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【投稿サイト】小説家になろう【ネット・携帯OK】 - 暇つぶし2ch300:携帯から失礼
07/07/05 13:51:19 430Egkt1
短編小説では作家になれないのでしょうか?
また、応募ってしていいのですか?

301:上の者です
07/07/05 14:14:51 430Egkt1
↑スレ違いでした
失礼しました

302:この名無しがすごい!
07/07/26 22:30:15 vegrqCLH
壁┃Д゚)コソ
壁┃( ゚Д゚)<ここは占領いたしました
壁┃=зサッ

303:この名無しがすごい!
07/07/27 12:07:47 77sGZVDo
壁┃Д゚)コソ
壁┃( ゚Д゚)<ダレモイナイ……
壁┃( ゚Д゚)<…………
壁┃( ゚Д゚)<ペレストロイカを施行します
壁┃=зサッ

304:この名無しがすごい!
07/07/28 08:33:34 xBhb3hSY
( ゚Д゚)<過疎……
( ゚Д゚)<一人で回すって虚しい……

( ゚Д゚)<晴れた日はピクニックに行きたくなるかも……

( ゚Д゚)<見上げた空は青空澄んで、眩しい太陽元気に輝いてる
( ゚Д゚)<明るい朝日、暖かい朝日
( ゚Д゚)<今日も明日も明後日も、そんな朝日はどこかに昇ってて
( ゚Д゚)<今日も昨日も一昨日も、僕らはここで生きてきた
( ゚Д゚)<きっと何気ない毎日だけど、変化のない毎日だけど
( ゚Д゚)<こんな当たり前の朝日
( ゚Д゚)<これからもずっと見ていきたいなって思えた

305:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 09:03:19 dhFfvZBp
( ゚Д゚)<タダイマ
( ゚Д゚)<今日ハウルサイ蝉ガ夏ラシイ日ヲ演出シテイルヨ

( ゚Д゚)<夏休ミ
( ゚Д゚)<兵共ガ
( ゚Д゚)<暴レダス

306:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 09:48:54 5KzB2vco
呼んだか?

307:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 12:53:08 dhFfvZBp
( ゚Д゚)<お呼びではありません
( ゚Д゚)<出口は此方に……

308:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 16:33:43 5KzB2vco
あるうぇ~?見えないなあ、出口w

309:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 19:02:49 dhFfvZBp
( ゚Д゚)<ローリング回転くるりんキック
( ゚Д゚)<出口は此方です

(Ⅱ゚Д゚)
(|   |゚Д゚)ヴィン
(Ⅱ゚Д゚)シューー

310:この名無しがすごい!
07/07/29 21:18:30 dhFfvZBp
( ゚Д゚)<ホラーって書いてて怖くないと納得できないんだよね
( ゚Д゚)<でも、何だか気分が乗ってて、あっこれ怖いって思いながら書いたやつだと
( ゚Д゚)<あとで見てみて破り捨てたくなることが多いんだよね

( ゚Д゚)<基本、ノリで一気に書いちゃうからさ、投稿した自作小説を数日後に読むと消したくなるのさ
( ゚Д゚)<そんな夏の一夜のぼやき

( ゚Д゚)<ポラポラポラポラポラポラ

(゚Д゚)

311:この名無しがすごい!
07/07/29 22:18:25 2yAtLhKU
わかるなあ…わかる
そんな感じで七作ぐらい没にしてる夏ホラー
作品が仕上がらないのが何よりホラー
正に背後から忍び寄るホラー

312:この名無しがすごい!
07/07/29 23:22:26 dhFfvZBpO
( ゚Д゚)<思うに、ホラーってジャンルは読者もその気にならないと楽しめないジャンルなんだよ
( ゚Д゚)<恐怖というのはある種のトランス状態出なければ急激に増大しない。お化け屋敷とか、ホラー映画の恐怖シーンは全部そうだから
( ゚Д゚)<仮に、突然殺人鬼に出くわして逃げなければならなくなったとする。出会った時に抱くのは驚きの感情と、伴うパニックだと思う
( ゚Д゚)<逃げていてまだ安心、安全だけど、いつそれが壊されるか分からない。これが恐怖だと思うんだ。
( ゚Д゚)<じゃあ、貞子は?
( ゚Д゚)<貞子だってそうだよね。積み重なった不確かな安全が壊れるのが恐怖だ

( ゚Д゚)<てなわけで、極論。ホラーを怖くするには作者の腕もさることながら、読者に準備をして読んでもらえばいいと思う
( ゚Д゚)<合わせ鏡の話なら、暗闇の中、合わせ鏡を作ってもらって読んでもらえば最高だと思う
( ゚Д゚)<引き込む不確かな安全を書いて、読者に準備してもらったら完璧な夏ホラー完成さ

( ゚Д゚)<本当の恐怖体験が出てきたら……
ガクガク((((;゚Д゚))))ブルブル

313:この名無しがすごい!
07/07/30 11:20:02 sL8qobys
ウザすぎ

314:この名無しがすごい!
07/07/31 13:52:38 4Jwvs4Z8
うざくないお(^ω^)

315:この名無しがすごい!
07/07/31 19:50:15 0dZZKSFq
どうせ誰も来てないし、いいジャマイカ

316:この名無しがすごい!
07/07/31 22:52:14 4Jwvs4Z8
マザーグース面白いお(^ω^)
読んだ人居るかお?(^ω^)

317:('A`)調子にのってすみませんでした……
07/07/31 23:31:29 90/gTHSr
>>313
( ゚Д゚)<ありがとう。最高の誉め言葉だ。

( ゚Д゚)<マザーグースは知らなーい。読んでみようかしら。

318:この名無しがすごい!
07/08/02 19:52:20 GqN1bseO
努力の先に成功はあるのかお(^ω^)

319:この名無しがすごい!
07/08/02 19:54:07 GqN1bseO
努力の先に僕はいないお(^ω^)

320:この名無しがすごい!
07/08/02 19:55:06 GqN1bseO
ところでこのスレって何について語ればいいのかお(^ω^)

321:この名無しがすごい!
07/08/02 20:59:27 99YjQcUh
売れる小説家になるのと東大一発合格どっちが難しいか話し合うか?

322:この名無しがすごい!
07/08/02 21:07:15 GqN1bseO
>>321
売れる小説家の方が難しいお(^ω^)
でも東大受かる頭脳がなくても売れる小説は書けるお(^ω^)


323:この名無しがすごい!
07/08/02 21:17:40 GqN1bseO
でも僕はどっちにもなれなかったお(^ω^)

324:この名無しがすごい!
07/08/02 22:25:46 pBTeJuZg
>>321
倍率だけで言えば東大一発合格のが明らかに簡単

325:この名無しがすごい!
07/08/03 01:48:39 2tPpIVv6
小説家になるだけで倍率100倍だっけ?
小説家を真剣に目指している奴の中から百人に一人か…
そこからさらに、仕事として食っていける小説家になるには
何人に一人ぐらいなのか

326:('A`)なんかもう色々駄目だ……
07/08/03 09:44:59 7tNIn3bC
( ゚Д゚)<暇潰そお題

( ゚Д゚)っ【星祭の夜】
( ゚Д゚)っ【日の昇る歩道橋】

( ゚Д゚)<小説家、それは夢のまた夢……


327:この名無しがすごい!
07/08/03 17:40:05 QkNnoq1o
お題かお(^ω^)

328:この名無しがすごい!
07/08/03 17:42:07 QkNnoq1o
本スレは何だか殺伐としてるお(^ω^)
ほんわかしたいお(^ω^)


329:この名無しがすごい!
07/08/03 17:52:29 QkNnoq1o
お題やってみたお
【星祭の夜】だお

これは昨年の夏のお話だお。
その日は何だか僕は様子がおかしかったんだお。
誰とも約束してないんだけど、バス停のベンチに座ってたんだお。
きっと誰か来ると思ったんだお。
でもバスも来ないんだお。
仕方ないから煙草吸おうと思ったんだお。
火が上手く点かないんだお。
これは絶対なんか違うと直感で気付いたお。
煙草逆向きだったお。
やっぱり今日は何か変だお。
煙草怖いお来ないバスも怖いおまんじゅう怖いお(^ω^)
このままじゃ駄目だと思って勇気を振り絞って立ち上がったお。
靴が左右違ったお。やっぱり今日はオカシイお。気付いたら近くを通りかかったおばさんに
「バス、バス来ないお」って泣きながらしゃべりかけてたお。
おばさんは僕の頭を撫でて「今日は星祭だからバスは運休なのよ。でもホラ星の神さまがいらっしゃるわ」とか言い出すんだお。
このおばさん頭おかしいお。そうしたらいきなりすごい勢いで3メートルはあろうかという白い眩しいおじさんが走って向かってくるんだお
道行く人達をちぎっては投げちぎっては投げそれはもう盛大なお祭り騒ぎだお。
おばさんは「神さまがいらっしゃったわ。私たちもお星様になれるかしらねぇ」
とかほんとに危険が危ないんだお。
気付いたら夜だったお。お星様綺麗だお。

330:この名無しがすごい!
07/08/03 17:58:53 QkNnoq1o
↑顔文字付け忘れたお(^ω^)

331:( ゚Д゚)<日の昇る歩道橋
07/08/03 22:13:26 7tNIn3bC
車は一台も走っていなかった。
夜明けの街。静かな街。漆黒の夜空が次第にほつれ、光を紡いでいく空の下。歩道橋に登って、伸びる道路とその先の海を見ているのは私だけ。
毎日新聞配達のバイトをしていたあの学生さんもいない。ジョギングを楽しんでいたあのおじさんもいない。愛犬との散歩を日課にしていたあの女の人もいない。みんなみんな、どこにもいない。私以外避難してしまった終わりの街。穏やかな空だけがいつもと同じくそこにある。
こんな毎日がずっとずっと、この先ずーっと続けば良いのに。手摺にもたれかかって私はそう思う。なくしてしまう日常が幸せだったと思う。
海から太陽が顔を出し始めている。その左上に薄くなった月と、最後まで残った一番星が輝いている。
それは泣きたくなるくらいに心に染みる景色で、私は熱くなった目頭を堪えるのに必死になった。
ずっとずっと、こんな毎日が続いていけたら良かったのに……
朝日の中から現れた黒い塊。急速に近づいてきて、街に落ちて。巨大なきのこ雲がそびえたったとさ。

332:この名無しがすごい!
07/08/03 22:14:14 7tNIn3bC
( ゚Д゚)<恐ろしく適当に終わらせてしまった。まあいいか。

333:この名無しがすごい!
07/08/04 21:38:41 S/lJJlfl
過疎だお(^ω^)

334:この名無しがすごい!
07/08/05 15:34:21 hmcl6cV3
ひどいお(^ω^)
ブログ始めたんだお
短編の感想書いていこうと思ったんだお
新着短編十本読んだんだお
タイトル・作者・あらすじ・URLコピペして感想も詳しく書いたんだお
記事うpしようとしたら鯖オチで書いたの全部消えたお(^ω^)
ひどいお(^ω^)


335:この名無しがすごい!
07/08/06 00:45:28 F3H1n9QF
>>334
うpする前に、一度右クリックでコピーしておくことをおススメする。
鯖オチはよくあることだからな。

336:この名無しがすごい!
07/08/06 02:59:27 0wJ15dax
よし、最近ブログ始めた作者を探し出せ

337:この名無しがすごい!
07/08/06 11:28:08 XA63LQxK
>>335
そうする事にしたお(^ω^)
>>336
酷評しかしてないお(^ω^)
見つかったら叩かれるお(^ω^)

338:この名無しがすごい!
07/08/07 18:36:46 lP9I4UvT
新着短編チェックしはじめて思ったお(^ω^)
作者は何のために書いてるのかお?(^ω^)
読者に伝えたい事があって書いてるのかお(^ω^)
誰かに評価感想もらいたくて書いてるのかお(^ω^)
何にしろ読者の事を考えてる作品は少ないと思ったお(^ω^)

339:この名無しがすごい!
07/08/07 23:15:33 cQtK4+2C
読者の為を思うという言葉はよく耳にする
だが、それに対し、具体的にどうすることが読者の為かを語る人は少ない

読者の為にどうすることがよいのか、細かい点まで上げて欲しい
それが書き手にとって楽しみに直結するのか
それとも、書き手にとって苦痛になるのか
答えが知りたい

340:この名無しがすごい!
07/08/07 23:49:29 lP9I4UvT
>>339
僕の考えになるけど例えば>>329なんかは読者の事は全く考えてない作品になるお(^ω^)
小説だと説明しにくいからブログとかネット上の日記を例にあげるお(^ω^)
「今日は、●ちゃんと×ちゃんでご飯に行ったお。
●ちゃんっていつも僕の困る話ばっかするお。まぁそんなとこも憎めないお。
ご飯おいしかったお。また行きたいお(^ω^)」
これだとこの日記書いた人の友人くらいしか理解出来ないお(^ω^)
不特定多数の人間が読む事を意識するなら
・自分と●ちゃん×ちゃんの関係を書く。
・困る話が具体的に何なのかと●ちゃんが憎めない存在だというキャラを詳しく書く。
・ご飯はどこで何を食べたのか、どういう風においしかったのか書く。
最低限このくらいは書かないとダメだお(^ω^)
読者の為というよりも自分の書いた小説を他人が読むって事を念頭において書いてほしいお(^ω^)
だからといって説明的すぎても萎えるお(^ω^)
読者に小説の世界観を押し付けるんじゃなくて、惹き込ませるような書き方を研究してほしいと思うお(^ω^)




341:この名無しがすごい!
07/08/09 16:57:29 59WoyTAB
新着短編読んで感想書いていくの疲れたお(^ω^)
軽く拷問だお(^ω^)

342:この名無しがすごい!
07/08/09 22:15:28 8yIJJ990
>>341
新着短編全部の感想書いてるの?
そりゃ疲れるわな

343:この名無しがすごい!
07/08/10 09:31:42 LmCacPml
読むのは一日10~20くらいが限界だお(^ω^)
コメディジャンルの短編は本当にひどいお(^ω^)
なんでこのジャンルに読者数が多いのかわからんお(^ω^)

344:この名無しがすごい!
07/08/10 12:24:15 f6PIiBG2
読み手がそういうのを求めてるからかねえ?

