09/03/03 17:16:28
深沢七一郎『盆栽老人とその周辺』読了。
作者こと都会者の「わたし」がとある村で体験した〝奇妙な〝出来事。
その農村は米と野菜を産出するほかに盆栽づくりもしている。
当初「わたし」は盆栽に何の興味も持たなかったのだが、近所の人に
誘われ、その親切を無碍にもできず盆栽を見に行く。
「見に行く」、この行為は実はこの村では「盆栽を購入する意欲のある人」と
見なされていることを知らないままに。
行く先々では見事な盆栽の鉢植えが披露されており、盆栽用の苗木を
畑一面に植えている人もいることに作者は驚く。
盆栽を「預ける」、「預かる」とは、ただ預かるという意味ではなく、買い取ること
であることを「わたし」は徐々に知っていく。
郷に入れば郷に従え、というがここで描かれる農民たちは実にこずるくて
したたかである。
弁が立ち、言いくるめてモノを買わせる商人とは違った論法で商売をする。