メモっておきたい、作家の名言・名文・名文句at BOOKALL
メモっておきたい、作家の名言・名文・名文句 - 暇つぶし2ch2:あぼーん
あぼーん
あぼーん

3:この名無しがすごい!
10/03/05 11:35:19 M8cVesro
美人の定義は沢山着れば着るほどますます裸かにみえる女のことである。

三島由紀夫「家庭裁判」より

4:この名無しがすごい!
10/03/05 11:35:56 M8cVesro
真の芸術家は招かれざる客の嘆きを繰り返すべきではあるまい。彼はむしろ自ら客を招くべきであらう。

三島由紀夫「招かれざる客」より

5:この名無しがすごい!
10/03/05 11:36:16 M8cVesro
若さが幸福を求めるなどといふのは衰退である。

三島由紀夫「絹と明察」より

6:この名無しがすごい!
10/03/05 11:39:49 M8cVesro
若い女といふものは誰かに見られてゐると知つてから窮屈になるのではない。
ふいに体が固くなるので、誰かに見詰められてゐることがわかるのだが。

三島由紀夫「白鳥」より

7:この名無しがすごい!
10/03/05 11:40:15 M8cVesro
ある女は心で、ある女は肉体で、ある女は脂肪で夫を裏切るのである。

三島由紀夫「反貞女大学」より

8:この名無しがすごい!
10/03/05 11:40:37 M8cVesro
愛から嫉妬が生まれるやうに、嫉妬から愛が生まれることもある。

三島由紀夫「反貞女大学」より

9:この名無しがすごい!
10/03/05 11:41:02 M8cVesro
老夫妻の間の友情のやうなものは、友情のもつとも美しい芸術品である。

三島由紀夫「女の友情について」より

10:この名無しがすごい!
10/03/06 10:40:57 YNANV0do
大ていわれわれが醜いと考へるものは、われわれ自身がそれを醜いと考へたい必要から生れたものである。

三島由紀夫「手長姫」より

11:この名無しがすごい!
10/03/06 10:41:47 YNANV0do
人間が或る限度以上に物事を究めようとするときに、つひにはその人間と対象とのあひだに
一種の相互転換が起り、人間は異形に化するのかもしれない。

三島由紀夫「三熊野詣」より

12:この名無しがすごい!
10/03/06 10:42:27 YNANV0do
自在な力に誘はれて運命もわが手中にと感じる時、却つて人は運命のけはしい斜面を
快い速さで辷りおちつゝあるのである。

三島由紀夫「軽王子と衣通姫」より

13:この名無しがすごい!
10/03/06 19:25:16 oYDRxZeW
三島スレになっとるじゃないか・・

14:この名無しがすごい!
10/03/07 17:02:10 DCZeJzNo
愛するといふことにかけては、女性こそ専門家で、男性は永遠の素人である。
男は愛することにおいて、無器用で、下手で、見当外れで、無神経、蛙が陸を走るやうに無恰好である。
どうしても「愛する」コツといふものがわからないし、要するに、どうしていいかわからないのである。
先天的に「愛の劣等生」なのである。
そこへ行くと、女性は先天的に愛の天才である。
どんなに愚かな身勝手な愛し方をする女でも、そこには何か有無を言わせぬ力がある。
男の「有無を言わせぬ力」といふのは多くは暴力だが、女の場合は純粋な精神力である。
どんなに金目当ての、不純な愛し方をしてゐる女でも、愛するといふことだけに女の精神力がひらめき出る。
非常に美しい若い女が、大金持の老人の恋人になつてゐるとき、人は打算的な愛だと推測したがるが、
それはまちがつてゐる。
打算をとほしてさへ、愛の専門家は愛を紡ぎ出すことができるのだ。

三島由紀夫
「愛するといふこと」

15:この名無しがすごい!
10/03/07 23:56:53 DCZeJzNo
機関車を美しいと思ふやうでは女もおしまひである。

三島由紀夫「女神」より

16:この名無しがすごい!
10/03/11 17:13:38 7Ubgzzut
日本に於いて今さら昨日の軍閥官僚を罵倒してみたつて、それはもう自由思想ではない。
それこそ真空管の中の鳩である。
真の勇気ある自由思想家なら、今こそ何を措いても叫ばねばならないことがある。天皇陛下万歳!この叫びだ。

太宰治「十五年」より

17:この名無しがすごい!
10/03/14 23:37:45 r9ADAsTA
不美人のはうが美といふ観念からすれば、純粋に美しいのかもしれません。
何故つて、醜い女なら、欲望なしに見ることができますからね。

三島由紀夫「女神」より

18:この名無しがすごい!
10/03/17 13:52:51 t+W4AgTs
あまりに強度の愛が、実在の恋人を超えてしまふといふことはありうる。

三島由紀夫
「班女について」より

19:この名無しがすごい!
10/03/17 14:02:55 Gnh4GfW5
「ありのままのわたしを見てください!」
なんつーセリフをウリに使ってもいいのは、
ハダカに自信のある若くて美形な男女だけである。

久美沙織『これがトドメの新人賞の獲り方おしえます』(徳間書店)より

20:この名無しがすごい!
10/03/18 15:04:04 MFUZKxFc
美人が八十何歳まで生きてしまつたり、醜男が二十二歳で死んだりする。
まことに人生はままならないもので、生きてゐる人間は多かれ少なかれ喜劇的である。

三島由紀夫「夭折の資格に生きた男―ジェームス・ディーン現象」より

21:この名無しがすごい!
10/03/18 15:15:33 MFUZKxFc
初恋に勝つて人生に失敗するのはよくある例で、初恋は破れる方がいいといふ説もある。

三島由紀夫「冷血熱血」より

22:この名無しがすごい!
10/03/18 15:20:32 MFUZKxFc
愛は絶望からしか生まれない。精神対自然、かういふ了解不可能なものへの精神の運動が愛なのだ。

三島由紀夫「禁色」より

23:この名無しがすごい!
10/03/20 16:36:14 fH5PhG5H
詩人とは、自分の青春に殉ずるものである。青春の形骸を一生引きずつてゆくものである。
詩人的な生き方とは、短命にあれ、長寿にあれ、結局、青春と共に滅びることである。
(中略)
小説家の人生は、自分の青春に殉ぜず、それを克服し、脱却したところからはじまる。

三島由紀夫「佐藤春夫氏についてのメモ」より

24:この名無しがすごい!
10/03/22 15:28:29 xHmCeOT8
小説でも、絵でも、ピアノでも芸事はすべてさうだがボクシングもさうだと思はれるのは、
練習は必ず毎日やらなければならぬといふことである。

三島由紀夫「ボクシング・ベビー」より

25:この名無しがすごい!
10/03/22 17:36:55 xHmCeOT8
ほんたうの誠実さといふものは自分のずるさをも容認しません。
自分がはたして誠実であるかどうかについてもたえず疑つてをります。

三島由紀夫「青春の倦怠」より

26:この名無しがすごい!
10/03/23 12:36:46 6STAcIHF
小説家は人間の心の井戸掘り人足のやうなものである。井戸から上つて来たときには、日光を浴びなければならぬ。
体を動かし、思ひきり新鮮な空気を呼吸しなければならぬ。

三島由紀夫「文学とスポーツ」より

27:この名無しがすごい!
10/03/23 12:37:49 6STAcIHF
われわれが美しいと思ふものには、みんな危険な性質がある。
温和な、やさしい、典雅な美しさに満足してゐられればそれに越したことはないのだが、それで満足して
ゐるやうな人は、どこか落伍者的素質をもつてゐるといつていい。

三島由紀夫「美しきもの」より

28:この名無しがすごい!
10/03/24 09:48:33 CLGOI3Mb
ファッシズムの発生はヨーロッパの十九世紀後半から今世紀初頭にかけての精神状況と切り離せぬ関係を持つてゐる。
そしてファッシズムの指導者自体がまぎれもないニヒリストであつた。
日本の右翼の楽天主義と、ファッシズムほど程遠いものはない。

三島由紀夫「新ファッシズム論」より

29:この名無しがすごい!
10/03/24 10:51:55 CLGOI3Mb
愛情の裏附のある鋭い批評ほど、本当の批評はありません。さういふ批評は、そして、すぐれた読者にしか
できないので、はじめから冷たい批評の物差で物を読む人からは生れません。

三島由紀夫「作品を忘れないで……人生の教師ではない私―読者への手紙」より

30:この名無しがすごい!
10/03/24 18:05:17 CLGOI3Mb
都会の人間は、言葉については、概して頑固な保守主義者である。

三島由紀夫「小説家の休暇」より

31:この名無しがすごい!
10/03/24 23:46:19 CLGOI3Mb
さまざまな自己欺瞞のうちでも、自嘲はもつとも悪質な自己欺瞞である。それは他人に媚びることである。
他人が私を見てユーモラスだと思ふ場合に、他人の判断に私を売つてはならぬ。「御人柄」などと云つて
世間が喝采する人は、大ていこの種の売淫常習者である。

三島由紀夫「小説家の休暇」より

32:この名無しがすごい!
10/03/25 12:40:45 cwsysZpR
第一私はこの人の顔がきらひだ。第二にこの人の田舎者のハイカラ趣味がきらひだ。第三にこの人が、自分に
適しない役を演じたのがきらひだ。女と心中したりする小説家は、もう少し厳粛な風貌をしてゐなければならない。
私とて、作家にとつては、弱点だけが最大の強味となることぐらゐ知つてゐる。しかし弱点をそのまま強味へ
もつてゆかうとする操作は、私には自己欺瞞に思われる。(中略)
太宰のもつてゐた性格的欠陥は、少なくともその半分が、冷水摩擦や器械体操や規則的な生活で治される筈だつた。
生活で解決すべきことに芸術を煩はしてはならないのだ。いささか逆説を弄すると、治りたがらない病人などには
本当の病人の資格がない。

三島由紀夫「小説家の休暇」より

33:この名無しがすごい!
10/03/25 12:42:50 cwsysZpR
私はかつて、真のでくのばうを演じ了せた意識家を見たことがない。

三島由紀夫「小説家の休暇」より

34:この名無しがすごい!
10/03/25 12:48:16 cwsysZpR
傷つきやすい人間ほど、複雑な鎖帷子(くさりかたびら)を織るものだ。そして往々この鎖帷子が自分の肌を
傷つけてしまふ。しかしこんな傷を他人に見せてはならぬ。君が見せようと思ふその瞬間に、他人は君のことを
「不敵」と呼んでまさに讃(ほ)めようとしてゐるところかもしれないのだ。

三島由紀夫「小説家の休暇」より

35:この名無しがすごい!
10/03/25 20:28:16 cwsysZpR
裏切る心配のない見えない神様などを信じてもつまりませんわ。

三島由紀夫「暁の寺」より

36:この名無しがすごい!
10/03/26 12:40:20 DMueoE+P
神は人間の最後の言ひのがれであり、逆説とは、もしかすると神への捷径(しようけい)だ。

*「捷径」の意味…近道
三島由紀夫「オスカア・ワイルド論」より

37:この名無しがすごい!
10/03/26 12:40:53 DMueoE+P
悪魔の発明は神の衛生学だ。

三島由紀夫「オスカア・ワイルド論」より

38:この名無しがすごい!
10/03/26 12:41:27 DMueoE+P
生きるといふことは、運命の見地に立てば、まるきり詐欺にかけられてゐるやうなものだ。

三島由紀夫「暁の寺」より

39:この名無しがすごい!
10/03/26 12:42:10 DMueoE+P
生きる意志の欠如と楽天主義との、世にも怠惰な結びつきが人間といふものだ。

三島由紀夫「美しい星」より

40:この名無しがすごい!
10/03/26 12:43:03 DMueoE+P
あらゆる改革者には深い絶望がつきまとう。しかし、改革者は絶望を言はないのである。
絶望は彼らの理想主義的情熱の根源的な力であるにもかかはらず、彼らの理想は
その力の根絶に向けられてゐるからである。
三島由紀夫「美しき時代」より

41:この名無しがすごい!
10/03/26 12:43:53 DMueoE+P
明日を怖れてゐる快楽などは、贋物でもあり、恥づべきものではないだらうか。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

42:この名無しがすごい!
10/03/26 12:44:42 DMueoE+P
愛の奥処には、寸分たがはず相手に似たいといふ不可能な熱望が流れてゐはしないだらうか?

三島由紀夫「仮面の告白」より

43:この名無しがすごい!
10/03/27 17:14:02 MaWyCU6b
あらゆる英雄主義を滑稽なものとみなすシニシズムには、必ず肉体的劣等感の影がある。

三島由紀夫「太陽と鉄」より

44:この名無しがすごい!
10/03/27 17:14:45 MaWyCU6b
男が女より強いのは、腕力と知性だけで、腕力も知性もない男は、女にまさるところは一つもない。

三島由紀夫「第一の性」より

45:この名無しがすごい!
10/03/27 17:15:13 MaWyCU6b
この世界には不可能といふ巨きな封印が貼られている。

三島由紀夫「午後の曳航」より

46:この名無しがすごい!
10/03/27 17:16:22 MaWyCU6b
死といふ事実は、いつも目の前に突然あらはれた山壁のやうに、あとに残された人たちには思はれる。
その人たちの不安が、できる限り短時日に山壁の頂きを究めてしまはうとその人たちをかり立てる。
かれらは頂きへ、かれらの観念のなかの「死の山」の頂きへかけ上る。
そこで人たちは山のむかうにひろがる野の景観に心くつろぎ、あの突然目の前にそそり立つた死の影響から
のがれえたことを喜ぶのだ。しかし死はほんたうはそこからこそはじまるものだつた。
死の眺めはそこではじめて展(ひら)けて来る筈だつた。光にあふれた野の花と野生の果樹となだらかな起伏の
景観を、人々はこれこそ死の眺めとは思はず眺めてゐるのだつた。

三島由紀夫「罪びと」より

47:この名無しがすごい!
10/03/27 17:32:09 MaWyCU6b
男の虚栄心は、虚栄心がないやうに見せかけることである。

三島由紀夫「虚栄について」より

48:この名無しがすごい!
10/03/27 18:01:25 MaWyCU6b
私たちにとつてマルクスの恐るべきは、マルクスそれ自身ではない。マルクスを囲む凡俗が恐るべき標的なのだ。
思想とは凡俗の頭脳に食ひ込んで彼らを殺してゐる悪をいふのである。

横光利一「詩と小説」より

49:この名無しがすごい!
10/03/28 10:43:58 eRqmxaxr
海、名のないもの、地中海であれ、日本海であれ、目前の駿河湾であれ、海としか名付けやうのないもので
辛うじて統括されながら、決してその名に服しない、この無名の、この豊かな、絶対の無政府主義。

三島由紀夫「天人五衰」より

50:この名無しがすごい!
10/03/28 10:44:32 eRqmxaxr
…遠いところで美が哭いてゐる、と透は思ふことがあつた。多分水平線の少し向こうで。
美は鶴のやうに甲高く啼く。その声が天地に谺してたちまち消える。
人間の肉体にそれが宿ることがあつても、ほんのつかのまだ。

