08/09/30 12:11:01
>>1
乙
3:無名草子さん
08/10/01 16:48:54
三島由紀夫
檄文&演説文
URLリンク(www.geocities.jp)
URLリンク(www.geocities.jp)
4:無名草子さん
08/10/02 11:22:57
われわれは天皇ということをいうときには、むしろ国民が天皇を根拠にすることが反時代的であるというような時代思潮を知りつつ、まさにその時代思潮の故に天皇を支持するのである。
なぜなら、われわれの考える天皇とは、いかなる政治権力の象徴でもなく、それは一つの鏡のように、日本の文化の全体性と、連続性を映し出すものであり、
このような全体性と連続性を映し出す天皇制を、終局的には破壊するような勢力に対しては、われわれの日本の文化伝統を賭けて闘わなければならないと信じているからである。
三島由紀夫
「反革命宣言」より
5:無名草子さん
08/10/02 11:25:00
われわれは、自民党を守るために闘うのでもなければ、民主主義社会を守るために闘うのでもない。
もちろん、われわれの考える文化的天皇の政治的基礎としては、複数政党制による民主主義の政治形態が最適であると信ずるから、
形としてはこのような民主主義政体を守るために行動するという形をとるだろうが、終局目標は天皇の護持であり、その天皇を終局的に否定するような政治勢力を、粉砕し、撃破し去ることでなければならない。
三島由紀夫
「反革命宣言」より
6:無名草子さん
08/10/04 06:10:40
>>4-5
日本語でドゾ
7:無名草子さん
08/10/04 22:00:24
三島が望んだ天皇制、天皇像ってのは具体的にどんなんだったの?
それは過去にあった時代?
>われわれの考える天皇とは、いかなる政治権力の象徴でもなく、それは一つの鏡のように、日本の文化の全体性と、連続性を映し出すものであり、
こんな抽象的なこと言われると、どうも本気度がって思える。所詮文学じゃないかと。
日本文化の連続性、全体性ってのもわかるようでわからんよ。
具体的にはどういうこと?
8:無名草子さん
08/10/05 10:37:18
抽象的でもなんでもないけどね。読んで字のごとし。
分からないのは日本の歴史や古典文化が理解できない低能だけ。
9:無名草子さん
08/10/05 17:26:40
お経とおんなじで何言ってるかよくわからんほうが有難味が増すんだよね。
10:無名草子さん
08/10/07 01:57:17
>>8
そういう君もなんだかわかってないのだろう?
ここはわかってない低能同士わかってる人から教えを乞うべきではないか?
みんななんのことやらわからないもんだから、三島の意志みたいなのが生かされないんじゃね?
なにかはっきりわかったら余計ダメかもしれんけどね。
11:無名草子さん
08/10/07 02:05:33
建設的な意見にみせかけた罵倒だな
12:無名草子さん
08/10/07 13:07:12
なんだ、珍しいことだが>>6が正解か。
13:無名草子さん
08/10/07 14:49:03
>>10
人に聞かずに、自分で三島由紀夫本人の本を読んで吟味すれば?
それでも通じないのは日本人じゃないってこと。三島を理解するのは理屈じゃないから。
14:無名草子さん
08/10/08 08:12:23
読んでも8みたいに、理解できず自分の考えも持てなかったらいやだなあ。
日本人だけど低能だからさ。漢字多いし。
森田必勝みたいに三島の作品なんか読んだことねえ、みたいなのでも一緒に行動したのにな。
15:無名草子さん
08/10/08 11:44:49
>>14
三島由紀夫はあなたのように、自分が頭いいと自惚れてるだけの批判馬鹿が一番嫌いだったんだよ。
16:無名草子さん
08/10/08 11:49:09
三島由紀夫に影響を受けたと指摘されているアーティストの一人に、日本のアニメ「巌窟王」の音楽を担当したジャン・ジャック・バーネル(フランス人)がいますが、
ジャンは70年代の伝説の英国パンク・ロック・グループ、ストラングラーズの名ベーシストでした。
バンドの3rdアルバム『ブラック&ホワイト』には「ユキオ」の副題が付けられた「デス&ナイト&ブラッド」(死と夜と血)という曲や、次のアルバム『レイヴン』の「アイス」という曲にもハガクレという言葉が出てきます。
「死と夜と血」
俺が彼の瞳のなかに
あのスパルタを見た時
夭折はいいこと
だから俺たちは決めたんだ
死ぬこと以上に
すばらしい愛はないと
俺は俺の肉体を
俺の武器にまで
鍛えあげるんだ
ジャンは三島の熱心な愛読者でもあり、極真会館の道場生でした。現在は士道館の空手ロンドン支部長をしているそうです。
17:無名草子さん
08/10/08 11:50:18
78年12月に単独来日した際にジャンは、「なぜ日本はこんなアメリカ・ナイズされているのか、日本の若者は眠っているのか」と怒りまくったという逸話があり、
「米国資本の市場戦略は安逸な快楽を与え、人々の感性を鈍らせることから始まっている。
それはヨーロッパの伝統的な明晰さにとって第一の敵といえるが、
日本人もそれに毒されている自分たちを自覚し民族の知的遺産である伝統、それは魂(スピリット)といっていいが、それを救出しなければならない。」と誌面にメッセージを残しています。
18:無名草子さん
08/10/08 19:26:23
追悼 緒形拳
ある意味、最も三島の本質に近付いた男だった。
19:無名草子さん
08/10/09 03:23:52
>>18
興味ある発言だなあ。
しかし、おいらはまったくピンとこないわ。
ある意味ってたとえばどんな?
三島の本質ってのは?
「MISHIMA」でワンカットだけ出る「からっ風野郎」の緒形版ポスターは本家を超えるモノがあったなあ。
20:無名草子さん
08/10/09 14:47:24
「薔薇刑」の基本的テーマは「生と死」「エロスとタナトス」であり、それは三島由紀夫を被写体とするところの私の主観的ドキュメンタリー作品である。
そこで理解してもらいことは、三島氏は自分を「被写体」と呼び、最初から最後まで完全に「被写体」に徹してくれた。
だからハリウッドの映画監督がつくった映画「MISHIMA」の中で私らしい写真家が登場するが、
そこで画面上のMISHIMAがカメラをかまえる写真家に向かってカメラの位置を変えるように手で指示するシーンがでてくるが、あんなことは絶対になかったし、ありえないことだ。
細江英公
21:無名草子さん
08/10/09 14:48:23
三島さんは文字通り「誠実の人」であった。その点だけは、身近に彼を知り、そして生き残った自分の責任として、きちんと後世に伝えておかなければならない。
その三島さんが、あえて選んだ死に様であるのなら、それは真摯に考え抜いた結果であったはずであり、そこには止むに止まれぬ理由が存在したに違いないのである。
であるから、私がまず強調しておきたいのは、事件直後から多くのメディアによって宣伝されてきたような「スキャンダル」として三島さんの死を扱うようなことは、実にもって愚劣なことであるということである。
細江英公
22:無名草子さん
08/10/12 09:30:08
しかし、マスコミにとってはスキャンダラスな死以外何物でもないしな。
大体愚かなんだし、マスコミなんか。
三島もそれはわかっていただろうし、むしろ望むところだったかもな。
23:無名草子さん
08/10/12 11:34:40
天才数学者、岡潔氏の三島由紀夫論を再発見
岡潔研究会が三十八年前の『蘆牙』掲載箇所を発見
*************
岡潔研究会(横山堅二代表)が復刻した『蘆牙』第三号は原号が昭和四十六年四月に奈良で発行されたもの。
同誌は当時、奈良で発行され、同市に住まわれていた天才数学者・岡潔を囲むグループが出していた。岡潔は岩下志麻、笠智衆が主演の映画『秋刀魚』のモデルでもある。
このなかで岡潔が三島由紀夫に触れた箇所がある。
岡潔先生曰く。
「三島由紀夫は偉い人だと思います。日本の現状が非常に心配だとみたのも当たっているし、天皇制が大事だと思ったのも正しいし、
それに割腹自殺ということは勇気がなければ出来ないことだし、それをやってみせているし、本当に偉い人だと思います。」
編集部が「百年逆戻りした思想だと言う人もありますが、それは全然当たっていないと言われるのですか?
岡潔の答え。
「間違ってるんですね。西洋かぶれして。戦後、とくに間違っている。個人主義、民主主義、それも間違った個人主義、民主主義なんかを、
不滅の真理かのように思いこんでしまっている。ジャーナリストなんかにそんな人が多いですね。若い人には、
24:無名草子さん
08/10/12 21:59:33
>>23
「好人好日」のモデルじゃないかと。
元が間違ってるようだからネラーが訂正してあげますよw
25:あぼーん
あぼーん
あぼーん
26:無名草子さん
08/10/17 08:10:06
>>23
そりゃあまあ勇気はあるだろうってみんな思うだろうなあ。
勇気というか蛮勇というか。
殺人しちゃう“勇気”と似たようなものとかさ。
>間違ってるんですね。西洋かぶれして。戦後、とくに間違っている。個人主義、民主主義、それも間違った個人主義、民主主義なんかを、
>不滅の真理かのように思いこんでしまっている。
だから年数はともかく、逆戻りした思想でいいんじゃまいか?
27:無名草子さん
08/10/17 16:23:01
単なる逆戻りと思ったのは、三島作品も読んだことない、戦後の西欧かぶれ西欧カルチャーショックの激しい自称進歩的知識人だけ。
三島由紀夫の未来洞察は正しい。
28:無名草子さん
08/10/17 16:26:36
徳岡孝夫氏が40年前を回想して
「三島由紀夫は全共闘の味方だった」
*************
「毎日新聞」の10月1日付け文化欄で40年前の「楯の会」結成を回想し、徳岡孝夫氏がインタビューを受けている。
だれも三島が本気だということを感知していなかった時代でもあり、日本人記者はたれひとり、三島が入隊した滝ヶ原駐屯地へ取材にいかなかった。
ライフ誌に特集された三島が、私兵を募るわけだから「なにかある」とヘンリースコットストークスが取材へ行った。ヘンリーはその後、三島伝記を英語で書き、それは現在なおロングセラーだ。
「三島さんが本気だったのは晩年の著書『行動学入門』を読めば分かることでした」という徳岡は、「三島さんはどちらかというと全共闘の味方でした」ともいう。
またノーベル賞は川端へいったが、『本当は三島さんが取るべきだった』とする。
「日本の作家で作品が翻訳された人は他にもいましたが、本当に海外で廣く読まれ、戯曲が上演され、研究書が書かれたのは彼が初めてだった」。
当時の楯の会に詳しい専門家に、この毎日新聞の徳岡記事をただすと、「記憶があまり正確ではなく、比喩として全共闘の味方というのは浅い見方ではないか。
なぜなら『東大安田講堂を占拠した過激派はだれひとり責任を取って、あそこで自決しなかったではないか』として三島は最後はかれらに否定的でした」という。
29:無名草子さん
08/10/17 22:11:10
>>27
その西欧かぶれ自称知識人って、たとえば誰?
>三島由紀夫の未来洞察は正しい
あ、そぅ。
それと思想が新しいか古いかは全く別問題だよね。
30:無名草子さん
08/10/21 11:23:31
三島氏は、日本人について、「繊細優美な感受性と、勇敢な気性との、たぐい稀な結合」と云った。
そして「これだけ精妙繊細な文化伝統を確立した民族なら、多少野蛮なところがなければ衰亡してしまう」と云う。
この史観と実践倫理を、彼の一代の生き方の上に重ねた時、わが身心は、ただおののく感じである。
保田與重郎
「ただ一人」より
31:無名草子さん
08/10/21 11:41:54
日本の民と国との歴史の上で、天地にわたる正大なる気を考える時、偉大なる生の本願を、文人の信実として表現した人は、戦後世代の中で、日本の文学の歴史は、三島由紀夫ただ一人を記録する。
過渡期を超越したこの人である。
保田與重郎
「ただ一人」より
32:無名草子さん
08/10/21 11:43:21
戦後文学の作品は沢山あり、さらに沢山つみあげられることだろう。今や大企業である。
しかしついのつまりに、三島由紀夫だけが文学及び文学者として、後の世に伝わってゆくだろう。
彼は紙幣を作っていたのでも、銀行預金通帳の数字を書き加えたのでもないからである。
保田與重郎
「戦後文学観」より
33:無名草子さん
08/10/21 11:43:27
爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね
爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね
爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね
爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね
爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね
爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね爺死ね
糞ジジ糞ジジ糞ジジ糞ジジ糞ジジ糞ジジ糞ジジ糞ジジ糞ジジ糞ジジ
糞ジジ糞ジジ糞ジジ糞ジジ糞ジジ糞ジジ糞ジジ糞ジジ糞ジジ糞ジジ
死死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
その老いたすがた気持ち悪すぎ
その老いたすがた気持ち悪すぎ
その老いたすがた気持ち悪すぎ
その老いたすがた気持ち悪すぎ
死ぬとき このレスの事思い出してくれよ
34:無名草子さん
08/10/21 12:00:02
>>33
カルシウムが足りない病人お大事に。
35:無名草子さん
08/10/21 12:02:19
三島由紀夫に影響を受けたと指摘されているアーティストの一人に坂本龍一がいますが、
彼の父親は三島の仮面の告白、金閣寺などを世に送り出した河出書房の三島担当の名編集者として有名です。おそらく父親から三島の逸話などを聞かされたことでしょう。
坂本龍一が映画「戦場のメリークリスマス」(大島渚監督)で演じた将校も三島の造形だといわれていますが、
龍一自身が担当した「戦メリ」の音楽に歌詞を付け、デヴィッド・シルヴィアンとコラボしたアルバム「禁じられた色彩」も、明らかに三島の「禁色」をベースした世界があります。
My love wears
forbidden colours.
My life believes
(in you once again)
僕の愛は禁じられた色彩を帯びる。
僕の生は(もう一度あなたを)信じる。
ちなみにD・シルヴィアンも三島の「禁色」を最高の文学と言い、三島おたくぶりをアピールしています。
36:無名草子さん
08/11/08 21:51:35
【MAD】椎名林檎 メロウ 三島由紀夫に捧ぐ
URLリンク(www.nicovideo.jp)
● メロウ ●
橙色は止まらない
黄色を探して乗り込め
お前はきっとナイフを使う僕に恐怖を覚える
蔑んでくれ
僕は何処迄も真摯なのだ“至って普通さ”
いま群れ為す背中
お前が僕よりイッちゃっているのだ
狂っている ―そうだろう?
