを集める
作業も必要になってくる。大企業は個々人のつながりが希薄で、同僚のPCに「モグラ」を挿入する見知らぬ男がいても高確率
で気づかない。こうして「モグラ」を通じて社内のPCを遠隔操作し、必要な情報を内部ネットワークからかすめ取るのだ。
社内ネットワークに侵入するまでは、まるで青空のピクニックのように気楽な足取りだった。しかし運営データのバンク
にアクセスするときのパスワード認証でまごついた。「flower0825」これがパスワードのハズである。あの女社長に回線修理
業者を装って聞き出したパスワードだ。嘘ではあるまい。
タイマーが動き出した。2:00、1:59、1:58・・・・・・あと2分以内に中に入らないと回線がダウンしてきっと侵入アドレスから
ハッカーである俺の存在がバレてしまう。一旦脱出しようとするも、戻るコマンドはロックされていた。俺は急いでパスワ
ード探査ソフトを起動した。ありとあらゆる文字列を繰り返し入力して、パスワードを特定してくれる。10文字以内のパス
ワードなら2分丁度で開くハズだ。しかし・・・・・・。
彼は頭を抱えた。もしも10文字以上のパスワードだったら?・・・・・・終わりだ。浦世界での信用を失い、もう二度と飯は食え
まい。いや、その前に刑務所に入れられる。肉体の貧弱な彼の事、檻の中ではさぞかし素敵な仕打ちを受ける事だろう・・・・・・
愛読書のカーネギー語録を思い返すが、こんな時、偉人のキレイ事は何の役にも立たない。
0:11、0:10・・・・・・ふと社長室の中にあった大きな藤の花を思い出した。女社長が手ずから水やりしていた、あの薄紫の
見事な藤を。
彼は慌てて探査ソフトを止め、パスワードを手動で入れた。「wistaria0825」
ゲートが開いた。
次お題「アイボリーホワイト」「世界」「何」
122:121
07/08/24 12:27:40
誤字訂正
13行目 浦世界 → 裏社会
なんだよ浦世界って・・・・・・orz
123:名無し物書き@推敲中?
07/08/24 12:46:18
>>122
イサキは、イサキは釣れたの?
124:「アイボリーホワイト」「世界」「何」
07/08/24 18:56:32
二つを並べてみる。
アイボリーホワイトと、瑠璃色。俺と弟のコップ。二ヶ月前、父が買ってくれたものだ。
「ほら、お前たちに買ってやったぞ。うちには食器が少ないからな」
当時は俺だって無邪気に喜んでいた。
でも今になって考えてみれば、罪滅ぼしのつもりだったのかもしれない。
二つのコップの入った紙袋を持ってきた、その翌日から、父は帰ってこなくなった。
置き手紙もあった。けれどあんまりにも平凡な内容で、父が母以外の女のところへ行ったなんて、にわかには信じられなかった。
母は泣いていた。俺は内容を覚えていない。
「女手一つで息子三人を育て上げ……」なんてのはテレビでよくある美談だ。
でもその裏には、もっとたくさんの悲惨な現実が溢れていると知った。
歳をとった女性が就ける職業なんて、とても限られている。
ハローワークに行った母は、毎日肩を落として帰ってきた。
残念ながらあなたにあう仕事は無いようですねぇ、なんて言うのよ、なんて愚痴をこぼしていた。
役所から貰えるお金じゃあ、全然足りない。弟はお腹がすいたと泣いてばかり。
ある日俺が高校へ行くと、先生が気の毒そうな顔をして待ち受けていた。どうやら俺はいつの間にか高校を中退していたらしい。
帰ると母一言、「ごめん」と言った。そしてその日から、彼女は一日中寝て過ごすようになってしまった。
ガスが止まり、一週間ほどして電気が、そしてすぐに蛇口をひねっても水が出なくなった。
翌日、俺は家を出た。黄ばんだホワイトアイボリーのコップを残して。
次、「絵の具」「扇風機」「ペットボトル」
125:名無し物書き@推敲中?
07/08/24 21:42:11
>>124
お題「アイボリーホワイト」しか消化できて無いッスよ~;
さすがに三個中一個だけしか使わないのはヒドイ・・・・・・
126:名無し物書き@推敲中?