三島由紀夫「天人五衰」より

51:この名無しがすごい!
10/03/28 10:47:34 eRqmxaxr
空虚な目標であれ、目標をめざして努力する過程にしか人間の幸福が存在しない。

三島由紀夫「小説家の息子」より

52:この名無しがすごい!
10/03/28 10:48:02 eRqmxaxr
必要から生れたものには、必要の苦さが伴ふ。
三島由紀夫「暁の寺」より

53:この名無しがすごい!
10/03/28 10:48:38 eRqmxaxr
変り者と理想家とは、一つの貨幣の両面であることが多い。

三島由紀夫「第一の性」より

54:この名無しがすごい!
10/03/28 10:49:12 eRqmxaxr
芸術作品の形成がそもそも死と闘ひ死に抵抗する営為なのである。
三島由紀夫「日記」より

55:この名無しがすごい!
10/03/28 10:49:42 eRqmxaxr
幸福がつかのまだといふ哲学は、不幸な人間も幸福な人間もどちらも好い気持にさせる力を持つてゐる。

三島由紀夫「スタア」より

56:この名無しがすごい!
10/03/28 10:50:12 eRqmxaxr
告白癖のある友人ほどうるさいものはない。

三島由紀夫「不道徳教育講座」より

57:この名無しがすごい!
10/03/28 10:50:40 eRqmxaxr
われわれが文明の利便として電気洗濯機を利用することと、水爆を設計した精神とは無縁ではない。

三島由紀夫「小説家の休暇」より

58:この名無しがすごい!
10/03/28 10:51:13 eRqmxaxr
幸福つて、何も感じないことなのよ。幸福つて、もつと鈍感なものよ。

三島由紀夫「夜の向日葵」より

59:この名無しがすごい!
10/03/28 10:51:35 eRqmxaxr
「武」とは花と散ることであり、「文」とは不朽の花を育てることだ。

三島由紀夫「太陽と鉄」より

60:この名無しがすごい!
10/03/28 23:34:50 eRqmxaxr
処女だけに似つかはしい種類の淫蕩さといふものがある。
それは成熟した女の淫蕩とはことかはり、微風のやうに人を酔はせる。

三島由紀夫「仮面の告白」より

61:この名無しがすごい!
10/03/30 16:36:42 lgTA6Mwm
言葉に対する不信が、そもそも自分の言葉を持たぬ者、ただの一度も言葉に信念の根拠を置かなかつた者から
発せられたことがまちがひだつたのだ。

三島由紀夫「『変革の思想』とは―道理の実現」より

62:この名無しがすごい!
10/03/30 16:43:16 lgTA6Mwm
戦後の日本にとつては、真の民族問題はありえず、在日朝鮮人問題は、国際問題であり、リフュジー(難民)の
問題であつても、日本国内の問題ではありえない。
これを内部の問題であるかの如く扱ふ一部の扱ひには、明らかに政治的意図があつて、先進工業国における
革命主体としての異民族の利用価値を認めたものに他ならない。
…手段としての民族主義はこれを自由に使ひ分けながら、沖縄問題や新島問題では、「人質にされた日本人」の
イメージを以て訴へかけ、一方、起りうべき朝鮮半島の危機に際しては、民族主義の国際的連帯感といふ
論理矛盾を、再び心情的に前面に押し出すであらう。
被害者日本と加害者日本のイメージを使ひ分けて、民族主義を領略しようと企てるであらう。

三島由紀夫「文化防衛論 戦後民族主義の四段階」より

63:この名無しがすごい!
10/03/31 05:44:43 SM5Rc/YB
なんという三島由紀夫スレ

64:この名無しがすごい!
10/03/31 13:50:14 /aYUKoPM
人間は自分のためだけに生きて自分のためだけに死ぬほど強くない。
URLリンク(www.youtube.com)
URLリンク(www.nicovideo.jp)

65:この名無しがすごい!
10/04/03 10:58:40 s/SSvsKH
「足が地につかない」ことこそ、男性の特権であり、すべての光栄のもとであります。

三島由紀夫「第一の性」より

66:この名無しがすごい!
10/04/03 10:59:01 s/SSvsKH
動物になるべきときにはちやんと動物になれない人間は不潔であります。

三島由紀夫「第一の性」より

67:この名無しがすごい!
10/04/03 10:59:22 s/SSvsKH
変はり者と理想家とは、一つの貨幣の両面であることが多い。
どちらも、説明のつかないものに対して、第三者からはどう見ても無意味なものに対して、
頑固に忠実にありつづける。

三島由紀夫「第一の性」より

68:この名無しがすごい!
10/04/03 11:40:32 s/SSvsKH
相容れないものが一つになり、反対のものがお互ひを照らす。それがつまり美といふものだ。
陽気な女の花見より、悲しんでゐる女の花見のはうが美しい。

三島由紀夫「熊野」より

69:この名無しがすごい!
10/04/03 11:41:05 s/SSvsKH
世界が虚妄だ、といふのは一つの観点であつて、世界は薔薇だ、と言ひ直すことだつてできる。

三島由紀夫「『薔薇と海賊』について」より

70:この名無しがすごい!
10/04/03 22:31:01 s/SSvsKH
人が愛され尽した果てに求めることは、恐れられることだ。

三島由紀夫「芥川比呂志の『マクベス』」より

71:この名無しがすごい!
10/04/03 22:31:50 s/SSvsKH
文学は、どんなに夢にあふれ、又、読む人の心に夢を誘ひ出さうとも、第一歩は、必ず
作者の夢が破れたところに出発してゐる。

三島由紀夫「秋冬随筆」より

72:この名無しがすごい!
10/04/03 22:32:38 s/SSvsKH
軽蔑とは、女の男に対する永遠の批評なのであります。

三島由紀夫「反貞女大学」より

73:この名無しがすごい!
10/04/03 22:33:52 s/SSvsKH
芸術家といふのは自然の変種です。

三島由紀夫「反貞女大学」より

74:この名無しがすごい!
10/04/03 22:44:22 s/SSvsKH
僕らは嘗て在つたもの凡てを肯定する。そこに僕らの革命がはじまるのだ。
僕らの肯定は諦観ではない。僕らの肯定には残酷さがある。
―僕らの数へ切れない喪失が正当を主張するなら、嘗ての凡ゆる獲得も亦正当である筈だ。
なぜなら歴史に於ける蓋然性の正義の主張は歴史の必然性の範疇をのがれることができないから。
僕らはもう過渡期といふ言葉を信じない。
一体その過渡期をよぎつてどこの彼岸へ僕らは達するといふのか。僕らは止められてゐる。
僕らの刻々の態度決定はもはや単なる模索ではない。
時空の凡ゆる制約が、僕らの目には可能性の仮装としかみえない。
僕らの形成の全条件、僕らをがんじがらめにしてゐる凡ての歴史的条件、―そこに僕らはたえず僕らを
無窮の星空へ放逐しようとする矛盾せる熱情を読むのである。
決定されてゐるが故に僕らの可能性は無限であり、止められてゐるが故に僕らの飛翔は永遠である。

三島由紀夫「わが世代の革命」より

75:この名無しがすごい!
10/04/04 17:09:20 iQJyIdcT
世界が必ず滅びるといふ確信がなかつたら、どうやつて生きてゆくことができるだらう。

三島由紀夫「鏡子の家」より

76:この名無しがすごい!
10/04/04 17:10:05 iQJyIdcT
狂人がある程度自分を狂人だと知つてゐるやうに、嫌はれるタイプの男は、ある程度、
自分が嫌はれることを知つてゐるのだが、狂人がさういふ自己認識にすこしも煩はされないやうに、
嫌はれてゐるといふ認識にすこしも煩はされないことが、嫌はれ型の真価の特質なのである。

三島由紀夫「鏡子の家」より

77:この名無しがすごい!
10/04/05 09:51:23 RPB7zKS6
少年期の特長は残酷さです。どんなにセンチメンタルにみえる少年にも、植物的な残酷さがそなはつてゐる。
少女も残酷です。やさしさといふものは、大人のずるさと一緒にしか成長しないものです。

三島由紀夫「不道徳教育講座」より

78:この名無しがすごい!
10/04/05 09:55:43 RPB7zKS6
女性はそもそも、いろんな点でお月さまに似てをり、お月さまの影響を受けてゐるが、
男に比して、すぐ肥つたりすぐやせたりしやすいところもお月さまそつくりである。

三島由紀夫「反貞女大学」より

79:この名無しがすごい!
10/04/05 10:05:53 RPB7zKS6
ちやうど年寄りの盆栽趣味のやうに、美といふものは洗練されるにつれて、一種の畸型を求めるやうになる。
…そして、さういふ奇妙な流行を作るのは、たいてい男の側からの要求であり、パリのデザイナーも
ほとんど男ですし、ほかのことでは何でも男性に楯つくけとの好きな女性が、流行についてだけは、
素直に男の命令に従ひます。

三島由紀夫「反貞女大学」より

80:この名無しがすごい!
10/04/05 16:52:44 RPB7zKS6
かういふ箇所(自然描写)で長所を見せる堀氏は、氏自身の志向してゐたフランス近代の心理作家よりも、
北欧の、たとへばヤコブセンのやうな作家に近づいてゐる。
人は自ら似せようと思ふものには、なかなか似ないものである。

三島由紀夫「現代小説は古典たり得るか 『菜穂子』修正意見」より

81:この名無しがすごい!
10/04/05 17:01:48 RPB7zKS6
私にとつては、美はいつも後退りをする。かつて在つた、あるひはかつて在るべきであつた姿しか、
私にとつては重要でない。
鉄塊は、その微妙な変化に富んだ操作によつて、肉体のうちに失はれかかつてゐた古典的均衡を蘇らせ、
肉体をあるべきであつた姿に押し戻す働らきをした。

三島由紀夫「太陽と鉄」より

82:この名無しがすごい!
10/04/05 17:02:57 RPB7zKS6
私はかつて、彼自身も英雄と呼ばれてをかしくない肉体的資格を持つた男の口から、英雄主義に対する嘲笑が
ひびくのをきいたことがない。シニシズムは必ず、薄弱な筋肉か過剰な脂肪に関係があり、英雄主義と強大な
ニヒリズムは、鍛へられた筋肉と関係あるのだ。

三島由紀夫「太陽と鉄」より

83:この名無しがすごい!
10/04/05 17:07:21 RPB7zKS6
私が求めるのは、勝つにせよ、負けるにせよ、戦ひそのものであり、戦はずして敗れることも、ましてや、
戦はずして勝つことも、私の意中にはなかつた。一方では、私は、あらゆる戦ひといふものの、芸術における
虚偽の性質を知悉してゐた。
もしどうしても私が戦ひを欲するなら、芸術においては砦を防衛し、芸術外において攻撃に出なければならぬ。
芸術においてはよき守備兵であり、芸術外においてはよき戦士でなければならぬ。

三島由紀夫「太陽と鉄」より

84:この名無しがすごい!
10/04/05 17:09:30 RPB7zKS6
かつて向う岸にゐたと思はれた人々は、もはや私と同じ岸にゐるやうになつた。
すでに謎はなく、謎は死だけになつた。

三島由紀夫「太陽と鉄」より

85:この名無しがすごい!
10/04/05 17:10:04 RPB7zKS6
私の幼時の直感、集団といふものは肉体の原理にちがひないといふ直感は正しかつた。

三島由紀夫「太陽と鉄」より

86:この名無しがすごい!
10/04/05 17:10:56 RPB7zKS6
私には地球を取り巻く巨きな巨きな蛇の環が見えはじめた。
すべての対極性を、われとわが尾を嚥(の)みつづけることによつて鎮める蛇。すべての相反性に対する嘲笑を
ひびかせてゐる最終の巨大な蛇。私にはその姿が見えはじめた。

三島由紀夫「太陽と鉄」より

87:この名無しがすごい!
10/04/05 17:11:28 RPB7zKS6
相反するものはその極致において似通ひ、お互ひにもつとも遠く隔たつたものは、
ますます遠ざかることによつて相近づく。

三島由紀夫「太陽と鉄」より

88:この名無しがすごい!
10/04/05 17:12:00 RPB7zKS6
ほんのつかのまでも、われわれの脳裡に浮んだことは存在する。
現に存在しなくても、かつてどこかに存在したか、あるひはいつか存在するであらう。

三島由紀夫「太陽と鉄」より

89:この名無しがすごい!
10/04/06 23:44:50 SWBOGibi
五十歳の美女は二十歳の美女には絶対にかなはない。

美女と醜女とのひどい階級差は、美男と醜男との階級差とは比べものにならない。

三島由紀夫「をはりの美学 美貌のをはり」より

90:この名無しがすごい!
10/04/06 23:45:18 SWBOGibi
手紙は遠くからやつてきた一つの小舟です。

三島由紀夫「をはりの美学 手紙のをはり」より

91:この名無しがすごい!
10/04/06 23:45:43 SWBOGibi
個性とは何か?
弱味を知り、これを強味に転じる居直りです。

三島由紀夫「をはりの美学 個性のをはり」より

92:この名無しがすごい!
10/04/06 23:46:14 SWBOGibi
私は「私の鼻は大きくて魅力的でしよ」などと頑張つてゐる女の子より、美の規格を外れた鼻に絶望して、
人生を呪つてゐる女の子のはうを愛します。それが「生きてゐる」といふことだからです。

三島由紀夫「をはりの美学 個性のをはり」より

93:この名無しがすごい!
10/04/06 23:46:57 SWBOGibi
男性は、安楽を100パーセント好きになれない動物だ。また、なつてはいけないのが男である。

三島由紀夫「あなたは現在の恋人と結婚しますか?」より

94:この名無しがすごい!
10/04/06 23:47:24 SWBOGibi
裏切りは、かならずしも悪人と善人のあひだでおこるとはかぎらない。

三島由紀夫「あなたは現在の恋人と結婚しますか?」より

95:この名無しがすごい!
10/04/06 23:48:15 SWBOGibi
世間ではどんなに英雄的に見える男でも、家庭では甲羅ぼしをするカメのやうなものである。
“男性を偶像化すべからず”職場での彼、デート中の彼から70%以上の魅力を差し引いたものが、家庭での彼の姿。

三島由紀夫「あなたは現在の恋人と結婚しますか?」より

96:この名無しがすごい!
10/04/07 11:41:02 P1aNrnmy
男子高校生は「娘」といふ言葉をきき、その字を見るだけで、胸に甘い疼きを感じる筈だが、
この言葉には、あるあたたかさと匂ひと、親しみやすさと、MUSUMEといふ音から来る
何ともいへない閉鎖的なエロティシズムと、むつちりした感じと、その他もろもろのものがある。
プチブル的臭気のまじつた「お嬢さん」などといふ言葉の比ではない。

三島由紀夫「美しい女性はどこにいる」より

97:この名無しがすごい!
10/04/08 16:49:49 RavkmSp5
真に抒情的なものは、詩人の面立(おもだち)と闘牛師の肉体との、稀な結合からだけしか生れないだらう。