意識は希望に素直じゃあない
回避するなんて止めておけ
お前の弁護をしているマシンをぶっ壊してあげるよ
引き攣ってくれ
僕は此処でお前に云うのだ“愛しているさ”
いま赤く染めた
お前が僕よりイッちゃっているのだ
狂っている ―そうだろう?
美しい予感・目に映る全て・儚き事象
要らぬ もう 要らぬ
嗚呼・・・
37:無名草子さん
08/11/20 16:48:31
国のため、いのち幸くと願ひたる、
畏きひとや
国の為に、死にたまひたり
保田與重郎
昭和45年11月某日
38:無名草子さん
08/11/20 16:49:42
わがこころ
なおもすべなし
をさな貌
まなかひに顕つを
いかにかもせむ
夜半すぎて
雨はひさめに
ふりしきり
み祖の神の
すさび泣くがに
保田與重郎
昭和45年11月某日
39:無名草子さん
08/11/22 15:04:09
筧利夫みると三島を思い出す
40:無名草子さん
08/11/23 11:06:35
西尾幹二先生の三島由紀夫論
『三島由紀夫の死と私』(PHP刊、上製。1500円)
発売は26日!(都内大型書店は25日に並ぶところも一部あります)。
なお憂国忌会場では見本(限定100冊はサイン入り)を書店に先駆けて発売します。
41:無名草子さん
08/11/25 12:52:59
自衛隊にとって健軍の本義とは、なんだ。
日本を守ること。
日本を守るとはなんだ。
日本を守るとは、天皇を中心とする歴史と文化の伝統を守ることだ。
おまえら聞け。聞け!
静かにせい。静かにせい!
静粛に聞け!
男一匹が命をかけて諸君に訴えているんだぞ!
いいか!
いいか!
それがだ、いま、日本人がだ、ここでもって立ち上がらなければ、自衛隊が立ち上がらなければ、憲法改正というものがないんだよ。
諸君は永久にだね、ただ、アメリカの軍隊になってしまうんだぞ!
三島由紀夫
「演説文」より
42:無名草子さん
08/11/25 12:53:50
諸君は武士だろう。武士ならば、自分を否定する憲法を、どうして守るんだ。
どうして自分の否定する憲法をだね、自らを否定する憲法というものにペコペコするんだ。
これがある限り、諸君というものは、永久に救われんのだぞ。
諸君は永久にだね、今の憲法は政治的謀略で、諸君が合憲だかのごとく装っているが、自衛隊は違憲なんだ。
自衛隊は違憲なんだ。
貴様たちは違憲なんだ。
憲法というものは、ついに自衛隊というものは、憲法を守る軍隊になったのだということに、どうして気がつかんのだ。
どうして、そこのところに気がつかんのだ。
俺は、諸君がそれを完全に断つ日を、待ちに待っていたんだ。
諸君が、そのなかでもただ小さい根性ばっかりに固まって、片足突っ込んで、本当に日本のために立ち上がる時はないんだ。
憲法のために、日本の骨なしにした憲法に従ってきた、ということを知らないんだ。
三島由紀夫
「演説文」より
43:無名草子さん
08/11/25 13:02:26
>>41-42
演説文じゃねーw
檄文って言うんだよ馬鹿
44:無名草子さん
08/11/25 13:02:32
日テレ
45:無名草子さん
08/11/25 13:28:00
>>43
バカはおまえだ。
檄文は別にある。
URLリンク(www.geocities.jp)
檄文 三島由紀夫
URLリンク(www.geocities.jp)
演説文 三島由紀夫
46:無名草子さん
08/12/03 12:34:36
アメリカ人が六代目の鏡獅子を本当に味解しようとする努力、
―と云ふより大国民としての余裕を持つてゐたら戦争は起らなかつた。
文化への不遜な態度こそ、戦争の諸でありませう。
日本の高邁な文化を冒涜する国民は必ず神の怒りにふれるのです。
平岡公威(三島由紀夫)
20歳、三谷信への葉書から
47:無名草子さん
08/12/04 12:03:10
益荒男が たばさむ太刀の 鞘鳴りに
幾とせ耐へて 今日の初霜
散るをいとふ 世にも人にも 先駆けて
散るこそ花と 吹く小夜嵐
三島由紀夫
辞世の句
48:無名草子さん
08/12/04 12:06:16
今日にかけて かねて誓ひし 我が胸の
思ひを知るは 野分のみかは
森田必勝
辞世の句
49:無名草子さん
08/12/06 19:10:31
いい刀があるんですよって刀を抜いてみせ
そのまま突きつけて長官縛り上げたんだよな
こんな事とてもできませんよ普通の人間には
只、自分の主張をわめきたいだけの為に
自分を信用して話を聞いている無警戒の武人に
50:無名草子さん
08/12/07 10:26:18
「被告たちに憎いという気持ちは当時からなかった。
…中略…
国を思い、自衛隊を思い、あれほどのことをやった純粋な国を思う心は、個人としては買ってあげたい。
憎いという気持ちがないのは、純粋な気持ちを持っておられたからと思う。」
市ヶ谷で人質にとられた益田総監の三島裁判での証言から
51:無名草子さん
08/12/07 14:26:38
益田総監は、終戦直後に自決した清家大佐(だったっけ?)の介錯をした人だから、
三島の自決も心情的に理解できるところがあったんだろう。
「三島由紀夫と自衛隊」では、三島がその事件を知った上で益田氏を人質に選んだんじゃないかと
におわせる書き方をしていたけれど、猪瀬直樹の「ペルソナ」なんかでは直前に計画が狂って益田氏を
人質にしたって書いてあるから、三島は益田氏の事件を知らなかったのかも知れないし。
ちなみに確か清家大佐だと思うけど、その人の自決は小林よしのりも書いているけれど、
小林は介錯した益田が益田総監と同一人物とは思ってなかったみたい。
今じゃなくて、戦争論を書いた頃の小林が三島をどんな風に見ていたかはちょっと気になるけれど。
52:無名草子さん
08/12/07 15:08:01
>>50
憎いなんて言えるわけないだろみっともない
世捨人みたいになって
ガンになっても殆ど治療も拒否して死んでいったんだよな益田さん
53:無名草子さん
08/12/07 17:08:10
>>52
それ、石原慎太郎の本にあったガセ情報でしょ。
石原慎太郎の言ってることは話半分に見ないと恥かくよ。
石原の本に書いてあった、川端康成が三島の遺体を見た、っていう話もデタラメだったし。川端康成の手記に、見ていない、とありました。
54:無名草子さん
08/12/13 13:22:25
いかなる盲信にもせよ、原始的信仰にもせよ、戦艦大和は、拠って以て人が死に得るところの一個の古い徳目、一個の偉大な道徳的規範の象徴である。
その滅亡は、一つの信仰の死である。
この死を前に、戦死者たちは生の平等な条件と完全な規範の秩序の中に置かれ、かれらの青春ははからずも「絶対」に直面する。この美しさは否定しえない。
ある世代は別なものの中にこれを求めた。作者の世代は戦争の中にそれを求めただけの相違である。
三島由紀夫
「一読者として(吉田満著 戦艦大和ノ最期)」より
55:無名草子さん
08/12/13 13:23:16
吉田満は、三島由紀夫の「死」を、青春の頂点において「いかに死ぬか」という難問との対決を通してしか、
「いかに生きるか」の課題が許されなかった世代―そのような世代のひとつの死としてとらえ直してみせた。
あの自決がさまざまな意味を「異なる解明の糸口」を示していながら、実のところ戦争に散華した仲間と同じ場所を求めての、死の選択であり、そのような願いによる決断であったという。
これはたんなる世代論だろうか。三島由紀夫の生と文学を、あまりに単純な世代の「死」として単純化してしまうことになるのだろうか。私はそうは思わない。
富岡幸一郎
「仮面の神学」より
56:無名草子さん
08/12/13 13:24:02
保田輿重郎は三島の自刃に際して「三島氏の事件は、近来の大事件といふ以上に、日本の歴史の上で、何百年にわたる大事件となると思った」と記したが、
もし仮にそうだったとしても、それは三島由紀夫という個的な存在の、その生と死の劇的な問いかけゆえにではなく、その「死」が疑いもなく一つの世代の夥しい「顔」と重なり合い、その死のなかに埋没することを懇望したものであったからではないか。
あの自決事件は、決して特異なものでも異常なものでもなく、あえていえば平凡な静謐さのなかにある。
そう思うとき、『豊饒の海』第一巻の冒頭で描かれた「セピア色のインキで印刷」された日露戦没の写真―その風景を想起せずにはいられない。
富岡幸一郎
「仮面の神学」より
57:無名草子さん
08/12/13 13:25:05
…池田浩平や吉田満といった同世代の死者のなかにとらえるとき、戦後作家としての彼(三島)の仮面―
『仮面の告白』についての作家自身の注釈でいえば「肉づきの仮面」―の背後に隠されていた素顔が浮かびあがる。戦後作家としての無数の華麗な「仮面」。
神学者の大木英夫は、三島由紀夫は、その文学は仮面をかぶることによって、「神学問題で灼けただれている現実にも耐える」と正確に指摘した。
《そして死を避ける。しかし、彼の文学は、かえってその仮面が割れて、素顔が出て、神学問題に直面するところがある。そして死が避けられなくなる。
さまざまな奇行と試行の紆余曲折を経て、ついに市ヶ谷への突貫となるのである》(「三島由紀夫における神の死の神学」)
富岡幸一郎
「仮面の神学」より
58:無名草子さん
08/12/13 13:26:07
『仮面の告白』が、『花ざかりの森』と彼の十代の青春の住処がであった「死の領域」への遺書であり、まさに「死を避ける」ための人工の文学的仮面であったとすれば、
最晩年に書かれたエッセイ『太陽と鉄』は、「その仮面が割れて」いくところを詳細に辿ってみせた自己告白の書であった。
これまで何度も論じてきたように、そこに三島における「神学問題」が、すなわちあの「神の死」の問題が露われているのはいうまでもない。
おそらく、日本における神学問題を最もラディカルに現実の光のなかに引きずり出したのが三島由紀夫である。
多くの宗教学者が決して見ようとしなかったものを、語りえなかった根底的な「神」の問題を、三島は自らの生と文学と、そしてあの苛烈な死によって語ってみせた。いや、「神学問題に直面」したとき、「死が避けられなく」なった。
富岡幸一郎
「仮面の神学」より
59:無名草子さん
08/12/14 13:55:31
>>1
ナルシストとして華々しく散ったではないのかい?
