09/05/27 17:11:39 br8JbKri
これは大作だ
151:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 17:16:35 09tl1Mlm
(side kyon)
「あらあら、彼女眠っちゃったのね」
俺の腕の中で寝息をたてている佐々木を見て、朝倉が柔らかい笑みを見せる。
「疲れたんだろうな。精神的にも肉体的にも」
佐々木は二年前と変わっていない。いや、二年前の状態で飛ばされたんだろうから当然か。淡い色の髪も、
今は閉じられている大きな瞳も、儚げな横顔も、細い体も変わっていない。無くした記憶以外はそのままだ。
目覚めたら『やあ、キョン、会いたかったよ』などと懐かしい口調で言ってくれないかと期待してしまうほどにな。
佐々木をお姫様抱っこで寝室に連れて行く。相変わらず軽い。よくこんな体で満員電車に揺られて長距離通学
していたものだと思う。
朝倉が昼間買い込んだパジャマを着せてくれるというので、俺はありがたくお任せしてリビングに戻った。
朝倉が戻って来て俺の対面に座る。
「うふふ、佐々木さんて本当に可愛らしいわね。いくらあなたを誘惑してもなびかないわけだわ。ちょっと妬けちゃうな」
「あのなあ……」
朝倉は三月末に長門の申請で再構成されてからずっとこんな調子だ。俺に対して献身的に尽くしてくれるし、
あからさまな好意も向けてくる。正直悪い気はしないが、過去のこともあり、佐々木のこともあるから、ずっとこんな
関係のままだ。親友あるいは幼馴染の従姉妹という感じだろうか。
「なあ、朝倉、お前らインターフェースでも焼きもちなんかやくのか?」
「当然よ。長門さんの改変を思い出してみて。喜緑さんなんか大学でも会長にべったりで、他の女の子が近寄って
来ると、それはそれは怖いオーラを発しているそうよ」
「喜緑さんてヤンデレ属性だったのか。まあ、ああいう清楚な感じの人が怖いってのも定番か」
朝倉は同意の印なのか、うふふと笑ってからお茶を注いでくれる。
「佐々木の奴、口調が女言葉になってたのはペルソナが落ちているから仕方ないとして、一度も笑わなかったな」
「しょうがないんじゃない? 本人にしたらとても笑える状況じゃないでしょ」
「俺はあいつの笑顔が見たいし、何より笑い声が聞きたいんだよ。そしたら本物と確信できる」
朝倉が自分の湯飲みにお茶を注ぎながら怪訝な表情を浮かべた。
「まだ何か疑っているの?」
「いや、99パーセント本人に間違いないと思うんだが、最後の1パーセントってとこだ」
「そうかな。既に100パーセントなのに上乗せを期待しているようにしか見えないわよ」
朝倉は笑顔を浮かべたが、それは北高の一年五組で見せていたのと同じものだった。クラスメイトの大半は
ころっと騙されていたが、今にして思えばあれはインターフェースの機能が作り出す笑顔だったと分かる。
あの頃は人間らしい感情が未発達だったがゆえに、そして今は人間らしい感情が発達してしまったがゆえに
見せている笑顔。
「どうしたの? そんなに見つめられたら恥ずかしいよ」
「ああ……すまんな、お前に辛い役目をさせてしまってるなと思って」
「いいのよ。気にしないで。わたしにとっては罰であると同時に役得でもあるんだから」
152:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 17:21:19 09tl1Mlm
俺の東京行きが決まった時、長門に言われた。涼宮とは疎遠というか会えば挨拶する程度の関係になってはいたが、
宇宙的には相変わらず俺の鍵としての位置付けは変わっていないのだと。よって、俺を利用しようとする勢力が今も
存在しており、今後も何かとちょっかいをかけてくる可能性がある。なので、誰かが近くにいて俺を守る必要があるのだそうだ。
俺達が高校を卒業する頃の長門は、相変わらず涼宮の傍で観測を続けつつ、地球上のインターフェース達を統括する立場に
昇進していたので、その権限を駆使して俺が希望するインターフェースを周囲に置いてくれることになった。
提示されたリストには、喜緑さんを筆頭に、朝倉、それに顔と名前を知っているかつてのクラスメイトが何人か記載されていた。
え、あいつが?という名前もあったのだが、長門に釘を刺されているのでここでは公開できない。
ちょっと怖いものの一番安心できそうなのは喜緑さんだったが、同じ大学に行った元生徒会長とずっと恋仲なので引き離す
のには気が引けた。元生徒会長はいまだに機関の外部協力者で、俺にとっては事情を知って話ができる数少ない一般人の
知り合いだ。わざわざ敵に回すような真似をすることもないだろう。それに会長とサシで対決して勝てる気は全く無いしな。
次点で選んだのが朝倉だった。情報統合思念体からの処分を保留されていたのだが、俺の近くにいること自体が処分の一環
だということだった。朝倉は暴走して俺を殺そうとしたのだが、あれは当時の操り主の意向であり、個体としては俺に単なる
興味を越えた感情を抱いていたのだと長門は言った。自分や朝比奈さんの経験からして、俺の傍に居続けることは朝倉に
とって十分な処罰になるだろうと。あの時は長門の言葉の意味が良く分からなかったが、佐々木が現れた今になってみると
分かる気がする。
朝倉はお茶を一口含むと溜息をついた。
「確かに辛いわね。長門さんはこれを三年間、ううん、待機モードのときを含めると六年近く続けたんだから
相当辛かったと思うわ」
「一度暴走したけどな」
「長門さん、溜め込むタイプだからね。わたしみたいに好きなこと言えれば良かったんでしょうけど」
「それはそれで部室の雰囲気が気まずいことになってたかもしれんぞ」
「うふふ、そうかもね。あのね、キョン君、わたしさっき役得って言ったけど、実際今みたいに接していられるだけでも
それなりに幸せなのよ。キョン君の中にはずっと佐々木さんがいたから、わたしにはちょっぴりしか好意を向けて
もらえなかったけどね」
「すまんな、お前の気持ちは分かっているが……」
「それは気にしないで。わたしが一方的に好きなだけだから。でも、もし佐々木さんの記憶が戻ってキョン君とまた恋人
同士になったら、わたしの居場所はなくなっちゃうのかなって思ったりもするわ」
「いや、それはない。お前の気が済むまで近くにいてくれて構わないぞ」
「うん、ありがとう。嬉しいよ」
朝倉はまた明らかに作り笑いと分かる笑顔を浮かべたが、右目から流れ出た涙が頬を伝っていた。
「あれ? どうしてこんな……」
涙に気付いて手で顔を拭った朝倉は、悲しげな笑顔に変わる。
「ねえ、キョン君、嬉しい感情と悲しい感情が同時に発生するのはエラーなのかな?」
「あーよく分からんが、それはきっとお前がまた進化したってことだと思うぞ」
「うん、そうよね。きっと、そうだわ」
普段は人当たりは良いがクールでサバサバした性格の朝倉が泣き笑いしている姿は、インターフェースとしての
能力を抜きにして正直庇護欲をそそる。佐々木と再会することがなかったら、いずれ俺は朝倉に落ちていたかもしれん。
まあ佐々木が現れなければこのシーンにはならなかったわけで、因果関係としては違うような気もするがな。
153:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 17:25:16 09tl1Mlm
「こんばんは。いい雰囲気のところ、お邪魔だったかしら?」
外から来て玄関のドアを開けないで玄関に立てる人間はこの世界にそう多くは存在しない。その数少ない特殊能力の
持ち主である朝比奈さん(大)が、いつもの白いブラウスと黒いミニスカートの女教師風の服装でリビングに入って来た。
朝倉は慌てて立ち上がり、一礼すると洗面所に駆け込んでいく。朝比奈さん(大)はその後姿を見やってから俺に
苦笑気味の笑顔を向けた。
「キョン君、相変わらずですね。朝倉さんも報われない女性の一人よねえ」
俺は無言で肩を竦めた。世間話をしに来たわけでないのは俺も学習済みだ。それに訊きたいこともある。
「彼女は?」
「もう寝てます。疲れてたみたいで」
「指示通り無事にピックアップできたようですね」
「はい、朝比奈さんが佐々木を連れてきてくれたんですよね」
「ええ、最初に彼女が出現したのが、キョン君が彼女の家があったと言っていた場所だったの」
「なるほど」
顔を洗った朝倉が戻って来て、お茶を入れようとしたが朝比奈さん(大)は首を振る。
「お構いなく。今日は佐々木さんの無事を確認しに来ただけで、すぐ帰りますから。長門さんと古泉君が揃った頃に
またおうかがいしますね」
相変わらずの魅力的な笑顔を残して朝比奈さん(大)は時間移動に入り、目の前から消えた。
「さて、俺も帰るとするか」
湯飲みに残ったお茶を飲み干して俺は席を立つ。すると朝倉も立ち上がり、俺の腕をそっと掴むと上目遣いになる。
「キョン君、良かったら今日泊まっていってくれないかな。明日の講義は三限からでしょ?」
「お前と一緒だから無論そうだが、俺が泊まっていいのか? 女同士の方が安心できるとか言ってただろう」
朝倉は上目遣いの視線を逸らす。
「うん、でもさっきの話のとおりエラーが起きているから、佐々木さんと二人きりでいると暴走するかもしれないのよ」
『暴走』というキーワードが俺に効くのを朝倉は分かってて言っているのだろうが、それで翻意してしまうあたり俺も修行が
足りない。
「分かった分かった。しょうがない奴だな」
俺は昼間の服装のままリビングのソファーでごろ寝することにした。このソファーはソファーベッドとまではいかないが、
座る部分を展開するとマットレスのようになる便利なものだ。朝倉に頼めばもっと楽な服も用意してもらえるだろうが、
佐々木があらぬ誤解をしかねないので着替えないことにする。
だが、俺の配慮も無駄だったようだ。横になって眠ろうと目を閉じていると誰かが歩いて来る気配がし、目を開けたら
Tシャツにハーフパンツという部屋着姿の朝倉が立っていたからだ。
「どうした? 眠れないのか?」
そう言ってから、インターフェースには愚問であることに気付く。
「眠れないわけじゃないわ。でも、ちょっと」
朝倉は俺の傍らに横たわると、俺の手を握った。
「ごめんね、今日がこういうことができる最後のチャンスだと思ったから」
何が最後か分からないが、一般的に見てマズいんじゃないか、この状況。佐々木に見られたら限りなくヤバい。
だが、切なげな表情で見つめる朝倉を俺は拒むことはできなかった。みんな俺をヘタレだと罵ってくれて構わないぞ。
「何もしなくていいよ。何も言ってくれなくていい。キョン君の背中だけ貸して」
言われるままに背を向けると、朝倉は背中に頭をくっつけてきた。
「こっち見ないでね。顔見られたくないから」
背後から伝わる朝倉の体温を感じながら、俺はいつしか眠りについていた。
154:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 17:29:48 09tl1Mlm
第三章終了です。
155:この名無しがすごい!
09/05/27 17:33:24 6YuNB5UF
支援
156:この名無しがすごい!
09/05/27 17:45:25 LFZPIc/2
>>150
池田?
157:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 17:58:54 09tl1Mlm
ep.04 彼女の想い
(side sasaki)
目覚めたのはベッドの中だった。遮光カーテンのせいで部屋は暗い。枕元の時計を見るとまだ五時過ぎだ。
私は昨日彼が買ってくれたパジャマを着ていた。彼がベッドに運んで、朝倉さんが着替えさせてくれたのだろうか。
床に敷いてある布団は空だった。寝具は乱れておらず、そもそも人が寝ていた形跡が無い。
喉の渇きを覚えた私はよろよろとベッドを降りてキッチンに向かう。
昨夜の頭痛は治まっていたが、頭の中に靄がかかっているようで、状況をはっきりと認識できない。
キッチンのライトをつけ、勝手に冷蔵庫を開けさせてもらう。麦茶があったので台所においてあったコップに注いで喉を潤す。
これは昨日彼の家で飲んだものと同じだ。してみると、あの麦茶も朝倉さんが作ったものなのだろう。
ただの友人がわざわざ家に来て麦茶を作って冷やしておいてくれるとは考え難い。
やっぱり、彼と朝倉さんはつき合っていて、もしかすると男女の仲なのかもしれない。
友人だの護衛だのというのは、私を安心させるために言ってくれただけなのかも。こんな私なんか……
どうも私は一度ネガティブな方向へ思考が向くと際限なく負のスパイラルに墜ち込む人間のようだ。
いけないいけない。今は彼の言葉を信じて、いつか私が昔のことを思い出したら、また彼と一緒に……
私は何気にリビングの方を見た。そして、早朝に目覚めた自分を呪った。
リビングにあったソファーがマットレスのように展開されていて、そこに彼が寝ていた。
その隣には彼にぴたりとくっついて朝倉さんが寝ている。広がった豊かな黒髪に隠されて顔の部分は見えないが、
覗きに行く勇気は私には無かった。
やっぱりそうなんだ。嘘つき。私には色気も胸も、ついでに記憶も無い。こんな私よりも朝倉さんの方が良いに決まっている。
私は何を期待していたんだろう。私の彼氏だったなんてうまいことを言って、きっと私を何かに利用しようとしているに
違いない。どうして? 何故? また頭の中がぐるぐるしてきた。
空になったコップをキッチンの台に置くと、カタンと意外に大きな音を立ててしまった。そのせいか、朝倉さんがぴくっと
動き、素早い動作で起き上がってこちらを見る。
私は逃げようとしたが、目が合ってしまい動けなくなった。朝倉さんも、しまったという表情でこちらを見ている。
私は何か言おうとしたが、口が動かない。ついでに体も動かない。朝倉さんは立ち上がるとこちらに向かって歩いて来る。
嫌だ。来ないで。
「本当にごめんなさい」
寝室のカーペットの上に座った朝倉さんが頭を下げる。ベッドに座った私は、何も言えないままそれを見ていた。
「本当に彼との間には何も無いの。わたしが一方的に好きなだけ」
「信じられません。だって、二人はどうみても以心伝心だし、お似合いじゃないですか」
何をしていたかは質問できなかった。口にすることで自分が惨めになりそうだから。
朝倉さんはふるふると首を振った。
「そう見えるのは嬉しいけど、本当に何も無いの。でも……」
朝倉さんは眠っている彼にこっそりキスしたことまでは認めた。だが、彼に何かそういうことをしてもらったことは
無いのだとも言う。全く信じられない。
「それはね、キョン君の中にずっと佐々木さん、あなたがいたからなの」
「私が?」
「そう、キョン君は自分にだけ残されたあなたの記憶をとても大切にしていたの。わたし達がこれまで解析して
判明した彼の特殊な能力のひとつがその記憶の保持なの。わたし達の仲間に喜緑さんという主に事件の後処理担当の
インターフェースがいて、彼女は極めて高い情報操作の能力を持っているのだけど、その彼女をもってしても彼の
記憶には手が出せなかったそうよ。彼はあなたが消える前に情報操作をしたと思っているけど、本当は違うの。
キョン君は自分が能力的には一般人だという信念があるから、わたし達がそうだと言っても笑って取り合ってくれない
でしょうけど」
「彼の能力については理解できましたけど、もし朝倉さんのことを本当に好きではないのなら、もっとつれない態度をとる
べきだと思うんです。私が見た限り、彼はあなたにとても優しいと思いますけど」
158:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 18:05:49 09tl1Mlm
朝倉さんは淋しそうに微笑む。
「それはね、キョン君のもう一つの特殊能力のせいなの。彼はどんな属性の相手であれ、ありのままを受け入れ、
普通に接することができるのよ。涼宮さんや昔のあなたのような世界改変能力者、長門さんや私のような宇宙人、
それに未来人や超能力者でも怯えたり恐れたりせずに普通に接してくれるの。普通の人間であれば抱くであろう
感情を彼は持たないのよね。ただ、彼は女心には極めて鈍感なくせに紳士的でもあるから、彼に好意を抱いた
特殊な属性をもつ女の子達は苦労しているのよ」
朝倉さんの話は私を元気付ける内容ではなかった。私も特殊な属性を持っていたらしいが、今は認識できない。
それに彼の周囲には朝倉さんに勝るとも劣らない女性達が何人もいるようなのだ。
その中で私が選ばれた理由が分からない。記憶が戻れば分かるのかもしれないが、分かることが怖いような気もする。
「だから佐々木さん、あなたはキョン君を信じて、キョン君の傍にいてあげて。わたしのことは気にしなくていいから」
朝倉さんはにっこりと笑みを浮かべる。でも、私にはその笑みがひどく悲しいもののように思えてならなかった。
「朝倉さんは本当にそれでいいんですか?」
朝倉さんの笑みが消えた。
「佐々木さん、あなたって優し過ぎて残酷だわ」
朝倉さんはそこで言葉を切ると、目を伏せて一気に想いを吐き出し始めた。
「それでいいわけないでしょ。本当はわたしだってキョン君のこと大好きなんだから。誰にも渡したくないって思ってるん
だから。せっかくこうしてキョン君と二人でいられるようになったのに、あなたが現れたらキョン君はあなただけを見て
しまう。キョン君の傍にわたしの居場所はなくなってしまう。そんなのは嫌なの。わたしがそんなことを言う資格がない
のは分かっているけど、でもどうしようもないの」
「……」
朝倉さんが本当に彼のことを好きなのは痛いほど分かった。彼女は宇宙人かもしれないが、その感性と感情は人間の
女性と変わらない。いや、これほど一途に素直に自分の気持ちを吐露できる人間の方が少ないかもしれない。
私はどうなんだろう。今の私には彼との記憶がない。彼は今も私のことを愛してくれているのだろう。けれども、今の私の
ぼんやりとした頭では彼に対する気持ちもぼんやりとしたままだ。
朝倉さんは袖でごしごしと涙を拭った。
「ごめんなさい。取り乱したりして。わたしはクールでさばけた性格のインターフェースとして構成されているはずなの。
だからこんなになるのはおかしいのよね。わたしってやっぱり不良品なのかな」
私は思わずベッドから降りて朝倉さんの手を取っていた。
「朝倉さん、今の私には記憶が無いから自信がないの。もし私がこのままだったり、記憶が戻っても前のように彼に
接することができないのなら、私に遠慮しなくていいわ」
朝倉さんは一瞬ポカンとしたが、すぐに厳しい視線を私に向けた。
「あなたそれ真面目にそう思ってる?」
「ええ」
私がそう答えるなり、弾くような勢いで朝倉さんは私の手を振りほどくと、睨みつけてきた。
「冗談じゃないわ。そんな簡単に諦めるなんてわたしは許さないから」
「え……」
「あなた、キョン君の気持ち考えてる? 誰もあなたのことを覚えていない、あなたに関する情報が全て消えている
絶望的な状況の中で、この二年間、ずっと大事に大事に守ってきたあなたへの気持ちを。
それなのに、あなたがそんな気持ちでいるんじゃキョン君が可哀相よ。
あなたは何が何でも記憶を取り戻さないといけないの。キョン君の気持ちに応えてあげないといけないのよ。
そういう風に思えないのなら、今度こそ完全に消えちゃってよ。できればキョン君の辛い記憶も一緒に消してあげて。
最初から諦めてダメだった時のことを考えてどうするのよ」
朝倉さんは真剣な目で私を見つめている。彼を愛するがゆえに、報われなくても彼の幸せを願っている朝倉さん。
それにひきかえ私はどうなんだろう。最初から一歩ひいてる。どうすればうまくいくかを考える前に、うまくいかなかった
時のことなんか考えて。
「……そうね。ごめんなさい。私が悪かったわ。記憶が戻るように頑張ってみる。もし、戻らなくても彼を信じてついて
いけばいいのよね」
そう、記憶が戻るに越したことはないが、戻らないからといって彼を諦める必要は無い。
「そうよ、佐々木さん。わたしもできる限り応援するから頑張ってね。
あ、わたしが応援するのは、もちろんキョン君のためにだけどね」
朝倉さんの笑みがまた淋しげになった。
159:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 18:08:41 09tl1Mlm
彼が起き出してきた時には、私達は朝食の準備をほぼ整えていた。
朝倉さんの料理の腕は大したものだ。昨夜もそうだったが、とても宇宙人とは思えない手際の良さで、次々と
魔法のように作られていく。私も手伝ったが、お世辞にも手際が良いとは言えない出来だった。
「佐々木さんにも手伝ってもらったのよ。どれが彼女の作品か分かる?」
「うーん、どれも見た目では朝倉のと区別がつかんな」
そんなに朝倉さん作の朝食を味わっているんだろうか。何も無いと言われても、どうしてもまた疑ってしまう。
彼は次々とおかずに箸をつけていく。そして、玉子焼きを頬張った瞬間に彼の顔色が変わった。素早い動作で
もう一切れの玉子焼きを食べてから彼は私に顔を向けた。
「この玉子焼きは佐々木の味付けだな」
「うふふ、さすがね。正解よ」
朝倉さんがにこにこして応じた。
「佐々木、お前は覚えていないだろうが、中学の時に弁当持参のイベントがあると毎回お前が弁当を作ってきて
くれてな、いつも入っていたのがこの玉子焼きだったんだ。懐かしいぜ……」
彼が急に目頭を押さえたので、私は何か変な味をつけてしまったのかとドキドキした。
「ああ、すまん……いや、何というか、見た目や声だけじゃなくて、今のお前が昔のお前だって証拠が手に入った
ような気がしたんだよ」
「あら、そうなんだ。良かったじゃない」
朝倉さんはまたにこにこしているが、何となく淋しそうに見えるのは、朝の一件があったせいでそう見えるのだろうか。
いや、恐らくはこうして証拠を見つけるたびに、そして私の記憶が戻るたびに朝倉さんは辛い思いをするのだろう。
朝食が終わると彼は着替えと今日の講義の準備があると言って、一人で自分のアパートに戻って行った。
二人とも大学に行くので同じ電車に乗る約束をしている。いつもそうしているそうだ。一人でいても仕方がないので、
私も一緒についていって待つことになっている。歯を磨いた私は、後片付けを手伝おうとキッチンを覗いた。
朝倉さんが玉子焼きが載っていた皿を手にしてじっと見つめている。私が傍にいるのにも気付かない様子で、
唇をぎゅっと噛みしめて。私にああは言ったが、やはり割り切れないのだろう。
彼のこと、そして私も覚えていない彼と私の時間。
「朝倉さん、洗い物は私がしましょうか?」
私が声をかけると、朝倉さんは飛び上がらんばかりにびくっと反応した。
「え? あ、ああ、いいのよ。わたしがやるわ」
慌てて皿を洗い桶に入れる朝倉さん。皿がぶつかり合って派手な音を立てる。
自分がやると言ったのに、朝倉さんの手は止まっていた。
「朝倉さん、やっぱり彼のことを?」
「ごめんね。あんなこと言ったけど、そう簡単には諦められないわ」
暗い表情で俯く朝倉さんを見て、ここにいつまでも世話になるわけにはいかないなと私は思った。
これ以上私がここにいると朝倉さんはもっともっと辛い思いをするだろう。
今日上京して来る長門さんや古泉さん達にも相談し、なるべく早くこの家を出よう。
160:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 18:16:19 09tl1Mlm
私はキャンパスのベンチに座って、二人が講義を終えて出てくるのを待っていた。
五月もそろそろ終わりで、陽射しは既に夏の色を帯びているのだが、幸い今日は薄曇で気温も高くない。
行き交う学生達を眺めながら、もし私がそのまま彼と一緒にいたら、今頃は学生としてこのキャンパスにいたかもしれない
などと想像してみたりする。
私の服は朝倉さんが貸してくれたものだ。サイズがちょっと大きかったが、情報操作でフィットするように直してくれた。
こういう時には便利な能力だ。私が着ていた服は二年前の流行のものだから、こういうところで着て歩くには気が引けるし、
彼が買ってくれたものはいわゆる部屋着の類なので、今日の午後にまた買出しに行く約束だった。
お茶のペットボトルを傍らに置き、彼が貸してくれた文庫本を開いていると、何度も声をかけられた。ジャニーズ気取りだが
どうみてもお笑い芸人にしか見えない人達にナンパされたり、怪しい宗教勧誘に声をかけられたり、妙なバイトの話を持ち
かけられたり。どれも撃退するのは簡単だったが、いろんな人がいて大学というのは面白いところだ。
そういえば、これから私はどうすればいいんだろう。両親が私のことを覚えていてくれれば家に帰ることもできるだろうが、
彼の話を聞く限りそれは難しいようだ。私は存在しないことになっているのだから。できればどこかの高校に編入あるいは
高卒認定をとって大学に入りたい。敷居は高いが、ここに入れればベストだろう。彼と同じ大学に通えたらいい。
あ、私は二年後輩になるのか。生まれたのは18年前だけど、実年齢は16歳だから。
いや、もっと大切なことを忘れていた。私はどうやって生活費、そして学費を稼げばいいんだろう。
存在しないはずの人間がつける仕事など高が知れている。彼に全面的に頼るわけにもいかない。
彼も学生だから学業が本分なのだ。これ以上迷惑をかけるわけにもいかないだろう。
自分がいかに無力でちっぽけかを思い知らされる。体一つで異世界に放り出されたようなものだ。
幸い頼れる人達がいるだけマシだけど。
文庫本はさっきから全然ページが進んでいなかった。私は小さく溜息をつく。ああ、いけない、暇そうにしていると
声をかけられてしまうから、文庫本に集中しているふりをしていろと言われていたのだっけ。
「すまん、待たせたな」
彼の声がしたので私は顔を上げた。彼の隣に朝倉さんが寄り添うように立っている。同じ講義だと言っていたから
一緒にいるのは当然なのだろうが、並んでいる姿はとてもお似合いだ。教室でも並んで講義を受けていたのだろうと
思うと、ちょっと妬けてしまう。
お昼は学校の近くの定食屋に連れて行ってもらった。学生風の男女で溢れかえっている店は賑やかだ。
おすすめのものを教えてもらい注文するとすぐに出てきた。値段と量と出てくる早さが命で、味は二の次なのだと彼が言う。
それでも十分においしかったが、小食の私は結構残してしまった。すると残ったものを彼が食べてしまう。
私が唖然としていると、
「いや、すまんすまん、つい昔の癖でな」
中学の頃、給食で私が食べきれない分をいつも彼にあげていたのだそうだ。
朝倉さんの方をちらっと伺うと、また淋しそうな顔をしている。
「お、キョン、珍しいな。今日は奥さん以外に連れがいるのかよ」
レジに並んでいると彼と同じくらいの年恰好の男子学生が声をかけてきた。『奥さん』というのは朝倉さんのことだ。
事情が事情だけに仕方ないのだろうが、いつも朝倉さんと一緒にいるから夫婦呼ばわりされるのだろう。
「ああ、ちょっと知り合いの娘さんに大学を案内しているんだよ。この子は試験休みなんだ」
彼は適当な話をして誤魔化す。
「へえ、奥さん以外にもこんなに可愛い子が知り合いにいるなんて羨ましいぜ。お嬢さん、是非ウチに来て下さいよ」
男子学生は軽口を叩いて店の奥に行ってしまった。
店を出ると今度は眼鏡をかけた女子学生が声をかけてくる。
「涼子、寝坊でもしたの? お昼が外食なんて珍しいじゃない。いつも愛妻弁当なのに」
朝倉さんがうろたえた表情で口をパクパクしているのをニヤニヤしながら見ていた女子学生はそこで私に気付いた。
「あ、お連れさんがいたのね。こりゃ失礼。じゃあね~♪」
なるほど、普段は朝倉さんと二人仲良く彼女が作ったお弁当を食べているのだと把握した。
161:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 18:21:11 09tl1Mlm
何でこうもモヤモヤした気分になるのだろう。自分では分かっているつもりだったのに、いざ彼と朝倉さんが仲良く
している証拠を見せつけられると不安になってしまう。
「おーい、佐々木、待てよ」
待ってあげない。私はキャンパスの通路をずんずんと歩いて行く。どうせ私なんかあなたの相手に相応しくないんだ。
朝倉さんみたいに細やかな神経を持った尽くすタイプがお似合いじゃないの?
