超マイナー作家、椎名麟三を語る会at BOOK
超マイナー作家、椎名麟三を語る会 - 暇つぶし2ch500:%
04/10/05 23:33:03
戦前には、西洋文化の吸収において実験性が(横光)
戦後には、平凡さの中の非凡さを追求するような実存性が(椎名)
70年以降には、書くことへの、小説への自意識が(後藤)
世紀をまたいでは、狂気と妄想の中での彷徨が(阿部)

501:483
04/10/06 17:06:29
妄想するのは楽しいですよね。
えーと、問題が拡散しそうなので、とりあえず椎名に絞ります。

>平凡さの中の非凡さを追求するような実存性

というのがよくわからない。
まず「平凡さの中の非凡さを追求する」って言ってるけど、ほんとにそう言えるのかな。
具体的にどの作品を念頭においているか、また、なぜそう思ったのか、よかったら教えて。

502:吾輩は名無しである
04/10/06 21:00:49
>>496
13:映画・放送台本 14~20:評論 21:後期作品 22:初期作品
23:雑纂 24:別巻(椎名麟三に関する評論とか=例えば吉本隆明のもの)
でもまあ、正直言って新字だし誤植は多いしであんまり良い全集ではない。

>>%
「平凡さの~」のくだりがなんか本多秋五みたい。
横光→椎名は、純粋小説論と絶対客観のレアリズムの相同性で語れそうだが、
そこに後藤と阿部もってくるのはちと疑問。483さんと同様、具体的な作品
を挙げてもらえると、ありがたいなあ。

503:496
04/10/07 21:38:13
>>502
ありがとうございました

と言うことは小説だけ読みたいなら
1から10まであればイイってことですね
参考になりました

504:502
04/10/07 23:18:58
>>496
21・22巻にも小説が入ってるから機会があれば買ってもいいかも。
22巻は「深夜の酒宴」の元本「黒い運河」が入ってるし。
21巻の『懲役人の告発』とか評論の「私の聖書物語」あたりは古本屋で
安く売ってるからそっちのほうが経済的だと思いますが。

505:%
04/10/10 00:28:58
>>501>>502
椎名作品はまだそれほど数多く読んでないけれども、
『永遠なる序章』の安太にしろ『自由の彼方で』の清作にしろ、
『美しい女』の末男にしても、主人公は無力で平凡な人間ですね。
(以前読んだ中篇でも、今読んでいる『運河』でもそれを感じる)
名前からして椎名作品の登場人物には平凡さがあると思いますが、
しかし主人公は忍耐強く理想(「自由」や「美しい女」)を求めている。
ただしその理想へのエネルギーが障害や不条理に出会いながらも
プラトニズムに陥ることなく、絶望に傾斜することもなく
絶えず「今ここ」での生きることへの情熱へと変換されてゆく。

『美しい女』では末男は「美しい女」を求めながらも
それを現実においては見出せない、というよりも、
見出そうとしていない、という感じもあって、
しかしだからこそ現実を生きようとする、みたいな
そんな逆説性を感じた。うまく表現できませんが。

506:502
04/10/10 00:50:23
>>505
確かに特に『邂逅』以降、椎名作品にはそのような傾向があるとは思います。
ただ、その「今ここ」への情熱、平凡さの是認は時にして「大衆の原像」礼賛に変わってしまわないかと。
そこらあたりが柄谷をはじめとする70年代後半からの文芸批評において批判されるところだと思う。
また、そのような椎名作品の傾向は、後藤や阿部とはむしろ真っ向から対立する気もするなあ。

「美しい女」を不在の真理としつつ見出そうとせず逆説的に現実を生きる、てのもある意味ロマン主義を内包した
「今ここ」礼賛(もちろん手放しではないにせよ)が感じられてしまう。
僕個人としては、『美しい女』は、末男が会う女会う女に安易に「これが美しい女だ」みたいに
感じるところ(また別のところで、遠藤周作に対して「僕はイエスを見たことがある」と言い切っちゃうところ)に
椎名の面白さを感じるんだけど、まあこれは個人的な嗜好でもある(笑)。

507:%
04/10/10 20:25:34
>>506
502さんは全集を持っているんですね。
批判なりサジェッションなりをもらえるとうれしいです。

502さんのいう「大衆の原像」というのは吉本隆明を念頭においた言葉だと思いますが、
椎名の方向性は決して「平凡さの是認」に向かっているのではなく、
もう少し逆説的というか両義的というか(あるいはその両方でもあるような)
そういう複雑なニュアンスを感じたのですがどうでしょうか?

「今ここ」への情熱というのも微妙な陰影と含みがあって、
『美しい女』の末男が会う女ごとに「美しい女」の可能性を感じつつも
決して本当の「美しい女」だとは思ってはいないわけですよね。
で、「美しい女」を「不在の真理」としているかというとどうもそうでもない気がする。
理想(「美しい女」「自由」)は理想として強く希求されている、と同時に、
それが不可能なものだという認識も、それによる絶望もあって、
なおかつ、その絶望によってニヒリスティックになるのではなく、
その絶望感ゆえに現実をどうしても愛そうとするような逆説性、
そういうことが作品の雰囲気として感じたのですが。

*四人の作家を並べた妄想については妄想なりの理由(根拠とはいえないまでも)
が少しはあるのですが、それについてはちょっと保留しておくことにします。

508:吾輩は名無しである
04/10/10 21:45:33
「ドストエフスキーは
たとえ救いが無くても助けてくれと叫んだっていい、
その叫びこそ文学なのだと教えてくれたのだ」

509:%
04/10/14 22:53:05
椎名はキルケゴール、ニーチェ、ドストエフスキーを読んでいたから、
椎名作品で感じた逆説性は彼らから受け取ったものなんだろうね。
しかし椎名にはなにか奇妙な実存的姿勢があるような気がする。

今日、『運河』を読み終わってちょっと暗い気分。

510:502
04/10/14 23:28:33
>>507
レスどうもです。批判する、なんて大そうなことは出来ませんが。

とりあえず議論の前提として、僕が述べている椎名作品の傾向は、入信以後
特に『邂逅』前後から見受けられるものと考えています。

んで、「平凡さ」・「大衆」について言えば、確かに%さんのおっしゃるとおり、
それは単なる礼賛・是認ではなく逆説的なニュアンスも含んでいると思いますが、
いわゆるその両義性を全て包み込んでしまうものとしてイエス・キリストの肉体なり
「大衆」なりを椎名作品は想定してはいないか?ということです。
これについては、入信後(もちろん幾らかのタイムラグはありますが)、「絶対客観のレアリズム」
という、「全体小説」とそれほど違わない概念を用いたこと、「大衆芸術」として(それが真に大衆
芸術かどうかは問わず)の映画製作に携わったことなどとも、関係する問題ではないでしょうか?
そして、あらゆる矛盾を内包してしまうことは、全体性・現前性・一大物語に回収してしまうこと
ではないか?そして「矛盾、全てよし」といった観念で労働者なりに物語を語らせることに、
少なくとも僕はある種の「戦後文学」の限界を見てしまう、ということです。
(長くなりそうなんでひとまず切ります)