三島由紀夫「鏡子の家」より

98:この名無しがすごい!
10/04/08 16:50:45 RavkmSp5
芸術的才能といふものの裡にひそむ一種の抜きがたい暗さを嗅ぎ当てる点では、
世俗的な人たちの鼻もなかなか莫迦にしたものではない。
才能とは宿命の一種であり、宿命といふものは多かれ少なかれ、市民生活の敵なのである。

三島由紀夫「鏡子の家」より

99:この名無しがすごい!
10/04/08 16:51:11 RavkmSp5
女の裸体は猥褻なだけさ。美しいのは男の肉体に決まつてゐるさ。

三島由紀夫「鏡子の家」より

100:この名無しがすごい!
10/04/08 16:51:43 RavkmSp5
神聖なものほど猥褻だ。だから恋愛より結婚のはうがずつと猥褻だ。

三島由紀夫「鏡子の家」より

101:この名無しがすごい!
10/04/08 18:40:18 HLxoMo4L
φ(.. ) うむ

102:この名無しがすごい!
10/04/10 11:37:18 oDO7L6A+
風俗は滑稽に見えたときおしまひであり、美は珍奇からはじまつて滑稽で終る。
つまり新鮮な美学の発展期には、人々はグロテスクな不快な印象を与へられますが、
それが次第に一般化するにしたがつて、平均美の標準と見られ、古くなるにしたがつて
古ぼけた滑稽なものと見られて行きます。

三島由紀夫「文章読本」より

103:この名無しがすごい!
10/04/10 11:37:52 oDO7L6A+
ユーモアと冷静さと、男性的勇気とは、いつも車の両輪のやうに相伴ふもので、
ユーモアとは理知のもつともなごやかな形式なのであります。

三島由紀夫「文章読本」より

104:この名無しがすごい!
10/04/11 15:38:12 1hUPqTsk
あまりの三島スレぶりに驚いたw

105:この名無しがすごい!
10/04/12 10:20:37 x9J3iWCQ
政敵のない政治は必ず恐怖か汚濁を生む。

三島由紀夫「憂楽帳 政敵」より

106:この名無しがすごい!
10/04/12 10:21:47 x9J3iWCQ
「老巧」などといふ言葉は、スポーツの世界では不吉な言葉で、それはいつかきつと
「若さ」に敗れる日が来るのである。

三島由紀夫「追ふ者追はれる者―ペレス・米倉戦観戦記」より

107:この名無しがすごい!
10/04/12 10:22:34 x9J3iWCQ
芸術上の創造行為は存在そのものからは生れて来ない。
自ら美しく生きようと思つた芸術家は一人もゐなかつたので、美を創ることと、
自分が美しく生きることとは、まるで反対の事柄である。

三島由紀夫「女が美しく生きるには」より

108:この名無しがすごい!
10/04/12 10:25:49 x9J3iWCQ
一つの時代は、時代を代表する俳優を持つべきである。

三島由紀夫「六世中村歌右衛門序説」より

109:この名無しがすごい!
10/04/12 10:26:35 x9J3iWCQ
純粋とは、結局、宿命を自ら選ぶ決然たる意志のことだ、と定義してもよいやうに思はれる。

三島由紀夫「純粋とは」より

110:この名無しがすごい!
10/04/12 10:29:50 x9J3iWCQ
無神論も、徹底すれば徹底するほど、唯一神信仰の裏返しにすぎぬ。
無気力も、徹底すれば徹底するほど、情熱の裏返しにすぎぬ。
近ごろはやりの反小説も、小説の裏返しにすぎぬ。

三島由紀夫「川端康成氏再説」より

111:この名無しがすごい!
10/04/12 10:30:30 x9J3iWCQ
たとへば情熱、たとへば理想、たとへば知性、……何でもかまはないが、人間によつて
価値づけられたもののかういふ体系を、誰も抜け出すことができない。
逆を行けば裏返しになるだけのことだ。

三島由紀夫「川端康成再説」より

112:この名無しがすごい!
10/04/12 15:26:35 x9J3iWCQ
ブラジルは人種的偏見の少ない国だが、それでも黒人の悲願は白人に生れ変ることであり、
かういふ宿命を抱いた人たちは、当然仮装に熱中する。
仮装こそ、「何かになりたい」といふ念願の仮の実現だからである。

三島由紀夫「『黒いオルフェ』を見て」より

113:この名無しがすごい!
10/04/12 15:27:22 x9J3iWCQ
別に酒を飲んだりごちそうをたべたりしなくても、気の合つた人間同士の三十分か一時間の
会話の中には、人生の至福がひそむ

三島由紀夫「社交について―世界を旅し、日本を顧みる」より

114:この名無しがすごい!
10/04/12 15:28:01 x9J3iWCQ
どんなに平和な装ひをしてゐても「世界政策」といふことばには、ヤクザの隠語のやうな、
独特の血なまぐささがある。
概括的な、概念的な世界認識の裏側には必ず水素爆弾がくすぶつてゐるのである。

三島由紀夫「終末感と文学」より

115:この名無しがすごい!
10/04/12 15:40:18 x9J3iWCQ
生物は、いらいらの中で育ち、成長期に死に一等親近してゐるやうに感じ、さて、
幸福感を感じるときには、もう衰退の中にゐるのだ。

三島由紀夫「春先の突風」より

116:この名無しがすごい!
10/04/12 15:41:43 x9J3iWCQ
春といふ言葉は何と美しく、その実体は何とまとまりがなく不安定であらう。さうして
青春は思ひ出の中でのみ美しいとよく云ふけれど、少し記憶力のたしかな人間なら、
思ひ出の中の青春は大抵醜悪である。多分、春がこんなに人をいらいらさせるのは、
この季節があまりに真摯誠実で、アイロニイを欠いてゐるからであらう。
あの春先のまつ黄いろな突風に会ふたびに、私は、うるさい、まともすぎる誠実さから
顔をそむけるやうに、顔をそむけずにはゐられないのである。

三島由紀夫「春先の突風」より

117:この名無しがすごい!
10/04/12 15:42:21 x9J3iWCQ
青春の特権といへば、一言を以てすれば、無知の特権であらう。

三島由紀夫「私の遍歴時代」より

118:この名無しがすごい!
10/04/14 10:05:29 STjk05rz
アメリカでは、成功者や金持は決して自由ではない。従つて、「最高の自由」は、わびしさの同義語になる。

三島由紀夫「芸術家部落―グリニッチ・ヴィレッジの午後」より

119:この名無しがすごい!
10/04/14 10:09:28 STjk05rz
なぜ大人は酒を飲むのか。大人になると悲しいことに、酒を呑まなくては酔へないからである。
子供なら、何も呑まなくても、忽ち遊びに酔つてしまふことができる。

三島由紀夫「社会料理三島亭 折詰料理『日本人の娯楽』」より

120:この名無しがすごい!
10/04/14 10:11:13 STjk05rz
生の充溢感と死との結合は、久しいあひだ私の美学の中心であつたが、これは何も浪漫派に限らず、
芸術作品の形成がそもそも死と闘ひ死に抵抗する営為なのであるから、死に対する媚態と
死から受ける甘い誘惑は、芸術および芸術家の必要悪なのかもしれないのである。

三島由紀夫「日記」より

121:この名無しがすごい!
10/04/14 16:36:43 STjk05rz
空虚な目標であれ、目標をめざして努力する過程にしか人間の幸福が存在しない

三島由紀夫「小説家の息子」より

122:この名無しがすごい!
10/04/14 16:44:05 STjk05rz
男はどんな職業についても、根本に膂力(りよりよく)の自信を持つてゐなくてはならない。
なぜなら世間は知的エリートだけで動いてゐるのではなく、無知な人間に対して優越性を
証明するのは、肉体的な力と勇気だけだからだ。

三島由紀夫「小説家の息子」より

123:この名無しがすごい!
10/04/14 17:58:40 STjk05rz
自分に似合はないものを思ひ切つて着る蛮勇といふものも、作家の持つべき美徳の一つである。

三島由紀夫「発射塔 文壇衣装論」より

124:この名無しがすごい!
10/04/15 04:24:52 LEcelEvr
三島って意外といろんな本出してるんだな
小説家のイメージが強かったが

125:この名無しがすごい!
10/04/15 17:02:30 98R1PTjf
>>124
意外と面白い評論やエッセイが沢山あるよ。うんと頭のいい博識なナンシー関みたいな感じがします。

126:この名無しがすごい!
10/04/15 17:15:36 98R1PTjf
芸術家の値打の分れ目は、死んだあとに書かれる追悼文の面白さで決ると言つてよい

三島由紀夫「芸術断想」より

127:この名無しがすごい!
10/04/15 17:16:46 98R1PTjf
夫婦の生活程度や教養の程度の近似といふことは、結婚生活のかなり大事な要素である。
性格の相違などといふ文句は、実は、それまでの夫婦各自の生活史のちがひにすぎぬことが多い。

三島由紀夫「見合ひ結婚のすすめ」より

128:この名無しがすごい!
10/04/16 12:10:21 5JbSJWYb
「日本的」といふ言葉のなかには、十分、ツイスト的要素、マッシュド・ポテト的要素、ロックンロール的要素もあるのです。

三島由紀夫「『日本的な』お正月」より

129:この名無しがすごい!
10/04/16 12:13:30 5JbSJWYb
「希望は過去にしかない」といふ悲観哲学は、伝統芸能の場合、一種特別な意味合ひを帯び、
「昔はよかつた」といふ言葉にたえず刺戟されないかぎり、芸術的完成はありえない

三島由紀夫「芸術断想 期待と失望」より

130:この名無しがすごい!
10/04/16 12:14:17 5JbSJWYb
赤ん坊の顔は無個性だけれど、もし赤ん坊の顔のままを大人まで持ちつづけたら、
すばらしい個性になるだらう。しかし誰もそんなことはできず、大人は大人なりに、
又々十把一からげの顔になることかくの如し。

三島由紀夫「赤ちゃん時代―私のアルバム」より

131:この名無しがすごい!
10/04/16 12:15:13 5JbSJWYb
芸術には必ず針がある。毒がある。この毒をのまずに、ミツだけを吸ふことはできない。
四方八方から可愛がられて、ぬくぬくと育てることができる芸術などは、この世に存在しない。
諸君を北風の中へ引張り出して鍛へてやらうと思つたのに、ふたたび温室の中へはひ込むのなら、
私は残念ながら諸君とタモトを分つ他はないのである。

三島由紀夫「文学座の諸君への『公開状』―『喜びの琴』の上演拒否について」より

132:この名無しがすごい!
10/04/17 17:57:17 FdgK36AE
>>131
言葉のチョイス好きだわ
三島以外の作家の言葉もやってくれ

133:この名無しがすごい!
10/04/17 18:41:15 /+seEjWQ
意外に盛り上がってるなあ。
名言言ってる作家がそんなにいるのか……ってなにこの三島スレ。

134:この名無しがすごい!
10/04/18 23:32:38 z90LRnQ2
全然愛してゐないといふことが、情熱の純粋さの保証になる場合があるのだ。

三島由紀夫「絹と明察」より

135:この名無しがすごい!
10/04/18 23:33:35 z90LRnQ2
若さが幸福を求めるなどといふのは衰退である。
若さはすべてを補ふから、どんな不自由も労苦も忍ぶことができ、かりにも若さが
おのれの安楽を求めるときは、若さ自体の価値をないがしろにしてゐるのである。

三島由紀夫「絹と明察」より

136:この名無しがすごい!
10/04/18 23:34:15 z90LRnQ2
自由やと?平和やと?そないなこと皆女子(おなご)の考へや。
女子の嚔(くさめ)と一緒や。男まで嚔をして、風邪を引かんかつてええのや。

三島由紀夫「絹と明察」より

137:この名無しがすごい!
10/04/20 10:15:05 Yd5/QtRk
人は信じた思想のとほりの顔になる。

三島由紀夫「鏡子の家」より

138:この名無しがすごい!
10/04/20 10:15:47 Yd5/QtRk
どこの社会にも、誰が見ても不適任者と思はれる人が、そのくせ恰(あた)かも運命的に
そこに据つてゐるのを見るものだ。

三島由紀夫「鏡子の家」より

139:この名無しがすごい!
10/04/20 10:16:29 Yd5/QtRk
権力や金に倦き果てた老人のたしなむ芸術には、あらゆる玄人の芸術にとつて必須な、
あの世界に対する権力意志が忌避されてゐる。

三島由紀夫「鏡子の家」より

140:この名無しがすごい!
10/04/20 10:17:17 Yd5/QtRk
芸術作品とは、目に見える美とはちがつて、目に見える美をおもてに示しながら、
実はそれ自体は目に見えない、単なる時間的耐久性の保障なのである。
作品の本質とは、超時間性に他ならないのだ。

三島由紀夫「鏡子の家」より

141:この名無しがすごい!
10/04/20 10:18:01 Yd5/QtRk
ひどい暮しをしながら、生きてゐるだけでも仕合せだと思ふなんて、奴隷の考へね。
一方では、人並な安楽な暮しをして、生きてゐるのが仕合せだと思つてゐるのは、動物の感じ方ね。

三島由紀夫「鏡子の家」より

142:この名無しがすごい!
10/04/20 10:19:05 Yd5/QtRk
美にとつては、世界喪失は苦悩ではなくて生誕の讃歌のやうなものなのだ。
そこでは美がやさしい手で規定の存在を押しのけて、その空席に腰を下ろすことに、
何のためらひもありはしないのだ。
いいかへれば天才の感受性とは、人目にいかほど感じ易くみえやうと、決して
悲劇に到達しない特質を荷つてゐるのである。

三島由紀夫「鏡子の家」より

143:この名無しがすごい!
10/04/20 10:19:54 Yd5/QtRk
他人の情念にしろ、希望にしろ、他人にあんまり興味を持ちすぎることは危険です。
それはこちらが考へもせず、想像もしないところへまで引きづつてゆき、つひには
『他人の希望』の代りに、『他人の運命』を背負ひ込む羽目になります。

三島由紀夫「鏡子の家」より

144:この名無しがすごい!
10/04/20 10:24:25 Yd5/QtRk
美しい者にならうといふ男の意志は、同じことをねがふ女の意志とはちがつて、
必ず『死の意志』なのだ。
これはいかにも青年にふさはしいことだが、ふだんは青年自身が恥ぢてゐてその秘密を明さない。

三島由紀夫「鏡子の家」より

145:この名無しがすごい!
10/04/20 10:24:55 Yd5/QtRk
健康な青年にとつて、おそらく一等緊急な必要は『死』の思想だ。

三島由紀夫「鏡子の家」より

146:この名無しがすごい!
10/04/20 10:26:45 Yd5/QtRk
人生といふ邪教、それは飛切りの邪教だわ。私はそれを信じることにしたの。
生きようとしないで生きること、現在といふ首なしの馬にまたがつて走ること

