07/05/07 20:47:10
「結婚相談所がイヤなら……そうね、南米あたりに行って、現地のラテン男を捕まえるっていう手もあるわね。つまり、美的感覚の違いを利用する作戦」
スプーンを軽く振り回しながら得意気に語る姿は、わが母親ながら恐ろしい。
わたしは、いったんフォークを置く。
「……結婚なんて、いいよ別に。それよりも、1億円くらい進呈するから、母さん、わたしと一緒に暮らしてよ。母子ふたり水入らずで、この先ずっと暮らそうよ」
最近、ひとりでいるのに疲れていたわたしは、この話をするために、実家へ帰ってきたのだ。
「お・こ・と・わ・り。3億円全部くれるって言われても、そんな話はお断りよ」
母さんは、とうとう4つめのショートケーキに取りかかりながら、わたしの目を見ずに断言してみせた。
「ふうん。まあ、そう言うと思ってたから、別にいいんだけどね……」
気まずさをごまかすために、わたしは、食べたくもないケーキを口に運ぶ。
「ちなみに、国内は利息が安いからダメよ。半分くらいを、外貨預金で運用しなさい」
独りで強く生きろ、ということらしい。