60:無名草子さん
08/12/16 11:29:53
ナルシストなんて小さい枠は越えてるよ、三島は。
61:無名草子さん
08/12/16 12:15:40
超オナニストですね、わかります。
62:無名草子さん
08/12/16 13:00:57
明治維新のときは、次々に志士たちが死にましたよね。
あのころの人間は単細胞だから、あるいは貧乏だから、あるいは武士だから、それで死んだんだという考えは、ぼくは嫌いなんです。
どんな時代だって、どんな階級に属していたって、人間は命が惜しいですよ。
それが人間の本来の姿でしょう。命の惜しくない人間がこの世にいるとは、ぼくは思いませんね。
だけど、男にはそこをふりきって、あえて命を捨てる覚悟も必要なんです。
三島由紀夫
「古林尚との対談―最後の言葉」より
63:無名草子さん
08/12/16 13:01:37
あの遺稿集(きけわだつみのこえ)は、もちろんほんとに書かれた手記を編集したものでしょう。
だが、あの時代の青年がいちばん苦しんだのは、あの手記の内容が示しているようなものじゃなくて、ドイツ教養主義と日本との融合だったんですよね。
戦争末期の青年は、東洋と西洋といいますか、日本と西洋の両者の思想的なギャ�
64:無名草子さん
08/12/16 13:02:42
あの遺稿集(きけわだつみのこえ)は、もちろんほんとに書かれた手記を編集したものでしょう。
だが、あの時代の青年がいちばん苦しんだのは、あの手記の内容が示しているようなものじゃなくて、ドイツ教養主義と日本との融合だったんですよね。
戦争末期の青年は、東洋と西洋といいますか、日本と西洋の両者の思想的なギャップに身もだえして悩んだものですよ。
そこを突っきって行ったやつは、単細胞だから突っきったわけじゃない。やっぱり人間の決断だと思います。
それを、あの手記を読むと、決断したやつがバカで、迷っていたやつだけが立派だと書いてある。
そういう考えは、ぼくは許せない。
三島由紀夫
「古林尚との対談―最後の言葉」より
65:無名草子さん
08/12/16 19:29:11
オキシデンタリズムって切ないねえ
66:無名草子さん
08/12/18 14:52:32
三島由紀夫に影響を受けたと指摘されているアーティストの一人にウィリアム・フォーサイス(バレエダンサー、振付家)がいますが、
1991年に初演された彼のバレエ『失われた委曲』(ザ・ロスト・オブ・スモール・ディテール)は、
三島の『奔馬』の次の一節をテーマに美をラディカルに呈示し、構築的であり幾何学的な構造を持っている三島的な神話世界を表しています。
「時の流れは、崇高なものを、なしくずしに、滑稽なものに変えてゆく。何が蝕まれるのだろう。
もしそれが外側から蝕まれてゆくのだとすれば、もともと崇高は外側をおおい、滑稽が内側の核をなしていたのだろうか。
あるいは、崇高がすべてであって、ただ外側に滑稽の塵が降り積ったにすぎぬのだろうか」
フォーサイスは記者の「なぜ三島のテキストを引用したのか」という質問に、
「三島を読んだとき、三島の方が僕のバレエを引用しているのかと思った」と答えたそうです。
67:無名草子さん
08/12/24 15:15:34
『歴史的事実なんだ』三島由紀夫
Q:あの戦争をどう呼ぶのが適切だと思ふか。
三島由紀夫:大東亜戦争でいいぢゃないか。歴史的事実なんだから。
太平洋戦争といふ人もあるが、私はゼッタイとらないね。日本の歴史にとつては大東亜戦争だよ。
戦争の名前くらゐ自分の国がつけたものを使つていいぢゃないか。
Q:あの
68:無名草子さん
08/12/24 15:16:50
『歴史的事実なんだ』三島由紀夫
Q:あの戦争をどう呼ぶのが適切だと思ふか。
三島由紀夫:大東亜戦争でいいぢゃないか。歴史的事実なんだから。
太平洋戦争といふ人もあるが、私はゼッタイとらないね。日本の歴史にとつては大東亜戦争だよ。
戦争の名前くらゐ自分の国がつけたものを使つていいぢゃないか。
Q:あの戦争をどう意味づけているか。
三島由紀夫:あの戦争の評価は、百年たたないとできないね。
いま侵略戦争だつたとかなんとかガチャガチャいつてもどうにもならん。
69:無名草子さん
08/12/24 15:20:51
この間徳川さんと志賀直哉氏の御宅にうかがひ、意外なサッパリしたよい方で、御作の印象と比べふしぎの感さへいたしました。
志賀氏はなにしろ大物にて、我々としても摂るべきところも多くあり、決して摂つてはならぬ所も多々あり、
こちらの気持がしつかりしてゐれバ、決して単なるわがままな白樺式自由主義者ではいらつしやらぬことを思ひました。
今の世の隠者の一模範とさへ思はれますが、仰言ることは半ばは耳傾けてうかがつて頗る有益なことであり、半ばは、我らの学ぶべき考へ方ではないといふことでございました。
平岡公房(三島由紀夫)18歳
清水文雄への書簡から
70:無名草子さん
08/12/25 02:39:00
三島の世代で戦争にいっていない奴が、
割腹自殺をしても意味ないね。
71:無名草子さん
08/12/25 10:06:01
(「共産党」を「民主党」に置き換えると現代にも通用する)
↓
『わたしにとっての共産党』三島由紀夫
日本共産党と自民党は同じだ。どちらも議会主義、憲法擁護を表看板にし、それでは何もできないことを知つてゐる。
理想を放棄してゐるんだ。また大衆社会といふ白痴美の女をねらふ二人の男にたとへられる。
二人ともメガネをかけて一見、紳士風。男性化粧品をふんだんに使つて「結婚しても決して暴力はふるひませんよ」といつてゐる。
ただ、この勝負、共産党のほうが、女の財産をねらひ、骨までしやぶらうとしてゐるだけ有利かもしれない。
72:無名草子さん
09/01/04 10:28:34
…例へば、右翼といふやうな党派性は、あの人(三島由紀夫)の精神には全く関係がないのに、事件がさういふ言葉を誘ふ。
事件が事故並みに物的に見られるから、これに冠せる言葉も物的に扱はれるわけでせう。事件を抽象的事件として感受し直知する事が易しくない事から来てゐる。
いろいろと事件の講釈をするが、実は皆知らず知らずのうちに事件を事故並みに物的に扱つてゐるといふ事があると思ふ。
事件が、わが国の歴史とか伝統とかいふ問題に深く関係してゐる事は言ふまでもないが、それにしたつて、この事件の象徴性とは、この文学者の自分だけが責任を背負ひ込んだ個性的な歴史経験の創り出したものだ。
さうでなければ、どうして確かに他人であり、孤独でもある私を動かす力が、それに備つてゐるだらうか。
小林秀雄
「感想」より
73:無名草子さん
09/01/04 10:29:14
思想の力は、現在あるものを、それが実生活であれ、理論であれ、ともかく現在在るものを超克し、これに離別しようとするところにある。
エンペドクレスは、永年の思索の結果、肉体は滅びても精神は滅びないといふ結論に到達し、噴火口に身を投じた。
狂人の愚行と笑へるほどしつかりした生き物は残念ながら僕等人類の仲間にはゐないのである。
実生活を離れて思想はない。併し、実生活に要求しない様な思想は、動物の頭に宿つてゐるだけである。
小林秀雄
「文学者の思想と実生活」より
74:無名草子さん
09/01/04 16:57:17
東京へ出ました序でに学習院へ立寄り、はじめて焼跡を見てただならぬ感慨がごさいました。
…光にまばゆく立ち働らいてゐる人々が懐しい後輩たちかと映り、近寄つてみると、それが見知らぬ兵隊たちであつた寂しさ。
…中等科の校舎の中には、見知らぬ人々が往来し、事務室もザワザワして、昔のやうに温かく私を迎へてはくれぬやうに思はれました。
「ふるさとは蠅まで人を刺しにけり」それほどでもありませんが、無暗に腹が立つて、何ものへともしれず憤りを抱きながら門を出ました。
ふしぎな私の冷酷。昔、共に学んだ友人たちには、具体的に逢つてどうといふ感激もないのに、ただ会はずにゐると漠たる悲しみと孤独の感じに苛まれるのを如何ともなす術がございません。
平岡公威(三島由紀夫)20歳
昭和20年7月3日、清水文雄への書簡から
75:無名草子さん
09/01/04 16:58:09
…新宿駅で私は汚ない作業服とキャハンを穿いた後輩を発見しました。
彼は私が彼の先輩であることもしらず、私を不思議さうに見てゐましたが、その目は学習院の学生によくある澄んだ、のんびりした目付で、口は少しポカンと開いてゐました。
…彼は、そこで我勝ちに下りた乗客たちとは似てもつかない、実にオットリした、少したよりない、少し眠さうな歩き方で、階段の方へゆつくり歩いて行きました。
何故かそれを見ると、私はふと涙がこぼれさうになりました。
ああした人種、ああした歩き方、あれがいつまでこの世に存続して行けるであらうか。
私たちもその一員であつた、閑雅なあまり頭のよくない、努力を知らない、明るい、呑気な、どこともしれず、生活からにじみ出た気品のそなはつた学習院の学生たち、
あの制服、あの挙止、そしてあの歩き方、そのすべてが象徴してゐたある美しいもの、それ自身頽落を予感されてゐたもの(私の十数年の学習院生活はその予感のなかにのみ過ごされました。)が、
今や鶯色の汚れた作業服を刑罰のやうに着せられ、靴は埃にまみれ、トボトボと不安気に歩いてゆくのを見て、私が目頭を熱くしたのも道理でございます。
平岡公威(三島由紀夫)20歳
昭和20年7月3日、清水文雄への書簡から
76:無名草子さん
09/01/04 16:59:24
かうした終末感を私は、徒らな感傷や、信念の不足からして感ずるのではございません。
ある漠たる直感、夢想そのもののなかに胚胎する覚醒の危険、凡て夢見るが故に覚めねばならない運命を感ずるのでございます。
現実に立脚した精神がわれわれの夢想の精神より更に弱体なものとみえる今日、われわれの夢想も亦凋落の決心を必要とします。
昼を咲きつづける昼顔の仄かな花弁は、昼の烈しい光のために日々に荒され傷つけられます。何ものも神の夢想に耐へるほど強靭であることは出来ません。
しかし人の夢想の極限に耐へえた人は、その烈しさ極まる目覚めの失墜にも耐へうるであらうと思ひます。
ただ朝をのみ時めいた朝顔とはちがって、あの長い烈しい昼間をよく耐へた昼顔の夢想は、その後に来る長い夜の烈しさにも耐へるでありませう。
私共は今日ほど私共の生の強さと死の強さを感じることはございません。
平岡公威(三島由紀夫)20歳
昭和20年7月3日、清水文雄への書簡から
77:無名草子さん
09/01/04 17:00:27
私共は遺書を書くといふやうな簡単な心境ではなく、私たちの文学の力が、現在の刻々に、(たとへそれが喪失の意味にせよ)、ある強烈な意味を与へつづけることを信じて仕事をしてまゐりたいと思ひます。
その意味が刻みつけられた私共の時間は、永遠に去ってかへりませんが、地上に建てた摩天の記念碑よりも、海底に深く沈めた一枚の碑の方が、何千万年後の人々の目には触れやすいものであることを信じます。
私共が一度持つた時間に与へた文学の意味が、それが過去に組入れられた瞬間から、絶対不可侵の不滅性をもつものであると思はれます。
項日、生じつかな名声は邪魔であるが、真の名声はますます必要であることを感じて来ました。文学作品を本文とするなら、名声はその註釈、脚註に相当します。
本文が死語に化した場合、この難解なロゼッタ・ストーンを解読しうるものは、たえず更新される註釈のみでございませう。
平岡公威(三島由紀夫)20歳
昭和20年7月3日、清水文雄への書簡から
78:無名草子さん
09/01/04 17:04:49
…あれより二週間病床に臥り、つい御返事がおくれしままにかくの如き事態となりました。
玉音の放送に感涙を催ほし、わが文学史の伝統護持の使命こそ我らに与へられたる使命なることを確信しました。
気高く、美しく、優美に生き且つ書くことこそ神意であります。
ただ黙して行ずるのみ。今後の重且つ大なる時代のため、御奮闘切に祈上げます。
平岡公威(三島由紀夫)20歳
昭和20年8月16日付、清水文雄への葉書から
79:無名草子さん
09/01/07 11:06:59
それはさうと、昨今の政治情勢は、小生がもし二十五歳であつて、政治的関心があつたら、気が狂ふだらう、と思はれます。
偽善、欺瞞の甚だしきもの。そしてこの見かけの平和の裡に、癌症状は着々進行し、失ったら二度と取り返しのつかぬ「日本」は、無視され軽んぜられ、蹂躙され、一日一日影が薄くなつてゆきます。
戦後の「日本」が、小生には、可哀想な若い未亡人のやうに思はれてゐました。
良人といふ権威に去られ、よるべなく身をひそめて生きてゐる未亡人のやうに。
三島由紀夫
清水文雄への書簡から
80:無名草子さん
09/01/07 11:07:33
下品な比喩ですが、彼女はまだ若かつたから、日本の男が誰か一人立上れば、彼女をもう一度女にしてやることができたのでした。
しかし、口さきばかり巧い、彼女の財産を狙ふ男ばかり周囲にあらはれ、つひに誰一人、彼女を再び女にしてやる男が現はれることなく、彼女は年を取つてゆきます。
彼女が老いてゆく、衰へてゆく、皺だらけになつてゆく、私にはとてもそれが見てゐられません。
三島由紀夫
清水文雄への書簡から
81:無名草子さん
09/01/07 11:08:09
このごろ外人に会ふたびに、すぐ「日本はどうなつて行くのだ?日本はなくなつてしまふではないか」と心配さうに訊かれます。
日本人から同じことを訊かれたことはたえてありません。「これでいいぢゃないか、結構ぢゃないか、角を立てずに、まあまあ」さういふのが利口な大人のやることで、日本中が利口な大人になつてしまひました。
スウェーデンはロシアに敗れて百五十年、つひに国民精神を回復することなく、いやらしい、富んだ、文化的創造力の皆無な、偽善の国になりました。
この間もベトナム残虐行為査問会(ストックホルム)で、繃帯をした汚ないベトナム農民が証言台に立ち、犬をつれた、いい洋服の中年のスウェーデン人たちがこれを傾聴してゐるのに、違和感を感じる、と書いてゐる人がゐましたが、
日本が歩みつつある道は、正に、「犬を連れた、いい洋服の中年男で、外国の反戦運動に手を貸す『良心的』な男」の道です。
三島由紀夫
清水文雄への書簡から
82:無名草子さん
09/01/11 16:32:11
川端康成氏を囲んで (三島由紀夫 伊藤整)
川端康成のノーベル文学賞受賞が決定した翌日、1968年10月18日に放送されたもの
URLリンク(www.nicovideo.jp)
URLリンク(www.nicovideo.jp)
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83:無名草子さん
09/01/12 11:24:03
…タクシーに乗っていたとき、ラジオで無着成恭が子供の質問に答えていたんです。
子供が「先生、スサノオノミコトとか、アマテラスオオミカミの話は本当にあったんですか」ときくと、
その無着が「チミ、それね、ぼくこれからハナスしるけどね。あのスンワ(神話)というのは、ほんとうのハナスと違うの。
…アマテラスオオミカミ(天照大神)ツウ人がいだの。それがらスサノオノミコト、ツウ人がいだの。これが悪い人でね、何したがどいうど、
まんず、田んぼ荒らして米とれなぐしたの。…それがら機織りをこわして……」(笑)
これじゃ、ぼくは子供が可哀想になっちゃった。(笑)唯物史観の、つまり、やり方を教えて、まず基本的な生産関係の生産手段の破壊とか、そういうところから教えていって、それがいかにいけないことかと。
そして神話的なことを全部リアリスティックに教えている。
三島由紀夫
対談「天に代わりて」より
84:無名草子さん
09/01/12 11:24:28
子供の雑誌なんかをみていますと、手塚治虫などがやはり神話を書いている。
たとえば神武天皇など他民族を侵略した蛮族の酋長にしている。
日本に古代奴隷制なんてないんですが、奴隷たちが苦しめられて鞭で打たれて、そこで金の鳥が弓の上にとまったりして、それで人民を威嚇して……と、全部そういう話です。
…小学生や子供が読むのは、大学生が読むのとは違うでしょう。
これがなんでもないような女の子向きのマンガの中に、支配階級を倒せとか、資本主義はいかんとか、それがたくみにしみ込むように織りこんである。
大人が神経をつかっても、いつのまにか侵入してきているんですよ。
三島由紀夫
対談「天に代わりて」より
85:無名草子さん
09/01/12 11:30:34
…防衛大学の学生なんかに聞きますと、われわれの軍隊はシビリアン・コントロールの軍隊であると。だから政権がかわれば、それに従うのは当然だと。
日本に共産政権ができれば、われわれは共産軍になるのは当然だという考え方をするのが、かなり多いらしいですね。
そういう考え方は間違いだということを世間はこわいから教える自信がないんです。
これは軍隊の重大な問題で、自衛隊というのは、もともとイデオロギッシュな軍隊であるということを、もっと周知徹底させないと……。
それを世間でたたき、国会でたたき、ぼくにいわせると、イデオロギー的な軍隊であるけれども、名誉の中心はやはり天皇であるというところで、すこし極端ですが、そこまでいかなければだめだと思うんです。
三島由紀夫
対談「天に代わりて」より
86:無名草子さん
09/01/16 15:13:22
川端氏は僕の吹く勝手な熱をしじゆう喜んでニコニコしてきいてくれた。おしまひには僕が悲しくなつて了つた。
僕の生意気な友人たちだつたら、フフンと鼻の先であしらひさうなこんなつまらない笑ひ話や、ユーモアのない又聞き話が、どういふ経緯で川端氏の口に微笑を誘ふのだらう。
しかしかうして一人で喋つてゐるうちに、だんだん僕が感知しだしたのは僕の孤独ではなくて、むしろ川端氏の孤独なのだつた。
ひろい家の中には夕闇がよどんで来た。ひろい家のさみしさが身にしみる時刻だ。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和22年の会計日記から
87:無名草子さん
09/01/16 15:14:02
川端氏とのさびしい夕食、川端氏のかへつてゆく一人の書斎、僕は僕の行方にあるものをまざまざと見る気がした。
名声とは何だらう。このひろい家によどんでくるどうにも逃げようもない夜のことなのか?否しかしなほ僕は名声を愛してゐる。
なぜなら名声でやつとたへられるものが僕の中にあるからだ。名声とは必要不可欠な人間にだけ来るものだ。
さうして名声があるために、ある人の慰めになる不幸があるものだ。こんな孤独の実質を名声は少しもかへえないが、名前と形容詞だけは支へてくれる。
文学の仕事、それが形容詞の創造であるとするなら、かうして形容詞の冷酷で花やかな報いをうけるのは当然だ。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和22年の会計日記から
88:無名草子さん
09/01/16 16:56:42
偶然邦子にめぐりあつた。試験がすんだので友達をたづね、留守だつたので、二時にかへるといふので、近くをぶらぶらあてどもなく歩いてゐた時、よびとめられた。
彼女は前より若く却つて娘らしくなつてゐた。口のはじにはおしろいでもかくれない薄いヒゲがやはりあつた。
…彼女は前のやうな重つくるしい丁寧すぎる言葉遣いはなくなつてゐた。
(中略)
「さよなら…お大事に」……云ひちがへて「お元気で」
「ええ」彼女は背を向けた。
…その日一日僕の胸はどこかで刺されつゞけてゐるやうだつた。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
89:無名草子さん
09/01/16 16:57:19
前日まで何故といふことなく僕は、「ゲエテとの対話」のなかの、彼が恋人とめぐりあふ夜の町の件を何度もよんでゐたのだつた。それは予感だ。
世の中にはまだふしぎがある。
そしてこの偶然の出会は今度の小説を書けといふ暗示なのか?書くなといふ暗示なのか?