345:この名無しがすごい!
07/08/10 18:47:58 LmCacPml
>344
そうなのかお(^ω^)
たしかに全然面白くない日記みたいな話にもコメディだと評価がつくみたいだお(^ω^)
四日間新着短編読んでかなり心が荒んだ気がするお(^ω^)

346:この名無しがすごい!
07/08/12 16:24:30 2IAuL2NT
読み手が求めているってのは頷けるな
ノクターンが読者数がべらぼうに多いのを考えれば
よくわかる

347:この名無しがすごい!
07/08/12 18:09:05 eE/ojtjx
ノクターンまだ読んだ事すらないお(^ω^)
何となく鬼畜とかエグイのばっかりってイメージあって敬遠してるお(^ω^)

348:この名無しがすごい!
07/08/12 19:23:05 2IAuL2NT
そういうのばかりでもないが、確かに鬼蓄なのはある

「割礼四景」
「仕返を……」
「紅い鴉は異形を喰らう」
このあたりは結構エグいかな
ノクターンに手を出すことがあったらご注意☆

349:この名無しがすごい!
07/08/13 11:22:58 6QWHBpqq
>348
「割礼四景」読んだお(^ω^)
普通に文章と組み立て方は上手いと思ったお(^ω^)
エロというよりは猟奇的だし、話の進め方によってはホラーになりそうだお(^ω^)
これで抜いてる読者がいたらかなりのホラーだお(^ω^)

350:この名無しがすごい!
07/08/19 22:21:54 aZhamgpa
小説書いてみたいんだけど、
テーマが決まらない。

書き方のノウハウもまったくわからない。
ノウハウってか基礎?


小説読むのは好きなんだけどなぁ。

351:この名無しがすごい!
07/08/20 05:07:24 vv+wEx1n
>>343
> コメディジャンルの短編は本当にひどいお(^ω^)

俺も読んだ確かに酷いな…
読まなくても良くない?
たまに誰かの読んで評価してあげるくらいで。

352:この名無しがすごい!
07/08/20 17:17:41 veDRPuCJ
>>351
ごく稀に面白いのもあるお(^ω^)
8月10日あたりは異様にコメディの投稿率が高かったからそう思ったのかもしれないお(^ω^)
最近はジャンル関係なくカオスなものをよく見るお(^ω^)

353:この名無しがすごい!
07/08/22 01:53:47 L3etnD2a
URLリンク(www17.big.or.jp)
この人の方が圧倒的に才能ある。

354:この名無しがすごい!
07/08/22 12:40:05 BMlSDHSX
まあ文学はマシだな。たまにアレなのを見つけるぐらいだ。

久しぶりに書こうと思ったら、

投稿済小説 執筆中小説
6作品 31作品

なんぞこれー/(^o^)\

355:この名無しがすごい!
07/08/23 22:57:52 CDBpx76R
( ゚Д゚)<ネタってたまるばっかだから困るんだよね。それもふと思いついた一言とかが残ってく。数行書いただけとかね。
( ゚Д゚)<使うかもしれないと残してるけど……
( ゚Д゚)<どれくらいで捨ててってる?結局書けそうにないものが多いような気がするんだ

356:この名無しがすごい!
07/08/24 00:14:54 YdH/0kOh
( ゚Д゚)<さて、久しぶりにお題を投下

【蛍火】
【七色雲】

( ゚Д゚)<花火も見納め。スイカも食べた。海風にも晒されて、蝉がなきやんでいく。秋はもうすぐそこです。

357:お題に挑戦。長くてすまん
07/08/24 02:45:50 knKVzVct
橙色に染め抜かれた夕暮れ時の小川。
澄んだせせらぎの聞こえる畑の中。
そこで独り涼んでいた私の肩に、「ちょいとようござすか」の一言もなく、黒い大きな影が降りてきた。
影の主は鴉だった。黒い羽は夕暮れの衣をまとい、僅かに色づいている。
「何の用?」
私が問うと、鴉は人間が欠伸をするようにあんぐりとくちばしを開け、乾いた声で語りかけてきた。
「環水平アークって知ってるかい?」
聞きなれない単語に私が目を瞬かせると、大鴉は先まで黒いくちばしを打ち鳴らし、「かあ」と笑った。
「知らないのか」
人を馬鹿にした口調で追い討ちをかけてくる。
「お前さんの頭は、見た目の通りすっかすかかい?藁ばかり詰まってるしね。
 そういや藁は異国の言葉じゃストロウと言うらしいぜ。なんとも間の抜けた響きじゃないか。お前さんにぴったりだ。かかか」
「鴉、あんた、私にそんなことを言いにわざわざ降りて来たの?」
「動けぬ一本足の鴉脅しが寂しそうにしてたから、今日もちょいと話し相手になってやろうと舞い降りたのさ。かあかあかあ」
「別に寂しくないわ……それに、あんたみたいな物知り顔で人を馬鹿にする奴に構われるぐらいなら、寂しいほうが、まだましよ」
「つれないね。俺は馬鹿にしてるつもりはないぜ。それに、今日はお前にいいものを見せてやろうと思ってやってきたのさ」
黒い翼を二度羽ばたかせ、胸を張る鴉。
いいものを見せる?そんな戯言を信じろと言うのか。
鴉はいつも、私の頭をむつかしい言葉で攪拌するのだ。今日もそうに違いない。
「いいものね……どうせまたくだらない物を見せるんでしょ?この間は世にも珍しい平べったいカブト虫って言って、ごきぶり見せてくれたわよね」
「かかかか。そんなこともあったかな。でも、今日は違う」
言うが早いか、鴉は右の羽で川の上の空を示した。
「見てごらん」
いつもと違う優しい響きの声につられて、私は鴉の示す空に目をやった。
だが、頭にかぶされた麦藁帽子が、視界を遮っている。鴉の示す空がよく見えない。
「おっと、自分じゃ取れないか。どれ」
鴉はくちばしで私の麦藁帽子をついばむと、ひょいと背後に落としてくれた。
世界が広がり、空が目に映る。
言葉もないとは、まさにこのことだった。
夕暮れの空に浮かぶ雲が、虹色に染まっている。ゆったりとした風に流れる雲の動きに合わせて、七つの色がスローテンポのダンスを舞っている。
彼岸の彼方から現れた極楽の乗り物のような雲――
この畑に立たされて十数年、こんな美しいものは見たことがなかった。
「あれが答えさ。環水平アークってやつさ」
「あれが……なんて綺麗なの」
「本当はこの条件じゃ現れないんだがね。俺は太陽の神様だから、ちょいと空のまつりごとにちょっかいだせば、ご覧の通りさ」
自画自賛じみた言葉の後に、薄紫に染まり始めてきた空の際まで届く、大きな笑い声を上げる。
それがなんだか妙に微笑ましくて、私は静かに笑みを浮かべた。
「ようやく笑ったか。お前さんはそのほうが可愛い」
鴉の不意打ちに、私の顔が熱くなる。
今が夕暮れでよかった。赤い色は見えにくいはずだから。
そのまま、私と鴉は七色雲を見つめ続けた。夜が次第に色を増す。
「なあ、お前さん」と鴉が呼ぶ。
「何?」と私も短く返した。
「色んなものがあるだろう。世界には」
消えかける七色雲を見つめながら、鴉は囁いた。
「俺がお前さんに教えたもの。汚いもの、奇妙なもの、どこにであるもの、くだらないもの、そして綺麗なもの。全部ぐちゃぐちゃに混じった鍋みたいな世界。
 俺はそれを何十万年も見てきた」
「……」
「まだまだいっぱいある。お前さんに伝えられることは、まだまだいっぱいあるんだ」
私は鴉の横顔を見た。闇の濃くなった世界に溶け込み、見づらくなった鴉の姿は、どこか強い孤独を感じさせる。
案山子である私以上に。
「だから……また明日も来てやるさ」
その言葉を自らのはためきで打ち消すと、鴉は勢いよく紫色の空へ飛び立った。
三本の脚が私の肩から離れる。
「あっ……」
何か言おうにも、藁しか詰まっていない私の頭は、気の利いた台詞など浮かべることはできなかった。ただ、夜空へ消え去る鴉を見つめるばかり。
飛び立つ寸前、鴉は照れていたように見えた。それは、初めて見せた鴉の本心だったのかもしれない。
私の肩に温かい寂しさが残っている。生意気で物知り顔の鴉がくれた贈り物。
私は空と、その下で流れる小川を眺めた。
日の暮れた川辺に、淡い蛍火が現れて、飛び去った鴉を惜しむように、ゆらりゆらりとスローテンポのダンスを舞い始めた――

358:この名無しがすごい!
07/08/24 03:13:32 YdH/0kOh
( ゚Д゚)<う、うまい……。初見でやられた。後半引き込まれる。穏やかな風景と、特徴あるキャラがナイス。すっきりする、好きなタイプの話だ。
( ゚Д゚)<ただちょっと文が堅いかな。漢字をひらいたり、言い回しを変えたりして柔らかくしてみたほうがいいかも。大きなお世話やね。ごめん。

( ゚Д゚)<ところで環水平アークって本当にあるんだね。造語かと思った。

359:9
07/08/24 04:24:50 knKVzVct
>>358
どうも~。娘に叩き起されて目が冴えたので、書いてみました。

私、群馬在住なのですが、環水平アークが何年か前に地元で起きまして。それで思いつきました。
しっかし指摘されたとおり、文、堅いですね。
漢字にしなくてもいいものまで漢字にしてしまうのは、自分の悪い癖ですな。ご指摘ありがとうございまっす!

また眠くなってきたので、それではこの辺で…

360:蛍火 by ジル
07/08/24 21:45:53 vHwkVj5z
 風が、女の頬をなぶった。
 山から降りてくるその風は、目の前に広がる風景とは裏腹に、青き木々の香りを伝えている。
 もののふどもの声はすでに遠く、すでに戦場働きの盗人どもも仕事を終えたのだろう、下帯ひとつの男どもが、死屍を累々と晒していた。
「あんたぁ」
 悲痛な女の叫び声が、小川のせせらぎをかき消した。それは山々にこだまを返され、茜色の空に吸い込まれていく。
 女は初めよろけるように、そしてしまいには裾の乱れるのもかまわずに、死人の間に駆け入った。
「どきな。あっちへいけ」
 があ、と恨めしげな声を上げて、死体をついばんでいた烏が飛び去る。それには見向きもせずに女は泥の中に膝をつき、死体の顔を覗き込む。
 違う……
 こけつまろびつ、女は次の死体に向かう。その度に女の周りを烏が飛び惑う。違う、違う、違う。まるで女は烏と呼び交わすかのようにそう叫びながら、いつの間にか草履を失った素足を青薄で傷だらけにしながら、死体から死体へと飛び回る。
(この戦で手柄をたてりゃあ、親父様も文句はあるまい。帰ったら祝言じゃ)
 あんたぁ。
 烏が、嘆く。

 茜の空は山際にその色をわずかにとどめ、ポツリ、ポツリと星の光が降りはじめた。
 烏どもも飽食したのか、遠く山の懐に帰っていった。女は一人、冷えた体を抱きもせず、泥の中に座り込んでいた。
「あんたは嘘つきじゃ」
(これをくれるんか)
(返せよ。母様の形見じゃ)
 おう、と笑って背を向けたあの笑顔は、もうどこにもない。
「喉が渇いた」
 せせらぎの音が女を誘う。女はいざるように小川へと向かった。しかし萎えた足は草にとられ、川岸を転げ落ちてしまう。
「ここにも……おったか」
 ようやく体を起こし、ついた手に、もうなじんだ命を持たぬものが触れる。
 女は何の期待も持たぬまま、その顔を覗き込んだ―
 あ……
 闇の中、目を凝らす。泥に汚れた手を伸ばして、その輪郭をなぞる。
「あんたぁ」
 女は、ようやく捜していたものに出会えた。しかしそれは、女に喜びをもたらすはずもなく。
 ただ、鎧をはがれた男の体を無意味になでるだけ。何度も顔をうずめた厚い胸。深くえぐられた腹。肩。腕。そして、硬く握り締めたままのこぶし。
 そのこぶしが、女の手が触れたとたんに緩んだ。男が握っていたもの―
「これ……」
 それは、強く握り締めたためか幾本もの歯を欠いた、櫛だった。御守り代わりにと、女が持たせた柘植の櫛。それを最後に握り締めた男は、何を思っていたのだろう。
「すまなんだ」
 渇ききったはずの女の体から、涙があふれた。
「あんたを、嘘つきじゃ言うてしもうた」
 まだ櫛をのせたままの男の手を、腕を、掻き抱く。櫛にしずくが、ポトリ、ポトリと落ちる。
 そのとき、涙の水玉に、青い光が暗く映った。それは、淡く、そしてもっと淡く、脈動を繰り返す。
(ほんまはの、戦は好かん。こうやって蛍を見ながらお前と酒を酌み交わせさえすりゃ、それが一番じゃ)
 それはほんの数日前のことだったのに。
「ああ……」
 女は、瞬きもせぬまま、泣き続けた。涙に歪む夜空に、一つ、二つと蛍が舞う。
 女はただ、泣き続けた。何時しか、幾百の蛍が、あたりを飛び交うようになっても。
 蛍火の華燭が、二人を冷たく照らしていた。

361:この名無しがすごい!
07/08/24 23:40:20 YdH/0kOh
( ゚Д゚)<可哀想過ぎじゃきん。戦とはかくも酷いものなのだわ。二人の愛情が語彙豊かな文章と効果的な会話とで際立ってる。
( ゚Д゚)<文字数が限られてるから厳しいけど、戦場の描写がもうちょっとほしかったかも。でも素敵な作品です。
( ゚Д゚)<うーん、蛍の光って、幻想的で、やっぱり光だから温かなイメージがあるんだよね。こういったもの悲しい場面での映えは初めてかも。ちょっと合わないような気もする。

( ゚Д゚)<ともあれ、完成度が高い。まだ書いてもないのにこんなことを言ってばかりでは失礼なので自分も書きます。

362:この名無しがすごい!
07/08/25 01:28:28 0lp5jeev
なんかレベルたっけ~な、ここ
俺の文章力じゃ、ついてけない(T_T)

ところでヘボ氏は自分が出したお題でこういう短編書いてもらった時って、どんな気持ち?

363:この名無しがすごい!
07/08/25 01:52:39 MARe53tx
>>360
とりあえず、三文目に『ども』って使いすぎ

364:この名無しがすごい!
07/08/25 02:50:00 X+hSuD+c
>>361
ありがと(*'-^)-☆
描写が足りないのはいつものことなのよね。
何とかしたいんだけど……
最後も、もっとこう、ぱぁーと蛍が飛び交う幻想的な風景にしたかったのに、
なんかイメージと違う。

>>363
読み返してて、自分でも思ったわw
でも、それを「たち」とか「ら」に置き換えるのもなんだかねぇ。
推敲ができるのなら、もうちょっと構成を変えたいわね。
ありが㌧

365:この名無しがすごい!
07/08/25 04:03:20 OsJgy/RW
どこで質問していいか分からんので
とりあえずここで。

小説家になろうのランキングは面白い順になってるの?

