09/06/27 05:32:33
3-4 ドライブ1
>>薫
マークⅡのエンジンをかけ、軽くドラポジとミラーのチェックをして、全員が乗り込んだのを確認してから、ロックをし、左後方、左右のサイドミラーとルームミラー、
右後方をチェックした後、右ウインカーを点滅させて、ミニバンの方に合図する。
ミニバンが発進したのを確認してから、ギアをPからDレンジに入れ、ブレーキから足を離しながらサイドブレーキの解除フックに手をかけた。
「それじゃ、改めて出発しましょう。」と言いながら軽くアクセルを踏み込み、ステアリングを切りながらミニバンの後ろにつく。
葛城先輩の家のミニバンは、正門を出ると、大通りを左に曲がり、東の方向に進路を取った。
こちらも周囲の状況を確認しながら左折して次の交差点で信号待ちしているミニバンの後ろに停車する。ギアをNレンジにしてサイドブレーキを踏みながら春日先輩に、
「そういえば僕たち、これからどこに行くつもりなのでしょうか?」
「ん、とりあえず西武の池袋店だけど。」
「百貨店ですか…。」
この街を案内してくれるんじゃなかったのか? 道理でなぜ車が必要になったか疑問に思ったが、都心へ行くとなればそりゃ必要になるだろう。この学校武蔵野台地にあるせいか、都心と比べればだいぶ西の方にある。
近くに駅があるわけでもないし、車があるなしではだいぶ違いそうな立地にあるからな。
246:ふみあ
09/06/27 05:33:14
「しかしなんで百貨店へ?」
と訊くと、母親が、
「あなたの服を買うためよ。」
「はい?」
「今のままじゃ足りないでしょ、私服。」
「そう? 結構ある方だと思うけど。」
「そうでもないわよ、これから夏物だって必要になってくるし。」
「まあ、そうだけど。」
「それにあなた少し心配なところがあるから。外見だけでもきちんとしてないと。」
「ああ、そう。」
気持ちは痛いほどわかるが、口に出すなよ。
信号が青に変わったので、Dレンジに入れ、サイドブレーキを解除し、前車に合わせてアクセルを踏み込む。
葛城先輩の家のミニバンはしばらく東の方へ進んだ後、とある国道の大きな交差点で右折レーンに入った。案内標識にはこの方向に高速のランプがあるらしい。
ただでさえも交通量の多い道路なのにみんな高速の方へ行くのか、こちらの右折レーンと対向の左折レーンだけ混んでいるらしく中々進まない。信号の変わり目に行こうとしたが、
ミニバンが行った後僕の番になった時に完全に赤となってしまい、ミニバンと離れ離れになってしまった。
247:ふみあ
09/06/27 05:33:55
次に信号が青になるまでの間、気になったことを春日先輩に尋ねてみる。
「あの、雪乃様。」
「なんだい急に。」
「西武までの道はご存じだとおっしゃってましたよね?」
「ああ、言ったよ。」
「前の車とはぐれてしまったので、しばらく道案内をお願いしてもよろしいですか。できるだけ自力で頑張りますが。」
「構わないよ。いざとなったら葵や紫苑様と連絡できるようになっているから。」
と春日先輩は笑いながらこう言って、携帯を見せてくれた。
「ならたぶん大丈夫です。すぐ追いつくと思いますから。おっと、青になりましたね。」
ギアをDに入れて、サイドブレーキを解除する。そのままブレーキを踏みながらクリープでゆっくりと前進する。
248:ふみあ
09/06/27 05:34:36
予想通りというべきか、只でさえ交通量が多いうえに対向の左折車が列をなしているのでなかなかタイミングがつかめない。どう考えても右折オンリーになるまで待つしかなさそうだったが、
後ろに止まっているガラの悪そうなメルセデスのCクラスが、こちらに対してパッシングしているのがルームミラー越しに見えた。思わず舌打ちをすると、僕以外の全員が驚いてこちらを見てきた。
「何?!」と訊いてきたので、
「いや別に、後ろのベンツがパッシングしてきたものですから。どう見ても今右折できるわけないでしょ、バカって思って。」
本当は、何煽ってんじゃ、空気読めや馬鹿野郎! と思っていたが口に出すわけにもいかないので黙っておいた。
その後もベンツは何度もクラクションを鳴らしながらパッシングをしてきた挙句、いざ右折するときにもパッシングしてきたので、
さすがにムカついてきたので、喧嘩売っとんのかこの野郎、そんなに売りたいならその喧嘩買ったっらあ、と思ってしまい、自分以外にも人が乗っているという事実を忘れて、
ステアリングを右に切り交差点を曲がりきったところから、一気にアクセルを踏み込んで車をキックダウンさせ、ベンツを振り切った。
急に後ろの方に体を押し付けられたためか、加速したとたん悲鳴が車中に響いた。あわててアクセルを緩めて、次の信号が赤だったのでついでに減速して停車する。
249:ふみあ
09/06/27 05:35:19
何だろう、気まずい、視線が痛い。まず、春日先輩が口を開いた。
「薫君。」
「は、はい(-_-;)。」
「今のは何だったのかな?」
「いやあ、後ろの車がしつこかったので、振り切ろうって思いまして思いっきり加速したのですけど。…ハハハ。」
なんとかそれだけ言うと母が、
「あんた何キロ出せば気が済むの。事故起こしたらシャレじゃすまないのよ。」と呆れ、怒っている。
「ごめんなさい。」と謝ると、天城さんが「怖かったです。」と泣き出しそうになっていたので、
「ごめんね。祈さん。大丈夫だから。ね。」
泣かないで、頼む。
肝心のベンツはさっき振り切られて戦意喪失してしまったのか、だいぶ距離を取って後ろに止まっている。もちろん煽ってこない。
250:ふみあ
09/06/27 06:05:25
気を取り直して出発することにする。とりあえずここからランプまでのルートを確認する。
「ここから先はしばらく道のりで行くとして、ランプまでの道順はどうなっているんでしょうか?」
「というと?」
「中央高速のランプだと一方方向の可能性が高いので、高速沿いにどこかで東の方に左折しなきゃいけないかな、って思いまして。」
「いや大丈夫だよ。この道はこのまま自動車専用のバイパスとして高速道路と立体交差しているからね。」
「というとそこのジャンクションで高速の入口に直接入れるんですか。」
「ああ、最近できたんだよ。もうすぐバイパスの入口だよ。」
見ると、前方に道の真ん中だけ坂になっておりその先が高架になっている。そして入口には自動車専用道の標識が立っていて、車がどんどんそちらに流れている。
しかも高速とのつなぎであるためか、高速並に流れが速い。制限速度は80キロのようである。
僕は流れに乗るため、みんなに声をかけた。
「今から速度を思い切り上げますから気を付けて下さい。」
「え?」「ちょっと!」「きゃっ」
「上げますよ、いきますよ。」
右ウインカーを点滅させながら追い越し車線に合流し、加速しながら坂を登って行く。気がついたら100km/hを超えていた。みんな飛ばしているねえ。