09/03/09 12:51:04
「金剛石のレンズ」(フィッツ=ジェイムズ=オブライエン)読了。
この作家は幻想文学において多大な功績を残した作家らしい。
表題の「金剛石のレンズ」は顕微鏡に獲りつかれたひとりの男の
狂気を描いた短編である。
究極の顕微鏡作成のために莫大な遺産を投げ打ち、人を殺す。
そして遂に彼の望むレンズは完成した。
そこで彼が見た世界はこの世のものとは思えない美しい秘境であった。
この地上にある名所と謳われているどんなに風光明媚な場所も
レンズ越しに見る世界には及ばないのだ。
―丘も湖も川もなければ動いている生物も動いていない生物も
見あたらず、輝かしい静寂のなかにオーロラの亡骸めいた叢林が
静謐に浮んでいるばかりで、葉や果実や花を思わせるものが
単なる想像力では思い描けない未知の炎で輝いているのだった―
つづいて、彼はレンズのなかに美しい乙女を見い出した。
彼はこの乙女をアニミュラと名づけた。