「おい、何を拗ねてんだ。ガキじゃあるまいし」
「どうせガキですよーだ。私はまだ十六なんだから」
「あ……そうか、すまんすまん、今のお前はまだ高二だったんだよな。すっかり同級生のつもりでいたぜ」
彼は照れ隠しに頭を掻いた。なるほど、そういうことか。彼は私を同い年として扱い、私は彼を年上の男性として
意識していたのだ。彼の遠慮のなさは同級生の気の置けない相手に対するそれだったのか。私はそれを子供扱いだと
思い込んでいたようだ。でも、どっちが正しいのだろう。今でも違和感があるのに、記憶が戻ったときのことを考えると頭が痛い。
「ここで待ってろよ。次の講義は大教室なんで出席とったらすぐに出てくるから」
彼はそう言い残してまた朝倉さんと一緒に教室棟に入って行く。以前は部外者も入れたのだが、最近いろいろ物騒なので
教職員と学生以外を入れないために入口でカードを通すようになったのだそうだ。
大教室での講義も出席はカードでとるのでカードリーダーに通したら出てきてしまっても出席扱いになるのだと彼は言った。
大学生なので講義を受けないことによるリスクは自分でヘッジしろということだろう。朝倉さんのことだから講義の内容は
後でも分かるよう何か細工をしているだろうし。
私はまたベンチで文庫本を読んでいるふりをする作業に戻った。
「失礼ですがお一人ですか?」
また声をかけられた。正直鬱陶しい。ちらっと上目遣いで見ると、ホストみたいな恰好の人だ。
この手のナルシストじみた人は気持ち悪くて嫌いだ。無視しているとさらにしつこく話しかけてくる。
この大学にもこんな変なのがいるとは思わなかった。
「しつこいですよ。私は待ち合わせしてるだけですから、あなたとお話しする気はありません」
「へえ、待ち合わせ? もしかして相手も女の子かな?」
馴れ馴れしいのも嫌いだ。無視しているとホストみたいな人は携帯で誰かと話している。数分後、ホストの数が
三人に増えた。
「キミ高校生でしょ。こんなところで遊んでていいのかなー」
「ヒマならお兄さんたちといいことして遊ばないかい?」
「キミみたいな美人が一人淋しく待ち合わせなんて似合わないよ」
もう鬱陶しいを通り越してウザい。腕に触れようとして伸ばされた手を叩くと、一人が怒り出した。
「ガキのくせにお高くとまってるんじゃねーよ!」
私はチラッと喚いているホストまがいの方を見て、また文庫本に目を落とした。次の瞬間、強引に手を引っ張られる。
「きゃっ」
私は振りほどこうとしたが、力では全然かなわない。怖くて声も出ない。
「あなた達、わたしの可愛い後輩に何しているのかしら?」
背後で朝倉さんの氷のような声が聞こえた。
162:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 18:25:47 09tl1Mlm
「おい、あれ政経の朝倉涼子だぜ」
「すげー、美女二人まとめてゲットだぜ」
ホストまがい達のヒソヒソ声が私の頭上で聞こえる。私たちはポケモン扱い?
「あのー朝倉さん、せっかくなので俺達につき合ってくれませんかね」
無謀な発言が飛ぶ。無知ゆえの傲慢とは良くも言ったものだ。
私は腕をつかまれたまま必死に首を回して朝倉さんの方を見る。
朝倉さんは哀れむような微笑をたたえてこちらを見ていた。圧倒的な実力差を認識している者の余裕の微笑みだろう。
「その子を離してくださる? わたしとしては穏便に済ませたいのだけど」
「その前に是非俺達と一度つき合ってもらえませんかね?」
「うん、それ無理♪」
朝倉さんが明るい口調でそう応じ、愛らしい笑顔を浮かべると、周囲の様子が一変した。
薄曇の空は極彩色が渦巻く天井に変わり、四方にもいつの間にか壁が出来ている。
「うわっ、何だこれ?」
「マジかよ」
ホストまがい達がうろたえた様子で喚きたてる。
「おい、体が動かねえぞ?」
それはお気の毒に。私は動けるので、彼らの手の中から簡単に抜け出した。
「佐々木さん、今のうちにこっちへ来て」
言われなくてもそうする。私が彼女の背後に駆け込むと、朝倉さん手の中に光の粒が集まり、昨日見た
アーミーナイフが構成されていく。朝倉さんはふふっと笑うと、宙に浮き上がり三人の方へ飛んで行く。
物理法則って何それ状態の光景を見て本当にこの人は人間じゃないんだなと私はのんびり考えていた。
「うわーっ」「ひいいい」「やめろー」
彼らの悲鳴が上がる。朝倉さんが戻ってくると、動けない彼らのズボンがずり下がっていた。
いえ、正確にはズボンとその下にはいていたものもずり下がっていたわけで……
「あらあら、レディーの前でご開帳なんてはしたないわよ」
「ひいいい」「やめろー」「化け物だー」
「失礼ね。わたしは化け物なんかじゃないわよ。さて、次はどうして欲しいか教えてくれる? 二度と悪さできない
ようにその股間の矮小で不快なものを切断してあげましょうか? それともすっぱり頚動脈を切って楽にして
あげましょうか? ねえ、死ぬのって怖い?」
朝倉さんは楽しそうに彼らに話しかける。この人は間違いなくサディストだ。宇宙人にも特殊な性的趣味を持つ
個体がいるということなのだろうか。
「ひいいい」「たすけてくれー」「ママー」
何か変な叫び声が聞こえたが気持ち悪いので聞かなかったことにする。朝倉さんは再び宙に浮き上がると
彼らの周囲を二周ばかり回って戻って来た。彼らの服の背中がばっさりと切り開かれる。
「今度やったらそのラインから胴体を真っ二つにしてあげる♪ あ、記憶操作するから忘れちゃうわね。ま、いいか」
音符までつけて言う内容ではないと思うが、次の瞬間周囲の風景がきらきらと光る粒に変換され、その眩しさに
思わず私は目を閉じた。
眩しさが消えたので目を開けると周囲は元のキャンパスに戻っていた。
唯一違うのは目の前に下半身を露出し、失禁して気絶している先程の三人が転がっていたことだ。
すぐに女性の悲鳴が上がり、野次馬が集まって来る。
朝倉さんは何事も無かったかのように澄ました顔で私の手を取ると、
「行きましょ」
とだけ言って教室棟の方へ歩き出した。
「おいおい、こりゃ何の騒ぎだ?」
教室棟の入口で出てきた彼と鉢合わせる。
「佐々木さんをナンパして連れ去ろうとした身の程知らずが三名ほどいたので、ちょっとお仕置きしたのよ」
「あーお前またやったのか。長門からお咎めがあっても知らないぞ」
「佐々木さんを守るためには仕方がなかったのよ。申請も通ったし問題ないわ。まあ、むしゃくしゃしてたから
少々遊ばせてもらったけどね」
「お前なあ……」
彼は呆れ顔になっていたが、不意に朝倉さんの耳元に口を寄せると何事か囁き、朝倉さんの顔が真っ赤になる。
後で何を言われたか訊いてみたのだが、朝倉さんは恥ずかしいからと、どうしても教えてくれなかった。
163:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 18:27:45 09tl1Mlm
私達は服の買出しに行くために、校門前のバス停に向かっている。
安心したら急に怖くなった私は彼の腕にずっとしがみついていた。
「あいつらは多分付属から上がってきた連中だな。まともな奴も多いが、どんなバカでもエスカレーターで
入学だけはできて、しかも金持ちのボンボンが多いからどうしようもないのもいるんだ。
だがな、佐々木、女の子一人で野郎三人に喧嘩を売るなんて無謀にも程があるぞ」
「ごめんなさい」
彼の言うとおり、相手を挑発したのは私だ。人を見る目が甘いといわれたら返す言葉がない。
「でもキョン君、彼女を一人でいさせた私達にも責任があるわ。たまたま私が良いタイミングで戻ったから
良かったけど。これから彼女の安全を確保しないといけないと思うわ」
彼は朝倉さんの発言に頷く。
「そのとおりだが、恐らくそれは古泉の仕事だな」
三人で駅ビルやらデパートやらをはしごして私の服を買い揃える。
お金は朝倉さんが出してくれた。出所は訊かないほうが良いだろう。
高校生が普段着るのに良さそうな服が大部分だが、ちょと背伸びしたのも一揃い買った。
それに下着やら小物類やらも併せて買ったので結構な荷物になった。最後にアクセサリー売り場に寄る。
彼が高校生がしていても問題ない程度のリングを買ってくれた。
「それをつけてりゃ特殊な趣味の奴はともかく良識ある奴は寄って来ないだろうからな」
彼は冗談めかして言ったが、左の薬指に指輪をしててもいいんだろうか。
「いいなあ、佐々木さん。ねえ、キョン君、わたしもリング欲しいんだけど」
朝倉さんが甘えた声で彼に言う。
「買ってやらないことはないが、お前絶対それつけて大学に来るだろ。これ以上誤解されるのは俺が耐えられんぞ」
「もう、意地悪なんだから」
朝倉さんは冗談めかしているが、本心なんだろうな。
164:この名無しがすごい!
09/05/27 18:28:49 Nx+Ird6e
いいよ良いよぉ
165:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 18:29:09 09tl1Mlm
第四章終了です。
次は少し時間がかかります。
166:この名無しがすごい!
09/05/27 19:28:22 vb+yTMdD
乙
167:この名無しがすごい!
09/05/27 20:49:23 JLHGUm17
>>165
大作です
乙
168:この名無しがすごい!
09/05/27 21:32:21 1v+jYaar
てか、そもそもこういうスレなんだから
もっとこういうのあってもいいと思う
169:この名無しがすごい!
09/05/27 22:10:08 ko1f4Uyk
今日はもう投下無いのかな?とりあえず乙
でもちょっとキャラ変わりすぎかな。特にキョンが・・・
170:この名無しがすごい!
09/05/27 22:24:39 6YuNB5UF
>>169
作者がキョンに自己投影してるみたいでちょっと気持ち悪いけど、オリジナル設定ありと注意書きもあるしいいんじゃないかとw
171:この名無しがすごい!
09/05/27 22:27:25 SioghkAv
それにまだ途中だしな。
172:この名無しがすごい!
09/05/27 22:29:48 br8JbKri
続きが気になる
173:この名無しがすごい!
09/05/27 22:37:58 b8lT5txl
>>170
というかSOS団が、特にハルヒ嫌いってのが伝わってくるな。最盛期の佐々木SSのようだな。
174:この名無しがすごい!
09/05/27 22:46:14 JLHGUm17
>>173
そうか?
175:この名無しがすごい!
09/05/27 22:48:43 HA3Ygerb
これが佐々木厨の本性ですか…
呆れますね
176:この名無しがすごい!
09/05/27 23:06:41 PSTS4vyO
あらら、お客さんまで来ちゃった
177:この名無しがすごい!
09/05/27 23:09:47 vb+yTMdD
>>173
どんなSSでも、ハルヒがマンセーされないと気に食わないの?
178:この名無しがすごい!
09/05/27 23:28:50 b8lT5txl
そういう問題じゃないと思うけどな。
あ、アンチのアンチさんですか。
179:この名無しがすごい!
09/05/27 23:29:38 b8lT5txl
>>175
とりあえずお前はカエレ。
180:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 23:29:59 09tl1Mlm
>>169 >>170
やっぱりそう思えますよね。俺一人称だとどうしても自分の色が入り書きにくいです。
かといって三人称で書くとイメージが変わってしまうし、全ては自分の力不足ですね
>>173
悪役に見えるのか、うーん
ということで第五章投下します
181:この名無しがすごい!
09/05/27 23:30:32 kLkmNoV+
読む気がしないなぁ。
誰か内容を要約してくれ。
3行で。
182:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 23:31:01 09tl1Mlm
ep.05 特異点
(side kyon)
朝倉のマンションにとりあえず荷物を運び込む。我が家では到底収容し切れそうになかったからな。
組み立て式のロッカー箪笥も別途頼んであるので、佐々木の住む場所が決まり次第持っていってやらないといけない。
朝倉が佐々木を連れて夕食の買い物に出たので、俺はその間に一度アパートに戻り、明日の講義のテキストを持って来た。
朝倉が予習をする必要はないが、一般人たる俺には予習が必要だ。第二外国語があるのでしっかりやっておかないと明日困る
ことになるからな。
俺が予習を終え、キッチンからカレーの匂いが漂ってきた頃に長門達が到着した。もう一人の参加者は来ていないが、恐らく
夕飯の後に来るのだろう。
長門は見慣れた制服姿ではなく清楚ではあるが巷の女子大生のようなおしゃれな服を着て化粧までしていた。元のつくりが
良いので化粧をしなくても十分美人だったが、さらに綺麗になっているな。髪も少し伸ばしたようだ。古泉もニヤケハンサム
ぶりにますます磨きがかかっていやがる。相変わらず一分の隙もないファッションで、髪も少し染めている。
古泉にはツレが一人いた。最後に入って来たそいつの顔を見た瞬間、俺の思考にフラッシュバックが発生する。
橘? 何でお前がここにいる?
