この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十一ヶ条at BUN
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十一ヶ条 - 暇つぶし2ch558:「数学」 「遊園地」 「高校野球」
07/05/19 11:19:21
傲慢で粗暴な親父の平手を食らったあの夏の日からもう25年。
我が家は数十年の歴史を持つ野球家系だったらしい。
なんとかの星よろしく。徹底的な野球漬けの日々が幼い頃の俺には待っていた。
春の暖かな風を切り裂くようにバットを振り。
夏の暑い日にはスタミナをつける為に徹底的に走り込み。
秋の緩やかな空を背景に強烈なノックをし。
冬のは肩を壊さないように気をつける。
そこには娯楽など無く、旅行はおろか遊園地さえ二十歳を越えるまで行った事は無かった。
嫌気が差した俺は、17の夏野球を辞めた。平手を数発と怒声を少々、仕上げは勘当。
着の身着のまま親戚の家へと放り出されたおかげで野球とは縁を切った―

今年も例年通りの夏が来た。甲子園の夏。
あの親父は今では大好きな高校野球の監督だ。死ぬときはマウンドで死にたいらしい。
俺は数学の研究を生業にした。昔気質の根性論などクソ食らえだ。勿論、親父への中てつけでもある。

TVのスイッチを付けると洗い物もそこそこに妻が駆け寄ってくる。
途端、リビングのTV越しに硬球とバッドの弾ける気持ちの良い金属音が響いた。
放物線を描くように綺麗なアーチが球場外へと延びる。妻が両手に持ったエプロンを中空へと投げ出し歓喜した。
あの夏の日の親父の平手のような感覚がビリっと頬に走る。
悠々とベースを踏む息子を眺めていると、嬉しいやら悲しいやら複雑な気持ちだ。
相手のチームの監督の知った顔がチラリテレビに映った。ニヤリと笑った気がする。

どうやらもう暫らく我が家の野球戦争は続くらしい。

「銭」「電話」「飴」

559:「銭」「電話」「飴」
07/05/19 11:54:19
なぁあんちゃん、世の中は銭や、ぜ~んぶ銭でできよるんや。
せやさかい銭持っとらん奴はカス扱いされてもしゃあないやろ?
それが世の中の道理っちゅうもんや。
で、あんちゃんはカスなんか? 違うやろ。わかるで、うんわかる。
上等なおべべ着とるもんなぁ。ほらナイフで軽う撫でただけで柔らこう裂けよる。
わしのんなんかもうがびがびのがっちがちや。赤黒いシミもようけ取れんしな。
あ? 持ち合わせがないから親に電話させてくれって?
まぁええわ。そこの公衆電話からかけ。ほら10円くらいくれたったるわ。
一つ言うとくけどな、持ってこさせるんやない、お前の口座に振り込ますんやで。
あんちゃんは利口やからわかっとる思うけど、念のためな。
そうそう上出来や。それじゃ早速そこの機械で引き出してもらおか。
ああ、ほんまおおきに。これでようようDS Lite買えるわ。
何かあったら遠慮なく言うてき。力になったるさかい。ほな。

一気にまくし立て、お下げの少女は軽やかな足取りで駆け出した。
残された少年は、30分前から忘れていた口の中の飴をようやく思い出した。

「義理」「嘔吐」「敗色」

560:名無し物書き@推敲中?
07/05/23 01:47:07
僕は布団にうつ伏せになりながら、先刻買って来た現代絵画集を開いた。
抽象画のページをぱらぱらと捲っているうちに目に留まったその絵は、
何か真っ白い画用紙に茶色い絵の具をぶちまけた様な―いや、絵の具というには余りにも汚い。
画材に何か混ぜているのか、目の粗い土のような滓がこびり付き、
その表面にはがびがびと乾いた何か粒の細かい穀物が付着している。
絵画の説明に目をやると次のようなことが記されていた。

「敗色」 喜志田 玉雄(1913~1949)