366:この名無しがすごい!
07/08/25 12:09:25 OFZs35ca
>>362
( ゚Д゚)<別に特別に何か思ってるわけじゃないよ。暇潰しになればいいと思ってるだけだから。

>>365
( ゚Д゚)<ある程度は。でも完璧ではない。ランキングに入ってない面白いのも多いのが現状

367:この名無しがすごい!
07/08/25 12:15:38 MARe53tx
ランキングに入っていてもつまらない物もかなり多いのが現状

つまりランキングは全くあてにならん

368:この名無しがすごい!
07/08/25 13:04:34 OsJgy/RW
>>366-367
回答ありがとね。
というか自己解決したので報告ついでにカキコ

結論から言って、読了時間で分けたジャンル別ランキングなら
少しは信頼できそう。

5分/文学という風に細かく指定されて
ランキングひとつにつき75作
ってことは16ジャンルあるから 75x16 で1200作はある。
5分/10分/30分/1時間/それ以上、という風に
5種類に分けられているから単純計算して 1200x5 で6000作。

全部で17148作品が掲載されているらしいので
1/3の割合で作品はランク入りすることになる。

全くあてにならないと言い切るには間口が広すぎる希ガス。

369:この名無しがすごい!
07/08/25 14:25:19 OsJgy/RW
連投スマソ

ちなみに80ジャンルのうち17ジャンルが
1/3より少ない割合で作品がランク入りすると分かった。
具体的には↓

 5分以内:文学・恋愛・ファンタジー・ファンフィクション・ホラー・コメディー・詩・その他
10分以内:文学・恋愛・コメディー・その他
30分以内:恋愛・ファンタジー・ファンフィクション・その他
 それ以上:ファンタジー

これら以外のランキングはおおむね信頼できそう。

>>366-367
まさかポイント数と面白さが反比例するってこと・・・ないよね?

370:この名無しがすごい!
07/08/25 14:35:50 MARe53tx
反比例まではいかないと思う
本当に初心者丸出しの作品はさすがにランクインしないし

俺の何の根拠も無いイメージでは、
下手な作品はランクインせず、
中くらいの作品はランクインして、
上手い作品はやっぱりランクインしないw
あくまでイメージだけどな

371:この名無しがすごい!
07/08/25 16:06:33 OsJgy/RW
ただでさえポイント制のランキングは
精度が低くなりがちなのに
ランキング下限を一律75位に設定するのは無理があるなー

>>370
間口が広いと上手い作品はランク外になるほうが難しいので
順位はともかくランクインしてしまう。

372:( ゚Д゚)<七色雲
07/08/25 22:49:18 OFZs35ca
ぷかぷかぷかぷか。今日もネコは浮かんでいます。
穏やかな海。空の真ん中に太陽。雲はどこにもありません。島なんて水平線にも見えない海で、ネコは真っ青な空を眺めていました。
ふと、耳に聞き慣れない声が飛込んできました。ネコは辺りを見渡します。空に渡り鳥の一群が飛んでいました。
「みゃー」
ネコは話しかけました。
こんにちわー。どこ行くんですかー。どこから来たんですかー。
ずっとずっと暇でしょうがなかったのです。
鳥たちは、しかし返事をすることなく、すいーっと飛んでいってしまいました。ネコの声は届かなかったのです。
ネコは飛んでいく渡り鳥たちをじっと見ていました。
海が少し冷たくなりました。新しい潮流に乗ったのでしょうか。ネコは海の流れるままに運ばれていきます。
ぷかぷかぷかぷか揺れる体。甘い絡みつくような眠気がネコの瞼を閉じていきます。今日もとってものどかなのです。
不意に、いつかカモメの兄さんがしていた話をネコは思い出しました。晴れて適度に湿度がある日は彩雲と言う綺麗な雲が見えるという話でした。
「でな、その彩雲ってよ、七色に輝く雲なんだよ。分かるか? 雲がよ、虹みたいに光るんだよ。ありゃ、一度見たら忘れらんないぜ。いやぁいいもん見たよほんとに」
妙に熱く語っていたカモメの兄さんを思い出しました。
ネコはぼんやりと空を見上げました。
ずぅっとずっと真っ青な空だけが広がっていました。
少し残念でしたが、ネコはそのまま眠ることにしました。もしかしたら明日は見られるかもしれない。明日じゃなくてもいつか見られるかもしれない。期待に胸を踊らせました。

海は変わらず穏やかで。
ネコは今日も浮かんでます。


373:この名無しがすごい!
07/08/26 11:50:26 2+/oJDkQ
>>372

穏やかな話で和んだw

9の書いた短編の影響があるように思えるけど意識してか?


374:この名無しがすごい!
07/08/26 17:09:03 6szb/cyT
>>373
( ゚Д゚)<いえ、意識はしてないよ。影響はあったかもしれないけど。
( ゚Д゚)<なかなか書けなかったから、倉庫入りになってたネタを使ってみたのです

375:この名無しがすごい!
07/08/27 00:39:35 6okLlugK
人形(カタシロ)の見る夢 -人形師 源十郎-(”太った猫”先生-Fantasy)
名探偵コナン ---黒組織の正体---(shinji先生-FF)
覇者召喚(瑠璃雨先生-Fantasy)
オーダーメイド異伝 パラレル・パラレル(zens先生-Comedy)
ミステリー研究部へようこそ!(ドクロ先生-Fantasy)
放課後のセレナーデ(ふりーまじっく。先生-Fantasy)
SUNNY SUNDAY(藍田シュウ先生-恋愛)
この物語はフィクションです。(紅 あげは先生-その他)
神聖鎧騎士エヴァンゲリオン(kein先生-FF)
群青の桜(水無瀬 桜先生-恋愛)
~以下略~

新しい中、どれに期待する?
俺はミステリー研究部が面白かった。

376:この名無しがすごい!
07/08/27 02:16:57 mWADb7Zr
以下略に期待したいね
未来はいつだってバラ色なのさ

377:( ゚Д゚)<気に入ったん
07/08/28 23:31:30 OynihkCx
今日、走ってくる自転車の前にふらふらと飛び出したおばあちゃんがいた。
ティッシュ配りのバイト中だった私がそれに気付いて危ない!と思った瞬間には
自転車の兄ちゃんが急ブレーキかけつつ
「危ねーだろがババア!」
と怒鳴ってた。
確かに完全にそのおばあちゃんの不注意でのことだったんだけど、
でもそんなキツイ言い方しなくても…
と、思わず2人の間に割って入ろうとした。
んだけど、私が
「ちょっと…」
って言いかけたその時にその兄ちゃんは
「おめぇーが死んだら孫とかじじいとか悲しむだろが!!」
と。あまりにも予想外だったその言葉に、私含め周囲は思わずポカーン。
で、謝るおばあちゃんにその兄ちゃんは更に
「うるせーないいから荷物かせ!カゴ入れてってやっから貸せ!つーかケガねぇのかよババア!ああ!?」
と、脅してんのか気遣ってんのかわかんない発言。
結局その兄ちゃんはおばあちゃんに付き添って来た道を引き返していった。
カゴにはおばあちゃんの荷物。
ティッシュ配りながら2人をコッソリ見送ってたんだけど、おばあちゃんと兄ちゃんは
何か色々喋ってるみたいでおばあちゃんも笑顔外だった。
20分ぐらいしてから再度自転車で戻って来たその兄ちゃんにティッシュ渡しながら
「優しいですね」
って言ったら、
「別に優しくねーよ!」
とちょっと怒ったみたいに言われた。でもその後で小声で
「ババアやジジイを大事にすんのは別に優しいとかじゃなくて普通のことだろがよ」
と言ってるのもちゃんと聞こえた。
しかもちょっと顔が赤かった。


378:この名無しがすごい!
07/08/29 00:27:10 jv2MRTlU
>>377
それ、コピペだけどね

379:この名無しがすごい!
07/08/29 18:08:12 I0J8sdX9
>>378
( ゚Д゚)<あら、そうなの?知らなかったよ。体験記とかエッセイとかはこんな書き方するんだろうなと思った。

380:こういうのはどうか
07/08/30 00:31:22 N19JAWcH
若い兄ちゃんが携帯をいじっていた。隣にばあちゃんがいて、ばあちゃんは
「医療機器使ってるから電源切ってください」と言った。
その男は「来たメールを読んでるだけだから」と言って、いじるのを止めない。隣のリーマンが
「今は読んでるだけでも読んでるうちにメールが来るかもしれないだろ。切りなさい」
と言った。兄ちゃん、怒り狂った口調で「ああ?!!」
逆切れだ!リーマンやばいぞ!(兄ちゃんはかなりいいガタイ)
見てる人が皆そう思ったとき、兄ちゃんは携帯をリーマンに突きつけながら言った。
「見ろよ!俺に来た最後のメールは4ヶ月前だ! それ以来誰も送ってこないんだよ! 今更誰が送って来るんだよ!!! 俺から送る相手もいないんだよ!!!」
みんな黙り込んだ。しかしその中に一人だけ、無愛想な顔をして彼に近付く若い女がいた。
彼女は男から携帯を奪い取ると何か操作をして、再度男に突き返した。
男が呆然としていると、女は自分の携帯をいじり始めた。
しばらくして、男の携帯が鳴った。
男は目を見開いてぱちぱちさせながら携帯を見た。
もうね、多分みんな心の中で泣いてた。男も泣いてた。
世界は愛によって回っているんだと実感した。
ばあちゃんは死んだ。

381:この名無しがすごい!
07/08/30 00:56:06 e7jpYVeY
これもコピペな

382:この名無しがすごい!
07/08/30 01:22:00 I1GEzsSV
>>380
( ゚Д゚)<ナイスなブラックジョーク。ちょっと笑った。そういった話も難しいんだよね。ネタが生まれない。

383:この名無しがすごい!
07/08/30 19:35:32 VnNUBBqk
いろいろなタイトルがあるけど、
「ヤンデレラ」とか「ボーイズラブ」って作品を書くと、
優先的に世に出す権利が生じるかな?

384:この名無しがすごい!
07/08/31 03:12:58 QU3GzZuq
>>383
タイトルには著作権が及ばないっていうのが普通だから、
優先的な権利は生じないと思う。
だからおまいさんの後で、「ヤンデレラ」っていう作品を
誰かが書いたとしても、それを差し止める権利はないだろう。
タイトル自体に何らかの創造性が認められる場合は、
また話は別かもしれんが、そこまで詳しくないので……

385:この名無しがすごい!
07/08/31 12:04:45 ZzP3rUpi
>>383
( ゚Д゚)<題名のパロディだったら大丈夫じゃないのかなぁ。結構普通にありと思うし。自分もよく知らないからあんまり言えないけど。

( ゚Д゚)<てなわけでハローハロー。お題提出。

『8月31日の打上花火』
『8月31日の線香花火』

( ゚Д゚)<なんだか似たようなのになっちゃった………

386:383
07/08/31 18:31:46 ZvwRhF0H
すまん、「ヤンデレラ」は既に、なろうにあったわ
でもプロが後から書くのは、ちょっとためらわれるかもな
そういう意味では、アイデアの特許庁的になろうを運用するのもいいかもな


387:( ゚Д゚)<恋愛下手くそ
07/09/02 00:00:57 AwnkDpSp
「終わっちゃうね、夏」
そう彼女が呟くように言ったのは、夜空を覆う煙が消えるまで花火の打ち上げを待っている時のことだった。
辺りを包む人々の喧騒の中で、小さな呟きはまるで透き通った鈴の音のように、隣で俯くお前へと届いたんだ。
花火大会だというのに、単色のTシャツとジーンズでやってきたお前。そんなこと髪の毛一本分ほども気にしちゃいないのがお前なんだが、俺はお前の隣りに座る彼女が不憫でならなかった。
この、大馬鹿野郎が。
できる事なら今すぐにでも殴ってやりたくらいだ。
でも、そんなお前も、彼女の声には反応する。小さな悲しみに、まるで見えない糸に引かれるようにしてお前は彼女の方を向いた。
暗闇の中、長い髪を結い上げた浴衣姿の彼女は、じっと夜空を見上げていた。
何も上がっていない、煙が充満しているだけの黒い空。彼女はただただじっと空を見上げているんだ。手にしたうちわがゆっくりと動いていた。
「うん」
少し時間を置いたというのに、素っ気なく、何も考えることもなく、お前は安直な返事をする。そしてまた地面を見る。
「どうしたの」とか「何かあった」とか気の利いた言葉の一つでも掛けてやるのが男という者だというのに。それなのにお前という奴は……。
沈黙が二人の間を流れる。暗い騒がしい花火の夜。鈴虫が喧騒の中に織り交ざっていた。
「あのね、私、引越しすることになったんだ」
唐突に彼女が口にした。なにか吹っ切れたような、覚悟を決めたような響きがそこにはあった。
「この街から離れて、日本からも離れて、カナダに住むことになったの」
お前はまだ顔を上げない。
「だからさ、今年が最後なんだよね花火。九月の中頃にはもう行かなくちゃならなくなってさ」
乾いた笑い声が彼女の口から漏れ出す。
「お、大人ってさ、すっごく勝手だよね。いきなり『転勤が決まったよ』とかさ。『なんとカナダに決まりました』なんてはしゃいじゃって。行きたければ父さんと母さん、二人で行けば良いのにね」
乾いた彼女の口から紡ぎだされるのは、乾ききってしまった想い。本当はもっと早く伝えたかったのだろう重い想い。彼女の声は震えている。
一通り話した彼女が、大きく深呼吸をした。
「だから、だからね、もうすぐお別れ」
アナウンスが花火の再開を告げている。トイレに行ったり、屋台に行っていた人たちが続々と帰ってくる。お前はまだ顔を上げない。上げたくない。
震えるお前の手に、彼女の手が重なる。
泣き出しそうなお前は、ゆっくりと彼女の方を向くんだ。
夜空を切り裂く花火の汽笛が真っ直ぐに上っていく。同時に白い軌跡が作られていく。
どうせすぐに消えてしまうというのに。
大地に響く轟音と共に、彼女の唇は六つの言葉を紡いだ。
向き合う二人を花火が照らしだしたんだ。
お前の気持ちだって同じなんだろう?
花火は次々と上がっていく。

