09/06/28 05:53:40
もともとナンパに乗るつもないし、そもそも乗れないので適当に聞き流して文句を言う。
「すみませんが、今私の車を叩いたのはあなたですか?」
と助手席の男に尋ねるとロン毛の男は、
「叩いたって、ヤダなあ、ちょっとノックしただけじゃん。」
「そうそ、全然俺らの熱いアプローチに気づいてクンねえだもん。」
「だからって、そんな何触ったか分からないような手で車に触らないで頂けませんか。それにあなた方のような色男のお誘いに乗るほど、
私お尻の軽い女じゃありませんから、やめて頂きません? はっきり言って迷惑なんです。」
「車叩いた事は謝るからさあ、そう固いこと言わず付き合ってよ。」
「ていうか、この娘ひょっとしていいとこのお嬢じゃね? ね?」
「ピチピチの女子高生でいいとこのお嬢様かよ、こいつぁ悪かねえな。」
「ねぇ彼女ぉ。ひょっとして隣と後ろの娘もお嬢様のお友達ぃ? だったら俺らにも紹介してくれねぇ? 一緒にどっか行こうぜぇ。」
「ごめんなさい。私たち所用があるんです。他の方を当たって頂きません? それにお気づきではないかもしれませんが、保護者も乗っているんです。諦めて下さい。」
「他の人なんてどこにいるのかなぁ。」
「せめて、名前とメアドくらい教えてよ。」
「ババアなんてほっといて楽しいことしようぜ。」
「全力でお断りします。」
260:ふみあ
09/06/28 05:54:22
「そう固いこと言わずにさ、ねぇねぇ。」
「嫌です。」
「そう言わずにさあ。」
「しつこいですよ。」
「ひょっとして彼氏いんの?」
「大丈夫、彼氏よりきもちよくしてやっからさぁ。ヘッヘッヘ。」
「いませんし、そういうの興味ありません。」
「だったらさあ。俺らにつきあってよぅ。」
「いい加減にしないと怒りますよ!」
「うぉっ、怒った顔もかわいくね。」
「キュンってくるう。」
ダメだこりゃ、少しでも相手をした僕が馬鹿だったと、後悔しながらパワーウインドウのスイッチを思い切り引っ張った時だった。
261:ふみあ
09/06/28 05:55:04
「おいシカトしてんじゃねえぞ。このアマ。」という声がしたかと思うと、後席からバンダナが下りてきて大きな手でせり上がってくる窓ガラスを抑えているのが目に入った。
あわてて、パワースイッチを下に押し付け、ガラスを下ろす。
「何ですか! 急に。」
「何ですかじゃねえよ。折角俺らみてえないい男が遊びに誘っているのに断った挙句シカトしやがって、調子こいてんじゃねえぞこのアマ!」
と言って、逆切れして殴りかかって来た。のをかわして肘鉄を喰らわせる。
「危ない!」と、天城さんが叫んだ気がするが気にせずドアをアンロックし、思い切り力をかけて、ドアを振り開けた。
案の定ドアは思わぬ反撃にあってよろめいた哀れな男を直撃し、男を振り払った後勢いあまって隣に止まっている男たちの車に「ゴツン」という音と共に激突した。
哀れな男は完璧に体勢を崩し、地面に伸びている。Y32は真新しいへこみができている。やりすぎたかな。急いでドアを閉めてロックし、窓を閉める。
Y32の運転席と助手席からは、仲間をやられ、さらに車に傷がついたことに逆上した金髪とロン毛が降りてきた。
262:ふみあ
09/06/28 05:55:45
やばい、どうしようかと思ったその時、「パーーーーーーーーン」というものすごい音量のクラクションを鳴らしながら後の車がパッシングしてきた。何事かと思って前を見ると、
とうに渋滞が解消して、前車がスピードを上げて向こうの方に走り去ったところだった。
今なら振り切れる! そう確信した僕は、数回ブレーキを踏み、後続車にお詫びを込めてテールパッシングした後、ギアをNからDに入れ、サイドブレーキを解除しながらアクセルを思い切り踏み込んで車をキックバックさせた。
急加速する車中で、ミラー越しに後ろを見ると、後続車にパッシングで急かされながらのびた仲間を後席に運び込む二人の男たちの姿を確認することができた。この車はもう100km/h以上も出している。僕自身はこのまま加速して
180kmオーバーまで出すつもりだったので、気絶した男をどうにか車に乗せてから発進させても追いつくことは無理だろうと思った。
思わず心の中で笑みがこぼれたことはここだけの秘密である。
263:ふみあ
09/06/28 05:56:26
3-5終了。3-6へ続きます
264:ふみあ
09/06/29 05:21:56
3-6 ドライブ2
>>薫
前方を走る車の集団の最後尾に追いついてしまったので、結局120km/hまでしか出せなかったが別に問題ないだろう、集団の中ほどに来るまで追い越していたらまた渋滞にはまりこんだからだ。
すでに隣と後ろに後続の車が続いている。この先に待つ西新宿JCTでの分流を考えてすでに追い越しから走行車線に入っているので彼らの車が左側につくこともないはずだ。
「ここまで、来ればもう大丈夫ですね。」
徐行しながら皆に話しかけると、天城さんがこう言った。
「あの薫さん、大丈夫ですか。」
「何がです?」
「その…さっき男の人に…」
「ああ、それなら僕は大丈夫ですよ。あのパンチかすりもしませんでしたから、怪我なんてしていませんし、安心して下さい。」
「それならよろしいんですが。」
「寧ろ殴りかかって来た彼の方が心配ですよ。あの様子じゃたぶんこけた時に地面に後頭部をぶつけて脳震盪を起こしたようですから。何もなければいいのですけど。」