晩年の喜志田が嘔吐した際、その吐瀉物を画用紙に擦り付けた彼の作品群の中でもとりわけ異質なもの。
喜志田は戦時中に兄・孝雄を失い、その妻フサ江も終戦後心身を病み後を追うように他界した。
喜志田自身も遊興と放蕩の末に自らの生の進路を断つことになる。
喜志田の死後発見された書簡には義理の姉フサ江への秘めた思いが綴られていたが、
この作品にその思いを託したかはあくまで閲覧者の想像に委ねる他はない。

561:560
07/05/23 01:48:54
忘れてた
次の方

「愛媛」「ドロップ」「だんだん畑」

562:「愛媛」「ドロップ」「だんだん畑」
07/05/26 23:53:35
 だんだん畑のはたを登っていくと、愛媛みかんが植えられた斜面がある。僕は、
うちの庭のもみじよりも小さい、僕の手の半分よりも小さい、小さい小さい妹の
手を引いて、だんだん畑のはたを歩く。妹に合わせてゆっくり歩く。妹の小鹿の
靴が、歩くたびにクウクウと鳴く。これからみかんを採りに行くというのに、妹
が嬉しそうに、「ロロップ、ロロップ」と言って、ドロップが二・三個入ったク
マさんのポーチを振っている。「ドロップ好きか?」と聞くと、「あのね、おば
あちゃんがね……」と満面の笑みで説明してくれる。その、妹にドロップをくれ
た、風邪で寝込んでいるおばあちゃんの代わりに、僕はみかんを採りに行く。
 そうこうするうちにみかん畑に着き、僕はみかんの収穫をした。妹は畑の隅に
テンと座って、土を熱心に掘っていた。
 帰り道、妹にみかんを一つやった。
 そうして、愛媛みかんにまみれた僕たちは、夕焼けでみかん色に染まっただん
だん畑のはたを、手を繋いでゆっくりと降りて行った。

次 「蛍」「露」「稲」

563:「蛍」「露」「稲」
07/05/29 07:24:37
「蛍、みたことある?」
彼はいきなり、そんなことを言った。
何か裏に意図があるのか、と思いながらも僕にはそれが想像も出来ず、ただ素直に首を横に振った。
「ほら、ネットで見たんだけどさ、俺たちが昔通ってた小学校の近くに、けっこう良いスポットがあるらしいんだよ。」
行ってみないか、と彼は目を輝かせながら言った。
地図でよくよく確かめてみると、僕も何度も行ったことのある場所だった。
当時は良く、帰宅するとき道草を食いながら帰った。

「何年ぶりだろ。」
その晩。独り言を漏らしてから、僕は自分の案外と楽しんでいるのに気がついた。
一車線の小さな道の両側には、延々と田んぼがつづいている。
昔はそこに侵入して、稲を滅茶苦茶にして叱られたものだ。

そうしてずっと歩いてゆき、山へ入った。
街灯がないため、彼は懐中電灯を付けた。
「準備が良いね。」
僕は言った。こちらは全くの手ぶらだったのだ。
足首に背の高い草が触れる。露に濡れているのか、ひんやりと冷たい。
小川の匂いがする。たまに、友達をそこへ突き落としたりしたものだ。
そこから歩いてゆくと、すぐに目的地へ到着した。
その小川は、コンクリートですっかり舗装されてしまっていた。
僕と彼は肩を落とした。

ネットのページを帰ってからもう一度確かめると、更新日時は僅か半年前のものだった。


次、「ロケット」「電池」「ブリキ」

564:名無し物書き@推敲中?
07/06/02 21:37:32
「ブリキ」「ロケット」「電池」

ブリキのロンには、友達がいる。友達の名前はリン。「おはよう、リン。」
町を歩いていると、リンが走っているのが見えたので、声をかけた。
「お!おはよ、ロン。なぁ、今から皆で、探検しに行くんだ。ロンも行かない?」
リンは走っていた足を足踏みに変え、話しかけてくれた。
「行く!」
ロンは嬉しそうに答えた。そして二人は走っていった。