三島由紀夫「鏡子の家」より

147:この名無しがすごい!
10/04/20 10:28:31 Yd5/QtRk
もし魂といふものがあるなら、霊魂が存在するなら、それは人間の内部に奥深く
ひそむものではなくて、人間の外部へ延ばした触手の先端、人間の一等外側の
縁(へり)でなければならない。
その輪郭、その外縁をはみ出したら、もはや人間ではなくなるやうな、ぎりぎりの
縁でなければならない。

三島由紀夫「鏡子の家」より

148:この名無しがすごい!
10/04/20 23:21:48 Yd5/QtRk
なぜなら、すべて神聖なものは夢や思ひ出と同じ要素から成立ち、時間や空間によつて
われわれと隔てられてゐるものが、現前してゐることの奇蹟だからです。しかしそれら三つは、
いづれも手で触れることのできない点で共通してゐます。手で触れることのできたものから、
一歩遠ざかると、もうそれは神聖なものになり、奇蹟になり、ありえないやうな美しいものになる。
事物にはすべて神聖さが具はつてゐるのに、われわれの指が触れるから、それは汚濁になつてしまふ。
われわれ人間はふしぎな存在ですね。指で触れるかぎりのものを涜(けが)し、しかも
自分のなかには、神聖なものになりうる素質を持つてゐるんですから。

三島由紀夫「春の雪」より

149:この名無しがすごい!
10/04/20 23:22:52 Yd5/QtRk
歴史はいつも崩壊する。又次の徒(あだ)な結晶を準備するために。
歴史の形成と崩壊とは同じ意味をしか持たないかのやうだ。

三島由紀夫「春の雪」より

150:この名無しがすごい!
10/04/20 23:24:22 Yd5/QtRk
優雅といふものは禁を犯すものだ。それも至高の禁を。

三島由紀夫「春の雪」より

151:この名無しがすごい!
10/04/21 10:23:16 0bFlQFnM
われわれは恋しい人を目の前にしてさへ、その姿形と心とをばらばらに考へるほど
愚かなのだから、今僕は彼女の実在と離れてゐても、逢つてゐるときよりも却つて
一つの結晶を成した月光姫を見てゐるのかもしれないのだ。
別れてゐることが苦痛なら、逢つてゐることも苦痛でありうるし、逢つてゐることが
歓びならば、別れてゐることも歓びであつてならぬといふ道理はない。

三島由紀夫「春の雪」より

152:この名無しがすごい!
10/04/21 10:30:51 0bFlQFnM
……海はすぐその目の前で終る。
波の果てを見てゐれば、それがいかに長いはてしない努力の末に、今そこであへなく
終つたかがわかる。そこで世界をめぐる全海洋的規模の、一つの雄大きはまる企図が徒労に終るのだ。

三島由紀夫「春の雪」より

153:この名無しがすごい!
10/04/21 10:31:32 0bFlQFnM
肉体が連続しなくても、妄念が連続するなら、同じ個体と考へて差支へがありません。
個体と云はずに、『一つの生の流れ』と呼んだらいいかもしれない。

三島由紀夫「春の雪」より

154:この名無しがすごい!
10/04/21 10:34:16 0bFlQFnM
どんな夢にもをはりがあり、永遠なものは何もないのに、それを自分の権利と思ふのは
愚かではございませんか。
私はあの『新しき女』などとはちがひます。……でも、もし永遠があるとすれば、
それは今だけなのでございますわ。

三島由紀夫「春の雪」より

155:この名無しがすごい!
10/04/21 10:35:08 0bFlQFnM
『ああ……「僕の年」が過ぎてゆく! 過ぎてゆく! 一つの雲のうつろひと共に』

三島由紀夫「春の雪」より

156:この名無しがすごい!
10/04/21 10:35:31 0bFlQFnM
今、夢を見てゐた。又、会ふぜ。きつと会ふ。滝の下で

三島由紀夫「春の雪」より

157:この名無しがすごい!
10/04/22 10:22:37 a4LcnE+H
本当の危険とは、生きてゐるといふそのことの他にはありやしない。
生きてゐるといふことは存在の単なる混乱なんだけど、存在を一瞬毎にもともとの
無秩序にまで解体し、その不安を餌にして、一瞬毎に存在を造り変へようといふ
本当にイカれた仕事なんだからな。こんな危険な仕事はどこにもないよ。

三島由紀夫「午後の曳航」より

158:この名無しがすごい!
10/04/22 10:23:05 a4LcnE+H
大義とは?それはただ、熱帯の太陽の別名だつたかもしれないのだ。

三島由紀夫「午後の曳航」より

159:この名無しがすごい!
10/04/22 10:23:54 a4LcnE+H
世界は単純な記号と決定で出来上つてゐる。

三島由紀夫「午後の曳航」より

160:この名無しがすごい!
10/04/22 10:25:05 a4LcnE+H
ころがり落ちた歯車は、又もとのところへ、無理矢理はめ込まなくちやいけない。
さうしなくちや世界の秩序が保てない。僕たちは世界が空つぽだといふことを知つてるんだから、
大切なのは、その空つぽの秩序を何とか保つて行くことにしかない。

三島由紀夫「午後の曳航」より

161:この名無しがすごい!
10/04/22 10:25:44 a4LcnE+H
血が必要なんだ!人間の血が!さうしなくちや、この空つぽの世界は蒼ざめて枯れ果ててしまふんだ。

三島由紀夫「午後の曳航」より

162:この名無しがすごい!
10/04/22 10:26:06 a4LcnE+H
誰も知るやうに、栄光の味は苦い。

三島由紀夫「午後の曳航」より

163:この名無しがすごい!
10/04/23 10:14:45 PXtFdvjk
感傷といふものが女性的な特質のやうに考へられてゐるのは明らかに誤解である。
感傷的といふことは男性的といふことなのだ。

三島由紀夫「青の時代」より

164:この名無しがすごい!
10/04/23 10:15:20 PXtFdvjk
われわれは、なかなかそれと気がつかないが、自分といちばん良く似てゐる人間なるがゆゑに、
父親を憎たらしく思ふのである。

三島由紀夫「青の時代」より

165:この名無しがすごい!
10/04/23 10:15:51 PXtFdvjk
男性は本質を愛し、女性は習慣を愛する

三島由紀夫「青の時代」より

166:この名無しがすごい!
10/04/23 10:16:30 PXtFdvjk
凡ゆる愛国心にはナルシスがひそんでゐるので、凡ゆる愛国心は美しい制服を必要とする

三島由紀夫「青の時代」より

167:この名無しがすごい!
10/04/23 10:17:08 PXtFdvjk
戦争といふ奴は、人間の背丈を伸ばしもしなけりやあ縮めもしない

三島由紀夫「青の時代」より

168:この名無しがすごい!
10/04/23 10:17:38 PXtFdvjk
男が金をほしがるのはつまり女が金をほしがるからだといふのは真理だな。

三島由紀夫「青の時代」より

169:この名無しがすごい!
10/04/23 10:18:54 PXtFdvjk
近代が発明したもろもろの幻影のうちで、「社会」といふやつはもつとも人間的な幻影だ。
人間の原型は、もはや個人のなかには求められず社会のなかにしか求められない。
原始人のやうに健康に欲望を追求し、原始人のやうに生き、動き、愛し、眠るのは、
近代においては「社会」なのである。新聞の三面記事が争つて読まれるのは、
この原始人の朝な朝なの生態と消息を知らうとする欲望である。

三島由紀夫「青の時代」より

170:この名無しがすごい!
10/04/23 10:19:23 PXtFdvjk
過度の軽蔑はほとんど恐怖とかはりがない。

三島由紀夫「青の時代」より

171:この名無しがすごい!
10/04/23 11:02:22 PXtFdvjk
小金をもつてゐれば誰でも社長や専務になれ、女は毛皮の外套さへもつてゐればみんな
上流の奥様でとほり、世間はかうした仮装に容易に欺されることを以て一種の仮想の秩序を維持して来たのであつた。
だから演技による瞞著(まんちやく)は今の社会に対する礼法(エチケット)である。

三島由紀夫「青の時代」より

172:この名無しがすごい!
10/04/23 11:03:00 PXtFdvjk
人助けは実に気持のよいものであり、殊に利潤の上る人助けと来たらたまらない。

三島由紀夫「青の時代」より

173:この名無しがすごい!
10/04/23 11:03:24 PXtFdvjk
人間、正道を歩むのは却つて不安なものだ。

三島由紀夫「青の時代」より

174:この名無しがすごい!
10/04/23 11:03:59 PXtFdvjk
すべての人の上に厚意が落ちかゝる日があるやうに、すべての人の上に悪意が落ちかゝる日があるものだ。

三島由紀夫「青の時代」より

175:この名無しがすごい!
10/04/23 11:04:28 PXtFdvjk
人間の弱さは強さと同一のものであり、美点は欠点の別な側面だといふ考へに達するためには、
年をとらなければならない。

三島由紀夫「青の時代」より

176:この名無しがすごい!
10/04/23 11:05:03 PXtFdvjk
人間の存在の意味には、存在の意識によつて存在を亡ぼし、存在の無意識あるひは無意味によつて
存在の使命を果す一種の摂理が働らいてゐるにちがひない。

三島由紀夫「青の時代」より

177:この名無しがすごい!
10/04/24 10:43:37 l00bGlXS
極端に自分の感情を秘密にしたがる性格の持主は、一見どこまでも傷つかぬ第三者として
身を全うすることができるかとみえる。ところがかういふ人物の心の中にこそ、
現代の綺譚と神秘が住み、思ひがけない古風な悲劇へとそれらが彼を連れ込むのである。

三島由紀夫「盗賊」より

178:この名無しがすごい!
10/04/24 10:45:05 l00bGlXS
男には屡々(しばしば)見るが女にはきはめて稀なのが偽悪者である。
と同時に真の偽善者も亦、女の中にこれを見出だすのはむつかしい。
女は自分以外のものにはなれないのである。といふより実にお手軽に「自分自身」になりきるのだ。
宗教が女性を収攬しやすい理由は茲(ここ)にある。

三島由紀夫「盗賊」より

179:この名無しがすごい!
10/04/24 10:45:42 l00bGlXS
女の心に全く無智な者として振舞ひながらその心に触れてゆくやり方は青年の特権である

三島由紀夫「盗賊」より

180:この名無しがすごい!
10/04/24 10:47:42 l00bGlXS
嫉妬こそ生きる力だ。
だが魂が未熟なままに生ひ育つた人のなかには、苦しむことを知つて嫉妬することを
知らない人が往々ある。
彼は嫉妬といふ見かけは危険でその実安全な感情を、もつと微妙で高尚な、それだけ、
はるかに、危険な感情と好んですりかへてしまふのだ。

三島由紀夫「盗賊」より

181:この名無しがすごい!
10/04/24 10:48:12 l00bGlXS
死を人は生の絵具を以てしか描きだすことができない。

三島由紀夫「盗賊」より

182:この名無しがすごい!
10/04/24 10:49:31 l00bGlXS
たとひ自殺の決心がどのやうな強固なものであらうと、人は生前に、一刹那でも死者の眼で
この地上を見ることはできぬ筈だつた。どんなに厳密に死のためにのみ計画された行為であつても、
それは生の範疇をのがれることができぬ筈だつた。してみれば、自殺とは錬金術のやうに、
生といふ鉛から死といふ黄金を作り出さうとねがふ徒(あだ)なのぞみであらうか。
かつて世界に、本当の意味での自殺に成功した人間があるだらうか。われわれの科学は
まだ生命をつくりだすことができない。従つてまた死をつくりだすこともできないわけだ。
生ばかりを材料にして死を造らうとは、麻布や穀物やチーズをまぜて三週間醗酵させれば
鼠が出来ると考へた中世の学者にも、をさをさ劣らぬ頭のよさだ。

三島由紀夫「盗賊」より

183:この名無しがすごい!
10/04/24 10:50:11 l00bGlXS
人は死を自らの手で選ぶことの他に、自己自身を選ぶ方法を持たないのである。
生を選ばうとして、人は夥しい「他」をしかつかまないではないか。

三島由紀夫「盗賊」より

184:この名無しがすごい!
10/04/25 10:12:58 JT5BVUW5
自殺しようとする人間は往々死を不真面目に考へてゐるやうにみられる。否、彼は死を
自分の理解しうる幅で割切つてしまふことに熟練するのだ。かかる浅墓さは不真面目とは
紙一重の差であらう。しかし紙一重であれ、混同してはならない差別だ。
―生きてゆかうとする常人は、自己の理解しうる限界にαを加へたものとして死を了解する。
このαは単なる安全弁にすぎないのだが、彼はそこに正に深淵が介在するのだと思つてゐる。
むしろ深淵は、自殺しようとする人間の思考の浮薄さと浅墓さにこそ潜むものかもしれないのに。

三島由紀夫「盗賊」より

185:この名無しがすごい!
10/04/25 10:13:17 JT5BVUW5
死といふことは生の浪費ではありませんわね。死は倹(つま)しいものです。

三島由紀夫「盗賊」より

186:この名無しがすごい!
10/04/25 10:13:32 JT5BVUW5
何のために生きてゐるかわからないから生きてゐられるんだわ。

三島由紀夫「盗賊」より

187:この名無しがすごい!
10/04/25 10:13:47 JT5BVUW5
決して生をのがれまいとする生き方は、自ら死へ歩み入る他はないのだらうか。
生への媚態なしにわれわれは生きえぬのだらうか。
丁度眠りをとらぬこと七日に及べば死が訪れると謂はれてゐるやうに、たえざる生の覚醒と
生の意識とは早晩人を死へ送り込まずには措かぬものだらうか。

三島由紀夫「盗賊」より

188:この名無しがすごい!
10/04/25 10:14:17 JT5BVUW5
莫迦げ切つた目的のために死ぬことが出来るのも若さの一つの特権である。

三島由紀夫「盗賊」より

189:この名無しがすごい!
10/04/25 10:16:02 JT5BVUW5
悪意は善意ほど遠路を行くことはできない

三島由紀夫「潮騒」より

190:この名無しがすごい!
10/04/25 10:16:22 JT5BVUW5
男は気力や。気力があればええのや。

三島由紀夫「潮騒」より

191:この名無しがすごい!
10/04/25 10:39:07 JT5BVUW5
女にとつて優雅であることは、立派に美の代用をなすものである。なぜなら男が憧れるのは、
裏長屋の美女よりも、それほど美しくなくても、優雅な女のはうであるから。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

192:この名無しがすごい!
10/04/25 10:39:59 JT5BVUW5
あふれるばかりの精力を事業や理想の実現に向けてゐる肥つた醜い男などは何といふ
滑稽な代物でだらう。みすぼらしい風采の世界的学者などは何といふ珍物であらう。
仕事に熱中してゐる男は美しく見えるとよく云はれるが、もともと美しくもない男が
仕事に熱中したつて何になるだらう。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

