09/09/12 23:09:56 IL+93Bym
整数にビビっと来たんだ、何故かなんか。
……いいや、晒すわ。よろしくお願いします。
【アドレス】4kb以下のため直に。
【ジャンル】予定としては現代ファンタジー
【タイトル】未定
【評価基準】
プロローグとして興味を引けるか。
どんな雰囲気に受け取れるか。
【改稿】 ○
~プロローグ~
小学生の時のことだ。運動会を二ヵ月後に控え、各学年が見世物となる踊りを練習し始めた、そんな夏の日のこと。
その日、リレーの選手を決める体育の授業があった。色めきたつ運動のできる少年たちの中に、まだ恐れを知らない自分がいた。
先生の号令、整列する生徒、走る緊張、砂を舞い上げた風の匂い、刺し殺されそうな日差しの暑さ……
みんな、表情をきつく引き締めていた。
順番は回ってくる。スタートラインに立つ時、自分は薄く笑っていた。緊張が気持ちよかったのだ。
鳴り響いた破裂音と、踏み込んだ地面の感触が痛い。突き刺すような日差しの暑さと、駆け抜けていく空気の冷たさが気持ち悪い。揺れる視界と置き去りにされる友人たちに優越を感じている。
トップを走り続けた。絞るような肺の痛みが、今だけは心地よかった……
ゴールは間近だった。後もう少しで終わるのだと、そう気づいた。
―その時、肉が壊れた。
激痛。倒れていく体、傾倒する意識に歪む視界。聞こえてくるのは背後に迫る二人の足音と、遠くからの笑い声。俺は転んだだけだと思い込んで、立ち上がろうと力を込めた。
また崩れ落ちた。不自然に傾く景色の中、通り過ぎていく背中を見ていた。異変を察知した先生は、二人のタイムを取った後俺の元へと近寄ってくる。俺はそれでも立てなかった。
先生に背負われて保健室へと向かっていく。普段とは違う高い視点を見ながら、怖くなった。
もう走れないのではないかと、怖くなった。
保健室で軽い検査をされて、保健室の先生が俺に告げる。聞きたくはないと思った。やっぱり怖かったのだ。
『ただの肉離れですよ。とりあえず病院にいくことをオススメしますが……応急処置として、湿布を張っておきましょう』
子供ながらに臆病だったと思う。たかが怪我なのだ。だから俺は大きくため息をついた。所詮その程度なのだと。
だが、それとは逆に。
俺は、怖かった。走れなくなった恐怖とは、まったく別の恐怖だった。
―本気を出したら、また俺は壊れてしまうのではないかと。
百パーセントで生きていたら、いつか崩れてしまうのではないかと―
恐怖は、そうしてあっさりと童心を殺した。少年をあっさりと枯らしていった。
ある夏の日のこと。
そうして俺は、本気で生きることをやめた。
枯れた童心を捨てて、迸るやる気のなさで自分にメッキを貼って。
本気を出すことに対する恐怖を、本気を出さない面倒くさがりに加工した。
俺が本気で生きることをやめた日の、とても馬鹿らしいマヌケなトラウマ―……
「……?」
そんな馬鹿なことを、今更ながらに思い出した夏の日。
俺は、一冊の本を拾った―というか、空から落ちてきた。
装丁に金属が使われているような、無駄に分厚くて厳かな本を。
辺りには誰もいない。誰が落としたのかもわからない……疑問を感じながらも気になって、やめときゃいいのに手にとって見た。
題名には、ただこう記されていた。
―仕様書、と。
……何の?