たどり着いたのは、大きな沼。沼の前には「立ち入り禁止」の看板がある。
リンとその友達逹は、ぎゃいぎゃい言いながら沼に入っていく。
ロンは沼の前に立ったまんまだった。
「ロン、この沼に恐竜がいるんだって!」
「恐竜?」
「そう、恐竜。一緒に探さない?」
「ちょっと僕は遠慮しとくよ、ごめんね。」
そっか、と言ってリンは仲間のとこに行った。


結局、夕方まで探しても恐竜は見つけることができなかった。
あ~あと言いながら、皆家路に向かった。
「あ~泥だらけだ。これ絶対起怒られるだろなー。」リンが自分の汚れた足を見て、つぶやいている。
僕は、汚れることもできない。
「なんで入んなかったの?」
リンがなんとなく聞いてくる。

565:名無し物書き@推敲中?
07/06/02 21:38:44
「僕の体、鉄板薄いから…。」
「あ~、そっかー。誘っちゃってごめんね。」
リンは申し訳なさそうに言った。
「違うんだ!誘ってくれて、すごく嬉しいんだ。一緒に行こうって言ってくれなくなるのが、一番悲しいし。」
「なら、よかった。」
リンはケラケラ笑っている。
「リン逹は好きだね。」
「ん?」
「危険なとことか、怖いとこ。この前だって、幽霊でるんだー!って言って廃墟まで行ったじゃん。」
「あ~、あれね。だって危険だとか怖いだとか言われると、恐ろしいんだけど、凄く見たくならない?」
相変わらずリンの笑顔は太陽みたいに暖かい。
僕が笑うと、ギコギコ鳴る。それが嫌だった。
「僕は臆病だからな~」
とても弱い、いつ止まってしまうかわからない僕の体と心が怨めしい。

566:名無し物書き@推敲中?
07/06/02 21:41:11
「じゃあ、また今度ねー」「うん、バイバイ~」




ある朝、リンは目の前の光景に呆然とした。
「なんで…なんでロン…」リンの頬に涙がつたった。

ロンの家に遊びに行ったリンは、ロンがいなかったので、辺りを探したのだ。
そして見つけたのは、前に一緒に行ったことのある、ロケット工場。
ロケット工場に行くには、川を渡らなければならなかった。