07/08/24 22:07:11
>>125
あ、忘れてました。すみませんorz 回線切って(ry してきます
お題は引き続き、「アイボリーホワイト」「世界」「何」 で。
127:「絵の具」「扇風機」「ペットボトル」
07/08/24 22:09:01
昔の写真をいじっていると雨に濡れた若い男女のものを見つけた。当時の情景がまぶたの裏に浮かび上がってくる・・・・・・
俺はキャンバスに絵の具を塗りたくっていた。貴子はソファでつまらなさそうに雑誌のページを繰っている。扇風機に向
かって「あ~~」と声をかけた。声色の変化を楽しむ遊びだが、迷惑だ。同じ部屋にいられるだけでも迷惑なのに、音をた
てて気を散らすとは何事か。頬がこわばるのを感じた。
「ねえ、何の絵、描いてるの~?」「トンビだ」
「へぇ~、ところでさ~、今日ね、友達が彼氏と遊園地いったんだって~」「へぇ、そうか」
「・・・・・・ねえ、ヒマ~」「へぇ、そうか」
突如、中身入りのペットボトルが飛んできて俺の頭に当たった。貴子は目を真っ赤にして部屋を出て行った。
芸術家と付き合うっていうのはこういう事なんだぞ?そこらへんも承知の上で交際を始めたハズだろうが。とは思っても、
さすがに後味が悪いので後を追うことにした。捕まえた。雨の中でグショグショに濡れている。そこで写真を撮った。
「何見てるんですか?」妻が話しかけてきた。髪が白い。老いたなあ、俺も、こいつも。
「なに、昔の写真だよ」俺の眼前にいるこの女、貴子では無い。
あんな口うるさく文句言う女とは違って、こちらの都合をなんでも素直に聞いてくれる従順な女を捕まえて結婚したのだ。
そのお陰で俺は一日中絵を描いていられるし、ケンカも起きていない。芸術家の妻は、こうでなければな。
次お題「薄紫」「口」「病」
128:名無し物書き@推敲中?
07/08/24 22:12:11
なにやらややこしい事になってるみたいですが
次お題は「薄紫」「口」「病」でおねげーしますだ
129:「薄紫」「口」「病」
07/08/24 22:31:42
アンタレスからの通信が一週間ほど途絶えているとの
連絡が総務省に入ってきたのは私が昼食から帰って
デスクで「あなたにも買える!中古宇宙船!」という
特集が組まれた男性雑誌を読んでいるときだった。
同僚の木下は「悪いけど」と言って午後、一番で
スクランブル化されたメッセージを定期的に
アンタレスの送るよう課長からの指示を持ってきた。
俺は思わず、何で俺がやらなきゃいけないのかと
怒りがわいてきたが木下には1000日本ドルほどの
借金があって、それを帳消しにしてくれるかも
という期待があったのでぐっとこらえた。
その後、定期船からの連絡によるとアンタレスには
奇病が発生し現地人や出張で地球から派遣されてる人間
みんな死んだそうである。奇病は口の周りに
薄紫のシミが浮かびやがて赤茶け皮膚をやぶって血液が
出て来るそうだが、処置の仕方が分からずバイオレベル5
つまり着陸もアンタレスからの出星もできなくなった。
130:名無し物書き@推敲中?
07/08/24 22:34:16
次は「渋谷」「ワキガ」「友達」で
131:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 00:36:44
僕には友達がいない。
学生時代からそれは変わることはなかったが、別にどうということはなかった。
しかし社会人として会社に勤めるようになってから、問題は深刻化した。
人はみな僕を避け、陰で悪口を言っているようだった。
笑われることにも、避けられることにも慣れてはいたが、一番の問題は仕事に支障が来したことだった。
あからさまに仕事の量を減らされ、何もすることがなく戸惑っている僕を笑っているのだ。
お茶を入れてくれることもないし、僕がトイレに行こうとするとすぐ様に「清掃中」の札を立てられた。
給料も気持ち下がったし、このままでは生活さえ危うい。
すべては、ワキガが原因だった。
少しでも汗をかけば臭いが強くなり、エレベーターでは顔をしかめられない日はなかった。
なるべく汗をかかないようにと試行錯誤したが、どれもうまくはいかなかった。
脇に紙製のパッドを入れても、ワキガを防止する薬を塗っても、何も解決はしなかった。
ついに僕は、医者に行くことにした。
ワキガで医者に行くなんて、少しおかしな気がしたが、このままではいけない。
意を決して渋谷のとある病院に出向くことにした。
ぼくはことのすべてを医者に話して、汗を抑える薬やワキガを抑制する薬を出して貰えるように頼んだ。
なんならレーザー治療ででも治してくれとも言った。
132:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 00:37:20
だが医者が僕に処方したのは、精神安定剤だった。
僕は抗議した。僕が欲しかった物はこんなものじゃなかった。
飲んでも身体がだるくなるだけで、ワキガの臭いは一つも弱まることはなかった。
「あなたはワキガではないんですよ」
問い詰める僕に、まるで嫌な物でも見るかのような目で吐き捨てた。
僕を苦しめてきたあの目だった。
ワキガではないなんてことはありえない。この臭いは、ワキガは、実際に僕を苦しめているではないか。