193:この名無しがすごい!
10/04/25 10:40:48 JT5BVUW5
女に友情がないといふのは嘘であつて、女は恋愛のやうに、友情をもひた隠しにしてしまふのである。
その結果、女の友情は必ず共犯関係をひそめてゐる。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

194:この名無しがすごい!
10/04/25 10:41:16 JT5BVUW5
どんな邪悪な心も心にとどまる限りは、美徳の領域に属してゐる

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

195:この名無しがすごい!
10/04/25 10:43:51 JT5BVUW5
どんな驚天動知の大計画も、一旦心が決り準備が整ふと、それにとりかかる前に、
或る休息に似た気持が来るものである。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

196:この名無しがすごい!
10/04/25 10:45:25 JT5BVUW5
どんな驚天動地の大計画も、一旦心が決り準備が整ふと、それにとりかかる前に、
或る休息に似た気持が来るものである。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

197:この名無しがすごい!
10/04/26 10:30:33 Eplwl0gu
外人の男たちの、鶏みたいな、半透明な血の色の透けてみえる、ひどく老化の早い、汚ならしい肌

三島由紀夫「肉体の学校」より

198:この名無しがすごい!
10/04/26 10:31:03 Eplwl0gu
西洋人より、日本の若い男のはうが、ずつと動物的な美しさを持つてゐる。
つまり動物的なしなやかさと、弾力と、無表情な美しさとを

三島由紀夫「肉体の学校」より

199:この名無しがすごい!
10/04/26 10:31:49 Eplwl0gu
男にしろ、女にしろ、肉体上の男らしさ女らしさとは、肉体そのものの性のかがやき、
存在全体のかがやきから生れる筈のものである。
それは部分的な機能上の、見栄坊な男らしさとは何の関係もない。

三島由紀夫「肉体の学校」より

200:この名無しがすごい!
10/04/26 10:44:12 Eplwl0gu
個性を愛することのできるのはむしろ友情の特権だ

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

201:この名無しがすごい!
10/04/26 10:45:28 Eplwl0gu
嫉妬の孤立感、その焦燥、そのあてどもない怒りを鎮める方法は一つしかなく、
それは嫉妬の当の対象、憎しみの当面の敵にむかつて、哀訴の手をさしのべることなのである。
…自分に傷を与へる敵の剣にすがつて、薬餌を求めるほかはないのである。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

202:この名無しがすごい!
10/04/26 10:46:09 Eplwl0gu
われわれが未来を怖れるのは、概して過去の堆積に照らして怖れるのである。
恋が本当に自由になるのは、たとへ一瞬でも思ひ出の絆から脱したときだ

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

203:この名無しがすごい!
10/04/26 11:02:24 Eplwl0gu
人間が為し得る発見は、あらゆる場合、宇宙のどこかにすでに完成されてゐるもの―
すでに完全な形に用意されてゐるものの模写にすぎない

平岡公威(三島由紀夫)19歳「廃墟の朝」より

204:この名無しがすごい!
10/04/26 11:02:42 Eplwl0gu
日本の詩文とは、句読も漢字もつかはれないべた一面の仮名文字のなかに何ら別して
意識することなく神に近い一行がはさまれてゐること、古典のいのちはかういふところに
はげしく煌めいてゐること、さうして真の詩人だけが秘されたる神の一行を書き得ること、
かういふことだけを述べておけばよい。

平岡公威(三島由紀夫)17歳「伊勢物語のこと」より

205:この名無しがすごい!
10/04/26 23:43:11 Eplwl0gu
道徳は、習慣からの逃避もみとめないが、同時に、習慣への逃避も、それ以上にみとめてゐないのだ。
道徳とは、人間と世界のこの悪循環を絶ち切つて、すべてのもの、あらゆる瞬間を、
決してくりかへされない一回きりのものにしようとする力なのだ。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

206:この名無しがすごい!
10/04/26 23:44:08 Eplwl0gu
肉体の仕業はみんな嘘だと思つてしまへば簡単だが、それが習慣になつてしまへば、
習慣といふものには嘘も本当もない。
精神を凌駕することのできるのは習慣といふ怪物だけなのだ。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

207:この名無しがすごい!
10/04/26 23:45:51 Eplwl0gu
自然の物理的法則からすつかり身を背けることが大切なのだ。自然の法則になまじ目移りして、
人間は人間であることを忘れ、習慣の奴隷になるか逃避の王者になるかしてしまふ。
自然はくりかへしてゐる。一回きりといふのは、人間の唯一の特権なのだ。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

208:この名無しがすごい!
10/04/26 23:46:31 Eplwl0gu
明日を怖れてゐる快楽などは、贋物でもあり、恥づべきものではないだらうか。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

209:この名無しがすごい!
10/04/26 23:47:56 Eplwl0gu
習慣からのがれようとする思案は、陰惨で、人を卑屈にするばかりだが、
快楽を捨てようとする意志は、人の矜りに媚び、自尊心に受け容れられやすい。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

210:この名無しがすごい!
10/04/26 23:49:45 Eplwl0gu
男は、一度高い精神の領域へ飛び去つてしまふと、もう存在であることをやめてしまえる!

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

211:この名無しがすごい!
10/04/26 23:51:39 Eplwl0gu
女が一等惚れる羽目になるのは、自分に一等苦手な男相手でございますね。
あなたばかりではありません。誰もさうしたものです。そのおかげで私たちは自分の欠点、
自分といふ人間の足りないところを、よくよく知るやうになるのです。
女は女の鑑(かがみ)にはなれません。いつも殿方が女の鑑になつてくれるのですね。
それもつれない殿方が。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

212:この名無しがすごい!
10/04/27 10:51:22 lg4q+r8Y
情に負けるといふことが、結局女の最後の武器、もつとも手強い武器になります。
情に逆らつてはなりません。ことさら理を立てようとしてはなりません。情に負け、
情に溺れて、もう死ぬほかないと思ふときに、はじめて女には本来の智恵が湧いてまゐります。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

213:この名無しがすごい!
10/04/27 10:52:14 lg4q+r8Y
女は恋に敗れた女に同情しながら、さういふ敗北者の噂をひろげるのが大そう好きで、
恋に勝つてばかりゐる女のことは、『不道徳な人』といふ一言で片附けるだけなのでございます。
いはば、さういふ勝利者は抽象的な不名誉だけで事がすみ、細目にわたる具体的な不名誉は、
お気の毒にも、不幸な敗北者の女が蒙ることになるのです。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

214:この名無しがすごい!
10/04/27 10:53:02 lg4q+r8Y
世間を味方につけるといふことは奥様、とりもなおさず、世間に決して同情の涙を
求めないといふことなのです。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

215:この名無しがすごい!
10/04/27 10:54:25 lg4q+r8Y
惚れすぎて苦しくなり、相手をむりにも軽蔑することで、その恋から逃げようとするのは、
拙ない初歩のやり方です。万に一つも巧くはまゐりません。
ひたすらその方をうやまひ、尊敬するやうになさいまし。
お相手がどんなに卑劣な振舞をしても、なほかつ尊敬するやうになさいまし。
さうしてゐれば、とたんにお相手はあなたの目に、つまらない人物に見えてまゐります。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

216:この名無しがすごい!
10/04/27 10:55:15 lg4q+r8Y
苦痛の明晰さには、何か魂に有益なものがある。
どんな思想も、またどんな感覚も、烈しい苦痛ほどの明晰さに達することはできない。
よかれあしかれ、それは世界を直視させる。

三島由紀夫「美徳のよろめき」より

217:この名無しがすごい!
10/04/27 16:33:55 lg4q+r8Y
真の芸術家は招かれざる客の嘆きを繰り返すべきではあるまい。
彼はむしろ自ら客を招くべきであらう。
自分の立脚点をわきまへ、そこに立つて主人役たるべきであらう。

三島由紀夫「招かれざる客」より

218:この名無しがすごい!
10/04/27 16:34:37 lg4q+r8Y
偉大なる戯曲がさうであるやうに、偉大な文学も亦、独白に他ならぬ。

三島由紀夫「招かれざる客」より


219:この名無しがすごい!
10/04/27 16:35:31 lg4q+r8Y
いかに孤独が深くとも、表現の力は自分の作品ひいては自分の存在が何ものかに叶つてゐると
信ずることから生れて来る。自由そのものの使命感である。
では僕の使命は何か。僕を強ひて死にまで引摺つてゆくものがそれだとしか僕には言へない。
そのものに対して僕がつねに無力でありただそれを待つことが出来るだけだとすれば、
その待つこと、その心設(こころまう)け自体が僕の使命だと言ふ外はあるまい。
僕の使命は用意することである。

三島由紀夫「招かれざる客」より

220:この名無しがすごい!
10/04/28 10:35:06 ZanvmRm0
芸術が純粋であればあるほどその分野をこえて他の分野と交流しお互に高めあふものである。
演劇的批判にしか耐へないものは却つて純粋に演劇的ですらないのである。

三島由紀夫「宗十郎覚書」より

221:この名無しがすごい!
10/04/28 10:35:33 ZanvmRm0
小説の世界では、上手であることが第一の正義である。
ドストエフスキーもジッドもリラダンも、先づ上手だから正義なのである。

三島由紀夫「上手と正義(舟橋聖一『鵞毛』評)」より

222:この名無しがすごい!
10/04/28 15:34:10 ZanvmRm0
純粋とは、花のやうな観念、薄荷をよく利かした含嗽薬の味のやうな観念、やさしい母の
胸にすがりつくやうな観念を、ただちに、血の観念、不正を薙ぎ倒す刀の観念、袈裟がけに
斬り下げると同時に飛び散る血しぶきの観念、あるひは切腹の観念に結びつけるものだつた。
「花と散る」といふときに、血みどろの屍体はたちまち匂ひやかな桜の花に化した。
純粋とは、正反対の観念のほしいままな転換だつた。だから、純粋は詩なのである。

三島由紀夫「奔馬」より

223:この名無しがすごい!
10/04/28 15:36:16 ZanvmRm0
壁には西洋の戦場をあらはした巨大なゴブラン織がかかつてゐた。馬上の騎士の
さし出した槍の穂が、のけぞつた徒士の胸を貫いてゐる。その胸に咲いてゐる血潮は、
古びて、褪色して、小豆いろがかつてゐる。古い風呂敷なんぞによく見る色である。
血も花も、枯れやすく変質しやすい点でよく似てゐる、と勲は思つた。
だからこそ、血と花は名誉へ転身することによつて生き延び、あらゆる名誉は金属なのである。

三島由紀夫「奔馬」より

224:この名無しがすごい!
10/04/28 15:41:12 ZanvmRm0
忠義とは、私には、自分の手が火傷をするほど熱い飯を握つて、ただ陛下に差し上げたい一心で
握り飯を作つて、御前に捧げることだと思ひます。その結果、もし陛下が御空腹でなく、
すげなくお返しになつたり、あるひは、『こんな不味いものを喰へるか』と仰言つて、
こちらの顔へ握り飯をぶつけられるやうなことがあつた場合も、顔に飯粒をつけたまま
退下して、ありがたくただちに腹を切らねばなりません。
又もし、陛下が御空腹であつて、よろこんでその握り飯を召し上つても、直ちに退つて、
ありがたく腹を切らねばなりません。
何故なら、草莽の手を以て直に握つた飯を、大御食として奉つた罪は万死に値ひするからです。
では、握り飯を作つて献上せずに、そのまま自分の手もとに置いたらどうなりませうか。
飯はやがて腐るに決まつてゐます。
これも忠義ではありませうが、私はこれを勇なき忠義と呼びます。
勇気ある忠義とは、死をかへりみず、その一心に作つた握り飯を献上することであります。

三島由紀夫「奔馬」より

225:この名無しがすごい!
10/04/30 11:13:05 A5pBp4RC
聖明が蔽はれてゐるこのやうな世に生きてゐながら、何もせずに生き永らえてゐることが
まづ第一の罪です。その大罪を祓ふには、涜神の罪を犯してまでも、何とか熱い握り飯を
拵えて献上して、自らの忠心を行為にあらはして、即刻腹を切ることです。
死ねばすべては清められますが、生きてゐるかぎり、右すれば罪、左すれば罪、
どのみち罪を犯してゐることに変りはありません。

三島由紀夫「奔馬」より

226:この名無しがすごい!
10/04/30 11:15:03 A5pBp4RC
時の流れは、崇高なものを、なしくづしに、滑稽なものに変へてゆく。何が蝕まれるのだらう。
もしそれが外側から蝕まれてゆくのだとすれば、もともと崇高は外側をおほひ、滑稽が
内側の核をなしてゐたのだらうか。あるひは、崇高がすべてであつて、ただ外側に滑稽の
塵が降り積つたにすぎぬのだらうか。

三島由紀夫「奔馬」より

227:この名無しがすごい!
10/04/30 11:16:01 A5pBp4RC
『俺の純粋の根拠、純粋の保証はここにある。まぎれもなくここにある。俺が自刃するときには、
昇る朝日のなかに、朝霧から身を起して百合が花をひらき、俺の血の匂ひを百合の薫で
浄めてくれるにちがひない。それでいいんだ。何を思ひ煩らふことがあらうか』

三島由紀夫「奔馬」より

228:この名無しがすごい!
10/04/30 11:38:04 A5pBp4RC
左翼の奴らは、弾圧すればするほど勢ひを増して来てゐます。日本はやつらの黴菌に蝕まれ、
また蝕まれるほど弱い体質に日本をしてしまつたのは、政治家や実業家です。

三島由紀夫「奔馬」より

229:この名無しがすごい!
10/04/30 11:38:28 A5pBp4RC
恋も忠も源は同じであつた。

三島由紀夫「奔馬」より

230:この名無しがすごい!
10/04/30 11:40:32 A5pBp4RC
法律とは、人生を一瞬の詩に変へてしまはうとする欲求を、不断に妨げてゐる何ものかの集積だ。
血しぶきを以て描く一行の詩と、人生とを引き換へにすることを、万人にゆるすのはたしかに
穏当ではない。しかし内に雄心を持たぬ大多数の人は、そんな欲求を少しも知らないで
人生を送るのだ。
だとすれば、法律とは、本来ごく少数者のためのものなのだ。ごく少数の異常な純粋、
この世の規矩を外れた熱誠、……それを泥棒や痴情の犯罪と全く同じ同等の《悪》へ
おとしめようとする機構なのだ。

三島由紀夫「奔馬」より

231:この名無しがすごい!
10/05/01 00:17:00 OPFE+gYM
芸術といふのは巨大な夕焼です。一時代のすべての佳いものの燔祭(はんさい)です。
さしも永いあひだつづいた白昼の理性も、夕焼のあの無意味な色彩の濫費によつて台無しにされ、
永久につづくと思はれた歴史も、突然自分の終末に気づかせられる。美がみんなの目の前に
立ちふさがつて、あらゆる人間的営為を徒爾(あだごと)にしてしまふのです。
あの夕焼の花やかさ、夕焼雲のきちがひじみた奔逸を見ては、『よりよい未来』などといふ
たはごとも忽ち色褪せてしまひます。