511:502
04/10/14 23:48:56
どうもうまく書けませんが、続きです。

>「今ここ」への情熱というのも微妙な陰影と含みがあって、
>『美しい女』の末男が会う女ごとに「美しい女」の可能性を感じつつも
>決して本当の「美しい女」だとは思ってはいないわけですよね。
>で、「美しい女」を「不在の真理」としているかというとどうもそうでもない気がする。
>理想(「美しい女」「自由」)は理想として強く希求されている、と同時に、
>それが不可能なものだという認識も、それによる絶望もあって、
>なおかつ、その絶望によってニヒリスティックになるのではなく、
>その絶望感ゆえに現実をどうしても愛そうとするような逆説性、
>そういうことが作品の雰囲気として感じたのですが。

%さんのこの意見は、結構僕の意見とも近い気もしますが(なんか偉そうですいません)。
僕の個人的な考えとしては、むしろ末男は会う女会う女をみんな「美しい女」だ
と認めてしまうほうが面白のではないの?ということです。
「真の美しい女=自由」は不可能だからこそ現実を愛す、というのは、
ロマン(ニヒリズムの裏返しとして)に留まってしまわないか?
『美しい女』をニーチェ・ラカン或いはデリダラインの「女は存在しない」
に通じるものとして論じてるものを読んだことがありますが(女性の研究者だったような)、
むしろ「美しい女」なんて結局どこにでもいるもんだ、というほうがまだ「女は存在しない」に
近い気がします。(それは、「美しい」という言語自体を宙吊ることに繋がるのでは?)

ちと話がそれましたが、ある種の様々な矛盾や両義性を椎名作品が備えていても、
それを最終的には包括してしまう傾向に、あまり賛同できない、ということです。
山城むつみあたりはそれを包括とは見ず、「単独者の連帯」(NAM??無為の共同体?)
と見るようですが、それは本当に「単独」なのか、ある種の想像的な共同体(即ち大衆の原像)
じゃないのか、と思ってしまいます。

長文・スレ汚し申し訳ありません。とりあえず、椎名麟三を研究している諸先達の方々はあまり
批判的なことをおっしゃらないので(もちろん個々の仕事は素晴らしいものだと思います)、
たらたらと書いてみたまで、と思っていただければ幸い。

512:%
04/10/15 21:59:59
>>510-511
502さんの視点が徐々にわかってきました。
まだ充分に汲み取れていない点があれば補足願いますが、
入信以後=『邂逅』以降の椎名作品の傾向として
502さんが考えていることに関して不明な点と興味深い点があります。

1)まず不明に思った点ですが
「戦後文学の限界」を感じられてることそのものには首肯できますが、
>全体性・現前性・一大物語に回収してしまうことではないか?
という視点では、椎名作品をわたしは読めなかった。
というのも、入信以降の作品(『自由の彼方で』『美しい女』『運河』等)は、
非常に自伝的であるし、「大衆」というよりも「個」の小説、
つまり実存的な作品だと思うんですね。
キルケゴール、ニーチェ、ドストエフスキー的なわけで、
「絶対客観のレアリズム」ということも作品からは感じられませんでした。
「矛盾、全てよし」といった包括性を目指す観念であるよりも、
同時代作家埴谷の「不合理ゆえに吾信ず」という逆説性に近く、
そこには差異があると思うのですがどうでしょうか?

513:%
04/10/15 22:00:56
(つづき)
57年に発表された『私の聖書物語』もまた「私の」という言葉があり、
そこでも椎名は「私的であること」のニュアンスを強調しています。

514:%
04/10/15 22:03:01
(つづき)

2)次に興味深く思った点
>末男は会う女会う女をみんな「美しい女」だ
>と認めてしまうほうが面白のではないの?
『美しい女』の末男がもしそういう視点をもつことができれば
たしかに「面白さ」はありますね。
>「真の美しい女=自由」は不可能だからこそ現実を愛す、というのは、
>ロマン(ニヒリズムの裏返しとして)に留まってしまわないか?
たしかに「不可能ゆえに吾愛す」といった感じはありますね。

で、真理(=「美しい女」「自由」)がもし女性(非真理)だとしたら、という
デリダ=ニーチェ的視点での椎名作品の読解可能性については、
正直にいうとかなりためらいがありますが、
興味はあるのでもう少し聞いてみたいな、と。

515:%
04/10/15 22:06:17
(つづき)

>山城むつみあたりはそれを包括とは見ず、「単独者の連帯」と見るようですが、
>それは本当に「単独」なのか、ある種の想像的な共同体(即ち大衆の原像)
>じゃないのか、と思ってしまいます。
これについては前に書いたように、これまで椎名作品を読んだ限りでは
キルケゴール、ニーチェ、ドストエフスキー的な「単独者」だと感じたし、
転向以降にも共同体への希求があるとしても《赤い孤独者》だと思いますが、
「実存主義」との関係では502さんの意見はどうでしょうか?