ずっとこれが原因で友達もいなかった。それを、よくもぬけぬけと「ワキガじゃない」だなんて―
数日後、両親がやってきて、一緒にあの病院へ行くことになった。
両親とは疎遠だった。小さい頃、意を決して相談したのだが、医者と同じあの目をして僕を拒んだ。それ以来僕は彼らに心を開くことはなかった。
「息子さんのことで、相談があります」
そう医者は告げると、僕を残して両親とともに消えていった。
それからしばらく経ったある日、両親から連絡があり、一緒に片田舎の病院へとやってきた。
これから数日、入院して治療していくそうだった。
仕事のことが気がかりであったが、ワキガを治してくれるとのことだったので、喜んで受け入れた。
その病院でも、あの忌まわしい目で見られたが、治ればそんなものとはおさらばだ。
僕は、何年も感じたことのない充実感を、わずかに感じた。
三句:「もたれる」「質素な」「寿司屋」
133:「もたれる」「質素な」「寿司屋」
07/08/25 13:56:08
とあるアメリカの寿司屋に派手なガンマンが女連れで入ってきた。ワシの羽根飾りのマント、真っ赤なスカーフ、まばゆいイエローのハット。
顔も気さくで明るそうだ。そいつは椅子にもたれると、ギコギコ揺らしながら連れ合いの美女と談笑し始めた。
始めのうちは周囲も愉快そうに聞き耳を立てていたが、酒が入るにつれちょいとばかしうるさくなってきた。
「おれっちはよぉ~お~。狙ったエモノはぜってえ~にハズさねえ!ぜってえ~に、ハズさねえ!」
「・・・・・・うるさいぞ」店中の人間の気持ちを代弁した彼は、質素な身なりのガンマンだった。そのこげ茶色で統一された服や装飾品はとても
古ぼけていて、汚れていた。よく見るとドロや砂があちこちに付着している。
かくして、決闘となった。
お互いに背を向けて10歩ずつ歩いたところで振り向き、撃ち合うルールだ。店主がカウント役をつとめた。
「1、2、3、・・・」派手ガンマンはやや歩幅を短くした。対してボロガンマンの歩幅は長い。
「10!」派手ガンマンは相手に背を向けたままリボルバー銃を連射し始めた。これが相手よりも必ず先に着弾させる
彼の得意技だったのである。しかしその弾はボロガンマンの頭上を過ぎてゆく。うつぶせに、しかし頭を相手に向けた
状態で地面に伏し、自己の被弾率を最小にしながらじっくり相手を狙い打つ、ボロガンマンの戦法だった。
ボロガンマンが敵の頭部にスコープを定めきった丁度その瞬間、ボロガンマンは眉間を打ち抜かれて絶命した。
「あの野郎の後ろ撃ちの弾がたまたまマグレ当たりしやがったんだ!クソ、ついてねえよな」とは、寿司屋にいた客達の談である。
しかしボロガンマンは己が死ぬ間際に、確かに見た。
二丁先の高見台から自分をライフル銃で狙い打つ、敵ガンマンの連れ添い人、あの美女の姿を。
次お題「ヒスイ」「右」「左」
134:お題「ヒスイ」「右」「左」
07/08/25 15:54:12
―Right or Left?
「ライトはライトでも正解のライトだ。ザッツオーライト」
開かれた右の掌には、羽を休めて眠るダブルイーグルが収まっていた。
安堵に肩をなで下ろす俺とは反対に、太一は口元をいびつに歪めて嘲笑いながら、オーバーリアクションに肩をすくめる。「亜鳥(アトリ)に、感謝しろよ」と。
「眠り姫様は素晴らしい才能をお持ちのようだ。まるで女王のような……」
以前、学内三悪と名高いサバト部の隷従魔人、木津河は亜鳥の豪運をチェスに喩えて評したが。
俺の彼女に対する印象と言えば
―Black or White?
BrackBrain(マヌケ)な俺を勝利に導く、敗北の穢れを知らない真っ白な風の女神。
ウェッジウッドのように柔らかな温もりをまとう肌も、青々とした若竹のごとく清冽な色彩を放つネフライトめいたその瞳も、彼女を示すパーツ/記号なにもかもが人類凡百を遥か彼方に凌駕して、完成している。
無様な俺に比べて、なんと美しいことか。まるで、太陽と井戸底の蛙だ。
「そんな彼女が俺にベタ惚れなんてマジまいっちゃうぜ! もう!」
「嘘こけ」
背中から蹴り飛ばされ、あえなく転倒したところに腕ひしぎ十字固めを決められる。
「ギブギブギブギブ! マジで折れる! マジで右腕折れますって、太一っさん! ごめんなさい調子乗ってました!」
「で、どーすんよ。契約、続行すんの?」
右腕に組み付いた姿勢のまま、尋ねてくる太一。俺は亜鳥の穏やかな寝顔をパブロフ的に脳裏によぎらせ、それを僅かな逡巡で塗りつぶしながら、回答を捻り出す。
「今度の契約はパスします。太一のラプラスは亜鳥の運命過剰補正を押さえ込むのに役立つけど、どーも彼女密かにストレス溜め込んでるみたいなので。
俺個人としては、トンデモ事件に巻き込まれるのはもうコリゴリなんだけど、それもまた含み損っていうか」
「ふーん」
玩具のようにもてあそんでいた俺の腕から剥がれ、腰元を掌で叩きながら太一は小さく
「粗砥、MO化計画コンプリーツ」
と呟きながら首を左右に振り振り去っていった。
そんな太一の背中を見送る俺は、肩に乗っかった疲労をもてあまして床へ腰を落ろし、そのまま上半身も倒して寝転がる。
(さて、俺の明日はどっちだ……。アイツ、転がし方に容赦ないからなー)
―Right or Left?
135:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 15:56:45
次のお題は「生活」「春秋」「テロリスト」でヨロシクー
136:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 16:52:48
強盗のサムはジプシーの老人を殺害し、人より三倍長く生きられるという翡翠の首飾りを手に入れた。
サムは町へ戻ろうと道を急いだが、夜が更け森の中で道に迷ってしまい、右も左もわからず途方にくれていると
グルルルッという自分を狙う低い唸り声の存在に気づいた。狼だった。
狼は月明かりに照らされ、美しく光る翡翠の深緑に引き寄せられるように全速力でサムに襲い掛かってきた。
首飾りを捨てるという選択肢もあったのだろうが、必死で逃げるサムにはそんな冷静な考えを持つ余裕はなかった。
無我夢中で木の枝や草木の茂みを掻き分け、前へ前へ走ると突然足元の地面が崩れ激痛がサムの身体を襲う。
町の住民が獣を撃退するために仕掛けた落とし穴だった。穴の底には大量に鉄製の鋭い杭が打ち込まれておりサムの
全身を隈なく貫いていた。身動きもとれず、喉を潰され叫ぶことも出来ずに、絶え間なく狂いたくなる程の苦痛が全身を駆け巡る。
ところが死ぬ気配は微塵も無く、サムの意識は翌日もさらに翌日もハッキリしたままだった・・・。
誰にも発見される事なく月日はどんどん過ぎて行った。腐敗してゆく自分の肉体を感じながら、野鳥に眼球を刳り貫かれながら、
サムは自分が殺したジプシーの老人の最後の言葉を反芻していた。
「長生き出来るという事は決して幸せな事ではない」
塵となって消えるまで、サムは常人の三倍生きた。
137:136
07/08/25 16:57:10
被ってしまった・・・最悪
138:「テロリスト」「生活」「春秋」
07/08/25 20:13:21
「オラオラー!手を上げろ~!俺たちゃ義勇兵だー!」
建物の中の人間達は唖然としている・・・・・・そこはテロリストが来るような場所では無かったので。
「オラ~!手ぇ上げろっつってんだよ~クソヤローどもめ!」
数発の銃弾が天井に撃ち込まれてようやく人々は大人しく両手を上げた。しかし皆、納得いかない表情である。
なにせその建物の看板にはこう書いてあった。
「文芸春秋社」と。なぜ文芸者にテロリストが?皆、そう思っていたに違いない。
「おら~、社長さんよぉ、オメー何あんなもん芥川賞にしてんだよ、あ~?ア○ッテの人なんてよぉ」
「いや、それは、その・・・・・・」
「どうみても俺が送ったヤツのが面白えだろうが、あぁ~?」
「ですから、我々は選考に関与しておりません!」
「・・・・・・嘘つくんじゃねーよ、文芸春秋に芥川賞作品載っけてんだろーがよぉ」
その場にいた人間は、文芸テロとでもいうべき前代未聞の犯罪者達と、その犯人が文芸者の端くれにも
関わらず受賞作品の決定は作家達からなる選考委員会によって行われるという初歩的な知識も知らない
事に驚き、一部の者などは彼がどんな小説を書いたのか興味を持つまでに至った。
「とにかく、俺が書いたこの『寿司屋のガンマン』>>133 、芥川賞にしろってえの!そんぐらいできるだろ?」
社長に向けられる銃口。とりあえず、一読する社長。それは寿司屋の前で決闘する二人のガンマンの話だった。
「無茶だ!短すぎる!それに文体にセンスが無い!もっさりしすぎてて折角の決闘シーンが台無しだ。そ
れにライフル銃でボロガンマンを狙う美女だぁ?アイデアもくだらなすぎるよ!」
小説の品定めが生活の一部となっている人間である。ついつい本音が出てしまい、一瞬の間をおいて後悔した。
テロリストのリーダーはありったけの銃弾を会社の中にバラ巻いて、仲間と共に逃げ出した。
次お題「死」「再生」「創造」
139:138
07/08/25 20:18:17
誤字 6行目 文芸者 → 文芸社
13行目 知識も知らない → 知識も持たない
次お題は変わらず「死」「再生」「創造」
140:「死」「再生」「創造」
07/08/25 20:29:52
昔、フランスにランボーという詩人がいた。
機関銃を相手に一人で数千人の兵士と戦いながら
休息の合間に疲れた心を詩で癒したと言う
伝説の吟遊詩人である。というのはもちろん嘘で
興味ある人は昨今、インターネット上で電子百科事典の
バイブルと化しているウィペディアを参考にすると良い。
そして二千年後の今日、銀河を行き交うタンカー船に
無賃乗車した詩人が窓の外にうつる星の死と再生の物語を
暗い倉庫の中で壁にコインで書きなぐっている。
想像は彼の心で宇宙になり、やがて何千光年先で
広がる宇宙につながるだろう。
「エイズ」「TV」「バイク」
141:140
07/08/25 20:34:06
想像は彼の心で 誤
創造は彼の心で 正
推敲は大事だなorz
142:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 21:06:26
推敲してから書き込もうな。
そして何も「俺が書かなきゃ」なんて気に負うことはないんだ。
書きたい物が浮かんだら書こうな。
人の趣旨にどうこう言う権限なんて無いが、あまりに見苦しいから言わせてくれな。
143:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 21:11:36
「俺が書かなきゃ」なんて思ってる奴居るのか?
144:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 21:15:47
ここ最近の多すぎるまでの書き込み!
