09/08/26 09:47:28
ノリとハサミで作った偽書, 2009/7/20
By 朱徳栄 (東京) - レビューをすべて見る
分厚い本だが、内容は薄い。特に近年出た全共闘本の切り貼りが多い。しかも、
この切り貼りが唖然とするようなやり方で行われている。こうなると「偽書」と
言った方がわかりやすいだろう。
取り上げている文書は、68年当時のビラの類を除いては、ほとんど知っている
物ばかりだった。問題は文書の取り上げ方である。ほとんどが、
小熊氏の筆の進みにあわせて文書の一部を切り抜いているだけだ。
たとえば赤軍派幹部の証言が、本来の趣旨とは違うところを切り抜かれたていたり、
当時の学生の読書傾向を具体的な書名をあげて説明している文章を、
わざわざ当時の学生が入手できる文献は非常に乏しいものだったと
嘆いているところだけ取り上げていたりする。このようなご都合主義的な切り貼りは、
全共闘をおとしめるという動機によってのみ行われている。大量に集めた文献が、
思想史家のつとめであるエッセンスの取り出しではなく、自分の「作文」に
都合の良い一言半句を取り出したものであることに注意を喚起したい。
これが思想史家の仕事なのか??????
これは「偽書」である。何故かと言えば膨大な文献の中から都合の良い部分を、
その文章の背景を吟味することなく切り取り、「自分の語りたい歴史」を恣意的に
語ったものであるからだ。