516:502
04/10/15 23:21:56
>>512-515
多分しばらくここに寄る暇がなくなるんでとりあえずレスを。

「私」の問題を取り扱うことが必ずしも全体性ではない、とは言い切れないのでは?
椎名がキルケゴールを耽読していたのはさて置き、では『赤い孤独者』に「単独者」を
認めるのか?というと正直僕は否、と言いたくなる。「孤独」であるとは思いますが。
また、「実存的」という言葉ですが、それがキルケゴール的なのかニーチェ的なのか
サルトル的なのかによっても(当然全て「的」が付されてしまいますが)考え方が
変わるでしょう。少なくとも広義の実存主義は現象学とともにその現前性が批判されて
いますよね?(もちろんまだまだ留保は必要ですが)
或いは、「不合理ゆえに我信ず」ってのは「信ず」である限り絶えず物語化される
危険性を孕んでいるものだと思います。

517:502
04/10/15 23:27:08
続き

んで、「実存主義」についてですが、僕としては椎名を実存主義で読むならば、%さん
があげた人々ではなく(もちろん椎名自身はこの3人を念頭に置いているでしょうが)
ハイデガーを参照とするべきと考えてます。キルケゴールは「死に至る病」は参照されると
しても、キルケゴールの概念と椎名のスタンスはアナロジーで結びにくい。
或いは実存主義に拘泥しないならば、むしろ椎名(を含めたいわゆる「戦後派」=埴谷・野間)
はヘーゲルが参照しやすいのではないかと。ヘーゲルであれば、%さんが挙げていた、
横光なんかと相同性を帯びることとなるかな、と。

女についてはまた書きます。ただ、女=非真理とする必要はないのでは?
女=真理=現実界として椎名作品を考えても(もちろんその定義が当てはまるかどうか、また
ジェンダーにどう見配るか、色々大変そうですがw)、別に良いとは思います。いや、良いのか?w

518:%
04/10/17 22:41:05
>502さん

まず>>516についてですが、

たしかに「私=個」と「全体性=普遍性」とは必ずしも相反するとは限りませんが、
これまで話題にした椎名作品において「全体性=普遍性」は欠けていると思います。
椎名は獄中でニーチェの本の差し入れをもらい、それによって転向したわけですが、
ニーチェがこれほど嫌ったイエスという存在が気になって聖書を読み始めたわけで、
やはりニーチェ的実存性というものが大きな影響力をもったのではないでしょうか。

「現前性の批判」や「物語化の危険性」というのは現代思想的コンテクストですね。
そういう文脈で椎名を批判することはおそらく容易だと思うのですが、
具体的な椎名作品の読解においてなされなければ空論に終るでしょう。

519:%
04/10/17 22:42:17
次に>>517についてですが、

私が挙げたキルケゴール、ニーチェ、ドストエフスキーという名前に対し、
>キルケゴールの概念と椎名のスタンスはアナロジーで結びにくい。
と502さんは書いていて、ハイデガーとヘーゲルの名前を挙げていますが、
ハイデガーとヘーゲルを椎名作品の前に引き合いに出す事によって、
一体何が見えてくるのだろう? という疑問が沸きます。

「女=非真理」についてはニーチェのアフォリズムにそれがあり、
502さんが言及してるデリダのニーチェ論でも中心的テーマです。
簡単にいえばこうです。
 真理は女である。女というのは仮面である。
 仮面の下には素顔があるのか? いや、素顔などないのだ。
 仮面の下には別の仮面があるだけだ。素顔などどこにもない。
 素顔なき仮面が女であり、それが真理だ。だから真理とは非真理だ。
ただ、これを椎名の『美しい女』にあてはめることができるかどうか、
これはちょっとわかりませんが。

520:吾輩は名無しである
04/10/19 03:54:05
>>519
%は、そのアフォリズムを実体化して考えすぎのようだな。
俺の見たところ、>>517は、非-真理はふまえているとおもうぞ。
真理が原初、つねにすでに反復している、つまり、「美しい女」で
次々と現れる女は「真理」の反復であって、部分対象としての
現実界だと言いたいんだろう。だから「真理」でいいじゃないかって
いってるんじゃないのか?真理の一回性からいけばこの反復が
「非-真理」なんだよ。だから>>517は踏まえている、と俺には読めるな。

%のいう「非-真理」としての仮面は、たしかにデリダも引いているが、
そういう実体的なはなしではない。仮面の下が何もないからみたいな論は
デリダじゃなくてもいってるからなw

横レスすまぬ。

521:%
04/10/20 00:47:13
>>520
横レスかまいませんよ。
ただ、もう少し流れを読んでもらえればと。

>>519のレスは
 >女=非真理とする必要はないのでは?
という>>517(502さん)に応答しただけで、
別に意味はそれ以上でも以下でもないわけで。

デリダに言及したのも>>511(502さん)に対する応答で
 >『美しい女』をニーチェ・ラカン或いはデリダラインの「女は存在しない」
 >に通じるものとして論じてるものを読んだことがありますが
 >(女性の研究者だったような)、
と書かれてあったからで、無理矢理デリダにからめたわけじゃないから。

で、『美しい女』にそうした「反復」を認めるとするならば、
これは椎名をキルケゴールに近づけることになると思うんだけど
そのへんは520さんはどう考えてますか?

522:吾輩は名無しである
04/10/20 02:05:24
>>521
でも、%のデリダの持ち込み方が通俗すぎるからさ。
それと俺はちゃんと流れ読んでると思うが?

それは読めばわかるよ。

523:502
04/10/20 16:44:22
>>518-519
様様な問いが出されたのでまとめつつ。
①ニーチェ的実存あるいは実存主義について
問いに問いを返すようで申し訳ありませんが、「ニーチェ的実存」とはいかなる
ものなのでしょうか?(%さんにとっての)。
椎名におけるニーチェの影響は確かに拭い去れないとは思いますが(キルケゴール
と同様に)、個々の作品においてニーチェの思想を持ち出すのはちと困難かと
個人的には思います(例えば「永劫回帰」や「超人」などの概念について)。
んで、これはあとの問いにも関わりますが、戦前戦後の日本において「~的実存主義」
が導入されたとき、特に戦後はサルトルがよく取り上げられるますが、私見では
この種の「実存」は、昭和10年前後の転向時代、シェストフ的不安、さらに遡って
プロ文のルカーチ的弁証法概念と絡んでるかもな、と。それであれば、『存在と時間』
およびそこから『芸術世界の根源』を経て後期へといたるハイデガーの思想から
考えたほうが、見取り図が取りやすい、と思ったまでです。それは転向主体と全体性
の問題に絡めやすいし(「死」の問題も含め)、さらにはそこからヘーゲル弁証法を
下敷きに考えれば、戦前戦後の連続性が見やすいかな、と。あくまで私見ですが。

524:502
04/10/20 16:45:21
続き
②現代思想のコンテクストで椎名を論じることについて
もちろん、現代思想のタームで持って椎名のテクストを切って、はい終わり、なんて
ことはあまり建設的とは思っていません。椎名に限らず、様様な文学テクストを
そのように論じて済む時代でもないですしね。ただ、若気の至りとしてのたわ言と
思って聞き流して頂ければ幸いですが、既存の椎名論はあまりにもそれらの思想を
無視していないかな、と思いまして、とりあえず最低限これらの思想を踏まえて
考える必要を個人的に感じたまでです。
個々の作品について言えば、思いつく限りでは『邂逅』における安志の機能、ラスト
の「一緒にたたかう」という言葉が包括的に過ぎないかという問題、『自由の彼方で』
における死者としての「彼」と語り手の「私」との、連続性でありながら非連続な
関係、および「私」の言動が事後的なものに留まるということ、さらに『美しい女』
の末男が、自身がいかに否定しようとある種の崇高な対象へと祭り上げられてしまう
こと、など。簡単ですが、ここで詳述するのも何なので。

