10/03/04 08:00:24 4cFfKbbM
「おはよう、キョン」
「よう、国木田。おはようさん」
国木田はもう教室にいた。朝から教室で参考書とは優等生の鑑みたいなヤツだ。
「そういや佐々木のチョコ食ってみたか?手作りらしいがビターでなかなか美味かったぞ」
「え?」
「なんだ、まだ開けてないのか。いや、そうだよな。よくよく考えなくても
あれだけもらってれば、当日に全部開封するだけで一苦労だもんな」
正確な個数こそ知らないし、去年より少ないという自己申告だったが
朝と帰りではその荷物の体積に明瞭な差がある事は一目瞭然であった。
「ていうかキョン、佐々木さんからチョコもらったの?」
「ああ。まぁな。手間賃替わりだってよ」
「手間賃・・・?」
キョンの言葉の端々にボクは違和感を覚えた。
「佐々木さん、おはよー」
「おはよう」
ふと、教室に佐々木さんが入ってくる。思わずボクは彼女の顔をじっと見てしまった。
すると彼女は微笑んで、唇に人差し指を当てた。
瞬間、ボクは理解した。理解して返事のかわりに人差し指を唇に当てた。
すると彼女はニヤリと笑って女子たちの輪に入っていった。
奇妙な友人との奇妙な秘密。さて、ボクの目の前で怪訝な表情をしている友人に、
ボクがもらったのは市販のチョコだった事を内緒にするのにどれだけの労力を裂こうか。
「国木田?どうかしたのか?」
「ううん、なんでもないよ、キョン――」