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
90:無名草子さん
09/01/16 16:58:20
「仮面の告白」に書かれましたことは、モデルの修正、二人の人物の一人物への融合、などを除きましては、凡て私自身の体験から出た事実の縷述でございます。
…私は昨年初夏にエリスの性心理学のSexual inversion in ManやLove and Painを読みまして、
そこに掲載された事例が悉く知識階級のものである点で、(甚だ滑稽なことですが)、自尊心の満足と告白の勇気を得ました。
…御暇な折にでも御高覧たまはり、何か御研究上の御役にでも立つことがございましたら、望外の倖せでございます。
三島由紀夫
昭和24年、式場隆三郎への書簡から
91:無名草子さん
09/01/16 16:58:51
私は無益で精巧な一個の逆説だ。
この小説はその生理学的証明である。私は詩人だと自分を考へるが、もしかすると私は詩そのものなのかもしれない。
詩そのものは人類の恥部に他ならないかもしれないから。
三島由紀夫
「仮面の告白ノート」より
92:無名草子さん
09/01/16 21:04:13
チャカは無用だ!刀持って来い!
93:無名草子さん
09/01/17 07:14:22
もういい加減古文書館に送ろう。
94:無名草子さん
09/01/17 10:44:54
この本は私が今までそこに住んでゐた死の領域へ遺さうとする遺書だ。
この本を書くことは私にとつての裏返しの自殺だ。
飛込自殺を映画にとつてフィルムを逆にまはすと、猛烈な速度で谷底から崖の上へ自殺者が飛び上つて生き返る。
この本を書くことによつて私が試みたのは、さういふ生の回復術である。
三島由紀夫
「仮面の告白ノート」より
95:無名草子さん
09/01/17 10:45:24
僕は婚約した彼女を一度誘い出して話したいという計画を抱いてゐた。
ところが突然別の僕がそれを気狂い沙汰だと叫び出す。向ふの家の父は吃驚して怒り出すだらう。かりにも婚約した以上、ひとのものをと!
ところが「冷静な」僕がじつくりと別の僕をなだめてかゝる。一度位ゐそれも昼内一緒に出かけたつて何の悪いことがあらう。
まして昔は仲の好すぎた友達だつたのだもの。向ふの家人も平気で彼女をだしてやるだらう。お前のやらうとしてゐることはひどく常識的なことにすぎないのだと。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
96:無名草子さん
09/01/17 10:45:59
彼女はレインコートさへ脱ぎたがらなかつた。まるでそれが下着ででもあるかのやうに。だから僕の彼女の抱心地はゴワゴワした感触しか残らない。
それのみか彼女は、唇を吸ふにまかせて自ら吸おうとしなかった。
また抱かれるにまかせて抱かうとしなかつた。彼女はお人形のやうに強ばつてゐた。そして戦争中の人目のうるさゝから殆どお化粧をしてゐなかつた。
そしていさゝか子供つぽすぎる横顔をますます子供つぽく見せてゐた。
―ところが彼女との間を第三者が隔てゝから彼女は急に美しくなり出した。
僕は彼女を真夏の薄着で、いささか厚化粧で抱きえなかつたことを後悔した。
彼女は今宵は頗る美しくみえた。彼女の白いレエスに包まれた胸のあたりに花房のやうに揺れるものを今日ほど烈しく僕は欲したことがなかつた。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
97:無名草子さん
09/01/17 17:47:16
>>35
「Forbidden Colours」
The wounds on your hands never seem to heal
I thought all I needed was to believe
Here am I, a life time away from you
The blood of Christ, or the beat of my heart
My love wears forbidden colours
My life believes
Senseless years thunder by
Millions are willing to give their lives for you
Does nothing live on?
Learning to cope with feelings aroused in me
My hands in the soil, buried inside of myself
My love wears forbidden colors
Mylife believes (in you once again)
I'll go walking in circles
While doubting the very around beneath me
Trying to show unquestioning faith in everything
Here am I, a life time away from you
The blood of Christ or, a change of my heart
My love wears forbidden colours
My life believes (in you once again)
98:無名草子さん
09/01/17 17:49:24
「禁じられた色彩」
あなたが手にした傷は けっして癒えることはない
信じてさえいれば報われると 僕は思っていた
あなたとの間には 越えられない 距たりがある
信ずるべきか 心の衝動に身を委ねるべきか
あなたへの愛は 禁じられた色彩を装う
僕は あなたを選んでしまう
無意味な歳月があっという間に過ぎさり
誰もが喜んで あなたに命を捧げるのに
それでも 何も残らないのか?
自分の中にわきおこる 心の衝動を抑えようと
僕は心の奥深くに 自分の気持ちを沈める
あなたへの愛は 禁じられた色彩を装う
けれども僕はまた あなたを選んでしまう
自分の拠り所すら たしかじゃないのに
一心不乱に 信じこもうとしながら
答えのない問いを 繰り返す自分がいる
あなたとの間に 越えられない距たりを感じる 僕がいる
信ずるべきか 心変わりを待つべきか
あなたへの愛は 禁じられた色彩を装う
けれども僕は あなたを選んでしまう
あなたへの愛は 禁じられた色彩を装う
けれども僕はまた あなたを選んでしまう
99:無名草子さん
09/01/18 11:41:37
前略
「蓮田善明とその死」感激と興奮を以て読み了へました。毎月、これを拝読するたびに魂を振起されるやうな気がいたしました。
この御作品のおかげで、戦後二十数年を隔てて、蓮田氏と小生との結縁が確められ固められた気がいたしました。
御文章を通じて蓮田氏の声が小生に語りかけて来ました。
蓮田氏と同年にいたり、なおべんべんと生きてゐるのが恥ずかしくなりました。
一体、小生の忘恩は、数十年後に我身に罪を報いて来るやうであります。
今では小生は、嘘もかくしもなく、蓮田氏の立派な最期を羨むほかに、なす術を知りません。
三島由紀夫
昭和42年
小高根二郎への書簡から
100:無名草子さん
09/01/18 11:45:43
私はまづ氏(蓮田善明)が何に対してあんなに怒つてゐたかがわかつてきた。
あれは日本の知識人に対する怒りだつた。最大の「内部の敵」に対する怒りだつた。
戦時中も現在も日本近代知識人の性格がほとんど不変なのは愕くべきことであり、
その怯懦、その冷笑、その客観主義、その根なし草的な共通心情、その不誠実、その事大主義、その抵抗の身ぶり、その独善、その非行動性、その多弁、その食言、
……それらが戦時における偽善に修飾されたとき、どのような腐敗を放ち、どのように文化の本質を毒したか、
蓮田氏はつぶさに見て、自分の少年のやうな非妥協のやさしさがとらへた文化のために、憤りにかられてゐたのである。
三島由紀夫
「蓮田善明とその死」序文より
101:無名草子さん
09/01/21 12:46:14
人々は又しても責めるだらう、僕の作品には時代の苛烈さがないと。
しかし評家はもう少し炯眼であるべきだ。全く平和な時代に仮託したこの物語で、僕はまざまざと戦争と乱世の心理をゑがくことに芸術的な喜びを感じてゐる。
戦争時と戦後の心理のそのすべての比喩をよむ人はこゝによむ筈だ。芸術とはさういふものだからだ。
―昔ばく徒は外出するときは必ず新らしい褌をはいて出た。さういふ生き方は実に我々には親しいものになつてゐたのである。
それは近代文学特有の不安と衰弱の心理とは別の、もつと張のある活々した心理だつた。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
102:無名草子さん
09/01/21 12:46:52
僕が心中物をデカダンスとしてでなく書かうとする気持にはこの根拠がある。
元禄期の近松西鶴の溌剌たる悲劇の精神(殊に前者の「堀河波鼓」後者の「好色一代女」の幻想)に僕は最も大きな共鳴を感じて書いた。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
103:無名草子さん
09/01/21 12:47:38
我々がある思ひ出から遁れようとすると、その思ひ出自身が我々をはなれて激しく生きようと試み出すのを見ることがある。
このやうな時我々の生きる意味はいやでも思ひ出のそれと一致して了ふ。そして我々の死の意味も。
僕の作品は、それを成立せしめた凡ての条件への仮借なき復讐である。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
104:無名草子さん
09/01/21 12:48:16
堀辰雄は僕にシンプルになれと云つた。
しかしシンプルにならうとしてそれに成功するなんて、さうおいそれと出来るものぢゃない。
第一氏が例に引いた立原道造も僕はあんまり尊敬してゐない、ましてや氏自身の素寒貧な小説―すぐ微熱が出たり、切なくなつたりする小説を書きたいと思はない。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
105:無名草子さん
09/01/22 17:11:08
作中の架空の事実と作者とどちらが不確定か?俗人は前者がさうだと考える。
そして目の前にある確実な「架空」はぼつぽり出して、血眼で不確かな、不必要な作者自身を作中から探り出さうとする。
この眼差が一部の批評家にも具つてゐることは驚異に値する事実だ。
三島由紀夫
21歳のノートから
106:無名草子さん
09/01/22 17:12:29
僕は詩人だ。一皮剥けば俗人だ。
もう一皮剥けば詩人だ。もう一皮剥けば俗人だ。
もう一皮剥けば詩人だ。ぼくはどこまで剥いても芯のない玉葱だ。
三島由紀夫
21歳のノートから
107:無名草子さん
09/01/22 17:14:21
私は一寸も苦心しないで文壇に出たとか、処女作を書いて忽ち認められたとか自慢げに書いてゐる作家をみると気の毒になる。
この低俗な日本の文壇が、いさゝかの抵抗も感ぜずに、みとめ且つとりあげる作品の価値など知れてゐるのだ。
こんなことをいふ作者に限つて真の独創性をこれつぽちも持つてゐない。
彼等は読者に抵抗しない。反抗しない。ジイドが十年間みとめられなかつた事実をもう少し考へてみる要はないか。
三島由紀夫
21歳のノートから
108:無名草子さん
09/01/22 17:16:22
新聞記事で「火の会」発足の報をきく。
馬鹿なことだ。その無理論性の主張もフランスでこそ意味があつた。
そもそも日本に文学上の主張の化物、個性そのものが独創的な主義になつたやうな偉大な文学者が出たか?
骨の髄までのリアリスト、ロマンチスト、自然主義者が出たか?主義とドグマで天地を一色(そう色)にぬりつぶすやうな作品が出たか?
