07/08/25 13:57:10
黒鍬者 一
江原素六のこと。素六は、幕末、横浜の外国公館の警備隊(通称菜葉隊)を率いた。
「黒鍬者」のタイトルは、江原家が戦国の黒鍬者の家系だったことから付けられた。
司馬さんは、「燃えよ剣」の執筆中、素六について調べた。甲州鎮撫隊が勝沼で官軍と
戦う直前、土方歳三が、菜葉隊に援軍を要請すべく神奈川に向ったからである。
ところが、調べてみると、素六は、この当時、すでに菜葉隊の軍務からは外れていた。
結局、素六を「燃えよ剣」に登場させることはできなかった。
この節度は称賛されてよい。禁門の政変にうっかり西郷を登場させてしまった前歴が
あるわりには、慎重な態度である。最近の作家・脚本家には、この節度を欠いた人が多すぎる。