「ロケットいいよな~、カメラ持ってくればよかった。」
「なんで?」
「いや、記念に撮っておきたかったなーと思って」
「そっか~…」

あの時の、ロンのうつむき気味の顔を思い出す。
「僕があんなこと言わなければ…」
リンはその場にしゃがみこんだ。

そこには、倒れているロン。手にはカメラを持っている。

警官が来た。
「あ~、可哀想に。電池が壊れてるわ。この型のブリキロボットは水に入ると壊れちゃうんだ。」

ロンが手に持っていたカメラには、しっかりとロボットがうつっていた。


567:名無し物書き@推敲中?
07/06/02 21:44:00
無駄に長くてごめんorz
次のお題「髪の毛」「くまさん」「メガネ」

568:名無し物書き@推敲中?
07/06/02 21:50:58
すいません、最後、ロボットじゃなくてロケットでした…or2

569:「髪の毛」「くまさん」「メガネ」
07/06/05 11:26:12
「パパー、くまさんから髪の毛ぇ…」
泣きそうになりながら訴える娘の声に、私は居間へ向かった。
見るとテーブルの上でお行儀よく座らされたテディベアの頭部から、たわしの様に何かが生えている。
バニラアイスの様な色の生地から作られた彼は、先日インターネットで私が購入したものだ。無名作家さんの作品ながら非常に丁寧なつくりが見て取れ、手の平の上で無垢に微笑む姿に娘も愛らしい笑みを返していた。
それが、今は。
テーブルに近づきメガネをかけ近くで確認すると、クマの頭部から生えているのはどうやら人毛らしいことがわかる。娘の言うとおり、まさしく髪の毛が生えてきたのだ。
…触るとチクチクする。剛毛だ。
娘が不安そうに、少し離れた位置から私とクマの様子を窺っている。
まさか髪の毛が生えるとは、迂闊であった。なんと説明すればよいのだろう。
髪の毛の伸びる人形の怪談も知らないというのに。剛毛の生えるテディベアもいるんだよ、なんて教えてしまったら人形の怪談話を怖がるという夏の楽しみの一つを奪ってしまいかねない。それは親としてあるまじき行為だ。
気付けばモミアゲまで生やしかけてきている彼とにらめっこしつつ、うまい説明を考える。
「ミサキ、これはね…」
「ただいまー」
妻の声。旅行から帰ってきたようだ。
「あ、ママ-!」
居間へ入るなり妻の視線はテーブルの上の剛毛ベアへ。
「何、それ?」
「くまさんからね、髪の毛が生えてきたのー…」
「……。あなた、また私のいない間に…」
「いや、今度はホラ、ワラとか木の人形じゃないから…」
「ワラや木じゃなくてもそのモミアゲで充分よ」
そう言い放った妻はテディベアをゴミ袋にいれ、その上から日本酒と粗塩を振り撒き袋の口をしっかり結ぶと
「これ、明日ちゃんと捨ててきてちょうだい」
私に突き出した。
「はい…」
オカルト趣味に馴染んでもらおうと、可愛い「のろいのテディベア」を選んだのだがまた失敗してしまった。髪の毛の生える「のろい」とは思わなかったのだ。
テディベアが根性で我が家に戻ってくる事を夢想し、妻の土産話と土産物を、それはそれで楽しむ事にした。

次は「手袋」「香水」「雨雲」でお願いします

570:名無し物書き@推敲中?
07/06/06 01:26:37
それは、バイトが長引いた日の帰り道のこと。
いつもの道を歩いていると、前方から1人の女性が歩いてきた。
彼女は上から下まで真っ黒な服で、雨雲もないのに黒い傘を差している。
そう、黒い手袋に握られているそれは、日傘ではなかったのだ。
……何か、嫌な予感がした。
俺は来た道を引き返そうと彼女に背を向け……肩を掴まれた。
「あ、やっぱり守ちゃんじゃないのー!」
頭のてっぺんから出ているような甲高い声を浴びせられ、しぶしぶ振り返る俺。
「なんつー格好してんだよ……」
上から下までフリルだらけの真っ黒な服に、まるでノコギリのような装飾がゴテゴテとついた黒い雨傘。
「死獄幼女の澪ちゃんよ。 かわいいでしょー!」
そう言ってその場でくるりと回転する彼女。
強烈な香水の香りが、徹夜明けの俺の脳にトドメを刺した。

彼女は日高薫子2X歳。
正真正銘、血の繋がった俺の実姉である……



えー、わたしにホラーは書けませんでした。
次のお題「田舎」「月」「井戸」

571:570
07/06/06 01:31:57
って、一文抜けてる!
最後から四行目、「スカートとともに広がる強烈な香水の香りが」に置き換えて読んでください。