橘京子は俺の視線に気付き、不思議そうな顔で視線を返してくる。ああ、そうなのか。こいつは俺の知っている橘じゃない。
(side sasaki)
朝倉さんが情報操作で長くしたダイニングテーブルの上を片付け、お客を迎える用意をしているとエントランスのベルが
鳴った。ちょうど予習していたテキストを片付け終わっていた彼が出てお客を迎え入れる。
入ってきたのは長身の男性一人と小柄な女性二人だった。皆、絵に描いたような美男美女ばかりで、私はちょっと気後れする。
エプロン姿の朝倉さんもキッチンから出てきた。
まず、彼がお客達に朝倉さんと私を紹介する。ショートカットで無表情な女の人は、何もかも見通すような視線を私に向け、
長身で少し髪の長い男性は慇懃な態度でにこやかに頭を下げ、栗色の髪をツインテールにした女の人は穏やかな表情で丁寧に
会釈をした。
今度はお客が自己紹介する番だ。長身の男性が彼に素性を明らかにしていいのかと尋ね、彼が頷く。
「はじめまして、佐々木さん。古泉です。彼から聞いていると思いますが、『機関』という組織のメンバーです。京都で
涼宮ハルヒさんのお世話をしています。では長門さん」
「……長門有希。朝倉涼子の上司」
ショートカットで無表情な女の人は二言で自己紹介を済ませた。何やら神秘的な雰囲気が漂い、ちょっと怖い感じがする。
朝倉さんとは同じ宇宙人でも随分と性格が違うようだ。
もう一人の女性は古泉さんが紹介してくれた。
「彼女は橘京子。僕と同じく『機関』のメンバーで、東京での窓口としてあなた方を担当します」
「橘です。よろしくお願いします」
橘さんはツインテールを揺らさずに優雅に会釈した。
「彼女は法学部に在籍しています。学内にも何人か外部協力者がいますので、いざという時は頼って下さい」
「さすがだな、もう体制を整えたのか」
彼が半ば呆れ顔でボヤくと、古泉さんは前歯が光りそうな爽やかな笑顔を浮かべた。ちょっと胡散臭いかも。
「元々はあなたと朝倉さんの監視のために要員が配置されていたんです。なので、今回はそれをちょっと増強した程度
ですよ」
彼は納得顔で苦笑する。
「やれやれ、相変わらず監視がついてたか。面白くはないが、助かったこともあるから仕方ねえな」
彼に監視がついているということは、私も監視対象なのだろうか。そんなに重要……かもしれない。記憶が戻ったり、彼の
言う力が戻ったりすれば。でも、今の私は存在しないはずの、何もできない記憶喪失の小娘だ。
183:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 23:32:18 09tl1Mlm
「とりあえずみんな手を洗って席についてね。長門さん、今日は特製カレーを用意したわよ」
朝倉さんの明るい声で何となく漂っていた緊張感が解ける。
「……朝倉涼子のカレーは久しぶり。楽しみ」
長門さんが無表情で2センテンスしか言わないのは別に機嫌が悪いからではなく、元々こういう人らしい。彼にそのことを
そっと尋ねたら、
「そうだ。別に怖くないから安心していいぞ」
と言われた。他の人たちは私に緊張感は与えないが、だからと言って安易に信用してはいけないんだろうな。
朝倉さんは大鍋二つになみなみとカレーを作っていた。朝のうちに一部仕込んではあったけど、いずれにせよ凄い量だ。
ご飯は足りるのかと思ったら、台所にあった炊飯器がどうみても業務用の大きさになっている。情報操作で大きくしたの
だろうか。
「そうよ。長門さんてあの体で物凄く食べるのよ」
朝倉さんはそう言って、どんぶりのような皿に山盛りのカレーを寄越した。他の人達はまあ普通だ。
「あら、ちょっと出遅れちゃったかしら?」
玄関で声がする。最後のお客が到着したようだ。でも、ベルも鳴らなかったし玄関が開閉した気配もない。
「ああ、朝比奈さん、お待ちしてました」
彼がいそいそと迎えに出る。明らかに態度が違うのは何故だろう。その理由は彼の後について入って来た人物を見て理解
できた。栗色の長い髪、年齢不詳だがこの部屋の誰よりも美しく愛らしいと思われる容貌、胸元の開いた白いブラウスと黒の
ミニスカートはOL風とも女教師風とも見える。そして、何よりも私の何倍あるか分からない素晴らしい胸部の盛り上がり。
なるほど、彼はこういうタイプに弱いのか。思わず自分の胸を見て溜息をついてしまう。顔を上げると長門さんが無表情で
じっと彼を見ていた。長門さんも私同様細身なので同じ気持ちなんだろうか。
「はじめましての方もいらっしゃるわね。朝比奈みくるです」
朝比奈さんは優雅に会釈して、空いていた席に着いた。
「朝比奈さんは未来人だ」
隣にいる彼が耳打ちする。
「関西にいるSOS団員の朝比奈さんは若い頃の彼女だ。こういう場に姿を見せるのは異例なんだ」
朝倉さんのカレーを長門さんが楽しみにしている理由が良く分かった。短時間で用意したのに、カレー専門店にも勝るとも
劣らないおいしさだったからだ。みんな朝倉さんを褒めた後はカレーを堪能している。全員に褒められた朝倉さんの頬に
ちょっぴり誇らしげな赤みがさしていた。
食事中は仕事の話禁止という不文律があるようで、皆世間話や近況を伝え合うのに終始していた。古泉さんと長門さんは、
涼宮さんと同じ京大の学生で、古泉さんは法学部、長門さんは工学部に通っているのだそうだ。
「涼宮はどうしている? 一緒に行くって騒がなかったのか?」
彼が尋ねると、古泉さんがスプーンを置いて答えた。
「鶴屋さんと朝比奈さんにお相手をお願いしてきました。涼宮さんが言うことをきくのは、あなたがいない今となっては
鶴屋さんだけですからね。今頃は鶴屋邸で大騒ぎしていると思いますよ」
鶴屋さんというのは彼や古泉さんの一年上の先輩で、鶴屋ホールディングスという財閥のお嬢様だが、とても気さくで元気な
人だそうだ。
「なるほど、後でお礼のメールを打っておくか」
「ええ、是非そうしてあげて下さい。鶴屋さんもあなたに会いたがっていましたよ。大学の方だけでなく、ご当主の
お手伝いも始められたので忙しくされていますが」
「鶴屋さんのバイタリティをもってしても大変なんだろうな」
「ええ。それにご当主の体調も優れないとかで、婿探しも始めたそうです」
「そりゃ大変だな。古泉、お前なんかいいんじゃないか」
水を向けられた古泉さんは、笑顔を崩さないまま首を振る。
「滅相もない。僕じゃ力不足ですよ。それより鶴屋さんは未だにあなたにご執心みたいですよ」
「いやいや、俺もお前と同じだよ。滅相もないって奴だ」
二人は笑い合う。古泉さんが敬語なのは別に遜っているわけではなく、こういうキャラクターを作っているようだ。
「しかし、佐々木さんは予想以上にお美しいので驚きました。街を歩けば若い男性の十人中八人は振り向くんじゃないで
しょうか。あなたがえらくご執心されていたのも納得できます」
「古泉、お前は記憶にないだろうが、改変前にも俺に同じ台詞を言っていたぞ」
「おや、それはつまり僕の佐々木さんに対する評価が正しいという意味ですかね?」
「知らん」
彼はつっけんどんに応じて苦笑する。
何か非常にお尻の辺りが落ち着かない気がする。古泉さんの褒め言葉は巧言令色の類なんじゃないかと思う。
184:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 23:34:04 09tl1Mlm
食事が終わり、朝倉さんが飲み物を出した。コーヒーの人、紅茶の人、それに緑茶の人もいる。緑茶は朝比奈さんが持参した
茶葉を使って淹れてくれた。彼が言うには朝比奈さんのお茶は絶品だそうだ。私はコーヒー派だが、試しに飲ませて
もらったら確かにおいしかった。未来でもお茶はあるんだろうかと尋ねたら、SOS団の活動をしている時にいろいろ研究
したのだそうだ。未来にお茶があるかどうかは禁則事項とやらで教えてもらえなかった。
朝倉さんを手伝って後片付けをする。朝倉さんと橘さん、それに私以外の四人はダイニングの隣の畳部屋に移動し、
ちゃぶ台を囲んでいる。朝倉さんと橘さんは上司に話を任せ、紅茶を手に大学の話を始めた。私はちょとポツン状態に
なったが、彼が手招きしたので隣に座る。
私が座ったのをきっかけに、彼が徐に口を開いた。
「さて、いろんな意味で遠路はるばる参集してもらい申し訳ない。早速だが、このとおり昨日突然二年前の姿のまま記憶を
失った状態で出現した佐々木について、みんなの調査結果と意見をもらいたいんだ。本人を前にして言い辛いことがある
かもしれないが、遠慮は要らない。ありのままを聞かせて欲しい」
最初に古泉さんが手を挙げた。
「『機関』で再調査しましたが、基本的には二年前の状況と変わっていません。佐々木さんご本人の情報はなく、ご両親に
ついても不明なままです。全国の佐々木さんをしらみ潰しに当たったとしても、佐々木さんのご両親である証拠が存在
しない以上、我々としては何も手が打てません。また、世界改変能力についても現状それを確認できる手段はありません。
閉鎖空間の存在も対応する超能力者が特定できず不明なままです」
「要するに何も分かっていないということか?」
「ええ、残念ながら」
古泉さんが申しわけ無さそうに言い、笑顔が苦笑に変わる。既に彼に言われていたことだが、改めて確認されるとちょっと
落ち込む。せめて彼が両親の片方の名前だけでも覚えていてくれれば良かったのだが、常識的に考えて友人の親のファースト
ネームなどというものは、余程親しいか、あるいは印象深いものでないと覚えていないだろう。
185:この名無しがすごい!
09/05/27 23:36:01 iqW4iiCo
佐々木スレだしハルヒが叩く対象なのはデフォだから別にいいでしょ。
186:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 23:36:06 09tl1Mlm
次は朝比奈さんだ。彼女の説明によると、私が最初に出現したのは彼が私の家があったと主張する関西のある場所だという。
自分自身にその記憶がないので尋ねると、その場で朝比奈さんがすぐに公園に移動させたのだそうだ。未来人の持つタイム
トラベルの道具は空間移動にも使えるらしい。恐らくは特定の時間と空間の位置つまり四次元の座標を使って移動するから、
三次元すなわち同じ時間軸上の別の座標位置に移動することも可能なのだろうと私は推測した。
朝比奈さんは説明を続ける。
「少なくとも我々の認識は、佐々木さんは今でも時空の歪みです。その証拠に我々は佐々木さんの出現を観測できました。
我々が観測した二年前の時間平面に突然出現した時空の歪み、キョン君の主張によると少なくとも今から四年前の春から
この時空に存在していたはずのそれと現在の佐々木さんを比較したのですが、驚いたことに完全に一致しています。
つまり二年前の時空の歪みは佐々木さんであったと結論できます。しかしながら、その二年前のイベントの前後の時間
平面上には、昨日に至るまで佐々木さんの存在は観測できません。これについては謎のままです」
彼が手を挙げて質問する。
「朝比奈さん、今の時間軸はずれていないんですか? 確か二年前の俺に朝比奈さんは規定事項からの逸脱と未来の消滅を
警告しましたよね。今、朝比奈さんがここにこうしているということは、二年前の警告は外れたと解釈して良いんですか?」
朝比奈さんは大きく頷いた。
「はい、あの時のキョン君の状態は極めて危険でした。自分が死ぬか、涼宮さんを殺す可能性が高かったんです。もし、あの
時にキョン君がそうした行動に出ていたら間違いなく既定事項は満たされず未来は消滅していました。幸いにも私の記憶の
とおりキョン君は涼宮さんと距離を置くことで、どちらかの死を回避したんです。それはいいのですが、あの時キョン君が
言った佐々木さんという名前が私は非常に気になったので前後の時間平面を調べていました。すると、ここの時間で昨日の
午後、二年前にキョン君がいた場所に突然時空の歪みが発生し佐々木さんが現れたんです。TPDDあるいはそれに類する
装置の使用を疑いましたが、その形跡はありませんでした」
彼は腕を組んで考え込む。私は自分が何をしたのか覚えていないので答えようがないし、何の助けにもならない。
「朝比奈さん、昨夜朝倉とも話したんですが、佐々木は涼宮の改変に逆らいながら時間軸の方向に向かって改変を行ったん
じゃないですか」
「ええ、その可能性が一番高いです。しかし証拠はありません。うふふ、キョン君、良い推論です。この二年で見違える
ほどに成長しましたね」
彼は照れて頭を掻いた。朝比奈さんは確かに魅力的だが、ここまでデレデレしているとマヌケ面とでも言いたくなる。しかも
それって朝倉さんが言っていたことじゃなかったっけ?
「私の話は以上です。長門さん、後はお願いします」
187:この名無しがすごい!
09/05/27 23:36:35 iqW4iiCo
うお、来てた。すまん
188:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 23:38:20 09tl1Mlm
「……了解した」
長門さんは短く応答して話し始めた。
「……情報統合思念体はこれまでの状況を解析し、今ここに存在する佐々木沙貴は特異点であると暫定的に結論した。
より通俗的な表現をすれば、過去の経緯を持たず現在の時間平面との親和性も持たないにもかかわらず存在している状態。
彼女の存在そのものは因果律からは肯定できない。ただし、それが世界の崩壊あるいはリセットにつながるものであると
いう証拠は今のところ存在しない。よって、情報統合思念体は暫定的に現状維持を選択した」
「あー長門、とりあえず二点確認させてくれ。まず、ここにいる佐々木のこれまでの人生に関する情報は消滅しているという
理解でいいんだな?」
「……そう」
「ならば次の質問だ。ゆえに俺の記憶は残っているが、佐々木の記憶が戻ることはないということだな?」
「……恐らく。ただし、彼女が因果律を越えて存在している以上、消滅したはずの情報が再生される確率はゼロだと断定は
できない」
「分かった」
彼は納得顔で頷き、朝比奈さんと古泉君も頷く。でも、私には理解できない。これが二年間の人生経験の差なのか、単に私の
記憶がないことが理由なのかは分からないけど。私の表情を見て取ったのか彼は私の頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「佐々木よ、ぶっちゃけた話、お前が今ここにいる理由は宇宙的知性にも分からないんだとよ。それと記憶が戻る可能性は
限りなく小さいかもしれないが、ある日突然戻るかもしれないってことだ。つまりはそれも分からんということだ」
やっと理解できた。私がいてはいけない理由はない。過去はともかく、これからの人生だけを考えて生きていけばいいという
ことだ。今までの記憶はないが、これからいっぱい記憶すればいい。彼と一緒に……だったらいいのだけど。
彼に頭を撫でられている私を長門さんがじっと見ているのに気付く。無表情だが、どこか悲しげなように見えるのは何故
なんだろうか。もしかして長門さんも彼のことを好きだったりするのだろうか。朝倉さんが言っていたように、彼は宇宙人の
長門さん、どうみても人間としてのコミュニケーション能力が高いとは思えない彼女にもごく普通に接していたに違いない。
朝倉さんの上司ということは、きっと朝倉さんよりも凄いことができるのだろう。そんな人、まあ人ではないけど宇宙人と
いうからには人の範疇か。とにかく、きっと彼のことを長門さんは好きなんだろう。彼と長門さんとの言葉のやり取りは全然
気兼ねのない感じだし。
「長門、まだ話すことがあるだろう?」
不意に彼が長門さんに言った。どうして分かるんだろう。一見無表情な長門さんだが、彼はその僅かな変化を見て取れるの
かもしれない。
「……以上は情報統合思念体の公式見解。以下はわたしの個人的な見解」
やっぱりそうだった。私は何となく不安になる。どうしてか分からないけど、彼が他の女の人と心が通じ合っているのを
見ると凄く不安だ。朝倉さん然り、長門さん然り、多分朝比奈さんも然りだ。私達よりずっと年上に見える朝比奈さんが
どうして彼と心が通じているんだろうか。あ、きっと今の時代にいるもう一人の朝比奈さん、彼の一学年先輩ということに
なっている朝比奈さんと親しかったのか。
私が妄想を巡らしている間に、長門さんは話を始めていた。
「……当時のログが大量に消失しているために情報伝達に齟齬が生じるかもしれないので注意して欲しい。また、内容に
矛盾があれば指摘して欲しい。佐々木沙貴、あなたには辛い話かもしれない。でも聞いて」
189:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 23:40:05 09tl1Mlm
>>181
佐々木告白
佐々木消滅
佐々木復活
ですね
>>187
適宜レスいただいて構いませんです
190:この名無しがすごい!