三島由紀夫「暁の寺」より

232:この名無しがすごい!
10/05/01 00:18:24 OPFE+gYM
社会正義を自ら代表してゐるやうな顔をしながら、それ自体が売名であるところの、
貧しい弁護士などといふのは滑稽な代物だ

三島由紀夫「暁の寺」より

233:この名無しがすごい!
10/05/01 00:19:58 OPFE+gYM
一つの生をあまりにも純粋に究極的に生きようとすると、人はおのづから、
別の生の存在の予感に到達するのではなからうか。

三島由紀夫「暁の寺」より

234:この名無しがすごい!
10/05/01 00:21:34 OPFE+gYM
現在の一刹那だけが実有であり、一刹那の実有を保証する最終の根拠が阿頼耶識であるならば、
同時に、世界の一切を顕現させてゐる阿頼耶識は、時間の軸と空間の軸の交はる一点に
存在するのである。

三島由紀夫「暁の寺」より

235:この名無しがすごい!
10/05/01 00:32:29 OPFE+gYM
唯識の本当の意味は、われわれ現在の一刹那において、この世界なるものがすべてそこに
現はれてゐる、といふことに他ならない。しかも、一刹那の世界は、次の刹那には一旦滅して、
又新たな世界が立ち現はれる。現在ここに現はれた世界が、次の瞬間には変化しつつ、
そのままつづいてゆく。かくてこの世界すべては阿頼耶識なのであつた。……

三島由紀夫「暁の寺」より

236:この名無しがすごい!
10/05/01 00:33:13 OPFE+gYM
この世には道徳よりもきびしい掟がある

三島由紀夫「暁の寺」より

237:この名無しがすごい!
10/05/01 00:34:01 OPFE+gYM
生きるといふことは、運命の見地に立てば、まるきり詐欺にかけられてゐるやうなものだつた。
そして人間存在とは?人間存在とは不如意だ

三島由紀夫「暁の寺」より

238:この名無しがすごい!
10/05/01 00:35:14 OPFE+gYM
知らないといふことが、そもそもエロティシズムの第一条件であるならば、エロティシズムの極致は、
永遠の不可知にしかない筈だ。すなはち「死」に。

三島由紀夫「暁の寺」より

239:この名無しがすごい!
10/05/01 00:36:24 OPFE+gYM
真の危険を犯すものは理性であり、その勇気も理性からだけ生れる

三島由紀夫「暁の寺」より

240:この名無しがすごい!
10/05/01 00:37:51 OPFE+gYM
必要から生れたものには、必要の苦さが伴ふ。この想像力には甘美なところがみじんもなかつた。

三島由紀夫「暁の寺」より

241:この名無しがすごい!
10/05/01 00:38:31 OPFE+gYM
ほしいものが手に入らないといふ最大の理由は、それを手に入れたいと望んだからだ。

三島由紀夫「暁の寺」より

242:この名無しがすごい!
10/05/01 00:39:39 OPFE+gYM
存在の不治こそは不死の感覚の唯一の実質だつた。

三島由紀夫「暁の寺」より

243:この名無しがすごい!
10/05/01 10:46:06 OPFE+gYM
自分の人生は暗黒だつた、と宣言することは、人生に対する何か痛切な友情のやうにすら思はれる。
お前との交遊には、何一つ実りはなく、何一つ歓喜はなかつた。お前は俺がたのみもしないのに、
その執拗な交友を押しつけて来て、生きるといふことの途方もない綱渡りを強ひたのだ。
陶酔を節約させ、所有を過剰にし、正義を紙屑に変へ、理智を家財道具に換価させ、
美を世にも恥かしい様相に押しこめてしまつた。人生は正統性を流刑に処し、異端を
病院へ入れ、人間性を愚昧に陥れるために大いに働らいた。
それは、膿盆の上の、血や膿のついた汚れた繃帯の堆積だつた。すなはち、不治の病人の、
そのたびごとに、老ひも若きも同じ苦痛の叫びをあげさせる、日々の心の繃帯交換。
彼はこの山地の空のかがやく青さのどこかに、かうして日々の空しい治癒のための、
荒つぽい義務にたづさはる、白い壮麗な看護婦の巨大なしなやかな手が隠れてゐるのを感じた。
その手は彼にやさしく触れて、又しても彼に、生きることを促すのであつた。

三島由紀夫「暁の寺」より

244:この名無しがすごい!
10/05/01 10:46:36 OPFE+gYM
人生が車の運転と同様に、慎重一点張りで成功するなどと思はれてたまるものか。

三島由紀夫「暁の寺」より

245:この名無しがすごい!
10/05/01 10:47:51 OPFE+gYM
裏切る心配のない見えない神様などを信じてもつまりませんわ。
私一人をいつもじつと見つづけて、あれはいけない、これはいけない、とたえず
手取り足取り指図して下さる神様でなければ。
その前では何一つ隠し立てのできない、その前ではこちらも浄化されて、何一つ羞恥心を
持つことさへ要らない、さういふ神様でなければ、何になるでせう。

三島由紀夫「暁の寺」より

246:この名無しがすごい!
10/05/01 10:49:55 OPFE+gYM
どんな高尚な事業どんな義烈の行為へ人を促す力も、どんな卑猥な快楽どんな醜怪な夢へ
そそのかす力も、全く同じ源から出、同じ予兆の動悸を伴ふ

三島由紀夫「暁の寺」より

247:この名無しがすごい!
10/05/01 14:43:03 fQMTfhNq
ここは三島由紀夫の亡霊にとりつかれた
者が住み着く恐怖スレですか?

248:この名無しがすごい!
10/05/02 10:35:21 thflopdQ
追憶は「現在」のもつとも清純な証なのだ。
愛だとかそれから献身だとか、そんな現実におくためにはあまりに清純すぎるやうな感情は、
追憶なしにはそれを占つたり、それに正しい意味を索めたりすることはできはしないのだ。
それは落葉をかきわけてさがした泉が、はじめて青空をうつすやうなものである。
泉のうえにおちちらばつてゐたところで、落葉たちは決して空を映すことはできないのだから。

三島由紀夫「花ざかりの森」より

249:この名無しがすごい!
10/05/02 10:36:26 thflopdQ
祖先はしばしば、ふしぎな方法でわれわれと邂逅する。ひとはそれを疑ふかもしれない。
だがそれは真実なのだ。

三島由紀夫「花ざかりの森」より

250:この名無しがすごい!
10/05/02 10:37:48 thflopdQ
今日、祖先たちはわたしどもの心臓があまりにさまざまのもので囲まれてゐるので、
そのなかに住ひを索めることができない。かれらはかなしさうに、そはそはと時計のやうに
そのまはりをまはつてゐる。

三島由紀夫「花ざかりの森」より


251:この名無しがすごい!
10/05/02 10:38:07 thflopdQ
美は秀麗な奔馬である。

三島由紀夫「花ざかりの森」より

252:この名無しがすごい!
10/05/02 10:42:06 thflopdQ
わたしはわたしの憧れの在処を知つてゐる。憧れはちやうど川のやうなものだ。
川のどの部分が川なのではない。なぜなら川はながれるから。きのふ川であつたものは
けふ川ではない。だが川は永遠にある。
ひとはそれを指呼することができる。それについて語ることはできない。
わたしの憧れもちやうどこのやうなものだ。

三島由紀夫「花ざかりの森」より

253:この名無しがすごい!
10/05/02 10:44:10 thflopdQ
ああ、あの川。わたしにはそれが解る。祖先たちからわたしにつづいたこのひとつの黙契。
その憧れはあるところでひそみ或るところで隠れてゐる。だが、死んでゐるのではない。
古い籬(まがき)の薔薇が、けふ尚生きてゐるやうに。
祖母と母において、川は地下をながれた。父において、それはせせらぎになつた。
わたしにおいて、―ああそれが滔々とした大川にならないでなににならう、綾織るもののやうに、
神の祝唄のやうに、神の祝唄(ほぎうた)のやうに。

三島由紀夫「花ざかりの森」より

254:この名無しがすごい!
10/05/02 10:45:46 thflopdQ
老婦人は毅然としてゐた。白髪がこころもちたゆたうてゐる。おだやかな銀いろの縁をかがつて。
じつとだまつてたつたまま、……ああ涙ぐんでゐるのか。祈つてゐるのか。それすらわからない。……
まらうどはふとふりむいて、風にゆれさわぐ樫の高みが、さあーつと退いてゆく際に、
眩ゆくのぞかれるまつ白な空をながめた。なぜともしれぬいらだたしい不安に胸がせまつて。
「死」にとなりあはせのやうにまらうどは感じたかもしれない、生(いのち)がきはまつて
独楽(こま)の澄むやうな静謐、いはば死に似た静謐ととなりあはせに。……

三島由紀夫「花ざかりの森」より

255:この名無しがすごい!
10/05/02 10:46:15 thflopdQ
われわれのひそかな願望は、叶へられると却つて裏切られたやうに感じる傾きがある。

三島由紀夫「遠乗会」より

256:この名無しがすごい!
10/05/02 17:15:40 thflopdQ
>>42

> 愛の奥処には、寸分たがはず相手に似たいといふ不可能な熱望が流れてゐはしないだらうか?

> 三島由紀夫「仮面の告白」より

257:この名無しがすごい!
10/05/04 00:26:51 Go+Smy2Z
ああ、あの川。わたしにはそれが解る。祖先たちからわたしにつづいたこのひとつの黙契。
その憧れはあるところでひそみ或るところで隠れてゐる。だが、死んでゐるのではない。
古い籬(まがき)の薔薇が、けふ尚生きてゐるやうに。
祖母と母において、川は地下をながれた。父において、それはせせらぎになつた。
わたしにおいて、―ああそれが滔々とした大川にならないでなににならう、綾織るものゝやうに、
神の祝唄のやうに、神の祝唄(ほぎうた)のやうに。

三島由紀夫「花ざかりの森」より

258:この名無しがすごい!
10/05/05 10:42:22 p21+wNER
愛の奥処には、寸分たがはず相手に似たいといふ不可能な熱望が流れてゐはしないだらうか?
この熱望が人を駆つて、不可能を反対の極から可能にしようとねがふあの悲劇的な離反に
みちびくのではなからうか?

三島由紀夫「仮面の告白」より

259:この名無しがすごい!
10/05/05 10:43:05 p21+wNER
抵抗を感じない想像力といふものは、たとひそれがどんなに冷酷な相貌を帯びやうと、
心の冷たさとは無縁のものである。それは怠惰ななまぬるい精神の一つのあらはれにすぎなかつた。

三島由紀夫「仮面の告白」より

260:この名無しがすごい!
10/05/05 10:44:01 p21+wNER
ロマネスクな性格といふものには、精神の作用に対する微妙な不信がはびこつてゐて、
それが往々夢想といふ一種の不倫な行為へみちびくのである。夢想は、人の考へてゐるやうに
精神の作用であるのではない。それはむしろ精神からの逃避である。

三島由紀夫「仮面の告白」より

261:この名無しがすごい!
10/05/05 10:45:02 p21+wNER
処女だけに似つかはしい種類の淫蕩さといふものがある。それは成熟した女の淫蕩とは
ことかはり、微風のやうに人を酔はせる。それは可愛らしい悪趣味の一種である。
たとへば赤ん坊をくすぐるのが大好きだと謂つたたぐひの。

三島由紀夫「仮面の告白」より

262:この名無しがすごい!
10/05/05 10:45:31 p21+wNER
傷を負つた人間は間に合はせの繃帯が必ずしも清潔であることを要求しない。

三島由紀夫「仮面の告白」より

263:この名無しがすごい!
10/05/05 10:45:57 p21+wNER
潔癖さといふものは、欲望の命ずる一種のわがままだ。

三島由紀夫「仮面の告白」より

264:この名無しがすごい!
10/05/05 10:46:59 p21+wNER
正義を行へ、弱きを護れ。

三島由紀夫「につぽん製」より

265:この名無しがすごい!
10/05/05 10:47:19 p21+wNER
自分が若いころ闊歩できなかつた街は、何だか一生よそよそしいものである。

三島由紀夫「につぽん製」より

266:この名無しがすごい!
10/05/05 10:47:50 p21+wNER
とにかく人生は柔道のやうには行かないものである。
人生といふやつは、まるで人絹の柔道着を着てゐるやうで、ツルツルすべつて、
なかなか業(わざ)がきかないのであつた。

三島由紀夫「につぽん製」より

267:この名無しがすごい!
10/05/05 10:48:47 p21+wNER
期待してゐる人間の表情といふものは美しいものだ。
そのとき人間はいちばん正直な表情をしてゐる。自分のすべてを未来に委ね、
白紙に還つてゐる表情である。

三島由紀夫「恋の都」より

268:この名無しがすごい!
10/05/05 10:49:13 p21+wNER
羞恥がなくて、汚濁もない少女の顔ほど、少年を戸惑はせるものはない。

三島由紀夫「恋の都」より

269:この名無しがすごい!
10/05/05 17:06:42 p21+wNER
自分の尊敬する人の話をすることは、いはば初心(うぶ)なフランスの少年が女の子の前で
ナポレオンの話をするのと同様に、持つて廻つた敬虔な愛の告白でもあるのだ。

三島由紀夫「恋の都」より

270:この名無しがすごい!
10/05/05 17:08:01 p21+wNER
本当のヤクザといふものは、チンピラとちがつて、チャチな凄味を利かせたりしないものである。映画に出てくる
親分は大抵、へんな髭を生やして、妙に鋭い目つきをして、キザな仕立の背広を着て、
ニヤけたバカ丁寧な物の言ひ方をして、それでヤクザをカモフラージュしたつもりでゐるが、
本当のヤクザのカモフラージュはもつとずつと巧い。
旧左翼の人に、却つて、如才のない人が多いのと同じことである。

三島由紀夫「恋の都」より

271:この名無しがすごい!
10/05/05 17:08:59 p21+wNER
自分の最初の判断、最初のねがひごと、そいつがいちばん正しいつてね。
なまじ大人になつていろいろひねくりまはして考へると、却つて判断をあやまるもんだ。
婿えらびをする能力といふものは、もしかしたら、三十五歳の女より、十六歳の少女のはうが、
ずつと豊富にもつてゐるのかもしれないんだぜ。

三島由紀夫「恋の都」より

272:この名無しがすごい!
10/05/05 17:09:30 p21+wNER
後悔ほどやりきれないものはこの世の中にないだらう。

三島由紀夫「恋の都」より

273:この名無しがすごい!
10/05/06 11:22:05 zjRXMULm
女の批評つて二つきりしかないぢやないか。
「まあすてき」「あなたつてばかね」この二つきりだ。

三島由紀夫「邯鄲」より

274:この名無しがすごい!
10/05/06 11:23:56 zjRXMULm
悪は時として、静かな植物的な姿をしてゐるものだ。結晶した悪は、白い錠剤のやうに美しい。