572:「田舎」「月」「井戸」
07/06/06 10:25:42
夏休み、恒例だった父の田舎への帰省。
当時は祖父母が住んでいた大きな屋敷を、小学生最後の夏休みだからというだけの理由であてもなく真夜中コッソリ抜け出した僕は、庭に白い人影を見つけた。
時間が時間だけに考えられる可能性はいずれも有り難くないものばかり。
小心者のクセにおとなしく寝ていないからだと罵る心臓を押さえつけながら、祖母の愛でるサボテンを避けつつそっと木の陰に隠れ、それでも低い位置から覗いてみた。
白い人は大して動いておらず、ぬるい空気の中近くの川から時折流れてくるひんやりとした空気に揺られる様に、井戸のぐるりをゆらゆらと周っていた。背すじがゾクリとした。
「月を飲みたい」
聞き間違いかと思ったが、声は間違いなく僕へ向けられていた。白い影が動きを止め、こちらを向いている。血の気が引き、一瞬目の前が真っ白になった。
「月を飲みたい」
激しくはねる心臓とは対照的に、静かに、全く同じ調子で繰り返される言葉。
「月を飲みたい」
かぼそい声だった。
何故だか急に居たたまれなくなってしまった僕は、木の陰から白い人の正面へ出てしまった。
空には月が皓々としていたのに、近くで見てもその人は輪郭意外はっきりしない。
今度は井戸を見ながら言った。「月を飲みたい」
月は天頂の辺りだ。もしかすると井戸の蓋を外せば月が水に映りこむのかもしれない。蓋に手をかけると、涼やかな甘い香りが周囲に満ちた。昼は日陰に避難させられていた無数のサボテンが、夜は今かと一斉に花開いたのだ。
井戸の蓋を完全にどけると、あたりに溢れる白いサボテンの花をより一層輝かせながら月は、深い穴の底でも輝いていた。
安心した僕は顔をあげ、横にいた白い人に声をかけようとしたが、その姿は無かった。

翌朝、「一部地域で皆既月食」というローカル新聞の記事を何やら熱心に読み耽る父を尻目に、庭の井戸へ向かった。
そこらじゅうの日陰からサボテンの花がこちらを覗く中、井戸の蓋を開けると中に一輪。真っ白な大輪のサボテンの花が月の様に、真っ黒な水に浮かんでいた。


次は「襲名」「ヘビ」「花盗人」でお願いします

573:名無し物書き@推敲中?
07/06/06 16:25:56
相変わらずツマンネーなここ


574:名無し物書き@推敲中?
07/06/07 01:02:16
お題がマニアックすぎるし、誰が書くか気になる…(´・ω・`)
書けない私は多分、確実に頭が悪い

575:「襲名」「ヘビ」「花盗人」
07/06/09 11:40:00
「襲名」「ヘビ」「花盗人」

 30年ぶりに憧れの女のドアをたたく。男は年甲斐もなく震えていた。
 最初に会った頃、彼はまだ少年だった。画家に憧れる名もなく貧しい少年だ。

 時折、階上から響く彼女のピアノと歌だけが、彼の唯一の慰めだった。
 「勉強家なのね。いつか、貴方の素敵な絵を見せてください」「…は、はいっ」

 名画家となり、門の中から彼女を連れ去る事を、何度夢見た事だろう。
 何の憂慮もない、劣等感のかけらもない、花盗人としての自分を。

 しかし、彼女は堂々たる家業を襲名する継ぐであろう、大富豪の娘だ。
 クリーム色の荘厳な門を前にすると、ヘビににらまれたネズミの様になる。
 ノックできないまま30年が過ぎ…そして今、彼は粗末な薄いドアの前にいる。

 昨日、彼女を見た。
 屋敷もドレスも没収され、粗末な服に身をやつしてはいたが、瞳の色で判る。間違いなく彼女だ。
 「今なら会える!」と、彼は決心した。なんだかすご卑屈だけど。 

 「そうさ、やっと地位を得た、胸を張って会えさ。そのために今まで、努力を重ねて政策を通してきたんだ。」
 でも…
 モジモジと珍しく目を落とし、こっそり深呼吸をする彼をみて、収容所長が小さく囁いた。
 「大丈夫ですよ、総統」