09/05/27 23:41:09 kLkmNoV+
佐々木沙貴w
読む気が失せた。
191:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 23:41:36 09tl1Mlm
私を含め、皆が頷くのを待って長門さんは本題に入った。
「……二年前のイベント、天蓋領域の消滅に関する一連のログをわたしは独自に調査した。このことは情報統合思念体に
報告しているが、確証が取れないため事実認定は保留されている。
……二年前の春、ログが消失しているので理由は不明だが、天蓋領域の干渉と涼宮ハルヒの改変によりこの世界は分裂の
危機に陥った。しかし、現在は不明な経緯と手段により再統合が行われた。これに関して、涼宮ハルヒ以外の氏名不祥な
世界改変能力者の関与が推測されるログが残っている。恐らくは佐々木沙貴、あなた。
……その後、天蓋領域は情報統合思念体との共存を何らかの理由で拒否し、両者は対立状態となった。彼が言うところの
パーソナルネーム周防九曜というインターフェースが地球上での干渉を担当していたと思われる節がある。また、彼が
涼宮ハルヒではない氏名不詳の女性と懇意にしていたと思われる形跡がある。それも佐々木沙貴と推測される。
情報統合思念体はこの状況を奇貨として天蓋領域の消滅を計画した。涼宮ハルヒが大きな情報フレアと共に閉鎖空間を
発生させるタイミングで、その情報を天蓋領域と対消滅させるという内容。詳細はログの消失で不明だが、涼宮ハルヒに
ストレスを与えるイベントが発生し、情報フレアが起きたタイミングで情報統合思念体は計画通り天蓋領域の消滅を実行
した。これ自体は問題なく実行され、天蓋領域は完全に消滅した。ただし、同時に世界改変が行われ、大量の情報が
これに巻き込まれて同時に消滅、情報統合思念体の未来に対する同期機能は破壊され、ロギングシステムにも重大な
障害が発生した。
ログがない状態ではフォールバックが不可能なため情報統合思念体は喜緑江美里らに命じて不整合な情報を切り捨てる
ことで世界の崩壊を阻止しなければならなかった。
閉鎖空間に取り込まれていた彼の回収は、涼宮ハルヒの力をうまく使って行われた。『機関』が認識していたのは彼が
涼宮ハルヒが作った通常と異なる侵入困難な閉鎖空間から無事に戻ったことのみ。古泉一樹、それは間違いない?」
古泉さんは目を細めて記憶を浚っているようだ。
「はい……記憶にある限りですが、我々の認識ではそうでした」
「俺もそう言われたぞ」
彼が古泉さんの回答を裏打ちする。長門さんは僅かに頭を動かしてから続けた。
「……ここからはわたしの推測。閉鎖空間にはもう一人の人物が閉じ込められていた。涼宮ハルヒの嫉妬の対象である人物、
それは佐々木沙貴、あなたと思われる」
「いや、長門、それは俺的には事実だ。あの時、俺と佐々木は涼宮の閉鎖空間に閉じ込められていたんだ」
彼の表情が硬くなり、拳を握り締めたのが分かった。思い出したくないことを思い出しているかのようだ。
「佐々木は俺の目の前で消え、俺はこちらの世界に戻された。お前の推測は実際にあったことと一致している」
「……そう」
「俺はそのことを言わなかったか?」
「……あなたは言っていない。あなたがわたしに質問したのは佐々木という名前だけ」
「そうだったか、くそっ」
彼は吐き捨てるように悪態をつく。長門さんの言葉を疑わないのはどうしてだろうと思ったが、恐らく宇宙人の長門さんは
事実を正確に記録しているからだろうと見当をつけた。それよりも恐ろしいことがある。私は消えたんだ。彼の目の前で。
自分が彼の立場だったらどんな気持ちだろう。想像するだけで身震いしてしまいそうだ。彼がどんな思いをしたかが、やっと
判ったような気がする。
192:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 23:43:13 09tl1Mlm
「……推測部分が解決したので、これ以降は事実である可能性が高い。閉鎖空間と共に消滅する直前に、佐々木沙貴は世界
改変を実行した。理由は言うまでもなく自己保全のため。そして、朝倉涼子や朝比奈みくるの推測どおり、自らの
構成情報のみを辛うじて時間平面を越えて移動させた。そして追跡を避けるために情報統合思念体の同期機能を停止させた。
この時に大きな時空震動が発生した。朝比奈みくる、あなたが未来で観測したものが恐らくそれ」
「はい、長門さんのおっしゃるとおりだと思います」
朝比奈さんが頷くと、長い髪と胸が揺れた。そちらへ彼の視線が向いているのを見て私は彼の脇腹をつつく。彼が私の方へ
向き直ったので、頬を膨らませて見せると彼はバツの悪そうな顔になった。全く、どうして男はこういうのに弱いんだろう。
「……時空震動のみしか観測できなかったのは、先に述べたとおり大量の情報が改変に巻き込まれて消失していたためと
思われる。また、佐々木沙貴の記憶が消えているのもそのせいと推測される。
……わたしの個人的な推測は以上。完全に事実と検証されたわけではないが、彼の証言でほぼ間違いない事実と認定可能」
そこで長門さんは沈黙した。朝比奈さんも古泉さんも彼も黙り重苦しい空気になる。何か言わなくてはと思うけど、言葉が
浮かばない。この件については私は空っぽなのだ。
沈黙を破ったのは古泉さんだった。恐らくそういうキャラクターなのだろう。
「すみませんでした。知らなかったとはいえ、僕はあなたにずいぶんとひどいことを言っていたはずです」
古泉さんが頭を下げる。
「私もそうです。無神経なことを言ってしまいました。ごめんなさい、キョン君」
朝比奈さんも申し訳無さそうな顔で頭を下げた。
「いや、それはもういいんだ」
彼はすぐに応えた。
「朝比奈さん、古泉、頭を上げてくれ。あの時の二人の対応は仕方がなかったと理解できた。俺に謝る必要はないんだ。
謝るのは俺の方だ。みんなにひどいことを言った。すまん。それに、あいつにもひどいことを言った」
「ですが……」
「くどいぞ古泉。もういいんだよ。涼宮……いやハルヒのことも、俺はもう恨まなくていいんだ。」
そこで彼は一呼吸置いて、傍らの私を抱き寄せた。私はされるがままに彼の腕の中に納まる。そして、見上げた彼の横顔には
初めて見る笑みが浮かんでいた。
「だって、佐々木はここにいるんだからな」
何だろう、この幸せな気分は。彼の一言は愛を語る言葉でも何でもないのに、どうしてこんなに幸せな気分にさせてくれるの
だろう。記憶がないはずの私なのに、まるで何年も恋人同士だったかのように、彼を信じ、彼に愛されたいと思うのだろう。
「あの……キョン?」
私は初めて、彼の渾名を呼び捨てにしていた。
「やっとそう呼んでくれたな」
「うん……私は年下だけど、これからもそう呼んでいい?」
「良いに決まってるだろ。むしろそれ以外の呼び方をするな」
「うん……」
「それとな、佐々木、できれば男言葉で話してくれ」
「え……それはちょっと難しいかも」
「そっか、いきなりは無理だな」
困ったようなキョンの顔を見ると、思わず笑みがこぼれてしまう。
「くっくっく、いきなりは無理よ」
キョンは一瞬驚いた顔になり、また優しい笑顔になった。
「やっと笑ってくれたな」
そうだっけ。そう言えば笑った記憶がない。私はこんな風に笑うなんて知らなかったな。
193:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 23:45:18 09tl1Mlm
古泉さんの咳払いで私は我に返る。キョンもしまったという顔をしていた。
「すみません、仲が良いのは十分に理解できましたから、愛の語らいは僕らが退散した後でしていただけますか」
「ああ、すまんすまん」
キョンは照れ隠しに頭を掻く。火照っているのが分かるから、私の顔は真っ赤になっているに違いない。
朝倉さんと橘さんも呼ばれて、私達の今後についての話になった。朝比奈さんは元の時間に帰らないといけないので、
皆に見送られて一足先に姿を消す。再会の約束をしないのが未来人のスタイルらしい。
古泉さんがちゃぶ台を囲む一同を見回してから、キョンの方を向く。
「二年前にも同じ台詞を言ったかもしれませんが、我々『機関』はあなたに大きな借りがあります。言うまでもなく、涼宮
さんによる世界の崩壊の危機を防ぎ、改変からの復帰を実現していただいたことについてです。我々ができるのは社会
生活上の便宜、あるいは金銭的な支援だけですが、今度こそやらせていただきたいのです」
「まあ大したことをしたわけじゃないが、今度ばかりは貰える物は有難くいただくことにするさ」
「そう言っていただけると僕の気持ち的にも救われます。当面、佐々木さんの衣食住についてサポートさせてください。
具体的には、佐々木さんの個人情報の作成と登録、お二人で暮らせる住居の確保、生活費の支給、佐々木さんの高校への
編入と学費の援助の四点です」
キョンは真面目な顔で頷いた。
「そうしてもらえると有難いな。現状俺一人で佐々木を養うわけにもいかんからな。俺が就職するまで頼めると助かる」
「水臭いことを言わないでください。少なくとも佐々木さんが大学を卒業して就職されるまではやらせていただきますよ」
「分かった。よろしく頼む」
今度はキョンが頭を下げた。それはいいが、ちょっと待って欲しい。私はキョンと暮らすことになるの? いや、別に嫌だと
いうわけじゃないけれども……誰もそんなことは気にしていなかった。これは既定事項なんだろうか。
「ねえ、長門さん、個人情報の登録なら私達でもできるんじゃないの?」
「……朝倉涼子、わたし達がインターフェースを潜り込ませるのとは異なる。ここは『機関』に任せるべき」
「あ、そうか。正しい戸籍を作るのはわたし達には無理よね」
朝倉さんは納得顔で引き下がると思いきや、今度は別の提案をしてきた。
「ねえ、二人とも良かったらこのマンションに住まない?
古泉君、『機関』でこのマンションの部屋を借り上げられないかしら?」
「空き部屋があれば大丈夫だと思いますが、橘さん分かりますか?」
「少々お待ちを」
橘さんはさっきから持参したノートパソコンを開いていたが、素早くキー入力をする。
「はい、大丈夫です。朝倉さんの監視用に借り上げている部屋が使えますね」
「やだ、まさかわたしの着替えを覗いたりしてないでしょうね?」
朝倉さんがおどけて言う。古泉さんは笑顔のまま応じた。
「ご安心下さい。監視要員は女性ですから」
やっぱり見ているんだろうか。もしかして、私も見られていたということ? それはともかく何気に凄いやり取りのような
気がするのは私だけだろうか。いや、キョンも苦笑している。
それから事務的な話がいくつかあり、夜も遅くなったので長門さん、古泉さん、橘さんは帰ることになった。橘さんは同じ
私鉄沿線なのですぐ帰れるが、長門さんと古泉さんはこれから迎えの車で京都まで帰るそうだ。
「涼宮さんの我慢の限度は一晩でしょうからね。鶴屋さんもお忙しいのであまり長時間の滞在は申し訳ないですし」
「ああ、みんなによろしく言っておいてくれ。近いうちに一度そちらへ帰るつもりだ」
「お待ちしています。涼宮さんにも是非会ってあげてください」
「俺はハルヒに謝りたい。例え話とはいえ人殺し呼ばわりしてしまったんだ。いや、どの面下げて顔を出せるんだ」
「大丈夫ですよ。涼宮さんも変わりました。是非会ってあげてください」
「佐々木を連れて行っても大丈夫か?」
「はい、むしろその方がよろしいです」
キョンは古泉さんの答えに異論を挟まなかった。どうしてその方がいいのか私には分からないが、二人には理由が分かって
いるのだろう。
194:この名無しがすごい!
09/05/27 23:45:20 br8JbKri
わくわくてかてか
195:この名無しがすごい!