388:この名無しがすごい!
07/09/02 03:00:46 XQTBvU+h
   『八月三十一日の線香花火』byジル

 夏の終わりを彩る線香花火は、あまりにはかなく―
  
 病院のそばの公園で、車椅子に座っている少女の前に、少年が跪いていた。
 車椅子の後ろには、少女の母親らしき女が二人の邪魔をしないよう、静かに立っていた。
「ごめん、花火師はやっぱり夏が稼ぎ時だから、休みがもらえなくて。でも、いろんなところに行ったぜ」
 花火、どうだった……
 かすかな少女の声を聞き逃すまいと、少年は耳を寄せる。
「ああ、俺、まだ修行中だからさ、親方の言うとおりに走り回ってるだけだった。でも、やっぱり真下から見る花火はすごいんだぜ。光と音が同時に届いてさ」
 真一の作った花火、見たかったな……
 去年の夏、一緒に花火を見たころの面影が欠片もない少女の顔から目をそらさず、少年は無理やり笑う。
「さすがに一年目じゃ、作らせてもらえないさ。でもさ、来年、お前が元気になったら―」
 真一の花火、見たかった……
「見れるさ。それよかさ、マコ、線香花火も好きだったじゃん。打ち上げ花火は無理だけど、これくらいなら」
 真一はバッグから数本の紙縒りを取り出す。長さも太さもばらばらのそれは、暗い街灯の下、確かに線香花火のように見える。
「ほら、手を出して」
 震えながらも差し出された骨ばった少女の指に、そのうちの一本をつまませる。
「ちゃんと持ってろよ」
 そのふくらんだ先端に、ライターの火を近づけて―
 わあ。
 少女と母親の声が重なった。
 ぱっ、ぱっ、と飛び散る火花は、見慣れたオレンジ色ではなく、鮮やかなピンク色だった。
「マコ、ピンク好きだろ? 苦労したんだぜ、この色を出すのは。赤色を出す硝酸ストロンチウムにさ―」
 説明をしかけて、真一は口をつぐんだ。やせ細ったためか、もともとつぶらだった彼女の瞳は、余計に大きく少女の顔を印象付けている。その奥に、じっと線香花火を見つめる瞳に、ピンクの火花が色を添えていた。
「来年はさ、きっとこの色の花火を、打ち上げ花火をさ、上げてやるから。だからマコも元気になって、見に来てくれよ」
 母親の、押さえ切れない嗚咽がもれ聞こえる。だけど少女は、線香花火から目をそらなかった。
 丸く膨らんだ火球が、しゅっ、しゅっ、と音を立てて、細い光を撒きはじめる。
 もう……終わり……
「終わりなもんか。まだまだたくさん作ってきたんだから」
 線香花火の吐き出す火線は、その数を徐々に減らして―
 ぽとり。
 まだ燃え続ける線香花火が、力を失った指から落ちた。
「マコ? まだ、花火はあるぜ? なあ、マコ!」

 はかなく散る火花は、秋の香りのする風を淡く照らして、ぽとりと落ちた―

389:この名無しがすごい!
07/09/02 03:35:26 i3ADHtu2
>>387>>388
二人とも乙
夏の終わりが身にしみる…


今回は9は書かないのか?楽しみにしてるんだが

390:( ゚Д゚)<線香花火 ―アフォな会社の話―
07/09/03 00:50:17 kMbjBcug
「で、これは何なんだ」
「あ、はい。えっと……線香花火……ですね、はい」
「そういうことを聞いているんじゃない!」
部長の怒声が部署の空気を一変させる。
「どうしたらこんなことになるかを聞いているんだ、私は」
和気藹々としていた空気は、部長と、対峙する一人の社員とが一気に変えてしまったのだ。残りの社員たちの目が二人に集まる。
「私はお前に花火を買ってくるように頼んだ。今夏の他社の在庫がどうであるか探るためだ。しっかり頼んだはずだ」
部長は目の前の社員を睨み、続ける。
「それが、何だこれは」
部長は段ボール箱いっぱいに詰め込まれた線香花火を掴み取ると、その途方もない量を前に目を閉じた。
「なあ、どうやったらコンビニで線香花火だけこんなに買えるんだ」
社員を見る。
「何とかお願いしました」
「そんなことを聞いているんじゃない!」
再び怒声が飛ぶ。
「コンビニで花火を買ってこいと言われて、どうして線香花火だけ買って来ることができるのかと聞いているんだ」
部長は力なく椅子に座り込む。机を堂々と陣取る段ボール箱を見て頭を抱えた。
「こんな物……どうするんだよ……」
「二十万しました」
「聞いていない!」
部長の憎しみに染まった瞳が社員を射抜く。危機迫る表情だった。
「部長、花火、しましょうよ」
社員が臆びもせず答えた。
「花火しましょう。こんなにいっぱいあるんだし。夏の終りに一花咲かせましょうよ」
「お前はもう会社に来るな!」
これが最後だと言わんばかりに、部長が吠えた。社員はしょんぼりと下がっていった。
「……こんな物っ!」
段ボール箱が机から落ちる。線香花火が宙を舞う。箱は裏返り、辺りに線香花火の海が出来た。
ここに至り、部長はある発見をする。段ボール箱の裏に『誕生日おめでとうございます!』との文字が。
部長はよく分からないままに、顔を、狐に抓まれたような情けない顔を上げた。
クラッカーと祝福の声が部署に響きわたる。
部長はようやく、今日は自分の誕生日だと気がついた。

391:この名無しがすごい!
07/09/04 00:58:26 kv15JEOR
壁|Д゚)コソッ

( ゚Д゚)<お題がわんさか出来てしまったので、急遽始動、平日お題!

『ペルソナ四重奏』
『フェイトという名の電子脳』

( ゚Д゚)<お気の召すままに料理しちゃってください。

壁|=Зサッ

392:この名無しがすごい!
07/09/04 03:45:04 q4URKSXr
  『フェイトという名の電子脳』byジル


「それで、この金食い虫は、なにが今までと違うのかね?」
 狷介な表情をした男が、モニターとキーポードの横に立つキース・アーヴィングに尋ねた。電磁的に無音の状態に置かれたその部屋は、ただエアコンの音だけがわずかに聞こえている。
 部屋の中に入る白衣を着た研究員たちも、このプロジェクトの最終局面とあって、真剣な面持ちで二人を見つめていた。
「はい、エマーソン上院議員。このフェイトは、わが国のみならず、世界中のすべての観測機器にアクセスし、その情報から精密に未来を予測することができます。
これは量子的な揺らぎをリアルタイムの観測により収束させ、さらにメルヴィル博士による画期的な、不確定性とカオスの干渉と打ち消しという理論によって―」
「ああ」
 上院議員は、眉間を二本の指で揉むようなしぐさをすると、キースの口上をさえぎった。
「私は頭痛もちなんだ。難しい話は結構。肝心なのは、その未来を予測するという与太話が、どれほどわが国の役に立つのかだ。どうなんだね?」
 キースは、その言葉に気分を害した様子もなく、かえってにやりと笑って見せた。
「それは、あなたがお持ちのはずの大統領令によって、フェイトがウェブに接続されれば、すぐにでもお見せできると思います」
「分かった。始めたまえ」
 上院議員がうなずくと、キースは右手を軽く上げた。それを合図に、一人の研究員が、キーボードをはじく。
「ふむ。何も変わらないじゃないか」
「いえ。今、フェイトは未来を見通す目を得ました。もしよろしければ―」
 キースは体を半歩ずらすと、芝居がかったしぐさで上院議員をモニターの前に導く。
「お好きな質問を。それで、フェイトの力がはっきりすると思いますよ」
「ふむ……。口に出せばいいのかね? では、私は、明日の朝食で、なにを食べるか当ててみてくれ」
 その質問に、キースは苦笑する。
「ミスタ エマーソン。確かにフェイトは、人の心理による蓋然性すら排除することができますが、それは―」
「ん? 何か答えたようだぞ」
 まさか。キースはモニターを振り返る。予算獲得のために、フェイトの性能はかなり誇張してある。個人の意思で変更しうる未来など、
予測することはいかにフェイトでも不可能だ。そのような問いには答えないようにプログラムされているはず。
<あなたは、明日の朝、朝食は食べない>
 しかしモニターには、その文字が確かに表示されていた。
「なぜだね? 私はこの四十年、一度たりとも朝食を欠かしたことはないのだが」
 上院議員は、嘲笑を隠そうともせずに重ねて問うた。キースは周囲の研究員に目を向ける。みなも困惑しているようだ。
「あー、上院議員。今日のところは」
<なぜなら、あなたは今から20秒後に、身体を二つに分断されて死ぬからだ>
 そしてモニター上に、20からのカウントダウンが始まる。19,18……

(to be continue)


393:この名無しがすごい!
07/09/04 03:46:41 q4URKSXr
「ばかばかしい。キース君。大統領には伝えておく。このようなおもちゃにこれ以上予算をつぎ込むことは許されないと、な」
 とめる間もなく、上院議員はきびすを返した。分厚いドアが音もなく開き、彼がそれをくぐったその時。
 ドアがギロチンが落ちるかのようなスピードで反転した。
 ぐぁ。
 悲鳴すら上げないまま、上院議員の身体がドアに挟み込まれる。それでもドアはじりじりとその隙間を狭め続けた。
「おい、どうなってるっ! 早くドアを開けろ」
 怒鳴るキースに、研究員の悲鳴交じりの返事が聞こえた。
「駄目です。環境コントロールがハッキングを受けています。制御できませんっ!」
「ハッキングだとっ? いったい誰が」
 キースは、はっと振り返った。モニターの文字が、ちょうど0になった。それと同時に、ドアが完全に閉まった、重い音が響く。
「まさか……」
<私の語る言葉は、既定の事実である>
「フェイト?」
 確かに、上院議員はフェイトの言ったとおり、身体を二つに分断されて死んだ。
 しかしそれは……
「所長! またモニターに」
 研究員に言われるまでもなく、キースは気づいていた。モニターに現れた新たな文字に。
<人類滅亡まで、後20分35秒>
「くそっ。フェイトを止めろ。回線を遮断しろっ!」
 とたんに、室内灯がすべて消えた。モニターの明かりだけが、みなの青ざめた表情を照らす。
「駄目です。受け付けません」
「くそっ。俺たちはどうなるんだ」
<室内の人間が全員窒息死するまで、あと3分43秒>
 急にエアコンの音が大きくなった。キースの耳を激痛が襲う。
「な……まさか、室内の空気を吸い出しているのか」
 研究員たちが次々と倒れていく。急速な減圧に身体が悲鳴を上げる。
<私の語る言葉は、既定の事実>
 朦朧となる視界に、その言葉が映る。
「お、お前はな、なんだ……」
 しかしキースは、その問いの答えを見ることはできなかった。
 ただ、静まり返った室内を、モニターに浮かぶ文字だけが照らし出していた。
<私の名前はフェイト オ コンプリ。私の言葉は、既定の事実>


『fait accompli』 既定(既成)事実(新グローバル英和辞典より)


(END)

394:ジル
07/09/04 03:47:53 q4URKSXr
一人SF祭り一番乗りw
お題を書くたびに長くなるわねorz


395:この名無しがすごい!
07/09/04 21:49:35 kv15JEOR
( ゚Д゚)<ジルさん、一人SF祭りお疲れ。いやー、早いよ。こんなに早く書くとは思わなんだ。面白いしね!自我を持った電子脳がどんな思考をするのか、創作意欲がかきたてられます。

( ゚Д゚)<両断される上院議員のとこが物足りなかったかな。ドアは両側に開くのか上に持ち上がるのか、開けってことだから前者だろうけど混乱してしまった。切断も腰から上下か、足から頭まで前方と後方で断たれたのかが気になっちゃった。血も欲しい。

( ゚Д゚)<でもでも、長くならないようにすると大変だから、仕方ないかも。話の後、地表で起きる核大暴発の情景が恐ろしいです。

396:この名無しがすごい!
07/09/05 03:55:17 rpxXrmf3
ありがと(*'-^)-☆
今回はフェイトと電子脳が既定事実って言葉でつなげられたからね。
違う名前だったら書けなかったかも。

ドアのところは言い訳はしないわ。一応片側にスライドするドアのつもりだったんだけど。
それにしても、血が欲しいの?
バンパネラの系譜なのねw

397:( ゚Д゚)<ペルソナ四重奏
07/09/05 19:24:31 Q/jHI7H9
一昨日隆司と一緒に寝た。
高校に入って出会った隆司。一目見た時から大好きだった。
だから嬉しかった。狭い部屋で二人。ほてる顔の虚ろな瞳に迫られて。愛ってこんなに気持いいんだって、初めて分かった。

昨日父さんに殴られた。
隆司の家から帰ったのが午前四時。リビングで両親は起きていた。
騒ぎ立てる父さんと、泣きわめく母さん。何だか無償に苛々して、うざったくて。言葉が転がり落ちてしまった。
「お前らみたいな親を持つ身も考えてみなよ」
気がついたら頬が痛かった。父さんも母さんもホントに嫌い。死んじゃえばいいのに。

今日、迷子になって泣いてる子を見掛けた。耳障りな声がとても気に食わなかった。ただ欲しがるだけの弱者の声。
何もしないで、無視して通りすぎた。そのまま社会を知ればいい。深みを覗けばいいんだ。

明日、私は自殺する。唐突に死んでやる。
だって詰まらないから。面白くないから。だから世界を呪って死んでやる。こんな馬鹿みたいな世界を恨んで死んでやる。それが私の復讐だから。たった一つの手段だから。

そんな、そんな私の仮面たち。歪で不器用で素直になれない仮面たち。
きっと明後日、私は仮面を纏う。嫌われないために。壊さないために。隠すために。逃げるために。仮面から見る世界を、仮面が面した世界を生きていく。

そうして私は生きていく。

仮面は重なり響きあい、歪んだワルツを紡ぎ出す。

398:この名無しがすごい!
07/09/05 19:27:36 Q/jHI7H9
>>396
( ゚Д゚)<違うぞ。断じて違う。バンパネラの譜系などてはないぞ。


( ゚Д゚)<多分……

399:この名無しがすごい!
07/09/06 00:17:59 45v48wKb
>>398
なんだ、つまんないw
>>397
感情がちょっと唐突かもね。
それと本音と建前の区別をはっきりさせたほうが、
『仮面を纏う』感じが出ると思うわ。

でも、この長さでうまくお題は表現できてると思う。
あたしには無理だわ。


ほかの人、書いてくれないのかしら……

400:この名無しがすごい!
07/09/06 00:23:01 3Itp7TqE
9が来ないね…
鴉と案山子の話、結構良かったから期待してるんだが…

401:この名無しがすごい!
07/09/06 00:47:18 45v48wKb
こないわね。
9さまだけじゃなしに。
みんなこのスレの存在を忘れてたりして。

402:この名無しがすごい!
07/09/06 00:56:03 dFwXLSyD
フェイトを書こうと思うのだが、良案が思いつかん

403:この名無しがすごい!
07/09/06 01:14:51 45v48wKb
頑張って!

404:( ーДー)<今日は疲れました……
07/09/06 16:57:18 V3n0+gws
>>399
ありがと。感情とか落ち着いてないって、読んでみて思った。建前と本音の区別は、もっとはっきりさせた方がよかったね。よく分からない話になっちゃった感じがする。

>>402
頑張れ。それっぽくなれば大丈夫さ!