恐ろしいほど夏を感じさせるクオリティーの低下!
間違いなく複数人ないし一人が、出ないうんこをひねり出してるっ!
145:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 21:20:56
半年前からほとんど変わってねーだろwwwww
クオリティが低いのは別に今始まったことじゃねーよ
146:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 21:41:05
自分の作品に、自信があるならクオリティが
低かったら目立つわけで喜ばしいことだろ?
それとも、それで埋没しちゃうようなものなのか?
文章書きなら戯言言わず文章を書けよ。
147:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 21:42:22
>>142>>144
>>1 嫁カス
>小説・評論・雑文・通告・㌧㌦系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
雑文だろうがオチなしだろうがなんでもありなんだよ!!
148:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 22:15:30
>>147
>小説・評論・雑文・通告・㌧㌦系、ジャンルは自由。
コレを間違って解釈してないか?
>>142>>144 の言いたいことは、少しは読むほうの気持ち、読まされる方の気持ちになれってこと。
だいたい、嫁カスって言葉使う時点でそんなヤツの短時間でひねり出す落書きは、程度が知れてる…
149:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 22:41:30
スレリンク(bun板)
続きはこっちでよろしく
150:名無し物書き@推敲中?
07/08/25 22:55:31
って!現在のお題は「エイズ」「TV」「バイク」 ですな。
「エイズ」て言う言葉をどう料理出来るか!でその人のレベルが測れるナ!(密かなたのしみ)
151:「エイズ」「TV」「バイク」
07/08/25 23:41:50
バイクから降りて、私は月葉画伯の屋敷に足を踏み入れた。ホコリの上に幾多もの足跡が残っていた。画伯は故人で屋敷も
空き家な上に立ち入り禁止になっているのだが、ここに忍び込む連中が大勢いるのだ。画伯の最後の一枚を求めて。
月葉画伯はエイズという業病を背負いながらもその一生を絵描きに費やした人間である。彼が死んだ時、アトリエから出て
きたのは「四季のヘビ」と銘打たれる「三枚」の絵だった。それぞれ、春、夏、秋をモチーフにした三枚の絵だったが、屋敷
のどこを探しても冬のヘビの絵だけが見つからなかったのだ。
取材に来たTV局がいろいろ調べに来た事もあったが徒労だったようだ。庭に咲くスイートピーの俯瞰図が最後の絵だった
のではないかと推測する人間もいて、実際にそれを撮影した写真も出回っているが、あれはどうみたって絵ではない。
私には幸運が二つあった。一つは幼い頃に死期間近の月葉画伯と親交があった事だ。彼は極度の人嫌いだったそうだが、
好奇心半分に屋敷の庭に入り込んだ幼き私に絵を見せてくれたり話を聞かせてくれたり、親切にしてくれた。「私は最後
の絵は礼拝室の中に描こうと思うんだよ」と語っていたのを覚えてる。
もう一つの幸運、それは役所の無人建造物を取り扱う部署に配属された事。こうして堂々と屋敷の中を探索できる。
私は礼拝室のあちこち探しまわったが、絵らしきものは見つからなかった。熱心な月葉ファンの先人たちが親切にも
聖母像をカチ割ってくれていたが、中に絵が入っていた形跡は無い。ふと私はオルガンの蓋を開けてみた。中には無数の
弦が張ってあり、それらの一本一本に不規則で綿密な変色部が見られたが、それはやはり絵では無かった。
気の抜けた私は戯れにオルガンの鍵盤を叩いてみた。ラの音を出したその鍵盤は、レとファの中間にあった。稲妻に
打たれたような気がして、私は逐一鍵盤を叩いては弦を正しい位置に張り替える作業に没頭した。
こうして全て正しい位置に張りかえた弦達を遠目に見やると、土の中でスヤスヤと眠る一匹のヘビが現れた。
次お題「交差点」「悪魔」「人」
152:お題「エイズ」「TV」「バイク」
07/08/26 00:14:28
エイズなんて病気に罹患する奴はクズだ。そんな風潮は少なからずある。体裁は同情を装っても、オマエの放埓な生活が導き出した罰がそれだよ、と無言の内に責められている気がして、とてもじゃないが告白する気になんてなれない。
陽性反応が出て、ご家族にご連絡を、と担当の医師は勧めたけれど俺は猫のようにひっそりと野垂れ死ぬつもりだった。
処方薬を毎食後、十錠ほど摂取する。
抗HIV薬剤を初めに、低下した腎機能を補うためのプレドニン、サイクロスポリ―最近は手慣れたもんで、機械作業のようにそれらを処理していくが、当初は苦痛で苦痛で仕方がなかった。
一つ錠剤をかじるたび、一口液状薬を嚥下するたび、細胞の一つ一つが薬剤に犯されていく気がして、病院特有の薬品臭さが体から漂ってきやしないものかと何度もシャワーを浴び、皮膚をかぶれさせた。
死の恐怖は、ヒトをナイーブにする。
生の有様を強く実感すると共に、我慢の制動は次第に効かなくなっていく。
「おまえは変わったよ」―幾度も幾人にもそう告げられ、告げられるたびに周りから一人ずつ人は減り、気がつけば理想的な孤独を手に入れていた。
起床、錠剤、バイト、錠剤、TV、錠剤、就寝、時折通院の日々を延々と繰り返して、鬱々と日々は磨り減っていく。不幸にもエイズに罹患した血友病の少年が記したエッセイや、重病人が読むスピリチュアルケアの啓蒙書を紐解いても、なんら心に変化は起こらなかった。
最早、俺は終わっていく人間で、変化は内側にしか生まれない。
どんな素晴らしい言葉も、どんな美しい景色も、触れられない影のように素通りしていく。あと太陽を何度目にすることができるだろうか。
メンテナンスを怠りがちだった中型バイクにまたがりながら、目を閉じて考える。このままリヤブレーキがぶっ壊れて天寿を全うする前に、ガードレールに激突して死ねないだろうか、とか。
されど、何一つとして成せることはなかった。
試しても、心の根深い部分が抵抗の悲鳴をあげるのだ。目を閉じていることができない。死は圧倒的な圧力を伴って、ありとあらゆる敗北感と無情を俺に明け渡す。
……明日、再び目を開くことはできるだろうか。
猫のように死にたい俺は、意識が眠りに落ちる直前にいつもそれを思う。Memento mori。
ヒトは、どのように生きても罪深い。
153:名無し物書き@推敲中?