09/05/27 23:46:18 JLHGUm17
待ってました
196:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 23:46:44 09tl1Mlm
その夜は朝倉さんと寝た。
朝倉さんのベッドは贅沢にもセミダブルなので、女子二人が寝ても余裕だ。何か目的があってこのサイズにしたのかも
しれないが、武士の情けで訊かないでおこう。
「今日、みんなには聞こえないように長門さんにお願いしたのよ」
毛布に包まって目だけ出している朝倉さんが唐突に言う。
「できればわたしの有機情報連結を解除して欲しいって」
「何ですかそれ」
「有機情報連結、つまり人間としての姿を消して欲しいってお願いしたの」
「どうしてそんなことを?」
「これ以上キョン君とあなたが仲良くしているのを見続けるのが辛いから。佐々木さん、さっき自然にキョン君の腕の中に
納まってたでしょ? あれを見て、ああこれは勝負にならないわって思ったのよ」
「……」
私は顔が火照るのを感じた。二年の時を越え、私の記憶も無いのに、自然に演じてしまった公開ラブラブショー。
お恥ずかしい限りだ。どぎまぎしている私を見て、朝倉さんはうふふと笑った。
「だけど長門さんに却下されちゃったのよ。わたしの処分は最低四年間キョン君の傍にいることなの。つまり、刑期はまだ
三年半以上も残っているわけ。一昨日までの状態だったらわたしは全然処罰されているという感覚は無かったんだけど、
あなたが現れてから実感できるようになったわ」
「ごめんなさいって言うのも変ですよね」
「うふふ、そうね。それでね、長門さんの回答は『彼と離れ離れになっているわたしの方が辛いことを理解すべき。
どうしてもというなら涼宮ハルヒの担当にする』っていうの。正直涼宮さんは苦手だから、今のままにしてもらったわ。
長門さんはむしろ交替して欲しかったみたいだけどね」
「長門さんもキョンのことを好きなんですか?」
「ええ、好きなんてレベルじゃないわね。世界改変してしまうくらいにキョン君のこと愛してるの。でも、涼宮さんの手前、
それをキョン君にあからさまに伝えることも、行動で示すこともできなかったのよ。だからその辛さを長門さんは良く
知っているの。多分、朝比奈さんも同じよ」
朝比奈さんはともかく、長門さんや朝倉さんのような人間を遥かに超えたレベルの宇宙人が、何で人間に恋するんだろう。
女性として作られたために生じた感情のなせる業なんだろうか。私はどうしてキョンに恋したんだろう。記憶が戻れば
分かるのだろうけど、涼宮さんが私を消したくなるくらい、キョンと私の心が通じていたのなら嬉しい。
「私には無謀だけだと勇気があったんでしょうか」
「多分ね。それに宇宙人とか未来人のように背負っている任務が無かったからだと思うわ。
ま、それはともかくとして、わたしは少なくともキョン君が大学を卒業するまではあなた達の近くにいることになった
わけね。くやしいからいっぱいお世話させてもらうわよ」
「はい、こちらこそよろしく。キョンに悪い虫がつかないようにお願いします。ふわ……」
朝倉さんは毛布から顔を出す。口元には楽しそうな笑みが浮かんでいた。
「それは大丈夫。二重の意味でわたしがさせないわ。この役得は長門さんにも……」
朝倉さんがその後何を言ったかは定かではない。私は、その後すぐに眠ってしまったから。
197:この名無しがすごい!
09/05/27 23:49:19 JLHGUm17
佐々木ほし
198:この名無しがすごい!
09/05/27 23:52:52 vb+yTMdD
もしかして、連投規制?
199:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/27 23:53:56 09tl1Mlm
第五章終了です
本日はここまで。第六章はまた明日の晩にでも投下予定。
ハルヒさんの回収がグダグダなので時間かかるかも
>>190
どっかのSSのパクリに適当に漢字を当てはめたとかだとかそういうのは黙っててくださいw
200:この名無しがすごい!
09/05/27 23:57:11 JLHGUm17
>>200
乙です
201:この名無しがすごい!
09/05/27 23:58:05 iqW4iiCo
ハルヒはもういいよ。
このままさっさと突っ走れば。
202:この名無しがすごい!
09/05/27 23:58:13 d6kMonf6
むしろ朝倉が素晴らしい
203:この名無しがすごい!
09/05/27 23:58:58 vb+yTMdD
>>199
めがっさ乙
明日が楽しみ
204:この名無しがすごい!
09/05/28 00:09:13 Z/zUUiUw
ちょー面白い
ここ最近で一番かも
続きも期待
205:この名無しがすごい!
09/05/28 00:54:05 0WuXRTfO
>>199
面白いです
続きが楽しみ
206:この名無しがすごい!
09/05/28 01:39:49 gbr5ARtg
すげえ……。序盤はさすがに読んでてきつかったが
第三章以降止まらないのにここでお預けですか。
明日は残業しないで帰ってくるぞ。
207:この名無しがすごい!
09/05/28 02:02:28 FkvDFtpW
保管庫、一時的に繋がらない状況かしらん?
208:この名無しがすごい!
09/05/28 02:13:23 +oPC/gdL
繋がったよ
209:この名無しがすごい!
09/05/28 02:37:31 6e7G5eOL
久々の大作良いね
最近はくだらない荒らしとかでSSの投下自体なかったからこういうのは素直に嬉しい
他にもまだ作者が残っているのならぜひぜひ遠慮せずに投下していただきたい
210:この名無しがすごい!
09/05/28 07:19:33 lFeJkRnO
この大作は今夜完結ってスゲーな
何となく、佐々木がちっちゃくなる話の続きが読みたくなってきた
211:この名無しがすごい!
09/05/28 07:35:11 8IOsm4nO
グダグダと長いのだけが取得です。
オレキャラハーレムで気色悪いけど我慢してね。
212:この名無しがすごい!
09/05/28 10:05:40 LAGqAsdC
駄目だこいつら…
ハルヒ叩きSSをマンセーしてやがる
ここまで逝くと最早救い様が無いなw
精々妄想でオナって原作のハルキョン展開にファビョってくれやwww
213:この名無しがすごい!
09/05/28 10:20:52 FFPUamlM
>>181
佐々木さん大好きです、朝倉もいいです
SOS団の奴等大嫌いです、特に団長
というメインキャラ貶しのよくある長編オナニー
214:この名無しがすごい!
09/05/28 10:54:45 5vOWJcmB
既存キャラの一方を落として一方を上げる手法はなあ…
ワザとなら嵐、これしか出来ないのなら力不足と思ってしまう。
ただここは文学賞とかじゃなくて所詮2chだし、目くじら立てるほどでもないかな、と。
215:この名無しがすごい!
09/05/28 11:51:54 LO7OdLbQ
交通事故で佐々木を撥ねたハルヒ。事態を収拾するためにやってきたけど、手違いでトドメをさしてしまった救急隊員(SOS団+α)。
↑要約するとこんな感じなんだが、
最初の事故を起こしたハルヒを殺人犯にしてずっと憎み続けてておきながら、トドメをさした思念体のいつの間にか復活している朝倉と仲のいいキョン。
ハルヒに対しては感情的に叩きまくるくせに、他の団員にはなぜかやたらと理性的で今も良い友人関係。
序盤なんてこれ幸いに叩く理由が出来たと嬉しそうに感じたよ。
とにかく違和感というか嫌悪感がばりばりするが、そもそもこのSSはまだ途中。
終わりまでのんびり待とうと思う。
216:この名無しがすごい!
09/05/28 11:59:31 0WuXRTfO
>>215
佐々木がハルヒを嫌いという設定じゃないの?朝倉とは何故か馬が合う設定で
原作の分裂でも佐々木はハルヒの事を嫌ってるみたいだし、ハルヒの方も佐々木を嫌いかもしれない
217:この名無しがすごい!
09/05/28 12:08:40 kzBg64AY
>>212
実は内容についていいと言ってる住人は今の所誰もいない。
(SSの投下自体を歓迎する奴はいる)
いるとしたらそれはここの住人じゃなくてハルヒアンチだよ。
だけどまあとりあえず最後まで読まないと判断できないね。
自分は佐々木さん好きだけどSOS団も好きだから受け付けない。
作者はVIPからきたんじゃないかと勘繰ってしまう。
218:この名無しがすごい!
09/05/28 12:24:06 8eXx2sxT
>>216
原作読んでて特に嫌ってるとは思わなかったが。
単にこの作者がハルヒ嫌いでSSにかこつけてハルヒ叩いてるだけでしょ。
そういう陰湿なやり方に嫌悪感抱くのは人として自然な事。
219:この名無しがすごい!
09/05/28 12:42:33 o9xELbuI
>>218
>佐々木です。あなたが涼宮さんですね。お名前はかねがね
>そりゃ同じ市街地に住んでいるんだし、目立つ人たちの噂はちょくちょく耳にする。
>僕が最も嫌っているのは自己顕示欲の強い人間と、そんな人を見てつい嫌ってしまう自分の心だ
220:この名無しがすごい!
09/05/28 12:44:31 o9xELbuI
佐々木は鶴屋さんの境地には至れぬ小人。
221:この名無しがすごい!
09/05/28 13:03:08 lFeJkRnO
>>220
確かに、鶴屋さんの方が君子なのかもしれない
222:この名無しがすごい!
09/05/28 13:12:23 kzBg64AY
そんな人間らしい葛藤が佐々木さんの魅力なんじゃないか
223:この名無しがすごい!
09/05/28 13:21:55 RoiHzeU6
>>215
一生懸命働いた病院が、ちょっとしたミスで患者の容態を悪くしても
患者全員が病院訴えようとは思わないぞ
224:この名無しがすごい!
09/05/28 13:30:31 2KGE+2YM
プロローグ読んだ時になんかスレが荒れそうなSSだなあと思ったら案の定・・・
今までもこんな流れになった事は何度もあったから自然とvipとこっちで住み分けするようになってたのになあ
まったり平和なのが一番なんだけどなんか過疎ってると感じる人もいるみたいだし難しいね
225:この名無しがすごい!
09/05/28 14:08:31 6e7G5eOL
文句たれてるだけの奴よりよっぽど生産性があるんだからせめて完結するまでは黙ってろよ
中身批判するなら完結してからにしろ
文句があるなら別の話題振ってこのスレ盛り上げてみろよ
自分じゃ何も書けないくせに何でこんなえらそうなのか理解に苦しむんだが
SS投下してくれるだけでありがたいってのに
226:この名無しがすごい!
09/05/28 14:50:45 uhIpo0no
>>215
チカラを車に例えるのは面白いな。
車に乗っていることを知らずに歩道を走るハルヒと、
車に乗っているのを知った上で歩道を走る佐々木。
橘たちが後者の方が安全だと主張するのはこういう理屈なのかも知れん。
ただこんな分かりやすく単純な話ではないから、他の勢力には全く通じないわけだが。
227:この名無しがすごい!
09/05/28 15:18:50 kzBg64AY
>>225
じゃあ別の話題を。
アニメ一期の時に「こんなに近くで…」のMADが流行ったが、あれを佐々木さんでやったらどう思う?
228:この名無しがすごい!
09/05/28 18:50:49 1To+L1Oz
ハルヒと佐々木が仲良く会話する話をageた俺は、こんなハルヒ憎しのSSは認められないな。
保管庫にも掲載するべきではないだろう。
229:この名無しがすごい!
09/05/28 19:07:56 Gq8tzySY
>>228
それはおまいさんの考えだろうに・・・。
佐々木の扱いってすごい難しいと思うんよ。
230:この名無しがすごい!
09/05/28 20:14:41 1To+L1Oz
佐々木さんの新作出た!
URLリンク(www.toranoana.jp)
231:この名無しがすごい!
09/05/28 20:27:06 Gq8tzySY
>>230
こ れ は 可 愛 い
232:この名無しがすごい!
09/05/28 20:52:22 UOn+n94M
さすが佐々木レイプ漫画を真っ先に書いた人やで……
233:この名無しがすごい!