405:( ゚Д゚)<平日お題は金曜日、二十四時までです。
07/09/07 02:25:08 8RsGey8a
今日、主人が飼っていた犬が飼い犬が死にました。
日々衰弱していった身体。弱々しい鳴き声。
最後は主人の腕の中で死んでいきました。

犬が死んだのは、夜が深くなった、寒い寒い秋の一夜のことでした。
死ぬ前日、犬はなぜか昔のように元気になりました。室内を無邪気に走り回り、毎日飽きもせずにくわえて遊んでいた綱を主人の下ヘと運んでいくのです。
尻尾を振って見上げる瞳。主人は、その眼にいっぱいの涙を溜めながら、笑いながら犬と遊びました。
たった数分の過去へのタイムトリップ。遊び疲れたのか、主人に寄り添い小さく丸まった犬の表情は、とても幸せそうでした。
犬の身体を撫で続ける主人の姿は、まるで一枚の絵画のようでした。

そんな犬が俄かに死の淵に面し始めたのは昨晩の九時ごろでした。
急に荒くなった呼吸。痙攣する手足。主人は興奮しながら私に何かを命じました。
しかし、呂律の回らない主人の悲痛な叫びは、命令として理解することは出来ませんでした。
死に際の犬に必死に抱きつく主人。どんなに声をかけてももう届くことは難しいだろうに……。
三時。犬はとても頑張りました。でも、やはり駄目でした。
力なく横になった犬と、傍らに寄り添う主人。じっと犬を見つめていました。私はただ遠巻きに、ふたりを見ていることしか出来ませんでした。
そして、その時が来たのです。
犬が激しく痙攣し始めました。
主人は身体を懸命に摩りながら語りかけていました。
「頑張れ。頑張れ。死ぬんじゃないぞ」
空っぽの笑顔で囁いていました。
私は思わずふたりに背を向けていました。きつく目を閉じました。暗闇の中に、不規則なあえぎと主人の声だけが飛込んできました。
それがしばらく続いて、背後で一度大きな鳴き声がしました。力強く、凛々しく、逞しく、犬が吠えたのです。
暗闇の中が静かになりました。
私は目を開けて、ゆっくり振り返りました。だらしなく舌を床に投げ出した犬に主人が抱きついていました。
ありがとう。
もう二度と自らを見つめることのないガラスのような瞳に向かって、主人は呟いていました。
何度も何度も繰り返し呟いていました。

一度だけ元気になったあの姿が、一度だけ吠えた最後の声が、主人が繰り返した「ありがとう」という涙の言葉が、私の中で渦を巻いて荒れ狂っています。
主人は犬を火葬しました。そしてあの海に、初めて出会ったあの海に還してあげました。
無言で立ち去る主人の背中。私はひとり海を眺めています。
身体の一部が抜けて、ぽっかり穴が空いてしまったような、満たされない、何かが足りない気分でした。
今はそれがとても愛おしいのです。
運命と名付けられた私の電子脳。
私に“こころ”はあるのでしょうか。
運命は変わっていくのでしょうか。
早朝の海風はどこか冷たく―。

406:この名無しがすごい!
07/09/08 00:03:52 aDdTZVly
( ゚Д゚)<台風、大丈夫でしたか?週末お題

【ダンシングチェーンソー】
【台風一家】

( ゚Д゚)<自然災害には十分気をつけて

407:この名無しがすごい!
07/09/08 05:34:39 YXdnYvNF
ダンシングチェーンソーを書きかけたんだけど、挫折。
あたしにコメディは無理だわ。書いててつまんない。

408:( ゚Д゚)<イヤー、出しといてあれだけど、書きにくいね
07/09/08 19:05:26 aDdTZVly
>>407
ダンシングチェーンソーでコメディでありますか……
自分思いついたのは猟奇系の長くなりそうなのやつだ。長くなったら投稿したらいいんだども、書くのがね。短くするには違うネタを仕込まねば。

しかしみんなあんまり書かないよなぁ。前はあんな風に書いたけど、寂しいもんです。

409:ダディ
07/09/08 19:45:06 bmyzQVO0
ダンシングチェンソー、今夜にあげるですよノシ
しばしお待ちを

410:( ゚Д゚)<台風一家①
07/09/08 22:37:57 aDdTZVly
ロビンソンとパパとママは、その日近所にあるスーパーへ買い物に出かけていました。
店内を満たす軽快な音楽と客の話声。カートをママの歩調に合わせるパパは、楽しそうに食品を選ぶママと、二人の周りではしゃぐロビンソンを優しく見つめています。
どこにでもいる、普通の家族のように見えました。
その時までは。
それは一通り食材を品定した後。ちょうど惣菜コーナーに差し掛かった時のことでした。
「ママ、僕唐揚げ食べたい」
ロビンソンがそう言って唐揚げを一つ摘み上げてしまったのです。
「ロォビンソォン!」
パパの鉄拳がロビンソンの顔面を強打しました。周りにいた客たちは突然のことに言葉を失います。直後に惣菜の海に沈んでいくロビンソン。ようやく悲鳴が沸き起こりました。
「ロビンソン、なんて汚いことをするんだ。素手で食べ物をさわっちゃいけないって、一日二十回は復唱させているだろうに」
パパの声は至って落ち着いていて、倒れたままのロビンソンに突き刺さります。
「パパ、ごめんよパパ」
ロビンソンは小さな声で返事をしました。
「ちょっとちょっと、お客さん。なにしてくれてるんですか。ああ、ああ、ああ。こんなにしちゃってぇ。ホント、どうしてくれるんですか」
従業員の知らせを受けてか、やって来た店長が青筋を立てて巻くし立てました。パパに詰め寄ります。パパは困ったように笑いながらひたすら謝っていました。
だからでしょうか、誰もがその声を聞き逃していました。震える声。怒りに包まれた声。小さな小さな、しかし破壊力抜群の爆弾が炸裂しようとしていたのです。
「あのですね、すいませんホント。ちょっとカッときてしまってですね。その、家では拳で伝える教育というものを―」
「そんなことを言ってるんじゃないんだよ。どうしてくれるのさ、この惣菜の山。全部残飯行きだよ」
「ああ、それは災難でしたね」
「災難でしたね、じゃないよ! あんた、あんただよ原因は。どう責任とってくれるんだね」
「いやぁ、責任ったって、私にも悪気があった訳ではありませんし……」
いや、それでもお前の責任だろ。周りの客たちは心からそう思いました。
「パパ……」
不意にママがパパの服の袖を引っ張りました。

411:( ゚Д゚)<台風一家②
07/09/08 22:38:57 aDdTZVly
「あ、ママ。ママからも何とか言っておくれよ。店長さん、話が全く通じないんだ」
振り返ったパパ。その顔面に大根が投げつけられました。まっぷたつにへし折れる大根。パパはそのまま倒れます。店長が驚いて声を荒げました。
「ちょっ、あなた、なんてこ―」
「うるさいのでございます!」
店長の顔面に、見た目はひ弱なママの強肩から放たれた超スピードの南瓜が命中しました。後に店長がこの時鼻を折ったことが判明します。
「パパ! あなたは何でいつもこうすぐに暴力に訴えるのですか」
倒れこんだパパに跨り、ママは襟を掴んで叫びます。
「これじゃあロビンソンは不良になっちゃうって何度も言ったでしょう」
お前が言うな。客たちは心の中でつっこみました。
「しかしだがね、ママ」
驚いたことにパパが返事をし始めました。気を失っていなかったのです。超人です。
「男には時に拳で語り合うことも必要なんだよ、マイハニー」
そういってパパは右手の親指を真っ直ぐ立てて、白い歯を眩し過ぎるくらいに輝かせました。
「そんな男の事情は……」
ママが左手で買い物籠をあさります。
「知りません!」
一尾九十八円の見事な秋刀魚がパパの顔の上で踊りました。
「あの子には、優しくて思いやりのある子に育ってほしいの」
ママの声が細くなります。
「んふ~、それには僕も賛成だよ。でもね、でも……聴いてくれるかい、マイスウィートエンジェル」
「いや。聴きたくない」
「耳を塞がないでおくれベイビー。涙は君には似合わないよ」
パパが優しくママの頬を撫でました。
「喧嘩はしないで!」
ここになってようやく登場。ロビンソンが大声で訴えました。客たちにはもうなにがなんだか。
「僕いやなんだ。僕のことでパパとママが喧嘩するの。お願いだよ。仲直りしてよ!」
「ロビンソン……」
ママが潤んだ瞳でロビンソンを見つめます。
「帰ろう、お家に。今日はシチューなんでしょ」
笑顔でロビンソンが手を差し出しました。
「ロォビンソォン!」
天を貫かんばかりのアッパーが、ロビンソンの顎を強襲しました。商品棚を軽々飛び越え、隣のレトルト商品コーナーに落下するロビンソン。壮大な音が響きます。
「あれほど食品は大切にしなさいと言ったのに……」
ゆらり立ち上がるパパはまるで鬼のようで。
「カキフライを踏むとはどんな根性しとるんじゃい!」
いや、それは不可抗力だろ。客たちはそろって右手の甲で隣の人の胸を叩きました。
パパが棚を迂回してロビンソンの下へ向かいます。
「パパ……」
一人残されたママ。地鳴りのような怒りの呟きをもらしました。

この後、客たちは全員避難。従業員も逃げ出しました。スーパーの中では嵐が吹き荒れていたという話です。

412:ダディ
07/09/08 22:46:16 FIhJEuhW
>>409
ええと…君はだれ?
自分は今、イラスト仕上げてるので、お題には参加してないんだけど…

トリつけたほうがいいのかなあ…

413:この名無しがすごい!
07/09/09 22:31:27 OHQTjvfJ
【ダンシングチェーンソー】

 今日はジェシカの家でホームパーティ。ジョンはとっておきのおめかしをして耕耘機に乗り込んだ。
「今日こそはキャサリンをゲットだぜ!」
 ハンドルを握る手に自然と力がこもる。ジョンの耕耘機はあぜ道を耕しながらジェシカの家に向かって出発した。
 どこまでも広がる大地を進む耕耘機からタイヤが一つ取れた頃、ジョンはジェシカの家に到着した。ジェシカの家の庭では、すでに大勢の人が鍬を片手に地面を穿り返している。もうすでにパーティは始まっていた。
 タイヤの取れた耕耘機で蛇行運転しながらジェシカの家の敷地を耕していたジョンの元に、パーティの主催者であるジェシカが走って近づいてきた。
「ハーイ、ジョン。今日は来てくれてありがぶぢゅび」
 ジェシカはジョンの耕耘機に巻き込まれてミンチになった。肥沃な大地にジェシカの血と肉が吸い込まれていく。パーティはいきなりクライマックスだ。
 テキーラを静脈注射したようなデタラメ走行の挙句、横倒しになった耕耘機から放り出されたジョンは、キャサリンの前に頭から着地した。
「ハイ、キャサリン。機嫌はどうだい?」
「ジョン、今日は最高よ!」
 キャサリンは倒れているジョンの頭に鍬を振り下ろしながら、恍惚とした表情で答えた。
 ミンチが追加されて盛り上がるパーティ。いよいよダンシングチェーンソーのコーナーだ。
「さあみんな! チェーンソーをたくさん準備してきたよ! レッツ、ダンシン!」
 ジェシカの関係者と思われる人物が、ダンプの荷台にチェーンソーを満載したままパーティ会場に突入してきた。ダンプは3人轢いて5人潰した後、転がっていたジョンの耕耘機にぶつかって横転、そのまま派手に炎上した。
 パーティの客たちは歓声を上げながら炎に包まれたダンプに群がり、チェーンソーを手にとった。そこかしこからチェーンソーのエンジンが目を覚ます音がする。
 炎に包まれたパーティの客が、魂の振動で唸りを上げるチェーンソーを振り上げた時、燃え盛る炎がガソリンタンクに引火してダンプ大爆発。チェーンソーと人間は部品と手足を撒き散らしながら宙に舞った。
「とっても……きれい」
 ダンプに胴体を潰されたキャサリンが、迫り来る炎を前に血の塊と共に声を吐き出す。
 血と肉を大地は飽く事無く取り込みつづけた。炎は全てを灰にして、さらに大地は肥沃になる。
 来年も豊作だ。

414:この名無しがすごい!
07/09/10 02:01:46 q2SbMzeV
>>413
ちょっ……なにこの滅茶苦茶な感じ。良い。良いよ。スプラッタなのにコミカルな内容に少し笑った。

415:この名無しがすごい!
07/09/10 03:35:36 OwT0BjCy
>>413
あたしもそういうふうに書けたらいいなぁ。
でもないものねだりをしても仕方ないから、いつもの感じで。
長いわよーw

416:この名無しがすごい!
07/09/10 03:36:46 OwT0BjCy
   「ダンシングチェーンソー」byジル
「親父ーっ! かあさーんっ! 孝太ーっ!」
 まだ傷跡の痛々しい山肌に、男の悲痛な叫びがこだました。

 その年、日本列島を直撃した大型台風は、各地に爪あとを残して去っていった。
 この寂れた山村も被害を受けた。崩れた山肌は土石流となって民家を遅い、川を埋め、道路を遮断した。
 最も奥まった場所に住むその一家も例外ではなかった。夫婦と息子が一人、林業を生業とする彼らが住んでいた家も。
 嵐が過ぎ去り、彼らを心配して駆けつけた村人たちが見たものは、土石流の下にわずかに覗く、家の残骸だけだった。

 それから一週間後、ようやく町とを結ぶ県道がつながり、復興の槌音が響き始める。
 しかし、今はじめて現実を突きつけられた男の耳に、そんな音は届いてはいない。
「陽一。泣いていても始まらん。しっかりしろ」
「お前になにがわかるっ!」
 陽一は肩に乗せられた幼馴染の手を振り払った。
 林業の傍ら、ログハウスビルダーとしても全国的に名を知られる陽一は、その日雑誌の企画のため村にいなかった。もし俺が残って入れば。
 しかし、激情に任せてにらみつけた幼馴染の目は、赤くはれていた。
「わかるさ。俺も家族を流されたからな」
 消防団の一員だった彼は、危険を承知で嵐の中を走り回り、そのおかげで、ただ一人難を逃れた。
 一番守らなければならなかった家族を守れなかった。すぐ近くにいたのに……
 その悔恨は、陽一のそれすら超えるだろう。
「賢治、何人死んだ?」
 一瞬の激情が過ぎ去り、陽一は幼馴染にぼそりと尋ねた。
「二十七人だ」
 賢治は、一人ひとりの名を上げてゆく。狭い山村だ。名を聞くだけで、日に焼け、額に汗を浮かべた彼らの笑顔を思い浮かべることができる。
「お堂も流されたのか?」
「ああ、羅漢様も一切合財な」
「そうか。なあ、チェーンソーを貸してくれないか」
 唐突な陽一の頼みに、賢治は聞き返す。
「なにをするつもりだ?」
「お堂の百羅漢は、この村の唯一の誇りだったからな。俺みたいな奴が彫ったものでも、ないよりましだろう」
 賢治は、陽一に会ったときに伝えようと思っていた決意を飲み込んだ。
 材木の集積場も流され、植林したばかりの苗木もみな流された。この村はもう終わりだ。家族もいない。だったら、村を捨てよう。
 しかし、ログハウスビルダーとして、村を捨てても生きてゆくことのできる陽一ですら、村のために何かをしようとしている。
「お前のチェーンソーアートは最高だからな。出来上がればみんな喜ぶさ」
 賢治は、復興の手の届いていない道をここまでつれてきてくれたジムニーの荷台からチェーンソーを取り出すと、燃料タンクと一緒に陽一の足元に置いた。
「ここでやるのか?」
「ああ」
「そうか。後で飯を持ってきてやるよ」
「いらない。二十七の羅漢像を彫り上げるまでは」
「そうか……」
 陽一の節くれだった腕がチェーンソーをつかむのを横目に、賢治はジムニーに乗り込んだ。
 復興までの道のりは、まだ遠い。


