08/05/16 19:40:16
三島と黒澤明には共通点が多い。
ひとつには、「風景」の切り取り方がある。
柄谷行人の「風景の発見」にあるように、
「風景」とは近代以降、すなわち映画の発明以降に発見されたものだ。
黒澤映画の「風景」は、まさしく近代以降の
“発見”された「風景」そのものだ。
一方、三島の描写する「風景」は、
その近代以降のパラダイムに忠実に、
しかも「視覚の人」(柄谷)ならではの描写で
日常の異化と定着に成功した稀有な例だ。
例えば、「午後の洩航」における港の描写を見よ。
そこにあるのは、「風景」に対する、視覚を媒介とした執着と
近代以降の文学的パラダイムに対する共感と批評がある。