525:502
04/10/20 16:50:36
続き
ハイデガー・ヘーゲルについては①に記した通りです。但しこれは、椎名のみを
論じるのではなく、埴谷・野間を絡めた「戦後文学」の問題として捉える場合に
有効ではないか、と考えています。
③「女」について
これは520さんがうまく翻訳(笑)して下さいました(>>520多謝)。
んでこの「女は存在しない」概念は、『美しい女』には当てはまらないでしょう
(>>511参照)し、%さんが521でおっしゃっているような「反復」は『美しい女』において
僕には感じられません。ただ以前書き込んだように、末男がもし会う女全てを「美しい女」
としたならば、真理を宙吊る(真理-非真理の二項対立を宙吊る)、複数の「真理」
(520さんがおっしゃるところの部分対象)が考えられて面白いかもな、と妄想したまでです。
デリダを取り出した理由もそこにありまして、単に真理と非-真理の宙吊りなら別にニーチェ
を踏まえつつフロイト-ラカンラインでも良かったんですが、複数性を考えるならばデリダの
ほうが都合がいいかな、と思いました。先述した論文は確かめたところデリダの名前は
出されてなかったので(ニーチェのみ)、これは僕の勘違いです、すいません。

526:502
04/10/20 16:52:30
①や②の付けたしとしては、ヘーゲル弁証法を絡めた場合、昨今のヘーゲル弁証法は全体性
に還元し得るものではない、というコジェーヴ-ラカン経由ジジェクのヘーゲル読解を
椎名に当てはめれば、椎名のテクスト=全体性・現前性の物語、という批評側の批判を
覆せるかもしれない、などと偉そうに考えてます(笑)。例えば『邂逅』において安志=溝
ではないか、とか『自由の彼方で』における「私」という主体の問題(こいつは死者なのか
生者なのか)などなど。

以上、長々と妄想にお付き合いさせてすいませんw

527:%
04/10/24 22:25:00
>>523-526
レスどうもです。かなり刺激的で面白いレスだと感じました。
長文を書いてもらって、かなり502さんの視点がわかりました。
時間のある限り項目ごとに書きます。

①ニーチェ的実存あるいは実存主義について
 >「ニーチェ的実存」とはいかなるものなのでしょうか?(%さんにとっての)。
502さんが挙げている「永劫回帰」や「超人」などについては同意です。
わたしが念頭においているのは、「ニヒリズムの徹底・超克」という点ですね。
椎名および椎名作品の主人公が、幻滅や絶望を味わいながらも
そこでニヒリズムに陥らず、ポジティブとはいえないまでも、
生真面目でやけっぱちな生への力=執着へと転回していく姿勢において、
多かれ少なかれ影響があるように思いました。
特に『自由の彼方へ』『運河』などの作品ではニーチェの本のことも出てきますね。

528:%
04/10/24 22:36:34
>>523-526
①について(つづき)
502さんが挙げている文脈の中で「シェストフ的不安」は同意です。
(河上や三木の影響は戦後にも及んでいたようですね)
椎名がシェストフを読んでいたかどうかは寡聞にして知りませんが、
「絶望からの出発」「虚無からの創造」という視点において、
また、キルケゴール、ニーチェ、ドストエフスキーというバックボーンにおいて、
かなり関連性を感じました。

②について
作品抜きに思想性や政治性だけで作家を論じる人がいますが、
502さんのように具体的な作品の読解において
現代思想を援用するのであれば、これは刺激的です。
機会があれば詳しく聞いてみたいと思いました。

529:%
04/10/24 22:49:41
>>525-526
③「女」について
「女は存在しない」「反復」という概念は『美しい女』において感じられない、
という点は同意です。椎名には形而上学的な面が強くあるのでしょう。
だから、「真理の宙吊り、多数化」という視点での読解は難しいかも、と思われますが、
502さんはそれを承知で「面白い」と言っていたことがようやくわかりました。納得です。

しかし、単なる「宙吊り」ということであれば椎名作品の主人公にありますね。
たとえば、
左翼からは無自覚、右翼からは無関心、
組合からは保守的、会社からは単細胞、
というレッテルをはられる『美しい女』の末男。

>>526
「コジェーヴ-ラカン経由ジジェクのヘーゲル読解による批評」の批判
このあたりのかなり複雑なメタクリティックはわたしにはよくわかりませんが、
これもまた興味をそそられます。

530:吾輩は名無しである
04/10/25 07:14:51
>>529
パーセントは「形而上学的」って意味わかってるのか?
キルケゴールの「反復」じゃないっていってるだけで、「女-真理」は
反復してるんだろう?つまりそれが「女は存在しない」ってことなんだろ?
>>525の後半は確かに錯綜してると俺も思うが、「真理」の「反復」自体が
「非-真理」のことであって、その「非-真理」の可能性に「真理」は常にすで
に依存してるんだから。「女がいない」からヤスシは反復するんだろ?
それが次々に現れる「女」だ。「女」の不在が「女」の可能性だぞ?

納得しましたって、ありえないぞ。勝手に納得するなよw

>左翼からは無自覚、右翼からは無関心、
>組合からは保守的、会社からは単細胞、

おいおい、こんなの真理の「宙吊り」なわけないだろw笑わせるなよ。
単なる優柔不断か、よくわからないやつって程度な意味だぞこれは。
パーセントは実体化して考えるようだなやっぱ。「宙吊り」って「曖昧化」
じゃないからな。しかも、ないようレベルの解釈かよ。