07/08/26 00:15:11
折角書いたのであげさせてもらいました
お次のお題は>>151さん
154:名無し物書き@推敲中?
07/08/26 00:51:54
私としては>>152さんの方が好みだったかな。
次お題「交差点」「悪魔」「人」 ですね。
155:名無し物書き@推敲中?
07/08/27 02:47:59
人の姿をした悪魔は、今日も昨日と同じようにスクランブル交差点に紛れた。
車が止まる一瞬に、それぞれどこかを見つめその群れに紛れた。
何一つ成長するものがない都会。そこに巣くうのは果たして人ならざるもの達ばかりだった。
どこか誰かは言ったよう。都会とは人の夢を食らい成長するものだと。
しかしそれは真であろうか。
まるで夢遊病者のような振る舞いで行き交うものを見れば、外からは「夢を食われた哀れなもの」とでも写るのだろう。
果たしてそれは、夢を失った故に都会に引き寄せられるのであって、決して「夢を食われた」などということはないのだ
今日も昨日と同じように、スクランブル交差点で人が交わる。
いや、人の皮を被った悪魔といった方が相応しい。
果たして彼らの目には、一体何が映っているのだろうか。
「停滞」「カーニバル」「守る」
156:「停滞」「カーニバル」「守る」
07/08/27 11:46:43
ブラジルにまで嫁いでしまい、連絡が停滞気味だった双子の兄貴から手紙が届いた。
「久しぶりだな、タケル。こっちに遊びにこないか?素晴らしいカーニバルがあるんだ。
旅費は任せろ!兄ちゃんのオゴリだ」
丁度そろそろ有給とって旅行でもしようと思っていた矢先だ。そして手紙には
旅券が一式全部同封されていた。断る理由は無さそうだ。
カーニバルの日、俺はホテルブラジリアから西に3km程の場所にある廃ビルの前で
待ち合わせる事になった。ブラジルではポルトガル語が使われるが、タクシーの運転手
を始め、だいたい英語が通じるのでなんとかなった。
廃ビルの前に到着した時、突然防護服ずくめの男たちが周囲から現れて銃口を向けて
きた。なんだこれ?と思って固まったのも3秒間、俺は危機感に従って廃ビルの中に逃げ
込んだ。男たちは追ってきた。身を守るべき銃火器も無く、さらに見知らぬビルでの逃
走劇だ。あっという間に俺は追い詰められた。なんで俺がこんな目に?しかし次の瞬間、
疑問は解け始めてきた。
その男たちが持っていた一枚のポスター、見知らぬポルトガル語の下にある英語の脚注
「political prisoner(政治犯)」その上にあるのは紛うかた無き兄貴の顔写真。俺は自分
がブラジルに呼ばれた本当の理由に気づくと同時に、胸部に熱い弾丸をもらった。
次お題「ビーフ」「カレー」「ライス」
157:代理人
07/08/27 14:09:43
お題「ビーフ」「カレー」「ライス」で誰か混乱して下の感想専用スレに書いた人がいるよう!
スレリンク(bun板)l50
この三語で書け! 即興文スレ 感想文集第12巻
っていうわけでおせっかいだが、こっちへ移しておきます。
ついでにあげます!