09/05/28 21:03:40 lFeJkRnO
レイープ二次漫画は、かわいい女の子なら、どんな作品のどんな女の子にもあるよね
234:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/28 21:44:09 9oF1hm2v
皆様レスありがとうございます。
ハルヒ嫌いにみえますよね。最初の方は特に。
昨夜は途中で止まってすみませんでした。
最終章投下します。
235:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/28 21:44:58 9oF1hm2v
ep.06 二人だけの記憶
(side sasaki)
『機関』の対応は素早かった。翌々日つまり木曜日に橘さんが外部協力者だと紹介した学生数人と一緒に来て、
私の私物と届いたロッカー箪笥を同じマンションの別室に運んでくれた。何でも『機関』が監視用に確保していた
部屋を引き払うのは位置や設備の関係で問題があったのだという。朝倉さんの部屋との相対位置や何の設備なのかは
知らない方が良さそうだ。
代わりに別の階の角部屋が『偶然いつでも入居できる状態で空いていた』ので、私達はその部屋に住むことになった。
「ここは予備の部屋です。これ以上は内緒ですよ」
橘さんはそう言って片目をつむる。なるほど、これ以上の事情も訊かない方が良いということか。
家具屋が寝具やら箪笥やらカーペットやらを、家電量販店の配達が家電製品一式を、さらに引越し業者がキョンの荷物を
持って来たので、あっという間に生活できるようになった。
キョンと私がしたのは、橘さんが出してくれた車で足りない食器類や小物などをホームセンターに買いに行ったくらいだ。
まるで新婚気分だが、それにしてもダブルベッドはやり過ぎだ。おかげでその晩は二人とも緊張して良く眠れなかった。
食事は当面朝倉さんの部屋で一緒にとることになった。いい機会なので朝倉さんに料理も教わっておくことにする。
次の日に私は高校の編入試験に連れて行かれた。キョンが言うには、消える前の私は関西の有名進学校に通っていた
そうだ。確かに編入試験は楽勝で、私は翌週から大学からそんなに遠くない都立高校に通うことになった。
都立高校は制服がなく校則も厳しくないので、私は思い切ってキョンが買ってくれた指輪をつけていった。
それが話のネタになったのか、すぐに数人のクラスメイトと仲良くなり、まずまずの高校生活をスタートさせることができた。
頑張ってキョンの後輩にならないといけない。
キョンは相変わらず朝倉さんと一緒に大学に通っている。一部では依然として夫婦扱いされているのがちょっと不満だが、
せめてこのくらいは朝倉さんがいい思いをしてもいいだろう。
そして、私の記憶が戻る日が遂にやって来た。その方法は簡潔にしてベタなものだった。
ありがちなパターンなら、さしずめここは眠り姫よろしくキスになるのだろうが、残念ながら違う。
乙女らしい躊躇いと動物的な本能とのせめぎあいの中で逡巡した末に決意した私が、キョンに初めてをあげた後、
まどろんで目覚めた時に記憶が戻っていることに気がついたのだ。
なるほど、キョンとつながれば良かったのか。分かってしまえば呆気ないものだ。安直設定だとか何とか言われそうだが、
誰にも分からなかったのだから文句を言われる筋合いはないだろう。
最初から分かっていたら私だってこんなに悩まなかったろうし。
記憶が次々と湧き上がってくる。物心ついた頃からキョンの前で消えるまでの記憶。中学でキョンと出会い、別々の高校に
進学して離れ離れになり、再会して世界の分裂の危機を乗り越え、愛を告白して二人の気持ちが通じ合い、閉鎖空間に
閉じ込められ、キョンの言葉を無視して勝手に結論を出し、私は消えた。
236:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/28 21:45:45 9oF1hm2v
記憶が戻ったことは嬉しかったが、思い返してみると楽しいことより辛いことが多かった。でも、後悔はしていない。
それにこの記憶はキョンと私だけのものだ。私の素性を知っている少数の人たちですら、この記憶は持っていないのだから。
私は自分が男子に対してだけ妙な男言葉で喋っていたことも思い出した。それは弱くて脆い自分を隠すために故意に被った
ペルソナだった。キョンと結ばれた今となってはそんなペルソナを被る必要は無いのだが、私の記憶が戻ったことを彼に
示すのに一番相応しいのがその口調だろう。
私は毎朝しているように目覚まし代わりのキスをした。
「んあ……ああ、朝か……」
寝ぼけたキョンの反応に思わず笑みがこぼれてしまう。
「くっくっく、お目覚めかな、キョン」
「ああ……佐々木、何でお前が俺の部屋にいるんだ。ああ何だ夢か……」
中学の頃の夢でも見ていたんだろうか。悔しいのでほっぺたを引っ張ってやった。
「むぉが!?」
「夢じゃないよ。ここは僕達の部屋じゃないか」
「ああそうだったな……え?」
キョンの目が大きく見開かれる。私は悪戯っぽい笑みを返してあげた。
「お前、記憶が戻ったのか?」
「うん、戻った。全部思い出したよ」
キョンは表現不能な叫び声と共に飛び起き、気がつくと私は彼にしっかりと抱きしめられていた。キョンの時間で二年前、
私の時間で三週間前に抜け出したこの腕の中に、私は戻って来ていた。
「すまなかった。君に二年間も辛い時間を過ごさせてしまったね」
「いいんだよ、佐々木。もうそんなことはどうでもいいんだ。バカ野郎、心配させやがって……」
あとはしばらく二人とも言葉にならなかった。私はもう一度キョンに抱いてもらった。構成情報と一般知識だけの空っぽの
私ではなく、彼との記憶を共有している私として、本当の意味での私の初めてを彼に奪ってもらったのだ……いや、
とりつくろうのはやめよう。動物的本能に屈しただけだってことを認める。
二度目の行為の後、肌を寄せ合いながら私はある提案をした。
「ねえ、キョン、今の男言葉は僕が無理矢理作ったペルソナだってことは理解しているかい?」
「ああ、前は分からなかったが俺もそれなりに人生経験を積んだからな。今は理解できるぞ」
「今の僕にはもう必要の無いものだってことも?」
「いや。そうなのか?」
「うん、君との思いを遂げた今となっては、このペルソナは必要ないんだ。昔言っていただろう。恋愛は精神病だって。
このペルソナはその言葉どおりに自分を恋愛対象外として欲しいから作り上げたものなんだよ。でも、僕は今君に恋して
しまっている。君を心から愛してしまっているんだ。だから、最早こんな小難しい男言葉を操る必要は無いのさ」
「そうか? 俺は前の佐々木らしくて好きだけどな」
「君って奴は相変わらずだな。僕の言ったことをちゃんと聞いていてくれたのかい?」
「聞いてたさ。お前がもう男言葉を使わないというのであればそれで構わん。どっちの言葉を使おうがお前はお前だからな。
それで俺の気持ちが揺らぐことは無いぞ。ただ、男言葉のお前の方が饒舌だからな、そっちも捨てがたいんだよ」
私は男言葉をやめると宣言するつもりだったのだが、キョンの言葉ですっかりその決意が揺らいでしまった。
「まあ、それは俺の趣味だからな。短い期間とはいえお前のキャラは周囲に認定され始めているから、急にキャラが変わる
のは気味悪がられるだろう。こうして二人きりで話す時だけに限定して使ってくれればいいってのが俺の案だ」
「くっくっく、分かった。そうさせてもらうよ」
私は辛うじて上から目線の回答をしたが内心は圧倒されていた。
この二年間の人生経験でキョンはいつの間にか私を追い抜き、大人になっていた。
朝比奈さんが言っていたように成長したのだ。私は取り残されてしまったのだと思い知らされた。
私は思い詰めた顔をしていたのかもしれない。キョンはいつものように私の頭をポフポフと軽く叩いた。
「仕方ないだろ。物理的にお前は二歳俺より若いんだから。ま、お前ならすぐに追いつくさ」
「むぅー」
悔しいのでキョンにしがみつき、盛大に甘えてあげた。まだまだ私は子供だ。当分はキョンにかなわないだろう。でも、これは
これでいいのかもしれない。無理に前の私に戻らなくてもいいのだから。
237:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/28 21:47:15 9oF1hm2v
記憶が戻ってみると、いくつか大きな違いがあることに気付いた。
SOS団やその周囲の人達は、私を含む佐々木団のメンバーの記憶が無いだけで基本的には変わっていない。
無口で無表情な長門さんも、多弁でにこやかでどこか慇懃無礼な古泉さんも私の記憶と大きな違いはなかった。
多分、朝比奈さんもそうなのだろう。
大きく変わっているのは、かつての佐々木団のメンバーの状況だ。
恐らくもう会えないのは九曜さんだ。長門さんが言ったように天蓋領域は消滅してしまったので、そのインターフェースで
あった九曜さんも消滅したのだろう。
藤原君もあれ以来一度も姿を見せていないそうだ。私が消滅したときに未来ごと消えてしまったのか、単に既定事項に
干渉する必要が無くなって時間遡行しなくなったのかは分からない。
一番信じ難いのは記憶にある橘さんと今の橘さんが同一人物であることだ。『組織』がなくなっているのは当然だろうが、
『機関』の人間として現れたのはキョンも驚いたそうだ。個人的には一生懸命だがややドジっ娘気味で空回りしがちだった
昔の橘さんよりも、今の冷静で堅実な橘さんの方が見ていて安心できる。
ただ、今の橘さんもキョンのことが好きみたいだ。三人で話していて、ふと気がつくと彼女の目がキョンを追っている
ことが何度かあったから。橘さんの基本スペックは以前よりも高くなっているので、『機関』の人という点を割り引いても
ちょっと不安だ。
その橘さんに両親の名前を知らせて調べてもらった。結果は子供のいない夫婦として関西の某所で暮らしているとのこと。
会いに行きたかったが向こうは私の存在を知らない。いつか機会があったら眺めるくらいにしよう。
いよいよキョンと一緒に彼の実家に行く日が来た。高校生の私を何と言って紹介するのだろう。
けど、その前に私達は京都で新幹線を降りた。涼宮さんに会いに行くために。
大学の近くの喫茶店で再会した涼宮さんはトレードマークのカチューシャこそなくなっていたが、私の記憶にある姿より
一段と綺麗になっていた。相変わらず元気で声が大きいが無邪気とも天真爛漫ともいえる言動は消え、良く言えば大人な
雰囲気に、悪く言えば少し陰があるように見えた。
キョンとぎごちなく仲直りの握手をして再会を喜んでいたが、私を紹介されると少し淋しそうな顔をした。
どうやら私の名前も姿も彼女の記憶には一切無いらしい。あったらあったで困るのだけど。
238:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/28 21:48:23 9oF1hm2v
「ねえ、あたしキョンと二人だけで話がしたいんだけど、いいかな?」
涼宮さんの言葉にキョンも含めて誰も異議は唱えなかった。過去を知っている私はちょっと不安だったが、不必要な
揉め事を起こすこともないだろうと思い、同意した。
二人を残し、古泉君と長門さんと私は店を出た。その途端、古泉君の携帯が鳴る。
「はい……何ですって? 閉鎖空間!?……侵入できないって。まさか……」
私は心臓が凍り付いたような寒気を覚える。この世界の時間で二年前の、私の時間で二ヶ月足らず前に発生したものと同じ。
あの時消えたのは私。今、中にいるのはキョンと涼宮さん。まさかキョンが消える? それとも涼宮さんが新しい世界を
作ろうとしている? どちらにしても私の存在そのものの危機ということだ。
でも、今の私には自由になる力は何もない。できることは最愛の人が戻ってくるのを祈るだけ。
(side kyon)
「やっと誰にも邪魔されず二人だけになれたわね」
ハルヒが穏やかな口調で言う。こいつもずいぶんと性格が丸くなったんだななどと悠長なことを考えていた俺だが、
ふと俺に笑みを向けているハルヒの背景がおかしいのに気付いた。何年経っても忘れるはずがない灰色。
これは閉鎖空間だ。恐らく閉じ込められているのはハルヒと俺だけだろう。
何となく分かる。二年前の閉鎖空間と同じ匂いがするからな。神人は出てこないだろう。
どうすりゃいい。二年前のと同じだと古泉達が侵入できても、神人を倒して崩壊させることはできない。
あの時は佐々木が消えた。今回消えるのはどっちなんだ。俺か、ハルヒか。俺が消えたら佐々木はどうなるんだ。
『機関』が今のようにあいつの世話をしているのは俺がいるからだ。俺がいなくなっても当面世話はしてもらえるかも
しれない。だが、あいつは独りぼっちになってしまう。この先、ずっと。
悩んでも仕方がない。できることからやるしかない。今回ハルヒに会いに来た目的をまずは果たそう。
「ハルヒ、すまなかった」
俺は床に座って頭を下げた。謝ってすむことならいくらでも謝ってやるさ。
どんなに卑屈になっても、どんなに惨めになってもいい。
俺は何としてもここから帰還し、守らなければならない奴がいるんだ。
「何のことよ?」
ハルヒの呆けたような声が降ってくる。
「お前に酷いことを言って傷付け、お前を振ったことだ。すまなかった。あれは俺の誤解だったんだ」
俺はそれだけ言って神の審判を待った。恐らくは怒りの言葉を。虫が良いかもしれないが、許しの言葉も僅かに期待して。
だが、代わりに降ってきたのはハルヒのくすくす笑いだった。
「やっとハルヒって呼んでくれたわね。バカキョン」
「は?」
顔を上げると、ハルヒは先程の微笑を浮かべたまま俺を見ている。
「あんたさ、何であたしさっき『誰にも邪魔されず二人だけ』って言ったと思う?」
げ……いや、まさか……そんなことが……
「お前ここが何だか分かってるのか?」
「もちろんよ。だってあたしが自分の意思で作ったのよ。この閉鎖空間」
239:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/28 21:52:12 9oF1hm2v
皆さんは自分の呼吸はともかく、血流や神経系統が停止するというのを実感したことがあるだろうか。
俺はある。まさにハルヒの言葉を聞いた瞬間の俺がそうだった。
「何そのマヌケ面。まあ仕方ないわね。あんたさ、あんたに振られてからあたしが閉鎖空間作らなくなった理由分かる?
そりゃ最初のうちは落ち込んでたわよ。でもね」
「……分かっちまったんだな?」
ハルヒは真面目な顔で頷いた。
「うん、分かったのよ。あたし気付いたの。あんたのお陰でね。あんたに言われた鈍感野郎の話も全部事実だったって」
「そうか……」
「あたし、あんたに振られたショックで死のうと思ったのよ。あたしだって、こんなだけど、一応恋する乙女
だったんだからね。初めて会った中学の頃からずっとあんたのことを想ってたのよ。ま、もうそれはいいわ。
それで、あたしなんか死んじゃえばいいって思った瞬間に、何かがどっと頭の中に流れ込んできたのよ。以前にも
似たようなことがあったけど、それは何かがどっと流れ出ていく感じだった。でも今回は同じような事象だけど方向が
逆だった。前回がイクスプロージョンだとすれば、今回はインプロージョンって感じかな。あたしが何者なのか、
あたしは何をやってきたのか、そしてあんた達がやってきたことも全て理解したわよ。まさに驚愕の一言だったわね」
ハルヒが驚愕したのは当然だろうが、俺もそれに勝るとも劣らない驚愕の嵐の中にあった。
「だから、佐々木さんのことも分かったの。あんたが話してくれた通りのことが起こったんだってね。あたしのせいで
佐々木さんを消しちゃったって」
「……」
情報フレアは出なかったのか。いや、出たら宇宙人や未来人が観測できるはずだ。ハルヒはインプロージョンつまり爆縮に
例えたな。外に漏れていくのではなく、外から自分へ吸い込んだといえばいいんだろうか。
そしてハルヒは成長したんだ。何もかも知ってな。
『機関』がやってきたことはハルヒをいわば無知で無垢なままにしておくことだった。
俺があんなことをしたせいでハルヒが成長したとは怪我の功名という奴だ。まさに幸運以外の何物でもない。
一歩間違えば世界が崩壊しかねなかったわけで、自分でもあの時はガキだったと痛感する。
「あんたが謝る必要は無いのよ、キョン。本当に謝らなきゃいけないのはあたしなんだからね」
「いや、俺のことはどうでもいい。お前に酷いことを言ったのは事実だし、お前の気持ちに応えてやれなかったのも……」
「うん……でも、もういいのよ。あんたは十分苦しんだでしょ。あたしは自分が自覚していることをあんたには
言えなかった。あんたに罪の告白ができないまま、一生抱えていこうと思ってた。
それで釣り合うかどうか分からないけどさ、あたしとあんたはこれでおあいこよ」
「ハルヒ……」
ハルヒはにこりと柔らかい笑みを浮かべた。以前の笑顔が天真爛漫な真夏のひまわりだとすれば、今のは気品のある春の
満開の木蓮のように見えた。だが、その笑みはすぐに消え、ハルヒはまた真面目な顔で俺を見据えた。
「でも、佐々木さんのことは、あたしが一生背負っていかないといけないことよ。古泉君に佐々木さんが現れたことを
聞いて少しは肩の荷が下りたけど、彼女はこの世界で文字通り天涯孤独になってしまったわけで、どんなに謝っても
すまされることじゃないわ。だから、キョン、勝手なお願いだと思うけど、あんたに佐々木さんをお願いするわよ。
もうあんたは団員とは思ってないかもしれないけど、あの時に遡って最後の団長命令だと思ってちょうだい」
ハルヒの口調はいつもどおりだったが、俺には何となく無理をしているように思えた。
「本当にいいのか、ハルヒ。お前はそれでいいのか?」
「は? 何バカなこと言ってるのよ、バカキョン。あんた以外に誰が佐々木さんの面倒を一生見れると思ってんのよ」
「いや、そうじゃなくてだな……」
「あたしは大丈夫。力の制御も含めてばっちりよ。だってあたしは涼宮ハルヒよ、SOS団の団長なのよ。そこらの
女子と一緒にされるなんてまっぴら御免よ。その気になればいくらでもいい男なんか見つけられるわ。あんた以上の
いい男をね」
ハルヒはわざとアヒル口をしてからくすくすと笑った。俺もつられてぎごちない笑顔を作る。
「ぷぷぷ、何て変な笑顔するのよ、もうっ」
240:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/28 21:55:22 9oF1hm2v
ハルヒは静かに立ち上がり、俺にも立つように促した。
「ねえ、キョン、あんたにあと二つお願いがあるのよ。これは命令じゃなくてお願い」
「何だ」
いいだろう。何でも聞いてやろうじゃねえか。一緒に消えてとか死んでとかじゃなければだがな。
「じゃ、まずひとつめ。あたしが自分の力を完全に認識しているのは誰も知らないわ。そう願ったからね。
だけど、あんたにだけは知っててほしいのよ。キョン、あんたはこれからもずっとあたしの『鍵』でいて」
ハルヒは俺が『鍵』であるということも理解しているのか。
「自分のことは分かってるし、暴走や間違いをしないようにフェイルセーフの仕組みを自分の中に作ることはできるの。
でも、万が一、あたしが何かの理由でどうしようもなくなった時にあんたに抑えになってほしいのよ。
別に、あたしがそう願えばいいだけなんだけどね、あんたの同意が欲しいの」
俺に躊躇う理由はなかった。
「いいぞ。今の俺がお前にしてやれるのはそれくらいだしな」
「そんなことはないわよ。あたし達は仲間でしょ。これからも」
ハルヒは手を差し出し、俺はその手を握り返す。何年ぶりだろうな、このハルヒの手の感触。
こんな瞬間が来るとは思ってもいなかった。しかも閉鎖空間の中でなんだぜ。信じられん。
「ああ、またみんなと楽しくやろうな。時々はこっちに帰って来るぞ」
「佐々木さんも連れて来てね」
「いいのか?」
「もちろんよ。というか、今は彼女の方が相対的には力を制御できない状態なのよ。このまま放っておくわけには
いかないでしょ。
佐々木さんの力をどうするかがあたし達のこれからの課題よ。そのためにもあんたが一緒にいて欲しいのよ」
やれやれ、何てことだ。昔、佐々木の方が力を制御できるなんてほざいていた奴がいたが、現状はどうやら逆じゃねえか。
ま、世の中どう転ぶかわからんということだ。
「で、二つめ。そしてこの閉鎖空間での最後のお願い」
「何だ?」
ハルヒは何も言わずに俺に抱きつき、胸に顔を埋めてきた。つややかな髪からいい匂いが立ち上って妙な気分になりかける。
いかんいかん冷静になるんだ。
「……これまでありがと、ジョン・スミス。あたしの初恋の人」
「ハルヒ……」
思わず抱きしめてしまいそうになったが、ハルヒはすっと俺から離れ、にししと鶴屋さんばりの楽しそうな笑顔を浮かべた。
「なーんちゃってね。これからもよろしくお願いするわよっ、キョン」
「さ、帰りましょ。皆心配してるわよ。特に佐々木さんがね」
閉鎖空間は思ったよりも相当に小さかったようだ。何せ十メートルそこそこの高さから崩壊を始めたんだからな。
241:この名無しがすごい!
