08/03/08 15:30:28
文芸評論は、あまり読まないのだが、NHK出版「司馬遼太郎について―裸眼の思索者」所収の
鎌倉英也「司馬遼太郎を知らない世代の司馬遼太郎」は、面白かった。
著者は、いい年をして、それまで一度も司馬遼太郎を読んだことがない、という変り種。
番組制作のために、司馬作品を短期間で、詰め込んだらしい。
司馬をデビュー当時から愛読している人の評論は、身近すぎるがゆえに、通り一遍のことしか書けない
というところがあるが、司馬に関してアマチュアであった著者の切り口は新鮮だ。
著者は、司馬が作品を書いた年代の日本社会の世相に焦点を当て、作品の内容との関連性を
詳細に論じている。
この本の前半の対談は、かなりぬるい内容なので、途中で投げ出していたのだが、
最後に出てくる、この評論は、出来がよい。
なお、私がこんなことを書いているのは、この本の背のところが変色していて、BOOK-OFFが
買い取ってくれなかったからである。