感想スレ >374さんの作品
「ビーフ」「カレー」「ライス」
ここはおいしいと評判の洋食店
看板には毒々しい文字で「うぬらばや」とかいてあり、パッと見ただけでは、誰もはいりたがらない店だ。
だが、そこの料理の味は天下一品である。
今日も昼休みの合間をぬって、昼だというのに2~3人ほどしかいないその洋食店へやってきた。
「う~ん、ビーフシチューにしようかなぁー、それともカレーライスかなー」
黒いもの同士で悩んでいると、店の奥から声が聞こえてきた。
はっきりとは聞き取れないのだが、確かに日本語で話しているようだった。
「かゆ……うま」
かろうじて聞き取れたのは、それだけだった。
次のお題 「かゆ」 「うま」 「ヘルプミー!レオン!」
158:お題「かゆ」 「うま」 「ヘルプミー!レオン!」
07/08/27 14:46:48
「ゾンビニート。腐乱夏厨。偉大じゃないか、彼らは。まるで休みなく働くハムスター小屋の車輪のようだね。俺が言ったんじゃないですよ、トイレの落書きにそう書いてあったんです」
あまりに辛辣な物言いに世界は氷河期を迎えました。
「ヘルプミー! レオン!」
聞こえません、なにも聞こえません。吹きすさぶ豪雪の、狂ったようなエガラップに掻き消されて、稚拙なネタなどすべりマクリマクリスティ温度はさらに低下する一方です。
某・全裸にネクタイ一丁のN川さんが、舞台袖で自分の出番はまだかまだかとウズウズしてるみたいですが、華麗に無視しておきましょう。○MRと言った方が通りはいいですかね? ちなみにMMRではありませんよ悪しからず。
まあ、いずれにせよ脱衣キャラは江頭一人で十分です。
赤い彗星の片割れが淘汰されてしまったように、一つの番組に脱衣キャラが二人も登場すると場が壊れます。嘘です。脱衣キャラは好きなのでイクラでも登場すれば良いと思います。
タラちゃんは言いました。「かゆ」、と。
さすれば海は二つに開かれん。イスラエルの民を率いてカナンを目指したモーセのごとく。
俗に言うエジプト記ですね。俺のターン的なアレの祖国です。本編を鑑賞したことはありませんが、目玉のついた逆三角錐状のペンダントをぶら下げていたので多分そうだろうと思います。
憶測でしか物が言えません。
「ツンデレは属性じゃなくてプロセスなんだ!」
と声高々にモーセは神に訴えました。しかる後に呪われて、祖国を追われた彼は百年も放浪する羽目になりました。しかも、彼一人だけ約束の地に帰還することができずに、山の天辺で野垂れ死にました。
それも全て憶測でしかありません。
「うま」と僕は言います。あなたはこのラストに対して、何らかのやるせない憤懣を覚えるでしょうか?
いやはや、しかしそれも憶測でしかないのです。某少佐もこう申しておりました。
「ネットは広大だわ」
どっとはらいどっとはらい。
159:名無し物書き@推敲中?
07/08/27 14:47:48
次のお題は「マイナー」「緩急」「博打」でヨロシクー
160:「停滞」「カーニバル」「守る」
07/08/27 23:25:36
「お若いの、どうかね?マイナーな博打だが」妙な緩急をつけたしゃべり方。いかにも怪しい感じだ。
「ふぅん・・・・・・よし、やる!」
内容は簡単、二匹のヘビを戦わせて勝つ方を予想するというものだ。当たれば2倍。負ければ0。大変解りやすい。
しかも私には少々自信があった。ヘビは割と好きな動物で知識が豊富なのだ。
さて、一匹はシマヘビだったが、もう一匹もシマヘビだった。片方は黒一色で、もう片方は淡黄に黒の縦縞。で
も両方シマヘビだ・・・・・・つまらない。同じ種類じゃどっちが勝つかはほぼ五分五分ではないか。まあ、ヘビを好ん
で攻撃するヘビなんて手ごろなところじゃシマヘビぐらいか。
私は体が一回り大きくて元気よさそうな淡黄色の子に1000円賭けた。賭けを宣言した瞬間に老人はヘビを抑える
手を離してお互いを戦わせた。淡黄色の子はロクに動かず黒い子に咬まれた。老人は淡黄が食われる前に黒を引き
剥がした。
「毎度ありぃ」舌打ちしながら私はそのいかがわしい裏通りを後にした。
※
老人は去っていく女の子を見送りながらポケットにある保冷剤で右手を冷やし始めた。
次のカモが賭けた方のヘビをその極端に冷え切った右手で掴んでやるために。
次お題「ヒヨコ」「黒」「木」
161:160
07/08/27 23:27:08
題名ミス
「停滞」「カーニバル」「守る」→「マイナー」「緩急」「賭博」
162:お題「ヒヨコ」「黒」「木」
07/08/28 23:04:07
美しい話が書けるだろうか、と僕はいつも怖がっている。何を?
