09/06/07 19:57:26 +/YOfvEz
>>296 勝手に改稿しちゃったぞ
パソコンのモニターを前にして、達夫は連載中の『嗚呼、やらないか』を更新するために恐る恐るエンターキーを押した。
「今度こそユニーク数が三桁を超えますように」
今回で八回目の更新である。終盤にさしかかり、物語は最大の山場を迎えていた。
この更新を終えて以来、達夫はにじり寄る不安にひしがれた日々を過ごす羽目になる。
五日後。ついに我慢ができなくなって、帰宅中の電車内で吊革に掴まりながら小説家になろうのサイトに接続してしまった。
ユニーク数を確認してみる。
一目見て、たったの91人にしか読まれていないことに達夫は愕然とした。それも更新した八話の閲覧数ではなく、
合計での数値だ。あり得ない。何か打開策を見出ださねばと焦りながら、達夫は携帯を閉じた。
しばらくの間、窓に映る自分の顔と移り行く夜景の中間をぼんやりと見つめていた。
どうすれば面白く書けるのか。どうすればうまく書けるのか。どうすれば読んでもらえるのか。解決の糸口すら見出せないまま、
ひたすら悩んだ。
段々とむしゃくしゃしてきてしまったせいか、目の前に座っていたサラリーマンらしき中年男性が読んでいる小説破り捨て、
そのバーコードみたいなさみしい頭をぐしゃぐしゃにしてしまいたくなった。
電車を降り、駅の駐輪場に止めてある自転車を10分ほど走らせて帰宅する。一刻も早く答えが知りたくて、ご飯を食べるよりも
パソコンから2ちゃんねるのなろうスレアクセスした。キーボードを素早く叩いていく。
『なかなかユニーク数が増えない…誰か助けて』
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『なかなかユニーク数が増えない…誰か助けて』
古参の住民である田中は一目見て鼻で笑った。単に才能が無いからじゃないの。意地悪にもそう考えずにはいられなかった。
仕方ないなぁ、俺様が直々にアドバイスをしてやるか。高慢にもそう思い、田中はレスをしてやった。
『読んでもらいにくいジャンルの小説を書いているからじゃない?』
他の親切な住民も続いて書き込んだ。
『文学系や歴史物は読んでもらいにくいんだぜ?』
『コメディー、恋愛、ファンタジーは読んでもらいやすいよ。頑張れ』
毎度のことのように変わらないレスが続いていく中、不意に何かを思いだした田中は、世話を焼いて再び文章を打ち込んだ。
『ちゃんとプロットを構成してから書いてるかい?プロットがないとグダグダになりやすいから気をつけなよ』