09/05/28 21:56:24 0WuXRTfO
きたきたきたきた
242:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/28 21:57:38 9oF1hm2v
(side sasaki)
私達は店の外でなす術もなく待機していた。また古泉君の携帯が鳴る。
「はい……消滅した? 何故です?……不明? はい……はい、では」
携帯をしまうと古泉君は困ったような笑顔で長門さんと私を見回した。
「閉鎖空間が消滅したそうです。お二人とも無事に戻って……」
そのとき、店の扉が開いて何事もなかったような顔でキョンと涼宮さんが出てきた。
二人ともさっきよりもずっと穏やかな顔をしている。何があったんだろう。少なくとも悪いことではないと私は信じたかった。
「ほれ、佐々木」
キョンは私の名前を呼び、腕を差し出す。私は一瞬ためらったが、キョンの顔を見て安心してその腕にしがみついた。
涼宮さんが真っ先に私達を冷やかす。その笑顔に先程の陰はなく、何故か私を気にかけてくれているようにさえ思えた。
その夜は宴会になり、京大SOS団のメンバーである長門さんと古泉さん、それに大阪から鶴屋さんと小さい朝比奈さんも
来て大騒ぎになった。私は唯一の高校生なので最後まで素面だったことを強調しておきたい。
その晩は京都に泊まり、翌日キョンの実家に行く。キョンのご両親は私が高校生だと紹介されても別に驚きもせず歓迎して
くれた。キョンの能力はどうやら母親譲りらしい。お母様はキョンが中学の頃、私に似た同級生を家に連れてきたような
気がするとおっしゃっていたからだ。キョンは気のせいだと言い張っていたけど。
幸いにして私はお母様に気に入られたらしい。私に身寄りがないことを告げると、早く結婚してやれとまで言ってキョンを
固まらせた程だ。ちなみに同棲しているのは私が大学に入るまで伏せておく予定だ。
中学二年生になった妹さんは随分と背が伸びて胸以外は朝比奈さんそっくりの美少女に成長していた。
自分の妹の美醜というのは測り難いのかもしれないが、キョンは彼女の容姿を評価対象外にしていたと思う。
でも、元々顔立ちはいい子だったので、こうなるのは当然といえば当然か。
もしかすると、彼女の子孫が朝比奈さんだったりするのかもしれない。
243:この名無しがすごい!
09/05/28 22:00:56 0WuXRTfO
>>230
みれねーどorz
244:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/28 22:01:48 9oF1hm2v
翌朝、東京に帰る前に、私はキョンの自転車の後ろに乗ってある場所に向かった。中学の頃、こうして塾に通っていた
ことを思い出す。この世界では二人だけの記憶になってしまったけど、一生忘れられない大切な思い出だ。
これから行うのはささやかな儀式だ、この世界では失われた過去と訣別し、新たな人生のスタートを切るための。
キョンが自転車を停め、私はその場所の前に立った。そこは私の家があったはずの場所。
キョンと一緒に勉強したり語り合ったりした部屋も、思い出の品物もそこには無かった。
梅雨晴れの強い日差しに照らされたそこは、何年も前から空き地のままだったかのように草が生い茂るに任せた場所だった。
既に聞かされて分かっていたことだったが、厳しい現実を突き付けられて私は思わず眩暈を覚える。
でも、よろめいた私をキョンが後ろからしっかりと支えてくれていた。
「大丈夫か、佐々木?」
「うん、だって、これからもずっと君がこうして支えてくれるんだろう?」
「もちろんだ。もう絶対に離さないからな。もう二度とあんなことは御免だ」
「僕も絶対に離れたくないよ。もう二度とあんなことはしない」
儀式は終わった。再び彼の自転車の後ろに乗って戻る道すがら、私はある提案をした。
「ねえ、キョン」
「何だ?」
「こうなった以上、僕が佐々木という姓でいる必然性はないと思われるんだ」
以前のキョンなら意味が分からんと素っ気無い答えが返ってきたはずだが、今のキョンは違った。
「ああ、そうだな。でもあと三年待ってくれ」
「三年?」
「そうだ。お前が二十歳になったら誰の同意も必要なく両性の合意のみで婚姻届が出せるからな」
「え……それって……」
私は自分でカマをかけておいて自爆したらしい。
「何だ、お前が言い出したことだろ? 不満か?」
「もう……そんなわけないじゃないか」
私はキョンの腰に回した腕に力を込め、顔を押し付けた。
「大好きだよ、キョン」
この世界の過去に存在していない私。そんな私がこの世界に存在する証はこれから生きて残していくものだけだ。
でも、大丈夫。きっと生きていける。
この世界で一番愛している人と一緒に、この世界で二人だけしか持っていない記憶を携えているのだから。
245:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/28 22:02:51 9oF1hm2v
最終章 終了です。
二日間にわたりクソオナニーにおつき合いいただきありがとうございました。
246:この名無しがすごい!
09/05/28 22:08:32 ThVoKSw4
ホント糞だったな。お前中学生だろ?
保管する価値無し。もうこんな荒らし行為はするなよ。
247:この名無しがすごい!
09/05/28 22:12:43 0WuXRTfO
>>245
完結乙です。
248:この名無しがすごい!
09/05/28 22:34:55 s9pgAcp2
佐々木が佐々木団って言うとなんかすごいワロてしまったw
249:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/28 22:48:11 9oF1hm2v
>>248
直すの忘れてました。適宜読み替えてくださいませ。
他にもいろいろありそうだ……
書き終わって思ったのですが
1.佐々木さんの自力での行動は公園から駅前までのみ
2.佐々木さんも無事に嫁に行ったので、朝倉をもらいに処分解除を長門さんにお願いしてきます
250:この名無しがすごい!
09/05/28 23:42:53 lFeJkRnO
>>249
乙
251:この名無しがすごい!
09/05/28 23:45:38 RoiHzeU6
>>249
面白かったよ
乙
252:この名無しがすごい!
09/05/28 23:52:24 +udMbxYt
改行うざい
253:87 ◆2n0XFlpLvk
09/05/29 00:40:16 yLnj9DsH
>>252
すまん
>>250 >>251
ありがとうございます。
87としてはこれで消えます。
不快に思われた皆さん申し訳ありませんでした
では
254:この名無しがすごい!
09/05/29 00:43:10 H9Levekf
長いからまとめで読もうと思ったが
流石に他キャラたたきを平気でやってるようなSSは読みたくないな
ってもうここ位じゃないか?
アンチ行為にGJ送ってるの
255:この名無しがすごい!
09/05/29 00:47:38 cgM2d6nm
だからさ、乙はあってもGJしてるやつなんていないって。
その意味をよく考えてもらいたい。
256:この名無しがすごい!
09/05/29 00:51:57 5o9v5mMN
君らの心が狭いのは勝手だけどさ、そこまでアンチかね?このSS
俺はGJだと思うよ
257:この名無しがすごい!
09/05/29 00:58:04 tYBjAAz2
正直、最初はね、展開上ハルヒに原因があるような形にしといて、後半謎解きがあるんじゃないかと思ってた。
しかしまあ、なんというか。朝倉が出てきた時点で見切っておけばよかった。
一言で今の心境を語るなら
長文乙。
258:この名無しがすごい!
09/05/29 01:06:02 a/Tc50Hi
俺は佐々木萌のはずなのに!はずなのに!
>「……これまでありがと、ジョン・スミス。あたしの初恋の人」
ここで泣かされるとは思わなかった。
中盤以降の出来が非常によかった分、序盤の方向性がもったいなさすぎる。
保管庫への収録にあたって改訂してくれると個人的には嬉しい。
259:この名無しがすごい!
09/05/29 01:08:11 IOlK+ETa
途中まではすごい期待してたけど何かオチがお粗末な感じがした
佐々木が記憶戻すところとかハルヒと再開するところとかそっちはめちゃくちゃあっさりしてて
朝倉のくだりとか無駄に長いのとかも意味不明
記憶戻るところやハルヒと再開するところこそちゃんと書けよっていう
これだけの長編を投下してくれたことにたいしてはありがたいと思うしGJと思うが
その中身は陳腐すぎだな
まあこれに懲りずより精進して良い物を投下してください
260:この名無しがすごい!
09/05/29 01:28:44 PFvrJyNF
相変わらず高尚読み手様の多いスレだな
まあ読み手ですらないのかもしれんが
261:この名無しがすごい!
09/05/29 01:35:16 tYBjAAz2
ご本人様、こんな夜更けにお疲れ様です。
262:この名無しがすごい!
09/05/29 01:41:59 6uwFqV5Q
>>254
そこまでハルヒが悪役か?
263:この名無しがすごい!
09/05/29 02:10:45 BkXtodcR
最初しか読んでないとその成分が濃いからな。そういうことなんだろう。
264:この名無しがすごい!
09/05/29 02:34:20 mT1y7hAE
長いだけ。
内容はウンコ。
265:この名無しがすごい!
09/05/29 03:08:57 6uwFqV5Q
>>264
その書き方だと、ただのアンチにしか見えない
266:この名無しがすごい!
09/05/29 06:36:46 8SB73Q+P
完結してた。GJです
267:この名無しがすごい!
09/05/29 07:46:49 b/DEk+Eg
書き上げ乙
そして全部読んだお前らにも乙
268:この名無しがすごい!
09/05/29 08:48:04 IJKl0D1e
誰か要約たのむ
269:この名無しがすごい!
09/05/29 09:02:24 QY1zHJNk
>>268
>>213
270:この名無しがすごい!
09/05/29 09:05:31 QY1zHJNk
ただ本編のハルヒ嫌いが昂じてハルヒをデウスエクスマキナに仕立て上げたのは素晴らしいと思う
なかなかできることではない
271:この名無しがすごい!
09/05/29 09:08:23 b/DEk+Eg
>>268
ハルヒが佐々木を消滅させる
キョンがSOS団と決別
年月が経って佐々木が記憶喪失で復活
モテモテのキョン 朝倉と半同棲
佐々木と朝倉の恋の鞘当合戦
キョンとヤッたら記憶復活
ハルヒと和解
お約束の佐々キョンED
こんな感じ?
272:この名無しがすごい!
09/05/29 09:59:50 Z4L3w1YR
これは酷い…
GS美神の自己投影横島ハーレムマンセーSS並に酷い…
273:この名無しがすごい!
09/05/29 10:13:05 rEjQQzzB
>>270
一理有る。
個人的にハルヒ叩きパートが長すぎたのがダメだったのかも知れん。
05の説明パートをを02と融合してても問題なかったように思えるし。
なんにせよ二日間の長文乙でした。
274:この名無しがすごい!
09/05/29 11:17:51 Z4L3w1YR
これは美神ヘイトSSを彷彿させる酷い出来…
とってつけた様にハルヒを改心させたってハルヒに対する憎しみが透けて見えるよ…
275:この名無しがすごい!
09/05/29 11:21:52 Kzu5v2xD
>>274
ようキチガイ
元気だったか?
276:この名無しがすごい!
09/05/29 12:57:14 zpQzLh9q
個人的には、朝倉を出さないかチョイ役にして
その分九曜の活躍をズンと増やして欲しかった
誰が活躍するかは作者の意思だから、これ以上は言わないけど