ずれてるから指摘させてもらった、横レスな俺。

531:%
04/10/27 22:32:57
>>530
 >末男がもし会う女全てを「美しい女」としたならば、
 >真理を宙吊る(真理-非真理の二項対立を宙吊る)、複数の「真理」
 >(520さんがおっしゃるところの部分対象)が考えられて面白いかもな、
 >と妄想したまでです。
まず>>525にある上の502さんの意見にきみは同意なのかな?
 >「女がいない」からヤスシは反復するんだろ?
ヤスシって誰?
 >左翼からは無自覚、右翼からは無関心、
 >組合からは保守的、会社からは単細胞、
これは『美しい女』を読めばわかる。
それから≪真理の「宙吊り」≫じゃなく≪単なる「宙吊り」≫と書いてある。
 >ないようレベルの解釈かよ。
作品内容を無視した解釈など不可能。
 >ずれてるから指摘させてもらった、
もちろん他者との対話において「ズレ=差異」はつきもの。
ズレがないほうがおかしいわけで。
だから「納得」というのは他者との差異を確認できたってことだよ。
530は502とはあまり「ズレ」を感じてないようだね。

532:502
04/10/28 02:23:18
>>527-529
丁寧なレスどうもです。
今回の応答で僕にも%さんの考えが何となく分かってきたというか…。
恐らく%さんが「ニーチェ的実存」として捉えているものを、僕はむしろ
それはニーチェではなく、ハイデガー(シェストフ的不安、三木或いは九鬼)
の「実存主義」として考えています。もちろんこうした僕の考え方は
先述したデリダのみならず、ドゥルーズやクロソウスキーのニーチェ論の
バイアスがかかったものではありますが。

ジジェクのヘーゲル読解についてはしばしば批判されますが(例えば東浩紀が
いうところの「否定神学」として)、とは言えなかなか刺激的な論述を行っている
と思います。かいつまんで言えば、弁証法は決して全体性に還元される運動ではない、
ということです。

>>530
煽り乙ですw ヤスシはまあ置いとくとして(笑)、>>525の錯綜は、恐らく僕が『美しい女』
に「女は存在しない」が当てはまるとは全く思っていない(可能性を持ったテクスト
であったでしょうが、結局それは回収されてしまった)にもかかわらず、むりやり持ってきた
ところにあるんでしょうかねえ? 言い方は結構どぎついですが、530さんのレス
>>520と同一人物ですよね)は個人的にハッとするところも多々ありますので、
これからも色々レス頂ければ、と。

とか言いつつ、最近椎名からは少し離れてますんで(まあ近いうちに読み直すとは
思いますが)、僕が書けることは大体ここまでです。ちと出しゃばっちゃったところも
あり、他の人が発言しにくい感じになってしまい、申し訳ない。では。

533:%
04/11/06 00:42:35
502氏と530氏との対話のために少し間をおいたけれど、>>532で興味深い箇所が!
 >先述したデリダのみならず、ドゥルーズやクロソウスキーの
 >ニーチェ論のバイアスがかかったものではありますが。
まさか、こうしたフランス思想家の名前が椎名スレで出るとは。


534:吾輩は名無しである
04/11/06 17:21:29
532はただの知ったかだろうな。

535:% ◆uyLlZvjSXY
04/11/15 00:56:05
デリダ、ドゥルーズ、クロソウスキーを援用した502氏の椎名読解に
もしも可能性があるならば、個人的には聞いてみたい気はする。
フランス思想を多少はかじってきたもので。
しかし、デリダ、ドゥルーズについては専用のスレもあるので、
そっちに移行してやったほうがいいだろうね。
どうも彼らと椎名を結びつけるのにはかなり無理があると思うから。

536:吾輩は名無しである
04/11/15 20:41:57
ここでいいんじゃないですか。

537:502
04/11/15 22:01:43
ええと、何か誤解があったようですが、>>532で言いたかったのは
ドゥルーズらのバイアスがかかったニーチェ論からすれば、椎名と
ニーチェは結びつかないってことです。ですから、ここら辺を援用した
椎名読解は難しい(というか私の手には負えませんw)
せいぜい、>>525あたりでお茶を濁す程度です。

個人的にはしつこいようですが、椎名を論じるなら弁証法、というか疎外論から
考えるほうが手っ取り早いかな、と。

ということで、まあデリダスレ・ドゥルーズスレに行く必要はないかと。
デリダスレではまあ、グラがさっさと翻訳されてくれ、とブツブツ述べる程度ですw
(ま、現代思想を読み込んでる人から見れば、知ったかですし)

538:% ◆uyLlZvjSXY
04/12/08 21:37:02
年明けに講談社文芸文庫から待望の短篇集が出る模様。

539:吾輩は名無しである
04/12/08 23:29:14
神の道化師・媒妁人 椎名麟三短篇集 椎名麟三

540:吾輩は名無しである
04/12/11 01:37:34
えーこっちゃ!

541:吾輩は名無しである
04/12/11 14:48:49
短篇集にはほかにどんな作品が入ってるんだろ?

542:本当の事を言おうか
04/12/12 23:57:34
『神の道化師・媒妁人 椎名麟三短篇集』
わたしが待っていたのはこれだっ!

543:吾輩は名無しである
04/12/29 22:55:53
ついでに昔旺文社から出てた文庫も復刊汁!

544:吾輩は名無しである
05/01/09 12:19:41
文庫はまだか?

545:吾輩は名無しである
05/01/09 23:57:48
そろそろじゃないの

546:SXY ◆uyLlZvjSXY
05/01/16 01:21:09
神の道化師・媒妁人 椎名麟三短篇集

このささやかなアンソロジーを、私は「椎名麟三ユーモア小説集」とでも呼びたく思う。
(略)椎名麟三のユーモアはそれ自体独特な神学である。
(略)この国の貧乏な庶民生活のなかの粗末でありふれた事物だけを使って書かれたユニークな「神学小説」。
(略)共同体が壊れ、人間と人間、国家と国家のこわばった関係が自己絶対化に根ざす凶悪な暴力を生みだしている今日、
(略)このアンソロジーは、そうした時代に向けて差し出す1冊でもある。―<井口時男「解説」より>

547:吾輩は名無しである
05/01/17 23:40:50
本日get

548:吾輩は名無しである
05/01/19 03:46:47
俺も買ったよ。これから読みまする。

549:吾輩は名無しである
05/01/19 19:49:46
今度の新刊一体何冊売れるのだろうか?

