07/05/07 20:46:25
『女としてはトホホだけど貯金は3億円』
「これから、どうやって生きていこうかなー」
わたしは、フォークで生クリームをすくい取り、それを口に運ぶ。
1個150円のイチゴショートケーキ。
「今すぐ、結婚相談所に行きなさい」
母さんも、私と同じものを食べていた。
「えー……無理でしょ、いまさら」
自分の年齢なんて思い出したくないけど、久しぶりに思い出してみる。
わたしは今年で35才。
そして、太っている。
さらに言えば、見目うるわしくない。
女としては、トホホだ。
ついでに言うなら、最近、宝くじで1等前後賞合わせた3億円が当たった。
「お見合いなんて、わたし、自信ないし……」
「今のアンタなら楽勝でしょ。特技の欄に『貯金3億円』って書けばいいんだから。引く手あまたよ」
みずから放った言葉に大ウケしてゲラゲラ笑いながら、母さんは2つめのショートケーキに手を伸ばす。
「でも貯金が特技って、さみしすぎると思うんだけど……」
「そうよ。今のアンタは寂しい女なのよ、知らなかったの? 宝くじで3億円が当たった今回が、人生最後のチャンスなの。さっさと覚悟を決めなさい!」
3つめをスプーンでなぶりながら、母さんはわたしの目を見て、叱りつけるように言う。