 その夜、月に照らされた山間の村に、一晩中チェーンソーのエンジン音が響き続けた。
 それはまるで、山々が泣いているかのようだった……

(つづく)

417:この名無しがすごい!
07/09/10 03:37:24 OwT0BjCy
 翌朝、わずかな、しかし泥のような眠りから目覚めた賢治は、その音が途絶えていることに気づいて、急いで陽一のもとへと向かった。
 あちこちを落石と土砂にふさがれ、はかのゆかぬ道のりに舌打ちをしながら、ジムニーを操る。
 そしてようやくその場所にたどり着いた賢治が見たものは、ずらりと並ぶ、高さ一メートルほどの羅漢像たちだった。
 車から降りた彼は、それらを一体一体見つめながら歩く。
 細谷さん……幸田のばあさん……川西んちのたあ坊……
 見覚えのある、だけど今は思い出の中にしか残っていない表情。仕草。
 お、おふくろ……宏子っ!
 賢治は、その二体の前に跪いた。老婆と女の像は、まるで嵐なんかなかったように、少しおどけた様子で笑っていた。
 そのとき彼の耳を、エンジン音がつんざいた。二つの像に両手を伸ばしたまま、賢治は振り返る。
 そこには、三本の丸太を前に疲れ果て、消耗しきった様子の陽一が、チェーンソーを抱えて立っていた。
 しかし、それでも重いチェーンソーが動き出す。回転する刃が丸太に当たって、木屑を飛ばす。
 飛び散った木屑は朝日に照らされて、きらきらと舞い落ちる。そして陽一はその中で、何の迷いもなく丸太を削り続けていた。
 少しずつ、丸い頭が、肩が、伸ばされた腕が現れてくる。
 三つの丸太から、同時に三体の羅漢像が姿を現し始める。
 踊っているようだ。
 舞い散る光の中、チェーンソーは歌いながら、上へ、下へ。そしてくるりと回って。
 賢治は両手に愛する家族を抱いたまま、時間を忘れてチェーンソーのダンスに見とれていた。そして―

 踊りつかれたチェーンソーが、歌をやめたとき。

 へたり込んだ陽一を、懐かしい家族の笑顔が取り囲んでいた。

(fin)

418:この名無しがすごい!
07/09/10 16:04:02 q2SbMzeV
>>416-417
前半の最後

 その夜、月に照らされた山間の村に、一晩中チェーンソーのエンジン音が響き続けた。
 それはまるで、山々が泣いているかのようだった……

が、かなり好き。とっても雰囲気出てる。ダンシングチェーンソーなんていうお題を、こんなにも綺麗な物語にするとは。
やるな。

419:俺女<天気の知識は皆無です
07/09/10 22:57:10 cAvWU0Ll
【台風一家】

「あらお久しぶりね、あなた」
「おお、マリアじゃないか。こんなところで出会うとはな」
「それがね、今はマリアじゃないのよ。ロンワンとかいう名前が付けられたわ」
「ほう、中国あたりにでも行ってたのかい」
「そうよ、えらく仰々しい名前が付けられたものだわ」
「はは、俺だって今はジョージではなくドリアンさ」
「また不味そうな名前を貰ったわね」
「そういうな愛する妻よ。そうだ、これから一緒に新しい国へ行かないかい?」
「たまには良いわね。その後新しい子でも作りたいけど、どんな子がいいかしらね」
「もう15人目の子になるな。そろそろ、地球半分を掃除できるような強い子がいいかな?どの辺で産み落とそうか」
「最近下でうるさそうな中東のどこかで落としましょう。そろそろ静かにしないとね」
「君は恐ろしい女性だ」
「あなたこそ」

そうして、台風2号と3号は巨大な一つの新たな台風となり中東へと向かった。
そして彼らは「イーウィニャ」(嵐の神)と名付けられることになる。

420:( ーДー)<不審者騒ぎで眠れません
07/09/11 02:16:18 ZwRa8rTy
>>419
会話がうまく効いてるね。描写をしないところに味がある感じ。神さまの見た世界ってこんなのかもって思った。

421:( ゚Д゚)<今年で六年目。
07/09/11 18:57:14 ZwRa8rTy
深夜、コアなバラエティ番組の画面が、青い空のアメリカを映し出した。もくもくと煙る貿易センタービル。まもなく追突した第二機。
感慨深く、そして終わらない戦争に痛みを覚える今日。雨が降ってます!

平日お題
【あの青空に祈りを】
【サングラッチェ】

422:この名無しがすごい!
07/09/11 18:58:31 ZwRa8rTy
あ、サングラッチェは造語なので、語感から想像を膨らませてみてください

423:この名無しがすごい!
07/09/11 23:06:00 iyjbwoAz
【サングラッチェ】

「サングラッチェ……だと?」
 放課後の部室で城南高校ミステリー研究会の会長である林賢二は、手元の写真を眉間に皺を寄せて眺めていた。
「どうしたんですか? 林君」
 城南高校超常現象研究会の会長である佐々木三郎が、眼鏡の位置を右手の中指で直しながら歩いてきた。
「サン……何?」
 城南高校地球は平たい協会の会長である田村奈津美が、「NASAは間違っている」と書かれたビラを片手に林の方へ近づいてくる。
 林は写真を机の上に置き、顔を上げて他の二人へ視線を向けた。
「あのさ、いい機会だから言うけど、部の名前ミステリー研究会でいいじゃないか」
「それだとMMRじゃないですか。ここは超常現象研究会のようなきちんとした名前にすべきです」
「地球の下でナチスの残党がUFOを使って暗躍してるのに何言ってるの」
 バカ三人の意見は本題とは関係ないところで割れてしまった。
「それで、サングラッチェとは何ですか?」
 不毛な議論になりそうな気配を察知した佐々木がすばやく話題を元に戻した。
「いやいや、MMRはこの分野のパイオニアだよ? それにちなんだ名前をつけるのは自然じゃないか」
 空気を全く読まない林がグダグダの泥沼へと議論を押し戻す。
「そうよ、月には空気があって動物も住んでるのよ」
 初手からターボ全開の田村はどこかに旅立ちっぱなしだ。
「いや、部の名前はどうでもいいですから、そのサングラッチェ……」
「MMRがどうでもいいってどういう事だ!」
「金星人を馬鹿にしないで!」
 全く意味がわからないまま二対一で佐々木が押されはじめた。妙な圧力に少し後ずさりしながら眼鏡の位置を指で直してしまう。負けられない佐々木はプレッシャーを押し返すように声を上げた。
「だからサングラッチェ!」
「なんだよそれは!」
「あんたの持ってた写真よ!」
 突然現実世界に帰還してきた田村に二人は驚いて声を失った。先ほどまで騒がしかった部室を静寂が包む。
 静かな部室の隅のほうで小さく、何か紙のような物が破れる音がする。林がその音に気付いて周りを見回した。
「何の音だ?」
 林の言葉に三人が部室のあちこちに視線をとばす。「それ」に最初に気づいたのは田村だった。
「あっ、あれ!」
 田村の指差す先を見ると、御札のような物があちこちに貼られたロッカーの扉が少しづつ開こうとしていた。
「あれは開かずのロッカー。一体、何が……」
 佐々木の言葉が終わると同時に、ロッカーの扉が開ききった。薄暗い部屋の隅に置かれたロッカーの奥から人影が姿をあらわした。暑苦しいマントにうざったい長髪、病的な青白い肌に不釣合いなピンクの唇。
 その顔を見た林が驚きの声を上げた。
「あなたは……少し不思議研究会初代会長!」
 初代会長と呼ばれた男は、にやりと笑って長い犬歯を見せつけた。
「ふっふふ、サングラッチェ……謎の暗号……私のパープルの脳細胞に血の滾りが戻ってきたようだ」
 その姿をじっと見ていた田村が口を開いた。
「パープリン?」
「ふっふふ、誰がパーやねん」
 マントを翻した初代会長は、三人に向き直って、机の上の写真を指差した。
「私がこの暗号を解いてやろう。まずサングラはサングラスの事だ。ッチェは舌打ちだな」
 林が頷いている。佐々木は顎に手を当てている。田村はこっそり初代会長の周りで円を描くように十字架を何個も床に描いている。
「つまりサングラスのサイズが合わないという可能性があるわけだ」
 初代会長の身体のあちこちからシュウシュウと音を立てて煙のようなものが昇り始めた。
「この可能性を追求していく事で……あちっ!」
 突然炒った豆のように窓に向かって跳ねた初代会長は、差し込む夕日を浴びて灰になった。
 しばらく固まったままだった三人は、ほうきとちりとりで灰を集めるとロッカーに入れて扉を閉じた。
「それじゃ僕は予備校があるので」
「私はビラを撒かないといけないから」
「ああ、お疲れ」
 林を残して二人は部室から去った。林は部室を片付けた後、鞄を持って出て行った。
 後に残されたのは写真と……謎の言葉【サングラッチェ】

424:前半
07/09/12 01:41:36 +BFSP7mF
あの青空に祈りを+サングラッチェ

「こんばんは、猫さん」
「よぉ、ポンコツ」
塀の上でのんびりと体を休めていた黒猫に話しかけたのは、一体のロボット。いつものように軽口を叩きながら、猫はいぶかしげに顔をしかめた。今はまだ朝のはずなんだが。
「猫さん、お別れを言いに来ました。私はこれから機能を停止します」
機械らしい感情のこもらない口調で告げられる事実に、猫はあっけにとられた。
「おいおい、そりゃ唐突だな」
「あなたにとってはそうかもしれませんが、15年と210日前の四月三日に私が造られたときから、私には自分の寿命がわかっていました。ですので、私にとっては別段唐突でもありません」
ふうん、と猫は鼻を鳴らした。やはりこいつはロボットなのだ。猫とは感覚が全然違う。
「ところで猫さん、サングラッチェとはどういう意味なのでしょうか。私にはいまだにそれがわかりません」
「そのくらい自分で調べな」
「ありとあらゆる言語を調べました。しかし、それでもまだわからないのです」
サングラッチェという言葉は、猫が適当に言った言葉だった。このとおり、ロボットはとても真面目だ。非常にからかい甲斐がある。猫は今までにも「この世界を真に統べるのは猫なのだ」等、生真面目なロボットに嘘を教え込んで楽しんでいた。
猫はにやにやとロボットが困っている様子を見ていると、ぽて、といきなりロボットが仰向けに道路に倒れこんだ。
「どうした、足腰がもう立たないのか」
「どうやらそのようです。段々神経回路が鈍くなってきました。信号が適切な速さで送られません。停止するのももうすぐでしょう」
倒れるというよりは寝転んでいるような姿勢のまま、ロボットはうーうーと唸りながら、サングラッチェの意味を考えている。
「……猫さん」
「なんだ鉄人形」
「私は、猫さんが羨ましかったです」
「ほう?」


425:後編 長くなってスマソ
07/09/12 01:56:59 +BFSP7mF
その日は曇一つない快晴だった。青一色に澄み渡る大空を、ロボットの感情のない視覚センサーが見つめている。
「私は猫になりたかった。こんな冷たい体とは違う、暖かい肉体。こんな固い体とは違う、柔らかい身のこなし……。ねえ猫さん、もし私がこの青空に祈りを捧げたら、神様は願いを聞き届けて下さるでしょうか?」
「さあな。神様なんてのはもう爺さんだ。とっくに耳だって遠くなってるだろうよ」
「ねえ猫さん、サン―ッチェという―意味―は」
ロボットの声は、それきりふつりと途絶える。かろうじてまだ人工頭脳は生きているようだったが、もう声を出すことが出来ないのだ。
「もう声が出せないのか?仕方がない。サングラッチェっていうのはな―」
猫はしぶしぶと口を開く。

「お前の名前だよ、鉄人」

まだ聴覚センサーが生きているかどうかはわからない。けれど猫はロボットに語りかけた。
「俺様が考えてやった名だ。世界で一番いい名前だぞ。向こうに行ったら神様にでも自慢してやれ」
ロボットの頭についているライトが点滅する。ちか、と微かに数秒間。
そうして。
その後ぴくりとも、ロボットが動くことはなかった。
「逝ったかサングラッチェ。……お前のこと、そんなに嫌いじゃなかったぜ」
塀から道路へ飛び降りた猫は、ぺろり、とロボットの顔を舐めた。金属のロボットは冷たくて、少ししょっぱい。まるで、涙のような味だ。
「じゃあな」
視覚センサーが内蔵された「目」の部分に灯っていた光は既にない。
けれど猫にはそのとき、無表情なロボットが笑っているように見えた。

426:東夷人
07/09/12 10:18:43 0E+Dvi7n
>>349
筆者としては「ディシプリンもの」として読んでほしい。

427:( ゚Д゚)
07/09/12 16:46:18 7vcQ5ltN
>>423
初めてかな。お題にてミステリーっぽいような、でもコメディ色全開の作品は。
サングラッチェという文字で悩んでいた林が突然話題を変えたり、それに部員たちがのってしまうという、一見するとグダグダで読みにくい文章なんだけど、逆にそれが良い。
気楽に読めて楽しめる作品だと思った。

>>424ー425
ロボットと猫の優しいお話やった。淡々と進む二人の会話と、最後のしょっぱい金属の体っていう描写が好き。
ただ、後半の出だし、『その日は~』が合ってない気がした。物語の始まりならいいんだけど。
何だか惜しいと思う。


しかしながらお二人さん、お疲れ様でした!



428:この名無しがすごい!
07/09/13 04:00:55 czXzfjRB
あの~。一応書いたんだけど……
でも、長いの。
今まで以上に長いの。
お題も微妙なの。
それでもいい?
いいわよねっ!