さういふものゝ一流がはびこつて息が出来なくなつたフランスでこそ意味のあつた運動だ。
日本でこんなことをはじめるのは、風車の化物にとびかゝるドン・キホーテよりばからしい。
彼等は浮草中の浮草たらんことを企てるだらう。まことに結構な御志しだ。
しかしたゞフランス帰りが寄り集まつて「パリなつかし」の仁輪加芝居をはじめようとするなら御勝手だ。
彼等のことだから気の利いた芝居はみせるだらう。尤も代は見てのお戻りだ。
三島由紀夫
21歳のノートから
109:無名草子さん
09/01/23 12:02:05
川端氏の文学は近代小説の烙印を押された宿命的な古典の書である。
川端康成論(試論第一)
一、川端氏は抒情や感覚といふ低次な概念で総括さるべき作家ならず。
一、分析力と綜合力との矛盾せる競合、対象への背反
対象の前に行はれる作者自身の旋回、小説の可能性を最も豊かに感じさせると共に、小説の末期感をつきつめた仕事。
最後の仕事、天地創造(トルストイ*)の深い疲労に溢れた安息日(康成)
日常性の求める永遠の日曜日
*悪夢のやうな近代文学
一、川端氏とその作品の基底たる日常性の問題(旅― 孤児―)
日常性の抑圧と揚棄
川端康成=『生への嫉妬』
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
110:無名草子さん
09/01/23 12:02:45
正義と誠実によつて飾られる文人の一生と、背信行為によつて飾られる文人の一生がある。
川端氏は明らかに前者だが氏の正義的行為にはどこか不徳と背信の匂ひがしはすまいか。
川端氏のみる女は常に第三者に侵され第三者のために孕む。
これを孕ます人物に作者がかさなつてくると、作品の印象が単純化すると共に作者自身の男の影は稀薄になる。
(夕映少女の中年女)
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
111:無名草子さん
09/01/23 12:03:29
私にとつて技法的に影響をうける作家は長つづきせぬ。
精神的に影響をうける作家は長つづきする。
川端さんとリラダンとが私にとつてそれだ。
しかもリラダンは殆んどよんでゐない。よんでなくともわかるからだ。川端さんのも沢山よまないやうに気をつけてゐる。「女の手」「過去」
人間愛がかういふ屈折をとらざるをえぬ文学。それは愛情のつきつめた一極点。
『愛情の北極』
・神への不信と虚妄
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
112:無名草子さん
09/01/23 12:04:11
・ある川端氏と近しい人が
「それは川端さんは気附かれなかつたらしい」といふのをきいた時、私はわが耳を疑つた。
私には川端氏が気がつかぬ事柄なんてこの世にあると思へなかつたのだ。
川端康成―(芸術的)個性と自我の完璧な分離
川端氏の作品に僕は小説の極めて豊かな眼界を感じる。
牧野信一、稲垣足穂の作品に僕は小説のきはめて窮屈な眼界を感じる。
川端氏の眼界の豊けさは、薄や虫類や小魚をよせあつめる波打際のゆたけさだ。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
113:アトポス
09/01/25 21:12:09
ごめんなさい
114:無名草子さん
09/01/25 22:44:50
三島君はこの最初の長篇小説で、恋人が結婚のその日に心中するといふ心理に陥り、その作品を「盗賊」と名づけた。
自殺する二人が盗み去つたものはなんであるか。すべて架空であり、あるひはすべて真実であらう。
私は三島君の早成の才華が眩しくもあり、痛ましくもある。
三島君の新しさは容易には理解されない。三島君自身にも容易には理解しにくいのかもしれぬ。
三島君は自分の作品によつてなんの傷も負はないかのやうに見る人もあらう。
しかし三島君の数々の深い傷から作品が出てゐると見る人もあらう。
この冷たさうな毒は決して人に飲ませるものではないやうな強さもある。
この脆そうな造花は生花の髄を編み合せたやうな生々しさもある。
川端康成
「盗賊 序文」より
115:無名草子さん
09/02/01 12:22:29
僕とラディゲのちがひは
(一)ラディゲはノルマルな心理の展開そのものゝ中にロマンをみるロマンティストだ。
僕は現実に絶対にありえないロマンチックな心理をあくまでリアルに具現しようとするレアリストだ。*
共に言葉の一層深い意味において。
*初期における谷崎潤一郎との比較。
(ニ)ラディゲが作品の主題とした倫理はカソリシズムの歴史的伝統であると共にフランス近代文学のテクニックの一種だ。
プランセス・ド・クレーヴの倫理とはやゝ性質を異にする。―しかるに僕は日本の歴史的文学的伝統の命ずる処に従ひ、倫理的契機を無視する。
倫理は日本文学史に於ては小さな役割を演じて来たに過ぎない。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
116:無名草子さん
09/02/01 12:31:28
ラディゲを殺したのは彼の健康さだ。僕を長生きさせるのは僕の病的な性格だ。
僕はかくてあの烈しい「人間の第一義」からのがれるのだ。
ラディゲ*には模索がない。僕は模索をたよりに小説を書く。
*夭折した。僕は長生きする。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
117:無名草子さん
09/02/01 12:38:41
ラディゲは二度と書き直しのできぬ手習草紙を書いたのだった。
彼は異常な心理を書かないと公言した。しかし彼の二つの小説は共に有夫の婦との恋をゑがいてゐる。
しかもそれは単なる偶然ではなく、その恋のTypus にはぬきさしならぬ必然性がある。
この必然性なるものが既に異常なのではなからうか。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
118:無名草子さん
09/02/01 15:03:51
共産党には「時代意識」がない。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年のノートから
119:無名草子さん
09/02/07 14:54:15
首をはねる人がミスをして相当苦悶したようだ
120:無名草子さん
09/02/09 01:03:18
俺戦争してねーし
121:無名草子さん
09/02/09 05:25:26
URLリンク(imepita.jp)
122:無名草子さん
09/02/09 13:17:35
「ダッダーン!ボヨヨンボヨヨン」
123:無名草子さん
09/02/12 11:39:38
拝啓 永らく御無沙汰しておりますが、その後お変りもいらつしやいませぬか。
…お国は今までとは異なつた種類の、想像も及ばなかつた危難に直面し、我々の戦ひは今すぐ始められねばなりませぬ。
日本人がわれとわが手で、その高貴と美とを、かくまで無惨に踏み躙つて了つたことは、我々共々、実に遺憾に存じますが、
文学とは北極星の如く、秩序と道義をその本質とし前提とする神のみ業であります故に、この神に、わき目もふらず仕へることにより、我々の戦ひは必ずや勝利を得ることと確信いたします。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年9月3日付の葉書から
124:無名草子さん
09/02/14 11:00:12
三島さんは、少年の様に一途に週二回の自宅でのトレーニングにひたむきな努力を傾け、遅れてきた青春とでも云うのでしょうか、日一日と発達してゆく自分の肉体の充実感を素直に喜び、嬉々としていました。
ある時、古代ギリシャの神殿や彫刻の写真を私に見せながら「この端正で均整のとれた建築や芸術、彼等はまず眼に見える形を信じたんだ。
しかし形に留まらないで、そこから雄々しく羽ばたいて現代文明の源である古代ギリシャ世界を創造したのだ」と熱っぽく語られましたが、この時の三島さんの言葉は、私の胸底に深く蔵されております。
玉利齋
「三島由紀夫さんの想い出」より
125:無名草子さん
09/02/14 11:00:44
人間が、現世に生きるのには肉体が不可欠です。しかし、その肉体は有限で衰えやすく不安定な存在です。
であるから一度だけの人生を創造的に生きる為には肉体は健康で活力に満ちている方がよいのは自明の理です。
三島さんは精神的には類い稀な芸術家の感性を天分として有していたと思いますが、如何せん天二物を与えず、肉体的には頭痛や胃弱や不眠に三十歳近くまで苛まれていたことはまぎれもない事実です。
三島さんのボディビル実践の動機は何と云っても第一に病弱の克服にあります。
肉体と精神は相互に影響し合いながら人格を形成してゆくものですが、三島さんは肉体を確固たるものにすることによって、より自由に精神を飛翔させたかったのではないかと思います。
玉利齋
「三島由紀夫さんの想い出」より
126:無名草子さん
09/02/14 11:01:22
精神と肉体、思想と行動、理想と現実、美と力は、ともすれば二律背反性を帯びがちですが、両方ともに求めなければならないのが人間の永遠の課題です。
三島さんは、現実の葛藤や矛盾を冷厳に直視して多くの芸術作品を残しましたが、その終着点は、見る人から行動する人として、現実の中に身を投し、自らが求める美に魅入られる様に無限の深淵へと歩んでゆかれたのだと私は信じています。
玉利齋
「三島由紀夫さんの想い出」より
127:無名草子さん
09/02/18 22:59:23
私は坂口安吾氏に、たうとう一度もお目にかかる機会を得なかつたが、その仕事にはいつも敬愛の念を寄せてゐた。
戦後の一時期に在つて、混乱を以て混乱を表現するといふ方法を、氏は作品の上にも、生き方の上にも貫ぬいた。
氏はニセモノの静安に断じて欺かれなかつた。言葉の真の意味においてイローニッシュな作家だつた。
氏が時代との間に結んだ関係は冷徹なものであつて、ジャーナリズムにおける氏の一時期の狂熱的人気などに目をおほはれて、この点を見のがしてはならない。
些事にわたるが、氏の「風博士」その他におけるポオのファルスに対する親近は、私にもひそかな同好者の喜びを与へた。
ポオのファルスの理解者は今もなほ氏を措いて他にない。かつて「十三時」を訳した鴎外を除いては。
三島由紀夫
「私の敬愛する作家」より
128:無名草子さん
09/02/18 23:00:03
太宰治がもてはやされて、坂口安吾が忘れられるとは、石が浮んで、木の葉が沈むやうなものだ。
坂口安吾は、何もかも洞察してゐた。底の底まで見透かしてゐたから、明るくて、決してメソメソせず、生活は生活で、立派に狂的だつた。
坂口安吾の文学を読むと、私はいつもトンネルを感じる。なぜだらう。
余計なものがなく、ガランとしてゐて、空つ風が吹きとほつて、しかもそれが一方から一方への単純な通路であることは明白で、向う側には、夢のやうに明るい丸い遠景の光りが浮かんでゐる。
この人は、未来を怖れもせず、愛しもしなかつた。未来まで、この人はトンネルのやうな体ごと、スポンと抜けてゐたからだ。
太宰が甘口の酒とすれば、坂口はジンだ。ウォッカだ。純粋なアルコホル分はこちらのはうにあるのである。
三島由紀夫
「坂口安吾全集 推薦文」より
129:無名草子さん
09/02/18 23:00:34
梶井基次郎の作品では、「城のある町にて」が一番好きだが、この蒼穹」も、捨て難い小品である。小説ではなくて、一篇の散文詩であり、今日ではさう思つて読んだはうがいい。
この作者が、死の直前、本当の小説家にならうとして書いた「のんきな患者」をほめる人もあるが、私には、氏は永久に小説家にならうなどと思はなかつたはうがよかつたと思はれる。
この人は小説家になれるやうな下司な人種ではなかつたのである。
「蒼穹」は、青春の憂鬱の何といふ明晰な知的表出であらう。何といふ清潔さ、何といふ的確さであらう。
白昼の只中に闇を見るその感覚は、少しも病的なものではなく、明晰さのきはまつた目が、当然見るべきものを見てゐるのである。
健康な体で精神の病的な作家もゐれば、梶井基次郎のやうに病気でゐながら精神が健康で力強い作家もゐる。
同じ病気でも、梶井には堀辰雄にない雄々しさと力のあるところが好きである。
三島由紀夫
「捨て難い小品」より
130:無名草子さん
09/02/27 14:12:48
「友達」は、安部公房氏の傑作である。
この戯曲は、何といふ完全な布置、自然な呼吸、みごとなダイヤローグ、何といふ恐怖に充ちたユーモア、微笑にあふれた残酷さを持つてゐることだらう。
一つの主題の提示が、坂をころがる雪の玉のやうに累積して、のつぴきならない結末へ向つてゆく姿は、古典悲劇を思はせるが、
さういふ戯曲の形式上のきびしさを、氏は何と余裕を持つて、酒々落々と、観客の鼻面を引きずり廻しながら、自ら楽しんでゐることだらう。
まことに羨望に堪へぬ作品である。
三島由紀夫
「安部公房『友達』について」より
131:無名草子さん
09/02/28 10:09:00
○●○創作文芸板競作祭・私小説祭り2009○●○
私小説の競作祭です。奮ってご参加ください。
テーマ…… 私小説スタイルで書いてください。
会 場…… アリの穴 URLリンク(ana.vis.ne.jp)
枚 数…… アリ表示で10枚~50枚(厳守)
日 程…… 投稿期間 2009年 04/02(木)~04/05(日) 23:59まで
感想期間 一作目投稿~04/09(木) 21:59まで
合評期間(予定)04/06(月)~04/08(水)の 午後八時より
・作者さんが直接に経験したことがらを素材にして書いてください。三人称でも構いません。
・作者さんは感想期間中一人一票、自作の感想欄に他の作品の中からベストスリーを選んで投票してください。
・参加者一人につき一作です。(複数投稿不可)
・記名投稿は参考作とします(他作品への記名感想もNG。ただし作品を投稿していない感想専門の参加者の方は記名感想OK)。
・再投稿は不可です。
・作者さんは「内容説明の欄」に「私小説祭り」と記入ください。
・読者賞;アリ表示で最高得点となった作品が優勝。
・作者賞;作者投票(1位―3点、2位―2点、3位―1点)にて選出。
・参加者の方はできるだけ他作品に感想を入れてください。
・自分で自分の作品にポイントを入れるのは禁止とします。
・盗作は禁止です。
・感想期間が終わるまでは参加作品をごはんなど他サイトに晒さないでください。
132:無名草子さん
09/03/03 10:59:49
>>130の訂正
酒々落々→洒々落々
133:無名草子さん
09/03/17 11:41:57
あーあ、今回の独立宣言を作るという話は、どうも企画倒れに終わりそうだな。
そう思いながら、新潮学芸賞を受賞した徳岡孝夫さんの「五衰の人―三島由紀夫私記」を読んでいたら、なんと、びったりの文章が出てきた。