JR環状線大阪駅から京橋駅に下るまでの短い乗車時間、携帯画面を覗き込みながら、文才の天使が右脳に降臨してくれるタイミングを密かに待っている。
キツネ狩りの罠を張っている気分に近い。ただ、獲物はイギリス童話にして最も捕らえやすい動物などではなく、時には虎のような艱難を、時には象のような重圧を伴って思考にインターセプトしようとする。
物語が書けるか、書けないか。違いはソレを受諾できるか、排除してしまうか。
その辺にあるんじゃないかと妄想したりもするけれど、果たして何も語り得ない人間が、語り部たる価値はあるのかと、自身を小一時間問い詰めるほどの忍耐もなく、漠々と翳る黒い月に視線を飛ばしながら自嘲したりする。
「諦めるために、人生は長すぎる」なんて。
帰宅ラッシュをやり過ごし、閑散とし始めた車内には空調が効きすぎていて二の腕に鳥肌が立つ。
桜ノ宮駅から臨める車窓越しの運河一帯は、一足早く夏の面影を置き去りにしようとしていた。
あと、一週間もたたずに夏は終わる。木々が色づき始めるのもまもなくだろう。
僕は手持ち無沙汰に、単語をパズルピースのように配列し始める。祭り、夜店、同級生の浴衣、ソースの匂い、白熱灯の柔らかい明かりに発電機の振動。
ほんのひと月前のことなのに、なにもかもが懐かしく思えて、ふと遠い昔の記憶にまで足を伸ばしてみる。そこにあるのは、埃を被ったまま色褪せずに眠るアルバムのような―ゆうに十年近くは経年していながら今にも手に取れそうなほど鮮明に描くことができる記憶。
そして迂闊にも僕は、それらを引きずり出してきてしまった。
唐突にインターセプトされた思考がベクトルを換え、流れるままに留まることを知らず、美しい話が書けるんじゃないか、その一心で記憶を調理していく。脳内タイピングするその掌で、その指先で踊る食材は、切断され、加熱され、皿に盛り付けられて生々しさを失っていく。
『夜店で親に買って貰ったカラーヒヨコをうっかり踏み潰して殺してしまった』
と云う記憶は、輪郭が曖昧であるにも関わらず、詳細な描写や心理が後付的に添付され、優秀な偽造貨幣を発行する精度で、本当の記憶を塗り潰していく。
誰でもなく自身への誠実さを喪失し、完成する物語。僕は、いつもそれを怖がっている。
163:名無し物書き@推敲中?
07/08/28 23:05:42
次のお題は「失格」「サイン」「大学ノート」でヨロシクー
164:失格、サイン、大学ノート
07/08/29 06:36:34
―上司に酒を奢られたら、翌朝は這ってでも定時に出勤しろ。
俺は終電の座席でだらしなく脚を崩し、酩酊状態で先輩の言葉を思い出していた。
この分だと明日も遅刻かもしれない。 サラリーマン失格。 いずれクビか……
連日の外回りの疲れが祟り脚がとてもだるく、座席の前方に思い切り投げ出したくなったが
他の客と面倒になるのも困る。 どんなに酔っ払ってもその位の常識は残っているのだ。
俺はぎりぎり周りの迷惑にならないよう脚の位置を正すと、ふと左隣の女の手元の動きに気付いた。
膝の上の大きなカバンに大学ノートを乗せ何か描き込んでいる。 ん……漫画か?
酔っ払いの大胆さで、俺は出来るだけ姿勢を変えずに、今度はしっかりとノートを覗いてやった。
何か、少女漫画のようなイラストだ。 「同人誌」というどこかで聞いた言葉を思い出す。
気が付くと俺は女に声をかけていた。 いや喋ったのは俺でなく酒だろう。
「何を描いてるの?」
女が振り向いた。 やや驚いたような丸い瞳。 少しニキビが残る頬に赤みが差したように見える。
「あ……イラストです。下手ですけど」 女は軽く微笑むとすぐ下を向いて作業を再開してしまった。
俺はどうしていいのか分からず、社交辞令的なことを言って会話を切り上げた。
―見た感じ地方出身の専門学校生か短大生、そんなところか……でも何故終電なんかに乗ってるんだろう。
バイト帰りか? などと俺は再び酔いどれの無意味な思索に没頭した。
「はい。どうぞ」
どれだけ時間が経ったのか、左から女の声がして生臭い瞑想から覚めた。
振り返ると娘が悪戯っぽく何かを差し出している。 切り取った大学ノートの一頁。
先ほどのイラストとは異なる、だけどやはり少女漫画風の男性の、お世辞にも上手いとはいえない
横顔が描かれていて、傍らに不思議な名前のサインがあった。 ―もしかしてこれ、オレ?
女の小顔が少しうつむいた。
165:名無し物書き@推敲中?
07/08/29 06:44:56
次のお題は、「バーボン」 「アニメ」 「深夜」 でお願いします
166:名無し物書き@推敲中?
07/08/29 16:12:09
最近の流行はアニメを見ながらバーボン、これだね。
特に深夜がおすすめ。木曜日なんかやばい。ボトル3本あけてもまだ入る。
だけど、素人にはお勧めできない。もたれる。胃がもたれる。つまみがなけりゃ翌日死ねる。これ危険。
酒臭いのをなんて言い訳できよう?「アニメでバーボンしてたので」
言えるか?君は言えようか?いいや言えまいて、素直につまみを食べるか、お子様は寝てろってことだ。
上級者ともなれば、つまみはタカタで十分なんだが、俺はあえての饅頭。これだね。
アニメを肴にバーボン、時々タカタ ってのが王道、だけど俺は饅頭。あえての饅頭。
そうこうしてると、家人が起きてくるときがある。絶体絶命。
急いでチャンネルを変えるか、バーボンを隠すかはどちらでもいい。俺の場合は饅頭も隠さないといけないから、大変。
「私の饅頭食べたでしょう」なんて問い詰められた日には、ビールも飲めない。
だけど俺はそんな危険を冒しても、この日課をやめることはない。
まんじゅう食いながら焼酎、これだね。
―え?