550:吾輩は名無しである
05/01/19 20:52:08
300冊。

551:吾輩は名無しである
05/01/21 22:46:22
300冊じゃ採算合わないぞ。図書館だけで300-500冊くらいはいくはず。
1500冊売れてトントンか。

552:よみ人知らず
05/01/25 14:22:02
「美しい女」読み返しましたよ。
当事は十代で、美しい女がなにを意味するのか、
あるいは具体的に誰かの象徴なのか、
さっぱりわかりませんでした。

今、時を経て読み返しておもうことは、
美しい女とは、誰のこころにもある
「美しく、永遠なるものへの憧れ」なのではないかと思いました。

別に宗教的とか、そういう意味ではなく…
ひとつのまなざしだと思います。


553:吾輩は名無しである
05/02/19 12:41:16
短編集どう?
買おうか買うまいか

554:吾輩は名無しである
05/02/24 00:23:33
今度の短篇集が椎名の最後の文庫になるかもしれないよ。

555:吾輩は名無しである
05/02/24 03:02:06
そんな不吉な…でもありそうな話

556:吾輩は名無しである
05/02/24 21:19:50
そんなリアルっぽい不吉な予言はやめてくれ。
もうひとつ短篇集を出して欲しい。
今度は「寒暖計」「両面作戦」「変装」ほかを収載希望。

557:吾輩は名無しである
05/02/28 23:21:03
この人の作品に漂う絶望感って深いね。

558:吾輩は名無しである
05/03/24 14:35:31
椎名麟三 「邂逅忌」
3月28日18時30分 
明治学院大学記念館 港区白金台1-2-37
講師 作家:小川国夫
会費:一般 5,000円 学生 4,000円


559:吾輩は名無しである
05/03/24 14:38:50
>>1
椎名麟三程度で「超マイナー」って……。
戦後派を代表する一人でないの。あんた、知らなかったのかい。
埋もれた作家はもっとあるだろ。

560:吾輩は名無しである
05/03/31 09:45:12
九州芸術祭の選評で鱗三の名前が出てたね。

561:吾輩は名無しである
05/03/31 10:59:31
>>560
詳細頼みます。

562:吾輩は名無しである
皇紀2665/04/01(金) 00:32:31
ちゃんと文學界を買いなさい。
まだ間に合うぞ。

563:吾輩は名無しである
皇紀2665/04/01(金) 03:33:23
文芸文庫で椎名麟三全集が刊行されることに決まったらしい

564:吾輩は名無しである
皇紀2665/04/01(金) 11:39:59
>>562
意地が悪いね。


565:吾輩は名無しである
皇紀2665/04/01(金) 21:33:03
椎名麟三文庫全集
全12巻で15000円だもんなあ。

566:吾輩は名無しである
皇紀2665/04/01(金) 22:07:35
>>564
分かったよ。

受賞作の選評で、五木寛之が「バッティングセンターみたいな
日常に近いところが小説の舞台となるとは考えもしなかった。
戦後60年、椎名鱗三を離れて小説はここまできたんだなと感慨を
抱いた」みたいなコメントを出してたんだよ。

567:吾輩は名無しである
05/05/17 18:27:25
エープリルフールネタでつね

568:ixion ◆ySh2j8IPDg
05/06/25 21:38:01
仮に「救われる」というものがありうるとしたら、
俺はこの人の本を読んでそれに近いものを
感じるなぁ…。

569:吾輩は名無しである
05/07/05 22:02:21
救われる??? ホント???

570:吾輩は名無しである
05/07/05 23:37:02
>>568
詳しく

571:吾輩は名無しである
05/07/17 13:46:44
ほんと超マイナー作家だよなあ

572:SXY ◆uyLlZvjSXY
05/07/18 20:09:39
救いについて椎名自身はこんなことを書いてたね。

―虚無から救われるためには二つの道しかない。
   神を信じるか、この世の一切に対する無関心である。
   この場合、自己の虚無にさえ無関心となることはむろんだ。―
               (「わたしのドストエフスキー体験」より)

573:ixion ◆ySh2j8IPDg
05/07/19 23:59:36
「ほんとう」の手前で立ち止まり続けること、というのは
苦行でありまた救いなのだ。

椎名はキリスト教徒でありながら、キリストを無条件に
「ほんとう」とするのではなく、「ほんとう」の無い、いわば
虚無と無関心に満ちた世の中を見つめ抜いた上で、
「キリストは〈ほんとう〉ではないが、〈ほんとうの手前〉で
道を示してくれている」と、自らの(人生/読書)体験から
導きだしているように思える。

>>572の「二つの道」を突き詰めれば自殺しかない。だが、
その手前で「ほんとうではないこと」を肯定してくれるのが
椎名の文学だと思うのだ。だから救われる。

574:SXY ◆uyLlZvjSXY
05/07/26 22:05:14
椎名のニヒリズムからの救いについて断片的に。

ドストエフスキーとニーチェを経由してキリスト教に向かった椎名。
ただし単純な信仰ではないのだろう。

「自己の虚無にさえ無関心となること」は
ニーチェのニヒリズムの徹底によるニヒリズムの克服、
を想起させもするが、ちょっとスタイルが違う。

自分という存在の空虚さ、自分が感じる虚無感に対し
無関心になることは、希望さえ捨てれば絶望もなくなる、
という論理に似てしまう。

彼は、世界を、自分を肯定したい、でもできない、
それじゃあ否定するか? 彼は否定もしない。
やはりいきいきと生きたいと彼は願っている。

では、ある種の諦念により、>>573にあるように、
【「ほんとうではないこと」を肯定してくれる】のだろうか?

むしろ彼はあがくのではないだろうか? 蛾のように。
自分を無様な道化師に仕立て上げ、それを神に捧げるようにして。
神への告発とも思われるような自虐的な熱情によって。

575:SXY ◆uyLlZvjSXY
05/07/26 22:07:00
指先に押えられた蟻のような情ない滑稽なあがきにすぎなかろうとも、
私はどこまでもその滑稽なあがきを、その理念の崇高さに対立させて
やるつもりなのである。たとえ誰が考えても死がその場合決定的なも
のであり、それから逃れることは不可能であろうとも、私は、思いをつ
くし、力をつくして、蟻のようにあがいてやるつもりなのである。
                        (「美しい女」)

576:吾輩は名無しである
05/07/27 00:29:20
映画マトリックスの方が勉強になる

577:吾輩は名無しである
05/07/27 11:14:51
>>573
それは誤読。

578:吾輩は名無しである
05/07/29 00:19:36
むう

579:SXY ◆uyLlZvjSXY
05/07/29 00:38:36
椎名の宗教観について少し。

―私は、イエス・キリストの生涯は、
   人間がほんとうのものと考えるものに対する
   たたかいにあったというような気がするのである。―
               (「私の聖書物語」より)

椎名の小説作品から受けるのとエッセイから受けるのとでは、
ちょっと異なる印象が与えられるのだけれども、
キリスト観や宗教観について見てみると、
信仰者的でもあり無信仰者でもあるという奇妙な二重性が感じられる。

人間によって信じられる(理解される)ような神は神でないのであって
信じられない(理解できない)からこそ、神の存在を感じるという逆説がある。
これはレヴィナスあたりの神の概念に通じるのかもしれない。

―神と自分の間には無限の距離があって、
   永久に信じられないだけでなく、
   しまいにはその無限の距離そのものが
   神のように見えて来る仕儀となってしまうのである。―
               (「私の聖書物語」より)

580:ixion ◆ySh2j8IPDg
05/07/30 21:40:29
ドストエフスキー読んで、どうしても残ったものを
「神」と名づけるしかないのではないか、みたいな
ことをどこかで書いてたよね?