429:この名無しがすごい!
07/09/13 04:02:57 czXzfjRB
   「あの青空に祈りを」by ジル

 日本初の往還型シャトル「おおぞら」のコックピットを、突然の衝撃が襲った。
「なっ!」
 パイロットの大沢は食べかけの宇宙食を放り出すと、懸命にシートにしがみついた。
 コンソールに赤い灯が、いっせいに灯る。
―こちら、種子島コントロール。なにがあった。
「大沢、なにが起きた!?」
 無線の声と同時に後部ドアが開き、もう一人の乗員である、谷口がよたつきながら入ってきた。
 フロントシールドの向こうを、星星が、そして夜の面を向けた地球が、シャトルの周りをぐるぐると回っている。
 大沢はそれに答えぬまま、姿勢制御ユニットをアクティブ。噴射剤である窒素の残量を確認して、ラン。
 数秒のかすかな噴出音の後、シャトルは安定を取り戻した。
「おい、大沢」
「わからんっ。だが、何かにぶつかったとしか……」
 二人の脳裏を、最悪の予想がよぎる。スペースデブリ。軌道上に捨てられた、性急な宇宙開発のつけである、ごみくず。
―こちら、種子島コントロール。おおぞら、応答しろ。なにがあった。
「今調査中だ! 黙っててくれっ。……あ、いや、そちらでは何か分かるか?」
「見てみよう」
―そちらからの信号がすべて途絶えた。なにが起きた―
 谷口がコ・パイロット席に着き、ロボットアームの操作パネルを開く。モニターに、アームの先端に付けられたカメラの映像が映る。
 二人はそれを食い入るように見つめた。
 カーゴルーム。異常なし。翼上面。異常なし。翼下面―
「あ……」
「なんて、ことだ」
 翼の付け根に張られた耐熱タイルが大きく割れ、はらわたのように断熱材がはみ出していた。
―おおぞら。応答しろ。どうした。
「こちら、おおぞら。……再突入は、不可能だ」
 大気圏に突入する際、シャトルの底面は、1600度を超える高温に包まれる。
 もちろん、コロンビアの事故を教訓に、大空には補修財が積まれているし、二人もそのための訓練を十分に受けている。
 しかし、断熱材までが見えているということは……
 損傷はタイルの下、構造体にまで及んでいるはず。補修は、不可能だ。
 状況を種子島に伝えると、二人は口を閉ざしたままシートに埋もれた。
 日本初の国産有人シャトルの搭乗員に選ばれたときから、覚悟はしていた。
 そして、どのような状況に陥っても対処ができるよう、厳しい訓練を重ねてきた。
 それなのに……
 宙に浮かぶ塵屑ひとつで、このざまだ。
―こちら種子島コントロール。おおぞら。聞こえるか。
「ああ、聞こえる」
―NASAと連絡を取った。軌道を修正してISS(国際宇宙ステーション)へ向かえるか。
 種子島と更新していた大沢は、思わず谷口を振り向いた。そうだ、その手があった!
「谷口、プロペラント(推進剤)の残量は」
「月にだって行けるぜ!」
 しかし、盛り上がりかけた二人を、新たな警報が邪魔をする。
「くそっ! 今度はなんだ?」
「大沢……」
「だからなんだっ!」
「酸素が……」
<Pressure decrease>
 酸素タンクの、圧力減少。酸素が漏れている。
「種子島コントロール! ISSとのランデブーまで、どれくらいかかる!」
―ちょっと待ってくれ、すぐ出る……軌道を完全に合わせるには、おおぞらの推力と現在の軌道から―
「何分だよ!」
―二十……八時間だ。
 大沢はコックピットの天井を見上げた。谷口がシートを殴りつける音が響く。
 間に合わない。修理に向かおうにも、破損部分の気密は当然失われているだろう。EMU(船外活動服)を着用したとしても、それまでにタンクは空になる。
 大沢は、はっと顔を上げ、そしてすぐに肩を落とした。確かにEMUには酸素がある。しかし、すでに通信衛星の設置と修理というミッションを終えたシャトルには、予備のタンクしか残されていない。
 ミッション二回分。一人当たり、わずか七時間の酸素しか。
 大沢は、そっと谷口を伺った。二人なら七時間だが、一人なら十四時間持つ。後は、このコックピットの空気でどれくらい生きていられるか……
 

430:この名無しがすごい!
07/09/13 04:03:15 tklcOqRr
短くまとめたら?

431:この名無しがすごい!
07/09/13 04:07:04 czXzfjRB
 そこまで考えて、大沢はため息をついた。こいつを殺して自分だけが生き残るくらいなら、いっそのこと大気圏に突入して燃え尽きたほうがましだ。
 しかし、突然谷口が立ち上がった。そのままの勢いで天井にぶつかりかけ、すんでのところでそれを避けると、大沢に向かって飛びかかる。
「何を!?」
「大沢、マイクをかせっ! 種子島、聞こえるか、応答しろっ!」
 思わず構えた大沢からマイクを奪い取り、谷口は声を張り上げる。
―聞こえている。どうした。
「俺たちの軌道は捉えているな? ISSに次に再接近する時間と距離、相対速度を出してくれ!」
「どうする気だ?」
「黙ってろ。種子島、どうだ」
―待ってくれ……今からおよそ四十八分後、船内時間で二〇二二時。距離十三万二千メートル。相対速度142.3m/sだ。
「わかった。大沢。EMUを着用しろ」
「何をする気だ?」
「飛ぶぞ」
「なんだって!」
 しかし大沢は、一瞬の驚愕から立ち直ると、すぐに動き始めた。キーボードを叩き、シミュレートをはじめる。
 プロペラントは使い果たしてもいい。少しでも近く、そして相対速度を小さく。
「距離、九万一千。相対速度、2.4m/s」
「上出来だ」
 二人の両手が打ち合わされる音が、コックピットに響いた。


―こちら、種子島コントロール。きこえるか。
「ああ、感度良好だ」
 おおぞらの通信装置を経由した雑音交じりの声が、大沢のヘッドセットから聞こえる。
 漆黒の空に浮かぶ星星が、瞬きもせずに二人を取り囲んでいる。
 音のない、死の世界。宇宙。
 子供のころから夜空を見上げ、ずっと夢見ていた世界に、二人は立っていた。
―星が見えるか。
「もちろん見えるさ。あんたが見たことのないような星空がな」
 谷口も、落ち着いた声でそう答えた。星になるなら本望だ。それが彼の口癖だった。
―アンタレスは?
「よく見えるぜ」
―その方向にISSがある。合図をしたら、飛べ。
「了ー解」
―六十秒前……五十……四十……
「大沢」
「……なんだ?」
「宇宙はいいな」
「……そうだな」
「だけど、やっぱり―」
『地球に戻りたいな』
―三、二、一。飛べっ!
 二人の足が、おおぞらを蹴った。
「帰るぞ!」
「ああ、絶対に!」


432:この名無しがすごい!
07/09/13 04:08:04 czXzfjRB


 どれくらい時間が経っただろうか。自由落下状態に身をゆだねていた大沢は、うたた寝から目覚めるとバイザーに投影されている時計を見た。
 もう、六時間以上経過している。もう、おおぞらはまったく見えない。周回軌道を外れたシャトルは、地球を何周かした後大気圏に突入し、そのまま燃え尽きるだろう。
 ヘルメットの中で首だけを動かし、あたりを見回す。
「おい、谷口、谷口!」
「……なんだ?」
 眠そうな声で、谷口が応えた。酸素の消費を抑えるには、眠るのが一番いい。彼もそれを実践していたのだろう。
「見ろよ。太陽が」
 足元には、黒い地球が横たわっていた。その端が、少しずつ輝きを増す。
「日の出だ」
 谷口の笑いを含んだ声に、ぽんぽんという音が重なる。見れば、谷口は拍手を打っていた。その音をマイクが拾ったのだろう。
「きれいだな」
 太陽の光が、地球のふちに沿って輝く。宇宙から見れば薄皮のような大気が、光を反射し輝いている。
「なあ、大沢」
「なんだ?」
「地球に帰ったら、ピクニックしようぜ」
「なんだ、そりゃ」
 大沢は思わず吹き出した。
「緑の芝生にねっころがってさ。青い空を見上げてさ」
「なんだよ。星空に飽きたのか?」
「そうじゃないけどよ。たまには違う女に抱かれてみたいっつうか」
「何言ってんだ。ま、分からんでもないけどな」
 大沢は再び目を閉じた。星空ばかりを見上げていたはずなのに、まぶたの裏に映るのは、まぶしい太陽と白い雲。
 そして、青い空。
 もう一度、あの空の下を走り回りたい。
 大沢は、その青空に祈った。
―u…ma……a…o…no……w……
「谷口!」
「ああ!」
 ずっと沈黙していた無線が、途切れ途切れの音を発した。
 二人はそろって頭上を見上げた。そこには、点滅するライトと、星空をさえぎる小さな影。
 二人を出迎えるために出てきてくれた宇宙飛行士たちのバイザーに、輝く太陽と、ナイフのようにとがった、青い地球が映っていた。

(fin)


433:この名無しがすごい!
07/09/13 04:09:03 czXzfjRB
>>430
やんっ!

434:この名無しがすごい!
07/09/13 15:47:24 YfbVuZ+1
>>348>>349
筆者としては猟奇もののつもりはないんだけどね。ディシプリンものとして
読んでもらいたい。海外のサイトではメジャーな題材なんだけど、日本語の場合
僕ともう一人しか検索にかからない。

435:この名無しがすごい!
07/09/13 17:47:32 pxHc3z1u
>>429ー432
後半部分が好きだなぁ。宇宙が広がった。漂う二人と地球、日の出の描写が素敵。ナイスでした。


436:( ゚Д゚)<あの青空に祈りを
07/09/13 18:17:59 pxHc3z1u
「はっぴばーすでーとぅーゆー。はっぴばーすでーとぅーゆー」
先を歩く健太のころころとした、舌足らずの可愛らしい声が歌っている。昨夜の雨が作り出した水溜まりをひょい、ひょいっと飛び越えながら、覚えたばかりの歌を口ずさんでいる。
楽しそうに、目に見える世界全てが輝いて見えているかのように健太は今日も生きている。
「ママ、早くしてよ」
いつの間にか、我が子の姿に見とれていた内に、足が止まってしまっていたようだ。健太がごねるように私を呼ぶ。
「ごめんごめん」
言って両手を顔の前で合わせた。おや、まだ頬が膨れている。そうか、そうだよね。
私はゆっくりと歩み出す。道の向こう側。遠く広くあの空が広がっている。
「ごめんね、健ちゃん」
追い付き、再び謝った。あらら、まだ健太は不機嫌だ。どうしようか。
不意に吹いた風は、もう涼しくなり始めていて。
「ごめんなさい」
私は思い切って頭を下げてみた。うーん、これが駄目なら、帰りにアイスを買ってあげよう。
おずおずと健太を見上げる。まだ固い表情。やっぱり駄目かな。そう思った。
満開の花が咲いた。
「いいよ。許す!」
その微笑みには、いつかの笑顔が重なっていて。
私も釣られて笑顔になる。
「ありがと。よし、じゃあ行こっか」
大きな手と小さな手。互いに取り合って、しっかり握って、離れないように、離さないように。
涙はこんなな素敵な空には似合わないから。
Happy birthday to you.
見てますか? 見えてますか?
健太はこんなに大きくなりました。あなたに似た瞳が毎日笑ってくれるので、私はとっても幸せです。
あなたがいなくなって三年。いろんな事がありました。何度も折れそうになって、何度もこの世界を憎みに憎んで。人を嫌って、自分を呪って、絶望は黒よりももっとこい色だということを知りました。
でも、そんな私も、ようやく踏み出すことが出来そうです。もう過去にすがることを辞められそうです。
だから。
だからどうか私たちを見守って下さい。
そこから、あなたが何よりも好きだったその空から。
私たちのことを見守っていて下さい。

日射しはまだ夏の名残を残していて。

437:この名無しがすごい!
07/09/13 22:30:58 czNVDJWB
何も持っていなかった僕に、ひとつの約束をくれたあの人は、今はもうお墓になった。
真新しい白いその石には命日と名前が一つずつ彫ってある。あの人の名前だ。この世でただあの人だけのもの。
『僕が死ぬときは君が死ぬときだ』
ふいに、あの人の言葉が脳裏に蘇った。
『そして君が死んだとき、君は僕になり、僕は再び命を得る』
あのときあの人は、何も持っていないと、そう親の愛情でさえも、持っていないと泣く僕にそう笑いかけた。
たった今からこれを約束としてあげるから、もうそんなに嘆く必要はないのだと。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの僕を優しく撫でてくれた。パパとママがするように、汚ならしいと殴ってくれたって構わなかったのに。
「あなたは死んでしまったよ」
僕は墓石の名前を指先でなぞった。彫らなくて良いと言ったのに、お節介な埋葬屋の店主は勝手に彫ってしまったものだ。
「もうひと月になるけど、僕はまだ信じられない。あなたがいない現実なんて現実じゃないみたいだよ」
あの約束をくれた一週間後のことだった。
流行り病にかかって、あっという間に。何も出来なった。
「あなたの口癖だってもう聞けない」
ことあるごとにあの人が口にしていたあの言葉の意味は、ついに知ることはなかった。
ただ、あの言葉を言うあの人はいつもすごく楽しそうで、嬉しそうで。
僕も一緒に嬉しくなって、その嬉しい気持ちにもまた嬉しくなって、思わず涙が出てきそうになったこともある。
…僕は決心して、勢いよく足を振り上げた。
足は墓石の名前を蹴りつける。でももちろんそれじゃ足りなくて、僕は何度も何度も蹴りつけた。
そうして蹴って蹴って蹴って。
高かった太陽が暮れ始めたころになって、僕はようやく足を止めた。
白い墓石はもうぼろぼろで、名前を部分は崩れ落ち、何が書いてあったのかさえ分からない状態になっていた。
代わりに、僕はポケットからコインを取り出して、崩れた石のところにがりがりと違う名前を掘り込む。僕の名前だ。
『そして君が死んだとき、君は僕になり、僕は再び命を得る』
僕は足元に転がしていたリュックを背負った。時計を見ると、汽車の時間まであと少ししかない。
多分、この街に戻ってくることは無いと思う。
最後に一度だけ墓石を見つめて、僕は心からの笑顔であなたの口癖を叫んだ。
「サングラッチェ!」
僕はあなたとして生きていくよ。


438:この名無しがすごい!
07/09/14 16:16:18 vOIfE4lQ
>>437
何だか不思議な感じ。でも旅立ち特有の晴々しさ、清々しさが心地いい。
サングラッチェも元気が出るような明るい響きで聞こえてきた。

439:この名無しがすごい!
07/09/15 00:06:26 C/ufJyaq
( ゚Д゚)<わーい。三連休!皆さんはいかがお過ごすの?
( ゚Д゚)<この前のお題は何人かやってもらった方々も増えて、とっても嬉しいです。わほい。
( ゚Д゚)<そんな三連休のお題発表!

【目が死んでる】
【水底の華】

( ゚Д゚)<よい週末を!