※削った行数の方が多いなあw
次のお題は:「猿」「コンピューター」「納豆」でお願いします。

576:名無し物書き@推敲中?
07/06/09 13:30:56
文章作法くらい守れよw

577:名無し物書き@推敲中?
07/06/13 14:18:17
「猿」「コンピューター」「納豆」


 猿顔のコンピューターに納豆をぶちまけた時から全てが始まった。
 思わず僕は叫んで、猿の額っぽい液晶画面の表面で糸を引いて転げ
落ちる納豆を一粒一粒取り除いていく。
 飯を食いながらレポートの作成をしていた僕が悪いのだが。
「これは雨期か。ただの気まぐれな暴風雨か。私は濡れ飛ぶノイズを
前にして呆然としていた」
 どうやら故障は免れたようで、僕は気を取り直して入力を続ける。
『これはウキィか。たんぼも木まくってボーナスステージだ。私は濡
れ手に粟のリスを数えて呆然としていた』
 しかし、コンピューターに表示された文字は、僕の意図したもので
は絶対に有り得なかった。
「やっぱり故障したのか。時間が少ないのに」
 僕は画面を見つめて途方に暮れた。
『あっぱれ遡上ショーのカジカ・スキャンライン』
 音声入力をONにしたまま呟いたら、それがそのまま意味不明な誤変
換に変わってしまった。このソフトは調子が良い時の変換率99%以上
で誤変換は全くと言っていいほど起きないのに。
「困ったな。どうしよう」『小股な。ドリアン』
 本格的に故障らしい。
『ていうか、君。コンピューターは計算機なんだぞ。君の脳みその補
助具。それに納豆ぶちまけるというのはいったいどういう了見してん
だ。納豆菌もツーツーだよ。あのねえ……』
 故障じゃなくて、故意らしい。
「なんだよ。その投げやりな誤変換は?」
『まあ、なんだ。ついつい粘着質になっちまった。正直すまんかっ
た。ていうか、変換に専念させて』


 次は「舟」「月」「番茶」で、お願いします。

578:「舟」「月」「番茶」
07/06/15 10:54:54
路上で二人の男が言い争っていた。
「なんで番茶なんか買っちまったんですかアニキ! しかも1kg!」
「水は飲まねぇ主義なんだよ!」
「じゃあペットボトルの茶で充分じゃないですか!」
「茶葉から淹れる方が経済的なんだ! そんな事もわかんねぇのか!」
「だからって残りの有り金使い果たしちまったら、茶ぁ飲みきる前にオレら餓死ですよ! 『本国からの送金が遅れるから金はできるだけとっておけ』って、今朝オレに言ったのアニキですよ!?」

『返品』という言葉が浮かばず途方に暮れる二人の目の前に、まだ小学校入学前と思しき子供が一人歩いてきた。剥き出しのガマグチを手に持って。
互いに目配せをする男二人。
ひょろりとした男が子供に近づき、カタコトを強調した奇妙な発音で話し掛けた。
「チキュウ コニチハ。ワタシタチ ツキ カラキタ」
空には半分程の月。
「月にはウサギがいるんだよ。本で見たもん。おじさんたちじゃないよ」
「ぐっ…ワタシタチモ スンデイル」
「えっ、じゃあUFO乗ってきたの!?」
「乗ってきたのは舟だ! 手漕ぎモゴ……」
苦戦しそうな弟分を助けようと突然話に加わってきたアニキの口を抑えつつ、男は何とか言い繕った。
「フネノカタチ ノ ユーフォー! コ、コイデキタ!」
「ふ~ん」
「ワタシタチ ツキ カエリタイ。デモ オカネナイ。オカネナイ チキュウノヒト ツキヘ カエシテ クレナイ。アナタ オカネ モッテル?」
少々強引に話を運び、男は地球人の慈悲を乞う様な瞳で子供を見た。正確には子供が持つガマグチを凝視した。
「マミちゃんのとこでお買い物する約束したんだけど……可哀想だからあげる」
子供は少し考えてから、ガマグチごと男に手渡した。
「アリガト! アリガト! チキュウ バンザイ!」
ガマグチを手にしたらもう用はないとばかりに手早く礼を言い、誰かに見咎められぬ内にと男二人はその場を急ぎ去った。

茶葉1kgとガマグチを手に、アジトであるところの狭い一室へ転がり込んだ二人は『ひゃくまんえんさつ』が6枚という大収穫に狂喜し、部屋にあった残りの食パンを全て平らげてから、うららかな陽気の中意気揚揚と、食料の買出しへと飛び出していった。



次は「ウサギの群れ」「王者」「封筒」でお願いします


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