三島由紀夫「天人五衰」より

275:この名無しがすごい!
10/05/06 11:24:30 zjRXMULm
人間の美しさ、肉体的にも精神的にも、およそ美に属するものは、無知と迷蒙からしか
生れないね。知つてゐてなほ美しいなどといふことは許されない。

三島由紀夫「天人五衰」より

276:この名無しがすごい!
10/05/06 11:26:11 zjRXMULm
目ざめてゐるときは自分の意志を保ち、否応なしに歴史の中に生きてゐる。
しかし自分の意志にかかはりなく、夢の中で自分を強いるもの、超歴史的な、あるひは
無歴史的なものが、この闇の奥のどこかにゐるのだ。

三島由紀夫「天人五衰」より

277:この名無しがすごい!
10/05/06 11:26:27 zjRXMULm
純粋で美しい者は、そもそも人間の敵なのだといふことを忘れてはいけない。

三島由紀夫「天人五衰」より

278:この名無しがすごい!
10/05/06 11:35:04 zjRXMULm
一分一分、一秒一秒、二度とかへらぬ時を、人々は何といふ稀薄な生の意識ですりぬけるのだらう。
老いてはじめてその一滴々々には濃度があり、酩酊さへ具はつてゐることを学ぶのだ。
稀覯の葡萄酒の濃密な一滴々々のやうな、美しい時の滴たり。……さうして血が失はれるやうに
時が失はれてゆく。

三島由紀夫「天人五衰」より

279:この名無しがすごい!
10/05/06 11:37:44 zjRXMULm
意志とは、宿命の残り滓ではないだらうか。自由意志と決定論のあひだには、印度の
カーストのやうな、生れついた貴賤の別があるのではないだらうか。
もちろん賤しいのは意志のはうだ。

三島由紀夫「天人五衰」より

280:この名無しがすごい!
10/05/06 11:38:10 zjRXMULm
或る種の人間は、生の絶頂で時を止めるといふ天賦に恵まれてゐる。

三島由紀夫「天人五衰」より

281:この名無しがすごい!
10/05/06 11:38:46 zjRXMULm
……詩もなく、至福もなしに!これがもつとも大切だ。
生きることの秘訣はそこにしかないことを俺は知つてゐる。

三島由紀夫「天人五衰」より

282:この名無しがすごい!
10/05/06 11:43:38 zjRXMULm
「洋食の作法は下らないことのやうだが」と本多は教へながら言つた。
「きちんとした作法で自然にのびのびと洋食を喰べれば、それを見ただけで人は安心するのだ。
一寸ばかり育ちがいいといふ印象を与へるだけで、社会的信用は格段に増すし、日本で
『育ちがいい』といふことは、つまり西洋風な生活を体で知つてゐるといふことだけの
ことなんだからね。
純然たる日本人といふのは、下層階級か危険人物かどちらかなのだ。
これからの日本では、そのどちらも少なくなるだらう。
日本といふ純粋な毒は薄まつて、世界中のどこの国の人の口にも合ふ嗜好品になつたのだ」

三島由紀夫「天人五衰」より

283:この名無しがすごい!
10/05/06 11:44:21 zjRXMULm
スポーツマンだといふと、莫迦だと人に思はれる利得がある。

三島由紀夫「天人五衰」より

284:この名無しがすごい!
10/05/06 11:51:16 zjRXMULm
しかし日本では、神聖、美、伝統、詩、それらのものは、汚れた敬虔な手で汚されるのではなかつた。
これらを思ふ存分汚し、果ては絞め殺してしまふ人々は、全然敬虔さを欠いた、しかし
石鹸でよく洗つた、小ぎれいな手をしてゐたのである。

三島由紀夫「天人五衰」より

285:この名無しがすごい!
10/05/07 12:21:30 tXoKoJUL
この世には実に千差万別な卑俗があつた。
気品の高い卑俗、白象の卑俗、崇高な卑俗、鶴の卑俗、知識にあふれた卑俗、学者犬の卑俗、
媚びに充ちた卑俗、ペルシア猫の卑俗、帝王の卑俗、乞食の卑俗、狂人の卑俗、蝶の卑俗、
斑猫の卑俗……、おそらく輪廻とは卑俗の劫罰だつた。
そして卑俗の最大唯一の原因は、生きたいといふ欲望だつたのである。

三島由紀夫「天人五衰」より

286:この名無しがすごい!
10/05/07 12:21:51 tXoKoJUL
何かを拒絶することは又、その拒絶のはうへ向つて自分がいくらか譲歩することでもある。
譲歩が自尊心にほんのりとした淋しさを齎(もた)らすのは当然だらう。

三島由紀夫「天人五衰」より

287:この名無しがすごい!
10/05/07 12:22:06 tXoKoJUL
この世に一つ幸福があれば必ずそれに対応する不幸が一つある筈だ

三島由紀夫「天人五衰」より

288:この名無しがすごい!
10/05/07 12:22:20 tXoKoJUL
人間は自分より永生きする家畜は愛さないものだ。

三島由紀夫「天人五衰」より

289:この名無しがすごい!
10/05/07 12:22:32 tXoKoJUL
この世には幸福の特権がないやうに、不幸の特権もないの。悲劇もなければ、天才もゐません。
あなたの確信と夢の根拠は全部不合理なんです。
もしこの世に生れつき別格で、特別に美しかつたり、特別に悪(わる)だつたり、
さういふことがあれば、自然が見のがしにしておきません。

三島由紀夫「天人五衰」より

290:この名無しがすごい!
10/05/07 12:24:28 tXoKoJUL
老いは正(まさ)しく精神と肉体の双方の病気だつたが、老い自体が不治の病だといふことは、
人間存在自体が不治の病だといふに等しく、しかもそれは何ら存在論的な病ではなくて、
われわれの肉体そのものが病であり、潜在的な死なのであつた。
衰へることが病であれば、衰へることの根本原因である肉体こそ病だつた。
肉体の本質は滅びに在り、肉体が時間の中に置かれてゐることは、衰亡の証明、
滅びの証明に使はれてゐるこに他ならなかつた。

三島由紀夫「天人五衰」より

291:この名無しがすごい!
10/05/07 12:24:43 tXoKoJUL
生きることは老いることであり、老いることこそ生きることだつた。

三島由紀夫「天人五衰」より

292:この名無しがすごい!
10/05/07 12:25:38 tXoKoJUL
高飛車な物言ひをするとき、女はいちばん誇りを失くしてゐるんです。女が女王さまに
憧れるのは、失くすことのできる誇りを、女王さまはいちばん沢山持つてゐるからだわ。

三島由紀夫「葵上」より

293:この名無しがすごい!
10/05/07 12:26:13 tXoKoJUL
不満といふものはね、お嬢さん、この世の掟を引つくりかへし、自分の幸福を
めちやめちやにしてしまふ毒薬ですよ。

三島由紀夫「道成寺」より

294:この名無しがすごい!
10/05/07 22:28:06 zhP2pi+a
久々に来てもやっぱり三島スレw

295:この名無しがすごい!
10/05/08 12:21:22 yeFX8Wt2
お嬢さま、色恋は負けるたのしみでございますよ。

三島由紀夫「只ほど高いものはない」より


苦しみを知らない人にかかつたら、どんな苦しみだつて、道化て見えるだけなのよ。

三島由紀夫「只ほど高いものはない」より

296:この名無しがすごい!
10/05/08 12:22:10 yeFX8Wt2
「許しませんよ」ああ、それこそ貴婦人の言葉だ。
生れながらのけだかい白い肌の言はせる言葉だ。

三島由紀夫「朝の躑躅」より

297:この名無しがすごい!
10/05/08 12:22:38 yeFX8Wt2
世界といふものはね、こぼれやすいお皿に入つてゐるスープなの。
みんなして、それがこぼれないやうに、スープ皿のへりを支へてゐなければなりませんの。

三島由紀夫「薔薇と海賊」より

298:この名無しがすごい!
10/05/08 12:47:26 yeFX8Wt2
恋と犬とはどつちが早く駆けるでせう。さてどつちが早く汚れるでせう。

三島由紀夫「綾の鼓」より


今の世の中で本当の恋を証拠立てるには、きつと足りないんだわ、そのために死んだだけでは。

三島由紀夫「綾の鼓」より

299:この名無しがすごい!
10/05/09 00:18:17 hDdJKt+u
悲しい気持の人だけが、きれいな景色を眺める資格があるのではなくて?
幸福な人には景色なんか要らないんです。

三島由紀夫「鹿鳴館」より


政治とは他人の憎悪を理解する能力なんだよ。
この世を動かしてゐる百千百万の憎悪の歯車を利用して、それで世間を動かすことなんだよ。
愛情なんぞに比べれば、憎悪のはうがずつと力強く人間を動かしてゐるんだからね。

三島由紀夫「鹿鳴館」より

300:この名無しがすごい!
10/05/09 00:21:04 hDdJKt+u
花作りといふものにはみんな復讐の匂ひがする。
絵描きとか文士とか、芸術といふものはみんなさうだ。ごく力の弱いものの憎悪が育てた
大輪の菊なのさ。

三島由紀夫「鹿鳴館」より


お嬢さん、教へてあげませう。
武器といふものはね、男に論理を与へる一番強力な道具なんですよ。

三島由紀夫「鹿鳴館」より

301:この名無しがすごい!
10/05/09 10:28:58 hDdJKt+u
人生のいちばんはじめから、人間はずいぶんいろんなものを諦らめる。
生れて来て何を最初に教はるつて、それは「諦らめる」ことよ。そのうちに大人になつて
不幸を幸福だと思ふやうになつたり、何も希まないやうになつてしまふ。

三島由紀夫「夜の向日葵」より


幸福つて、何も感じないことなのよ。幸福つて、もつと鈍感なものよ。
幸福な人は、自分以外のことなんか夢にも考へないで生きてゆくんですよ。

三島由紀夫「夜の向日葵」より

302:この名無しがすごい!
10/05/09 10:30:36 hDdJKt+u
一分間以上、人間が同じ強さで愛しつづけてゆくことなんか、不可能のやうな気が
あたしにはするの。愛するといふことは息を止めるやうなことだわ。一分間以上も息を
止めてゐてごらんなさい、死んでしまふか、笑ひ出してしまふか、どつちかだわ。

三島由紀夫「夜の向日葵」より


愛するといふことは、息を止めることぢやなくて、息をしてゐるのとおんなじことよ。

三島由紀夫「夜の向日葵」より

303:この名無しがすごい!
10/05/09 10:31:39 hDdJKt+u
恋愛といふやつは、単に熱なんです。脈搏なんです。情熱なんていふ誰も見たことのない
好加減な熱ぢやない、ちやんと体温計にあらはれる熱なんです。

三島由紀夫「夜の向日葵」より


恋愛といふのは、数なんです。それも函数(かんすう)なんです。
五なら五、六なら六だけ生へ近づく、それと同時に、おなじ数だけ死へ近づくといふ、
函数なんです。

三島由紀夫「夜の向日葵」より

304:この名無しがすごい!
10/05/09 10:32:27 hDdJKt+u
あなたらしさつていふものは、あなたの考へてゐるやうに、人が勝手にあなたにつけた
仇名ぢやない。人が勝手にあなたの上に見た夢でもない。あなたらしさつていふものは、
あなたの運命なんだ。のがれるすべもないものなんだ。神さまの与へた役割なんだ。

三島由紀夫「夜の向日葵」より

305:この名無しがすごい!
10/05/09 10:33:38 hDdJKt+u
もしあたくしが豚だつたら、真珠に嫉妬なんか感じはしないでせう。
でも、人造真珠が自分を硝子にすぎないとしぢゆう思つてゐることは、豚が時たま
自分のことを豚だと思つたりするのとは比べものにはならないの。

三島由紀夫「夜の向日葵」より


大丈夫よ、自分を本当の真珠だと信じてゐれば、硝子もいつかは真珠になるのよ。

三島由紀夫「夜の向日葵」より

306:この名無しがすごい!
10/05/10 10:38:42 s4d1rj11
恋の中のうつろひやすいものは恋ではなく、人が恋ではないと思つてゐるうつろはぬものが
実は恋なのではないでせうか。

三島由紀夫「軽王子と衣通姫」より


別れを辛いものといたしますのも恋ゆゑ、その辛さに耐へてゆけますのも恋ゆゑでございます

三島由紀夫「軽王子と衣通姫」より

307:この名無しがすごい!
10/05/10 17:51:49 s4d1rj11
ひとたび叛心を抱いた者の胸を吹き抜ける風のものさびしさは、千三百年後の今日の
われわれの胸にも直ちに通ふのだ。この凄涼たる風がひとたび胸中に起つた以上、
人は最終的実行を以てしか、つひにこれを癒やす術を知らぬ。

三島由紀夫「日本文学小史 第四章 懐風藻」より

308:この名無しがすごい!
10/05/11 10:12:55 4WZyNFBE
正しい狂気といふものがあるのだ。

三島由紀夫「小説家の休暇」より

309:この名無しがすごい!
10/05/11 10:13:57 4WZyNFBE
日本人本来の精神構造の中においては、エロース(愛)とアガペー(神の愛)は
一直線につながつてゐる。もし女あるひは若衆に対する愛が、純一無垢なものになるときは、
それは主君に対する忠と何ら変はりない。

三島由紀夫「葉隠入門」より

310:この名無しがすごい!
10/05/11 10:14:48 4WZyNFBE
男の世界は思ひやりの世界である。男の社会的な能力とは思ひやりの能力である。
武士道の世界は、一見荒々しい世界のやうに見えながら、現代よりももつと緻密な
人間同士の思ひやりのうへに、精密に運営されてゐた。

三島由紀夫「葉隠入門」より

311:この名無しがすごい!
10/05/11 10:17:27 4WZyNFBE
忠告は無料である。われわれは人に百円の金を貸すのも惜しむかはりに、無料の忠告なら
湯水のごとくそそいで惜しまない。しかも忠告が社会生活の潤滑油となることはめつたになく、
人の面目をつぶし、人の気力を阻喪させ、恨みをかふことに終はるのが十中八、九である。

三島由紀夫「葉隠入門」より

312:この名無しがすごい!
10/05/11 10:19:07 4WZyNFBE
思想は覚悟である。覚悟は長年にわたつて日々確かめられなければならない。

三島由紀夫「葉隠入門」より


長い準備があればこそ決断は早い。そして決断の行為そのものは自分で選べるが、時期は
かならずしも選ぶことができない。それは向かうからふりかかり、おそつてくるのである。
そして生きるといふことは向かうから、あるひは運命から、自分が選ばれてある瞬間のために
準備することではあるまいか。

三島由紀夫「葉隠入門」より

313:この名無しがすごい!
10/05/11 10:21:36 4WZyNFBE
「強み」とは何か。知恵に流されぬことである。分別に溺れないことである。

三島由紀夫「葉隠入門」より


エゴティズムはエゴイズムとは違ふ。自尊の心が内にあつて、もしみづから持すること高ければ、
人の言行などはもはや問題ではない。人の悪口をいふにも及ばず、またとりたてて
人をほめて歩くこともない。
そんな始末におへぬ人間の姿は、同時に「葉隠」の理想とする姿であつた。

