【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっ Part48【変な女】at BOOKALL
【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっ Part48【変な女】 - 暇つぶし2ch467:アナザーデイ イン ザ レイン 1/4
09/10/06 22:43:27 VCNiQiyW
 雨が降る音は種類が多すぎて擬音にしづらい、と私は思う。
 言葉のボキャブラリーが少ないだけかもしれないけれど。
 そうだな……。 今降っているこの雨を擬音にするならば……どうだろうか。
 サアサア……いや、違うな。 シャ……いや、これは止めた。 なんだか別の音になりそうな気がする。
 考えてみれば、自分にとってこの作業は難しい。
 
 とまあ、雨の降る平日、昼休みの途中に、誰と話すわけでもなく一人でボーっとしている。
 さっき配られた本日の課題へ取り組む意欲も湧かないし、その他に何かをする気も起きない。
 他の人たちはそれぞれグループを作って楽しそうに話をしている。
 この学校では男子が多く、女子が少ないこともあって、女子はほとんど全クラスの仲が好い。
 中には生真面目な人や、奇人変人の類に入る人もいるけれど、そんな人もこの学校の女子の間では愛されるべきキャラクターである。
 そしてもちろん私もその仲間に入れてもらっている。

 しかし雨というのは休日に降ってほしいものだ。
 濡れて学校へ来るよりも、部屋でごろごろしながら雨の音に耳を傾ける方が趣深い。
 ああ平和だなって思えるのが何よりもありがたい。
 今でも十分忙しいのだが、これから近い将来にはもっと忙しくなることは間違いないだろう。
 だからたまにはこんな時間を作らないと、煮詰まってしまって精神的によろしくない。
 もっとも、中学生の、特に三年生あたりの頃のような楽しい忙しさなら大歓迎なのだが。
 高校生になってそんな事があるわけでもなく─それは何となく察しがついていたが─ただ忙しいだけの毎日が過ぎている。
 言ってしまえば、退屈極まりない日々だ。
 なぜだろう。 理由が分かればおのずと答えに辿りつける気がしたのだが、その理由というのは自分には受け入れがたいというか、負けた気がしてならないものだった。
 なぜなら、それは以前に、私自身が自信満々に否定したものだったからだ。
 まだ言葉に出したくはない。 私は結構危ない所に立っていて、今にも落ちてしまいそうなほどにその心は揺らいでいる。

「佐々木ちゃんどうしたの?」
 なにやら心配そうな声がした。
「え? ああ、なんでもないよ」
 思考の海からわが身を引き上げて前を見ると、二人の女の子が私の顔を覗き込んでいた。
「ホント? なーんか難しそうな顔してたからさ」
「そうだよ。 向こうの男子なんか『あんな顔をする佐々木さんもいいなあ……』って言ってたよ」
 思わず赤面。 皆にそんな顔を見られていたなんて。
「……大丈夫。 ちょっと考え事してただけなの」
「考え事…? ねえねえどんな考え事?」
 気づくと教室に静寂が満ちている。 私の発言に皆が耳を傾けているのだろうか。
 とりあえず聞かれたことには答えないといけないだろう。
「雨、についてちょっと……」
 教室が凍りついた。 しまった……頭がかわいそうな人だと思われてしまっただろうか。
 と思った次の瞬間、
「……かっ、かわっ」
「かわいーっ! その顔で『雨について……』とか反則だよ佐々木ちゃん!」
 目の前の二人が可愛いと言い出した。
「なんで……?」
 少々呆れ気味で尋ねる。
「まあ、佐々木ちゃんの実力ってもんじゃない?」
 ますます意味が分からない。 しかし、これ以上追及する気もしないのでお礼だけは言っておこう。
「う、うん……。 ありがとう」
 ぐはっ、とでも言うように目の前の二人のうち一人がもう一方へ体を傾け、そして悶えている。
「大丈夫……?」
 とりあえず聞いてあげるとしよう。
「それ以上はダメだよ佐々木ちゃん! この娘が失神しちゃう」
 彼女らはおそらくこの学園─「学校」の方が正しいかな─で一番テンションが高い子たちだから、こんなことは日常茶飯事である。
 とどめを刺してあげようかと口を開こうとした時、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。


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