四半世紀も前、三島由紀夫が自決したときの「檄」の一部にこういうところがある。
「われわれは戦後の日本が経済的繁栄にうつつを抜かし、国の大本を忘れ、国民精神を失ひ、本を正さずして末に走り、その場しのぎと偽善に陥り、自ら魂の空白状態へ落ち込んでゆくのを見た。
政治は矛盾の糊塗、自己の保身、権力欲、偽善にのみささがられ、国家百年の大計は外国に委ね、敗戦の汚辱は払拭されずにただごまかされ、日本人自ら日本の歴史と伝統を潰してゆくのを歯噛みしながら見てゐなければならなかつた。」
まさに、今の日本そのものじゃないか。まずこの一文を、日本の独立宣言文の冒頭に掲げるところから始めようかと思ったよ。
ビートたけし
「憲法爆破」より
134:無名草子さん
09/03/18 11:19:16
一九六七年(昭和四十二年)春、四十二歳の三島氏は一人で四十五日間、自衛隊に体験入隊し、国防の必要性を感じ、祖国防衛隊的な組織を作ろうと政治家や財界人に働きかけたのですが成功しませんでした。
三島氏は自ら学生を集め、自衛隊に体験入隊させて祖国防衛隊を作り、のちに「楯の会」という名前を付けました。
三島氏は熱心に働きかけたのに本気にならなかった多くの財界人を見て、「財界人は一見、天皇主義者だけで、利益のために簡単に変節する連中だ」と絶望していました。
井上豊夫
「果し得ていない約束 三島由紀夫が遺せしもの」より
135:無名草子さん
09/03/18 11:20:56
三島氏は政治活動で最も大切なのは「金銭の出どころ」だと言っていました。
約百名とはいえ、「楯の会」運動を続けるための費用はすべて三島氏個人が負担しており、外部に寄付を依頼することはありませんでした。
三島氏の事件から六年後の一九七六年(昭和五十一年)に明るみに出た「ロッキード事件」では、「自称愛国者」児玉誉士夫氏は米国ロッキード社と田中角栄首相のパイプ役として働き、アメリカ側から巨額の謝礼を受けていたことが判明し、愛国者の仮面を剥がされました。
三島氏は大卒の初任給が五万円以下の時代に、年間八百万円もの私財を「楯の会」のために使い、外部に資金援助を一切依頼せず、運動の純粋性を守り通したのでした。
三島氏が自ら自衛隊に体験入隊したあと、「祖国防衛隊構想」を財界人に説いて回ったそうですが、資本家たちは一見「天皇主義者」のように見えても、自己の経済的利益のためなら簡単に裏切る人々だと実感したそうで、以後、財界の資金援助を受けようとはしませんでした。
井上豊夫
「果し得ていない約束 三島由紀夫が遺せしもの」より
136:無名草子さん
09/03/18 11:22:37
「楯の会」はたった百名の小さな組織でしたが権力に媚びることなく、既成右翼との接触もなく終わったのは資金の出どころが明確だったおかげだと思います。
三島氏の金銭に対する考え方は清潔で、納税することは国民として当たり前で、「自分の払った税金が自衛隊の戦闘機のタイヤ一本分くらいになっていると思うと嬉しく思うし、税金は安いくらいだと思う」と言っていました。
以前に瑶子夫人からお聞きしたところによると、インドへ旅行した折に大理石の美しいテーブルを見つけ、名前を入れてもらう約束で注文したらしいのですが、
奥さんが半額だけ現地で払い、残りは商品が着いてから払えばと勧めたのに、「僕はそんなのは嫌だ」と言って全額を現地で払ったそうです。
注文後、一年ほど商品が着かず、奥さんは心配したそうですが、無事到着し、今も南馬込の三島邸の庭先に置かれていると思います。
井上豊夫
「果し得ていない約束 三島由紀夫が遺せしもの」より
137:無名草子さん
09/03/31 17:25:59
374 名前:日本@名無史さん 投稿日:2008/08/30(土) 21:38:01
>「葉隠」の説く武士道を考える
> -「葉隠」武士道の犬死理論の陥穽-
>著作と責任/佐藤弘弥
URLリンク(www.st.rim.or.jp)
佐藤弘弥なる視野狭窄な御仁による珍葉隠論。
珍文章のしょっぱなから、ヒステリックなオナニー全開である。
「ヤンキースのマツイ」のたとえだとか、
そこらの中学2年生も感涙にむせびそうな、すばらしい思考のお綴りである。
この特大場外ホームラン級の知性が書いた小児的ファンタジーが
ネットで上位にひっかかり、目に★な方も多いだろうから、
とりあえずこのスレで駆除しておく。
377 名前:日本@名無史さん 投稿日:2008/08/30(土) 22:47:23
>>.374
佐藤弘弥(笑)
空き樽は音が高いっていうか、キジも鳴かずば打たれまいに・・・
閑古鳥が鳴くサヨ系じゃんじゃんで市民記者を
しょぼしょぼやってればええのに(笑)
【検索ワード】
葉隠、佐藤弘弥、馬鹿、思い込みの禿しい爺さん、三島由紀夫
武士道、山本常朝、田代陣基、新渡戸稲造
138:無名草子さん
09/04/08 16:55:11
限りある命ならば永遠に生きたい
三島由紀夫
書斎の卓上に置かれていた遺書
139:無名草子さん
09/04/12 10:58:30
三島由紀夫さんの《詩の朗読レコード》「天と海」が発売されたことについて、今では知っている方も少ない。
…このレコードの制作当時、私は大手のPR会社に勤務しており、このレコードに関する企画、制作、PRなどに深く関与していた。
…三島さんは「キミが勤めている会社のためだったら断るが、キミの個人的な頼みでやるのなら引き受けてもいいよ」と快く返事をしてくれた。
私が三島さんに知己を得たのは、学生時代にさかのぼる。当時流行していたボディビルジムでの出会いが契機となり、氏との数奇な縁が始まった。
…詩は朗読する本人にお任せすることになり、三島さんは浅野晃氏の「天と海」という長編を選んだ。
この詩の内容は、詩人で大学教授でもあった浅野氏が、学徒動員で出征し、南方の地に散っていった教え子たちの英霊に捧げる鎮魂歌であった。
川瀬賢三
「『天と海』レコード化のころ」より
140:無名草子さん
09/04/12 10:59:21
この仕事を始めるに当たって三島さんは、「今回の制作は、私は単なる朗読の演技者であるから、全てキミの指示に従うので注文があれば遠慮なく言って欲しい」と念を押された。
…このLP盤の制作には半年ほどを要し、サラリーマン時代の私には苛酷な毎日だった。
…深夜のスタジオで、山本(直純)氏が作曲した音楽テープをバックに、独りアナブースの中で、緊張の面持ちでマイクに向かう三島さんは、まるで尊い命を南方に散らしていった若き英霊の魂が乗り移ったかの如く、鬼気迫る迫真の演技であった。
三島さんが、精魂込めて朗読したこのレコードは、現在では“幻の名盤”となり、再発売されていない。誠に残念としか言い様がない。
今は三島さんの全ての好意に感謝し、ひたすらご冥福を祈るのみである。
川瀬賢三
「『天と海』レコード化のころ」より
141:無名草子さん
09/04/20 17:18:11
文學ト云フ事 三島由紀夫「美徳のよろめき」
URLリンク(www.nicovideo.jp)
142:無名草子さん
09/05/03 23:10:58
国体は日本民族日本文化のアイデンティティーを意味し、政権交替に左右されない恒久性をその本質とする。
政体は、この国体維持といふ国家目的民族目的に最適の手段として、国民によつて選ばれるが、政体自体は国家目的追求の手段であつて、それ自体、自己目的的なものではない。
民主主義とは、継受された外国の政治制度であり、あくまで政体以上のものを意味しない。これがわれわれの思考の基本的な立場である。
旧憲法は国体と法体系の間の相互の投影を完璧にしたが、現憲法は、これを明らかにしてゐないことは前述の通りである。
三島由紀夫
「問題提起」より
143:無名草子さん
09/05/03 23:11:38
けだし、国体の語を広義に解釈すれば、現憲法は二種の国体、二つの忠誠対象を、分裂させて持つてをり、且つ国民の忠誠対象をこの二種の国体へ分裂させるやうに仕組まれてゐるからである。
国体は本来、歴史・伝統・文化の時間的連続性に準拠し、国民の永い生活経験と文化経験の集積の上に成立するものであるが、革命政権における国体とは、いふまでもなく、このやうなものではない。
革命政権における国体は、未来理想社会に対する一致した願望努力、国家超越の契機を内に秘めた世界革命の理想主義をその本質とするであらう。
ところが、奇妙なことに現行憲法は、この相反する二種の国体概念を、(おそらく国論分裂による日本弱体化といふ政治的企図を含みつつ)、並記してゐるのである。
これが憲法第一章と第二章との、戦後の思想的対立の根本要因をなす異常なコントラストである。
三島由紀夫
「問題提起」より
144:無名草子さん
09/05/03 23:13:44
…国体と政体の別を明らかにし、本と末の別を立て、国にとつて犯すべからざる恒久不変の本質と、盛衰を常とする政体との癒着を剥離することこそ、国の最大の要請でなければならない。
そのためには、憲法上、第一章と第二章とが到底民族的自立の見地から融和すべからざるものであり、この民族性の理念と似而非国際主義の理念との対立矛盾が、エモーショナルな国民の目前に、はつきり露呈されることが何よりも緊要である。
三島由紀夫
「問題提起」より
145:無名草子さん
09/05/03 23:15:41
このことは、グロテスクな誇張を敢てすれば、侵略戦争の宣戦布告をする天皇と、絶対非武装平和の国際協調主義との、対立矛盾を明示せよ、といふのではない。むしろその反対である。
もし現憲法の部分的改正によつて、第九条だけが改正されるならば、日本は楽々と米軍事体制の好餌になり、自立はさらに失はれ、日本の歴史・伝統・文化は、さらに危殆に瀕するであらう。
われわれは、第一章、第二章の対立矛盾に目を向け、この対立矛盾を解消することによつて、日本の国防上の権利(第二章)を、民族目的(第一章)に限局させようと努め、その上で真の自立の平和主義を、はじめて追求しうるのである。
従つて、第一章の国体明示の改正なしに、第二章のみの改正に手をつけることは、国家百年の大計を誤るものであり、第一章改正と第二章改正は、あくまで相互のバランスの上にあることを忘れてはならない。
三島由紀夫
「問題提起」より
146:無名草子さん
09/05/03 23:19:13
―さて、逐条的に現憲法の批判に入ると、
第一条(天皇の地位・国民主権)天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
第二条(皇位の継承)皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
とあるが、第一条と第二条の間には明らかな論理的矛盾がある。
すなはち第一条には、「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」とあるが、第二条には、「皇位は、世襲のものであつて」とあり、もし「地位」と「皇位」を同じものとすれば、「主権の存する日本国民の総意に基く」筈のものが、「世襲される」といふのは可笑しい。
世襲は生物学的条件以外の条件なき継承であり、「国民の総意に基く」も「基かぬ」もないのである。
三島由紀夫
「問題提起」より
147:無名草子さん
09/05/03 23:20:14
又、もしかりに一歩ゆづつて、「主権の存する日本国民の総意」なるものを、一代限りでなく、各人累代世襲の総意とみとめるときは、「世襲」の語との矛盾は大部分除かれるけれども、
個人の自由意志を超越したそのやうな意志に主権が存するならば、それはそもそも近代個人主義の上に成立つ民主主義と矛盾するであらう。
又、もし、「地位」と「皇位」を同じものとせず、「地位」は国民の総意に基づくが、「皇位」は世襲だとするならば、「象徴としての地位」と「皇位」とを別の概念とせねばならぬ。
それならば、世襲の「皇位」についた新らしい天皇は、即位のたびに、主権者たる「国民の総意」の査察を受けて、その都度、「象徴としての地位」を認められるか否か、再検討されなければならぬ。
しかもその再検討は、そもそも天皇制自体の再検討と等しいから、ここで新天皇が「象徴としての地位」を否定されれば、必然的に第二条の「世襲」は無意味になる。いはば天皇家は、お花の師匠や能役者の家と同格になる危険に、たえずさらされてゐることになる。
三島由紀夫
「問題提起」より
148:無名草子さん
09/05/03 23:21:27
私は非常識を承知しつつ、この矛盾の招来する論理的結果を描いてみせたのであるが、このやうな矛盾は明らかに、第一条に於て、
天皇といふ、超個人的、伝統的、歴史的存在の、時間的連続性(永遠)の保証者たる機能を、「国民主権」といふ、個人的、非伝統的、非歴史的、空間的概念を以て裁いたといふ無理から生じたものである。
これは、「一君万民」といふごとき古い伝承観念を破壊して、むりやりに、西欧的民主主義理念と天皇制を接着させ、移入の、はるか後世の制度によつて、根生の、昔からの制度を正当化しようとした、方法的誤謬から生れたものである。
それは、キリスト教に基づいた西欧の自然法理念を以て、日本の伝来の自然法を裁いたものであり、もつと端的に言へば、西欧の神を以て日本の神を裁き、まつろはせた条項であつた。
三島由紀夫
「問題提起」より
149:無名草子さん
09/05/03 23:22:18
われわれは、日本的自然法を以て日本の憲法を創造する権利を有する。
天皇制を単なる慣習法と見るか、そこに日本的自然法を見るかについては、議論の分れるところであらう。
英国のやうに慣習法の強い国が、自然法理念の圧力に抗して、憲法を不文のままに置き、慣習法の運用によつて、同等の法的効果と法的救済を実現してゆくが如き手続は、日本では望みがたいが、
すべてをフランス革命の理念とピューリタニズムの使命感で割り切つて、巨大な抽象的な国家体制を作り上げたアメリカの法秩序が、日本の風土にもつとも不適合であることは言ふ俟たない。
現代はふしぎな時代で、信教の自由が先進諸国の共通の表看板になりながら、十八世紀以来の西欧人文主義の諸理念は、各国の基本法にのしかかり、これを制圧して、これに対する自由を許してゐないのである。
三島由紀夫
「問題提起」より
150:無名草子さん
09/05/04 23:44:54
われわれがもしあらゆる宗教を信ずることに自由であるなら、どうして近代的法理念のコンフォーミティーからだけは自由でありえない、といふことがあらうか?
又逆に、もしわれわれが近代的法理念のコンフォーミティーからは自由でありえないとするならば、習俗、伝習、文化、歴史、宗教などの民族的固有性から、それほど自由でありうるのだらうか?
それは又、明治憲法の発祥に戻つて、東洋と西洋との対立融合の最大の難問に、ふたたび真剣にぶつかることであるが、
敗戦の衝撃は、一国の基本法を定めるのに、この最大の難問をやすやすと乗り超えさせ、しらぬ間に、日本を、そのもつとも本質的なアイデンティティーを喪はせる方向へ、追ひやつて来たのではなかつたか?