440:この名無しがすごい!
07/09/15 00:55:13 7Df+PhS3
休みはないわよ。
そんなあたしの目が死んでるわ。

(end)

441:( ゚Д゚)<水底の華
07/09/17 22:44:57 aMDa1vG6
山はいつの間にかその燃えるように紅かった色を失い、先々がとがった枝を必死に伸ばしている木々がぽつぽつと寂しそうに立っているだけだった。
吐く息が白く立ち昇り、限りなく白に近い灰色の空へと溶けていく。風が止まったままのこのダムの畔には、もの音ひとつしない。赤く染まっているのであろう頬を突き刺すのは、何も冬の訪れを告げる北風だけではないだろう。
静寂が、存在を圧し潰すかのような重い静寂が辺りを覆っていた。
何もできなかった。私は私は、本当に何もできなかったんだ。
波打つことも、流れていくことさえも知らない水面に写る己の姿を見ると、そんな想いが、遠い過去の出来事への悔恨が記憶という繋がりを伝って時間を越え蘇ってくる。
結局私は無力で、ただの能無しで、ちっぽけな一人の馬鹿にしか過ぎなかったんだ。
煙草を内ポケットから取り出す。あの日々から数年後に呑み始めた少々きつめの煙草だ。一本取り出し、口にくわえる。ライターを忘れていたことを思い出した。
「どうか、どうかあの木だけは。あの木は、あの桜は村の誇りなんじゃ」
「何とかねぇ、あの木だけでも残ってくれるならねぇ。ここに村があったんだって、私たちのふるさとがあったんだって。ねぇ。まあ、無理でしょうけど」
あの時、あの日々、蝉が何故かおとなしかったあの夏、私は村民たちに約束をした。絶対に大丈夫です。必ず桜は移植させてみせます。大丈夫ですから。僕たちを信じてください。
必死に桜を守ろうとしていた老人に、諦めきった笑顔を見せていた女性に、たくさんの故郷を捨てなければならない村民たちに、私は胸を張って約束したのだ。
できないことなどないと思っていた。得た知識が、養った人との付き合い方が誰かのためになると信じていたのだ。
社会のことなど何も知らなかったガキだったくせに。
風が吹き始めた。煙草は元に戻すことにした。車は少し離れた場所に停めてある。
桜はどうなったのであろう。水底に沈んだ巨木に想いをはせる。あれから三十年。権力に屈し、逃げるようにして関わることを辞めてしまった桜は死んでしまったに違いない。
しかし、例えそうだとしても、ずっとずっと、この冷たい水底で咲いていて欲しいと願うことはおこがましいことなのだろうか。
私は空を仰いだ。白い空の所々に、鈍い灰色の雲が織り混ざり始めていた。
降り始めた雪は冷たく。まるであの桜の花びらのようだった。

442:( ゚Д゚)
07/09/21 00:11:48 Zf2QHoWg
こんばわー。秋の気配がひしひし伝わってくる夜であります。
今年は大きなトンボとクモがやけに多い気がしますが、どうでしょう。蝉は少なかった感じがします。

お題
【大好きな空模様の下で起きる小さな物語】
【此岸花・彼岸花】


443:この名無しがすごい!
07/09/22 02:36:47 M0c/x8u+
ハンナングループ浅田会長の逮捕に北朝鮮・旧朝銀信用組合と関係の深い杞●岳史!!

公安の強制捜査で必ずマスコミ関係者様・2ちゃんねら~の皆様の御期待にそえます。

杞●岳史は家やマンションビルの中の様子を建物の外から盗撮しています!!
建物の中の様子を外から盗撮するプライバシー丸裸のとんでもない盗撮機械を自宅に所持!!

名前は杞● 岳史(キヤマ タケシ)ユ タケシ

経歴は北朝鮮とつながりの深い旧朝銀信用組合と関わりが深く旧朝銀信用組合の青年会に所属。

東大阪市柏●東10の9から転居後の自宅に所持!!
※杞●岳史の自宅からすごいものがでてきます!!
家やビル、建物の中の様子を外から盗撮するプライバシー丸裸の盗撮機械は杞●岳史の自宅にあります!!

あと一歩で杞●岳史逮捕なのでみんなで公安に連絡しましょう!!
公安の強制捜査・杞●岳史の逮捕で必ずマスコミ関係者様・2ちゃんねら~の御期待にそえます!
※法務省 公安調査庁 0335925711 東京都千代田区霞が関1丁目1の1
※近畿公安調査室局(代) 0669437771 大阪市中央区谷町2丁目1の17

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444:この名無しがすごい!
07/09/22 17:12:04 Y+6926Tq
【此岸花・彼岸花】

 音もなく流れる清流の周りに花が咲いている。
 川の周囲を覆うような一面の赤色。流れる命の色。
「ほら、こっちにこい」
「いーやーだ」
 赤い花をかきわけて二つの人影が川に近づいてきた。
「往生際が悪いぞ」
 背の高い、白い服を着た長い髪の男が、同じく白い服を着た少年の手を引っ張っている。
「やだやだやだ」
 少年は少し癖のある髪を振り乱しながら、連れて行かれまいと足を踏ん張っている。
「まったく……しょうがないな」
 背の高い男は少年の手を離すと、腕を組んでため息をついた。
「いいか? これは前から決まっていた事なんだ。昨日もちゃんと説明しただろう」
「……うー」
 少年はしゃがんだまま下唇をかんで背の高い男を見上げる。
「大体だ、一年前にお前が私の所に来た時にも説明したはずだが」
「……忘れた」
 ボソッと呟いてうつむいた少年の頭を見ながら、背の高い男はさらに深いため息をつく。
「何が嫌なんだ?」
「怖い」
 少年の言葉に、背の高い男は膝に手を当ててかがんだ。
「別に怖くはないだろう。あの川を越えて向こうに行くだけだ」
「泳げない」
「泳ぐ必要はないぞ。浅いし」
「……」
 少年はうつむいたまま黙ってしまった。
 背の高い男はしゃがんで少年の顔を見る。いっぱいに開いた瞳にこぼれそうになった涙。
「……ぃ」
「ん?」
「……帰りたい」
「んー」
 背の高い男はしゃがみこんだまま困ったような表情を見せる。
「ね、帰ろ、ね?」
 少年は背の高い男の袖を掴むと、元来た方へ引っ張った。男は少年の肩に手を置いて、正面から顔を見た。
「昨日約束しただろ? ちゃんと向こうに行くって」
「……」
 少年はうつむいたまま涙をぽろぽろとこぼしている。背の高い男は少年の頭に手を置いた。
「じゃあ、そろそろ」
「……向こうにいっても、また、ここに来れる?」
「え、う、まあ、そうだな」
 意表をつかれてうろたえる男の言葉に、少年の顔が見る見る暗くなっていく。
「あー、うん! その時は私が迎えに行くから大丈夫だ」
「本当?」
 背の高い男は立ち上がって胸をはった。
「本当だ」
 少年も立ち上がって男を見上げた。
「約束だよ」
「約束だ」


445:この名無しがすごい!
07/09/22 17:13:36 Y+6926Tq
 二人は手を繋ぎ、赤い花をかきわけ川の側に来た。音もなく水のような何かが流れている。
「ここでお別れだ」
「うん」
 手を離した少年は、背の高い男の方を向くと両手を伸ばした。
「何だ?」
「しゃがんで」
「こうか?」
 背の高い男がしゃがむと、少年は男の首に手を回して抱きついてきた。
「……どうした?」
「絶対に、迎えに来てね」
「ああ、約束だ」
 男は少し震えている少年の背中に手を回し、軽く叩いた。
 少年は背の高い男から離れると、川に向かって歩き出した。
 かかとの辺りまで水のような何かに浸かる。少年は渡る途中、何度も男の方に向かって手を振った。
 背の高い男はぎこちない動きで手を振り返す。
 少年が川を渡り終えると、向こうに咲いている花が一斉に少年の方を向いた。それと同時に少年の身体の輪郭がぼやけ始める。
「おーい!」
 背の高い男が川向こうの少年に向かって叫ぶ。
「なーにー!」
 きらきらと輝くように溶けていく少年が叫ぶ。
「昨日教えたこと憶えているかー!」
「憶えてるよー!」
「言ってみろー!」
 霞んでいく少年が口を大きく開けて叫ぶ。
「まずー! 息をいっぱい吸うー!」
「そしてー、大声を上げるー!」
 背の高い男は笑顔で親指を立てた。
「完璧だー!」
 向こうの景色が透けて見えるようになった少年も親指を立てる。
「ねー!」
 きらきらと光る砂を振りまくように消えていく少年が声を上げた。
「何だー!」
「約束だよー!」
 少年はかき消すように見えなくなった。
「ああ……約束だ」
 背の高い男が呟く。どこかから産声が聞こえる。


「それまではどうか、幸せな生を」

446:( ゚Д゚)<自分は青空が好きなので青空で
07/09/23 00:02:01 mmZ/u8a1
良太は暑い熱い真夏のアスファルトの上に寝転んでいた。
仰向けに空を眺める良太の視界には、澄みきった青空が広がっている。雲など一つも浮かんでいない、どこまでもどこまでも青いだけの空。
空は悩みとか怒りとか、心の中をぐるぐる回り、意味もなく自信の周りを変えてしまう感情をすぅーっと吸い込んでいく。穏やかな、何も考えないでいいような、そんな気分にさせてくれる。
良太はそんな空をただただ眺めているのだ。
すぐ隣でずっと遠くまで延びる線路の上を、電車が盛大な音と共に走り去っていった。舞い上がったトンボがフェンスに停まった。
良太はこんな空が、晴れ渡った一日というものが大嫌いだった。
よくないことが起きる時、決って空は伸びやかに晴れていたのだ。
汗っかきだった良太は、よく晴れた日、決って同級生にからかわれた。たった一人、好きになった女の子にこっぴどく振られたのも晴れた日のことだった。そのことを同級生にいじり倒された数日間も晴れていた。
受験に失敗した日も、足の骨を折ってしまった日も、風邪をこじらせて入院した日も晴れ。
父親が人を撥ねてしまった日も、母親が静かに息を止めてしまった日も、いつだって太陽は青い青い空の中で、さんさんと良太を照らしつけていたのだ。
まるで嘲笑うかのように。
いつしか良太は、不幸な時頭上に輝く特大のスポットライトが嫌いになっていた。
そして今も。
良太はアスファルトの上に倒れたまま、絶え間なく湧き出す腹部の出血を両手で押さえていた。血は薄く広く伸び、抜いた包丁の下にも染みている。赤い血溜りを音もなく作っていた。良太には不思議と痛みはなかった。
良太はしみじみと、先程すれ違いざまに突然自分の右脇腹を刺した少年のことを思った。良太が倒れた後、狂気じみた笑みで良太の鞄を奪っていった少年。ニット帽を深く被った気の弱そうな少年だった。
彼は今、何を思い、何をしているのだろう。僕の鞄から財布を見つけだし、その中身の少なさに驚いているだろうか。もしくは獲たものに、にやついているのだろうか。
たった二千円ぽっちが入った財布。会社関係の書類ばかりの鞄。彼は僕を刺したことを思い、いるかも分からない追跡者の陰に脅え始めているのであろうか。
良太は押さえていた左手を顔まで持ってきた。真っ赤に染まった左手は、まるで絵の具を手一杯に塗ったようで、どこか滑稽だった。
僕は死ぬんだろうな。
だんだんと寒くなる外気を感じながら、良太は思う。僕にはもう訪れる明日はない。なぜか悔しくも悲しくもなかった。穏やかな流れが良太を満たしているようだった。
空を、あの抜けるような青空をもう一度眺める。太陽はやっぱりぎらぎら輝いている。
あーあ。やっぱり綺麗じゃないか。
霞ゆく視界の中で、良太は小さく微笑んだ。


447:( ゚Д゚)<今度は太陽が沈んだ空で
07/09/24 02:44:20 JIfBmZjz
 川沿いの小道を二人は歩いていた。ポケットに手を突っ込み、大きな歩幅でゆっくり歩く彼と、後ろ手に手を組み、彼の少し前を幾分か小さく細やかな歩調で進む彼女。異なる二つの歩調は、お互いがお互いを気遣いながら、優しく静かなリズムを秋の風に運ばせている。
 太陽がすっかり山の向こうに沈んでしまった茜空は、その燃えるような朱色を山際に残しながら、次第に闇へと溶けていく。帰路を急いでいた鳥たちの姿は、もうどこにもない。虫の音色が二人の靴が生み出すリズムに合わせて、小さなメロディを紡いでいるかのようだった。
 夕方と夜の狭間を二人は静かに歩いている。包み込んでくる秋の気配を、そして何よりも二人で歩いているこの瞬間を噛み締めながら歩いている。
 側にいるだけで、一緒に歩くことだけで、ぽっと心に火が灯ったような柔らかな温もりを感じる。身体を内から温めてくれる素敵な感情の存在を感じる。
 二人は一緒に歩くだけで十分だった。目を閉じてささやかなオーケストラに耳を傾けながら、隣にいる大切な人を感じることが出来るから。言葉など無くたって、きっと想いを伝えることは、感じることは出来るはずだから。
 しかしながら、不意に彼女の足音が止まった時、彼は彼女との間に小さなズレを感じた。それは彼がそうやって彼女のことを感じていた時だったからだ。彼は少し戸惑いながらも目を開く。直ぐに追い越してしまった彼女の方を振り向いた。
 急に立ち止まった彼女は、いたずらを企んでいる子どものような笑みを浮かべ、そこに立っていた。瞳に好奇の色が満ちている。彼は少し眉をひそめた。
 一体、君は何をするつもりなんだろう。何を考えて、そんな表情をしているのかな。彼の脳裏を様々な言葉が流れていく。そのどれもが彼女に対する純粋な疑問と、少しの猜疑心が混じったものだった。
 彼が見つめる彼女。彼女はそんな彼の想いを知ってか、まるで試すかのように組んでいた手をゆっくりと彼に差し出した。
 空は深く。濃紺が濃さを増し始めている。二人を、遠く輝きだした月が見つめていた。
 彼はしばしの間、その行為の意図するところが分からなかった。突然手を出して、君は何がしたいのだよ。時間だけが流れていく。
 何もしない彼にしびれを切らして、彼女は手をさらに突き出してきた。その表情には少々の苛立ちが見て取れた。ったくもう、さっさと手握ってよね。
 ああ、そういうことか。
 吊り上がったその瞳に、彼は差し出されたその掌を優しく受け入れた。暗闇が刻々と深くなる中、彼女は季節外れの向日葵のように綺麗に笑った。
 初秋の帰路を二人はゆっくりと進んでいく。夜風は随分と寒くなり始めていた。
 でも、例えどれ程風が寒くなったとしても、繋いだ二人の掌は、変わらぬ暖かさを保ち続けるのであろう。
 虫たちがささやかな演奏を捧げていた。


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