三島由紀夫「葉隠入門」より

314:この名無しがすごい!
10/05/11 10:23:10 4WZyNFBE
もし、われわれが生の尊厳をそれほど重んじるならば、どうして死の尊厳をも
重んじないわけにいくだらうか。
いかなる死も、それを犬死と呼ぶことはできないのである。

三島由紀夫「葉隠入門」より

315:この名無しがすごい!
10/05/12 11:06:58 +VQ2KhI6
私の言ひたいことは、口に日本文化や日本的伝統を軽蔑しながら、お茶漬の味とは
縁の切れない、さういふ中途半端な日本人はもう沢山だといふことであり、日本の未来の
若者にのぞむことは、ハンバーガーをパクつきながら、日本のユニークな精神的価値を、
おのれの誇りとしてくれることである。

三島由紀夫「お茶漬ナショナリズム」より

316:この名無しがすごい!
10/05/12 11:07:49 +VQ2KhI6
この日本刀で人を斬れる時代が、早くやつて来ないかなあ。

三島由紀夫「日録(昭和42年)」より

317:この名無しがすごい!
10/05/12 11:08:40 +VQ2KhI6
私は外国でウサギの肉を食べたことがあるが、柔らかくて、わりに旨い。独特のクサ味を
調味料で除去すれば、うまいはうの肉に入る。ウサギにしろ、ニワトリにしろ、豚にしろ、
さらに牛にしろ、概して大人しい動物の肉はうまい部類に入る。
肉をまづくしよう。少なくとも俺一人の肉はまづくしてやらう。と私は断乎たる決意を
固めたのである。

三島由紀夫「日録(昭和42年)」より

318:この名無しがすごい!
10/05/13 10:55:22 BlPlDSoG
青年の苦悩は、隠されるときもつとも美しい

三島由紀夫「青年像」より

319:この名無しがすごい!
10/05/13 10:55:49 BlPlDSoG
巧くなつて不正直になるのは堕落といふもので、巧くなつてもなほ正直といふところが尊いのだ

三島由紀夫「原田・メデル戦」より

320:この名無しがすごい!
10/05/13 10:56:37 BlPlDSoG
今日只今の平和な日常生活の中にも、間接侵略の下拵(したごしら)へは着々と進められてゐる

三島由紀夫「祖国防衛隊はなぜ必要か?」より

321:この名無しがすごい!
10/05/13 10:57:07 BlPlDSoG
不退転の決意とは何か?すなはち、国民自らが一朝あれば剣を執つて、国の歴史と伝統を
守る決意であり、自ら国を守らんとする気魄(きはく)であります。

三島由紀夫「祖国防衛隊はなぜ必要か?」より

322:この名無しがすごい!
10/05/17 10:38:52 bszZrhJ4
何か、極く小さな、どんなありきたりな希望でもよい。それがなくては、人は明日のはうへ
生き延びることができない。明日にのこつてゐる繕ひものとか、明日立つことになつてゐる
旅行の切符とか、明日飲むことにしてある罎ののこりの僅かな酒とか、さういふものを
人は明日のために喜捨する。そして夜明けを迎へることを許される。

三島由紀夫「愛の渇き」より

323:この名無しがすごい!
10/05/17 10:39:37 bszZrhJ4
われわれが人間の目を持つかぎり、どのやうに眺め変へても、所詮は同じ答が出るだけだ

三島由紀夫「愛の渇き」より


苟(いやしく)も仕事をしようとすれば、命を賭けずに本当の仕事ができるものではない。

三島由紀夫「愛の渇き」より

324:この名無しがすごい!
10/05/17 10:42:38 bszZrhJ4
生れのよい人間は滅多に風流になんぞ染つたりはせぬものだ。

三島由紀夫「愛の渇き」より


われわれはむしろ、自分が待ちのぞんでゐたものに裏切られるよりも、力(つと)めて
軽んじてゐたものに裏切られることで、より深く傷つくものだ。
それは背中から刺された匕首(あいくち)だ。

三島由紀夫「愛の渇き」より

325:この名無しがすごい!
10/05/17 10:46:32 bszZrhJ4
人生が生きるに値ひしないと考へることは容易いが、それだけにまた、生きるに
値ひしないといふことを考へないでゐることは、多少とも鋭敏な感受性をもつた人には
困難である

三島由紀夫「愛の渇き」より


この世の情熱は希望によつてのみ腐蝕される

三島由紀夫「愛の渇き」より

326:この名無しがすごい!
10/05/17 10:47:46 bszZrhJ4
ある人たちにとつては生きることがいかにも容易であり、ある人にとつてはいかにも
困難である。人種的差別よりももつと甚だしいこの不公平

三島由紀夫「愛の渇き」より

327:この名無しがすごい!
10/05/17 10:49:59 bszZrhJ4
生きることが難しいなどといふことは何も自慢になどなりはしないのだ。
わたしたちが生の内にあらゆる困難を見出す能力は、ある意味ではわたしたちの生を
人並に容易にするために役立つてゐる能力なのだ。なぜといつて、この能力がなかつたら、
わたしたちにとつての生は、困難でも容易でもないつるつるした足がかりのない真空の
球になつてしまふ。この能力は生がさう見られることを遮(さまた)げる能力であり、
生が決してそんな風に見えては来ない容易な人種の、あづかり知らぬ能力であるとはいへ、
それは何ら格別な能力ではなく、ただの日常必需品にすぎないのだ。人生の秤をごまかして、
必要以上に重く見せた人は、地獄で罰を受ける。そんなごまかしをしなくつても、
生は衣服のやうに意識されない重みであつて、外套を着て肩が凝るのは病人なのだ。

三島由紀夫「愛の渇き」より

328:この名無しがすごい!
10/05/17 10:51:40 bszZrhJ4
下から上を見たときも、上から下を見たときも、階級意識といふものは嫉妬の代替物に
なりうるのだ。

三島由紀夫「愛の渇き」より


人生には何事も可能であるかのやうに信じられる瞬間が幾度かあり、この瞬間におそらく人は
普段の目が見ることのできない多くのものを瞥見し、それらが一度忘却の底に横たはつたのちも、
折にふれては蘇つて、世界の苦痛と歓喜のおどろくべき豊饒さを、再びわれわれに向つて
暗示するのである。

三島由紀夫「愛の渇き」より

329:この名無しがすごい!
10/05/17 10:53:02 bszZrhJ4
あまりに永い苦悩は人を愚かにする。
苦悩によつて愚かにされた人は、もう歓喜を疑ふことができない。

三島由紀夫「愛の渇き」より


嫉妬の情熱は事実上の証拠で動かされぬ点においては、むしろ理想主義者の情熱に近づくのである。

三島由紀夫「愛の渇き」より

330:この名無しがすごい!
10/05/17 10:53:45 bszZrhJ4
衝動によつて美しくされ、熱望によつて眩ゆくされた若者の表情ほどに、美しいものが
この世にあらうか

三島由紀夫「愛の渇き」より

331:この名無しがすごい!
10/05/17 11:15:15 bszZrhJ4
妹の死後、私はたびたび妹の夢を見た。
時がたつにつれて死者の記憶は薄れてゆくものであるのに、夢はひとつの習慣になつて、
今日まで規則正しくつづいてゐる。

三島由紀夫「朝顔」より

332:この名無しがすごい!
10/05/17 11:16:13 bszZrhJ4
女といふものは、自分を莫迦だと知る瞬間に、それがわかるくらい自分は利巧な女だといふ
循環論法に陥るのですね。

三島由紀夫「魔群の通過」より


下手な絵描きに限つて絵描きらしく見えることを好むものである。

三島由紀夫「魔群の通過」より

333:この名無しがすごい!
10/05/17 11:17:15 bszZrhJ4
魔はやさしい面持でわれわれに誘ひをかける。

三島由紀夫「魔群の通過」より


中年の女といふものは若い女を見るのに苛酷な道学者の目しか持たぬ点に於て
女学校の修身の先生も奔放な生活を送つてゐる富裕な有閑マダムもかはりない。

三島由紀夫「魔群の通過」より

334:この名無しがすごい!
10/05/17 11:17:52 bszZrhJ4
『時』は私たちの生きてゐることの徒(あだ)な所以をいひきかせるために
流れてゐるのであらうか?

三島由紀夫「花山院」より

335:この名無しがすごい!
10/05/17 11:18:45 bszZrhJ4
寡黙な人間は、寡黙な秘密を持つものである。

三島由紀夫「日曜日」より


恋人同士といふものは仕馴れた役者のやうに、予め手順を考へた舞台装置の上で
愛し合ふものである。
三島由紀夫「日曜日」より


善意も、無心も、十分人を殺すことのできる刃物である。

三島由紀夫「日曜日」より

336:この名無しがすごい!
10/05/17 11:44:30 bszZrhJ4
まことに海も山も時であつた。
人の目に映つたこの世のさまざまな事象は、一旦記憶の世界へ投げ込まれるや、時の秩序に
組み入れられた存在に他ならぬ。そこにあるものは、時の海、時の山脈に他ならぬ。
波はもはや浜辺に打ち寄せてゐる青い海水ではない。時の水に充たされた海には、
時の潮が時のつきせぬ波を波立ててゐるにすぎない。そのとき海が却つてその本質を、
その流転の本質を露(あら)はにするのである。
人間もまた時間の形をしてゐる。これだけが人間のほぼ確実な信頼するに足る外形である。

三島由紀夫「偉大な姉妹」より

337:この名無しがすごい!
10/05/17 11:44:57 bszZrhJ4
この世には自分の形を忘れることのできる人とできない人との二つの種族がある。

三島由紀夫「偉大な姉妹」より

338:この名無しがすごい!
10/05/17 11:47:35 bszZrhJ4
歌舞伎役者の顔こそ偉大でなければならない。
大首物の役者絵は、悉く奇怪な偉大さを持つた顔を描いてゐる。その偉大さには一種の
不均衡と過剰がある。
拡大された感情、誇張された悲哀を包むその輪廓は、均斉を保たうがためにこの悲哀や
歓喜の内容に戦ひを挑んでゐる。美の伝達力として重んぜられたこの偉大さは、
歌舞伎が考へたやうな美の必然的な形式なのである。
そこでは美と偉大の結婚は世にも自然であつた。美が一個の犠牲の観念であり、偉大が
一個の宗教的観念となることによつて、この婚姻が成り立つた。大首物の錦絵の顔は、
偉大に蝕まれた美のあらはな病患を語つてゐる。

三島由紀夫「偉大な姉妹」より

339:この名無しがすごい!
10/05/17 11:48:01 bszZrhJ4
もし罪といふものがあるなら、それは罪の行為が飛び去つたあとの真白な空白にすぎぬだらう。
罪ほど清浄な観念はないだらう。

三島由紀夫「偉大な姉妹」より

340:この名無しがすごい!
10/05/17 11:49:09 bszZrhJ4
『奇蹟』は何と日常的な面構へをしてゐたらう!

三島由紀夫「ラディゲの死」より


神がかりの人間は、神が去つたあとで、おそろしい疲労に襲はれるんださうだ。
それはまるでいやな、嘔吐を催ほすやうな疲労で、眠りもならない。
神を見た人間は、視力の極致まで、人間能力の極致まで行つてかへつて来る。
ほんの一瞬間でも、そのために心霊の莫大なエネルギーを費つてしまふ。

三島由紀夫「ラディゲの死」より

341:この名無しがすごい!
10/05/17 11:51:16 bszZrhJ4
僕が『天の手袋』と呼んでゐるものを君は識つてゐる筈だ。
天は、手を汚さずに僕等に触れる為めに、手袋をはめることが間々あるのだ。
レイモン・ラディゲは天の手袋だつた。彼の形は手袋のやうにぴつたりと天に合ふのだつた。
天が手を抜くと、それは死だ。

三島由紀夫「ラディゲの死」より


生きてゐるといふことは一種の綱渡りだ。

三島由紀夫「ラディゲの死」より

342:この名無しがすごい!
10/05/18 14:27:10 mr+RS3pY
嫉妬は透視する力だ。

三島由紀夫「獅子」より


愛の問題ではないのです。女には事実のはうがもつと大切です。

三島由紀夫「獅子」より

343:この名無しがすごい!
10/05/18 14:27:56 mr+RS3pY
皮肉は何といふ美味なつまみものであらう。殊に酒精分の強い洋酒の場合は。

三島由紀夫「獅子」より


凡て悪への悲しげな意慾が完全に欠如してゐるこのやうな人間、(それこそ悪それ自体)が
地上から滅び去るとはどんなによいことであらう。さういふ善意が滅びることは、
どれほど地上の明るさを増すことだらう。

三島由紀夫「獅子」より

344:この名無しがすごい!
10/05/18 14:28:21 mr+RS3pY
この世に戦争をもたらし、悪しき希望を、偽物の明日を、夜鳴き鶏を、残虐きはまる侵略を
もたらすものこそ「幸福」の思考なのである。

三島由紀夫「獅子」より

345:この名無しがすごい!
10/05/18 14:29:13 mr+RS3pY
不安は奇体に人の顔つきを若々しくする。

三島由紀夫「毒薬の社会的効用について」より

346:この名無しがすごい!
10/05/18 14:30:02 mr+RS3pY
一寸ばかり芸術的な、一寸ばかり良心的な……。要するに、一寸ばかり、といふことは
何てけがらはしいんだ。

三島由紀夫「急停車」より


体力の旺盛な青年は、戦争の中に自殺の機会を見出だし、知的な虚弱な青年は、抵抗し、
生き延びたいと感じた。まことに自然である。
平和な時代であつても、スポーツは青春の過剰なエネルギーの自殺の演技であるし、
知的な目ざめは、つかのまの解放へ急がうとする自分の若い肉体に対する抵抗なのだ。
それぞれの資質に応じ、抵抗が勝つか、自殺が勝つかである。

三島由紀夫「急停車」より

347:この名無しがすごい!
10/05/18 14:30:59 mr+RS3pY
人間の歴史は、青春の過剰なエネルギーの徹底的なあますところのない活用の方途としては、
まだ戦争以外のものを発明してはいない。

三島由紀夫「急停車」より


一刻のちには死ぬかもしれない。しかも今は健康で若くて全的に生きてゐる。かう感じることの、
目くるめくやうな感じは、何て甘かつたらう!あれはまるで阿片だ。悪習だ。
一度あの味を知ると、ほかのあらゆる生活が耐へがたくなつてしまふんだ。

三島由紀夫「急停車」より

348:この名無しがすごい!
10/05/18 14:31:50 mr+RS3pY
俺の美は、何といふひつそりとした速度で、何といふ不気味なのろさで、俺の指の間から
辷り落ちてしまつたことだらう。俺は一体何の罪を犯してかうなつたのか。
自分も知らない罪といふものがあるのだらうか。たとへば、さめると同時に忘れられる、
夢のなかの罪のほかには。

三島由紀夫「孔雀」より


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