天皇の問題は、かくて憲法改正のもつとも重要な論点であつて、何人もこれを看過して、改憲を語ることはできない。
三島由紀夫
「問題提起」より
151:無名草子さん
09/05/04 23:45:39
…世俗的君主とは祭祀の一点においてことなる天皇は、正にその時間的連続性の象徴、祖先崇拝の象徴たることにおいて、「象徴」たる特色を担つてゐるのである。
天皇が「神聖」と最終的につながつてゐることは、同時に、その政治的無答責性において、現実所与の変転する政治的責任を免かれてゐればこそ、保障されるのである。
これを逆に言へば、天皇の政治的無答責は、それ自体がすでに「神聖」を内包してゐると考へなければ論理的でない。
なぜなら、人間であることのもつとも明確な責任体系こそ、政治的責任の体系だからである。そのやうな天皇が、一般人同様の名誉毀損の法的保護しか受けられないのは、一種の論理的詐術であつて、「栄典授与」(第七条第七項)の源泉に対する国自体の自己冒涜である。
三島由紀夫
「問題提起」より
152:無名草子さん
09/05/04 23:46:28
「神聖不可侵」の規定の復活は、おのづから第二十条「信仰の自由」の規定から、神道の除外例を要求するだらう。
キリスト教文化をしか知らぬ西欧人は、この唯一神教の宗教的非寛容の先入主を以てしか、他の宗教を見ることができず、
英国国教のイングランド教会の例を以て日本の国家神道を類推し、のみならずあらゆる侵略主義の宗教的根拠を国家神道に妄想し、
神道の非宗教的な特色性、その習俗純化の機能等を無視し、はなはだ非宗教的な神道を中心にした日本のシンクレティスム(諸神混淆)を理解しなかつた。
敗戦国の宗教問題にまで、無智な大斧を揮つて、その文化的伝統の根本を絶たうとした占領軍の政治的意図は、今や明らかであるのに、日本人はこの重要な魂の問題を放置して来たのである。
三島由紀夫
「問題提起」より
153:無名草子さん
09/05/04 23:47:13
ありていに言つて、第九条は敗戦国日本の戦勝国に対する詫証文であり、この詫証文の成立が、日本側の自発的意志であるか米国側の強制によるかは、もはや大した問題ではない。
ただこの条文が、二重三重の念押しをからめた誓約の性質を帯びるものであり、国家としての存立を危ふくする立場に自らを置くものであることは明らかである。
論理的に解すれば、第九条に於ては、自衛権も明白に放棄されてをり、いかなる形においての戦力の保有もゆるされず、自衛の戦ひにも交戦権を有しないのである。
全く物理的に日本は丸腰でなければならぬのである。
…第九条のそのままの字句通りの遵奉は、「国家として死ぬ」以外にはない。しかし死ぬわけには行かないから、しやにむに、緊急避難の理論によつて正当化を企て、御用学者を動員して、牽強附会の説を立てたのである。
三島由紀夫
「問題提起」より
154:無名草子さん
09/05/04 23:47:59
自衛隊は明らかに違憲である。しかもその創設は、新憲法を与へたアメリカ自身の、その後の国際政治状況の変化による要請に基づくものである。
…護憲のナショナリスティックな正当化は、あくまで第九条の固執により、片やアメリカのアジア軍事戦略体制に乗りすぎないやうに身をつつしみ、片や諸外国の猜疑と非難を外らさうといふ、消極弥縫策にすぎず、
国内的には、片や「何もかもアメリカの言ひなりにはならぬぞ」といふナショナリスティックな抵抗を装ひ、片や「平和愛好」の国民の偸安におもねり、大衆社会状況に迎合することなのである。
しかもアメリカの絶えざる要請にしぶしぶ押されて、自衛隊をただ「量的に」拡大し、兵器体系を改良し、もつとも厄介な核兵器問題への逢着を無限に延させるために、平和憲法下の安全保障の路線を、無目的無理想に進んでゆくことである。
…核と自主防衛、国軍の設立と兵役義務、その他の政策上の各種の難問題は、九条の裏面に錯綜してゐる。しかしここでは、私は徴兵制度復活には反対であることだけを言明しておかう。
三島由紀夫
「問題提起」より
155:無名草子さん
09/05/04 23:50:36
私は九条の改憲を決して独立にそれ自体として考へてはならぬ、第一章「天皇」の問題と、第二十条「信教の自由」に関する神道の問題と関連させて考へなくては、
折角「憲法改正」を推進しても、却つてアメリカの思ふ壷におちいり、日本が独立国家として、日本の本然の姿を開顕する結果にならぬ、と再々力説した。
たとへ憲法九条を改正して、安保条約を双務条約に書き変へても、それで日本が独立国としての体面を回復したことにはならぬ。
韓国その他アジア反共国家と同列に並んだだけの結果に終ることは明らかであり、これらの国家は、アメリカと軍事的双務条約を締結してゐるのである。
三島由紀夫
「問題提起」より
156:無名草子さん
09/05/04 23:51:18
第九条の改廃については、改憲論者にもいくつかの意見がある。
「第九条第一項の字句は、そもそも不戦条約以来の理想条項であり、これを残しても自衛のための戦力の保持は十分可能である。しかし第二項は、明らかに、自衛隊の放棄を意味するから削除すべきである」
といふ意見に、私はやや賛成であるが、そのためには、第九条第一項の規定は、世界各国の憲法に必要条項として挿入されるべきであり、日本国憲法のみが、国際社会への誓約を、国家自身の基本法に包含してゐるといふのは、不公平不調和を免かれぬ。
その結果、わが憲法は、国際社会への対他的ジェスチュアを本質とし、国の歴史・伝統・文化の自主性の表明を二次的副次的なものとするといふ、敗戦憲法の特質を永久に免かれぬことにならう。むしろ第九条全部を削除するに如くはない。
三島由紀夫
「問題提起」より
157:無名草子さん
09/05/04 23:52:34
その代りに、日本国軍の創立を謳ひ、健軍の本義を憲法に明記して、次の如く規定するべきである。
「日本国軍隊は、天皇を中心とするわが国体、その歴史、伝統、文化を護持することを本義とし、国際社会の信倚と日本国民の信頼の上に健軍される」
防衛は国の基本的な最重要問題であり、これを抜きにして国家を語ることはできぬ。
物理的に言つても、一定の領土内に一定の国民を包括する現実の態様を抜きにして、国家といふことを語ることができないならば、その一定空間の物理的保障としては軍事力しかなく、
よしんば、空間的国家の保障として、外国の軍事力(核兵器その他)を借りるとしても、決して外国の軍事力は、他国の時間的国家の態様を守るものではないことは、
赤化したカンボジア摂政政治をくつがへして、共和制を目ざす軍事政権を打ち樹てるといふことも敢てするのを見ても自明である。
三島由紀夫
「問題提起」より
158:無名草子さん
09/05/04 23:54:24
自国の正しい健軍の本義を持つ軍隊のみが、空間的時間的に国家を保持し、これを主体的に防衛しうるのである。
現自衛隊が、第九条の制約の下に、このやうな軍隊に成育しえないことには、日本のもつとも危険な状況が孕まれてゐることが銘記されねばならない。
憲法改正は喫緊の問題であり、決して将来の僥倖を待つて解決をはかるべき問題ではない。
なぜならそれまでは、自衛隊は、「国を守る」といふことの本義に決して到達せず、この混迷を残したまま、徒らに物理的軍事力のみを増強して、つひにもつとも大切なその魂を失ふことになりかねないからである。
自衛隊は、警察予備隊から発足して、未だその警察的側面を色濃く残してをり、警察との次元の差を、装備の物理的な次元の差にしか見出すことができない。国家の矜りを持つことなくして、いかにして軍隊が軍隊たりえようか。
この悲しむべき混迷を残したものが、すべて第九条、特にその第二項にあることは明らかであるから、われわれはここに論議の凡てを集中しなければならない。
三島由紀夫
「問題提起」より
159:無名草子さん
09/05/13 12:01:09
三島由紀夫、本名平岡公威氏は、府中市多摩霊園十区一種十三側三十二番、平岡家の墓碑の元においでになる。
…私が墓参に行くと、かつては真紅であったろうと思われる薔薇がドライフラワー状態になって手向けられてあった。
…「真紅の薔薇」には忘れ得ぬ記憶がある。
昭和四十五年十一月二十五日。
陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹された翌日、検死の済んだ御遺体が、詰めかけた人々で騒然としている御自宅に戻られた。
パテオに屹立していたアポロンの立像の脚元に三十本余りの真紅の薔薇が文字どおり放り投げられて散乱していた。
鎌倉の御自宅から駆けつけて来られた川端康成氏が線香をあげられたあと、その光景を凝っと視ておられ「薔薇って怖いね」と私の耳許で呟やかれた掠れ声が今も鮮明である。眼に薔薇の炎。耳に巨匠の声。―
増田元臣
「美しい人間の本性」より
160:無名草子さん
09/05/13 12:03:01
三島さんの交誼を頂く事になったきっかけは、私が未だ慶應義塾大学の塾生だった時である。
私は幼年期から映画に取り憑かれており、塾生でありながら、増田貴光というペンネームで書いていた「映画の友」という月刊誌の寄稿文を映画好きの三島さんが読んで下さった事にある。
その月の私のコラムは「ヴィスコンティの美は禁色にあり」と題したもので、その時初めて手紙を頂いた。手紙の御礼に御自宅に赴いた私を、三島さんは楽しげにもてなして下さった。
…数日後三島さんから二通目の手紙が届いた。差し出し名は平岡公威となっており、その内容はざっと次のようなものだった。
「今後、君と付き合ってゆくにあたり、先生という敬称はやめて欲しい。君との友情に距離感が生じるようで寂しいではないか―」そして文通するについての差し出し名は平岡公威にする、と書かれてあった。
以来私も三島さんへの手紙は本名の増田元臣とした。
増田元臣
「美しい人間の本性」より
161:無名草子さん
09/05/13 12:04:03
私が映画評論家として米国に滞在していた時、「憂国」の映画が完成したという連絡を頂き、急遽帰国した。原作、脚本、監督、主演すべて三島さん自身の作品だった。
三島さんは私独りの為に、三島さんと親交の深かった葛井欣士郎氏の劇場で「憂国」を観せて下さった。
試写が了り私が泣き濡れた顔で廊下に出て行くと、葛井氏となにやら談笑していた三島さんが驚かれた様子で、
「ほとんどが割腹シーンで占められているこの映画で、何故そのように悲しむのか」と訊かれたので、
「この映画は三島さんのダイイング・メッセージと解釈致しましたので」と私はお応えした。
その事があって以来、私は三島さんとの数々の思い出で日々を送った。
増田元臣
「美しい人間の本性」より
162:無名草子さん
09/05/13 12:05:18
特に、三島さんがイタリアに取材に行く時と、私がローマのチネチッタ・スタジオのフェリーニとのコンタクトの時が一致して、私がお供をする形になった時のことである。
私達がフォロ・ロマーノの遺跡に立った時三島さんは冗談めかして、
「もし私がハドリアヌス帝だとしたら、君はアンティノウスになれるか」
と尋ねられたので、私は、
「勿論です!」と勢い込んで即答した。
あの時の三島さんの嬉しげなお顔は、忘れる事が出来ない。
「三島由紀夫文学」については周知である。しかし、平岡公威、という美しい人間の本性は、深海の如く神秘で、容易に理解することは出来ないだろう。
増田元臣
「美しい人間の本性」より
163:無名草子さん
09/05/16 21:43:27
「長安に男児ありき 二十にして心已に(すでに)朽つ」
(李長吉の詩「陳商に贈る」の冒頭の二行)
李長吉は中唐の天才詩人で西暦紀元七九一年に生れ、二十七歳で西暦紀元八一七年に死んだ。
耽美的で、難解で、デカダンで、華麗で、憂鬱で、鬼気を帯びて……、とにかくすばらしい詩人だ。
実生活は不幸で、二十歳のとき、人のねたみで、官吏登用試験を受けられず、失意に沈んだ心境を述べた詩だが、私はそんな来歴にはかまはず、全く自分のものとしてこの詩を愛してゐる。
二十歳の自分の心境告白として、この二行を愛してゐるのである。二十歳にして敗戦日本の現実に投げ出された私は、すでに心朽ちたまま、自分の美の国を建設せねばならなかつた。その気持を李長吉が歌つてくれたやうな気がするのである。
三島由紀夫
「私の愛することば」より
164:無名草子さん
09/05/23 16:39:52
作者と作品は無限にズレ続ける。喩えていうなら、『天人五衰』は三島由紀夫という物語作者の死のあとに書かれた“小説”である。
そのテクストの中にはすでに三島由紀夫は不在なのだ。
透も本多も、「昭和45年11月25日」という作品末尾に書かれた日付すなわち作者の死から、さらに5年も生き長らえねばならない。これは何を意味するのか。
…透はほとんど「狂気」の世界を垣間見ることによってしか、この世と繋がってはいない。透の故郷は、水平線の彼方にある到達不能のものとしての「狂気」である。透は故郷喪失者なのだ。
…本多の養子となった透は、その到達不能の「狂気」に向けて、養父との闘争を開始する。しかし、転生の秘密を知らない透は認識者としての闘争には敗れるが、逆にその敗北が透を狂気へと近づける。
青海健
「三島由紀夫の帰還」より
165:無名草子さん
09/05/23 16:41:59
…認識の敗北者透は「狂気」の世界への参入を許されることで、アイロニカルにも、本多に勝ったのである。
本多が贋物であるなら、透は“真の”贋物である。かくて本多は月修寺へとおもむき、自らの存在の消滅を“知る”のである。
…『天人五衰』は、作者の死のあとの、透という他者についての物語である。いや、むしろ「物語」というワクを解体し崩壊させてしまう小説である。
透という異物=狂気がそれを崩壊させるのだ。本多が癌で死んでも、その悪しきドッペルゲンガーたる透はあらゆる場所に出現するだろう。
『天人五衰』の世界はけっして閉じられることなく、三島由紀夫の亡霊はいたるところに現れるにちがいない。
青海健
「三島由紀夫の帰還」より
166:無名草子さん
09/05/23 16:43:01
…「正しい狂気、というものがあるのだ」とは『葉隠入門』の言葉だが、狂気の領域への参入は、「人間」(という概念)を超え出ることである。
フーコーの言葉で言うなら、「人間から真の人間への道程は、狂気の人間を媒介とするのである」(『狂気の歴史』)。
『天人五衰』のエクリチュールは、理性と非理性とのせめぎあいの中で狂気という故郷へ回帰しようともがいている。そして三島は狂気そのものと化する地点で消滅したのだ。
青海健
「三島由紀夫の帰還」より
167:無名草子さん
09/05/25 11:44:01
