08/04/22 21:52:01
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犯罪被害者とその遺族によるドキュメンタリー, 2007/10/18
By siratake - レビューをすべて見る
たしかに内容にはすでに指摘されている通り問題となる個所がある。
その最大のものは周りの人間の迷惑を考えず、悪口や個人情報が実名で
さらされているというところである。
文学的にも、宮本賢治と百合子の獄中書簡とか、
高村光太郎の妻智恵子への詩とか、そういう文学性漂うものには
ほど遠いと言えよう。
それでも、私はこの作品を以下の点で評価している。
1)本村洋は、この作品によって、現在の日本に次々と現れつつある"犯罪被害者と
その遺族による ドキュメンタリー"というの文学分野の発展に貢献した。
今まで犯罪被害者、とくに性犯罪の被害者は、セカンドレイプを恐れ、声も周りにあらわにせず、じっと
被害を追ったまま、廃虚となった人生を耐えていった。しかし、最近はそういう被害者も自分の体験を
文章にし、自己表現するようになった。新たな被害者像が生まれてきたのである。本村洋は、裁判制
度において被害者遺族が自らの生の声で、加害者の前で自分の気持ちを述べる場をもてるように、
裁判制度を改革した。しかも、彼は"犯罪被害者の会"にも入り、受動的でなく、積極的に社会とかか
わりながら生き、かつ裁判でも堂々と戦うという"戦う被害者遺族"の像を新たに確立した。
2)"煩悩にまみれた男女の愛の赤裸々な実態"が如実にあらわにされている。
本村弥生が天使でもなんでもなく、生身の欠点だらけのわがまま人間であることをさらすことになったが、
夫はそのような妻のありのままの姿をまるごと愛している。本当に深い愛とは、結晶作用によって相手を
美化して描くのではなく、相手の現実をありのままに受けとめることにある。