「ほんとうではない」ということに地下室的に苦闘し
続ける、そのほんとうの手前の苦闘を肯定している
と書いたのであって、どこぞの作家さんのような
「世界を肯定する哲学」とは違うよ^^;>>574

「世界」以前に「生活」だろオイ、と言ってやりたくなる
ような思想の浮付きじゃなく、辿り直しを繰り返して
なお逡巡するような、そんな思想と信仰の苦闘が
椎名には感じられる。

椎名の二重性は信仰だけじゃなくて共産党員時代にも
共通して言えること。つーか、二重の意識を持てない
者があれだけの作家になれるわけがない。全く「奇妙」
なことではないよ。ドヤと祈りは矛盾ではないしね…。

581:吾輩は名無しである
05/07/31 17:41:12
なるほど

582:吾輩は名無しである
05/07/31 18:05:41
妙に読みやすい文体と滑稽で変なキャラと
毎回同じようなドヨ~んとした設定の小説を
書く人だと思っていたが
なんかもっと複雑な人みたいね。


583:吾輩は名無しである
05/07/31 21:00:43
暗い印象がある

584:吾輩は名無しである
05/07/31 21:03:41
お父さんがなぜかこの人のサイン本たくさん持ってる・・。
本屋に、懲役人の何とかのサイン本を持ってたら500円で売れた。
たいして期待してなかったのに超ラッキー。

585:SXY ◆uyLlZvjSXY
05/07/31 22:34:54
>>580
>ほんとうの手前の苦闘を肯定している
そうだね。その部分に対する肯定が
思想的な「世界」以前の庶民的な「生活」への愛
にもつながってるのだろう。

で、そのことは次のことにもつながると感じる。
「ホントウ」「自由」「美しい女」を求める人間は、
(つまり、光を求める蛾というのは)
その「滑稽なあがき」をやめないということに。

586:SXY ◆uyLlZvjSXY
05/07/31 22:41:14
>>582
>毎回同じようなドヨ~んとした設定の小説
その感想は同感。
絶望しつつ希望するような、理想を抱きつつ諦めるような、
もっとイメージ的にいえば、飛び立ちつつ倒れてゆくような、
椎名の小説を読むと、そんな感じを受けるんだなあ。

587:SXY ◆uyLlZvjSXY
05/07/31 22:47:12
>>583
確かに明るくないね。それでもただ暗いだけじゃない何かが。

>>584
すべて500円均一で売っておくれ。

588:吾輩は名無しである
05/08/06 18:58:27
ぜっぱんおおいね

589:吾輩は名無しである
05/08/08 15:51:44
復刊して

590:ルージュ
05/08/08 16:23:07
たしかこの人中村光夫と仲良かったですよね。

591:ルージュ
05/08/08 18:54:42
多分中川次郎とも仲良かったですよね。

592:吾輩は名無しである
05/08/08 19:21:53
共産党員だった人だっけ

593:吾輩は名無しである
05/08/08 19:25:03
戦前な

594:吾輩は名無しである
05/08/16 23:34:59
少し前に読んだ本で安部公房が「日本唯一の小説家だ」みたいな表現していたので、
気になって買ってしまった。
まあ小説は一冊しかないがw
それにしても文芸文庫こんな薄いので1200円か、、、
それでも新潮みたく絶版にされるよりはいいが。

595:吾輩は名無しである
05/08/30 23:31:04
安部公房が評価したなんて意外。

596:吾輩は名無しである
05/08/30 23:37:44
公房も昔は共産党シンパだもの。

597:吾輩は名無しである
05/09/12 20:56:21
共産党からドストというのは埴谷あたりと似てる?

598:吾輩は名無しである
05/09/22 00:57:18
赤い孤独者。

599:吾輩は名無しである
05/09/23 03:47:06
>>594
安部公房と椎名はお互いいつも褒め合ってる感じがする。まあ二人とも演劇にかなり力入れてたしな~。

>>597
埴谷って言うより、いわゆる「戦後派」は共産党ドストってのが主流では?

ヤボな話だが、椎名と梅崎の仲良しぶりは何なんだろう? 個人的には、単なる友人以上の関係のような
気がしてならない。別にだからどうということもないが(笑)

600:吾輩は名無しである
05/09/24 21:03:56
梅崎もマイナーな作家の仲間入りしたような。。。

601:
05/09/24 23:26:56
「共産党&ドスト」は通過儀礼みたいなところが当時あったのかな。
ニーチェやシェストフあたりもかなり読まれてたみたいだし。
そこから「キリスト」に向かった人は少ないだろうけど。

602:吾輩は名無しである
05/10/02 03:30:26
>>599
文学全集で二人で一冊だったり 「名短篇」で前後していたり 仲が良いよな

603:吾輩は名無しである
05/10/14 23:39:54
この人、梅崎とは仲が良かった?

604:吾輩は名無しである
05/11/01 00:39:17
全集にも載ってる作家だから
超マイナーは言い過ぎでしょ

605:吾輩は名無しである
05/11/01 04:55:44
ややマイナー程度

606:吾輩は名無しである
05/12/06 10:46:50
あげとこ

607:名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中
06/01/15 23:54:34
でも手軽に入手できる本が少ない作家だよな

608:名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中
06/01/16 00:02:17
よく燐と間違える

609:名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中
06/01/17 06:44:25
読み返すのが惜しい作家。
筋立てはほとんど覚えてないが、
中学生の頃読んだ『美しい女』は、
永らく小説表現における美と同義だった。
長年、そのイメージだけを頭で反芻してきた。

でも読んじゃお。


610:名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中
06/01/22 23:25:21
読みませう

611:名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中
06/01/22 23:27:28
はい

612:名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中
06/02/01 11:52:43
以前、訪れた古本屋で、「永遠なる序章」の文庫版がたくさんおいてあった。
一冊買ったよ。5年たったいまでもまだ読んでない。

613:名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中
06/02/09 00:34:29
「生きる意味」とか「愛と自由の肖像」とか
社会思想社の文庫になってたみたいだけど
タイトルが萎えるよ。

614:吾輩は名無しである
06/03/07 17:05:10
3月28日は邂逅忌ですね。
興味があるのですが、グーグルでも引っ掛かりません。
どなたかご存知でしたら情報お願いします。

615:吾輩は名無しである
06/03/10 09:51:25
とりあえず情報を。

第33回邂逅忌
2006/3/28 18:30~(於明治学院大学記念館)
第1部 朗読劇「天国への遠征」
第2部 懇親会
会費;一般5000円 学生4000円(朗読劇のみの出席は無料)

ここ数年顔出してるけど、今年はどうするかな。

616:吾輩は名無しである
06/03/16 11:20:22
615さんありがとう!
予定が空いたら行ってみます!