サルヴァドル・ダリの「最後の晩餐」を見た人は、卓上に置かれたパンと、グラスを夕日に射抜かれた赤葡萄酒の紅玉のやうな煌めきとを、永く忘れぬにちがひない。
それは官能的なほどたしかな実在で、その葡萄酒は、カンヴァスを舐めれば酔ひさうなほどに実在的に描かれてゐる。
…吉田健一氏の或る小品を読むたびに、私はこのダリの葡萄酒を思ひ出す。
単に主題や思想のためだけなら、葡萄酒はこれほど官能的これほど実在的である必要がないのに、「文学は言葉である」がゆゑに、又、文学は言葉であることを証明するために、氏の文章は一盞の葡萄酒たりえてゐるのである。
三島由紀夫
「ダリの葡萄酒」より
168:無名草子さん
09/06/10 11:07:59
今から考えてみると、「豊饒の海」が最後に突入していったのは、物事のすべてが「存在の耐えられない軽さ」を生き、
ノスタルジア(懐旧)とパスティッシュ(模倣)の原理のもとに操作されてゆく、ポストモダンの薄明のことだったような気がしています。
わたしが大学生活を送った1970年代は、10年間を通して、あなたの名前(三島由紀夫)が忌避され、排除されてきた時代でした。
大学院の研究室でも、同級生どうしの会合でも、あなたの死のみならず、その作品について言及することは場違いであり、
できればあなたのような文学者が戦後日本に存在していなかったかのように振舞うのが、暗黙の了解であるような日々が続いていました。
四方田犬彦
「時間に楔を打ち込んだ男」より
169:無名草子さん
09/06/10 11:10:42
日本のポストモダン社会は、三島由紀夫の不在によって、安心して自己実現を達成したのです。
70年代と80年代を代表するイデオローグであった山口昌男と蓮見重彦を考えてみたとき、それは明らかとなるでしょう。
山口はあなた(三島)が悲劇的なもの、崇高なものに魅惑されていたのとは対照的に、それらから意図的に距離を置き、
喜劇的なもの、道化的なものに焦点を当てました。
…一方の蓮見は、あなたと同じ学習院に学び、皇族と人脈的な関係をもつことにきわめて野心的な人物でしたが、
一貫してあなたを嫌っていることを公言していました。
…あなたの全集が再び編集され、刊行されていなかった日記や書簡が公にされたり、…あなたの行動の全体が次の世代によって
再検討の対象となるようになったのは、2000年代に入り、先の二人の知的扇動家の影響が消え去ったことと、軌を一にしているのは、
けっして偶然ではありません。
四方田犬彦
「時間に楔を打ち込んだ男」より
170:無名草子さん
09/06/13 11:31:42
最後の試験も済み、学生生活が実質的になにもかも終わった夏休みのある晩であった。
…何かの拍子に三島は「アメリカって癪だなあ、君本当に憎らしいね」と心の底から繰り返しいった。
そしてかのレースのカーテンを指さし「もしあそこにアメリカ兵が隠れていたら、竹槍で突き殺してやる」
と銃剣術の動作をして真剣にいった。
当時の彼は学術優秀であり、品行も方正であったが、教練武術の方はまるで駄目であった。
…そういう彼が竹槍で云々といった時、彼には悪いが、突くといっても逆にやられるだろうがとひそかに思った。
けれども、彼のその気迫の烈しさには本当に胸を突かれた。
彼は当時、日本の、ことに雅やかな王朝文化に心酔していた(当時といわず、或は生涯そうであったかもしれぬ)。
そしてその意味で敬虔な尊皇家であった。
三谷信
「級友 三島由紀夫」より
171:無名草子さん
09/06/13 11:33:51
今、卒業式の時の彼を思い出す。
戦前の学習院の卒業式には、何年かに一度陛下が御臨幸になった。我々の卒業式の時もそうであった。
全員息づまる様に緊張し静まる中で式は進み、やがて教官が「文科総代 平岡公威」と彼の名を呼びあげた。
彼は我等卒業式一同と共にスッと起立し、落ち着いた足どりで恭々しく陛下の御前に出て行った。
彼が小柄なことなど微塵も感じさせなかった。瞳涼しく進み出て、拝し、退く。
その動きは真に堂堂としていた。心ひきしまり、すがすがしい動作であった。
あの時は彼の人生の一つの頂点であったろう。
そういう彼ゆえ、古来の日本の心を壊そうとするものを心の底から許さなかった。
三谷信
「級友 三島由紀夫」より
172:無名草子さん
09/06/13 11:35:08
彼の感性は非凡なだけでなく時に大変ユニークで、常人の追随しかねる点があったけれども、
人間としての器量は大きかった。思えば、不良少年の親分を夢みるだけのことはあった。
…初等科六年の時のことである。元気一杯で悪戯ばかりしている仲間が、三島に
「おいアオジロ―彼の綽名―お前の睾丸もやっぱりアオジロだろうな」と揶揄った。
三島はサッとズボンの前ボタンをあけて一物を取り出し、
「おい、見ろ見ろ」とその悪戯坊主に迫った。
それは、揶揄った側がたじろく程の迫力であった。
また濃紺の制服のズボンをバックにした一物は、その頃の彼の貧弱な体に比べて意外と大きかった。
三谷信
「級友 三島由紀夫」より
173:無名草子さん
09/06/14 11:09:38
佐藤春夫氏が近く疎開されるので、林さんと、大垣といふ陸軍曹長の詩人と、
伊東静雄のお弟子の庄野といふ海軍少尉と僕と四人でウィスキーを携へてお別れに行きました。
僕は短冊に佐藤氏の殉情詩集のなかにある詩「きぬぎぬ」の一節
「みかへりてつくしをみなのいひけるはあづまをとこのうすなさけかな」
といふのを書いていたゞき、嬉しうございました。
僕は自分でその日の先生を、
「春衣やゝくつろげて師も酔ひませる」「澪ごとに載せゆく花のわかれかな」
とうたひました。本当に美しい晩でした。
佐藤春夫氏はたしかに第一流の文豪であると思ひます。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年4月7日付、三谷信への葉書から
174:無名草子さん
09/06/14 11:40:57
>>129
梶井基次郎の文学は、デカダンスの詩と古典の端正との稀な結合、熱つぽい額と冷たい檸檬との絶妙な取り合はせであつて、
その肉感的な理智の結晶ともいふべき作品は、いつまでも新鮮さを保ち、おそらく現代の粗雑な小説の中に置いたら、
その新らしさと高貴によつて、ほかの現代文学を忽ち古ぼけた情ないものに見せるであらう。
三島由紀夫
「梶井基次郎全集 推薦文」より
175:無名草子さん
09/06/15 16:37:15
戦争中異常な執着で僕らの世代の少数のものは、文学にしがみつき、その純粋を念じて来ました。
文学純粋宗ともいふべき狂信的な宗派に身を投げ入れました。
そして時代のあらゆる愚劣さと不純さから何とかしてその純美を守らうとして来ました。
さういふ若者は全国の隅々に、まだ相会ふことなく散らばつてゐるでありませう。…
―僕にはこの御知遇が三重の意味で嬉しかつた。
といふのは最も愛してゐた唯一の妹を喪くした放心状態に活を入れて下さつたのもそれだつたからです。
かういふ泣言に類することは、言はでもの事かも知れません。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年5月3日付、木村徳三への書簡から
176:無名草子さん
09/06/15 16:37:56
僕は文学の永遠を信じてゐます。それがあまりにも脆く美しく永遠に滅びつゝある故です。
僕は文学の絶えざる崩壊作用の美しさを信じるのです。作者の身が粉々になる献身の永遠を信じるのです。
僕らの周囲にはまだあらゆる愚劣さと不純とがあります。僕らはそれに向かつて虚無の馬を駆立てるのです。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年5月3日付、木村徳三への書簡から
177:無名草子さん
09/06/16 03:05:34
考え過ぎると不幸になる
178:無名草子さん
09/06/16 10:13:24
来年は日米安保50年、三島没後40年
179:無名草子さん
09/06/18 22:34:17
僕は今この時代に大見得切つて、「共産党に兜を脱がせるだけのものを持て」などゝ無理な注文は出しません。
時勢の流れの一面は明らかに彼らに利があり、彼等はそのドグマを改める由もないからです。
しかし我々の任務は共産党を「怖がらせる」に足るものを持つことです。
彼等に地団太ふませ、口角泡を飛ばさせ、「反動的だ!貴族的だ!」と怒号させ、
しかもその興奮によつて彼等自らの低さを露呈させることです。
正面切つて彼等の敵たる強さと矜持を持つことです。
ひるまないことです。逃げないことです。怖れないことです。
そして彼等に心底から「怖い」と思はせることです。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年2月10日付、神崎陽への書簡から
180:無名草子さん
09/06/18 22:35:06
―それでは文化的貴族主義とは何でせうか。それは歴史的意味と精神的意味と二つをもつてゐます。
…後者はあらゆる時代に超然とし、凡俗の政治に関らず、醇乎たる美を守るといふエリートの意識です。
(これは芸術からいふので、倫理的には道徳を守るエリートたりともある人はいふでせう)
…しかもその効果は美的標準に於て最高のものであらねばならぬ点で明らかに貴族主義的です。
向上の意識、「上部構造」の意識、フリードリヒ・ニイチェが貴族主義とよばれる所以です。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年2月10日付、神崎陽への書簡から
181:無名草子さん
09/06/18 22:35:52
われらの外部を規制する凡ゆる社会的政治的経済的条件がたとへ最高最善理想的なものに達したとしても、
絶対的なる「美」からみればあくまでも相対的なものであり、相対的なものが絶対的なものを規制しようとする時、
それは必ず悪い効果を生じます。
いかによき政治が美を擁護するにしろ、必ずその政治の中の他の因子が美を傷つけることは、当然のことで仕方ないことです。
したがってあらゆる時代に於て美を守る意識は反時代性をもち、極派からはいつでも反動的と思はれます。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年2月10日付、神崎陽への書簡から
182:無名草子さん
09/06/18 22:36:45
―「中庸」といふ志那クラシックのいかにも睡つたやうなこの言葉がやうやう僕には激しい激越な意味を以て思ひかへされて来ました。
中庸を守るとは洞ヶ峠のことではありません。いはゆる微温的態度のことではありません。元気のない聖人気取ではありません。
「中庸」の思想こそ真に青年の血を湧かせる思想なのです。それは荊棘の道です。苦難と迫害の道です。
漢籍に長ずるときく山梨院長が、戦時中の輔仁会で翻訳劇を上演しようとした僕の意図を抹殺し、戦争終るや
「モンテ・カルロの乾盃」を手もなく容認するやうな態度を、人々はいはゆる「中庸」の道だと思つてゐます。
これは思はざるの甚だしきものです。これこそいはゆる論語よみの論語知らずです。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年2月10日付、神崎陽への書簡から
183:無名草子さん
09/06/18 22:39:50
右顧左顧して世間の機嫌をうかゞひもつとも「穏当な」道を選ぶといふ思想こそ、孔子が中庸といふ言葉で
あらはしたものと全く反対の思想です。
中庸といふこと、守るといふこと、これこそ真の長い苦しい勇気の要る道です。
このやうな時代に、美を守ることの勇気、過去の日本精神の枠、東洋文化の本質を保守するに要する勇気、
これこそ真の男らしい勇気といはねばなりません。
学習院は反動的といふ攻撃の矢面に立ち、真の美、真の文化を叫びつゞけねばなりません。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和21年2月10日付、神崎陽への書簡から
184:無名草子さん
09/06/20 11:16:34
君と共に将来は、日本の文化を背負つて立つ意気込みですが、君が御奉公をすましてかへつてこられるまでに、
僕が地固めをしておく心算です。
僕は僕だけの解釈で、特攻隊を、古代の再生でなしに、近代の殲滅―すなはち日本の文化層が、
永く克服しようとしてなしえなかつた「近代」、あの尨大な、モニュメンタールな、カントの、エヂソンの、アメリカの、
あの端倪すべからざる「近代」の超克でなくてその殺傷(これは超克よりは一段と高い烈しい美しい意味で)だと思つてゐます。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年4月21日付、三谷信への葉書から
185:無名草子さん
09/06/20 11:18:17
「近代人」は特攻隊によつてはじめて「現代」といふか、本当の「われわれの時代」の曙光をつかみえた、
今まで近代の私生児であつた知識層がはじめて歴史的な嫡子になつた。それは皆特攻隊のおかげであると思ひます。
日本の全文化層、世界の全文化人が特攻隊の前に拝跪し感謝の祈りをさゝげるべき理由はそこにあるので、
今更、神話の再現だなどと生ぬるいたゝへ様をしてゐる時ではない。全く身近の問題だと思ひます。
平岡公威(三島由紀夫)
昭和20年4月21日付、三谷信への葉書から
186:無名草子さん
09/06/22 16:37:06
初等科一年の時、休み時間になると、半ズボン姿の我々は、籠から放たれた小鳥の様に夢中で騒ぎ回った。
…そういう餓鬼どもの中で、三島は「フクロウ、貴方は森の女王です」という作文を書いた。
彼は意識が始まった時から、すでに恐ろしい孤独の中に否応なしに閉じこもり、覚めていた。
…彼は幼時、友達に、自分の生まれた日のことを覚えていると語った。
彼はそのことを確信していた。
そしておそらく、外にもその記憶をもつ人が何人かあると素直に考えていたのであろう。
三谷信
「級友 三島由紀夫」より
187:無名草子さん
09/06/22 16:40:48
初等科に入って間もない頃、つまり新しく友人になった者同士が互いにまだ珍しかった頃、ある級友が
「平岡さんは自分の産まれた時のことを覚えているんだって!」と告げた。
その友人と私が驚き合っているとは知らずに、彼が横を走り抜けた。
春陽をあびて駆け抜けた小柄な彼の後ろ姿を覚えている。
あの時も、すでに彼はそれなりに成熟していたのであろう。彼と周囲との断絶、これは象徴的であり、悲劇的である。
三島は生涯の始めから、終始悲劇的に完成した孤独の日々を送ったと思う。
三谷信
「級友 三島由紀夫」より