617:びっくらした
06/03/27 15:11:12
邂逅忌ぼくも行ってます

618:吾輩は名無しである
06/03/27 20:52:42
明日は邂逅忌age

619:吾輩は名無しである
06/03/27 21:17:18
邂逅忌詳細
URLリンク(www.meijigakuin.ac.jp)

620:吾輩は名無しである
06/03/28 22:19:54
邂逅忌か

621:吾輩は名無しである
06/04/02 12:01:21
もう33回忌か。

622:吾輩は名無しである
06/04/21 00:36:02
33回忌といえば先祖の霊に昇華したとされる年月ですね。
先日旺文社文庫の「愛について」を安く入手。

623:吾輩は名無しである
06/05/17 20:42:20
保守

624:吾輩は名無しである
06/05/18 00:13:18
保守しなくても落ちないと思うが

625:吾輩は名無しである
06/05/18 09:26:38
というか椎名のスレで「保守」っていうのいい加減にやめて欲しい。

626:ムー大陸 ◆DMnIjpZYd2
06/05/19 12:58:04
革新

627:吾輩は名無しである
06/05/27 23:50:12
椎名文学は人を救えるか否か

628:吾輩は名無しである
06/05/28 00:00:49
>>619
参加したヤシ報告しろ

椎名の墓は静岡の富士霊園にある。

629:吾輩は名無しである
06/05/28 00:05:44
>627
椎名は自分を救えたか否か

自分を生んで3日後に母親が鉄道自殺未遂というのは、
椎名のひっかかりではなかったのか。
今ならマタニティ・ブルーの知識も一般化しているが
椎名の時代には大変な事件だったろう。

630:吾輩は名無しである
06/05/28 01:09:19
救いか。。。
>>572あたりからもそのテーマが出てるみたいだけど
幼児体験のトラウマみたいなものを癒してくれるのは
やはり宗教的なものだったんじゃないかと思われ。

631:吾輩は名無しである
06/05/28 02:40:25
深夜の酒宴よんだ

632:吾輩は名無しである
06/07/01 16:07:11
講談社文芸文庫の椎名麟三短編集借りてこれから読むところ。
暗そうな雰囲気がなんかよさげw

633:夏は来ぬ
06/07/25 23:50:05
                    /⌒彡:::
                   /冫、 )::: モウ…夏カ…
                  __| `  /:::
                 / 丶'  ヽ:::
                / ヽ    / /:::
               / /へ ヘ/ /:::
               / \ ヾミ  /|:::
              (__/| \___ノ/:::
                 /    /:::
                 / y   ):::
                / /  /:::
               /  /::::
              /  /:::::
             (  く::::::::
              |\  ヽ:::::
                |  .|\ \ :::::
          \    .|  .i::: \ ⌒i::
          \   | /::::   ヽ 〈::
              \ | i::::::   (__ノ:
              __ノ  ):::::
            (_,,/\


634:吾輩は名無しである
06/07/26 22:15:18
椎名を読む夏

635:吾輩は名無しである
06/10/01 14:45:07
永遠なる序章が一番好きだな

636:吾輩は名無しである
06/10/01 14:47:43
中上が褒めてたよ

637:吾輩は名無しである
06/11/05 20:51:56
一日中雨の日曜日、六畳一間のアパートで一人何もすることがなくて、
「深夜の酒宴」を手に取り、冒頭の一行を読んだだけで暗い気持ちになった。

638:吾輩は名無しである
06/12/15 03:35:09
「自由の彼方で」もサイコーだよ

639:吾輩は名無しである
06/12/15 23:15:00
「赤い孤独者」も「深夜の酒宴」に匹敵

640:吾輩は名無しである
06/12/16 10:33:11
『赤い孤独者』はなかなか手に入りにくいけれど、いい作品だね。
もっと簡単に読めるようになるといいのに。

641:吾輩は名無しである
07/01/21 00:41:21
講談社文芸文庫にはもう入らないのか。。。

642:吾輩は名無しである
07/03/10 14:10:25
ageruyo

643:吾輩は名無しである
07/03/28 15:50:16
邂逅忌age

644:吾輩は名無しである
07/05/22 07:28:03
さがり杉

645:吾輩は名無しである
07/08/31 22:29:47
さがり杉2

646:吾輩は名無しである
07/09/29 14:30:46
マイナー作家にしてはスレが伸びてるな。
戦後派を語るスレになってるのか?

647:吾輩は名無しである
07/10/11 04:28:59
というかそこまでマイナーでもないと思うんだが

648:吾輩は名無しである
07/10/14 11:05:52
まあスレタイがあれだから...

649:吾輩は名無しである
07/11/23 03:01:47


650:吾輩は名無しである
07/12/04 00:38:25
貧乳腰パン葉子食い逃げダーウィン偽善者

651: 【ぴょん吉】 【914円】
08/01/01 00:53:57
あけおめ
ことよろ

652:吾輩は名無しである
08/02/25 11:39:06
邂逅忌が近づいてきたのであげ

653:吾輩は名無しである
08/05/13 13:14:27
多喜二の蟹工船ブームに続き、椎名ブーム来るか?
「永遠なる序章」「自由の彼方で」「美しい女」...来い!

654:吾輩は名無しである
08/05/13 18:26:46
出版社が流れよんで実践すれば売れそうじゃね?
福永とかも復活して来てるし

655:吾輩は名無しである
08/10/13 00:20:59
そんなマイナーかな?

656:吾輩は名無しである
08/10/13 12:21:03
655
スレを全て読めとはいわんが・・
せめて最初の数レス読むことぐらいできないかね。



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